以下、本実施形態の例について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の回路基板の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A’線における断面図である。
図1に示す例の回路基板1は、セラミックスからなる支持基板21と、回路部材51とを備えており、支持基板21と回路部材51との間に等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41が配置されている回路基板1である。ここで、図1に示す例の回路基板1では、熱伝導部材41は、金属,ガラスまたはシリコーングリース等の樹脂からなる熱伝導層311,312を介して、それぞれ支持基板21,回路部材51に接合されている。また、放熱部材52は、例えば、アルミニウムを主成分とする水冷方式または空冷方式の筐体(ジャケット)であり、支持基板21に直接接合されている。なお、ここでいう主成分とは、熱伝導部材41を構成する全成分100質量%に対して、50質量%以上を占める成分をいう。また、以降の説明においても
主成分とは、対象物を構成する全成分100質量%に対して、50質量%以上を占める成分を
いう。なお、以降の説明において、同一の部材については同一の符号を用いて説明するものとする。
図1に示す例の回路基板1は、支持基板21と回路部材51との間に熱伝導率が高い等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41が配置されていることから、回路部材51上に搭載される半導体素子等の電子部品(図示しない)の動作中に生じた熱を特定方向に偏ることなく速やかに逃がすことができる。また、等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41は、剛性が低いことから、支持基板21と回路部材51との線膨張係数の差に起因して支持基板21に生じる引張応力が熱伝導部材41に吸収されやすくなっているので、支持基板21に生じる反りを小さくすることができる。さらに、支持基板21に生じる反りが小さくなることから、熱伝導部材41を厚くすることができるので、より放熱特性を高くすることができ、電子部品を冷却するために放熱部材52に通常取り付けられるヒートシンクを不要にすることもできる。以下に、本実施形態における回路基板1を構成する各部材について説明する。
本実施形態における熱伝導部材41を構成する等方性黒鉛とは、BAF値(Bacon Anisotropy Factor:結晶の異方性係数)が1.1以下である黒鉛をいい、BAF値はX線回折法により求められ、例えばミラー指数が(002)で示されるX線回折の強度(I)と等方性黒鉛の結晶軸の一方向であるC軸方向が表面に垂直な方法からずれる角度(φ)との関係である配向関数I(φ)を求め、以下の式(1)により算出される値である。このBAF値は、数値が小さいほど異方性が小さく、数値が大きいほど異方性が大きいことを表わす。なお、ミラー指数が(002)の面間隔が0.34nm以下であることがより好適で、この面間隔についてもX線回折法により求めることができる。
BAF=2∫I(φ)cos2φsinφdφ/∫I(φ)sin3φdφ・・・(1)
また、等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41は、剛性が低いことが好ましく、例えば、ヤング率が40GPa以下であることが好適である。なお、このヤング率はJIS R 7222−1997を用いて求めればよい。また、JIS R 7222−1997で規定する大きさの試験片が得られない場合には、片持ち梁共振法を用いて測定するものとし、その測定値が上記数値を満足することが好ましい。
また、等方性黒鉛は、平均結晶粒径が20μm以上100μm以下であることが好適である
。等方性黒鉛の平均結晶粒径が20μm以上であれば、熱伝導部材41,42は、熱伝導率が高くなる傾向があり、等方性黒鉛の平均結晶粒径が100μm以下であれば、熱伝導部材41,42は、緻密化されやすいので、機械的強度が高くなる傾向がある。その結果、平均結晶粒
径が上記範囲にあるときには、機械的特性、放熱特性ともにより優れた回路基板1となる傾向がある。
なお、等方性黒鉛の平均結晶粒径は、走査型電子顕微鏡を用い、倍率を100倍として、
面積が1mm2である断面を測定範囲とし、JIS R 1670−2006を準用して求めればよい。
なお、等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41は、主成分以外の成分として、例えば、銀,銅,アルミニウムおよびマグネシウムの少なくともいずれか1種を含んでいてもよい。
次に、支持基板21は、例えば、酸化アルミニウム,窒化珪素,窒化アルミニウム,酸化ジルコニウムまたは酸化ベリリウムのうち少なくともいずれか1種を主成分とするセラミックスからなることが好ましい。また、支持基板21が窒化珪素を主成分とするセラミックスからなるときには、焼成工程において、主に焼結を促進するために用いられる添加成分として酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの少なくとも1種と、希土類元素の酸化物とを含んでいることが好適である。
また、支持基板21が酸化アルミニウム,窒化アルミニウム,酸化ジルコニウムおよび酸化ベリリウムのうち少なくともいずれか1種を主成分とするセラミックスからなるときには、添加成分として希土類元素の酸化物を含んでいることが好適である。
特に支持基板21は、酸化アルミニウム,窒化珪素または窒化アルミニウムのいずれかを主成分とするセラミックスからなることが好適である。支持基板21がこれらの成分を主成分とするセラミックスからなるときには、いずれの成分も熱伝導率が高く、機械的特性が優れているので、放熱特性および信頼性が高くなる傾向がある。
次に、回路部材51および放熱部材52は、銅,ニッケル,鉄,タングステンまたはモリブデンのいずれか1種を主成分とすることが好適である。なお、回路部材51と放熱部材52を構成する成分を同じとすれば、製造コストを抑えることができる。
回路部材51および放熱部材52の主成分が銅である場合には、銅は熱伝導率が高いので回路基板1の放熱特性が高くなる傾向がある。特に、無酸素銅,タフピッチ銅およびりん脱酸銅のいずれか1種以上であることが好適であり、中でも、無酸素銅で銅の含有量が99.995質量%以上の線形結晶無酸素銅,単結晶状高純度無酸素銅および真空溶解銅のいずれか1種を用いることがより好適である。このように、銅の含有量の多い回路部材51および放熱部材52を設けた回路基板1であれば、電気抵抗が低く、熱伝導率が高いため、回路特性(電子部品の発熱を抑制し、電力損失を少なくする特性)や放熱特性に優れたものとなる傾向がある。
また、回路部材51および放熱部材52の主成分がニッケル,鉄,タングステンまたはモリブデンのいずれか1種を主成分とする場合には、これらの元素を主成分とする回路部材51および放熱部材52の線膨張係数と、支持基板21を構成するセラミックスおよび熱伝導部材41を構成する炭素の各線膨張係数との差が小さいので、回路部材51に半導体素子等の電子部品が搭載され、この電子部品の動作中に生じた熱が回路基板51,熱伝導部材41,支持基板21と伝わるときに、支持基板21に残る残留応力は小さくなり、支持基板21に生じる反りが小さくなる傾向があり、回路基板1に求められる特性を維持できる。
