JP4808305B2 - 形状安定性を有するプラスチック積層基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、形状安定性を有するプラスチック基板に関する。詳しくは、パネル製造時の、加熱や温水洗浄工程における形状変化の小さいプラスチック積層基板に関する。本発明の基板は、有機EL表示パネル用、タッチパネル用等の表示用、光ディスク等の記憶、記録用、太陽電池パネル用、等の光学用部材、特に低複屈折光学部材、殊に液晶表示パネル用に好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来使用されている液晶用表示パネル(セルと呼ばれることがある)は、ガラス板を基板として使用するものであるが、このようなパネルではガラスの低密度化と機械的強度の向上に関して限界があるため現在要望されている軽量薄型化に対応できない。また生産性の向上に関しても成形性、加工性の観点から問題点が指摘されており、プラスチックを基板として用いたパネルに注目が集まっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ガラスに代えてプラスチック基板を使用した場合、プラスチックはガラスと比較して、ガスバリア性や表面硬度に劣るため、プラスチックシート単体を基板として使用するのは難しく、プラスチックシートの表面にガスバリア膜等種々の膜を形成してプラスチック積層基板とし、所期の性能を発現させる方法が一般的に採用されている。
ところで、プラスチック材料と、その積層化に用いられる各種膜材料の熱膨張係数は、必ずしも同じでない。そのため、パネルを製造する際の、加熱や温水洗浄工程等、温度変化や吸除湿を伴う工程において、その積層膜材料がプラスチックシートの自由な熱伸縮や吸脱水を妨げて、内部に応力を発生し、その結果プラスチック積層基板が反り等の形状変化を生じ、工程上支障を来すという問題点がある。
従って液晶表示パネルを作製する場合には、上記問題を解決する形状安定性に優れたプラスチック積層基板が不可欠となっている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる事情に鑑み、プラスチック積層体を構成する各材料の膜厚と反り変形現象との関係について詳細に検討を行った。その結果、プラスチック積層体を構成する各材料の膜厚がある一定の関係を満たしたときにのみ、反り変形を防ぐことができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明の要旨は、プラスチックシートの両面にそれぞれ無機酸化物からなるガスバリア膜A及びBを設け、ガスバリア膜Aの上に更に導電膜Pを設けてなるプラスチック積層基板において、A、B及びPの各々の厚みa、b及びpが下記式(1)を満足し、かつbが50Å以上、500Å未満であることを特徴とするプラスチック積層基板、にある。
【0006】
【数2】
a+(p/500)≦b≦a+(p/10) (1)
【0007】
(式中、a、b及びpは、それぞれA、B及びPの厚みを表す)
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のプラスチック積層体は、プラスチックシートの両面にそれぞれガスバリア膜A及びBを設け、ガスバリア膜Aの上に更に導電膜Pを設けてなるものであって、且つA、B及びPの各々の厚みa、b及びpが下記式(1)を満足するものである。
【0009】
【数3】
a+(p/500)≦b≦a+(p/10) (1)
【0010】
(式中、a、b及びpは、それぞれA、B及びPの厚みを表す)
【0011】
かかる積層体に用いられるプラスチックシートについては、特に限定されるものではなく、その材料としては種々のプラスチックが使用できるが、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、等の熱硬化性又は光硬化性プラスチックが好ましく、後述する特定の重合性組成物を重合硬化させて得られるものが特に好ましい。
以下、光硬化性組成物、これを重合硬化させて得られるプラスチックシート(以下、光硬化性樹脂層又は光硬化性樹脂シートということがある)及びそのシートを用いるプラスチック積層体について述べる。
【0012】
(光硬化性組成物)
本発明に用いられる光硬化性組成物とは、成分A、B及びCを含有してなるものである。
ここで、「含有してなる」とは、挙示成分A、B及びCの外に、本発明の趣旨を損なわない限り、少量の補助成分を含有してもよいことを意味する。
【0013】
なお、「(メタ)アクリル」及び「(メタ)アクリレート」とは、アクリルないしメタクリル及びアクリレートないしメタクリレートをそれぞれ総称するものである。
<成分A:含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート>
成分Aは、式(I)で表される脂環式炭化水素骨格を有するビス(メタ)アクリレート(含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート又はビス(メタ)アクリレートと略記することがある)である。
【0014】
【化3】
【0015】
(式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、mは1又は2を示し、nは0又は1を示し、p及びqは、それぞれ独立して0、1又は2を示す)
式(I)の含脂環骨格ビス(メタ)アクリレートの具体例としては、例えばビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(ヒドロキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(ヒドロキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、等が挙げられる。
【0016】
これらの中、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物が好ましい。
【0017】
なお、これらのトリシクロデカン化合物及びペンタシクロデカン化合物は、群内及び/又は群間で二種以上併用してもよい。
本発明に用いる光硬化性組成物中のビス(メタ)アクリレートの割合は、成分Aと成分Bとの合計(以下、全アクリレート成分ということがある)100重量部に対して70〜99重量部、好ましくは80〜98重量部、より好ましくは88〜97重量部、特に好ましくは92〜96重量部である。
【0018】
ビス(メタ)アクリレートの製造方法については、特に限定されるものではなく、一般的なエステル合成法(日本化学会編,新実験化学講座,14,有機化合物の合成と反応(II)(丸善,1977年刊)等に準拠して行うことができるが、代表的な製造方法としては、(i)式(1)で表される含脂環骨格ジオール(以下、式(1)のジオール又はジオールと略記することがある)と(メタ)アクリル酸とのエステル化反応による方法(特開昭62−225508号公報)、
【0019】
【化4】
【0020】
(式中、mは1又は2であり、nは0又は1である)
なお、式(1)の化合物の具体例としては、例えばビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン等を挙げることができる。これらの中、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンは、「TCDアルコールDM(ヘキスト社商品名)」として市販されている。
