以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
<発明の全体構成>
図1は、本発明に係わる半導体ウエハの加熱装置の要部構成を示す正面断面図である。より具体的に、図1は、被加熱処理物である炭化珪素ウエハ(以下、単に半導体ウエハと称する)が内部に載置された複数の黒体ボックスと、カーボンフィラメントから構成される複数の熱源とが、加熱処理室となる筒部内に配置されている状態を示す図である。
図1に示すように、半導体ウエハの加熱装置100は、ステンレス製のチャンバー3を備えている。当該チャンバー3内には、当該チャンバー3の底面から上部方向に向かって、複数の支柱8が延設されている。当該支柱8は、カーボンやタングステン等の耐熱性に優れた材料により形成されている。
また、チャンバー内3には、加熱部1が配設されており、当該加熱部1は、支柱8によりチャンバー3内において支持されている。
ここで、半導体ウエハの加熱処理時には、半導体ウエハが所定の位置に配置された状態で当該チャンバー3内は密閉され、当該チャンバー3内は、真空状態もしくはAr等の不活性ガスが導入される。また、当該チャンバー3は、外部から水を使って水冷可能であり、また、必要に応じてチャンバー3内部に冷却用ガスを供給して、チャンバー3内を冷却することもできる。
また、チャンバー3の外側には、カーボンフィラメント(熱源)加熱用の電源(熱源から熱を発生させるためのエネルギーを、当該熱源に供給する電源部であると把握できる)4と、接地用金属電極5とが配置されている。そして、図1に示すように、加熱部1と電源4との間および加熱部1と接地用金属電極5との間は共に、支持棒6および金属棒7とにより接続されている。
ここで、金属棒7は、後述するように、熱源13を構成する各カーボンフィラメント群毎に複数本(電源側4に少なくとも1以上、接地用金属電極5に少なくとも1以上)配設されている。
また、支持棒6は、金属棒7を支えることができる部材である。電源4側の支持棒6内部には、複数本(接続されるカーボンフィラメント群の個数に対応した数)の銅線が配設されている。ここで、各銅線は、各々電気的に独立な状態となっている。つまり、電源4からの各カーボンフィラメント群へと独立した、エネルギー(電流)供給を実現することができるように、支持棒6内に各銅線が配設されている。
なお、接地用金属電極5側の支持棒6は、金属棒7と接地用金属電極5とを電気的に接続し、かつ当該金属棒7を支えることができれば、どのような構成であっても良い。
また、チャンバー3内の真空排気は、真空ポンプ9を用いて行われる。また、所定のガス導入は、ガス導入ライン10を通して行われる。
また、半導体ウエハを内部に載置された黒体ボックスをチャンバー3内外で搬送するための搬送用アーム11(図示しないが、2本存在する)が、本発明に係わる半導体加熱装置は備えている。
<加熱部1の構成>
次に、加熱部1の詳細な構成について説明する。
図2は、半導体ウエハの加熱処理が行われていないとき(半導体ウエハの冷却時等)の加熱部1の構成を示す断面図である。また、図3は、半導体ウエハの加熱処理が行われるときの加熱部1の構成を示す断面図である。なお、図3では、図面の簡略化のため、図2で示している筒部14の側面部14aの一部および爪部14bの全部の図示を省略している。また、図4に、筒部14の外観を示す斜視図を示す。
図2に示すように、半導体ウエハの加熱処理が行われない場合には、加熱部1は、支柱8に支持されている状態の筒部14のみで構成されている。
図2、4から分かるように、筒部14は、中空部14cを有している。また、筒部14の側面部14aには、複数の穴14dが穿設されている。より具体的に、筒部14の側面は、4面から成る側面部14aにより構成されており、各側面部14aには、上下方向に、複数の穴14dが並んで穿設されている。なお、上下方向に隣接する穴14d同士は、所定の間隔だけ隔てて穿設されている。
加熱処理の際には、当該穴14dを通して、筒部14の中空部14c内へ、後述する黒体ボックス12および熱源13が導入される。また、加熱処理後には、当該穴14dを通して、筒部14の中空部14cから筒部14外へ、後述する黒体ボックス12および熱源13が取り出される。
また、当該側面部14aから略垂直(中空部14c)方向に爪部14bが形成されている。ここで、当該爪部14bには、後述する黒体ボックス12が載置される。
また、図2,4に示すように、筒部14の上下面は、たとえばモリブデン、タンタル、またはタングステン等の、熱に対する反射率が高い高融点金属(反射断熱板)2から構成されている。なお、本明細書内では、筒部14の側面部14aおよび爪部14bは、カーボンから成る。ただし、もちろん筒部14の全て(つまり、側面部14aおよび上下面)を、上記高融点金属により構成することもできる。
図3に示すように、半導体ウエハの加熱処理が行われる場合には、支柱8に支持されている状態の筒部14には、複数の黒体ボックス12および複数の熱源13が所定の位置に配置されている。したがって、半導体ウエハの加熱処理が行われる場合には、加熱部1は、筒部14、当該筒部14内部に存する複数の黒体ボックス12、および当該筒部14内部に存する複数の熱源13により、構成されている。
また、図3から分かるように、半導体ウエハの加熱処理を実施する際には、筒部14の中空部14c内において、黒体ボックス12と熱源13とが上下方向に交互に、配置されている。つまり、黒体ボックス12はそれぞれ、一塊の熱源13(当該熱源13は、2セットのカーボンフィラメント群から構成されている)によって上下が囲まれるように、上記中空部14cにおいて、当該黒体ボックス12および熱源13は各々配置される。
<黒体ボックス12の構成>
各黒体ボックス12は、後述する方法により、筒部14の側面部14aに設けられた穴14dを通して、筒部14の中空部14cの所定の位置に設置される(具体的に、黒体ボックス12は、所定の爪部14b上に載置されるが、図3では、上述の通り爪部14bは図示していない)。ここで、図3では、黒体ボックス12は、上記中空部14c内において、6個配置されている。
図5は、黒体ボックス12の構成を示す断面図である。