なお、回路部材51および放熱部材52の厚みが0.3mm以下(但し、0mmを除く)であ
ることが好適である。回路部材51および放熱部材52の各厚みが0.3mm以下(但し、0m
mを除く)であるときには、回路部材51上に搭載される半導体素子等の電子部品の動作中に生じた熱が回路部材51側から支持基板21を介して放熱部材52側へ伝達するときに、熱伝導部材41はそれぞれ回路部材51,放熱部材52の変形の影響を受けにくくなり、熱伝導部材41にクラックが生じるのを抑制することができる。
また、回路部材51は、平均結晶粒径が0.2mm以下(但し、0mmを除く)であること
が好適である。回路部材51の平均結晶粒径が0.2mm以下(但し、0mmを除く)である
ときには、回路部材51を構成する各成分の結晶が小さくなるので、回路基板1に熱が加えられても、金属層312を構成する成分が、回路部材51の内部に浸透して、回路部材51の支
持基板21側と反対の主面に流出するのを抑制することができる。したがって、回路部材51の支持基板21側と反対の主面のぬれ性を高く維持できる傾向がある。
なお、回路部材51および放熱部材52のそれぞれの主成分が銅である場合において、銅の平均結晶粒径は、JIS H 0501−1986(ISO 2624−1973)に記載されている切断法に準拠して求めることができる。また、回路部材51および放熱部材52は、過酸化水素水および希硫酸がそれぞれ50体積%混合された、温度が40℃である溶液に1分間浸漬することによって、化学的に腐食された面を測定の対象にすればよい。
ここで、支持基板21を構成するセラミックスの40〜400℃における線膨張係数は、例え
ば、2.6×10−6/℃以上7.2×10−6/℃以下、熱伝導部材41の主成分である等方性黒鉛の40〜400℃における線膨張係数は、例えば、1.1×10−6/℃以上6.5×10−6/℃以下
、ニッケル,鉄,タングステンまたはモリブデンのいずれか1種を主成分とする部材の40〜400℃における線膨張係数は、例えば、4.3×10−6/℃以上12.8×10−6/℃以下であり、各線膨張係数の差が小さいことが好ましい。
次に、熱伝導層311は、支持基板21と熱伝導部材41とを、熱伝導層312は、熱伝導部材41と回路部材51とを強固に接合するものである。そして、これらの熱伝導層311,312は、例えば、金属(以降、熱伝導層が金属からなる場合には、金属層という。),ガラスまたはシリコーングリース等の樹脂からなるものである。
特に、金属層311,312は、銀−銅系合金で、チタン,ジルコニウム,ハフニウムおよびニオブから選択される1種以上の活性金属とインジウムおよび錫から選択される1種以上の低融点金属とを含有し、例えば、銀が45質量%以上57.5質量%以下、銅が40質量%以上50質量%以下、チタン,ジルコニウム,ハフニウムおよびニオブから選択される1種以上の活性金属が合計で1.5質量%以上6質量%以下、インジウムおよび錫から選択される1
種以上の低融点金属が合計で1質量%以上5質量%以下含まれており、その厚みは10μm以上30μm以下とすることが好適である。また、金属層311,312は、上記成分に加え、モリブデン,オスミウム,レニウムおよびタングステンから選択される1種以上の高融点金属を含有してもよい。この場合、例えば、金属層311,312は、銅が35質量%以上50質量%以下、上記活性金属が合計で1質量%以上8質量%以下、上記低融点金属が合計で2質量
%以上22質量%以下、上記高融点金属が合計で1質量%以上8質量%以下含まれており、
その厚みは10μm以上30μm以下とすることが好適である。
なお、支持基板21,回路部材51,放熱部材52,熱伝導層311,312および熱伝導部材41の含浸成分については、蛍光X線分析法またはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法により、また、熱伝導部材41,42の主成分については、炭素分析法により求めることができる。
図2は、本実施形態の回路基板の他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB−B’線における断面図である。
図2に示す例の回路基板1は、支持基板21の第1主面側に回路部材51を、第1主面に対向する第2主面側に放熱部材52をそれぞれ備えており、回路部材51と支持基板21との間に等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41,支持基板21と放熱部材52との間に、等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材42が配置されている。
図2に示す例の回路基板1では、回路部材51と支持基板21との間に等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41,支持基板21と放熱部材52との間に、等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材42が配置されていることから、等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41,42の熱伝導率が高いため、回路部材51上に搭載される半導体素子等の電子部品(図示しない)の動作中に生じた熱を特定方向に偏ることなくさらに速やかに逃がすことができる。また、等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41,42は、剛性が低いことから、支持基板21と、回路部材51または放熱部材52との線膨張係数の差に起因して支持基板21に生じる引張応力が熱伝導部材41または熱伝導部材42に吸収されやすくなっているので、支持基板21に生じる反りがより小さくなる傾向がある。さらに、支持基板21に生じる反りがより小さくなる傾向があることから、熱伝導部材42を厚くすることができ、より放熱特性を高くすることができる。
そして、図2に示す例の回路基板1において、回路部材51側の熱伝導部材41は、放熱部材52側の熱伝導部材42よりも熱伝導率が高いことが好適である。このように、放熱部材52側の熱伝導部材42よりも回路部材51側の熱伝導部材41の熱伝導率が高いときには、回路部材51上に搭載される電子部品の動作中に生じた熱を効率よく拡散して速やかに逃がすことができる。特に、熱伝導部材41,42のそれぞれの熱伝導率は、350W/(m・K)以上,200W/(m・K)以上であることが好適で、熱伝導部材41の熱伝導率は、熱伝導部材42の
熱伝導率よりも、例えば、2W/(m・K)以上高いことがより好適である。
また、図2に示す例の回路基板1は、回路部材51,支持基板21,放熱部材52および熱伝導部材41,42が、それぞれ金属層311,312,321,322を介して接合されていることが好適である。金属層311,312,321,322を介して接合されているときには、金属層311,312,321,322を構成する成分は、熱伝導率が高いので、放熱特性および信頼性が高くなる傾向がある。なお、金属層321,322は上述した金属層311,312と同様の組成から構成することができる。
また、図2に示す例の回路基板1では、回路部材51に加えて、放熱部材52の平均結晶粒径が0.2mm以下(但し、0mmを除く)であることが好適である。放熱部材52の平均結
晶粒径が0.2mm以下(但し、0mmを除く)であるときには、放熱部材52を構成する各
成分の結晶が小さくなるので、回路基板1に熱が加えられても、金属層322を構成する成
