JP2007056179A - 樹脂成形体、及びその用途 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、プラスチック基板は熱や水分により寸法が変化するものであり、熱による膨張や収縮は樹脂の線膨張係数に依存し、水分による膨張や収縮は樹脂の吸水率に依存するため、ナノフィラーやガラスファイバーを樹脂に配合して、線膨張係数や吸水率を低減する手法も考えられるが、比重の増大、光線透過率の低下、コストアップなどの問題を生じるものであった。
また、特許文献1の開示技術では、2官能性の(メタ)アクリレートを用いているため、低線膨張化は達成されない。特許文献2及び3の開示技術では、多官能の脂肪族(メタ)アクリレートを使用することにより耐熱性は向上されるが、脂肪族単量体を使用しているため吸水率が高くなり、成形体の吸脱湿に伴う寸法変化が大きくなる。
なお、特許文献3における線膨張係数の測定手法(引張TMA)では、脱水に伴う収縮が線膨張にオーバーラップするため、正確な測定となっていないのであり、真の線膨張係数を測定するためには、プラスチック基板を乾燥して脱水の影響を排除した上で、昇温測定する必要がある。
即ち、本発明は、下記の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有してなり、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、成分(A)を50〜70重量部、成分(B)を30〜50重量部、成分(C)を0.1〜5重量部含有してなる光重合性組成物を光硬化して得られることを特徴とする樹脂成形体に関するものである。
成分(B):一般式(2)で示される脂肪族4官能(メタ)アクリレート系化合物
成分(C):一般式(3)で示される4官能メルカプタン系化合物
成分(D):光重合開始剤
さらに、本発明においては、400〜700nmの波長における光線透過率が90%以上であり、かつリタデーションが1nm以下である樹脂成形体が好ましい。
本発明は、前記樹脂成形体の少なくとも片面にガスバリア膜が成膜されてなるガスバリア性フィルムに関する。
また、本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア膜上に、更にウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含有してなるハードコート膜が成膜されてなること、また、フッ素系樹脂のコート膜が成膜されてなることが好ましい。
さらに、本発明は、前記ガスバリア性フィルムの少なくとも片面に透明導電膜が成膜されてなる透明導電性フィルムに関する。
また、本発明は、前記ガスバリア性フィルム、または前記透明導電性フィルムを用いてなるディスプレイ用基板に関する。
本発明の樹脂成形体は、上記の成分(A)〜(D)を含有してなる光重合性組成物を光硬化して得られる。
これらの脂環骨格2官能(メタ)アクリレート系化合物は、脂環骨格を有するため樹脂成形体の低吸水率化に寄与する。
低吸水率化は寸法変化を低減できるだけではない。酸化珪素膜のスパッタやITO膜のスパッタは、高真空下で行われるが、基板の低吸水率化により揮発水分を低減し、高速な成膜と、ガスバリア性や導電性などの膜質に対して優れた成膜を行うことが可能になる。単官能の(メタ)アクリレート系化合物を用いると成形体の耐熱性が低下し、逆に、3官能以上の(メタ)アクリレート系化合物を用いると成形体がもろくなるため本発明の目的を達成しない。なお、成分(A)は低線膨張化には大きく寄与しない。
かかる一般式(2)で示される化合物としては、分子側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入したものや、分子末端に(メタ)アクリロイル基を導入したものなどが挙げられるが、好ましくは分子末端に(メタ)アクリロイル基を導入したものであり、例えば、ペンタエリスルトールテトラアクリレート、ジグリセリンテトラアクリレートなどが好適なものとしてあげられる。
これら脂肪族4官能(メタ)アクリレート系化合物は、高度な架橋構造を形成するため、樹脂成形体の低線膨張化に寄与する。また、脂肪族骨格を有するため、樹脂成形体のフレキシブル化に寄与する。
本発明においては、上記脂環骨格2官能(メタ)アクリレート系化合物(A)と脂肪族4官能(メタ)アクリレート系化合物(B)を共重合する。好ましくは、メタクリレート系化合物同士では成形体がもろくなり、アクリレート系化合物同士では耐熱性が低下する傾向にあるため、成分(A)をメタクリレート系化合物、成分(B)をアクリレート系化合物とすることが好ましい。なお、成分(B)は低吸水率化には大きく寄与しない。
かかる一般式(3)で示される化合物としては、例えば、ペンタエリスルトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスルトールテトラキスチオプロピオネートなどが好適である。ここで言う4官能とは、分子内にチオール基が4個有することを意味する。チオール基は、(メタ)アクリロイル基と共重合するだけではなく、連鎖移動剤として樹脂の低複屈折化に寄与する。