図5に示すように、黒体ボックス12は、たとえばカーボン製の黒体のトレイ12aと、たとえばカーボン製の黒体の蓋12bとから構成されている。図5の点線で囲まれた領域に示されているように、黒体のトレイ12aの外周部および黒体の蓋12bの外周部には、各々凹凸部が形成されている。そして、当該凹凸同士を勘合させることにより、図5に示すように、黒体のトレイ12aと黒体のトレイ12bとを、組み合わせることができる(黒体ボックス12)。
また、黒体のトレイ12aと黒体のトレイ12bとを組み合わせることにより、黒体ボックス12内部に空間12dが形成される。そして、図5に示すように、半導体ウエハ20が、当該空間12d内に載置される。半導体ウエハ20の加熱処理を行う際には、図5のように、半導体ウエハ20が内部に載置されている黒体ボックス12が、筒部14の中空部14c内部に設置される。
ここで、黒体のトレイ12aの底部には、段差部12eが設けられており、当該段差部12eを筒部14の爪部14b上に載置させる。また、半導体ウエハ20は、たとえば炭化珪素ウエハであり、当該黒体ボックス12内部に載置される前に、不純物ドーピング用のイオン注入処理が施されている。
<熱源13の構成>
次に、熱源13の構成について説明する。
各熱源13は、後述する方法により、筒部14の側面部14aに設けられた穴14dを通して、筒部14の中空部14cの所定の位置に設置される。ここで、図3では、一塊の熱源13(一塊の熱源(1の熱源)13は、2セットのカーボンフィラメント群から構成されている)は、上記中空部14c内において、7個配置されている。
図6は、熱源13の構成を示す斜視図である。図3の点線部で囲まれた部分が図6であると把握できる。
図6に示すように、熱源13は、平面視においてマトリクス状に配設された、複数のカーボンフィラメント16から構成されている。当該構成から、熱源13を、カーボンフィラメントヒータと称することもできる。
上記1本のカーボンフィラメント16は、空芯のカーボン筒から構成されている。当該構成を採用することにより、カーボンフィラメント16自体をより高速に昇温することができ、カーボンフィラメント16の熱容量をでき得るかぎり小さくでき、かつカーボンフィラメント16の有効放射面積を十分に確保することができる。また、筒状のカーボンフィラメント16の肉厚は、カーボンの力学的な耐久性を考慮すると0.5mmが適当である。
図6に示すように、複数のカーボンフィラメント16を、一平面内において、一方向に所定の間隔を隔てて配設することにより、1セットのカーボンフィラメント群13gが構成される。また、複数のカーボンフィラメント16を、一平面内において、前記一方向と直交する他の方向に所定の間隔を隔てて配設することにより、1セットのカーボンフィラメント群13hが構成される。当該カーボンフィラメント群13g,13hを上下方向に所定の間隔だけ隔てて配置させて構成されたものが、図3,6に示す熱源13である。
上記のように、熱源13を構成するカーボンフィラメント16を平面視においてマトリクス状に配設し、当該構成の熱源13を各々一の黒体ボックス12の上下に、所定の間隔だけ隔てて配置することにより、黒体ボックス12に対してより均一に加熱処理を施すことができる。
なお、図3から把握できるように、上記した各カーボンフィラメント群の一方端および他方端には、電極部15を介して少なくとも1以上の金属棒7が各々接続されている。つまり、電極部15により、各カーボンフィラメント群は支持されている。上述したように、一方の金属棒7は電源4に接続され、他の金属棒7は接地用金属電極5に接続されている。なお、図3では、熱源13は7個配置されているので、カーボンフィラメント群は、14個配置されている。
半導体ウエハ20の加熱処理を行う際には、図3に示すように、電極部15を介して金属棒7が接続されているカーボンフィラメント群が、筒部14の中空部14cに設置される。ここで、各カーボンフィラメント群は、筒部14の穴14dに挿通されている状態で、筒部14の側面部14a(図3において、一部図示せず)により当該電極部15が固定されることにより、各カーボンフィラメント群は上記中空部14c内の所定の位置に固定配置される。
また、上述したように、電源4は、熱源13から熱を発生させるためのエネルギーを、当該熱源13に供給する電源部と把握でき、当該電源4は、各カーボンフィラメント群に対して、独立に、上記エネルギー(電流)を供給することができる。つまり、電源4は、別個独立に、各カーボンフィラメント群の発熱制御を行うことができる。なお、電源4から供給されるエネルギーに従い、カーボンフィラメント16に電流を流すことで、熱源13から熱が発せられる。
ここで、一の電源4において、各カーボンフィラメント群の発熱を制御する構成について言及したが、各カーボンフィラメント群に対応して、電源4を複数設ける構成を採用しても良い。当該構成の場合においても、各カーボンフィラメント群に対して別個独立に発熱のための電流を供給することができる。
<黒体ボックス12の筒部14への導入・設置方法>
次に、半導体ウエハ20の加熱処理を行う前に実施される、黒体ボックス12の筒部14内(つまり、中空部14c)への導入・設置方法について、図7ないし図12を用いて説明する。ここで、図7ないし図12は、拡大視した場合の筒部14の構成を示す拡大断面図である。
まず、図5に示したように、半導体ウエハ20が内部に載置されている黒体ボックス12を用意する。ここで、上述したように、半導体ウエハ20には、不純物ドーピング用のイオン注入処理が施されている。
また、加熱処理前であり黒体ボックス12が導入・設置される前の筒部14内部の様子は、図7の通りである(つまり、図7に示すように筒部14の中空部14cには如何なる部材も設置されていない)。
次に、図8に示すように、筒部14の側面部14aに穿設されている穴(当該穴は、穴14dに相当するものであり、図8の紙面(表裏)方向に穿設されており、断面図である図8では図示されていない)から、黒体ボックス12を筒部14の中空部14c内へ導入する。
ここで、当該黒体ボックス12の導入は、図8に示すように、黒体ボックス12を保持した搬送用アーム11aを用いた搬送処理により実施される。なお、図8(以降図9ないし図12も含む)において、簡略化のために、黒体ボックス12内部に載置されている半導体ウエハ20の図示は省略している。
上記黒体ボックス12の中空部14c内への導入後、搬送用アーム11aを移動させることにより、黒体ボックス12の段差部12e(図5参照)を筒部14の爪部14b上方に位置させる。そして、黒体ボックス12の段差部12eが爪部14b上方に位置した時点で、搬送用アーム11aの移動を停止させる。
