JP4906289B2 - 樹脂成形体、及びその用途 - Google Patents
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Description
しかし、プラスチック基板は熱や吸湿により寸法が変化するものであり、熱による膨張や収縮は樹脂の線膨張係数に依存し、水分による膨張や収縮は樹脂の吸水率に依存する。吸湿については、樹脂成形体の吸水率を低減することや、樹脂成形体の表面に酸化珪素などの水蒸気バリア膜を形成することにより回避することも可能であるが、プラスチックである限り、熱に伴う膨張や収縮を回避することは困難であり、ナノフィラーやガラスファイバーを樹脂に配合して、線膨張係数を低減する手法も考えられるが、比重の増大、光線透過率の低下、コストアップなどの問題を生じる。
また、特許文献1の開示技術では、2官能性の(メタ)アクリレートを用いているため、低線膨張係数を達成できない。特許文献2及び3の開示技術では、より多官能の脂肪族(メタ)アクリレートを使用することにより低線膨張化できるが、線膨張係数のふれを低減できず、また、脂肪族単量体を使用しているため吸水率が高くなり、成形体の吸脱湿に伴う寸法変化が大きくなる。
なお、特許文献3における線膨張係数の測定手法(引張TMA)では、脱水に伴う収縮が線膨張にオーバーラップするため、正確な測定となっていないのであり、真の線膨張係数を測定するためには、プラスチック基板を乾燥して脱水の影響を排除した上で、昇温測定する必要がある。
成分(A):一般式(1)で示される脂環骨格2官能(メタ)アクリレート系化合物
(ここで、R 1 はアルキレン基、Xは水素又はメチル基、aは1又は2、bは0又は1である。)
成分(B):一般式(2)で示される脂肪族4官能(メタ)アクリレート系化合物
(ここで、R 2 はエーテル酸素を含んでもよい炭化水素基、Xは水素又はメチル基である。)
成分(C):脂環骨格を有する分子量200〜2000の多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(C1)及び脂環骨格単官能(メタ)アクリレート系化合物(C2)の少なくとも1種以上の化合物
成分(D):光重合開始剤
(I)5cm以上離れた面内5点の線膨張係数(50℃〜100℃)のふれRが10%以内であること。
R(%)=100×(Rmax−Rmin)/Rave
(ここで、RmaxとRminは、それぞれ5点のうちの最大値と最小値であり、Raveは、5点の平均値である。)
(II)ガラス転移温度が150℃以上であること。
(III)50℃〜100℃の線膨張係数が60ppm/℃以下であること。
さらに、本発明は、前記樹脂成形体の少なくとも片面にガスバリア膜が成膜されてなるガスバリア性フィルムに関する。
また、本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア膜上に、更にウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含有してなるハードコート膜が成膜されてなること、また、フッ素系樹脂のコート膜が成膜されてなることが好ましい。
さらに、本発明は、前記ガスバリア性フィルムの少なくとも片面に透明導電膜が成膜されてなる透明導電性フィルムに関する。
また、本発明は、前記ガスバリア性フィルム、または前記透明導電性フィルムを用いてなるディスプレイ用基板に関する。
(I)5cm以上離れた面内5点の線膨張係数(50℃〜100℃)のふれRが10%以内であること
R(%)=100×(Rmax−Rmin)/Rave
(ここで、RmaxとRminは、それぞれ5点の中の最大値と最小値。Raveは5点の平均値である。)
また、本発明においては、更に下記の要件(II)及び(III)を満たすことが好ましい。
(II)ガラス転移温度が150℃以上であること
(III)50℃〜100℃の線膨張係数が60ppm/℃以下であること
樹脂成形体の厚さは、ディスプレイの厚さに影響し、近年の薄型化の要望に応えるため、またフレキシブル化の要望に応えるためには、500μm以下である。逆に、薄すぎでもディスプレイの支持体としての機能に乏しくなるため、下限は50μmである。厚さのより好ましい範囲は100〜400μm、更に好ましくは150〜300μm、特に好ましくは170〜250μmである。
本発明の最大の特徴は、プラスチック基板の面内における線膨張係数のふれを低減することにある。線膨張係数が、基板面内の位置や方向に依存せず一定であることにより、高精細なディスプレイを製造することが可能になる。線膨張係数のふれRが10%を超える場合は、基板を加熱した時の寸法変化を予想することが困難である。ふれRの好ましい範囲は7%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは4%以下である。
