JP6604012B2 - ラジカル硬化性組成物、プラスチックシート、プラスチックシートロール及び成形物 - Google Patents
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例えば、脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートと脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレートよりなる光重合性組成物が、鉛筆硬度の高い樹脂成形体を与えることが開示されており(例えば、特許文献1参照。)、また、脂環構造を有する単官能(メタ)アクリレート、脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート、及び脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレートよりなる光重合性組成物が、光学特性や熱機械特性に優れる樹脂成形体を与えることが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
(A)数平均分子量が200〜5,000の脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート
(B)脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレート(但し、前記(A)を除く。)
(C)重量平均分子量が5万〜300万の脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂
(D)重合開始剤
(E)第2級メルカプト基を有するメルカプト基含有化合物
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの、「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルの総称である。また、ここでいう多官能とは、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することを意味する。
本発明のラジカル硬化性組成物は、下記成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)を含有してなるものである。
(A)数平均分子量が200〜5,000の脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート
(B)脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレート(但し、前記(A)を除く。)
(C)重量平均分子量が5万〜300万の脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂
(D)重合開始剤
(E)第2級メルカプト基を有するメルカプト基含有化合物
尚、上記の重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)を用いて、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を意味する。
光重合開始剤(Dl)としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホシフィンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなどのラジカル開裂型の光重合開始剤が好ましい。これらの光重合開始剤(Dl)は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これら光重合開始剤(Dl)および熱重合開始剤(Dh)は併用することも可能である。
かかる化合物1分子が有するメルカプト基は、ラジカル硬化性組成物の硬化性の点から通常2〜6個であり、好ましくは2〜4個である。また、含有する全てのメルカプト基が第2級メルカプト基であるメルカプト基含有化合物であることが好ましい。
かかるメルカプト基含有化合物の分子量は、通常250 〜800 、好ましくは300〜600である。分子量が小さすぎるとラジカル硬化性組成物の粘度が低くなる傾向があり、大きすぎるとラジカル硬化性組成物の粘度が高くなる傾向がある。
これらのメルカプト基含有化合物(E)は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、通常0.1〜10重量部の割合で使用されることが好ましく、更には0.5〜5重量部、特には1〜4重量部が好ましい。かかる使用量が多すぎると、得られるプラスチックシートの耐熱性や剛性が低下する傾向があり、少なすぎると二重結合反応率が低下する傾向がある。
かくして本発明のラジカル硬化性組成物が得られる。