【0021】
(ii)ジオールと(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応による方法、
(iii)ジオールと(メタ)アクリル酸ハライドとの反応による方法、等が挙げられる。
これらの中、(i)及び(ii)の方法が実用的であり、好ましい。
【0022】
(i)のジオールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応は、ジオール1モルに対して、通常2.0〜2.6モルの(メタ)アクリル酸を用い、触媒として、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、フッ化硼素、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、カチオン型イオン交換樹脂等を用い、通常トルエン、ベンゼン、へプタン、ヘキサン等の溶媒の存在下、反応により生成する水を留去しながら行う。また、(ii)のジオールと(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応は、ジオール1モルに対して、一般的には(メタ)アクリル酸メチルを通常2.0〜10.0モルを用い、触媒として、例えば、硫酸、P−トルエンスルホン酸、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、カリウムブトキシド等を用い、通常トルエン、ベンゼン、ヘプタン、ヘキサン等の溶媒の存在下、反応により生成するメタノールを留去しながら行う。
【0023】
反応は、重合禁止剤として、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、銅塩等を用いることができる。
これらの反応においては、反応の進行状況を高速液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ等により分析し、反応が100%完結する前段階で停止して、反応混合物から未反応のジオール、(メタ)アクリル酸、触媒、重合禁止剤、溶媒、等を除去することにより、ビス(メタ)アクリレートとモノ(メタ)アクリレートとの混合物を得ることができる。
【0024】
そして、その混合割合が適当なものについては、本発明に用いる光硬化性組成物の成分Aと成分Bとの混合物原料として、そのまま用いることができるので、便利であり、好ましい。
<成分B:含脂環骨格モノ(メタ)アクリレート>
成分Bは、式(II)で表される脂環式炭化水素骨格を有するモノ(メタ)アクリレート(含脂環骨格モノ(メタ)アクリレート又はモノ(メタ)アクリレートと略記することがある)である。
【0025】
【化5】
【0026】
(式中、R3 は水素原子又はメチル基を示し、mは1又は2を示し、nは0又は1を示し、r及びsは、それぞれ独立して、0、1又は2を示す)
式(II)の含脂環骨格モノ(メタ)アクリレートの具体例としては、例えばビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=モノアクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=モノメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=モノアクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=モノメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=モノアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=モノメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=モノアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=モノメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(ヒドロキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=モノアクリレート、ビス(ヒドロキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=モノメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(ヒドロキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=モノアクリレート、ビス(ヒドロキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=モノメタクリレート及びこれらの混合物、等が挙げられる。
【0027】
これらの中、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=モノアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=モノメタクリレート及びこれらの混合物、が好ましい。
これらのトリシクロデカン化合物及びペンタシクロデカン化合物は、群内及び/又は群間で二種以上併用してもよい。
【0028】
本発明に用いる光硬化性組成物中のモノ(メタ)アクリレートの割合は、全アクリレート成分100重量部に対して1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部、より好ましくは3〜12重量部、特に好ましくは4〜8重量部である。
モノ(メタ)アクリレートの割合が少なすぎると、硬化樹脂の機械強度改良効果が得られなくなるし、逆に多すぎると硬化樹脂の耐熱性が低下する。
【0029】
かかるモノ(メタ)アクリレートについては、式(I)のビス(メタ)アクリレートの合成法の例えば(i)又は(iii)の方法において、ジオール1モルに対する(メタ)アクリル酸の量を半分の1〜1.3モルにするとか、(メタ)アクリル酸ハライドの量を半分の1モルにするとかにして、半エステルが生成する条件で反応を行うことにより合成することができる。
【0030】
しかしながら、前記の式(I)のビス(メタ)アクリレートを例えば(i)の方法により合成する際に、前述したように、反応を途中で停止することにより、モノ(メタ)アクリレートの所望量を含むビス(メタ)アクリレートの混合物が得られ、これを本発明に用いる光硬化性組成物の原料としてそのまま使用することができるので、通常は、モノ(メタ)アクリレートを別途合成するには及ばない。
【0031】
<成分C:少なくとも二官能性のメルカプト化合物>
本発明に用いる光硬化性組成物に用いられるメルカプト化合物は、少なくとも二官能性の、好ましくは三官能性以上のメルカプト化合物(以下、多官能メルカプト化合物ということがある)である。
少なくとも二官能性のメルカプト化合物の具体例としては、例えば一般式(III)、(IV)及び(V)でそれぞれ表される化合物並びに2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3−メルカプトプロポキシフェニル)プロパン、1,10−デカンジチオール、ジメルカプトトリエチレンジスルフィド、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、のようなジグリシジル化合物と硫化水素との反応により合成されるジメルカプト化合物、等が挙げられる。
