JP6710905B2 - プラスチックシート、プラスチックシートロール、成形物の製造方法及び成形物、並びにプラスチックシートの製造方法 - Google Patents

プラスチックシート、プラスチックシートロール、成形物の製造方法及び成形物、並びにプラスチックシートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、硬化性組成物を硬化してなるプラスチックシートに関し、更に詳しくは、プラスチックシートを巻き取ってなるプラスチックシートロールが形成しやすく、更に、後加工による立体成形が可能であり、透明性に優れたプラスチックシートに関するものである。更に、本発明は、かかるプラスチックシートを巻き取ってなるプラスチックシートロール、立体成形された成形物の製造方法、成形物、及びプラスチックシートの製造方法に関するものである。
従来、ディスプレイ用の基板としてはガラスを基板とするものが多く使われてきた。例えば、保護板では厚さ0.5〜2mm程度の化学強化ガラス基板が汎用されている。また、タッチパネル基板では厚さ0.2〜1.1mm程度のガラス基板が汎用されている。更に、液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイでは厚さ0.2〜0.7mm程度のガラス基板が汎用されている。
一方では、近年、軽量化や安全性の観点から、また、フレキシブルディスプレイの製造を目的に、プラスチック製の基板も使用され始めている。実際には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、あるいはこれらの樹脂シートにハードコートを施した基板が使われている。このようなプラスチック基板には、光線透過率や複屈折などの光学性能はもとより、耐熱性や線膨張係数などの熱特性、表面硬度や曲げ弾性率などの機械特性、吸水率や比重、及び耐薬品、耐溶剤性などの高度な加工適性が要求される。
これらの諸特性を満足するために、熱可塑性あるいは熱硬化性を問わず数多くの樹脂が提案されている。特に、これらの樹脂からなるシートをハードコート処理して表面硬度を向上させた基板が提案されているが、ガラスを超える表面硬度は得られていないのが現状である。
また、近年の提案の中には、特定の光重合性組成物を光硬化して得られる成形体も見受けられる。例えば、脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートと脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレートよりなる光重合性組成物が、鉛筆硬度の高い樹脂成形体を与えることが提案されており(例えば、特許文献1参照。)、また、脂環構造を有する単官能(メタ)アクリレート、脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート、及び脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレートよりなる光重合性組成物が、光学特性や熱機械特性に優れる樹脂成形体を与えることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、上記のような光硬化してなるプラスチックシートを、バッチ式ではなく連続的に製造する方法も検討されており、かかる連続式光成形法において、例えば、ロールに巻き取る時やロール間を搬送する時にも、更には支持シートを剥離する時にも、クラックや割れが生じないプラスチックシートを提供することを目的として、プラスチックシートの幅方向に対して、両端部の所定領域の曲げ弾性率を中央部の所定領域の曲げ弾性率よりも低くする方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2006−193596号公報 特開2007−204736号公報 特開2009−127019号公報
近年では、軽量化や意匠性を付与する観点からプラスチックシートに立体成形加工を行い、より透明性の高い成形物を得る要求が高まっている。
かかる「立体成形」とは、従来のプラスチックシートが平板状の成形物であったのに対して、平板状ではなく三次元的な形状を有する成形物であることを意味する。
しかしながら、特許文献1及び2の開示技術では、高い表面硬度を有するプラスチックシートは得られているものの、これらは、バッチ式により、2枚のガラス板の間で光硬化性組成物を注型成形しプラスチックシートを製造するものであり、平板な高硬度なプラスチックシートを得るものである。そのため得られたプラスチックシートに対して更に立体成形加工を施すことはできない。
また、プラスチックシートの製造においてはその生産効率の点から連続成形法で行う方法が求められている。さらに、長尺での保管・輸送および立体成形時の連続成形が容易となる様、ロール状態で巻き取ることが可能であることが好ましい。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の光硬化性組成物シートを特許文献3記載の連続式製造法で得る場合、光硬化性組成物の粘度が低いため塗工性が悪く、良好なプラスチックシート、特に厚膜のプラスチックシートを得ることができない。更に、単に、上記の光硬化性組成物を塗布し活性エネルギー線照射しても、硬化して得られたプラスチックシートはロール状態にて保管することができるほど柔軟性を有するものではなく、また、立体成形加工できるものでもない。
そこで、本発明ではこのような背景下において、プラスチックシートを巻き取ってなるプラスチックシートロールが形成しやすく、後加工による立体成形が可能であり、さらに、高度に透明性に優れたプラスチックシートを提供することを目的とするものであり、更に、かかるプラスチックシートを巻き取ってなるプラスチックシートロール、立体成形された成形物の製造方法、成形物、及びプラスチックシートの製造方法を提供することを目的とするものである。
しかるに本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、硬化性組成物を硬化してなるプラスチックシートであって、硬化による反応率を中程度で留めて柔軟性を有する状態のプラスチックシートとし、かかるプラスチックシートの外部ヘイズが特定の小さい値であり、厚さが所定の範囲であることにより、プラスチックシートを巻き取ってなるプラスチックシートロールが形成しやすく、後加工による立体成形が可能であり、さらに、高度に透明性に優れたプラスチックシートが得られることを見出し、本発明を完成した。
また、かかるプラスチックシートを連続成形法により製造する場合に、用いる基材フィルムとして、外部ヘイズが特定の小さい値であるフィルムを用いることによって、透明性に優れたプラスチックシートがより効果的に得られることも見出した。