次に、図9に示すように、筒部14の側面部14aに穿設されている穴14d(当該穴14dは、図9において断面的に図示されているように、図の左右方向に穿設されている)から、搬送用アーム11bを上記中空部14c内へと差し込む。そして、搬送用アーム11bの先端部11tが黒体ボックス12の下方に位置させた時点で、当該搬送用アーム11bの移動を一時停止させる。
次に、図10に示すように、搬送用アーム11bを上方向に移動させる。これにより、図10に示すように、搬送用アーム11bの先端部11tが黒体ボックス12の底面と当接し、当該当接後、搬送用アーム11bは、黒体ボックス12を搬送用アーム11aの保持状態から数mm程度上方向に持ち上げる(つまり、搬送用アーム11bは、搬送用アーム11aの黒体ボックス12による保持状態を解消させる)。
次に、図11に示すように、搬送用アーム11bの先端部11tが黒体ボックス12を持ち上げている状態で、搬送用アーム11aを筒部14の中空部14cから外部へと移動させる。
次に、搬送用アーム11bの先端部11tを下方向に移動させる。これにより、当該先端部11tに保持されている黒体ボックス12も、同時に下方向に移動する。そして、図12に示すように、筒部14の爪部14b上に黒体ボックス12が載置・固定させられる。
その後、搬送用アーム11bを筒部14の中空部14cから外部へと移動させる。以上により、黒体ボックス12の上記中空部14c内への設置処理が完了する。
<熱源13の筒部14への導入・設置方法>
次に、熱源13の筒部14内への導入・設置方法について、図3を参照しつつ、簡単に説明する。なお、上述したように、1の熱源13は、2つ(2セット)のカーボンフィラメント群により構成されており、当該1の熱源13を平面視した場合、複数のカーボンフィラメント16がマトリクス状に配設されている(図6参照)。
1の熱源13を構成する1のカーボンフィラメント群の一端に電極部15および少なくとも1以上の金属棒7が接続されている状態で、筒部14の側面部14aに穿設されている穴14d(図2,3の左右方向に穿設されている穴)から、当該カーボンフィラメント群を筒部14の中空部14c内に導入する。
そして、当該1のカーボンフィラメント群が導入された穴14dに対面する穴14dに向けて、少なくとも1以上の他の金属棒7に接続された他の電極部15を移動させる。そして、当該1のカーボンフィラメント群の他端に、当該他の電極部15を接続させる。
同様の方法により、1の熱源13を構成するもう一つのカーボンフィラメント群(他のカーボンフィラメント群と称する)を、上記中空部14cの所定の位置に導入・配置し、電極部15の接続処理を行う。ここで、当該他のカーボンフィラメント群の導入は、図2,3の表裏方向に穿設されている穴(図2,3では図示されていない)を通して行われる。
以上により、1の熱源13のセッティングが終了する。したがって、図3に示すように、7つの熱源13を配設する場合には、上記カーボンフィラメント群の導入・設置処理を、14回行う必要がある。
以上により、図3に示すように、熱源13の上記中空部14c内への設置処理が完了する。ここで、電極15を上記穴14dに固定させる(嵌め込む)ことにより、カーボンフィラメント群の筒部14に対する固定がなされる。
なお、図4に示すように、4面から成る筒部14の側面部14aには、各面毎に複数の穴14dが穿設されている。そして、上記全熱源13の固定処理の結果、全ての穴14dには電極15が嵌め込まれる。
なお、上記熱源13の設置・固定後、金属棒7と電源4とを接続するために、一の支持棒6の接続処理を実施する。また、金属棒7と接地用金属電極5とを接続するために、他の支持棒6の接続処理も実施する。
<黒体ボックス12の加熱・冷却方法>
上記のように、複数の黒体ボックス12および複数の熱源13が筒部14の所定の位置に設置されたなら(図3参照)、次に、半導体ウエハ20の加熱処理を行う。加熱処理の詳細は、以下の要領で実施される。なお、半導体ウエハ20には、上述の通り既に不純物ドーピング用のイオン注入処理が施されているので、これから説明する熱処理は、活性化アニール処理であると把握できる。
まず、上述のように、筒部14の中空部14c内に複数の黒体ボックス12および複数の熱源13を所定の位置に設置・固定し、熱源13を発熱させるための電流をカーボンフィラメント16に流すことができる状態にした後、加熱部1を内部に設置されているチャンバー3を密閉する(図1参照)。そして、当該チャンバー3内に対して、真空ポンプ9を用いた排気処理を実施する。以上の工程により、当該チャンバー3内を高真空状態にする。
ここで、チャンバー3内を高真空状態にした後に、ガス導入ライン10を通して当該チャンバー3内にAr等の不活性ガスを供給し、チャンバー3内を大気圧の不活性ガスで密閉した状態にしても良い。
次に、電源4からカーボンフィラメント16に対して直流あるいは交流の電流を供給する。ここで、当該電流の供給は、各カーボンフィラメント群に対して別個独立に制御されて、行われる。カーボンフィラメント16に電流が流されると、当該カーボンフィラメント16は、高温に加熱する(熱源13の発熱)。
ここで、カーボンフィラメント16(熱源13)の温度は、電流を供給する際のカーボンフィラメント16の温度上昇に伴う、カーボンフィラメント16自体の電気抵抗の変化値から測定される。
カーボンフィラメント16(熱源13)をたとえば1900℃の高温に保持することで、半導体ウエハ20が内部に載置された黒体ボックス12は、当該カーボンフィラメント16からの放射熱により急速に高温に加熱される。
ここで、図1,3等に示すように、熱源13は、その上下において黒体ボックス12が存在している。つまり、熱源13は、一の黒体ボックス12の上面と他の黒体ボックス12の下面とにより区画された空間(つまり、黒体により区画された空間)内に配置されている。したがって、当該区画された空間内の温度を効率良く、しかもより早急に上昇させることができる。
また、半導体ウエハ20は、上記の如く高温に加熱(昇温)された黒体ボックス12に閉じ込められている。したがって、黒体ボックス12からの接触熱伝導と熱放射により、半導体ウエハ20は熱エネルギーを効率良く受け取ることができ、当該半導体ウエハ20の急速な加熱が可能となる。