【0032】
【化6】
【0033】
(式中、R4 はメチレン基又はエチレン基を示し、R5 はエーテル酸素を含んでいてもよい炭素数2〜15の炭化水素残基を示し、aは2〜6の整数を示す)
式(III)において、R5 はエーテル酸素を含んでいてもよい炭素数2〜15の炭化水素残基であるが、その具体例としては、例えばペンタエリスリトール残基、ジペンタエリスリトール残基、トリメチロールプロパン残基、エチレングリコール残基、ジエチレングリコール残基、トリエチレングリコール残基、ブタンジオール残基、等が挙げられる。
【0034】
式(III)のメルカプト化合物は、2〜6価のチオグリコール酸エステル又はチオプロピオン酸エステルであるが、その具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(β−チオプロピオネート)、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、ジエチレングリコールビス(β−チオプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(チオグリコレート)、トリエチレングリコールビス(β−チオプロピオネート)、トリエチレングリコール(チオグリコレート)、ブタンジオールビス(β−チオプロピオネート)、ブタンジオールビス(チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(β−チオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
【0035】
【化7】
【0036】
(式中、XはHS−(CH2 )b −CO−(OCH2 CH2 )d −(CH2 )c −を示す。但し、b及びcは、それぞれ独立して、1〜8の整数を示し、dは0、1又は2を示す)
式(IV)の化合物は、ω−チオール基含有イソシアネートである。式(IV)の化合物の具体例としては、例えば、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス(2−チオグリコニルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシエトキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス(2−チオグリコニルオキシエトキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[3−(β−チオプロピオニルオキシ)プロピル]イソシアヌレート、トリス(3−チオグリコニルオキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0037】
【化8】
【0038】
(式中、R6 及びR7 は、それぞれ独立して、アルキレン基を示し、e及びfは、それぞれ独立して、0又は1を示し、gは1又は2を示す)
式(V)の化合物はチオール基含有炭化水素である。式(V)の化合物の具体例としては、例えばベンゼンジメルカプタン、キシリレンジメルカプタン、4,4′−ジメルカプトジフェニルスルフィド、等が挙げられる。
【0039】
これらの少なくとも二官能性のメルカプト化合物の中、式(III)、(IV)及び(V)でそれぞれ表される化合物が好ましく、これらの化合物の中、三官能性以上のメルカプト化合物がより好ましく、四官能性のメルカプト化合物が特に好ましい。
本発明に用いる光硬化性組成物中の少なくとも二官能性のメルカプト化合物の配合割合は、全アクリレート成分100重量部に対して1〜10重量部、好ましくは4〜8の重量部である。
【0040】
メルカプト化合物の割合が少なすぎると、硬化樹脂の複屈折が増大するし、逆に多すぎると硬化樹脂の耐熱性が低下する。
本発明に用いる光硬化性組成物の中から、前記成分Bの含脂環骨格モノ(メタ)アクリレートを除いた組成物でも、低複屈折性と高耐熱性の二つの課題だけであれば解決することが可能である。即ち、前記成分Aの含脂環骨格ビス(メタ)アクリレートと前記成分Cの多官能メルカプト化合物よりなる組成物を光重合硬化させることにより、低複屈折且つ高耐熱性を有する樹脂が得られる。多官能メルカプト化合物を配合する理由は、▲1▼メルカプト化合物中のチオール基が連鎖移動剤として作用し、重合硬化を緩やかに均一に進行させることにより、硬化物中の複屈折を大幅に低減する。また▲2▼分子内に二個以上のチオール基を有する多官能性のメルカプト化合物を用いることにより、前記成分Aのビス(メタ)アクリレート化合物から形成される三次元網目構造にメルカプタン化合物が入り込む際、耐熱性を損なうことなく上記複屈折の問題を解決することができる。
【0041】
しかしながら、成分Aも成分Cも多官能性であり、得られる硬化物は高度に架橋された高分子構造を有するため、耐衝撃性等の機械強度に劣る問題がある。この問題は前記成分Bの含脂環骨格モノ(メタ)アクリレートを特定の割合配合することにより解決される。即ち、高度に架橋された高分子の中に、単官能であり、架橋には寄与しない成分Bが入り込むことにより、架橋密度が適度に制御される。その結果、耐衝撃性等の機械強度が向上すると共に、成形時の製品割れ等生産歩留まりの問題を解決することができる。
【0042】
重要なのは成分Bを配合した際に、硬化物の複屈折を増大させたり、耐熱性の低下や吸水率の悪化を引き起こさないことであるが、本発明における成分Bは、成分Aと同様な脂環骨格を有する(メタ)アクリレートであるため両者の重合速度はほぼ等しく、また相分離を起こさないため全く複屈折は変化しない。耐熱性や吸水率に関しても、成分AとBからそれぞれ得られる硬化物は同様な特性を持つため、性能悪化を引き起こすことなく液晶表示用の低複屈折光学部材として十分な性能を維持している。
【0043】
<ラジカル重合開始剤>
本発明に用いる光硬化性組成物の共重合に用いられるラジカル重合開始剤(以下、光重合開始剤又は光開始剤ということがある)については、紫外線等の活性エネルギー線によりラジカルを発生するものであれば、特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば一般式(VI)で表される化合物、アセトフェノン系光開始剤及びベンゾフェノン系光開始剤を挙げることができる。
【0044】
【化9】
【0045】
(式中、R8 はメチル基、メトキシ基又は塩素原子を示し、nは2又は3の数を示し、Rはフェニル基又はメトキシ基を示す)
そして、式(VI)の化合物の具体例としては、例えば2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド及びアシルホスフィン酸エステル類、を挙げることができる。
【0046】
また、アセトフェノン系化合物の具体例としては、例えば1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−ジフェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシジアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、等を挙げることができる。
【0047】
また、ベンゾフェノン系化合物の具体例としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ジフェノキシベンゾフェノン、等を挙げることができる。