分が、放熱部材52の内部に浸透して、放熱部材52の支持基板21側と反対の主面に流出するのを抑制することができる。したがって、放熱部材52の支持基板21側と反対の主面のぬれ性を高く維持できる傾向がある。なお、この場合において、回路部材51の平均結晶粒径もあわせて0.2mm以下とすることが好適である。
図3は、本実施形態の回路基板の実施の形態のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のC−C’線における断面図である。
図3に示す例の本実施形態の回路基板1は、熱伝導部材41と金属層311,312との間に中間層611,612を設けてなる回路基板1である。そして、この中間層611,612は、主成分がクロム,マンガン,鉄,コバルトまたはニッケルのいずれか1種であることが好適である。このように、熱伝導部材41と金属層311,312との間にクロム,マンガン,鉄,コバルトまたはニッケルのいずれか1種を主成分とする中間層611,612を設けたときには、中間層611,612により、熱伝導部材41と金属層311,312とのぬれ性がより良好となり、熱伝導部材41と金属層311,312の接合強度をさらに高くすることができるとともに、放熱特性を向
上することができ、信頼性の高い回路基板1となる傾向がある。
図4は、本実施形態の回路基板の実施の形態のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のD−D’線における断面図である。
図4に示す例の本実施形態の回路基板1は、熱伝導部材42と両側の金属層321,322との間に中間層621,622を設けてなる回路基板1である。そして、この中間層621,622の主成分がクロム,マンガン,鉄,コバルトまたはニッケルのいずれか1種であるときには、熱伝導部材42と金属層321,322とのぬれ性がより良好となり、熱伝導部材42と金属層311,312の接合強度をさらに高くすることができるとともに、放熱特性を向上することができ、
信頼性の高い回路基板1となる傾向がある。
図5は、本実施形態の回路基板の実施の形態のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のE−E’線における断面図である。
図5に示す例の本実施形態の回路基板1は、熱伝導部材41,42と両側の金属層311,312,321,322との間に中間層611,612,621,622を設けてなる回路基板1である。そして、この中間層611,612,621,622の主成分がクロム,マンガン,鉄,コバルトまたはニッケルのいずれか1種であるときには、熱伝導部材41,42と両側の金属層311,312,321,322とのぬれ性がより良好となり、熱伝導部材41,42と金属層311,312,321,322の接合強度をさらに高くすることができるとともに、放熱特性を向上することができ、より信頼性の高い回路基板1とすることができる。なお、図3〜5に示す例の回路基板1以外に、中間層611,612,621,622のいずれかのみを設けたものであっても、設けられた中間層611,612,621,622の両側においては、上述した効果と同様の効果が得られることはいうまでもない。また、この中間層611,612,621,622の厚みは、例えば、0.1μm以上20μm以下であ
る。
なお、中間層611,612,621,622をそれぞれ構成する主成分については、蛍光X線分析法またはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法により求めることができる。
図6は、本実施形態の回路基板の実施の形態のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のF−F’線における断面図である。
図6に示す例の本実施形態の回路基板1は、熱伝導部材41,42の側面が樹脂または無機化合物で被覆されている回路基板1である。このように、熱伝導部材41,42の側面が樹脂または無機化合物からなる被覆層71,72が形成されているときには、熱伝導部材41,42が損傷しにくくなるとともに、熱伝導部材41,42の側面から空気中に含まれる水蒸気の浸入が少なくなるので、水蒸気の浸入による回路の短絡を抑制することができる。
図7は、本実施形態の回路基板の実施の形態のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のG−G’線における断面図であり、(c)は底面図である。
図7に示す例の本実施形態の回路基板1において、回路部材51および放熱部材52は、それぞれ複数個が対応して配置されている。このように、回路部材51および放熱部材52は、それぞれ複数個が対応して配置されているときには、複数個の放熱部材52と体積が同じである単独の放熱部材が配置された回路基板1よりも、回路部材51上に搭載される半導体素子等の電子部品の動作中に生じた熱が繰り返し支持基板21に与えられたときの残留応力が緩和されやすいので、支持基板21にクラックが生じることを抑制することができる。
また、図7に示す例のように、対応して配置される回路部材51および放熱部材52において、回路部材51よりも大きな放熱部材52とすることによって、回路基板1の放熱特性が高くなる傾向がある。
図8は、本実施形態の回路基板の実施の形態のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のH−H’線における断面図であり、(c)は(a)のI−I’線における断面図である。
図8に示す例の本実施形態の回路基板1は、熱伝導部材41,42の側面の少なくとも一部が、回路部材51側および放熱部材52側から支持基板21側に向かって外側に広がるように傾斜している回路基板1である。このように、熱伝導部材41,42の側面の少なくとも一部が、回路部材51側および放熱部材52側から支持基板21側に向かって外側に広がるように傾斜しているときには、回路部材51上に搭載される半導体素子等の電子部品の動作中に生じた熱が回路部材51側から支持基板21を通って放熱部材52側へより速やかに進むので、支持基板21に残留応力が生じにくく、支持基板21にクラックが生じることを抑制することができ
る。なお、傾斜角θ1,θ2,θ3およびθ4は、いずれも30°以上50°以下であることが好適で、特に、36°以上46°以下であることが好適である。
図9は、本実施形態の回路基板の実施の形態のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のJ−J’線における断面図であり、(c)は(a)のK−K’線における断面図である。
図9に示す例の本実施形態の回路基板1は、熱伝導部材41,42の側面の少なくとも一部が、支持基板21に向かって外側に広がる段差部41s,42sを有している回路基板1である。このように、熱伝導部材41,42の側面の少なくとも一部が、支持基板21に向かって外側に広がる段差部41s,42sを有しているときには、回路部材51上に搭載される半導体素子等の電子部品の動作中に生じた熱が回路部材51側から支持基板21を通って放熱部材52側へより速やかに進むので、支持基板21に残留応力が残ることが少なくなり、支持基板21にクラックが生じることを抑制できる。なお、段差部41s,42sのX方向の長さL41SX,L42SXは、熱伝導部材41,42のX方向のそれぞれの長さL41X,L42Xの5%以上25%以下であることが好適である。同様に、段差部41s,42sのY方向の長さL41SY,L42SYは、熱伝導部材41,42のY方向のそれぞれの長さL41X,L42Xの5%以上25%以下であることが好適である。