近年、デバイス化温度は低温化されつつある。数年前までアクティブディスプレイ製造における工程温度は200℃を超えていたが、100℃台での製造報告も多い。しかし、TFTや電極の形成は、150℃以上の温度で実施しないと性能が確保されていないのも現状である。そのため樹脂成形体のガラス転移温度は150℃以上であることが好ましく、より好ましくは基板の変形を低減するの点で200℃以上、更に好ましくは250℃以上である。ガラス転移温度が150℃未満の場合は、基板の耐熱性不足により、製造工程中に基板が変形することとなる。なお、樹脂成形体のガラス転移温度の上限としては、400℃である。
基板表面には電極など各種の無機膜が形成される。プラスチック基板と無機膜との線膨張係数の差が大きいと、加熱工程で基板は大きく反るため、デバイス化が困難となる。特に、樹脂成形体の50℃〜100℃における線膨張係数が60ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは断線やクラックを回避する点で55ppm/℃以下、更に好ましくは50ppm/℃以下である。線膨張係数が60ppm/℃を超えると、電極が断線したり、TFTアレイにクラックが生じ易くなる。なお、線膨張係数の下限としては、10ppm/℃である。
以下、これらの成分に関して詳述する。
成分(A):上記一般式(1)で示される脂環骨格2官能(メタ)アクリレート系化合物
成分(B):上記一般式(2)で示される脂肪族4官能(メタ)アクリレート系化合物
成分(C):脂環骨格を有する分子量200〜2000の多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(C1)及び骨格単官能(メタ)アクリレート系化合物(C2)の少なくとも1種以上の化合物
成分(D):光重合開始剤
ルキレン基、より好ましくはメチレン基又はエチレン基であり、Xは水素又はメチル基、好ましくはメチル基であり、aは1又は2、bは0又は1である。これらの脂環骨格2官能(メタ)アクリレート系化合物は、脂環骨格を有するため樹脂成形体の低吸水率化に寄与する。
かかる一般式(2)で示される化合物としては、分子側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入したものや、分子末端に(メタ)アクリロイル基を導入したものなどが挙げられるが、好ましくは分子末端に(メタ)アクリロイル基を導入したものであり、例えば、ペンタエリスルトールテトラアクリレート、ジグリセリンテトラアクリレートなどが好適なものとしてあげられる。
これら脂肪族4官能(メタ)アクリレート系化合物は、高度な架橋構造を形成するため、樹脂成形体の低線膨張化に寄与する。
本発明においては、上記脂環骨格2官能(メタ)アクリレート系化合物(A)と脂肪族4官能(メタ)アクリレート系化合物(B)を共重合する。好ましくは、メタクリレート系化合物同士では成形体がもろくなり、アクリレート系化合物同士では耐熱性が低下する傾向にあるため、成分(A)をメタクリレート系化合物、成分(B)をアクリレート系化合物とすることが好ましい。なお、成分(B)は低吸水率化には寄与しない。
なかでも、脂環骨格を有する分子量200〜2000の多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(C1)としては、上式(3)〜(8)のいずれかで示される脂環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物であることが好ましく、また、脂環骨格単官能(メタ)アクリレート系化合物(C2)としては、上式(9)〜(10)のいずれかで示される脂環骨格単官能アクリレート系化合物であることが好ましい。
式(3)〜(8)のいずれかで示される脂環骨格を有するポリイソシアネート系化合物の具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、トリシクロデカンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、水添化キシリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
式(3)〜(8)のいずれかで示される脂環骨格を有するポリイソシアネート系化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との反応により得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、2種以上混合して用いても良い。これらの反応物の中では、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの反応物である2官能ウレタンアクリレート、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物である6官能ウレタンアクリレートが線膨張係数のふれを低減する点で好ましい。