これらの中、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン及び、ジフェノキシベンゾフェノンが好ましく、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾフェノンが特に好ましい。
【0048】
これらの光重合開始剤は二種以上を併用してもよい。
なお、光重合開始剤の添加量は、モノマー100重量部に対し0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.3重量部である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し複屈折の増大をもたらすだけでなく色相も悪化する。また、少なすぎると組成物を十分に硬化させることができなくなる。
【0049】
<補助成分>
本発明に用いる低複屈折材料は成分A、B及びCを含んでなる組成物を重合硬化させてなるものであり、この組成物が少量の補助成分を含んでもよいことは前記したところである。従って本発明に用いるプラスチックシート用樹脂は、その硬化前の組成物100重量部に対し30重量部程度までの量でラジカル重合可能な他の単量体を混合して共重合させて製造することも可能である。その際に用いる他の単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシメチルテトラシクロデカン、メタクリロイルオキシメチルテトラシクロドデセン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキセンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールAアクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、ビスフェノールAビス[(オキシエチル)エーテル]=ジアクリレート、ビスフェノールAビス[(オキシエチル)エーテル]=ジメタクリレート、ビスフェノールAビス[(オキシエチル)エーテル]=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、テトラブロモビスフェノールAビス[(オキシエチル)エーテル]=ジアクリレート、テトラブロモビスフェノールAビス[(オキシエチル)エーテル]=ジメタクリレート、テトラブロモビスフェノールAビス[(オキシエチル)エーテル]=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、ビスフェノールAビス[(ジオキシエチル)エーテル]=ジアクリレート、ビスフェノールAビス[(ジオキシエチル)エーテル]=ジメタクリレート、ビスフェノールAビス[(ジオキシエチル)エーテル]=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、ビスフェノールAビス[(ポリオキシエチル)エーテル]=ジアクリレート、ビスフェノールAビス[(ポリオキシエチル)エーテル]=ジメタクリレート、ビスフェノールAビス[(ポリオキシエチル)エーテル]=アクリレートメタクリレート、2,2′−ビス[4−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)シクロヘキシル]プロパン、1,4−ビス(メタクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン等の核及び/又は側鎖置換及び非置換スチレン等が挙げられる。
【0050】
これらの他の単量体の中でもメタクリロイルオキシメチルシクロドデカン、2,2−ビス[4−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)シクロヘキシル]プロパン、1,4−ビス(メタクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、及びこれらの混合物が特に好ましい。
【0051】
補助成分としては、その他にも、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、充填剤等がある。
なお、所望により添加してもよい紫外線吸収剤については、特に限定されるものではないが、ベンゾフェノン系のものと、トリアゾール系のものが好ましく、これらは単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
【0052】
その具体例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、2−(2′−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジターシャリーブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−ターシャリーブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物を挙げることができる。
【0053】
これらの紫外線吸収剤の割合は、ジエチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.01〜0.2重量部、好ましくは0.03〜0.1重量部である。紫外線吸収剤の配合割合が、多すぎると、硬化物が充分に硬化しないが、もしくは、得られた硬化物の内部均質性が悪くなる。また、少なすぎると、所望の紫外線カット性が得られなくなる。
【0054】
(プラスチックシートの製造)
<光硬化性組成物の共重合>
本発明に用いる光硬化性組成物については、ラジカル重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射することにより容易に共重合(光重合、光重合硬化又は光硬化ということがある)させることができる。
【0055】
活性エネルギー線については、ラジカル重合開始剤に作用してラジカルを発生させるものであれば特に限定されるものではなく、例えば電子線、紫外線等を用いることができる。
これらの中、モノマー及び重合開始剤の種類、量を参酌して、200〜400nmの紫外線を好ましくは0.1〜200jの範囲で照射するのが好ましい。
【0056】
照射が極端に少ない場合は重合が不完全なため硬化物の耐熱性、機械特性が十分に発現されず、逆に極端に過剰な場合は硬化物の黄変等の光による劣化を生じるので好ましくない。
そして、活性エネルギー線の照射については、一段で行ってもよいが、表面性状の良好なシートを得るためには、複数段で、少なくとも二段で行うことが好ましい。
【0057】
照射を二段で行う場合、その第一段階では活性エネルギー線の硬化所要量の15%以下、好ましくは10%以下、特に好ましくは7%以下を照射して、キャビティ内の光硬化性樹脂を自己保形性を有するように、即ち、スペーサーを取外しても樹脂が漏洩しないようにゲル化させる。なお、本明細書において活性エネルギー源の硬化所要量とは、キャビティ内の樹脂組成物のエチレン性炭素−炭素二重結合の80%を消失させるのに要する照射量を指すものとする。なお、活性エネルギー線の照射によるエチレン性炭素−炭素二重結合の消失の割合は、下記式により算出される。
【0058】
消失量=(1−K/M)×100(%)
M=AM /BM
AM :活性エネルギー線照射前の赤外吸収における二重結合のピーク面積
BM :活性エネルギー線照射前の赤外吸収におけるC−H結合のピーク面積
K=AK /BK
AK :活性エネルギー線照射後の赤外吸収における二重結合のピーク面積
BK :活性エネルギー線照射後の赤外吸収におけるC−H結合のピーク面積