また、加熱部1を一つの高温部として捉えると、加熱部1は筒部14の上下をモリブデン、タンタル、タングステン等の反射率が高く、なおかつ融点の高い金属から構成された高融点金属(反射断熱板)2により囲まれている。したがって、加熱部1全体を高速かつ効率良く昇温する上で非常に有利となる。
ここで、筒部14の側面部14aの総面積は、多数の穴14dの穿設の影響により、極めて小さい。したがって、筒部14の側面部14aをカーボンで構成しても良い。しかし、より高速に効率良く加熱部1を昇温するためには、筒部14自体を高融点金属(反射断熱材)により構成することが望ましい(つまり、筒部14の上下面および側面は、高融点金属により構成されている)。
また、筒部14の大部分が上記高融点金属2により構成され、その他の面積の小さい領域はカーボンで構成されている(もしくは、筒部14全体が上記高融点金属により構成されている)。したがって、当該筒部14をカーボンフェルトで構成した場合に発生していた塵の発生を、防止することができる。
また、加熱部1の上部と下部とでは、通常温度勾配が生じ得る。しかし、熱源13への電流制御は、各カーボンフィラメント群毎に独立して行うことができる。したがって、上記黒体ボックス12で区画された空間の温度を、均一に保持することが可能となる。つまり、多数の半導体ウエハ20に対して、同じ加熱条件で同時に加熱処理を実施することができる。
また、加熱部1において、その上下方向に複数の黒体ボックス12が所定の間隔だけ隔てて配置されている。したがって、黒体ボックス12により仕切られていない場合よりも、加熱部1内において熱を篭もらせることができる。つまり、筒部14内から筒部14外への放熱を緩和させることができる。
上記半導体ウエハ20に対する加熱処理が所定の時間行われ、当該加熱処理が終了したなら、上記した熱源13の導入とは逆の手順により、筒部14の中空部14cから熱源13を水平方向に引き抜く。さらに、上記した黒体ボックス12の導入(図7ないし図12)とは逆の手順により、黒体ボックス12を筒部14外部へ引き出す。最終的には、加熱部1(筒部14内部)を図7に示す状態にする。
その後、ガス導入ライン10を通してチャンバー3内部に冷却用ガスを供給することにより、および/または、チャンバー3外部に水が循環する管を設け当該管に水を流すことにより、チャンバー3内部(黒体ボックス12および半導体ウエハ20等も含む)を冷却することができる。
当該半導体ウエハ20の冷却処理は、加熱部1(つまり筒部14)の体積よりも十分に大きい体積を有するチャンバー3内で行われるので、筒部14内部に設置された状態で冷却処理を施す場合よりも、半導体ウエハ20等はより早急に冷却される。
以上のように、本発明に係わる半導体ウエハの加熱装置では、加熱処理時には筒部14の中空部14cにおいて、黒体ボックス12と熱源13とが上下方向に交互に、配置されている。
つまり、熱源13は、一の黒体ボックス12の上面と他の黒体ボックス12の下面とにより区画された空間(つまり、黒体により区画された空間)内に配置されている。したがって、当該区画された空間内の温度を効率良く、しかもより早急に上昇させることができる。
また、半導体ウエハ20は、黒体ボックス12内の空間に載置されている。したがって、黒体ボックス12からの接触熱伝導と熱放射により、半導体ウエハ20は熱エネルギーを効率良く受け取ることができ、当該半導体ウエハ20の急速な加熱が可能となる。
また、加熱部1(筒部14)において、その上下方向に複数の黒体ボックス12が所定の間隔だけ隔てて配置されている。したがって、黒体ボックス12により仕切られていない場合よりも、加熱部1(筒部14)内において熱を篭もらせることができる。つまり、筒部14内から筒部14外への放熱を緩和させることができる。
また、筒部14の側面部14aには、複数の穴14dが穿設されており、当該穴を通して、黒体ボックス12および熱源13の出し入れが実施される。
したがって、たとえば、冷却時に黒体ボックス12および熱源13を筒部14の中空部14cから、より体積の広いチャンバー3内へと移動させることが可能となる。よって、半導体ウエハ20等の冷却処理をより、早急に行うことができる。
また、一度に複数(図3の場合では、6個)の半導体ウエハ20の加熱処理が可能と成るので、高スループット化の要請を満たすこともできる。
また、本発明に係わる半導体ウエハの加熱装置が備える電源4は、各カーボンフィラメント群に対して、独立に、エネルギー(電流)を供給することができる。
したがって、黒体ボックス12で区画された空間の温度を、均一に保持することが可能となる。つまり、多数の半導体ウエハ20に対して、同じ加熱条件で同時に加熱処理を実施することができる。
また、本発明に係わる半導体ウエハの加熱装置では、筒部14の少なくとも上下面は、高融点金属(反射断熱板)2から構成されている。
したがって、加熱部1(筒部14)全体を高速かつ効率良く昇温する上で非常に有利となる。
また、本発明に係わる半導体ウエハの加熱装置では、筒部14自体(つまり、筒部14の上下面および側面)を、高融点金属から構成しても良い。当該場合には、上下面だけが高融点金属により構成されている場合よりも、より高速に効率良く加熱部1(筒部14)を昇温することができる。
なお、筒部14の大部分が上記高融点金属2により構成され、その他の面積の小さい領域はカーボンで構成されている(もしくは、筒部14全体が上記高融点金属により構成されている)。したがって、当該筒部14をカーボンフェルトで構成した場合に発生していた塵の発生を、防止することができる(つまり、清浄な空間での半導体ウエハ20の熱処理が可能となる)。
<実施例>
次に、本発明に係わる半導体ウエハの加熱装置の各部材の寸法等の最適値を計算する。なお、ここでの最適値とは、上記加熱手順で実行される半導体ウエハ20の加熱処理に際して、加熱部1内部を10〜20秒の短時間で1800℃程度にまで昇温できるような値である。
<カーボンフィラメント16の本数n1、径r1の適正値の算出>
はじめに、1個(1セット)のカーボンフィラメント群を構成するカーボンフィラメント16の本数n1と、各カーボンフィラメント16の径r1の適正値を算出する。なお、上述のように、1の熱源13は、2個(2セット)のカーボンフィラメント群により構成されている(図6参照)。
カーボンフィラメント16を高速に昇温するためには、カーボンフィラメント16自体の熱容量を小さくする必要がある。したがって、1のカーボンフィラメント群を構成するカーボンフィラメント16の本数n1および、当該カーボンフィラメント16の径r1をできる限り小さくする必要がある。