即ち、本発明の要旨は、下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する硬化性組成物[I]を硬化してなるプラスチックシートであって、反応率が40%以上75%未満であり、外部ヘイズが0.5以下であり、厚さが50〜10,000μmであることを特徴とするプラスチックシートに関するものである。
(A)脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート
(B)脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレート(但し、前記(A)を除く。)
(C)重量平均分子量が5万〜300万である脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂(D)重合開始剤
更に、本発明は、かかるプラスチックシートを用いて得られるプラスチックシートロール、立体成形された成形物の製造方法及び成形物を提供するものである。また、本発明は、かかるプラスチックシートの製造方法をも提供するものである。
本発明のプラスチックシートは、プラスチックシートを巻き取ってなるプラスチックシートロールが形成しやすく、後加工による立体成形が可能であり、透明性に優れたプラスチックシートであり、更に、最終硬化物となる立体成形加工された成形物の透明性、表面硬度に優れた成形物を得ることができるプラスチックシートである。上記立体成形加工された成形物は、ディスプレイ用の保護板や、コピー機、自動車、家電等における表示部周辺の立体化部品、微小な立体性のある携帯電話端末用カバー等の用途に有用である。
本発明のプラスチックシートおよびプラスチックシートロールの製造方法の一例を示す模式図である。 本発明のプラスチックシートロールよりプラスチックシートを巻出し、成形し、エネルギー線照射により本発明の成形物を製造する方法の一例を示す模式図である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの、「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルの総称である。また、ここでいう多官能とは、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することを意味する。
本発明における外部ヘイズ値とは、JIS K 7361に準拠し、日本電色工業株式会社製ヘイズメーター「NDH−2000」を用いて測定した対象物の全ヘイズから内部ヘイズを引いた値を意味する。かかる内部ヘイズは、予めガラス板2枚の間に流動パラフィンのみを挟んでヘイズ(Hz1)を測定し、次に流動パラフィンで表面を濡らしたフィルムを挟んでヘイズ(Hz2)を測定し、これらの差をとることで算出した値である。
外部ヘイズ=全ヘイズ―{(Hz2)−(Hz1)}
<硬化性組成物[I]の説明>
本発明のプラスチックシートは、硬化性組成物[I]を硬化してなるものである。かかる硬化性組成物[I]はエチレン性不飽和結合を有する化合物を含有する組成物であり、該化合物が重合または架橋することにより硬化する性質を有する組成物である。かかる硬化性組成物は、得られるプラスチックシートロールが得られやすい点から下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有してなるものである
(A)脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート
(B)脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレート(但し、前記(A)を除く。)
(C)脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂
(D)重合開始剤
成分(A)は、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上含有するウレタン(メタ)アクリレートである。多官能であるため、硬化速度が向上し、生産性良くプラスチックシートを得ることができる。また、硬化により架橋樹脂を形成し、表面硬度の高いプラスチックシートを得ることができる。また、成分(A)は分子内にウレタン基を有し、水素結合により、曲げ弾性率や耐衝撃性などの機械強度に優れたフレキシブルなプラスチックシートを得ることができる。表面硬度の向上は、特に、4官能以上のウレタン(メタ)アクリレートで発現する。また、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)は脂環構造を分子内に有しており、この脂環構造によりプラスチックシートの吸水率が低減することとなる。
成分(A)の数平均分子量は、200〜5000であることが好ましい。より好ましくは400〜3000、更に好ましくは500〜1000である。数平均分子量が小さすぎると、硬化収縮が増大し、複屈折が発生しやすい傾向にある。逆に、大きすぎると、架橋性が低下し、耐熱性が低下する傾向にある。
成分(A)の脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、脂環構造を有するポリイソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレートを、必要に応じてジブチルチンジラウレートなどの触媒を用いて反応させることにより得ることができる。
脂環構造を有するポリイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、水添化キシリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの3量体化合物などが挙げられる。中でも耐光性が良好である点でイソホロンジイソシアネートが好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でも表面硬度の点でペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましく、特に好ましくはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートである。
脂環構造を有するポリイソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応により得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、2種以上混合して用いても良い。これらの反応物の中では、硬化速度の点からアクリレートが好ましく、耐熱性の観点から4官能以上がより好ましく、表面硬度の点から、下記式(1)〜(4)で表される脂環構造を有する4官能以上のウレタンアクリレートが特に好ましい。
Figure 0006710905
Figure 0006710905
Figure 0006710905
ここで、R1は水素又はメチル基である。
Figure 0006710905
