以下、本発明の実施の形態を図を参照して詳細に説明する。図1を参照して、本発明を適用した印刷装置としての合成印刷を行う複胴式の孔版印刷装置の全体構成を孔版印刷動作と共に説明する。図1において、符号Aは本発明を適用した複胴式の孔版印刷装置を示す。この孔版印刷装置Aは、用紙搬送方向Xの上流側から下流側に沿って並設された2つの印刷ドラムとしての第1版胴1aおよび第2版胴1bを具備している。版胴1aと版胴1bとは、略同一の機能および構成を有する。また、版胴1aの内外廻りに配設された後述するインク供給手段、製版装置および排版装置等と、版胴1bの内外廻りに配設された後述するインク供給手段、製版装置および排版装置とは、略同一の機能および構成を有しているので、それらを同一符号の末尾に符号aまたはbを付加することで区別することとし、その一方を詳述した場合には重複説明を避けるため他方の説明をできるだけ省略する。
孔版印刷装置Aは、周知の感熱デジタル製版一体型の孔版印刷装置の構造を有している。孔版印刷装置Aは、マスタ33aを外周面に巻き付ける版胴1aと、版胴1aの右上方に配置されマスタ33aを製版する製版装置41aと、製版装置41aの下方に配置され給紙トレイ21上に積載された用紙22を給送する給紙装置20と、版胴1aの左上方に配置され使用済みのマスタ33aを版胴1aから剥ぎ取り排版する排版装置42aと、版胴1aの下方に配置され給送されてくる用紙22を版胴1a上の製版済みのマスタ33aに押し付けることにより印刷を行う印圧装置32aと、印圧装置32aで印刷された印刷済みの用紙22を版胴1aから分離・剥離するエアーナイフ7aと、マスタ33bを外周面に巻き付ける版胴1bと、版胴1bの左上方に配置されマスタ33bを製版する製版装置41bと、版胴1bの左方に配置され使用済みのマスタ33bを版胴1bから剥ぎ取り排版する排版装置42bと、版胴1bの下方に配置され給送されてくる用紙22を版胴1b上の製版済みのマスタ33bに押し付けることにより印刷を行う印圧装置32bと、印圧装置32aと印圧装置32bとの間に配置され印圧装置32aで印刷された印刷済みの用紙22を印圧装置32bに搬送する用紙搬送手段としての中間搬送装置17aと、印圧装置32bで印刷された印刷済みの用紙22を版胴1bから分離・剥離するエアーナイフ7bと、排版装置42bの下方に配置され印圧装置32aおよび印圧装置32bで合成印刷された印刷済みの用紙22を排紙トレイ37上に排出する上記エアーナイフ7bを含む排紙装置35とから主に構成されている。
孔版印刷装置Aの両製版装置41a,41bおよび排版装置42aの上方には、原稿の画像を読み取るための図示を省略した原稿読取装置が配設されている。本形態において、孔版印刷装置Aには、外部情報処理装置としてのコンピュータ端末が接続可能とされている。
孔版印刷装置Aの動作を上記した各装置等の細部構成を含めて説明する。
版胴1aは、周知の多孔性円筒状をなし、ドラム軸2aの周りに回動自在に支持されている。版胴1aは、図示しないメインモータにより回転される。版胴1a外周部の一母線上には、マスタ33aの先端部をクランプする開閉自在なクランパ5aが設けられている。クランパ5aは、クランパ軸6aで版胴1a上に枢着されていて、版胴1aの外周廻りの適宜の位置に配設されている図示を省略した開閉手段により所定位置で開閉される。版胴1aの内部には、版胴1aの内周面から外周面に向けてインクを供給するためのインク供給手段が配設されている。 マスタ33aとしては、ポリエステル等の熱可塑性樹脂フィルムに多孔質の支持体として和紙等を貼り合わせたマスタが用いられている。マスタ33aは、上記のものに限らず、非常に薄い実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるものを用いることも可能である。
オペレータが、上記原稿読取装置の原稿受け台(図示せず)に印刷すべき原稿をセットし、製版を起動させるための図示しないスタートキーを押下すると、排版工程が両版胴1a,1bにおいて同様に実行される。すなわち、版胴1aが図中矢印方向と反対方向(反時計回り方向)に回転し、版胴1aの外周面に巻装されていた使用済みのマスタ33aが版胴1aの外周面から漸次剥され搬送されつつ各排版ボックス(図示せず)内へ排出されていわゆる排版が終了する。