なお、二重結合のピークは1658.5〜1591cm-1に出現し、C−H結合のピークは3210〜2809.8cm-1に出現する。
【0059】
この第一段階における活性エネルギー線照射量が硬化所要量の15%を超えると、硬化収縮が起り、キャビティ内の樹脂が面板から剥離して、生成する樹脂シート表面に欠陥を生じ易い。また、ゲル化した樹脂がスペーサーに強固に付着して、スペーサーが取外し難くなるという問題もある。好ましくは照射量が硬化所要量の10%以下の段階で面板間の間隔を一定に保持する手段を解放する。逆に活性エネルギー線照射量が少なすぎると、ゲル化が不十分で、成形型の面板の緊締を解放したときに、キャビティ内の樹脂が成形型の隙間から漏れる事故が起こり易い。また、ゲル化した樹脂と面板との付着力が弱く、成形型の面板の緊締を解放したときの衝撃で樹脂が面板から剥離するという事故が起ることもある。
【0060】
そして、第二段階において、モノマーの95〜100%が反応するように照射を行い、重合を完結させる。
活性エネルギー線を照射する雰囲気は、通常の大気中、又は不活性ガス雰囲気中のいずれでもよい。また、照射時の温度は、通常、第1段:常温〜100℃、第2段:常温〜300℃であり、照射時間は、通常、第1段:1秒〜1分、第2段:10秒〜10分である。
【0061】
活性エネルギー線用の光源としては、ケミカルランプ、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が用いられる。
硬化を速やかに完了させる目的で、熱重合を併用してもよい。即ち、光照射と同時に組成物並びに型全体を30〜300℃の範囲で加熱する。この場合は重合をよりよく完結するためにラジカル重合開始剤を添加してもよいが、過剰な使用は複屈折の増大と色相の悪化をもたらす。熱重合開始剤の具体例としてはベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)等が挙げられ、使用量はモノマー100重量部に対して1重量部以下が好ましい。
【0062】
更に本発明において光照射によるラジカル重合を行った後、硬化物を加熱することにより重合反応の完結及び重合時に発生する内部歪を低減することも可能である。加熱温度は、硬化物の組成やガラス転移温度に合わせて適宜選択されるが、過剰な加熱は硬化物の色相悪化をもたらすため、ガラス転移温度付近かそれ以下の温度が望ましい。
【0063】
上記により得られるプラスチックシートは、低複屈折性を有する光学部材である。本発明のプラスチックシートは、複屈折の値が、10nm以下、好ましくは5nm以下、更に好ましくは2nm以下、特に好ましくは1nm以下のものである。
<ガスバリア膜>
本発明のプラスチック積層体は、基材となるプラスチックシートの両面にガスバリア膜を種々の方法で形成してなるものである。ガスバリア膜を両面に形成せずに、片面のみに形成した場合は、加熱処理や温水処理工程等において寸法変形を生じやすく、特に基板上にカラーフィルタを形成してカラー液晶パネル向けに用いる場合などは、画素の位置ずれ等を起こしやすく好ましくない。
【0064】
ガスバリア膜としては公知のものが使用できる。例えば、無機酸化物膜、或いは、ポリビニルアルコール、エチレンービニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のガスバリア性樹脂層が挙げられるが、好ましくは無機酸化物膜である。無機酸化物とは、金属、非金属、亜金属の酸化物であり、具体例としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化カドミウム、酸化銀、酸化金、酸化クロム、酸化珪素、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化バリウム等が挙げられるが、酸化珪素が特に好ましい。なお、無機酸化物には、微量の金属、非金属、亜金属単体やそれらの水酸化物、また、可撓性を向上させるために適宜炭素又はフッ素が含まれていてもよい。
【0065】
ガスバリア膜を形成する方法としては、樹脂等をコートする方法、無機酸化物よりなる蒸着膜を形成する方法が挙げられる。蒸着膜を形成する方法としては、真空蒸着法、真空スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法等、従来公知の方法が使用できる。
【0066】
<硬化被膜>
本発明における硬化被膜はプラスチックシート上に導電膜を積層する際に、導電膜と基板との密着性を向上し、更にガスバリア膜を保護するための樹脂膜である。かかる硬化被膜は、それぞれのガスバリア膜、即ち、ガスバリア膜A及びBの少なくとも片面の上に設けられるのが好ましい。かかる硬化被膜が導電膜形成面側に設けられる場合には、ガスバリア膜、硬化被膜、導電膜の順に積層される。この膜はアクリレート系の光硬化性モノマーとイソシアネート基含有化合物、好ましくはイソシアネート基含有アクリレート化合物、更に好ましくはイソシアネート基含有シランカップリング剤と分子内に水酸基と3個以上のアクリロイル基を有する水酸基含有多官能アクリレートとを反応して得られる化合物、を含んでなる光硬化性組成物を重合硬化して得られる。ここで、「含んでなる」とは、アクリレート系の光硬化性モノマーとイソシアネート基含有化合物以外に活性エネルギー線の照射による重合硬化を阻害しないポリマー等を全組成物100重量部中50重量部以下の範囲で併用してもよいことを意味する。
【0067】
アクリレート系の光硬化性のモノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカンジアクリレート、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカンジメタクリレート、ビス(オキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカンジメタクリレート、ビス(オキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカンジメタクリレート、2,2−ビス(4−(アクリルオキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタクリルオキシジエトキシ)フェニル)プロパン、トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3,8−ジイルジメチルジアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3,8−ジイルジメチルジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート等が挙げられる。
【0068】