成分(B)も、多官能の(メタ)アクリレートであるため、高耐熱性のプラスチックシートを与える。成分(A)のウレタン(メタ)アクリレートよりも耐熱性向上の効果は大きいが、この単量体のみでは、あまりにもガラスライクな架橋樹脂となるためもろくなる。成分(A)のウレタン(メタ)アクリレートと成分(B)の多官能(メタ)アクリレートとを特定の割合で配合し共重合させることが好ましく、これにより、表面硬度、耐熱性、フレキシブル性に良好なプラスチックシートを得ることができる。成分(B)の官能基数が過剰に多すぎると、耐熱性とフレキシブル性のバランスがくずれる傾向にあるため、成分(B)は2官能であることが好ましく、また、メタクリレートであることがより好ましい。また、成分(B)も脂環構造を有しており、この脂環構造もプラスチックシートの飽和吸水率を低減することとなる。
成分(B)の脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレート(但し、(A)を除く。)としては、例えば、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート、2,2−ビス[4−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)シクロヘキシル]プロパン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシエチルオキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(メタクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(メタクリロイルオキシエチルオキシメチル)シクロヘキサンなどの2官能(メタ)アクリレート、1,3,5−トリス(メタクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、1,3,5−トリス(メタクリロイルオキシエチルオキシメチル)シクロヘキサンなどの3官能(メタ)アクリレートがあげられ、これらの中でも、フレキシブル性の点から2官能(メタ)アクリレートが好ましく、耐熱性の点から2官能メタクリレートがより好ましい。更に光学性能の点から下記一般式(5)、(6)及び(7)からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の2官能(メタ)アクリレートが好ましく、中でも2官能メタクリレートが特に好ましい。
Figure 0006710905
ここで、R2は炭素数1〜6、好ましくは1〜3のエーテル結合を含んでも良いアルキレン基、R3は水素又はメチル基、aは1又は2、bは0又は1である。
Figure 0006710905
ここで、R4は炭素数1〜6、好ましくは1〜3のエーテル結合を含んでも良いアルキレン基、R5は水素又はメチル基である。
Figure 0006710905
ここで、R6は水素又はメチル基、R7は 炭素数1〜6、好ましくは1〜3のエーテル結合を含んでも良いアルキレン基、R8は水素又はメチル基である。
成分(A)と成分(B)の配合割合は、(A):(B)=5:95〜50:50(重量比)であることが好ましい。成分(A)が少なすぎると、表面硬度が低下する傾向があり、逆に、成分(B)が多すぎると、飽和吸水率が増加する傾向がある。配合割合の好ましい範囲は、10:90〜45:55(重量比)、より好ましくは、10:90〜40:60(重量比)である。
成分(C)の脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、硬化性組成物の粘度を高くするのに有効であり、例えば、ポリ(イソボルニル(メタ)アクリレート)、ポリ(アダマンチル(メタ)アクリレート)、ポリ(ノルボルネン(メタ)アクリレート)、ポリ(ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート)等の脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレート(c1)のホモポリマーや、ポリ(ジシクロペンタニルメタノールと(メタ)アクリレートの縮合組成)、等が挙げられるが、中でも相溶性の点で脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレート(c1)のホモポリマーが好ましく、特にはポリ(ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート)、ポリ(アダマンチル(メタ)アクリレート)等が好ましい。
脂環構造を有するアクリル系樹脂(C)の重量平均分子量は、5万〜300万であり、特には10万〜200万、更には30万〜150万であることが好ましい。かかる重量平均分子量が小さすぎるとアクリル系樹脂(C)の配合量が多く必要となり、故に表面硬度が低下する傾向があり、大きすぎると溶解性が乏しくなり、生産性が低下する傾向がある。
かかるアクリル系樹脂(C)は、溶液重合法の他、活性エネルギー線照射による重合法等で製造することができるが、特には分子量の制御の点で紫外線照射による重合法が好ましい。
脂環構造を有するアクリル系樹脂(C)の含有量は、高粘度化による厚膜形成性の点で、成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して1〜50重量部であることが好ましく、特には1〜30重量部、更には1〜15重量部であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると高粘度化が不充分となり厚膜化が困難となる傾向があり、多すぎると粘度が高くなりすぎ生産性が低下することとなる傾向がある。
硬化性組成物[I]は、所望により重合開始剤(D)を含有することが好ましい。かかる重合開始剤としては、光重合開始剤(Dl)や熱重合開始剤(Dh)が挙げられる。特に本発明においては、硬化反応が効率よく進行したり、生産性が良好である点から、光重合開始剤(Dl)を含有させ、光によって硬化させることが好ましい。
光重合開始剤(Dl)としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホシフィンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなどのラジカル開裂型の光重合開始剤が好ましい。これらの光重合開始剤(Dl)は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
熱重合開始剤(Dh)としては、公知の化合物を用いることができる。例えば、ハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)等のパーオキシエステル、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等のパーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。