式(9)はトリシクロデシルアクリレートであり、式(10)はイソボニルアクリレートである。これら脂環骨格を有する単官能アクリレートの中では、トリシクロデシルアクリレートが好ましい。
成分(B)の含有比は、(A)、(B)、及び(C)の合計を100重量%とした場合に、10〜40重量%が好ましく、より好ましくは、15〜30重量%、更に好ましくは20〜30重量%である。成分(B)が、上限値を超えると吸水率が増大し、逆に、下限値未満では線膨張係数が増大する傾向にある。
成分(C)の含有比は、(A)、(B)、及び(C)の合計を100重量%とした場合に、10〜40重量%が好ましく、より好ましくは、15〜30重量%、更に好ましくは15〜25重量%である。成分(C)が、下限値未満では線膨張係数のふれが増大する傾向にあり、逆に、上限値を超えると、成分(C1)を用いた場合は光重合性組成物の粘度が増大し成形し難く、成分(C2)を用いた場合は耐熱性が低下する傾向にある。
光重合開始剤(D)の含有量は、特に限定されないが、成分(A)、(B)、及び(C)の合計100重量部に対して、0.1〜5重量部、更には0.5〜4重量部、特には1〜3重量部であることが好ましい。含有量が上限値を超えると、樹脂成形体のリタデーションが増大し、また400nmにおける光線透過率が低下する傾向にある。一方、下限値未満では重合速度が低下し、重合が十分に進行しないおそれがある。
(ア)樹脂成形体の厚み精度が±20%以内であること。
(イ)樹脂成形体のリタデーションが1nm以下であること。
(ウ)(メタ)アクリロイル基の反応率が80%以上であり、かつ樹脂成形体面内のふ れが5%以内であること。
リタデーションの好ましい範囲は0.5nm以下、より好ましくは0.3nm以下である。リタデーションが上限値を超えると線膨張係数のふれが大きくなる傾向にある。
反応率の好ましい範囲は85%以上、より好ましくは90%以上である。反応率が下限値未満では線膨張係数のふれが大きくなる傾向にある。また、反応率のふれの好ましい範囲は3%以内、より好ましくは1%以内である。反応率のふれが上限値を超えると線膨張係数のふれが大きくなる傾向にある。
本発明に従って得られる樹脂成形体は高い反応率を有するが、これは、異種の分子構造や官能基が混在することにより、(メタ)アクリロイル基の凍結が多少緩和されるためと推測される。
そして、反応率が向上すると、高分子構造が安定化し、線膨張張係数が安定化することとなる。ディスプレイ製造工程においては、加熱以外にも、光照射や超音波洗浄など各種工程が存在するが、樹脂成形体の反応率を向上することにより、これらの工程を経ても、一定した線膨張係数を維持することができ、TFTや電極の高精度な位置決めが可能になる。逆に、反応率が低い場合は、残存(メタ)アクリロイル基が加熱や光照射などの処理で反応し、線膨張係数が変動する。なお、ここで言う反応率とは、下記式で示される値である。
樹脂成形体中の重合した(メタ)アクリロイル基の数と重合していない(メタ)アクリロイル基の数は、得られた樹脂成形体の固体NMRを測定することにより得られる。
本発明における樹脂成形体の製造方法としては、上記の光重合性組成物を、波長200〜400nmの紫外線を用いて、照射光量1〜50J/cm2で光硬化することが好ましい。照射光量のより好ましい範囲は5〜40J/cm2、更に好ましくは10〜30J/cm2である。照射光量が下限値未満では十分な反応率が得られず、上限値を超える場合は生産性に劣り傾向にある。紫外線の照度は、10〜5000mW/cm2、好ましくは100〜1000mW/cm2である。照度が小さすぎると成形体内部まで十分に硬化しない。逆に、照度が大きすぎると重合が暴走しリタデーションが増大する傾向にある。紫外線は、複数回に分割して照射すると、リタデーションがより小さい樹脂成形体が得られるので好ましい。例えば、1回目に全照射量の1/100〜1/10程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射する方法が挙げられる。紫外線源としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、無電極水銀ランプ等が挙げられる。光源から発生する赤外線により重合が暴走するのを防ぐため、ランプに赤外線を遮断するフィルターや赤外線を反射しない鏡等を用いることも可能である。
一般的に、光硬化はバッチ式で行われる。すなわち、厚さ制御のためのスペーサーを介して、2枚の透明ガラスを対向させた型を作製し、そのキャビティに光重合性組成物を注入し、活性エネルギー線を照射して硬化させ、脱型することにより行われる。
ガスバリアの能力としては、好ましくは、酸素透過率が1cc/day・atm・m2以下、より好ましくは0.5cc/day・atm・m2以下、更に好ましくは0.3cc/day・atm・m2以下である。酸素透過率が上限値を超えると、液晶や有機EL素子の信頼性が低下する傾向にある。