イソシアネート基含有化合物の例としては、アクリルイソシアネート、メチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、t−ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−イソプロペニルイソシアネート、ジメチル(m−イソプロペニル)ベンジルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,2−ジイソシアネートエタン、1,3−ジイソシアネートプロパン、1,2−ジイソシアネートプロパン、1,4−ジイソシアネートブタン、1,5−ジイソシアネートブタン、1,5−ジイソシアネートペンタン、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(3−イソシアネートプロピル)エーテル、ビス(3−イソシアネートプロピル)スルフィド、ビス(6−イソシアネートヘキシル)スルフィド、1,7−ジイソシアネートヘプタン、1,5−ジイソシアネート−2,2−ジメチルペンタン、2,6−ジイソシアネート−3−メトキシヘキサン、1,8−ジイソシアネートオクタン、1,5−ジイソシアネート−2,2,4−トリメチルペンタン、1,9−ジイソシアネートノナン、1,10−ジイソシアネートデカン、1,11−ジイソシアネートウンデカン、1,12−ジイソシアネートドデカン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0069】
イソシアネート基含有アクリレートとしては、公知のジイソシアネートと公知のヒドロキシアクリレート、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を反応させて得られる化合物等が挙げられるが、好ましくは、5−イソシアネート−1−(イソシアネートメチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンと2−ヒドロキシエチルアクリレートの付加体、2−(5−イソシアネート−1,3,3−トリメチル−シクロヘキシルメチルカルバモイルオキシ)−エチルアクリレート、2−(3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−エチルアクリレート、2−(4′−イソシアネート−4−ジフェニルメタンカルバモイルオキシ)−エチルアクリレート、2−(5−イソシアネート−1−カルバモイルオキシ)−エチルアクリレート、4−(5−イソシアネート−1,3,3−トリメチル−シクロヘキシルメチルカルバモイルオキシ)−ブチルアクリレート、4−(3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−ブチルアクリレート、4−(4′−イソシアネート−4−ジフェニルメタンカルバモイルオキシ)−ブチルアクリレート、4−(5−イソシアネート−1−カルバモイルオキシ)−ブチルアクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。イソシアネート基含有シランカップリング剤は、一般式で表わされるものが使用される。
【0070】
【化10】
【0071】
(式中、R1 及びR2 は同じ又は異なる一価炭化水素基であり、好ましくはR1 及びR2 はメチル、エチル、プロピル等の低級アルキル基である。R3 は炭素数2〜8の二価炭化水素基である。aは2〜3の整数、bは0〜1の整数、cは4−a−bに等しい整数である)
イソシアネート基含有シランカップリング剤の具体例としては、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、2−イソシアナトエチルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、2−イソシアナトエチルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、2−イソシアナトエチルメチルジメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、2−イソシアナトエチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。次に、分子内に水酸基と3個以上のアクリロイル基を有する水酸基含有多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0072】
イソシアネート基含有シランカップリング剤と水酸基含有多官能アクリレートの反応は、各化合物を−NCO/−OH基≦1の割合で混合し、60〜110℃で1〜20時間攪拌することにより得られる。
これらの光硬化性組成物はアクリレート系の光硬化性モノマー50〜99重量部に対して、イソシアネート基含有化合物を1〜50重量部、より好ましくは5〜30重量部、更に好ましくは10〜20重量部配合することにより、硬化被膜としての物性バランスが得られる。イソシアネート基含有化合物が無くても光硬化性樹脂シートと硬化被膜の密着性は得られるが、イソシアネート基を添加することにより、更にガスバリア膜及び透明導電膜との密着性が得られるようになる。即ち、これらの無機膜上の水酸基とイソシアネート基が反応することにより強固な結合が形成され、導電膜側のアンカー能及びガスバリア膜側の保護層としての両性能が発現する。イソシアネート基含有化合物の量が少なすぎるとガスバリア膜側の密着性が低下し、多すぎると耐薬品性が低下する。
【0073】
また、その他併用できるポリマー等として、幾つかを例示すると次の通りである。ポリメチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチルアクリレート。また、これら活性エネルギー線硬化性組成物には公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、熱重合禁止剤、シランカップリング剤等が配合されていてもよい。上記組成物は通常揮発性溶媒により希釈して塗布されることが好ましい。溶媒及び希釈度は特に限定されないが、使用に当って被塗布物の表面性状を損なわないことが要求される。更には、組成物の安定性、基材に対する濡れ性、揮発性等も考慮して溶媒は決められるべきである。また、溶媒は一種のみならず、二種以上の混合物として用いることも可能である。溶媒としては、アルコール、エステル、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素、及び、非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【0074】
これらの光硬化性組成物は、紫外線等の活性エネルギー線によりラジカルを発生する光重合開始剤を添加する公知のラジカル重合により硬化させる。その際に用いる重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。好ましい開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドである。これら光重合開始剤は二種以上を併用してもよい。
【0075】
光重合開始剤の添加量は、光硬化性組成物100重量部に対し、1〜30重量部、好ましくは10〜20重量部である。光開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し、複屈折の増大をもたらすだけでなく、色相も悪化する。また、少なすぎると組成物を十分に硬化させることができなくなる。
硬化被膜を形成するには、ディップコート法が最適である。即ち、ガスバリア付き光硬化性樹脂シートを硬化被膜を形成する光硬化性組成物中に浸漬して引き上げた後、活性エネルギー線を照射して硬化させればよい。この時、塗布してから硬化させる前に予備加熱を行ってもよい。光硬化性組成物が溶剤で希釈されている場合には、この予備加熱の工程において溶剤を除去しなければならない。硬化被膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、接着強度の保持や硬度等の点から、通常0.1〜50μm、好ましくは0.3〜10μmである。硬化被膜の膜厚はディップコート時の引き上げ速度、溶剤の希釈度でコントロールすることができる。