排版工程と並行して、上記原稿読取装置が作動して原稿読み取りが行われる。この原稿読み取りに係る詳細な構成及び動作は、例えば公知の「縮小式の原稿読取方式」で行われるようになっており、原稿読み取りされた画像は最終的にCCD(電荷結合素子)等の光電変換素子からなる画像センサにより光電変換される。画像センサにより光電変換され電気信号は、図示しないアナログ/デジタル(A/D)変換基板に送信されることによりデジタル画像信号に変換される。
上記原稿読み取り動作と並行して、デジタル信号化された画像信号に基づき、両製版装置41a,41bにおいて同様の製版・給版工程が行われる。マスタ33aが、製版装置41aに配設されている平面型のサーマルヘッドに押し付けられているプラテンローラ(共に図示せず)および送り出しローラ対(図示せず)の回転により、マスタ搬送路の下流側に搬送される。このように搬送されるマスタ33aに対して、上記サーマルヘッドの主走査方向に一列に配列された多数の微小な発熱素子が、上記A/D変換基板およびその後の製版制御基板(図示せず)で各種処理を施されて送られてくるデジタル画像信号に応じて各々選択的に発熱し、発熱した発熱素子に接触しているマスタ33aの熱可塑性樹脂フィルムが溶融穿孔される。このようにして、画像情報に応じたマスタ33aの位置選択的な溶融穿孔により、画像情報が穿孔パターンとして書き込まれる。
画像情報が書き込まれて製版された製版済みのマスタ33aの先端は、上記送り出しローラ対の回転により版胴1aの外周部側へ向かって送り出され、給版ガイド板(図示せず)により進行方向を変えられ、給版位置状態にある版胴1aの拡開したクランパ5aへ向かって垂れ下がる。このとき版胴1aは、排版工程により使用済みのマスタ33aを既に除去されている。
版胴1b側における製版済みのマスタ33bの先端は、送り出しローラ対の回転により版胴1b外周部側へ向かって送り出され、給版ガイド板(図示せず)により略水平方向に案内されつつ、給版位置状態にある版胴1bの拡開したクランパ5bへ向かって挿入される。
製版済みのマスタ33aの先端部が、一定のタイミングでクランパ5aによりクランプされると、版胴1aは図中矢印方向(時計回り方向)に回転しつつ外周面に製版済みのマスタ33aを徐々に巻き付けていく。製版済みのマスタ33aの後端部は、製版完了後に製版装置41aに配設されている可動刃および固定刃等からなる切断手段の作動により一定の長さに切断されて、一版のマスタ33aが版胴1aの外周面に完全に巻装されると、いわゆる給版工程が終了する。
一版の各製版済みのマスタ33a,33bが各版胴1a,1bの外周面にそれぞれ巻装されると製版・給版工程が終了し、印刷工程が開始される。先ず、給紙トレイ21上に積載された最上位の用紙22を呼び出しコロ23に接触するまで給紙トレイ21を上昇させておく。呼び出しコロ23に接触している最上位の用紙22が、呼び出しコロ23の回転動作により搬送されると共に、分離コロ対24,25および分離板26の協働作用により1枚に分離され、上下一対のガイド板上28およびガイド板下27に案内されつつレジストローラ対29,30に向けて用紙搬送方向Xに給送される。このとき、搬送された用紙22の先端は、レジストローラ対29,30のニップ部直前部位に当接し、ガイド板上28に沿って撓んだ状態で停止している。
1つ目の版胴1aは、印刷動作が始まると印刷の回転速度で回転され始める。版胴1aの内周側では、インク供給ディストリビュータ(図示せず)からインク供給手段としてのインクローラ3aとドクタローラ4aとの間に形成されたインク溜りIaにインクが供給され、このインクはインクローラ3aとドクタローラ4aとが回転することによって混練され伸ばされると共に、インクローラ3aの外周面に均一に付着するようになる。インクの残量は、図示しないインク検知手段によって検知され、インクが少なくなったときには上記インク供給ディストリビュータから補給される。版胴1aの回転方向と同一方向に、かつ、版胴1aの回転速度と同期して回転しながら内周面に転接するインクローラ3aにより、インクが版胴1aの内周側に供給される。