さらに、表面抵抗値としては、50Ω/□以下が好ましく、より好ましくは30Ω/□以下、更に好ましくは20Ω/□以下である。かかる表面抵抗値が上限値を超えると導電性が不足する傾向にある。なお、表面抵抗値の下限としては通常5Ω/□である。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
各物性の測定方法は以下の通りである。
高速液体クロマトグラフィー(昭和電工社製「Shodex GPC system−11型」)に、カラム:「Shodex GPC KF−806L」(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレンージビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いて、標準ポリスチレン分子量換算による数平均分子量を測定した。
(2)光線透過率
分光光度計(日本分光工業(株)製、商品名:「Ubest−35」)を用いて550nmの光線透過率を測定した。
(3)ガラス転移温度
長さ30×幅3(mm)の試験片を用いて、セイコー電子社製「TMA120」で、引っ張り法TMA(支点間距離20mm、加重100g、昇温速度5℃/分、窒素フロー140ml/分)にて測定した。
15cm角の樹脂成形体の中央部と4隅から、長さ30(mm)×幅3(mm)の試験片を5枚切り出し、セイコー電子社製「TMA120」で、引っ張り法TMA(支点間距離20mm、加重10g、昇温速度5℃/分、窒素フロー140ml/分)にて測定した。一旦、25℃から150℃に昇温して試験片を乾燥し、窒素フローしながら25℃に冷却した後、昇温測定を行った。5枚の試験片に関して、下式に従い50℃から100℃までの線膨張係数を算出し、平均値を求めた。
線膨張係数(ppm/℃)=試験片の伸び(mm)/20(mm)/50(℃)×106
(5)線膨張係数のふれ
上記5枚の試験片の最大値Rmax、最小値Rmin、及び平均値Raveから、下式に従い算出した。
線膨張係数のふれR(%)=100×(Rmax−Rmin)/Rave
(6)吸水率
JIS K7209に準じ、100mm×100mmサイズの試験片を用いて、50℃、24時間乾燥した後、23℃、24時間水浸漬した後の吸水率を測定した。
15cm角の樹脂成形体の中央部と4隅の5カ所の厚みを測定し、下式に従い算出した。
厚み精度(%)=100×(最大値−最小値)/平均値
(8)リタデーション
オーク社製複屈折測定装置にて25℃で測定した。
(9)(メタ)アクリロイル基の反応率
15cm角の樹脂成形体の中央部と4隅から、長さ50mm×幅50mmの試験片を5枚切り出し、それぞれの試験片を凍結粉砕した後、BRUKER・BIOSPIN社製 「AVANCE DPX−400」で、固体NMRプローブを用いて測定した。5枚の試験片の平均値を反応率とした。観測核は13C、回転数は5000Hz、室温で測定した。重合していない(メタ)アクリロイル基中のカルボニル炭素は高磁場側(166ppm)に、重合したカルボニル炭素は低磁場側(176ppm)に検出される。これらのピーク面積比より反応率を算出した。光重合性組成物がペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートを含有する場合は(実施例8)、この化合物のカルボニル炭素が重合前後を問わず171ppmに検出されるため、その面積を除外して反応率を算出した。
(10)反応率のふれ
上記5枚の試験片の最大値、最小値、及び平均値から、下式に従い算出した。
反応率のふれ(%)=100×(最大値−最小値)/平均値
150mm角の樹脂成形体をガラス板2枚にはさみ、25℃における1辺(辺A)の長さを工業用顕微鏡(ニコン社製)で正確に測長した。次いで、オーブン中で樹脂成形体をガラスごと150℃で加熱した、1時間後にガラスごと取り出し、150℃における辺Aの長さを工業用顕微鏡(ニコン社製)で正確に測長した。下式より求められる熱膨張率と、樹脂の線膨張係数の差が、5ppm未満のものを○、5〜10ppmのものを△、10ppmを超えるものを×とした。
熱膨張率(ppm/℃)=樹脂成形体の伸び(mm)/150(mm)/125(℃)×106
(12)酸素透過率
オキシトラン社製の酸素モコン測定器にて、23℃、80%RHの条件下で測定した。
(13)鉛筆硬度
JIS K−5600に準じて測定した。
(14)撥水性
試験片のコート膜上に水滴を落とし、水との接触角を測定した。
(15)表面抵抗値
三菱化学社製の4端子法抵抗測定器(ロレスターMP)を用いて測定した。
[イソホロン構造を有する6官能ウレタンアクリレート(C1−1)の合成]
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート53.34g(0.24モル)、ペンタエリスリトールトリアクリレート143.19g(0.48モル)、ハイドロキノンメチルエーテル0.02g、ジブチルスズジラウレート0.02g、メチルエチルケトン500gを仕込み、60℃で3時間反応させ、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、溶剤を留去してウレタンアクリレート(C1−1)を得た。得られたウレタンアクリレート(C1−1)の数平均分子量は820であった。
ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカン=ジメタクリレート(新中村化学社製DCP)(A)60部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学社製A−TMMT)(B)20部、イソホロン構造を有する6官能のウレタンアクリレート(C1)20部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製「Irgacure184」)2部を、60℃にて均一になるまで撹拌し、光重合性組成物[I]を得た。官能基数と分子量は表1に示される通りである。
研磨ガラス板2枚を対向させ、厚さ0.2mmのシリコン板をスペーサーとした成形型に、上記光重合性組成物(23℃)を注液し、メタルハライドランプを用いて、照度200mW/cm2、光量5J/cm2で紫外線を照射した。脱型し得られた硬化物を、180℃の真空オーブン中で2時間加熱して、幅150mm×長さ150mm×厚さ0.2mmの樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体の物性を表2の通りであった。また、熱膨張率の測定結果も表2に示す。線膨張係数と熱膨張率の差異は小さく、寸法安定性に優れた樹脂成形体であることが確認された。
上記で得られた樹脂成形体の両面に、スパッタ法にて100℃で厚さ200Åの酸化珪素膜を成膜し、ガスバリア性フィルム1を得た。かかるガスバリア性フィルム1の酸素透過率を表3に示す。
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物として日本合成化学工業社製「UV7600B」20部、シランカップリング剤として信越化学製「KBM503」2部、光重合開始剤としてチバガイギー社製「Irgacure184」5部、および溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80部を用いて、ウレタンアクリレート系化合物を含有してなるハードコート剤を調整した。
かかるハードコート剤を、ガスバリア性フィルム1の酸化珪素膜の片面にスピンコートした(スピンコート条件:500rpm、室温)。100℃、5分で溶剤を乾燥した後、メタルハライドランプを用いて1Jの紫外線を照射して、厚さ2μmのハードコート膜を形成し、ガスバリア性フィルム2を得た。得られたガスバリア性フィルム2の表面硬度を表3に示す。
フッ素化アルキル基を含有するシランカップリング剤としてGE東芝シリコーン製「XC98−B2472」を用いて、ガスバリア性フィルム1の酸化珪素膜の両面にディップコートした(ディップコート条件:室温、1分)。60℃、90%RHの環境で1時間高温高湿処理した後、エタノールで洗浄して、フッ素樹脂のコート膜を形成し、ガスバリア性フィルム3を得た。得られたガスバリア性フィルム3の接触角を表3に示す。なお、コート前の酸化珪素膜の接触角は80゜であった。
ガスバリア性フィルム2の酸化珪素膜面(ハードコートの逆面)に、スパッタ法にて厚さ0.2μmのITO膜を成膜し、透明導電性フィルムを得た。かかる透明導電性フィルムの表面抵抗値を表3に示す。
表1に示される光重合性組成物[I]を用いて、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の物性は表2と表3に示されるとおりであった。更に、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムと透明導電性フィルムを得た。得られたガスバリア性フィルムと透明導電性フィルムの特性は表4に示されるとおりであった。
なお、実施例5で用いたウレタンアクリレート(C1−2)、実施例6で用いたウレタンアクリレート(C1−3)、実施例7で用いたウレタンアクリレート(C1−4)は下記の通りである。
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート53.34g(0.24モル)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート55.73g(0.48モル)、ハイドロキノンメチルエーテル0.02g、ジブチルスズジラウレート0.02g、メチルエチルケトン500gを仕込み、60℃で3時間反応させ、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、溶剤を留去してウレタンアクリレート(C1−2)を得た。得られたウレタンアクリレート(C1−1)の数平均分子量は450であった。