これら光重合開始剤(Dl)および熱重合開始剤(Dh)は併用することも可能である。
重合開始剤(D)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して0.1〜5重量部、更には0.2〜4重量部、特には0.3〜3重量部であることが好ましい。含有量が多すぎると、プラスチックシートのリタデーションが増大し、また400nmにおける光線透過率が低下する傾向にある。一方、少なすぎると重合速度が低下し、重合が十分に進行しないおそれがある。
更に本発明においては、架橋密度を上げる点でメルカプタン基含有化合物(E)を含有することが好ましい。メルカプタン基含有化合物(E)としては、例えば、ペンタエリスルトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスルトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリトール=テトラキス(3−スルファニルブタノアート)、1,3,5−トリス(2−(3−スルファニルブタノイルオキシ)エチル)などが挙げられる。これらのメルカプタン基含有化合物は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、通常10重量部以下の割合で使用されることが好ましく、更には0.5〜5重量部、特には1〜4重量部が好ましい。かかる使用量が多すぎると、得られるプラスチックシートの耐熱性や剛性が低下する傾向がある。
本発明においては、硬化性組成物[I]として、本発明のプラスチックシートの物性を損ねない範囲で、少量の補助成分を含んでいても良い。例えば、成分(A)及び(B)以外のエチレン性不飽和結合を有する単量体、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レべリング剤、ブルーイング剤、染顔料、フィラーなどである。また、活性エネルギー線照射による硬化と加熱による硬化とを併用する場合には、光重合開始剤(Dl)および熱重合開始剤(Dh)とを併用することが好ましい。
成分(A)及び(B)以外のエチレン性不飽和結合を有する単量体としては、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルメタノールと(メタ)アクリレートの縮合組成、等の脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール以上のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、 トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの(メタ)アクリル酸誘導体、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンなどのスチレン系化合物が挙げられる。
成分(A)及び(B)以外のエチレン性不飽和結合を有する単量体の配合量は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、30重量部以下、更には20重量部以下、特には10重量部以下であることが好ましい。配合量が多すぎるとプラスチックシートの耐熱性が低下する傾向にある。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−s−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、n−オクタデシル−β−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、4,4−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4′−ジ−チオビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4′−トリ−チオビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N′−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド、N,N′−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、カルシウム(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)モノエチルフォスフォネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−2[3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアネート、テトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスファイト−ジエチルエステル等の化合物が挙げられ、これらの化合物は、単独または2種以上併用してもよい。これらの中でも、テトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが、色相を抑制する効果が大きくなる点から特に好ましい。
酸化防止剤の配合割合は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、通常0.001〜1重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.5重量部である。かかる酸化防止剤が少なすぎるとプラスチックシートの耐光性が低下する傾向があり、多すぎると光線透過率が低下する傾向にある。
かくして本発明の硬化性組成物[I]が得られる。
本発明の硬化性組成物[I]は、23℃における粘度が通常100〜20,000mPa・sであり、好ましくは400〜10,000mPa・s、更に好ましくは800〜6,000mPa・sである。粘度が低すぎると厚膜形成性が低下する傾向があり、逆に、高すぎると生産性が低下する傾向がある。かかる粘度に調整する方法としては、成分(A)、(B)及び(C)の種類や配合量を適宜コントロールすることなどが挙げられる。
<プラスチックシートの製造方法、成形法>
次に、かかる硬化性組成物[I]を用いた本発明のプラスチックシートの製造方法について説明する。
本発明のプラスチックシートの製造方法においては、硬化性組成物[I]を反応率が4
0%以上75%未満となるように硬化してなり、外部ヘイズが0.5以下であり、厚さが50〜10,000μmであるプラスチックシートを製造するにあたり、基材フィルム間に硬化性組成物[I]を有する積層体を形成し、通常該積層体に活性エネルギー線照射または加熱を行うことにより、硬化性組成物[I]を硬化するものである。かかる硬化について、特には、硬化反応が効率よく進行したり、生産性が良好である点から活性エネルギー線照射により硬化性組成物[I]を硬化することが好ましい。