印圧装置32aは、インクローラ3a、プレスローラ9a、プレスローラブラケット11a、プレスローラテンション13aおよびプレスローラカム12aから主に構成されている。プレスローラ9aは、給送されてきた用紙22を版胴1aに押し付けて印刷画像を用紙22上に形成する押圧手段としての機能を有する。プレスローラ9aは、プレスローラブラケット11aの一方の揺動端において回転自在に支持されていて、版胴1aの外周面に接離自在に設けられている。
版胴1aに対するプレスローラ9aの印圧は、プレスローラブラケット11aの他方の揺動端側に張設されたプレスローラテンション13a(引張バネ)によって加えられると共に、このプレスローラテンション13aの付勢力によってプレスローラブラケット11aの他方の揺動端は、扇状のプレスローラカム12aの輪郭周面に圧接している。
プレスローラカム12aは、図示しないメインモータによって給紙装置20からの用紙22の給紙タイミングおよび版胴1aの回転に合せて同期して回転されるようになっており、給紙装置20から用紙22が給紙されないときには、その大径部をプレスローラブラケット11aの他方の揺動端に対向させている。
プレスローラカム12aは、給紙装置20から用紙22が給送されてくると回転してその小径部をプレスローラブラケット11aの他方の揺動端に対向させ、プレスローラ9aを図において時計回り方向に回転させるようになっている。
用紙22がレジストローラ対29,30により版胴1aの回転と同期した所定のタイミングで印圧装置32aにおける版胴1aとプレスローラ9aとの間に形成される印刷部32cに給送されてくると、これに同期して版胴1aの外周面下方に離間していたプレスローラ9aが揺動・上昇されることにより、版胴1aの外周面に巻装されている製版済みのマスタ33aに押し付けられる。なお、版胴に印圧を加えるプレスローラは周知の圧胴を用いても良い。
これにより、版胴1aの多孔部から滲み出たインクの粘性による付着力によって、製版済みのマスタ33aが版胴1aの外周面上に密着すると同時に、さらに製版済みのマスタ33aの穿孔パターン部からインクが滲み出し、この滲み出たインクが用紙22の表面に転移されて、1つ目の画像領域の印刷画像が形成される。
1つ目の画像領域の印刷画像を形成された用紙22は、その先端がエアーナイフ7aの先端近傍の所までくると、エアーナイフ7aが版胴1aの回転動作と同期してエアーナイフ軸8aを中心に回転して版胴1aの外周面に接近し、図示を省略した空気圧発生装置で生成されたエアーナイフ7aの先端から吹き出る圧縮空気流によって、用紙22の先端が版胴1aから分離・剥離される。エアーナイフ7aにより分離・剥離された用紙22は、中間搬送装置17aによって用紙搬送方向Xの下流側へとさらに搬送される。
中間搬送装置17aは、従動ローラ14aと駆動ローラ15aとの間に掛け渡された多孔性の搬送ベルト16aと、吸引用のファン18aとで主に構成されている。中間搬送装置17aの搬送ベルト16aは、版胴1aの周速度と略同じ搬送速度で版胴1aと同期して駆動されるようになっている。搬送ベルトにより印刷済みの用紙を吸引しつつ搬送するので、用紙搬送手段がローラ対である場合などに生ずる用紙搬送手段の汚れを回避し、確実に用紙を搬送することができる。
エアーナイフ7aにより分離・剥離された印刷済みの用紙22は、ファン18aの作動により吸引されつつ、搬送ベルト16aに吸着され、この搬送ベルト16aの反時計回り方向の回転により、次の印圧装置32b部位へ向かって吸着搬送される。
このとき、2つ目の版胴1bは、版胴1aと同期して印刷動作が始まり、印刷の回転速度で回転され始める。版胴1bの内周側では、版胴1aと同様の構成および動作内容で版胴1bの回転速度と同期して回転しながら内周面に転接するインクローラ3bにより、インクが版胴1bの内周側に供給される。
用紙22が中間搬送装置17aの搬送ベルト16aによって版胴1bの回転と同期した所定のタイミングで印圧装置32bにおける版胴1bとプレスローラ9bとの間に形成される印刷部32dに給送されてくると、これに同期して版胴1bの外周面下方に離間していたプレスローラ9bが揺動・上昇されることにより、版胴1bの外周面に巻装されている製版済みのマスタ33bに押し付けられる。