【0076】
照射する活性エネルギー線の量は光重合開始剤がラジカルを発生する範囲であれば任意であるが、200〜400nmの紫外線を0.1〜100J/cm2 、好ましくは1〜30J/cm2 の範囲で照射する。使用するランプの具体例としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ等が挙げられる。
<導電膜>
本発明のプラスチック積層体は、基材のブラスチックシートの両面に形成されたガスバリア膜のうちの一方の上に更に各種透明導電膜を種々の方法により形成してなるものである。ガスバリア膜の上に形成される透明導電膜には特に制限はないが、例えばこの導電膜を形成する導電物質として、酸化インジウム、酸化スズ、金、銀、銅、ニッケル等が挙げられ、これらは単独又は二種以上を混合して使用することができる。このうち、通常は酸化インジウム99〜90%と酸化ズズ1〜10%との混合物よりなるインジウムスズオキサイド(以下「ITO」という)が透明性と導電性のバランスの面から好ましい。透明導電膜を形成する方法は、従来から公知の真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着法等を用いて行うことができる。このうち、スパッタリング法が密着性の点から好ましい。
(ガスバリア層及び導電膜の厚み)
本発明のプラスチック積層体は、その積層体を構成するガスバリア層A、B、及びガスバリア層A上に形成された導電膜Pの厚みが、下記式(1)を満足することを特徴とする。
【0077】
【数4】
a+(p/500)≦b≦a+(p/10) (1)
(式中、a、b及びpは、それぞれA、B及びPの厚みを表す)
【0078】
即ち、下記の二つの条件を同時に満たすことが必要である。
(1)導電膜側に対して反対側のガスバリア層Bの厚みが、導電膜側のガスバリア層Aの厚みよりも導電膜の厚みの500分の1以上大きくなければならないこと。
(2)導電膜側に対して反対側のガスバリア層Bの厚みが、導電膜側のガスバリア層Aの厚みよりも導電膜の厚みの10分の1を越えて大きくならないこと。
ガスバリア層Bの厚みがこの範囲にある場合にのみ、プラスチック積層体に生じる反り等の形状変化が著しく抑制される。
プラスチック積層体は、熱的負荷等を受けた場合、導電膜P側に凸な反り変形を生じやすい。そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、ガスバリア層A側に存在する導電膜の熱膨張係数が基材のプラスチックシートの熱膨張係数よりもはるかに小さいこと等が原因であると推定される。ガスバリア層Bの厚みbがガスバリア層Aの厚みaより大きい場合は、この導電膜側に凸の反り変形を相殺することができる。
bはaよりも導電膜Pの厚さpの500分の1以上、好ましくは200分の1以上、更に好ましくは100分の1以上大きくなければならない。それよりも小さいと導電膜側に凸の反り変形が生じ、好ましくない。更に、bの絶対値が50Å未満ではガスバリア性が不十分となるので好ましくない。
また、bは(a+p/10)以下でなければならない。それよりも大きいと導電膜側に凹の反り変形を生じやすくなり好ましくない。更に、bの絶対値が500Å以上になると、ガスバリア膜Bを成膜する際生じる膜応力等が原因となってクラックが入りやすくなるので好ましくない。
【0079】
(積層体の性質)
本発明のプラスチック積層体は、550nmの光の波長での光線透過率が80%以上であることが好ましい。光線透過率が80%未満であると画面が暗くなるため液晶表示パネルとして使用でき難い。また、プラスチック積層体の複屈折率としては、通常10nm以下であるが、好ましくは5nm以下、更に好ましくは2nm以下、特には1nm以下であることが好ましい。20nmよりも大きいと表示パネルとした場合、表示画面の色ムラが生じる傾向がある。
【0080】
また、プラスチック積層体の厚みは、0.05〜3mmが好ましい。0.05mm未満では、シートが自重により撓み易く、従来の液晶装置の製造プロセスが使用できない傾向があり、一方、3mmを越えると、従来の0.7〜1.5mmのガラス基板と同じ重量となり、軽量化の目的から外れてしまう。
本発明のプラスチック積層体の応用例としては、例えば、液晶表示装置用基板として使用する場合、通常、二枚のプラスチック積層体によって液晶を挟んだ構成をとる。即ち、プラスチック積層体の導電膜上に、必要に応じて絶縁膜、更に、その上に配向膜が設けられた基板により液晶層を挟持した構造をとる。また、液晶層を挟持した基板の外側には偏光板が設けられる。また、エレクトロルミネッセンス表示素子においては、通常、本発明のプラスチック積層体上に、発光体層、絶縁層及び背面電極を順次形成し、更に全体をガスバリア層で被覆した構造の物が例示される。この場合、発光体層には硫化亜鉛、硫化カドミウム、セレン化亜鉛等が、絶縁層には酸化イットリウム、酸化タリウム、窒化シリコン等が、背面電極にはアルミニウム等が用いられる。
【0081】
本発明により得られるプラスチックシートは、透明性はもとより高耐熱性と高機械強度を併せ持ち、液晶や有機EL、タッチパネル等のディスプレイ基板、光ディスク基板、太陽電池基板、各種レンズ、プリズム、光学フィルター、光通信材料等の多くの光学用途に用いることができる。
【0082】
【実施例】
以下に本発明の内容及び効果を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また実施例及び比較例で得られたプラスチックシート及びプラスチック積層体は以下の方法で評価した。
【0083】
(1)光線透過率:500nmにおける光線透過率を0.5mm厚の試験片で測定した。
(2)複屈折:0.5mm厚の試験片で複屈折測定装置(オーク社製)を用いて25℃で測定した。
(3)耐熱性:3mm×30mm×0.5mmの短冊状試験片を用いて、ガラス転移温度Tgを引っ張り法TMAにて加重2gで測定した。
【0084】
(4)反り変形率:長さ100mm×幅10mm×厚さ0.5mmの試験片を、凸変形側が上になるように水平な定盤上に静置したとき、定盤面と定盤面から試験片の最も遠い部分の下側までの距離g(mm)をノギスで測定し、その距離のサンプル長さに対する割合を反り変形率(%)とした。即ち、g/100×100=g(%)となる。その際、導電膜側に凸の反りの場合、反り量をプラス値とし、導電膜側に凹の反りの場合、反り量をマイナス値として表した。
【0085】
(5)加熱による反り変形率:長さ100mm×幅10mm×厚さ0.5mmの試験片を、オーブン中で150℃、3時間加熱した後、23℃、50%RHの恒温恒湿室に1時間放置する加熱試験において、試験前と試験後の反り変化率の差を、加熱による反り変形率(%)とした。なお、この加熱試験は、プラスチック基板からパネルを製造する際の加熱処理条件を参酌して設定したものである。
【0086】
(6)温水浸漬による反り変形率:長さ100mm×幅10mm×厚さ0.5mm試験片を、40℃の温水中に1時間浸漬した後、23℃、50%RHの恒温恒湿室に1時間放置する温水試験において、試験前と試験後の反り変化率の差を、温水浸漬による反り変形率(%)とした。なお、この温水試験は、加熱試験と同様にプラスチック基板からパネルを製造する際の温水処理条件を参酌して設定したものである。
【0087】
(7)ガスバリア測定:0.5mm厚の試験片でオキシトラン社製酸素モコン測定器にて23℃、湿度80%の条件下で酸素透過率を測定した。
(8)硬化被膜の硬度:JIS K5400に準拠して、硬化被膜の鉛筆硬度を測定した。