例えば、必要とする塗膜厚を与えるクリアランスを有したアプリケーターを用い、基材フィルム上に、所望の膜厚となるように上記硬化性組成物[I]層を形成し、その硬化性組成物[I]層上に基材フィルムを接するように配した積層体を作製し、かかる積層体に活性エネルギー線照射または加熱を行い、硬化性組成物[I]を硬化させた後、必要に応じて、かかる硬化樹脂層(プラスチックシート)の両面から基材フィルムを剥離してプラスチックシートを得ることができる。かかる工程における基材フィルムは、水平方向、垂直方向、水平から角度をつけた方向のいずれにおいても可能である。
上記積層体の層構成は、少なくとも基材フィルム間に硬化性組成物[I]を有する構造であればよく、例えば、基材フィルム/硬化性組成物[I]/基材フィルムの3層構造や、基材フィルム/硬化性組成物[I]/基材フィルム/硬化性組成物[I]/基材フィルムの5層構造等も可能である。後述する硬化工程が効率良く進行する点で好ましくは基材フィルム/硬化性組成物[I]/基材フィルムの3層構造である。
かかる基材フィルムの外部ヘイズは、JIS K 7361に準拠し、日本電色工業株式会社製ヘイズメーター「NDH−2000」を用いて測定した対象物の全ヘイズから内部ヘイズを引いた値(かかる内部ヘイズは、予めガラス板2枚の間に流動パラフィンのみを挟んでヘイズ(Hz1)を測定し、次に流動パラフィンで表面を濡らしたフィルムを挟んでヘイズ(Hz2)を測定し、これらの差をとることで算出した値)にて通常0.4以下であり、好ましくは0.4〜0.01であり、特に好ましくは0.3〜0.01である。かかる外部ヘイズ値が大きすぎる場合、プラスチックシートや成形物のヘイズ値が大きくなるという傾向がある。
また上記基材フィルムとしては、光重合や熱重合等のラジカル重合による硬化を阻害しないものであればよいが、中でも、酸素による硬化阻害を生じさせないという点から、ガスバリア性樹脂フィルムであることが好ましい。
かかるガスバリア性樹脂フィルムの酸素透過度は、ガスバリア性樹脂フィルムの厚みが20μmにおいて、20℃、ドライ条件の環境下で、通常200cc/m2・day・atm以下である。好ましくは100cc/m2・day・atm以下、更には20cc/m2・day・atm以下であることが好ましい。かかる値が高すぎると酸素阻害により良好な硬化ができず、重合度や転化率の低下を招く傾向がある。なお、下限値としては通常0.01cc/m2・day・atmである。
かかる酸素透過性の測定は、JIS K 7126 B法(等圧法)に示された測定方法に準じて、酸素透過度計を用いて測定して求められる。
また、上記基材フィルムは、硬化時に発生する熱を考慮した場合に、耐熱性に優れた樹脂フィルムであることが好ましく、樹脂フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度が通常0℃以上であり、特には30℃以上、更には50℃以上であることが好ましい。かかるガラス転移温度が低すぎると熱を受けた際に溶けて破断する可能性がある。なお、かかるガラス転移温度の上限は、通常400℃である。
上記の基材フィルムとして用いられる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム、ナイロン6、ナイロン6,12のようなポリアミド系樹脂フィルム、変性ポリアクリロニトリル等のアクリルニトリル系樹脂フィルム、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、エチレン−ビニルアルコール系樹脂フィルム等のビニルアルコール系樹脂フィルム等が挙げられる。これらのフィルムは延伸フィルムであってもよい。
なかでも酸素透過性が非常に低い点で、ビニルアルコール系樹脂フィルムが好ましく、更には一軸延伸または二軸延伸ビニルアルコール系樹脂フィルムが好ましく、特には二軸延伸ビニルアルコール系樹脂フィルムであることが好ましい。
かかるビニルアルコール系樹脂フィルムは、ビニルアルコール系樹脂より製膜されてなるものであり、ビニルアルコール系樹脂とは、ビニルエステル単位がケン化されてなるビニルアルコール単位を有するものであればよく、好ましくは平均ケン化度が90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは97モル%以上である。
ビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と略記することがある)や、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(以下、EVOHと略記することがある)を挙げることができる。更に、PVA系樹脂としては、酢酸ビニルを単独重合し、それをケン化したPVAと、変性PVAを挙げることができ、かかる変性PVAとしては、共重合変性品と後変性品とを挙げることができる。
上記の中でも特には、耐熱性の点で二軸延伸PVA系樹脂フィルムであることが好ましい。
基材フィルムの膜厚は、通常10〜200μmであり、好ましくは15〜100μm、更に好ましくは15〜50μmである。膜厚は薄すぎると破断による歩留まりが低下する傾向があり、厚すぎるとロール状物の重量が大きくなりすぎる傾向がある。
上記硬化性組成物[I]は、通常活性エネルギー線照射または熱により硬化するものである。
活性エネルギー線照射による硬化を行う場合、硬化性組成物[I]に照射する活性エネルギー線は、通常、波長200〜400nmの紫外線を用い、その照射光量は通常0.1〜0.8J/cm2である。照射光量のより好ましい範囲は0.1〜0.7J/cm2、更に好ましくは0.15〜0.5J/cm2である。照射光量が多すぎると硬化過剰となり後工程の立体成形加工が困難となる傾向があり、少なすぎると重合が不充分となる傾向にある。活性エネルギー線の照度は、10〜2000mW/cm2、特には50〜1000mW/cm2であることが好ましい。照度が小さすぎると生産性が低下する傾向があり、逆に、大きすぎると硬化度合いの制御が困難となる傾向がある。
活性エネルギー線源としては、光硬化で通常用いられるものであればよく、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、無電極水銀ランプ、LED−UV等が挙げられる。光源から発生する赤外線により重合が暴走するのを防ぐため、ランプに赤外線を遮断するフィルターや赤外線を反射しない鏡等を用いることも可能である。
熱による硬化を行う場合、かかる熱処理温度は、通常、30〜140℃である。熱処理時間は通常0.1秒〜30分である。熱処理温度が低すぎると硬化速度が遅くなる傾向があり、また、温度が高すぎると意図しない副反応や硬化過剰が生じる傾向がある。また、熱処理時間が長すぎると硬化過剰となり後工程の立体成形加工が困難となる傾向があり、短すぎると硬化が不充分となる傾向にある。
