JP4910256B2 - ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル樹脂組成物に関し、さらに詳しくは合成樹脂製でありながら陶器調の重量感、質感、光沢を有し、さらに耐薬品性、耐衝撃性に優れた成形品を得ることができるポリエステル樹脂組成物およびその成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
陶器調光沢を有する樹脂成形品は、食器、洗面器具、植木鉢等の各種容器類、床材、壁材、洗面ボウル等の住宅機器類、及びテーブルトップ、額縁、人形等の装飾品類等の分野において広く利用されている。
【0003】
このような陶器調の光沢や重量感、質感を有する樹脂組成物の検討がなされているが陶器に代わる樹脂組成物は残念ながら少ない。例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂及び酸化亜鉛からなる組成物(特開平3−185052号公報)の提案は光沢や耐衝撃性が劣り、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂及び硫酸バリウムからなる組成物(特公平7−13182号公報)の提案は光沢及び耐衝撃性がかなり良いが、耐衝撃性等の点において、実用上はまだ不満足な水準である。また、耐衝撃性を改良する方法としてポリエステル樹脂、熱可塑性エラストマー、硫酸バリウムからなる組成物(特開平4−506382号公報)の提案がなされているが、耐衝撃性は改善されるものの光沢等の表面外観が十分ではなく、表面外観(光沢)と耐衝撃性の双方を兼ね備えた陶器代替え材料の開発が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来の陶器製に代わる容器組成物の欠点を解消し、合成樹脂製でありながら優れた光沢、耐衝撃性、耐薬品性を有し、陶器調外観を有する樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。
【0005】
すなわち、本発明は、組成物全体を100重量%として、下記(a)12〜64重量%、下記(b)6〜48重量%および下記(c)70〜20重量%含有してなるポリエステル樹脂組成物およびそれを成形してなる、陶器調外観が要求される用途に使用される成形品である。
(a)ポリブチレンテレフタレート樹脂
(b)ポリブチレンテレフタレート樹脂よりも結晶化速度の遅いポリエステル樹脂又はポリカーボネート樹脂
(c)硫酸バリウム全体を100重量%として、粒径が0.3μm以上の粒子97〜60重量%、0.3μm未満の粒子3〜40重量%を含有する硫酸バリウム
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において(a)成分として用いるポリブチレンテレフタレート樹脂の配合量は樹脂組成物全体の12〜64重量%、好ましくは15〜56重量%である。また、本発明において使用されるポリブチレンテレフタレート樹脂としては25℃におけるo−クロルフェノールで測定した固有粘度が0.36〜1.60dl/g、特に0.52〜1.35dl/gの範囲にあることが好ましい。
【0007】
本発明で用いる(b)成分のうち、ポリブチレンテレフタレート樹脂よりも結晶化速度の遅いポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ジオール成分がエチレングリコール残基、シクロヘキサンジメタノール残基及び、ジカルボン酸成分がテレフタル酸残基を構成成分とするポリエステル共重合体が好ましい。また、非晶性樹脂としてはポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましい。これら樹脂は1種以上で用いることが可能である。なかでもポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることが最も好ましい。
【0008】
本発明における(b)成分の配合量は樹脂組成物全体の6〜48重量%、好ましくは9〜40重量%である。(b)成分の配合量が少なすぎると光沢が低下し、多すぎると耐衝撃性が低下するため好ましくない。
【0009】
なお、上述のポリエステル樹脂としてはジカルボン酸成分或いはグリコール成分の一部を他の共重合成分で置き換えたものでもよい。共重合可能なジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類が挙げられる。共重合可能なジグリコール成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等が挙げられる。