これにより、版胴1bの多孔部から滲み出たインクの粘性による付着力によって、製版済みのマスタ33bが版胴1bの外周面上に密着すると同時に、さらに製版済みのマスタ33bの穿孔パターン部からインクが滲み出し、この滲み出たインクが用紙22の表面に転移されて、2つ目の画像領域の印刷画像が形成され、合成印刷が完了する。
合成印刷画像を形成された用紙22は、その先端がエアーナイフ7bの先端近傍の所までくると、エアーナイフ7bが版胴1bの回転動作と同期してエアーナイフ軸8bを中心に回転して版胴1bの外周面に接近すると同時に、図示を省略した空気圧発生装置で生成されたエアーナイフ7bの先端から吹き出る圧縮空気流によって、用紙22の先端が版胴1bから分離・剥離される。エアーナイフ7bにより分離・剥離された印刷済みの用紙22は、排紙装置35によってさらに用紙搬送方向Xの下流側に位置する排紙トレイ37へ搬送される。
排紙装置35は、従動ローラ39と駆動ローラ38との間に掛け渡された多孔性の搬送ベルト40と、吸引用ファン36とで主に構成されている。排紙装置35の搬送ベルト40は、版胴1bの周速度と略同じ搬送速度で版胴1bと同期して駆動されるようになっている。
エアーナイフ7bにより分離・剥離された印刷済みの用紙22は、吸引用ファン36の作動により吸引されつつ、搬送ベルト40に吸着され、この搬送ベルト40の反時計回り方向の回転により、排紙トレイ37上に順次排出積載される。このようにしていわゆる「版付け」、あるいは「試し刷り」が終了する。
図示しない操作パネルのテンキーで設定印刷枚数を設定して印刷スタートキーを押下すると、上記試し刷りと同様の工程で、給紙、印刷および排紙の各工程が設定した印刷枚数分繰り返して行なわれ、孔版印刷の全工程が終了する。このような動作が再転写防止動作を含まない孔版印刷装置の一般的な動作である。
孔版印刷装置Aを構成する上記各装置等の構成およびその配置状態は、あくまでもその一例を示したものであり、他の周知の装置および種々の配置状態をもって構成してもよいことはいうまでもない。例えば、エアーナイフ7a,7bの他に、各版胴1a,1bの外周面近傍に揺動自在な周知の排紙剥離爪のみを用いた装置もある。また、製版装置を1つとして、2つの版胴1a,1bに製版したマスタを巻き付ける構成であってもよい。
次に、本発明の特徴的な構成部分について説明する。
孔版印刷装置Aは、制御手段100を備えている。この制御手段100は製版装置41a,41bで製版する原稿の画像情報に応じたドラム巻装順序を報知する機能と、製版装置41a,41bを制御する機能を備えている。
制御手段100は、図2に示すように、CPU、ROM、RAM、タイマーなどを備えた周知のコンピュータでその主要部が構成されている。制御手段100には、文字情報を表示するとともに、装置使用者が触れることで表示された内容に対応する信号を発する液晶タッチパネルで構成された表示装置101が電気的に接続されている。
表示装置101には、制御手段100からの送信される図3〜図10に到る各種情報が表示される。図3に表示される内容は、原稿枚数を設定する印刷モード設定画面110であり、図4,図6に表示される内容は、原稿の画像種類を選択する原稿画像選択画面120,140である。図5,図7に表示される内容は、版胴1a,1bの位置を選択する版胴選択画面130,150であり、図8に表示される内容は巻装順序を報知とその順序を決定する巻装順序報知決定画面160である。図9に表示される内容は再製版の有無を選択する再製版選択画面170であり、図10に表示される内容は再製版を行うまでの印刷枚数を設定する再製版枚数設定画面180である。
図3の印刷モード設定画面110では、原稿が1枚である場合に選択するAスイッチ111と、原稿が2枚である場合に選択するBスイッチ112と、1枚の原稿を2枚の版に分ける際に選択するCスイッチ113とが表示され、これらが装置使用者によって選択されることで原稿枚数情報が制御手段100に入力される。