一方、当該本数n1および径r1を小さくすると、カーボンフィラメント16の有効放射面積が小さくなる。これに伴い、カーボンフィラメント16から黒体ボックス12に供給できる放射エネルギーが小さくなる。したがって、加熱時のカーボンフィラメント16の温度をより高く設定する必要性が生じる。
真空中におけるカーボンの耐熱温度は2200℃以上であるが、1900℃以上でも10-2Pa程度の蒸気圧を持ち、昇華により少しずつ消耗する。
よって、カーボンフィラメント16の熱容量をできる限り小さくし、なおかつ1900℃以下(さらに望ましくは1850℃以下)のフィラメント温度でも十分な放射エネルギーを黒体ボックス12に供給し得るような、1のカーボンフィラメント群を構成するカーボンフィラメント16の本数n1および、各カーボンフィラメント16の径r1を以下において算出する。
1本のカーボンフィラメント16の長さをL1、加熱時のカーボンフィラメント16の温度をT1、被加熱体(黒体ボックス12および筒部14などのように、加熱部1において加熱される各部材。つまり、熱源13を除く加熱部1を構成する各部材)の温度をT2、ステファン・ボルツマン定数をσとする。
すると、1の黒体ボックス12の上方に存する1のカーボンフィラメント群および当該1の黒体ボックスの下方に存する1のカーボンフィラメント群から、当該1の黒体ボックス12に供給される放射エネルギーW12は、次式(1)のように表される。
W12=σ(T1 4−T2 4)・2πr1×10-3・L1・2n1 (1)
ここで、L1を、たとえば120mmとする。また、ステファン・ボルツマン定数σは、5.67×10-8である。
さて、カーボンフィラメント群の加熱により被加熱体の温度T2をたとえば1800℃に昇温・保持することを想定した場合、少なくとも当該被加熱体の温度T2を1800℃に昇温した後、それを1800℃に保持しておくためのエネルギーが必要である。
本発明に係わる加熱装置では、加熱部1の上下には高融点金属(反射断熱板)2が設けられており、またその側面積(つまり筒部14の側面部14aの総面積)は十分に小さく設計される。したがって、加熱部1(筒部14とも把握できる)内から外部へ放出される熱エネルギーは最大でも20kW程度と想定される。したがって、1の黒体ボックス12の上下に存する各カーボンフィラメント群から供給される放射エネルギーW12は、平均3kW以上であれば十分である。
よって、W12>3×103(W)とすると、式(1)は次式(2)のように書き直すことができる。
W12=8.55×10-11・r1・n1(T1 4−T2 4)>3×103 (2)
当該式(2)をさらに変形して、次式(3)を得る。
T1 4>T2 4+3×1014/(8.55r1n1) (3)
また、カーボンフィラメント16の温度は1850℃以下であることが望ましいことから、次式(4)を得る。
T1<1850+273(K) (4)
T2を1800+273(K)とし、r1n1を横軸、T1を縦軸にとって式(3)および式(4)を図示すると。図13のようになる。図13において、カーボンフィラメント16を図中の斜線部の領域において動作させることが望ましいことから、r1n1は次の条件式(5)を満たす必要がある。
r1n1>18.8 (5)
すなわち、カーボンフィラメント16の温度を1850℃以下で使用しつつ、黒体ボックス12の上下に各々存するカーボンフィラメント群から、当該黒体ボックス12へ供給される平均の放射エネルギーW12が少なくとも3kW以上となることを満たすにためは、各カーボンフィラメント径r1とカーボンフィラメント本数n1の積は、18.8より大きいことが必要である。
また、カーボンフィラメント16からの放射エネルギーを用いて黒体ボックス12を加熱する上で、当該黒体ボックス12を面内で均一に昇温する必要がある。このことから、1の(1セットの)カーボンフィラメント群に含まれるカーボンフィラメント16の本数n1を少なくとも5本以上として、適切な位置に配置することが望ましい。
さらに、カーボンフィラメント16の力学的な耐久性から、少なくともフィラメント径r1は2mm以上であることが望ましい。n1を横軸とし、r1を縦軸として以上の条件を図示すると図14のようになる。
図14において、n1およびr1は、斜線部で図示される領域においてできる限り小さな値に設定することが望ましい。本実施例では、一のカーボンフィラメント群を構成するカーボンフィラメント16の本数の最適値は、n1=7であり、各カーボンフィラメント16の径は、r1=2.7mmとする。
<カーボンフィラメント16の昇温速度の概算>
次に、カーボンフィラメント16に電流を供給し、そのジュール熱でカーボンフィラメント16を昇温する際の、カーボンフィラメント16の昇温速度を概算する。
電源4から1のカーボンフィラメント群に供給される、あるいは当該1のカーボンフィラメント群で消費される電力エネルギーをW1とし、当該エネルギーW1によりカーボンフィラメント16の温度が時間Δtの間にΔT1変化したとする。この場合には、1のカーボンフィラメント群内のエネルギー収支は、次式(6)で表すことができる。
W1Δt=C1ΔT1+(W12/2+2×W13+2×Q13)Δt (6)
ここで、C1は1のカーボンフィラメント群の熱容量、W13は1のカーボンフィラメント群に接続されている電極部15から外部へ放射される放射エネルギー、Q13は当該電極15および金属棒7を伝って外部へ放出される熱エネルギーである。
式(6)をさらに変形することにより、次式(7)を得る。
ΔT1/Δt=(W1―W12/2―2×W13―2×Q13)/C1 (7)
式(7)から分かるように、熱容量C1が小さいとき、カーボンフィラメント16の温度上昇は短時間で飽和する。その後、カーボンフィラメント16に供給されるエネルギーは全て、カーボンフィラメント16と電極部15とからの放射エネルギー、および金属棒7を伝って外部へ放出される熱伝導エネルギーにより消費される。
さて、1本のカーボンフィラメント16の断面積をS1、長さをL1、比重をρ1、比熱をc1とすると、1のカーボンフィラメント群の熱容量C1は次式(8)のように表される。
C1=S1・L1・n1・ρ1・c1 (8)