また、本実施形態の電子装置は、放熱特性に優れた本実施形態の回路基板1における回路部材51上に絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)素子,インテリジェント・パワー・モジュール(IPM)素子,金属酸化膜型電界効果トランジスタ(MOSFET)素子,発光ダイオード(LED)素子,フリーホイーリングダイオード(FWD)素子,ジャイアント・トランジスタ(GTR)素子等の半導体素子,昇華型サーマルプリンタヘッド素子,サーマルインクジェットプリンタヘッド素子,ペルチェ素子等の各種電子部品を搭載したことから、信頼性の高い電子装置とすることができる。
次に、本実施形態の回路基板1の製造方法の一例について、図2に示した回路基板1を用いて説明する。なお、図1に示す回路基板1を作製する場合には、下記に示す製造方法の一部を省略すればよい。
本実施形態の回路基板1は、まず、例えば、X方向およびY方向の長さがそれぞれ20mm以上200mm以下,10mm以上200mm以下であり、厚みが0.25mm以上0.65mm以下である酸化アルミニウム,窒化珪素,窒化アルミニウム,酸化ジルコニウムまたは酸化ベリリウムを主成分とするセラミックスからなる支持基板21を準備する。なお、支持基板21は後の工程で切断することによって、複数の回路基板1を作製することができる大きさのものであってもよい。
このような支持基板21の両主面に、銀−銅系合金で、チタン,ジルコニウム,ハフニウムおよびニオブから選ばれる1種以上の活性金属と、必要に応じてインジウムおよび錫から選択される1種以上の低融点金属とを含有するペースト状のろう材を、スクリーン印刷法,ロールコーター法および刷毛塗り等から選択されるいずれかの方法を用いて、金属層311,321の各厚みが10μm以上30μm以下になるように塗布する。なお、このペースト状のろう材は、例えば、銀が45質量%以上57.5質量%以下、銅が40質量%以上50質量%以下、チタン,ジルコニウム,ハフニウムおよびニオブから選択される1種以上の活性金属が合計で1.5質量%以上6質量%以下、インジウムおよび錫から選択される1種以上の低融
点金属が合計で1質量%以上5質量%以下で含有されてなる。
次に、支持基板21の両主面の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、X方向およびY方向の長さがそれぞれ30mm以上80mm以下,10mm以上80mm以下であり、厚
みが1.0mm以上10.0mm以下であり、例えば相対密度が80%以上の等方性黒鉛を主成分
とする熱伝導部材41,42を配置する。
ここで、回路部材51側の熱伝導部材41が、放熱部材52側の熱伝導部材42よりも熱伝導率を高くするようにするには、例えば、熱伝導部材41は銅またはアルミニウムが含浸された等方性黒鉛を主成分とし、熱伝導部材42はマグネシウムが含浸された等方性黒鉛を主成分とすればよい。なお、等方性黒鉛としては、平均結晶粒径が20μm以上100μm以下のも
のを用いればよい。
次に、熱伝導部材41の回路部材51側および熱伝導部材42の放熱部材52側の各主面に、銀−銅系合金で、チタン,ジルコニウム,ハフニウムおよびニオブから選ばれる1種以上の活性金属と、必要に応じてインジウムおよび錫から選択される1種以上の低融点金属とを含有するペースト状のろう材を、スクリーン印刷法,ロールコーター法および刷毛塗り等から選択されるいずれかの方法を用いて、金属層312,322の各厚みが10μm以上30μm以下になるように塗布する。
そして、熱伝導部材41の回路部材51側および熱伝導部材42の放熱部材52側の各主面の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、X方向およびY方向の長さがそれぞれ30mm以上80mm以下,10mm以上80mm以下であり、厚みは電子部品に流れる電流によって異なるが、0.1mm以上0.5mm以下の回路部材51および放熱部材52を配置する。なお、回路部材51および放熱部材52を、銅を主成分とし、平均結晶粒径が0.2mm以下である回
路部材51および放熱部材52とするにあたっては、加熱による粒成長の影響を考慮して、加熱前の平均結晶粒径が10μm以上50μm以下の回路部材51および放熱部材52を用いることが好適である。
そして、回路部材51および放熱部材52の両側から加圧し、この状態で、到達真空度が10−2Pa以下の真空雰囲気中、800〜900℃の間の温度で加熱した後に冷却することにより、回路基板1を得ることができる。
なお、熱伝導部材41と両側の金属層311,312との間の少なくとも一方にクロム,マンガン,鉄,コバルトおよびニッケルのいずれか1種を主成分とする中間層611,612を設ける場合には、中間層611,612を設ける側の金属層311,321の各主面に無電解めっき法,電解めっき法,スパッタリング法,化学気相蒸着法(CVD法(Chemical Vapor Deposition法))および化学気相反応法(CVR法(Chemical Vapor Reaction法))等から選択されるいずれかの方法により形成すればよい。
同様に、熱伝導部材42と両側の金属層321,322との間の少なくとも一方にクロム,マンガン,鉄,コバルトおよびニッケルのいずれか1種を主成分とする中間層621,622を設け
る場合には、中間層621,622を設ける側の金属層321,322の各主面に上述した方法から選択されるいずれかの方法により形成すればよい。
また、熱伝導部材41,42の側面を樹脂で被覆する場合には、その側面にエポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,ポリアクリル樹脂等の耐水性が高い樹脂を刷毛塗りし、パターニングした後に加熱することによって、厚みが20μm以上200μm以下の被覆層71,72を形成す
ればよく、特に、ポリイミド樹脂を介してエポキシ樹脂で被覆することがより好適である。なお、加熱する温度は、金属層311,312,321,322を形成した温度より低い温度にすればよい。
また、熱伝導部材41,42の側面を無機化合物で被覆する場合には、その側面に化学気相蒸着法(CVD法)を用いて、例えば、酸化珪素または酸化アルミニウムからなる厚みが
20μm以上200μm以下の被覆層71,72を形成すればよい。なお、蒸着する温度は、金属
層311,312,321,322を形成した温度より低い温度にすればよい。
また、熱伝導部材41,42の側面の少なくとも一部が支持基板21に向かって外側に広がるように傾斜している、あるいは熱伝導部材41,42の側面の少なくとも一部に、支持基板21に向かって外側に広がる段差部を有している回路基板1を得るには、熱伝導部材41,42を図8または図9に示す形状に加工しておいたものを用いればよい。
そして最後に、必要に応じて、レーザー加工,ダイシング加工および超音波加工等から選択されるいずれかの方法を用いて、支持基板21を切断することで、所定のサイズとし、支持基板21に固着したり付着したりした余分な金属を、必要に応じてブラスト加工,ホーニング加工で除去した後、超音波を用いて洗浄することで本実施形態の回路基板1を得ることができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