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、滴下漏斗、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、トリシクロデカンジメタノール287.12g(1.46モル)を仕込み、60℃に昇温後、2−イソシアナートエチルアクリレート412.88g(2.93モル)、ハイドロキノンメチルエーテル0.02g、ジブチルスズジラウレート0.02g、の混合液を滴下。滴下終了後60℃で3時間反応させ、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート(C1−3)を得た。得られたウレタンアクリレート(C1−3)の数平均分子量は480であった。
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、ノルボルネンジイソシアネート51.38g(0.25モル)、ペンタエリスリトールトリアクリレート148.62g(0.50モル)、ハイドロキノンメチルエーテル0.02g、ジブチルスズジラウレート0.02g、メチルエチルケトン500gを仕込み、60℃で3時間反応させ、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、溶剤を留去してウレタンアクリレート(C1−4)を得た。得られたウレタンアクリレート(C1−4)の数平均分子量は800であった。
表1に示される光重合性組成物を用いて、実施例1と同様にして成形しようとしたが、厚さ200μmのフィルムは割れて成形できなかった。
Claims (13)
- 下記成分(A)、(B)、(C)、及び(D)を含有してなる光重合性組成物を光硬化して得られる厚さ50〜500μmの透明樹脂成形体であり、下記の要件(I)を満たすことを特徴とする樹脂成形体。
成分(A):一般式(1)で示される脂環骨格2官能(メタ)アクリレート系化合物
(ここで、R 1 はアルキレン基、Xは水素又はメチル基、aは1又は2、bは0又は1である。)
成分(B):一般式(2)で示される脂肪族4官能(メタ)アクリレート系化合物
(ここで、R 2 はエーテル酸素を含んでもよい炭化水素基、Xは水素又はメチル基である。)
成分(C):脂環骨格を有する分子量200〜2000の多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(C1)及び脂環骨格単官能(メタ)アクリレート系化合物(C2)の少なくとも1種以上の化合物
成分(D):光重合開始剤
(I)5cm以上離れた面内5点の線膨張係数(50℃〜100℃)のふれRが10% 以内であること。
R(%)=100×(Rmax−Rmin)/Rave
(ここで、RmaxとRminは、それぞれ5点のうちの最大値と最小値であり、Raveは、5点の平均値である。) - 下記の要件(II)及び(III)を満たすことを特徴とする請求項1記載の樹脂成形体。
(II)ガラス転移温度が150℃以上であること。
(III)50℃〜100℃の線膨張係数が60ppm/℃以下であること。 - 光重合性組成物が、成分(A)を50〜80重量%、成分(B)を10〜40重量%、成分(C)を10〜40重量%含有してなることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の樹脂成形体。
- 樹脂成形体の厚み精度が±20%以内であることことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の樹脂成形体。
- 樹脂成形体のリタデーションが1nm以下であることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の樹脂成形体。
- (メタ)アクリロイル基の反応率が80%以上であり、かつ樹脂成形体面内のふれが5%以内であることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の樹脂成形体。
- 請求項1〜8いずれか記載の樹脂成形体の少なくとも片面に、ガスバリア膜が成膜されてなることを特徴とするガスバリア性フィルム。
- ガスバリア膜上に、更にウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含有してなるハードコート膜が成膜されてなることを特徴とする請求項9記載のガスバリア性フィルム。
- ガスバリア膜上に、更にフッ素系樹脂のコート膜が成膜されてなることを特徴とする請求項9記載のガスバリア性フィルム。
- 請求項9〜11いずれか記載のガスバリア性フィルムの少なくとも片面に透明導電膜が成膜されてなることを特徴とする透明導電性フィルム。
- 請求項9〜11いずれか記載のガスバリア性フィルム、または請求項12記載の透明導電性フィルムを用いてなることを特徴とするディスプレイ用基板。
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