また、上述したようにカーボンフィラメント16は空芯の円筒構造をしており、肉厚は0.5mmである。このことから、1本のカーボンフィラメント16の断面積S1は次式(9)のように表すことができる。
S1=π(r1 2―(r1―0.5)2)×10-6
=π(r1−0.25)×10-6 (m2) (9)
L1を装置寸法からたとえば120mmとする。また、ρ1およびc1はカーボンの物性値からそれぞれ2.25g/cm3、0.7J/g・Kとする。また、n1およびr1は上述した最適値の7と2.7を適用する。当該各値および式(9)を用いると、式(8)、つまり1のカーボンフィラメント群の熱容量C1は、9.1(J/K)となる。
また、W13は次式(10)のように表される。
W13=γ・σT1 4・S13 (10)
ここで、γは電極部15の放射係数であり、たとえば電極部15の材料を高融点金属であるタングステンとした場合、γの値は0.2〜0.4程度となる。なお、以下の計算ではγを0.3とする。また、S13は1のカーボンフィラメント群に接続されている電極部15の面積であり、装置寸法から1000mm2と計算する。
また、電極部15および金属棒7を伝って外部へ放出される熱エネルギーQ13は、次式(11)のように表される。
Q13=(T1−300)/R13 (11)
ただし、外部の温度は室温(27℃=300K)とした。また、R3は金属棒7の熱抵抗であり、次式(12)のように表される。
R13=(1/K3)×L3/n3/S3 (12)
ここで、K3は金属棒5の熱伝導率、L3は金属棒7の長さ、n3は1のカーボンフィラメント群に一方の電極15を介し接続される金属棒7の本数、S3は金属棒7の断面積である。
たとえば金属棒7が高融点金属であるタングステン製の場合、熱伝導率K3=150であり、L3は装置寸法からたとえば120mmとする。さらに、金属棒7の断面積は金属棒7の半径r3を用いて次式(13)のように表される。
S3=π(r3×10-3)2 (13)
またn3およびr3を、後述するように、最適値としてn3=2、r3=2.2mmとして設定すると、熱抵抗R13は26.3と算出される。
上記において得られた各値と式(7)を用いて、一のカーボンフィラメント群に電気エネルギーW1を供給した際の、カーボンフィラメント16の昇温速度を概算する。式(7)をさらに式変形すると、次式(14)を得ることができる。
Δt/ΔT1=C1/(W1―W12/2―2×W13―2×Q13) (14)
次に、上述した1のカーボンフィラメント群の熱容量C1の値9.1(J/K)、式(2)、式(10)および式(11)を、式(14)に代入し、さらに、上記した各変数の値を用いて整理する。すると、次式(15)を得ることができる。
Δt/ΔT1=9.1 /(W1−8.1×10-10(T1 4−T2 4)
―2×γ・σT1 4・S13―2×(T1−300)/26.3) (15)
さらに、Δt/ΔT1→dt/dT1として両辺をT1で積分すると、次式(16)を得ることができる。
t=∫ 9.1 /(W1−8.1×10-10(T1 4−T2 4)
―2×γ・σT1 4・S13―2×(T1−300)/26.3)dT1 (16)
1のカーボンフィラメント群に供給される電気エネルギーW1をたとえば2.5kWとしたときの、カーボンフィラメント16の昇温プロファイルを式(16)を用いて算出すると、図15のようになる。
図15から分かるように、1のカーボンフィラメント群に2.5kWの電力を投入すると、カーボンフィラメント16の温度は急激に上昇し、6秒程度で1000℃付近に到達する(カーボンフィラメント16の昇温速度の概算となる)。
なお、カーボンフィラメント16の温度T1が当該1000℃付近に到達した後、1のカーボンフィラメント群に供給されるエネルギーは、そのほとんどが放射エネルギーとして上記被加熱体に供給される。これにより、温度T1の上昇と並行して式(16)における被加熱体の温度T2も昇温され始める。
このように、被加熱体の温度T2が上昇することにより、カーボンフィラメント16の温度も1000℃からさらに上昇し始める。そして、最終的には、加熱部1(筒部14とも把握できる)内から外部への放熱エネルギーと電源4からの供給エネルギーとが釣り合うまで、カーボンフィラメント15の温度T1および被加熱体の温度T2は、共に上昇し続ける。
<金属棒7の本数n3、径r3の適正値の算出>
次に、カーボンフィラメント群にエネルギーを供給することで上記被加熱体を昇温する際、電源4からの供給エネルギーに対して最も効率的に昇温を行うための、1のカーボンフィラメント群に電流を供給するための金属棒7の本数n3と、各金属棒7の径r3の適正値を算出する。
ここで、金属棒7の本数n3は、電源側4側に配設されている一の電極部15を介して、1のカーボンフィラメント群に接続される金属棒7の本数である。
カーボンフィラメント群に電力エネルギーを供給するためには、金属棒7を媒介して電源4から直流あるいは交流の電流を供給する必要がある。したがって、電流供給時の金属棒7においてジュール熱損が生じる。当該ジュール熱損をW3とし、1のカーボンフィラメント群を加熱するために電源4から供給される全電力エネルギーをWTとする。すると、WTは、次式(17)のように表される。
WT=W1+W3 (17)
また、上述したように、カーボンフィラメント群を昇温した際、1のカーボンフィラメント群に供給される電気エネルギーW1のうち、金属棒7を通して熱伝導により外部へ放出される熱エネルギーQ13と、カーボンフィラメント群に接続されている電極部15から放射される放射エネルギーW13とは、カーボンフィラメント群および被加熱体の加熱には寄与しない損失エネルギーである。
したがって、1のカーボンフィラメント群を加熱するために電源4から供給される全電力エネルギーWTのうち、W3+2×Q13+2×W13は、カーボンフィラメント群および被加熱体の加熱には寄与しない損失エネルギーの和となる。
当該損失エネルギーの和をWT’とすると、WT’/WTが最小となるように(すなわち、1のカーボンフィラメント群を加熱するために電源4から供給される全電力エネルギーWTに対する、カーボンフィラメント群および被加熱体の加熱に寄与しない損失エネルギーの比率が最小となるように)、金属棒7の本数n3、および各金属棒7の径r3を設定する必要がある。
W3は1のカーボンフィラメント群に供給されるエネルギーW1を用いて、次式(18)のように表すことができる。