本発明のラジカル硬化性組成物のヘイズは、JIS K 7361−1に準拠し測定されるものである。例えば、10×36×55(mm)の角セルにラジカル硬化性組成物を18ml注入し、日本電色工業(株)製ヘイズメーター「NDH−2000」を用いて測定される値で通常0.5以下、さらには0.1〜0.4、特には0.1〜0.3である。
また、本発明のラジカル硬化性組成物の製造直後のヘイズに対する、本発明のラジカル硬化性組成物を製造後50℃で3日間貯蔵した組成物のヘイズの比は、通常0.5〜100であり、好ましくは0.5〜50であり、特に好ましくは0.7〜10である。
次に、かかるラジカル硬化性組成物を用いたプラスチックシート[I]、更にはそれを成形することにより得られる成形物[II]の製造方法について説明する。
かかる連続式光成形方法は、次のように行うことができる。
活性エネルギー線照射による硬化を行う場合、硬化性組成物に活性エネルギー線を照射するに当たっては、通常、波長200〜400nmの紫外線を用いて、照射光量が通常0.1〜0.8J/cm2で硬化する。照射光量のより好ましい範囲は0.1〜0.7J/cm2、更に好ましくは0.15〜0.5J/cm2である。照射光量が多すぎると硬化過剰となり後工程の立体成形加工が困難となる傾向があり、少なすぎると重合が不充分となる傾向にある。活性エネルギー線の照度は、通常10〜2,000mW/cm2、特には50〜1,000mW/cm2であることが好ましい。照度が小さすぎると生産性が低下する傾向があり、逆に、大きすぎると硬化度合いの制御が困難となる傾向がある。
得られたプラスチックシート[I]は、そのまま、所望の成形加工に供することもできるが、一旦支管に巻き取り、プラスチックシートロールとして保管することもできる。一旦支管に巻き取ってなるプラスチックシートロールは使用時に支管より巻出してプラスチックシート[I]として使用することができる。
上記支持フィルムを剥離することなく、支管に巻き取り、プラスチックシートロールとすることも可能であり、また、ブロッキングや摩擦での擦り傷等を防ぐために、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムや、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、離型紙などを、セパレーターとして共に巻き取ることも可能である。
即ち、長さ50mm×幅50mmの試験片を凍結粉砕した後、BRUKER・BIOSPIN社製「AVANCE DPX−400」で、固体NMRプローブを用いて測定する。観測核は13C、回転数は5,000Hz、室温で測定する。重合していない(メタ)アクリロイル基中のカルボニル炭素は高磁場側(166ppm)に、重合したカルボニル炭素は低磁場側(176ppm)に検出される。これらのピーク面積比より反応率(%)を算出する。
また、内部ヘイズが通常0.5%以下であり、特には0.3%以下、更には0.2%以下であることが好ましい。特に、製造直後の本発明のラジカル硬化性組成物を用いたプラスチックシート[I]の内部ヘイズに対する、製造後50℃で3日間貯蔵した本発明のラジカル硬化性組成物を用いたプラスチックシート[I]の内部ヘイズの比は、通常0.1〜2、さらには0.2〜1.8、特には0.2〜1.5である。
なお、かかる内部ヘイズは、JIS K 7361−1:1997に準拠し、日本電色工業株式会社製ヘイズメーター「NDH−2000」を用いて測定される値であり、予めガラス板2枚の間に流動パラフィンのみを挟んでヘイズ(Hz1)を測定し、次に流動パラフィンを表面に塗布したシートを挟んでヘイズ(Hz2)を測定し、これらの差をとることで算出される値を意味する。
特に本発明においては、従来のプラスチックシートにおいては平面の成形物しか得られなかったことに対し、平面以外の方向、例えば、略垂直な方向にも成形が為された三次元的な成形物を得ることが可能となる。したがって、平面に対し、平面以外の方向、例えば、略垂直な方向に任意の意匠を付与するなどして成形された成形物とすることが好ましい。
活性エネルギー線による硬化を行う場合、上記活性エネルギー線照射に際しては、通常波長200〜400nmの紫外線を用いて、通常照射光量0.5〜40J/cm2で光硬化することが好ましい。照射光量のより好ましい範囲は5〜35J/cm2、更に好ましくは10〜30J/cm2である。照射光量が多すぎると生産性が低下する傾向があり、少なすぎると表面硬度が低下する傾向にある。活性エネルギー線の照度は、通常10〜2,000mW/cm2、特には50〜1,000mW/cm2であることが好ましい。照度が小さすぎると生産性が低下する傾向があり、逆に、大きすぎると黄変が生じる傾向がある。
また、外部ヘイズが通常0.5%以下であり、特には0.3%以下、更には0.15%以下であることが好ましい。
また、内部ヘイズが通常0.5%以下であり、特には0.3%以下、更には0.2%以下であることが好ましい。特に、製造直後の本発明のラジカル硬化性組成物を用いた成形物[II]の内部ヘイズに対する、製造後50℃で3日間貯蔵した本発明のラジカル硬化性組成物を用いた成形物[II]の内部ヘイズの比は、通常0.5〜3、さらには0.8〜2である。