【0010】
本発明において(c)成分として使用される硫酸バリウムとしては天然に産したものの粉砕物および公知の合成法により得られるものを使用できる。樹脂組成物全体に対する硫酸バリウムの配合割合は70〜20重量%であるが、65〜25重量%であることが好ましい。また、本発明で用いる硫酸バリウムは、硫酸バリウム全体を100重量%としたときに、粒径0.3μm以上の粒子が97〜60重量%、0.3μm未満の粒子が3〜40重量%である粒度分布を有するものである。硫酸バリウムの粒子径は、電子顕微鏡写真から個々の粒子の粒子径を求め、累積粒径グラフを作り前記粒径以上もしくは未満の粒子の存在率を求める。電子顕微鏡写真は40,000倍に拡大されたものとする。なお、硫酸バリウムは必ずしも球状ではない。そこで、写真内に特定の方向を定め、その方向に、写真内の各粒子を投影した場合の長さを粒径と呼ぶことにする。また、測定する粒子数は400個以上とする。本発明においては、用いる硫酸バリウムの累積粒径グラフが、3点以上の変曲点を持っていることが望ましく、更に望ましい変曲点数は3点である。このように変曲点数を3点以上持つ硫酸バリウムを得る手法の一例として、平均粒子径の異なる2種類以上の硫酸バリウムを混合する方法が挙げられる。例えば硫酸バリウムとしては平均粒径が0.4〜2μmの範囲にあるものと平均粒径が0.01〜0.3μmの範囲にあるものを併用することが好ましく、特に平均粒径が0.5〜1μmの範囲にあるものと、平均粒径が0.02〜0.1μmの範囲にあるものを併用することが好ましい。このように平均粒径の異なる2種類以上の硫酸バリウムを混合することによって、表面外観、流動性、耐衝撃性が改善される。
【0011】
ほとんどの用途では、硫酸バリウムは存在する充填材全体の100重量%の量であるが、用途によっては、硫酸バリウム総含有量の50重量%まで、好ましくは20重量%までを、ガラス繊維、ガラスビーズ、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレススチール繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維などの金属繊維、石膏繊維、セラミック繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ほう酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカーなどの短繊維(チョップドストランド)又は/及び長繊維(ロービング)、及びマイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、合成雲母などの板片状、粉末状又は粒状のもので置き換えることができる。
【0012】
本発明のポリエステル樹脂組成物で陶器製の代わりとなる容器を作製する場合、成形性、耐熱性に代表される二次要求特性を満足せしめるため、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を添加してもよい。例えば、耐候剤(フェノール系、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、ステアラミド等)、顔料(カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、等の安定剤を添加してもよい。
【0013】
本発明に使用されるポリエステル樹脂組成物の混合方法は、通常用いられている溶融混練方法により容易に調製することができる。混練機としては、例えばエクストルーダー、バンバリーミキサー、ロールニーダーなどを用いることができるが、なかでもエクストルーダーにより250〜280℃の温度範囲で溶融混練することが好ましい。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、組成物を250℃で30分間熱処理したときの加熱減量が0.5重量%以下であることが、ガスくもりの発生が抑制され、外観に極めて優れた成形品が得られる点で好ましく、特に0.3重量%以下であることが好ましい。
【0015】
加熱減量は、約100gの溶融混練により得られた樹脂ペレットを予め130℃の温度条件下で3時間乾燥させた後、予め乾燥させたアルミカップに100g±1gの精度で量り入れ、250℃で30分ギアオーブン中で処理し、重量測定により求めた値である。
【0016】
かかる組成物を得るためには、(a)、(b)成分として、加熱により揮発ガス発生の少ないものを用いて配合に供することが好ましい。