W3=W1×2×R3/R1 (18)
ここで、R1は、1のカーボンフィラメント群の電気抵抗、R3は、1のカーボンフィラメント群に一方の電極部15を介して接続される金属棒7の電気抵抗である。よって、R1およびR3は、それぞれ次式(19)、(20)のように表すことができる。
R1=k1・L1/S1/n1 (19)
R3=k3・L3/S3/n3 (20)
ここで、k1は、カーボンフィラメント16の電気抵抗率、k3は、金属棒7の電気抵抗率である。たとえば、金属棒7が高融点金属であるタングステン製の場合、k3は7.3×10-8であり、カーボンフィラメント16の電気抵抗率はカーボンの物性値から1×10-5となる。
よって、式(9)、(13)、(19)、(20)等を用いることにより、式(18)は、次式(21)のように書き換えることができる。
W3=W1×1.46×10-2×r1 2n1/r3 2n3 (21)
また、Q13は、式(11)、(12)、(13)から、次式(22)となる。
Q13=n3r3 2(T1−300)/ 250 (22)
また、1のカーボンフィラメント群に接続される一方の電極部15から外部へ放射される放射エネルギーW13は、式(10)で示されている。また、n1およびr1をそれぞれ上述した最適値7および2.7mmとし、1のカーボンフィラメント群に供給されるエネルギーW1をたとえば2.5kWとする。すると、カーボンフィラメント群および被加熱体の加熱に寄与しない損失エネルギーの和WT’は、次式(23)のように表される。
WT’=W3+2×Q13+2×W13
=1.86×103/n3r3 2
+2×n3r3 2(T1−300)/250
+2×γ・σT1 4・S13 (23)
また、1のカーボンフィラメント群を加熱するために電源4から供給される全電力エネルギーWTのうち、カーボンフィラメント群および被加熱体を昇温するために用いられるエネルギーの比率ηは、次式(24)のように表される。
η=1―WT’/WT (24)
式(17)〜(21)を用いてWTを計算し、T1をパラメータとして、n3r3 2を横軸に、ηの値を縦軸にプロットすると、図16のように図示される。
図16からηが最大値をとるようなn3r3 2の値は、カーボンフィラメント16の温度が100℃のときで56.0、また1000℃のときで15.0、また1850℃のときで9.0である。
被加熱体をたとえば1800℃に昇温する上で、カーボンフィラメント16を1850℃付近で動作させる時間が最も長いと予想される。このことから、n3r3 2の最適値を9.0とし、1のカーボンフィラメント群に配設されている一方の電極部15に接続される金属棒7の本数n3を2本(したがって、図3に示した1のカーボンフィラメント群の電源4側に配設されている電極部15に着目すると、図3の表裏方向に2本の金属棒7が並走して配設される)、各金属棒7の径r3を2.2mmと設定する(以上が、金属棒7の本数n3、径r3の適正値の算出である)。
このとき、1のカーボンフィラメント群を加熱するために電源4から供給される全電力エネルギーWTのうち、カーボンフィラメント群および被加熱体を昇温するために用いられるフィラメント放射エネルギーの比率ηは、カーボンフィラメント16の温度が100℃の時に0.97、1000℃で0.87、1850℃で0.62となる。
また、カーボンフィラメント16の温度が1850℃の時、金属棒7を通して熱伝導により外部へ放出される熱エネルギーQ13は0.14kW、またカーボンフィラメント群に接続される電極部15から放射される放射エネルギーW13は0.35kWとなる。
このことから、1のカーボンフィラメント群に供給される電気エネルギーW1を2.5kWとしたときの、カーボンフィラメント群および被加熱体を昇温するために用いられるエネルギーは〜2.0kW(したがって、1の黒体ボックス12の上方に配置される1のカーボンフィラメント群および当該1の黒体ボックス12の下方に配置される1のカーボンフィラメント群に供給される昇温に有効なエネルギーは〜4.0kW)となる。
上述したように、黒体ボックス12の上下に各々配置されている計2つのカーボンフィラメント群から供給される放射エネルギーW12は、平均3kW以上であれば十分である。このことから、1のカーボンフィラメント群に供給される電気エネルギーW1は、2.5kW以上であれば十分である。また、電流供給時の金属棒7におけるジュール熱損W3は0.2kWとなることから、1のカーボンフィラメント群を加熱するために電源4から供給される全電力エネルギーWTは、2.7kWであることが適当である。
<被加熱体の昇温プロファイルを算出>
次に、上記で得られたn1、r1、n3、r3の最適値を用いて装置を構成し、次に記すような場合を想定して、上記被加熱体の昇温プロファイルを算出する。
つまり、以下で行う被加熱体の昇温プロファイルを算出では、4インチの炭化珪素ウエハ6枚を同時にアニール処理し、側面部14aがカーボン製である筒部14の中空部14cに、カーボン製の黒体ボックス12を6個および(図3の点線に囲まれた部分の)熱源13を7個挿入し、カーボンフィラメント16に電流を供給して熱源13を高温に昇温・保持した場合を、想定する。
被加熱体の熱容量をC2、1の黒体ボックス12に供給される2のカーボンフィラメント群(つまり、1の黒体ボックス12の上方に配置されている1のカーボンフィラメント群、および当該1の黒体ボックス12を下方に配置されている1のカーボンフィラメント群)からの放射エネルギーをW12とする。
また、黒体ボックス12および筒部14の側面から外部へ放射されるエネルギーをW23とする。また、最上部に配置されている黒体ボックス12の上面および最下部に配置されている黒体ボックス12の下面から、筒部14の上下面に設置された高融点金属(反射断熱板)2に向かって放射されるエネルギーをW24とする。また、黒体ボックス12と筒部14との接触熱伝導により高融点金属2に伝導する熱エネルギーをQ24とする。
すると、被加熱体の熱エネルギー収支は、次式(25)のような計算式で表される。
7×W12Δt=C2ΔT2+(W23+W24+Q24)Δt (25)
この式(25)を式(6)と同様の方法で式変形すると、当該式(25)は次式(26)のように表すことができる。
t=∫C2 /(7×W12―W23―W24―Q24)dT2 (26)
次に、上述した熱容量C2の値を算出する。