図4に示す原稿画像選択画面120は、原稿枚数が2枚、すなわち図3のBスイッチ112もしくはCスイッチ113が操作されたときに表示される。原稿画像選択画面120では、2枚の原稿の画像種類を選択する原稿画像選択手段となるスイッチ121〜128が表示される。スイッチ121〜124は第1の原稿の画像種類を選択する原稿画像選択手段を構成し、スイッチ125〜128は第2の原稿の画像種類を選択する原稿画像選択手段を構成している。スイッチ121,125は原稿種類が文字の場合に選択するものであり、スイッチ122,126は文字と写真が混在されている場合に選択するものである。スイッチ123,127は写真原稿の場合に選択するものであり、スイッチ124,128は文字が細字の場合に選択するものである。
図6に示す原稿画像選択画面140は、原稿枚数が1枚、すなわち図3のAスイッチ111が操作されたときに表示される。原稿画像選択画面140では、1枚の原稿の画像種類を選択する原稿画像選択手段となるスイッチ141〜144が表示される。スイッチ141は原稿種類が文字の場合に、スイッチ142は文字と写真が混在されている場合に、スイッチ143は写真原稿の場合に、スイッチ144は文字が細字の場合にそれぞれ選択するものである。
図5に示す版胴選択画面130は、図4のスイッチ群からスイッチ124,128またはスイッチ122,123,126,127が操作された場合に表示される。図5は第1の原稿であるA原稿側のスイッチ122,123またはスイッチ124が操作されたときの画面を示す。この版胴選択画面130では、写真または細字の原稿に基づき製版されるマスタを下流側ドラムとなる版胴1bに巻装するか否かを選択するスイッチ131,132が表示される。スイッチ131か操作されると、版胴1b側に第1の原稿に基づき製版されたマスタを巻装すべく第1の原稿情報に基づき製版手段41bで製版を実行させ、スイッチ132が操作されると第1の原稿に対応するマスタを製版する製版装置は特定しない。
図7に示す版胴選択画面150は、図6のスイッチ群からスイッチ144またはスイッチ142,143が操作された場合に表示される。この版胴選択画面150では、写真または細字の原稿に基づき製版されるマスタを下流側ドラムとなる版胴1bに巻装するか否かを選択するスイッチ151,152が表示される。スイッチ151が操作されると、スイッチ131の操作時と同様、版胴1b側に第1の原稿に基づき製版されたマスタを巻装すべく原稿情報に基づき製版手段41bで製版を実行させ、スイッチ152が操作されると原稿に対応するマスタを製版する製版装置は特定しない。
図8に示す巻装順序報知決定画面160では、上流側の版胴1aに対する設定内容を報知する報知部161と、下流側の版胴1bに対する設定内容を報知する報知部162と、報知内容を確定する場合に操作するスイッチ163と、報知内容を変更またはキャンセルする場合に操作するスイッチ164とが表示される。
図9に示す再製版選択画面170は、装置使用者によって入力された設定印刷枚数Pが予め制御手段100のROMに設定された再転写発生の警戒枚数P1以上の場合に表示されるものである。再製版選択画面170では、再転写発生警告表示と再製版を促すメッセージ171と、再製版を設定する場合に操作するスイッチ172と、現状の設定のまま、すなわち再製版を選択しない場合に操作するスイッチ173が表示される。
再転写発生の警戒枚数P1、すなわち画像再現性適性範囲は使用するインキ種別(色、材料等)、使用する用紙、印刷速度、版胴と用紙との圧接力等の多くのパラメータにより変わるので、適宜、これらのパラメータを用いて実験を行い、制御手段100のROMに予め設定されている。そしてこれらパラメータの値が図示しない操作パネルから入力される場合には、各パラメータに対応する値に再転写発生の警戒枚数P1が置き換えられるようにすればよい。
図10に示す再製版枚数設定画面180は、図9のスイッチ172が操作されて再製版することが選択された場合に表示されるものである。この再製版枚数設定画面180では、再製版するまでの印刷枚数の設定を促すメッセージ181と、再製版するまでの印刷枚数を自動で設定する場合に選択するスイッチ182と、再製版するまでの印刷枚数を装置使用者が図示しないテンキーで手動入力する場合に選択するスイッチ183とが表示される。