図1に示す形状の回路基板1を作製し、反りの値について確認を行なった。まず、X方向およびY方向の長さがそれぞれ38mm,26mmであり、厚みが0.32mmであり、窒化珪素を主成分として83.7質量%含有し、酸化エルビウム,酸化マグネシウムおよびアルミナを添加成分としてそれぞれ13.6質量%,2.4質量%,0.3質量%含有する支持基板21を用意した。そして、支持基板21の両主面の所定位置に、金属層311,321となる、銀,銅,チタンおよびインジウムの各含有量がそれぞれ50質量%,45質量%,2質量%,3質量%であるペースト状のろう材をスクリーン印刷法で塗布した。
次に、支持基板21の第1主面側の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、厚みが1.5mmであり、X方向およびY方向の長さがそれぞれ32.5mm,23mmおよび4m
m,23mmの等方性黒鉛を主成分として99質量%含有し、副成分として硫黄を1%含有する熱伝導部材41を配置した。なお、熱伝導部材41に用いる等方性黒鉛は、平均結晶粒径が50μmとした。
また、支持基板21の第2主面側の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上(図1において下側)に、厚みが0.2mmであり、X方向およびY方向の長さがそれぞれ45mm
,30mmの表1に示す成分を主成分として99.995質量%含有し、表1に示す主成分以外は亜鉛,鉄,リンの不可避不純物を含有する放熱部材52を配置して、回路部材51および放熱
部材52の両側から加圧し、この状態で、到達真空度が10−2Pa以下の真空雰囲気中、850℃で加熱した後に冷却することにより試料No.1〜12を作製した。
また、試料No.1の寸法と製造方法とを同様にし、支持基板21と回路部材51との間に、主成分として異方性黒鉛を99質量%含有し、副成分として硫黄を1%含有してなる熱伝導部材41を配置した試料No.15を作製した。なお、熱伝導部材41に用いる異方性黒鉛の平均結晶粒径は50μmとした。
さらに、支持基板21と回路部材51との間に熱伝導部材41が配置されていないこと以外は上述した方法と同様の方法で、それぞれ厚みが0.3mmで、表1に示す成分を主成分とす
る回路部材51および放熱部材52を備えた比較例の試料No.13,14を得た。
そして、式(1)により各試料の熱伝導部材41の主成分である黒鉛のBAF値を算出し、その値を表1に示した。なお、BAF値が1.1以下のものが等方性黒鉛,BAF値が1.1
より大きいものが異方性黒鉛を意味する。
また、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)に準拠して触針式の表面粗さ計を用い、各試料を構成する支持基板21の長手方向の最大高さRzを測定した。なお、測定長さ,カットオフ値,触針の先端半径および触針の走査速度はそれぞれ55mm,R+W,2μm,1mm/秒とし、この測定値を反りの値として表1に示した。この反りの値の前に−(マイナス)の符号が付されている試料は、第2主面側に向かって凹状に反りが発生していることを示し、反りの値の前に符号が付されていない試料は、第1主面側に向かって凸状に反りが発生していることを示す。
試料No.1〜12は、支持基板21と回路部材51との間に、BAF値が1.1以下である等
方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41が配置されていることから、支持基板21と回路部材51との間に、等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41が配置されていない試料No.13,14や、支持基板21と回路部材51および放熱部材52との間に、BAF値が1.1より大きい異
方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41を配置した試料No.15に比べて、支持基板21に生じる反りを小さくできることがわかった。
また、試料No.1〜3において、等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41のBAF値が小さいほど、支持基板21に生じる反りが小さくなることがわかった。
図2に示す形状の回路基板1を作製し、反りの値について確認を行なった。まず、実施例1と同様の支持基板21を用意し、支持基板21の両主面の所定位置に、金属層311,321となる、銀,銅,チタンおよびインジウムの各含有量がそれぞれ50質量%,45質量%,2質量%,3質量%であるペースト状のろう材をスクリーン印刷法で塗布した。
次に、支持基板21の第1主面側の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、厚みが1.5mmであり、X方向およびY方向の長さがそれぞれ32.5mm,23mmおよび4m
m,23mmの等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41を配置した。
また、支持基板21の第2主面側の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上(図2
において下側)に、厚みが1.5mmであり、X方向およびY方向の長さがそれぞれ45mm
,30mmの等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材42を配置した。なお、熱伝導部材41,42を形成する等方性黒鉛の相体密度はいずれも93%とした。なお、熱伝導部材41,42に用いる等方性黒鉛は、平均結晶粒径が50μmのものを用いた。
次に、熱伝導部材41の回路部材51側および熱伝導部材42の放熱部材52側の各主面に、金属層312,322となる、銀,銅,チタンおよびインジウムの各含有量がそれぞれ50質量%,45質量%,2質量%,3質量%であるペースト状のろう材をスクリーン印刷法で塗布した。
そして、熱伝導部材41の回路部材51側の主面の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、厚みが0.2mmであり、X方向およびY方向の長さがそれぞれ32.5mm,23m
mおよび4mm,23mmの表2に示す成分を主成分として99.995質量%含有し、表2に示す主成分以外は亜鉛,鉄,リンの不可避不純物を含有する回路部材51を配置した。また、
熱伝導部材42の放熱部材52側の主面の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上(図2において下側)に、厚みが0.2mmであり、X方向およびY方向の長さがそれぞれ45m
m,30mmの表2に示す成分を主成分として99.995質量%含有し、表2に示す成分以外は亜鉛,鉄,リンの不可避不純物を含有する放熱部材52を配置した。
そして、回路部材51および放熱部材52の両側から加圧し、この状態で、到達真空度が10−2Pa以下の真空雰囲気中、850℃で加熱した後に冷却することにより、試料No.16
〜29を得た。
また、試料No.16の寸法と製造方法とを同様にし、支持基板21と回路部材51および放熱部材52との間に、主成分として異方性黒鉛を99質量%含有し、副成分として硫黄を1%含有してなる熱伝導部材41,42を配置した試料No.30を作製した。なお、熱伝導部材41,42に用いる異方性黒鉛は、平均結晶粒径が50μmとした。
さらに、支持基板21と回路部材51および放熱部材52との間に、熱伝導部材41,42が配置されていないこと以外は上述した方法と同様の方法で、それぞれ厚みが0.3mmで、表2