(9)導電膜の表面抵抗値:三菱化学社製の四端子法抵抗測定器(ロレスターMP)を用いて表面抵抗値を測定した。
(10)膜厚:断面をSEM観察することによって評価した。
【0088】
実施例1
(プラスチックシートの製造)
ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=ジメタクリレート94部、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=モノメタクリレート6部のアクリレート組成物に、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6部、光開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスホフィンオキシド(BASF社製「ルシリンTPO」)0.1部、ベンゾフェノン0.1部を均一に攪拌混合した後、脱泡して組成物を得た。この組成物をスペーサーとして厚さ0.5mmのシリコン板を用いた光学研磨ガラスの型に注液し、ガラス面より距離40cmで上下にある出力80W/cmのメタルハライドランプの間にて、5分間紫外線を照射した。紫外線照射後脱型し、160℃で1時間加熱して硬化物を得た。硬化物の光線透過率は92%、複屈折は1nm、耐熱性は190℃であった。
【0089】
(ガスバリア膜Aの成膜)
得られた0.5mm厚の硬化物の片面に、スパッタ装置(徳田製作所;形式CTS−4ES)にてSiOxを200Å成膜した(即ちa=200Å)。
(ガスバリア膜Bの成膜)
更にガスバリア膜Aを形成した面とは反対側の面に、同様にスパッタ装置にてSiOxを250Å成膜した(即ちb=250Å)。得られた両面にガスバリア膜を有するプラスチック積層体の酸素透過率は0.1cc/m2・24時・atmであった。
【0090】
(硬化被膜の成膜)
得られたプラスチック積層体のガスバリア膜A面上に、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=ジメタクリレート20部と2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスホフィンオキシド2部と溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート78部よりなる組成物をスピンコートした後、100℃で5分加熱して溶剤を乾燥し、出力80W/cmのメタルハライドランプにて5分間紫外線を照射した。得られた硬化被膜の鉛筆硬度は4Hであった。
【0091】
(導電膜の成膜)
このプラスチック積層体の硬化被膜面上に、ガスバリア膜の成膜に用いたのと同様のスパッタ装置(徳田製作所;形式CFS−4ES)にてITOを1500Å成膜した(即ちp=1500Å)。得られた導電性積層体の表面抵抗値は30Ω/□であり、積層体の複屈折は0.5nmであった。
この積層体のガスバリア膜と導電膜の膜厚の関係、加熱及び温水浸漬による反り変化率は表1に示す通りであった。
【0092】
実施例2
ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=ジメタクリレート92部、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=モノメタクリレート8部のアクリレート組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い積層体を得た。積層体の光線透過率は92%、複屈折は1nm、耐熱性は190℃、表面抵抗値は30Ω/□であり、加熱及び温水浸漬による反り変化率は表1に示す通りであった。
【0093】
実施例3
ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=ジメタクリレート96部、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=モノメタクリレート4部のアクリレート組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い積層体を得た。積層体の光線透過率は92%、複屈折は1nm、耐熱性は190℃、表面抵抗値は30Ω/□であり、加熱及び温水浸漬により反り変化率は表1に示す通りであった。
【0094】
比較例1
ガスバリア膜BのSiOxを200Å成膜(即ちb=200Å)する以外は、実施例1と同様に行い積層体を得た。積層体の光線透過率は92%、複屈折は1nm、耐熱性は190℃、表面抵抗値は30Ω/□であり、加熱及び温水浸漬による反り変化率は表1に示す通りであった。
【0095】
比較例2
ガスバリア膜BのSiOxを400Å成膜(即ちb=400Å)する以外は、実施例1と同様に行い積層体を得た。積層体の光線透過率は92%、複屈折は1nm、耐熱性は190℃、表面抵抗値は30Ω/□であり、加熱及び温水浸漬による反り変化率は表1に示す通りであった。
【0096】
【表1】
【0097】
【発明の効果】
本発明によれば、特に液晶表示パネル用に好適な、形状安定性に優れたプラスチック積層基板が得られる。
Claims (10)
- プラスチックシートの両面にそれぞれ無機酸化物からなるガスバリア膜A及びBを設け、ガスバリア膜Aの上に更に導電膜Pを設けてなるプラスチック積層基板において、A、B及びPの各々の厚みa、b及びpが下記式(1)を満足し、かつbが50Å以上、500Å未満であることを特徴とするプラスチック積層基板。
【数1】
a+(p/500)≦b≦a+(p/10) (1)
(式中、a、b及びpは、それぞれA、B及びPの厚みを表す) - 導電膜Pがインジウムスズオキサイド(ITO)からなる請求項1に記載のプラスチック積層基板。
- プラスチックシートのガラス転移温度が150℃以上である請求項1又は2のいずれかに記載のプラスチック積層基板。
- プラスチックシートの複屈折が5nm以下である請求項1ないし3のいずれかに記載のプラスチック積層基板。
- プラスチックシートの厚みが0.05〜3mmである請求項1ないし4のいずれかに記載のプラスチック積層基板。
- それぞれのガスバリア膜の少なくとも片面の上に更に硬化被膜を設けてなる請求項1ないし5のいずれかに記載のプラスチック積層基板。
- プラスチックシートが分子内に二個以上の重合性官能基を有する重合性単量体を含む重合性組成物を重合硬化させて得られる請求項1ないし6のいずれかに記載のプラスチック積層基板。
- 重合性組成物が下記成分A、B及びCを含有してなるもの(但し、各成分の割合は成分Aと成分Bとの合計を100重量部として表す)である請求項7に記載のプラスチック積層基板。
成分A:一般式(I)で表される含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート:70〜99重量部
2を示し、nは0又は1を示し、p及びqは、それぞれ独立して、0、1又は2を示す)
成分B:一般式(II)で表される含脂環骨格モノ(メタ)アクリレート:1〜30重量部
成分C:少なくとも二官能性のメルカプト化合物:1〜10重量部 - プラスチックシートが請求項8に記載の重合性組成物を賦形し、これをラジカル重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射して光重合硬化させて得られる請求項7に記載のプラスチック積層基板。
- 液晶表示パネル用である請求項1〜9のいずれかに記載のプラスチック積層基板。
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