制御手段100では、図3から図10に示す各画面に表示された各スイッチの操作状況に対応して予めROMに記憶された再転写付着防止プログラムを起動させて、製版および印刷の動作を制御する。
以下、図11に示すフローチャートを用いて再転写付着防止プログラムの起動による制御手段100での制御について説明する。
ステップS1において、図示しない孔版印刷装置Aの電源がオンすると、ステップS2において図3に示す印刷モード設定画面110が表示装置101に表示される。装置使用者は、原稿枚数に応じてAスイッチ111〜Cスイッチ113の何れかを選択して操作することで、ステップS3において原稿毎に製版モード設定処理が行われる。Aスイッチ111が操作された場合には図6に示す原稿画像選択画面140が、Bスイッチ112もしくはCスイッチ113が操作された場合には図4に示す原稿画像選択画面120が表示装置101にそれぞれ表示される。装置使用者は、これら表示装置101に表示される原稿画像選択画面140上から原稿の種別、すなわち画像種類を設定する。
ステップS4では、ステップS3で設定された画像種類が、写真を含むモードまたは細字であるか否かを、原稿画像選択画面120,140のスイッチ操作情報から判断する。2枚原稿もしくは1原稿を2版に分けて製版する場合には図4の原稿画像選択画面120が表示装置101に表示され、1枚原稿の場合には図6の原稿画像選択画面140が表示装置101に表示される。そして写真を含むモードまたは細字が選択されていない場合には、再転写の影響が少ないものとしてステップS16に進み、上述の通常の製版処理を行い、製版終了後にステップS17において通常の印刷処理を実行する。
原稿画像選択画面120,140上で写真を含むモードまたは細字が選択されている場合には、図5または図7に示す版胴選択画面130,150が表示装置101に表示される。そして、スイッチ131やスイッチ151が操作された場合には、装置使用者にドラム位置変更要求があるものとしてステップS6に進み、スイッチ132,152が操作された場合には、ドラム位置変更要求がないものとしてステップS16に進み、通常の製版処理後、ステップS17で通常の印刷処理を実行する。
ステップS6では、図8に示す巻装順序報知決定画面160が表示装置101に表示され、上流側の版胴1aと下流側の版胴1bに対する設定内容が報知されるとともに、表示されたドラム位置変更の実施の可否が判断される。ここで、報知内容を変更またはキャンセルするスイッチ164が操作されると、ドラム位置変更実施不可と判断してステップS16に進み、通常の製版処理後、ステップS17の通常の印刷処理を実行する。報知内容を確定するスイッチ163が操作されると、ドラム位置変更の実施可と判断してステップS7に進む。ステップS7ではドラム位置変更処理、すなわち、製版装置41bを用いて写真または細字を含む画像情報に応じた製版の準備が実行される。
すなわち、孔版印刷装置Aの電源が投入されると、制御手段100は原稿が1枚なのか複数枚なのかあるいは1原稿を複数版に分けて製版するかの確認を行い、装置使用者に製版原稿毎に製版モードを設定させる。この時の製版モードが写真もしくは文字写真モードであった場合および細字が含まれている場合には、その原稿を製版したマスタが巻装される版胴が用紙搬送方向Xに対し上流側に位置する版胴1aであった場合、印刷を重ねていくうちに下流側の版胴1bに巻装されたマスタへ用紙22から転写されたインキが再び印刷用紙へ転写することにより画像再現性劣化を引き起こすため、原稿毎の製版モードの設定後、各原稿が巻装されようとしている版胴の位置を確認する。
製版モードが写真もしくは文字写真モードであった場合および細字もしくは写真原稿が含まれている原稿が巻装される版胴が上流側に位置する時にはユーザーにドラム位置変更の必要性を確認(図5、図7参照)して、設定確認後に製版動作に備えるようにする。なお、装置使用者が必要ないとの判断した時はスイッチ164が操作されるのでドラムの位置は変更しない。