に示す成分を主成分とする回路部材51および放熱部材52を備えた比較例の試料No.28,29を得た。
そして、式(1)により各試料の熱伝導部材41,42のそれぞれ主成分である黒鉛のBAF値を算出し、その値を表2に示した。ここで、BAF値が1.1以下のものが等方性黒鉛
,BAF値が1.1より大きいものが異方性黒鉛を意味する。
また、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)に準拠して触針式の表面粗さ計を用い、各試料を構成する支持基板21の長手方向の最大高さRzを測定した。なお、測定長さ,カットオフ値,触針の先端半径および触針の走査速度はそれぞれ55mm,R+W,2μm,1mm/秒とし、この測定値を反りの値として表2に示した。この反りの値の前に−(マイナス)の符号が付されている試料は、第2主面側に向かって凹状に反りが発生していることを示し、反りの値の前に符号が付されていない試料は、第1主面側に向かって凸状に反りが発生していることを示す。
試料No.16〜27は、支持基板21と回路部材51および放熱部材52との間に、等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41,42が配置されていることから、支持基板21と回路部材51お
よび放熱部材52との間に、等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41,42が配置されていない試料No.28,29や、支持基板21と回路部材51および放熱部材52との間に、異方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41,42を配置した試料No.30に比べて、支持基板21に生じる反りを小さくできることがわかった。
また、試料No.16〜27と、実施例1で示した支持基板21と放熱部材52との間に熱伝導部材42が配置されていない試料No.1〜12とを、支持基板21および回路部材51の成分、熱伝導部材41のBAF値が対応する試料同士で比べると、試料No.16〜27の方が支持基板21に生じる反りが小さくなることがわかった。
また、試料No.16,17,18において、等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41,42の
BAF値が小さいほど、支持基板21に生じる反りが小さくなることがわかった。
次に、熱伝導部材41と熱伝導部材42との熱伝導率の違いによる熱抵抗の差の確認を行なった。まず、表3に示す成分を含浸した熱伝導部材41および金属成分を含浸していない熱伝導部材42を用意し、JIS R 1611−1997に準拠して熱伝導率を求めた。そして、これらの熱伝導部材41,42を用いて、各部材の寸法および作製方法は実施例2の試料の作製時と同様にして銅を主成分とする回路部材51および放熱部材52を備えてなる試料No.31〜34を得た。
そして、各試料の回路部材51の主面に単位面積当たり40W/m2の熱量を与えたものとみなしたシミュレーションを行ない、各試料の熱抵抗を推定した。その推定値を表3に示す。
表3に示す通り、試料No.32〜34は、回路部材51側の熱伝導部材41の熱伝導率が、放熱部材52側の熱伝導部材42よりも高いことから、熱伝導部材41,42のそれぞれの熱伝導率が等しい試料No.31よりも熱抵抗が低く、電子部品が発生した熱を効率よく拡散して速やかに逃がすことができることがわかった。また、試料No.34は、熱抵抗の値が最も低く、含浸させる金属成分が銅であることにより、放熱特性を高められることがわかった。
次に、中間層611,612を設けることによる接合強度を確認するため、図3に示す回路基板1を作製し、回路部材51の引きはがし強さの測定を行なった。まず、実施例2と同様の支持基板21を用意し、支持基板21の両主面の所定位置に、金属層311,321となる、銀,銅,チタンおよびインジウムの各含有量がそれぞれ50質量%,45質量%,2質量%,3質量%であるペースト状のろう材をスクリーン印刷法で塗布した。
次に、支持基板21の第1主面側の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、無電解めっき法により、表4に示す成分の含有量が99質量%である中間層611を設けた。そ
して、主成分として等方性黒鉛を99質量%含有し、副成分として硫黄を1%含有する熱伝導部材41,42を用意し、中間層611上および支持基板21の第2主面側の所定位置に塗布さ
れたペースト状のろう材の上に、それぞれ熱伝導部材41,42を配置した。
次に、熱伝導部材41の回路部材51側の主面に、無電解めっき法により、表4に示す成分の含有量が99質量%である中間層612を設けた。そして、中間層612上および熱伝導部材42の放熱部材52側の主面に、金属層312,322となる、銀,銅,チタンおよびインジウムの各含有量がそれぞれ50質量%,45質量%,2質量%,3質量%であるペースト状のろう材をスクリーン印刷法で塗布し、銅を主成分とする回路部材51および放熱部材52を配置して、回路部材51および放熱部材52の両側から加圧し、この状態で、到達真空度が10−2Pa以下の真空雰囲気中、850℃で加熱した後に冷却することにより、回路基板1である試料N
o.36〜40を得た。なお、試料No.35は、実施例2の試料No.16と同様に作製したものであり、中間層611,612を設けていない。
そして、回路部材51の引きはがし強さをJIS C 6481−1996に準拠して測定することにより、熱伝導部材41に対する回路部材51の接合強度を評価した。なお、引きはがし強さを測定する前にエッチングにより、熱伝導部材41および回路部材51の各幅を10mmにした。
表4に示す通り、試料No.36〜40は、熱伝導部材41と金属層311,312との間にそれぞれクロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケルを主成分とする中間層611,612を設けてなることから、等方性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41と金属層311,312とのぬれ性が良好となり、密着強度が高くなり、中間層611,612が設けられていない試料No.35よりも回路部材51の引きはがし強さの値が大きく、熱伝導部材41に対する回路部材51の接合強度が高いことがわかった。
次に、被覆層71,72の有無による水分吸収率の確認を行なった。まず、各部材の寸法および作製方法は実施例2の試料の作製時と同様にして銅を主成分とする回路部材51および放熱部材52を備えてなる回路基板1を複数作製した。
そして、表5に示す成分および形成方法により、図6に示すように金属層311,熱伝導
部材41,金属層312および回路部材51の側面と、金属層321,熱伝導部材42,金属層322お
よび放熱部材52の側面とに被覆層71,72をそれぞれ形成することにより、樹脂または無機化合物で被覆されている回路基板1である試料No.42〜46を得た。なお、試料No.41は実施例2の試料No.16と同様に作製したもので被覆層71,72を形成していない。
そして、110℃±5℃の恒温器内で各試料を乾燥させた後、デシケータで放冷し、各試
料の質量を測定した。得られた測定値を乾燥質量W1とした。その後、各試料を煮沸槽の水面下に沈め、3時間煮沸し、室温まで放冷した。次に、各試料を水中から取り出し、湿ったガーゼで手早く表面をぬぐい、水滴を除去した後、各試料の質量を測定した。得られた測定値を飽水質量W2とし、以下の式(2)を用いて水分吸収率(W.A)を算出し、算出した値を表5に示した。