このようにして得られる本発明のプラスチックシートは、硬化性組成物[I]を、通常活性エネルギー線照射または加熱により、反応率が40%以上75%未満となるように硬化してなるものである。かかる反応率として好ましくは50〜70%、特に好ましくは55〜70%である。かかる反応率が低すぎると保存時の膜厚変化が生じやすくなる傾向があり、高すぎると後の立体成形加工が困難となる傾向がある。
なお、反応率は、下記の通りにて測定することができる。
即ち、長さ50mm×幅50mmの試験片を凍結粉砕した後、BRUKER・BIOSPIN社製「AVANCE DPX−400」で、固体NMRプローブを用いて測定する。観測核は13C、回転数は5000Hz、室温で測定する。重合していない(メタ)アクリロイル基中のカルボニル炭素は高磁場側(166ppm)に、重合したカルボニル炭素は低磁場側(176ppm)に検出される。これらのピーク面積比より反応率(%)を算出する。
また、本発明のプラスチックシートの厚さは、50〜10,000μmであり、特には100〜5,000μm、更には100〜3,000μm、殊には300〜1000μmであることが好ましい。かかる厚さが薄すぎると後の立体成形加工が困難となる傾向があり、厚すぎるとロール化が困難となる傾向がある。
本発明のプラスチックシートは、ディスプレイ用の保護板やコピー機、自動車、家電等における表示部周辺の立体化部品の用途に有用であり、高い透明性が求められる点から、光線透過率が通常80%以上であり、特には85%以上、更には90%以上であることが好ましい。なお一般的に光線透過率の上限は99%である。
本発明のプラスチックシートは、表面の鉛筆硬度が通常10B以上であり、特には8B以上、更には7B以上であり、通常B以下、特には2B以下、さらには4B以下であることが好ましい。鉛筆硬度が低すぎると、プラスチックシートが傷つきやすく、ディスプレイの品質が低下する傾向にあり、高すぎると後の立体成形加工が困難となる傾向がある。
本発明のプラスチックシートは、ディスプレイの高精細化点から、外部ヘイズが0.5以下であり、特には0.3以下、更には0.15以下であることが好ましい。
<プラスチックシートロールの説明>
更に本発明においては、上記のようにして得られるプラスチックシートを、支管に巻き取ることにより、プラスチックシートのロール体であるプラスチックシートロールを得ることができる。
得られたプラスチックシートの両面から基材フィルムを剥離してプラスチックシートのみを取り出すことができる。
得られたプラスチックシートは、そのまま、所望の立体成形加工に供することもできるが、一旦支管に巻き取り、プラスチックシートロールとして保管することもできる。
上記基材フィルムを剥離することなく、支管に巻き取り、プラスチックシートロールとすることも可能であり、また、ブロッキングや摩擦での擦り傷等を防ぐために、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムや、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、離型紙などを、セパレーターとして共に巻き取ることも可能である。
上記支管は、例えば、径が通常3〜12インチのものを用いるものであり、好ましくは3〜6インチのものである。
<成形物およびその製造方法の説明>
本発明においては、上記プラスチックシート、またはプラスチックシートロールから巻き出してなるプラスチックシートを成形加工した後、通常活性エネルギー線照射または加熱により、反応率が75%以上となるように硬化してなる立体成形された成形物とすることができる。
上記の本発明のプラスチックシートは、完全硬化しておらず立体成形が可能なシートとなっており、所望の意匠を有せしめるためにかかる意匠に対応した立体成形加工を行い、その後、活性エネルギー線照射または加熱により、更に硬化を進め、立体成形された成形物とすることができるのである。
かかる成形物は、硬化性組成物[I]中に高粘度成分を含むため、基材フィルム上で膜厚が均一で、かつ、平滑な塗膜の形成が可能であり、さらに、本発明によれば、透明性に優れたプラスチックシートが得られるものであり、かかるプラスチックシートを成形して得られる成形物は、従来得られなかった透明性に優れるものである。すなわち、(C)脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含有する硬化性組成物[I]を硬化してなる成形物であって、反応率が75%以上であり、外部ヘイズが0.5以下である成形物が得られるものである。
本発明のプラスチックシートを成形する際には、公知の成形方法を用いることが可能である。例えば、プレス成形、真空成形、圧空成形等の金型成形方法や、カッターやナイフ等を用いて任意の形状を切り出す方法等、が挙げられる。
成形加工により所望の形状に成形したプラスチックシートを、活性エネルギー線照射または熱により硬化し、本発明の成形物を得る。
活性エネルギー線による硬化を行う場合、上記立体成形加工後に照射する活性エネルギー線は、通常、波長200〜400nmの紫外線を用いて、その照射光量は通常0.5〜40J/cm2で光硬化するものである。照射光量は通常5〜35J/cm2、更に好ましくは10〜30J/cm2である。照射光量が多すぎると生産性が低下する傾向があり、少なすぎると表面硬度が不充分となる傾向にある。活性エネルギー線の照度は、通常10〜2000mW/cm2であり、特には50〜1000mW/cm2であることが好ましい。照度が小さすぎると生産性が低下する傾向があり、逆に、大きすぎると黄変が生じる傾向がある。
なお、活性エネルギー線源としては、光硬化で通常用いられるものであればよく、例えば、上記と同様に、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、無電極水銀ランプ、LED−UV等が挙げられる。光源から発生する赤外線により重合が暴走するのを防ぐため、ランプに赤外線を遮断するフィルターや赤外線を反射しない鏡等を用いることも可能である。
また、より重合度の向上のため、あるいは応力ひずみ開放のために熱処理してもよい。このとき、大気下または真空下で、通常50〜250℃で加熱処理する。
加熱による硬化を行う場合、かかる熱処理温度は通常30〜140℃である。熱処理時間は通常0.1秒〜10時間である。熱処理温度が低すぎると硬化が不十分となる。熱処理時間が短すぎると硬化が不十分となり、また、長すぎると生産性が低下するとともに、意図しない副反応が進行する場合がある。
得られる本発明の成形物の反応率は通常75%以上であり、好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上である。反応率が低すぎると成形物の表面硬度が不充分となる傾向がある。
なお、反応率は、上述と同様の方法にて測定することができる。
また、本発明の成形物の厚さは、50〜10,000μmであり、好ましくは100〜5,000μm、更には400〜3,000μm、殊には500〜1000μmであることが好ましい。かかる厚さが薄すぎると機械特性が低下する傾向があり、厚すぎると光学特性が低下する傾向がある。