ステップS8では、希望の印刷枚数(設定印刷枚数P)が図示しないテンキーによって行われ、この値が制御手段100のRAMに記憶され、ステップS9で印刷枚数の確認がなされる。つまり、入力した設定印刷枚数Pと予め設定された再転写発生の警戒枚数P1とを比較して、設定印刷枚数Pが再転写発生の警戒枚数P1を超えていない場合には、再転写の影響が少ない適正な範囲内であるものと判断して、ステップS16に進み、通常の製版処理後、ステップS17の通常の印刷処理を実行する。設定印刷枚数Pが再転写発生の警戒枚数P1を超えている場合には、再転写の影響が大きい画像再現性適正範囲外であるものと判断してステップS10に進む。
ステップS10では、再製版するか否かの判断を図9に示すスイッチ172またはスイッチ173の操作状態から判断する。ここでは、スイッチ173が操作されている場合には再製版をしないものとしてステップS16に進み、通常の製版処理後、ステップS17の通常の印刷処理を実行する。図9のスイッチ172が操作されている場合には、再製版することが選択されたものと判断してステップS11に進む。
ステップS11では、再製版までの設定印刷枚数となる分割印刷枚数が図10に示すスイッチ182またはスイッチ183が操作されることで入力される。スイッチ182が操作された場合には、制御手段100のROMに予め設定された分割印刷枚数が読み出されて設定される。スイッチ183が操作された場合には、図示しないテンキーによる分割印刷枚数の入力が装置使用者に促され、入力された分割印刷枚数はRAMに一旦記憶される。
つまり、ドラム位置の設定後、設定印刷枚数を装置使用者に設定させる。その設定枚数が、製版モードもしくは製版原稿種別と版胴に供給されているインキ種別等から予め設定されている画像再現性適性範囲(再転写発生の警戒枚数)を越える値であった場合には装置使用者(ユーザー)に印刷途中で再製版を行うか否か確認し(図9参照)、再製版を行うとなった時には中間製版までの印刷枚数を設定させる(図10参照)。
ステップS12では、写真または細字を含む画像情報に応じて製版装置41bで製版が実行され、この製版されたマスタが下流側の版胴1bの外周面に巻装され、文字だけの原稿は、製版装置41aで製版されて上流側の版胴1aの外周面に巻装される。そして、各版胴に対して版付けが行われて製版処理が実行される。
製版処理が終了すると、ステップS13において設定印刷枚数(分割印刷枚数)まで印刷動作が実行され、設定印刷枚数となると一旦印刷動作を停止して同じ画像を印刷すべく、ステップS14に進む。ここでは、下流側の版胴1bの外周面には写真または細字を含む画像情報に応じて製版されたマスタ33bが巻装され、上流側の版胴1aの外周面に文字だの原稿情報に応じて製版されたマスタ33aが巻装される。そして、各版胴に対して版付けが行われて再製版処理が実行される。
再製版処理を終えると、ステップS8で入力設定された設定印刷枚数Sから分割印刷枚数を差し引いた残りの印刷枚数分の印刷処理が実行され、印刷を終えるとこの制御が終了する。つまり、設定された分割印刷枚数までは1回目の印刷を行い、その後再製版を行い、印刷作業を継続する。
ここで、本発明で提案している再転写防止処理を実行しない場合の画像状態の検証結果について説明する。
孔版印刷装置Aはその機械の性質上、多数枚印刷することが多く、文字原稿(特に細字や紬線)および写真画像などのドット再現性を求められる画像を製版した感熱孔版のマスタを上流側に位置する版胴(版胴が2本ある場合は初めに印刷する版胴)に巻装して印刷を行った時に、印刷開始直後の画像と印刷枚数終了時の画像とでは図13〜図15に示すように、再転写により再現性に差異が生じてしまうことがある。図13〜図15は、本発明にかかる孔版印刷装置Aとメカ的構成が同一な孔版印刷装置にて印刷を行った際の図12に示す印刷物の1文字を光学顕微鏡で観察し写真撮影したときの図である。
(原稿/孔版印刷装置/用紙の条件)
上流側原稿:文字原稿(細字含む)
下流側原稿:なし(再転写の影響を判り易くする為、ここでは白原稿とした)
製版モード:文字モード
印刷モード:通常
印刷速度 :標準
インキ :東北リコー純正インキ
使用環境 :常温常湿
用 紙 :PPC用紙Type6200 A3T目
観察箇所 :5point文字部:1.5mm×1.5mm
図13はこれら条件の孔版印刷装置における100枚目の印刷状態の文字の拡大図であり、図14は1000枚目の印刷状態の文字の拡大図であり、図15は1200枚目の印刷状態の文字の拡大図である。