W.A=(W2−W1)/W1×100 (%)・・・(2)
表5に示す通り、試料No.42〜46は、金属層311,熱伝導部材41,金属層312および回路部材51の側面と、金属層321,熱伝導部材42,金属層322および放熱部材52の側面とが樹脂または無機化合物で被覆されていることから、被覆されていない試料No.41よりも水分吸収率(W.A)が低く、電子部品を搭載する回路部材51を備えてなる回路基板1として電子装置で用いるときに、熱伝導部材41,42の側面から空気中に含まれる水蒸気が浸入しにくくなるので、水蒸気の浸入による回路の短絡を抑制できることがわかった。
次に、図7に示す形状の回路基板1を作製し、ヒートサイクル試験を行なった。まず、X方向およびY方向の長さがそれぞれ60mm,36mmであり、厚みが0.32mmであり、窒化珪素を主成分として83.7質量%含有し、酸化エルビウム,酸化マグネシウムおよびアルミナを添加成分としてそれぞれ13.6質量%,2.4質量%,0.3質量%含有する支持基板21を用意した。そして、支持基板21の両主面の所定位置に、金属層311,321となる、銀,銅,チタンおよびインジウムの各含有量がそれぞれ50質量%,45質量%,2質量%,3質量%となるペースト状のろう材をスクリーン印刷法で塗布した。
次に、支持基板21の第1主面側の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、厚みが1.5mmであり、X方向およびY方向の長さがそれぞれ17mm,15mmの6個の等方
性黒鉛を主成分とする熱伝導部材41を2行3列で配置した。
また、支持基板21の第2主面側の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、厚みが1.5mmであり、X方向およびY方向の長さがそれぞれ18.5mm,16mmの等方性黒
鉛を主成分とする熱伝導部材42を2行3列で配置した。
次に、熱伝導部材41の回路部材51側および熱伝導部材42の放熱部材52側の各主面に、金属層312,322となる、銀,銅,チタンおよびインジウムの各含有量がそれぞれ50質量%,45質量%,2質量%,3質量%であるペースト状のろう材をスクリーン印刷法で塗布した。
そして、熱伝導部材41の回路部材51側の主面の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、厚みが0.2mmであり、X方向およびY方向の長さがそれぞれ17mm,15mm
の銅を主成分とする6個の回路部材51を2行3列で配置した。また、熱伝導部材42の放熱部材52側の主面の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、厚みが0.2mmであ
り、X方向およびY方向の長さがそれぞれ18.5mm,16mmの銅を主成分とする6個の放熱部材52を2行3列で配置した。なお、熱伝導部材41,42に用いる等方性黒鉛は、平均結晶粒径が50μmのものを用いた。
そして、回路部材51および放熱部材52の両側から加圧し、この状態で、到達真空度が10−2Pa以下の真空雰囲気中、850℃で加熱した後に冷却することにより、図7に示すよ
うに、回路部材51および放熱部材52がそれぞれ対応して配置された回路基板1である試料No.47を得た。
また、試料No.47が6組の回路部材51および放熱部材52がそれぞれ対応して配置されているのに対し、試料No.48として、回路基板1の第1主面側の構成は、試料No.47と同様であり、第2主面側の構成が、試料No.47の6個の熱伝導部材42および放熱部材52と体積が同じとなる、X方向およびY方向の長さがそれぞれ55.5mm,32mmの単独(1個)の熱伝導部材42および放熱部材52を備えてなる回路基板1を作製した。
そして、各試料のヒートサイクル試験を行ない、支持基板21に生じるクラックの有無を
3000サイクル以降100サイクル経過する毎に、蛍光探傷法を用いて、光学顕微鏡で倍率を20倍として確認した。なお、室温から−45℃に降温して15分保持してから、昇温して125℃で15分保持した後、室温まで降温するというサイクルを1サイクルとした。クラックが支持基板21に始めて確認されたサイクル数を表6に示す。
表6に示す通り、試料No.47は、6組の回路部材51および放熱部材52がそれぞれ対応して配置されていることから、6個の放熱部材と体積が同じである単独の放熱部材52が配置された試料No.48の回路基板1よりも、ヒートサイクル試験で良好な結果を示しており、試料No.47のような構成とすることにより、回路部材51上に搭載される半導体素子等の電子部品の動作中に生じた熱が繰り返し支持基板21に与えられたときの残留応力は緩和されやすいので、支持基板21にクラックが生じるのを抑制できることがわかった。
次に、図8および図9に示す形状の回路基板1を作製し、ヒートサイクル試験を行なった。まず、実施例6と同様の支持基板21を用意し、支持基板21の両主面に、金属層311,321となる、銀,銅,チタンおよびインジウムの各含有量がそれぞれ50質量%,45質量%,2質量%,3質量%であるペースト状のろう材をスクリーン印刷法で塗布した。
次に、支持基板21の第1主面側および第2主面側のそれぞれの所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、図8,9に示す形状であり,厚みが1.5mmの等方性黒鉛を主
成分とする熱伝導部材41,42を2行3列で配置した。
次に、熱伝導部材41の回路部材51側および熱伝導部材42の放熱部材52側の各主面に、金属層312,322となる、銀,銅,チタンおよびインジウムの各含有量がそれぞれ50質量%,45質量%,2質量%,3質量%であるペースト状のろう材をスクリーン印刷法で塗布した。
そして、熱伝導部材41の回路部材51側の主面の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、厚みが0.2mmであり、X方向およびY方向の長さがそれぞれ12.5mm,10m
mの銅を主成分とする6個の回路部材51を配置した。また、熱伝導部材42の放熱部材52側の主面の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、厚みが0.2mmであり、X方
向およびY方向の長さがそれぞれ13.5mm,11mmの銅を主成分とする6個の放熱部材52を配置した。
そして、回路部材51および放熱部材52の両側から加圧し、この状態で、到達真空度が10−2Pa以下の真空雰囲気中、850℃で加熱した後に冷却することにより、図8,9に示
す形状の回路基板1である試料No.50,51を得た。なお、試料No.49は、実施例6で作製した試料No.47と同様に作製したものであり、これらの試料を用いて実施例6と同様のヒートサイクル試験を行ない、クラックが支持基板21に始めて確認されたサイクル数を表7に示す。
表7に示す通り、試料No.50,51は、熱伝導部材41,42の側面の少なくとも一部が支持基板21に向かって外側に広がるように、傾斜しているまたは熱伝導部材41,42の側面の少なくとも一部に支持基板21に向かって外側に広がる段差部を有していることから、熱伝導部材41,42が傾斜や段差部を有していない試料No.49よりもヒートサイクル試験で良好な結果を示しており、回路部材51上に搭載される半導体素子等の電子部品の動作中に生じた熱が回路部材51側から支持基板21を通って放熱部材52側へより速やかに進むので、残留応力が支持基板21に残ることが少なくなり、支持基板21にクラックが生じるのを抑制できることがわかった。