本発明の成形物は、ディスプレイ用の保護板やコピー機、自動車、家電等における表示部周辺の立体化部品の用途に有用であり、高い透明性が求められる点から、光線透過率が通常80%以上、特には85%以上、更には90%以上、特には92%以上であることが好ましい。なお一般的に光線透過率の上限は99%である。
本発明の成形物は、表面の鉛筆硬度が通常2H以上、特には3H以上、更には4H以上であることが好ましい。鉛筆硬度が低すぎると、プラスチックシートが傷つきやすく、ディスプレイの品質が低下する傾向にある。
本発明の成形物は、ディスプレイの高精細化の点から、外部ヘイズが通常0.5以下であり、特には0.4以下、更には0.1以下であることが好ましい。
かくして本発明においては、透明性に優れたプラスチックシートを形成することができ、かつ、巻き取ってなるプラスチックシートロールが形成しやすく、更に、最終硬化物となる立体成形された成形物の透明性、光学特性、表面硬度に優れたプラスチックシートを得ることができるものであり、ディスプレイ用の保護板や、コピー機、自動車、家電等における表示部周辺の立体化部品等の用途に有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
各物性の測定方法は以下の通りである。
(1)鉛筆硬度
JIS K 5600−5−4に準じて、プラスチックシートおよび成形物の鉛筆硬度を測定した。なお、荷重については50gまたは750gにて測定した。
(2)外部ヘイズ
JIS K 7361に準拠し、日本電色工業(株)製ヘイズメーター「NDH−2000」を用いて測定した対象物の全ヘイズから内部ヘイズを引いた値にて算出した。
かかる内部ヘイズは、予めガラス板2枚の間に流動パラフィンのみを挟んでヘイズ(Hz1)を測定し、次に流動パラフィンで表面を濡らしたフィルム、プラスチックシート、成形物を挟んでヘイズ(Hz2)を測定し、これらの差をとることで算出した値である。
外部ヘイズ=全ヘイズ―{(Hz2)−(Hz1)}
(3)光線透過率(%)
日本電色社製ヘイズメーター「NDH−2000」を用いて、全光線透過率(%)を測定した。
また、下記の通り配合成分を用意した。
〔脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)〕
イソホロン構造(一般式(1))を有する6官能のウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製)
〔脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレート(B)〕
ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート(新中村化学社製「DCP」)
〔脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂(C)〕
ジシクロペンタニルアクリレートに、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.05%を加え、それを脱泡処理した後、気泡が入らないように2軸延伸ポリビニルアルコールフィルムの風袋に密封し、厚さが0.5mmとなるように調整した後、その風袋上部に2.8mmのガラス板を載せ、その上からメタルハライドランプで、360nm波長が50mW/cm2の照度で20J/cm2となるように照射した。
その後、2軸延伸ポリビニルアルコールフィルムの風袋より硬化物のみを取り出し、粉砕機で粉砕加工した。モノマー反応率が98%、重量平均分子量(Mw)が110万の(メタ)アクリル系樹脂粉体を得た。
〔重合開始剤(D)〕
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(光重合開始剤)
〔メルカプト基含有化合物(E)〕
ペンタエリトール=テトラキス(3−スルファニルブタノアート) (昭和電工社製「カレンズMT PE−1」)
<実施例1〜2、比較例1〜3>
[硬化性組成物[I]の調製]
上記成分(A)を10重量部、成分(B)を84重量部、成分(C)を3重量部、成分(D)を1重量部、成分(E)を3重量部用い、酸化防止剤を0.5重量部用いた。これらを混合し、60℃にて均一になるまで撹拌した後、42μmのフィルターで濾過して硬化性組成物[I]を得た。かかる硬化性組成物[I]における成分(A):成分(B)=11:89である。成分(C)は成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して3重量部である。成分(D)は成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して1重量部である。成分(E)は成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して3重量部である。酸化防止剤は成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して0.5重量部である。
[プラスチックシート及びプラスチックシートロールの作製]
基材フィルムとして、表1に記載のフィルムを用いた。
水平方向に連続的に搬送される基材フィルム上に、880μmのクリアランスを有するアプリケーターを用いて連続的に硬化性組成物[I]の塗膜を形成した。かかる塗膜上に基材フィルムを貼合し、基材フィルム/硬化性組成物[I]/基材フィルムフィルムの積層体を得た。その積層体の上部から、メタルハライドランプにより、360nm波長での紫外線測定器にて、50mW/cm2の照射強度で、露光量が250mJ/cm2になるようUV照射し硬化性組成物[I]層を硬化した。かかる工程は上記積層体を搬送しつつ、連続的に行った。その後、両面の基材フィルムを剥離し、硬化したプラスチックシートのみを支管に巻き取り、プラスチックフィルムロールを得た。
得られたプラスチックシートについて諸物性を評価し、その結果を表1に示す。
[モデル成形物の作製]
上記のプラスチックシートロールより一定量を切り出し、360nmで約5,000mW/cm2の照度で20J/cm2になるように紫外線を照射した後に、真空乾燥機を用いて、200℃設定、0.1Torr以下の真空下で、乾燥機周囲金属躯体に接するように配置して6hrのアニールを行い、モデル成形物を得た。かかるモデル成形物は意匠性を付与する成形を行っていない成形物であるが、意匠性を付与する際にプラスチックシート表面に凹凸や不純物が付着しなければ、意匠性の有無は諸物性に影響しないという理由で意匠性を付与して成形した成形物と同等の成形物である。
得られたモデル成形物について諸物性を評価し、その結果を表1に示す。
Figure 0006710905