なお、かかる外部ヘイズおよび内部ヘイズは、上記プラスチックシート[I]と同一の測定方法による値を意味する。
なお、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
各物性の測定方法は以下の通りである。
得られたラジカル硬化性組成物について、JIS K 7361−1に準拠しヘイズを測定した。10×36×55(mm)の角セルにラジカル硬化性組成物を18ml注入し、日本電色工業(株)製ヘイズメーター「NDH−2000」を用いて測定した。
シートまたは成形物について、JIS K 7361−1:1997に準拠し、日本電色工業(株)製ヘイズメーター「NDH−2000」を用いて測定した。予めガラス板2枚の間に流動パラフィンのみを挟んでヘイズ(Hz1)を測定し、次に流動パラフィンを表面に塗布したシートまたは成形物を挟んでヘイズ(Hz2)を測定し、これらの差をとることで算出した。
JIS K 5600−5−4:1999に準じて、プラスチックシートの鉛筆硬度を測定した。なお、荷重については50gまたは750gにて測定した。
〔脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)〕
(A−1):下記に示す方法で得られたイソホロン構造(一般式(1))を有する6官能のウレタンアクリレート
温度計、攪拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート192.0g(0.86モル)と、ペンタエリスリトールトリアクリレート〔ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(水酸基価120mgKOH/g)〕808.0g(1.73モル)を仕込み、重合禁止剤としてハイドロキノンメチルエーテル0.01g、反応触媒としてジブチルスズジラウレート0.01gを仕込み、60℃で8時間反応させ、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、イソホロン構造(一般式(1))を有する6官能のウレタンアクリレートを得た。
(B−1):ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「DCP」)
ジシクロペンタニルアクリレートに、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.05%を加え、それを脱泡処理した後、気泡が入らないように2軸延伸ポリビニルアルコールフィルムの風袋に密封し、厚さが1.0mmとなるように調整した後、その風袋上部に2.8mmのガラス板を載せ、その上からメタルハライドランプで、360nm波長が50mW/cm2の照度で20J/cm2となるように照射した。
その後、2軸延伸ポリビニルアルコールフィルムの風袋より硬化物のみを取り出し、粉砕機で粉砕加工した。モノマー反応率が98%、重量平均分子量(Mw)が120万のアクリル系樹脂粉体を得た。
(D−1):1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
(E−1):ペンタエリトールテトラキス(3−スルファニルブタノアート)(昭和電工株式会社製「カレンズMT PE−1」)1分子におけるメルカプト基4個、分子量544.76
(E‘−1):ペンタエリスルトールテトラキスチオプロピオネート(淀化学社製「PETP」)1分子におけるメルカプト基4個、分子量488.64
[ラジカル硬化性組成物の調製]
表1に示す通り各成分を混合し、60℃にて均一になるまで撹拌した後、42μmのフィルターで濾過してラジカル重合性組成物を得た。なお、このときの組成物粘度は、コーン・プレート型粘度計(商品名「TPE−100」、東機産業株式会社製)を使用し、ペルチェプレート温度:23℃、使用コーンロータ:3°×R14にて測定した値で、いずれの水準も2,500mPa・sであった。調整直後の組成物、およびかかる組成物を50℃で3日間貯蔵した組成物を用い、下記の要領にてプラスチックシートおよびプラスチックシートロール、成形物を作製し、評価を行った。なお、かかる貯蔵条件は、あえて高温の厳しい条件における貯蔵安定性を評価する目的で設定したものである。
水平方向に連続的に搬送される25μm厚の2軸延伸ポリビニルアルコールフィルム上に、880μmのクリアランスを有するアプリケーターを用いて連続的に塗膜を形成した。かかる塗膜上に別途25μm厚の2軸延伸ポリビニルアルコールフィルムを貼合し、その25μm厚の2軸延伸ポリビニルアルコールフィルムの上から、メタルハライドランプにより、360nm波長での紫外線測定器にて、50mW/cm2の照射強度で、露光量が250mJ/cm2になるよう紫外線照射しながら搬送した。その後、両面の25μm厚の2軸延伸ポリビニルアルコールフィルムを剥離し、硬化したプラスチックシート(シートの厚さは表1に記載)のみを支管に巻き取り、ロール状組成物(プラスチックフィルムロール)を得た。