図13乃至図15を観察してみると、図14に示す1000枚目画像では再転写による「画像太り」が出始めている。図15においては、「画像太り」が著しく、文字が微塵でしまい画像再現性が劣化している。どのレベルを画像の許容範囲とするかは装置構成でばらつきがあるも、本願発明では、図14に示す「画像太り」の状態は許容範囲であると捉えている。
このような従来の構成に対し、本発明のような写真や細字を含む原稿画像に対応するマスタを下流側の版胴1bに巻装して、同様の印刷を行ったところ、1200枚印刷しても、図11に示す程度の画像再現性を得ることができた。
このように、本形態によれば、マスタに製版する原稿の画像情報に応じたドラム巻装順序を報知することで、装置使用者に対して最適な版胴ヘの巻装順序が報知されるため、極力用紙搬送方向Xの上流側に位置した版胴1aから用紙22に転移したインキが下流側の版胴1bに転移する再転写を抑えられ、再転写による異常画像や巻き上がりを低減しつつもドット再現性を求められる原稿画像であっても良好な印刷を行える。
特に、図4に示す原稿画像選択手段としてのスイッチ121〜128で選択された画像種類や、図6に示す原稿画像選択手段としてのスイッチ141〜124で選択された画像種類が細字もしくは写真を含む場合、下流側に位置する版胴1bに対し、細字もしくは写真を含む原稿の画像情報に基づき製版装置41bで製版されたマスタが巻装されるので、上流側に位置した版胴1aから用紙22に転移したインキが下流側の版胴1bに転移する再転写を抑えられ、再転写による異常画像や巻き上がりを低減しつつもドット再現性を求められる原稿画像であっても良好な印刷を行える。
本形態によると、入力された設定印刷枚数Pが予め設定された再転写発生の警戒枚数P1以上の場合、図9に示すように、再転写発生警告表示を行うとともに、再製版の実行を促す内容171を表示するので、再転写がひどくなって著しい画像劣化の発生前に新たなマスタによる製版と印刷を行えるので、上流側に位置した版胴1aから用紙に転移したインキが下流側の版胴1bに転移する再転写を抑えられ、再転写による異常画像や巻き上がりを低減しつつもドット再現性を求められる原稿画像であっても良好な印刷を行える。
本形態によると、図3に示すモード選択手段となるスイッチ111,112,113で選択された印刷モードが複数の原稿を用いる印刷モードである場合、製版装置41bによる製版動作前に版胴の位置の選択情報を図8に示すように報知するので、製版前に版胴位置を選択でき、パソコンなどの孔版印刷装置Aから遠隔地にて操作を行っている場合においても、孔版印刷装置Aまで出向いて版胴を交換することを回避することができる。また、通常、製版時間短縮のために、マスタの巻装と同時もしくは巻装直後に版付け作業も行うので、その際に用紙22から下流側の版胴1bに巻装されたマスタ33bにインキが転移してしまうことを防止できる。さらに版付け原稿で画像位置を微調整する場合には、版胴位置を変更して再度印刷して画像確認するようになるので、時間や用紙、インキなどの資源を無駄にすることがなくなる。
本形態では再製版を行うが、この場合、新規に最初の原稿を図示しない画像読取装置で読み取らせてもよいが、図2に示すように、制御手段100に記憶手段としての画像メモリ102を配設または接続し、この画像メモリ102に最初に読み取った画像情報(原稿情報)を記憶しておいてもよい。
このようにすると、再製版時に新たに原稿読み取りをしなくて済むので印刷再開までの時間短縮を図ることができる。また、画像メモリ102を配設することで、各種設定中でも原稿画像を取り込めるため、作業終了後直ちに製版動作に移行することができ、印刷終了までの時間を短縮することができる。読み取り原稿の大きさが読み取り可能原稿サイズの1/2の大きさ以下であった場合、複数原稿を一括して画像メモリ102に一且取り込むこともできるので、製版時間の短縮および複数原稿の重ね合わせ時のイメージ画像の確認およびインキの色変更時の原稿の再読み取りの必要がなくなるとともに、読み取り原稿からの自動認識により適正版胴巻装順序にて製版済みマスタを巻装できるもしくはその旨を装置使用者に報知できるようになる。