外部ヘイズが0.12である本発明のプラスチックシートを用いた実施例1では、かかるプラスチックシートを成形した成形物において外部ヘイズが0.06と著しく低く、非常に透明性に優れた成形物が得られた。同様に、外部ヘイズが0.47のプラスチックシートを用いた実施例2では、成形物における外部ヘイズが0.03と著しく低く、非常に透明性に優れた成形物が得られた。
これに対して外部ヘイズが0.6であるプラスチックシートを用いた比較例1では、成形物における外部ヘイズが0.58となり、透明性についてほぼ変化はなかった。また、外部ヘイズが0.98であるプラスチックシートを用いた比較例2、外部ヘイズが1.24であるプラスチックシートを用いた比較例3においては、それぞれ成形物において2.8および2.45となり、透明性が悪化した。
以上の結果から、本発明のプラスチックシートは、硬化性組成物[I]の硬化による反応率を中程度で留めて柔軟性を有する状態にて外部ヘイズが特定の小さい値であるため、かかるプラスチックシートを巻き取ってなるプラスチックシートロールを形成することが可能であり、かつ、立体成形が可能であり、高度に透明性に優れた成形物が得られることが判る。
また、かかるプラスチックシートを連続成形法により製造する場合に、用いる基材フィルムとして、外部ヘイズが特定の小さい値であるフィルムを用いることによって、透明性
に優れたプラスチックシートがより効果的に得られることも判る。
本発明の硬化性組成物[I]を硬化してなるプラスチックシートおよびそれから得られる成形物は、様々な光学材料、電子材料に有利に利用できる。例えば、液晶基板、有機/無機EL用基板、電子ペーパー用基板、導光板、位相差板、タッチパネル等、各種ディスプレイ用部材、光ディスク基板や光ディスク用フィルムを初めとする記憶・記録用途、薄膜電池基板、太陽電池基板などのエネルギー用途、光導波路などの光通信用途、更には機能性フィルム・シート、反射防止膜、光学多層膜等各種光学フィルム・シート用途、微小な立体性のある携帯電話端末用カバー等に利用できる。中でも、特にディスプレイの保護板や静電容量方式のタッチパネル基板、微小な立体性のある携帯電話端末用カバーとして非常に期待される。
1…硬化性組成物[I]供給容器
2…供給容器1から吐出された硬化性組成物[I]
3…基材フィルム
4…活性エネルギー線源
5…プラスチックシート
6…プラスチックシートロール
7…立体成形加工用型
8…成形されたプラスチックシート
9…成形物

Claims (11)

  1. 下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する硬化性組成物[I]を硬化してなるプラスチックシートであって、反応率が40%以上75%未満であり、外部ヘイズが0.5以下であり、厚さが50〜10,000μmであることを特徴とするプラスチックシート。
    (A)脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート
    (B)脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレート(但し、前記(A)を除く。)
    (C)重量平均分子量が5万〜300万である脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂
    (D)重合開始剤
  2. 脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂(C)の含有量が、脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレート(B)の合計100重量部に対して、1〜50重量部であることを特徴とする請求項1記載のプラスチックシート。
  3. 脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂(C)が脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレート(c1)のホモポリマーであることを特徴とする請求項1または2記載のプラスチックシート。
  4. 硬化性組成物[I]が下記成分(E)を含有してなることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のプラスチックシート。
    (E)メルカプタン基含有化合物
  5. 硬化性組成物[I]の23℃における粘度が、100〜20,000mPa・sであることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のプラスチックシート。
  6. 請求項1〜5いずれか記載のプラスチックシートが巻き取られてなることを特徴とするプラスチックシートロール。
  7. 請求項1〜5いずれか記載のプラスチックシート、または、請求項6記載のプラスチックシートロールから巻き出してなるプラスチックシートを成形加工した後、活性エネルギー線照射または加熱により、反応率が75%以上となるように硬化してなることを特徴とする成形物の製造方法。
  8. (C)重量平均分子量が5万〜300万である脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含有する硬化性組成物[I]を硬化してなる成形物であって、反応率が75%以上であり、外部ヘイズが0.5以下であり、厚さが50〜10,000μmであることを特徴とする成形物。
  9. 下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する硬化性組成物[I]を反応率が40%以上75%未満となるように硬化してなり、外部ヘイズが0.5以下であり、厚さが50〜10,000μmであるプラスチックシートを製造するにあたり、基材フィルム間に硬化性組成物[I]を有する積層体を形成し、該積層体に活性エネルギー線を照射または加熱を行い、硬化性組成物[I]を硬化することを特徴とするプラスチックシートの製造方法。
    (A)脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート
    (B)脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレート(但し、前記(A)を除く。)
    (C)重量平均分子量が5万〜300万である脂環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂
    (D)重合開始剤
  10. 基材フィルムの外部ヘイズが、0.4以下であることを特徴とする請求項9記載のプラスチックシートの製造方法。
  11. 基材フィルムが、ビニルアルコール系フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムから選ばれるフィルムであることを特徴とする請求項9または10記載のプラスチックシートの製造方法。
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