得られたプラスチックシートについて諸物性を評価し、その結果を表2に示す。
なお、実施例で得られたプラスチックシートを[I]、比較例で得られたプラスチックシートを[I']と表記する。
上記のプラスチックシートロールより一定量を切り出した。かかるプラスチックシートを360nmで約5,000mW/cm2の照度で20J/cm2になるように紫外線を照射し硬化し成形物モデルを得た。その後、かかる成形物モデルを真空乾燥機を用いて、200℃設定、0.1Torr以下の真空下で、乾燥機周囲金属躯体に接するように配置して6hrのアニールを行った。
得られた成形物モデルについて諸物性を評価し、その結果を表2に示す。
なお、かかる成形物モデルは、プラスチックシート平面に対して垂直方向に意匠性を付与するような成形を行っていないが、意匠性を付与する際にプラスチックシート[I]表面に凹凸や不純物が付着しなければ、意匠性の有無は成形物の諸物性に影響しないため、意匠性を付与して成形した成形物と同等の成形物である。
なお、実施例で得られた成形物を[II]、比較例で得られた成形物を[II']と表記する。
実施例及び比較例の評価結果は表2に示す。
また、製造直後の本発明のラジカル硬化性組成物を用いたプラスチックシート[I]の内部ヘイズに対する、製造後50℃で3日間貯蔵した本発明のラジカル硬化性組成物を用いたプラスチックシート[I]の内部ヘイズの比は、実施例1では0.4と良好な値であったのに対して、比較例1では3.3と非常に低下した。
さらに、製造直後の本発明のラジカル硬化性組成物を用いた成形物[II]の内部ヘイズ値に対する、製造後50℃で3日間貯蔵した本発明のラジカル硬化性組成物を用いた成形物[II]の内部ヘイズの比は、実施例1では1.2と良好な値であったのに対して、比較例1では4.3と非常に低下した。
なお、本評価はあえて高温の厳しい条件下で行ったものであるため、25℃において貯蔵した場合はさらに長期間の貯蔵を行っても良好な効果が得られるものである。
これは、第2級メルカプト基を有するメルカプト基含有化合物とラジカル硬化性組成物が有する他の化合物、特に多官能ウレタン(メタ)アクリレートや多官能(メタ)アクリレート不飽和化合物との反応性が抑制されたためラジカル硬化性組成物の貯蔵安定性が向上したものと推測される。
Claims (8)
- 下記成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)を含有してなることを特徴とするラジカル硬化性組成物。
(A)数平均分子量が200〜5,000の脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート
(B)脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレート(但し、前記(A)を除く。)
(C)重量平均分子量が5万〜300万の脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂
(D)重合開始剤
(E)第2級メルカプト基を有するメルカプト基含有化合物 - 脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂(C)の含有量が、脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレート(B)の合計100重量部に対して、1〜50重量部であることを特徴とする請求項1記載のラジカル硬化性組成物。
- 脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂(C)が、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレート(c1)のホモポリマーであることを特徴とする請求項1または2に記載のラジカル硬化性組成物。
- 23℃における粘度が、100〜20,000mPa・sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のラジカル硬化性組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のラジカル硬化性組成物を、反応率が50%以上75%未満となるように硬化して得られることを特徴とするプラスチックシート[I]。
- 厚さが50〜10,000μmであることを特徴とする請求項5記載のプラスチックシート[I]。
- 請求項5または6記載のプラスチックシート[I]が巻き取られて形成されることを特徴とするプラスチックシートロール。
- 請求項5または6記載のプラスチックシート[I]、または、請求項7記載のプラスチックシートロールから巻き出したプラスチックシート[I]を成形加工した後、反応率が
75%以上となるように硬化して得られることを特徴とする成形物[II]。
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