【0017】
例えば、前記(a)成分として用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、配合に供するペレットの状態で100℃で30分間熱処理したときに発生する揮発ガスの量が、水分を除いて50ppm以下、特に30ppm以下であるものを用いることが好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、液相重合のみで得られたペレットを140〜170℃の窒素雰囲気下で2〜8時間加熱乾燥することにより揮発ガスを減少させることができるが、ペレットを常圧・窒素雰囲気下または真空下で170〜210℃の温度で固相重合したものが揮発ガス抑制の面で好ましい。
【0018】
前記(b)成分として特に好ましく使用されるポリエチレンテレフタレート樹脂の場合には、配合に供するペレットの状態で100℃で30分間熱処理したときに発生する揮発ガスの量が、水分を除いて40ppm以下、特に20ppm以下であることが成形品の外観上好ましい。また、25℃におけるo−クロルフェノールで測定した固有粘度は0.3〜1.2、特に0.5〜1.0の範囲にあることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート樹脂は、液相重合のみで得られたペレットを140〜180℃の窒素雰囲気下で2〜8時間加熱乾燥することにより揮発ガスを減少させることができるが、ペレットを常圧・窒素雰囲気下または真空下で190〜240℃の温度で固相重合したものが揮発ガス抑制の面で好ましい。
【0019】
なお、揮発ガス発生量は、ガスクロマトグラフィーを用いて測定することが可能である。すなわち、試料をガスクロマトグラフィーのサンプラーに入れ、加熱温度100℃、加熱時間30分、キャリアガス(ヘリウム)を流してガスを採取する。採取したガスは−30℃に冷却することによりトラップし、これを350℃で熱脱着してからガスクロマトグラフィーに導入する。揮発ガス発生量は、ガスクロマトグラムのピークを帰属し、水分を除く各ピークを積算することにより求めるものとする。
【0020】
かくして得られるポリエステル樹脂組成物は、外観、耐衝撃性に優れるため、食器、洗面器具、植木鉢等の各種容器類、床材、壁材、洗面ボウル、浴槽等の住宅機器類、及びテーブルトップ、額縁、人形等の装飾品類等、陶器調外観が要求される用途に極めて実用的である。
【0021】
【実施例】
以下に説明する実施例及び比較例における評価は次の方法によって行った。
【0022】
[結晶化速度]
DSC(パーキン・エルマ社製示差走査熱量計)を用い20℃/分の昇温・降温速度にてTm(融点)、Tc(結晶化温度)を測定しTm−Tcにて結晶化速度を測定した。Tm−Tcの差が大きい程結晶化速度が遅い。
【0023】
Tmが観測されてもTcが観測されない場合はさらに結晶化速度が遅い。
【0024】
[加熱減量]
加熱減量は、溶融混練により得られた樹脂ペレット約100gを予め130℃の温度条件下で3時間乾燥させた後、予め乾燥させたアルミカップに組成物のペレット100g±1gの精度で量り入れ、250℃で30分ギアオーブン中で処理し、重量測定し、減量(重量%)を求めた。
【0025】
[光沢性]
グロスメーターを使用してテストピース表面の光沢度(%)を測定した。光沢度が高いほど陶器調光沢を有することを表す。
【0026】
[耐衝撃性]
ASTM D256に準拠してノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。テストピースの幅は6.4mmである。
【0027】
[耐薬品性]
テストピース表面にマニュキア液(大阪資生堂(株)製ヌーヴネイルカラー)及びヘアトニック液(大阪資生堂(株)製ブラバスヘアリキッド)を塗布し、乾燥しないようシャーレ皿をかぶせて24時間放置して表面変化の有無を評価した。
【0028】
[硫酸バリウムの粒径]
原料はそのまま、組成物中の硫酸バリウムの粒径を測定する場合は、溶融混練後の樹脂ペレットから樹脂を加熱焼却分離した後、電子顕微鏡を用いて40,000倍に拡大し写真撮影した。該写真内に特定の方向を定め、その方向に各粒子を投影した場合の長さを測定した。写真内に写り込んでいる粒子全てを測定対象としたので測定個数は測定対象によって異なるが、400個以上になるまで写真数を増やした。全データの平均を求め、平均粒径とした。
【0029】
次いで、全てのデータを対数とし、粒径0.01μmから200μmを対数化した後均等に100分割し、各分割区域内の粒子個数を求めて累積粒径グラフを作成した。粒度分布は、この累積粒径グラフから求めた。