図2に示す形状の回路基板1を作製し、放熱特性を評価した。まず、実施例2で用いた支持基板21と同じ支持基板21を用意した。そして、支持基板21の両主面の所定位置に、金属層311,321となる、銀,銅,チタンおよび錫およびモリブデンの各含有量がそれぞれ51.9質量%,40質量%,2.5質量%,2.6質量%,3質量%であるペースト状のろう材をスクリーン印刷法で塗布した。
次に、支持基板21の第1主面側の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、厚みが1.5mmであり、X方向およびY方向の長さがそれぞれ32.5mm,23mmおよび4m
m,23mmの等方性黒鉛を主成分とし、平均結晶粒径が試料毎に異なる熱伝導部材41を配置した。
また、支持基板21の第2主面側の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上(図2において下側)に、厚みが1.5mmであり、X方向およびY方向の長さがそれぞれ45mm
,30mmの等方性黒鉛を主成分とし、平均結晶粒径が試料毎に異なる熱伝導部材42を配置した。なお、熱伝導部材41,42を構成する等方性黒鉛の相体密度はいずれも93%とした。
そして、実施例2で示した方法と同じ方法で、それぞれ銅を主成分とする回路部材51および放熱部材52が備えられた回路基板1を作製した後、回路部材51上に半導体素子を搭載した電子装置である試料No.52〜58を得た。
そして、熱伝導部材41,42をそれぞれ構成する等方性黒鉛の平均結晶粒径は、走査型電子顕微鏡を用い、倍率を100倍として、面積が1mm2である断面を測定範囲とし、JI
S R 1670−2006を準用して求め、表8に示した。
また、半導体素子に30Aの電流を流し、電流を流してから5分後に半導体素子の表面温度をサーモグラフィーで測定し、その値を表8に示し、回路基板21の放熱特性を評価した。
また、各試料の熱伝導部材41,42をそれぞれ構成する等方性黒鉛の平均結晶粒径と同じ
平均結晶粒径である等方性黒鉛からなる幅,厚さがともに20mm、長さが100mmの角棒
からなる試験片を作製し、JIS R 7222−1997に準拠して、荷重速度を50N/秒とし
て3点曲げ強度を測定し、その値を表8に示し、等方性黒鉛の機械的特性を評価した。
表8に示す通り、熱伝導部材41,42を構成する等方性黒鉛の平均結晶粒径が20μm以上100μm以下である試料No.53〜57は、半導体素子の表面温度を71〜97℃と低い温度にすることができ、また等方性黒鉛の3点曲げ強度が23〜43MPaと高い幾何的強度であることがわかった。したがって、試料No.53〜57は放熱特性,機械的特性ともに優れた回路基板であることがわかった。
図2に示す形状の回路基板1を作製し信頼性を評価した。
まず、実施例2で用いた支持基板21と同じ支持基板21を用意した。そして、支持基板21の両主面の所定位置に、金属層311,321となる、実施例7で用いたペースト状のろう材と同じペースト状のろう材をスクリーン印刷法で塗布した。
次に、支持基板21の第1主面側の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に、厚みが1.5mmであり、X方向およびY方向の長さがそれぞれ32.5mm,23mmおよび4m
m,23mmの等方性黒鉛を主成分とし、平均結晶粒径が50μmである熱伝導部材41を配置した。
また、支持基板21の第2主面側の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上(図2において下側)に、厚みが1.5mmであり、X方向およびY方向の長さがそれぞれ45mm
,30mmの等方性黒鉛を主成分とし、平均結晶粒径が50μmである熱伝導部材42を配置した。なお、熱伝導部材41,42を構成する等方性黒鉛の相体密度はいずれも93%とした。
そして、実施例2で示した方法と同じ方法で、それぞれ銅を主成分とする回路部材51および放熱部材52が備えられた回路基板1を作製した後、回路部材51上に半導体素子を搭載した電子装置である試料No.59〜62を得た。
そして、実施例6に示したヒートサイクル試験を行ない、蛍光探傷法を用いて、クラックが熱伝導部材41,42のいずれかに始めて確認されたサイクル数を表9に示した。
なお、回路部材51および放熱部材52の各厚みは表9に示す通りである。
表9に示す通り、試料No.59〜61は、回路部材51および放熱部材52が金属からなり、回路部材51および放熱部材52の各厚みが0.3mm以下であることから、熱伝導部材41,42
はそれぞれ回路部材51,放熱部材52からの拘束を受けにくくなっているので、熱伝導部材41,42にクラックが生じるのを抑制できることがわかる。
図2に示す形状の回路基板1を作製し、はんだのぬれ性を評価した。まず、実施例2で用いた支持基板21と同じ支持基板21を用意した。そして、実施例7で用いたペースト状のろう材と同じペースト状のろう材をスクリーン印刷法で塗布した。
次に、実施例2で用いた熱伝導部材41,42と同じ熱伝導部材41,42をそれぞれ支持基板21の第1主面側、第2主面側の所定位置に塗布されたペースト状のろう材の上に配置した。
そして、実施例2で示した方法と同じ方法で、それぞれ銅を主成分とし、平均結晶粒径が表10に示す回路部材51および放熱部材52が備えられた回路基板1である試料No.63〜65を得た。
そして、共晶半田が265±10℃で溶融している浴に試料No.63〜65をそれぞれ20秒間
浸漬した後、各試料を引き上げ、回路部材51および放熱部材52の支持基板21と反対側の各主面が濡れている面積の比率を表10に示した。
なお、共晶半田は錫および鉛がそれぞれ63質量%,37質量%からなる半田とし、主面が濡れている面積は、光学顕微鏡を用い、倍率を10倍として観察し、その比率を表10に示した。
表10に示す通り、試料No.63,64は、回路部材および放熱部材の平均結晶粒径がいずれも0.2mm以下であることから、回路部材51および放熱部材52を構成する各成分の結晶
が小さくなっているので、熱伝導層312,322を構成する成分が、回路部材51または放熱部材52の支持基板21側と反対の表面に流出しにくくなっているため、電子部品およびヒートシンクをはんだによって接合する場合、ぬれ性を高く維持できる。
次に、主成分の違いによる支持基板21の熱伝導率および3点曲げ強度の確認を行なった。酸化アルミニウム,窒化珪素,窒化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムをそれぞれ主成分とする支持基板21を、主成分および添加物を表11に示す割合で作製して試料No.66〜69を得た。また、JIS R 1611−1997およびJIS R 1601−2008(ISO 17565:2003(MOD))に準拠して、それぞれ各試料の熱伝導率および3点曲げ強度を測
定した。これらの測定値を表11に示す。
表11に示す通り、試料No.66〜68は,支持基板21がそれぞれ酸化アルミニウム,窒化珪素,窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスからなることから,熱伝導率が34W/(m・K)以上、3点曲げ強度が310MPa以上であり、支持基板21に好適である熱的
特性および機械的特性を満足していることがわかった。