筒部14の肉厚をたとえば1mmとし、幅および奥行きの長さを120mm、高さを86mmとする。また、上述したように、筒部14の側面部14aには穴14dが複数穿設されている。当該穴14dの幅(横方向の寸法)および高さ(縦方向の寸法)は、それぞれ100mm、10mmとする。また、筒部14の側面部14aには、全部で28個の穴14dが穿設される。
以上のことから、筒部14の体積は1.32×10-5(m2)となる。
また、黒体ボックス12の幅および奥行きの長さを120mm、厚さを2mmとする。また、半導体ウエハ20が載置される黒体ボックス12内部の空間12dの、幅および奥行きの長さを100mm、高さを0.5mmとする。
すると、黒体ボックス12の6個分の体積は1.43×10-4(m3)となる。よって、カーボンの比熱および比重の値からC2は、246(J/K)と算出される。
また、筒部14の表面積をS2とすると、上記W23は、次式(27)のように表される。
W23=σT2 4・S2 (27)
ここで、上記で示した装置寸法からS2は、1.32×10-2(m2)と計算される。
また、黒体ボックス12の表面積をS2'、高融点金属(反射断熱板)2の温度をT4、放射率が0.2〜0.4と比較的低い高融点金属2と黒体ボックス12との間の放射伝達係数を、λとする。すると、上記W24は、次式(28)のように表される。
W24=λσ(T2 4―T4 4)・S2' (28)
また、最上部に配置される黒体ボックス12の上面(あるいは最下部に配置される黒体ボックス12の下面)と高融点金属2との間の熱抵抗を、R24とする。すると、Q24は、次式(29)のように表される。
Q24=(T2―T4)/R24 (29)
ここで、カーボンの熱伝導率を100とすると、装置寸法からR24は、4.2×10-2と計算される。
よって、式(26)に式(27)、式(28)、式(29)を代入すると、次式(30)を得ることができる。
t=∫C2 /(7×W12―σT2 4・S2―λσ(T2 4―T4 4)・S2'
―(T2―T4)/R24)dT2 (30)
式(30)において、λをたとえば0.3、W12を3kWとし、T4をパラメータとしてT2の昇温速度をプロットすると、図17のようになる。図17は、被加熱体の昇温プロファイルである。
1のカーボンフィラメント群からの放射エネルギーW12によって上記被加熱体が加熱され、その熱エネルギーは、放射および熱伝導を媒介して高融点金属(反射断熱板)2にも供給される。これに伴い、高融点金属2の温度T4も上昇し始め、1のカーボンフィラメント群からの放射エネルギーW12によって加熱される被加熱体の飽和温度も上昇する。すなわち、被加熱体の温度T2および高融点金属2の温度T4が、ともに上昇することになる。
被加熱体と高融点金属2との間の熱抵抗R24は、4.2×10-2と小さい。また、高融点金属2の材料をタングステンとした場合、当該高融点金属2の厚さを1mm程度にすることで、その熱容量は40(J/K)程度となる。したがって、両者間のCR時定数は1.6(s)程度となることから、上記した温度T2および温度T4の熱応答は非常に速いと言える。
上記各計算結果と図17で示した被加熱体の昇温プロファイルから、実施例に係わる加熱装置において、1の黒体ボックス12の上下に存する2つのカーボンフィラメント群から当該1の黒体ボックス12に対して、平均〜3kW(1のカーボンフィラメント群あたり〜1.5kW)の放射エネルギーが投入されることで、被加熱体を約15秒程度で1800℃付近に昇温できる。また、このときのカーボンフィラメント16の温度は式(1)から1850℃である。
<実施例の結論>
これまでの計算結果から、本発明に係わる加熱装置の最適な実施例について結論する(つまり、最適と考えられる装置構造、装置各部の寸法について結論する)。
断面が120×120mm2の正方形、肉厚が1mm、高さが86mmで、その上下端が高融点金属(反射断熱板)2により覆われた筒部14を、内部が冷やされたステンレス製のチャンバー2内部に設置する。ここで、筒部14の側面部14aはカーボンで形成されている。
また、筒部14の側面部14aには、熱源13(より具体的には各カーボンフィラメント群)を挿入するための穴14dが複数穿設されている。当該穴14dは、10×100mm2の長方形であり、7×4個穿設されている。なお、熱源13の数は7個であり、1の熱源13を構成するカーボンフィラメント群の数は2個(2セット)である。したがって、筒部14に設置されるカーボンフィラメント群の総数は、14個(14セット)となる。
また、各穴14dに固定される各電極部15には、各々2本の金属棒7が接続されている。上述の通り、1のカーボンフィラメント群の一端および他端に、各々電極部15が接続されている。なお、以上から分かるように、7×4個の穴14dの全てに、電極15が固定されている。
炭化珪素ウエハなどの半導体ウエハが載置された、カーボン製の6個の黒体ボックス12と、7個の上記熱源13とは、筒部14の中空部14c内部において縦方向に交互にセットされる。
1のカーボンフィラメント群を形成する7本のカーボンフィラメント16は、空芯のカーボン筒から構成されており、内側の肉厚は0.5mm、断面の半径は2.7mmである。
また、各カーボンフィラメント群には、一方端および他方端に、電極部15が各々配設されており、各電極部15には、2本の金属棒7が接続されている。当該金属棒7の断面の半径は2.2mmである。
このようにして構成された加熱装置において、1セットのカーボンフィラメント群に平均2.7kW(合計〜37.8kW)の電力エネルギーを投入する。すると、各カーボンフィラメント16は、〜6秒で1000℃付近に上昇する。そして、当該各カーボンフィラメント16からの放射エネルギーにより、黒体ボックス12および筒部14を含めた被加熱体も加熱される。
結果、〜15秒でカーボンフィラメント16は1850℃に、被加熱体は1800℃に昇温される。
1 加熱部、2 高融点金属(反射断熱板)、3 チャンバー、4 電源、5 接地用金属電極、6 支持棒、7 金属棒、8 支柱、9 真空ポンプ、10 ガス導入ライン、11,11a,11b 搬送用アーム、12 黒体ボックス、12a 黒体のトレイ、12b 黒体の蓋、13 熱源、13g,13h カーボンフィラメント群、14 筒、14a 側面部、14b 爪部、14c 中空部、14d 穴、15 電極部、16 カーボンフィラメント、100 半導体ウエハの加熱装置。