【0030】
実施例1〜6及び比較例1,2
下記7種類の材料を用意した。
A PBT樹脂:ポリブチレンテレフタレート(固相重合品)
固有粘度0.8の液相重合ポリマを190℃、常圧の条件で窒素雰囲気下7時間固相重合を行った。
【0031】
揮発ガス発生量:6.1ppm
固有粘度 :1.1
Tm223℃、Tc187℃、Tm−Tc:36℃
B PET樹脂:ポリエチレンテレフタレート(固相重合品)
固有粘度0.6の液相重合ポリマを220℃、常圧の条件で窒素雰囲気下8時間固相重合を行った。
【0032】
揮発ガス発生量:4.5ppm
固有粘度 :0.8
Tm253℃、Tc195℃、Tm−Tc:58℃
C 2,6PEN樹脂:ポリエチレンナフタレート樹脂(液相重合品)
揮発ガス発生量:12.8ppm
固有粘度 :0.6
Tm261℃、Tc検出されず
D PCT樹脂:ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート共重合樹脂(イーストマンコダック社製:DN003)
揮発ガス発生量:16.4ppm
固有粘度 :0.8
Tm、Tcとも検出されず
E PC樹脂:ポリカーボネート樹脂 (三菱エンジニアリングプラスチックス社製:H3000)
揮発ガス発生量:15.5ppm
Tm、Tcとも検出されず
F 硫酸バリウム(堺化学工業(株)「B−55」平均粒径=0.66μm)。
G 硫酸バリウム(堺化学工業(株)「BF−20」平均粒径=0.03μm)。
【0033】
これら7種類の材料A〜Gをそれぞれ表1および表2に記載した配合割合でヘンシェルミキサーに供給して混合した後、2軸ベント式押出機を使用してバレル設定温度は250℃、スクリュー回転数は200rpmの条件で溶融混練押出しながらペレタイズして樹脂組成物を製造した。次に、樹脂組成物をあらかじめ乾燥してから、シリンダー設定温度260℃、金型温度80℃、射出圧力30MPaの条件で日精樹脂工業製の60トン射出成形機を使用し試験片を成形した。これらテストピースの成形品光沢、耐衝撃性及び耐薬品性をそれぞれ測定した結果、表1及び表2の結果が得られた。
【0034】
これらの試験結果から明らかなように、本発明のポリエステル樹脂組成物からなる成形品は、陶器調外観を有し、従来の硫酸バリウムを配合したポリエステル樹脂組成物からなる成形品と比較して、陶器調光沢性、耐衝撃性、耐薬品性がバランスよく優れていることが分かる。
【0035】
【表1】
Figure 0004910256
【0036】
【表2】
Figure 0004910256
【0037】
【発明の効果】
上述したように、本発明のポリエステル樹脂組成物は、陶器の持つ重量感、質感、光沢を有すると共に、耐衝撃性、耐薬品性を備えた優れた成形品を得ることができる。

Claims (5)

  1. 組成物全体を100重量%として、下記(a)12〜64重量%、下記(b)6〜48重量%および下記(c)70〜20重量%を含有してなるポリエステル樹脂組成物。
    (a)ポリブチレンテレフタレート樹脂
    (b)ポリブチレンテレフタレート樹脂よりも結晶化速度の遅いポリエステル樹脂又はポリカーボネート樹脂
    (c)硫酸バリウム全体を100重量%として、粒径0.3μm以上の粒子を97〜60重量%、0.3μm未満の粒子を3〜40重量%含有する硫酸バリウム
  2. ポリブチレンテレフタレート樹脂よりも結晶化速度の遅いポリエステル樹脂又はポリカーボネート樹脂(b)がポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ジオール成分としてエチレングリコール残基、シクロヘキサンジメタノール残基及び、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸残基を構成成分とするポリエステル共重合体およびポリカーボネート樹脂から選ばれる1種以上である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
  3. 250℃で30分間熱処理したときの組成物の加熱減量が0.5重量%以下である請求項1または2記載のポリエステル樹脂組成物。
  4. 陶器調外観が要求される用途に使用されるものである請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を成形してなる、陶器調外観が要求される用途に使用される成形品。
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