本発明で使用する4官能メルカプタン系化合物(C)は多官能であるため、上記多官能(メタ)アクリレート系化合物(A)及び(B)により形成される架橋構造を維持し、樹脂の耐熱性や線膨張を低下させることはない。
用いるメルカプタン系化合物(C)が、3官能以下では樹脂の耐熱性や線膨張係数が悪化し、逆に、5官能以上でも未反応のチオール基が樹脂成形体中に残存しやすくなるため耐熱性や線膨張係数が悪化する。なお、成分(C)は、低複屈折化には寄与するものの、低吸水率化には大きく寄与しない。
本発明における含有割合は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、次に示されるとおりである。
成分(A):50〜70重量部、好ましくは53〜67重量部、さらに好ましくは55〜65重量部
成分(B):30〜50重量部、好ましくは33〜47重量部、さらに好ましくは35〜45重量部
成分(C):0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜4.5重量部、さらに好ましくは1〜4重量部
成分(B)の含有量が上限値を超えると吸水率が増大し、逆に、下限値未満では低線膨張化の効果が十分得られない。
成分(C)の含有量が上限値を超えると保存安定性が低下し、逆に、下限値未満では低複屈折化の効果が十分得られない。
光重合開始剤(D)の含有量は、特に限定されないが、成分(A)、(B)、及び(C)の合計100重量部に対して、0.05〜5重量部、更には0.1〜3重量部、特には0.2〜2重量部であることが好ましい。かかる含有量が上限値を超えると樹脂成形体の光線透過率が低下し、かつリタデーションが増大する傾向にある。一方、下限値未満では重合速度が低下し重合が十分に完結しないおそれがある。
本発明における樹脂成形体の製造方法としては、上記の光重合性組成物を、波長200〜400nmの紫外線を用いて、照射光量1〜50J/cm2で光硬化することが好ましい。照射光量のより好ましい範囲は5〜40J/cm2、更に好ましくは10〜30J/cm2である。照射光量が下限値未満では十分な反応率が得られない傾向にあり、上限値を超える場合は生産性に劣る傾向がある。紫外線の照度は、10〜5000mW/cm2が好ましく、特には100〜1000mW/cm2が好ましい。照度が小さすぎると成形体内部まで十分に硬化しない傾向にあり、逆に、照度が大きすぎると重合が暴走しリタデーションが増大する傾向にある。
紫外線源としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、無電極水銀ランプ等が挙げられる。光源から発生する赤外線により重合が暴走するのを防ぐため、ランプに赤外線を遮断するフィルターや赤外線を反射しない鏡等を用いることも可能である。
本発明で得られた樹脂成形体は、重合度向上、応力ひずみ開放、あるいは揮発成分除去のために熱処理してもよく、この場合100℃以上、好ましくは150〜200℃で熱処理することが好ましい。
一般的に、光硬化はバッチ式で行われる。すなわち、厚さ制御のためのスペーサーを介して、2枚の透明ガラスを対向させた型を作製し、そのキャビティに光重合性組成物を注入し、活性エネルギー線を照射して硬化させ、脱型することにより行われる。
ガスバリアの能力としては、好ましくは、酸素透過率が1cc/day・atm・m2以下、より好ましくは0.1cc/day・atm・m2以下である。酸素透過率が1cc/day・atm・m2を超えると、液晶や有機EL素子の信頼性が低下する傾向にある。
フッ素系樹脂のコート膜は、例えば、フッ素化アルキル基を有するシランカップリング剤を、ガスバリア膜上にスピンコートやディップコートすることにより形成される。シランカップリング剤のシラノール基が酸化珪素と反応し、密着性に優れた薄膜を形成する。密着性を高めるため、コート後に熱処理や高温高湿処理しても良い。コート膜の膜厚は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.1μm以下、さらに好ましくは0.01μm以下であり、通常、下限としては0.0001μmである。かかる膜厚が上限値を超えると 生産性に劣る傾向にあり、下限値未満ではコートの効果が不十分となる傾向にある。
かくして上記の樹脂成形体、樹脂成形体を用いて得られるガスバリア性フィルム、さらには透明導電性フィルムを用いて、ディスプレイ用のプラスチック基板とすることができる。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
各物性の測定方法は以下の通りである。
長さ30(mm)×幅3(mm)の試験片を用い、セイコー電子社製「TMA120」で、引っ張り法TMA(支点間距離20mm、加重10g、昇温速度5℃/分、窒素フロー140ml/分)にて測定した。一旦、25℃から150℃に昇温して試験片を乾燥し、窒素フローしながら25℃に冷却した後、2回目の昇温測定を行い、下式に従い、25℃から100℃までの線膨張係数を算出した。
線膨張係数(ppm/℃)=試験片の伸び(mm)/20(mm)/75(℃)×106
(2)ガラス転移温度
長さ30(mm)×幅3(mm)の試験片を用い、セイコー電子社製「TMA120」で、引っ張り法TMA(支点間距離20mm、加重100g、昇温速度5℃/分、窒素フロー140ml/分)にて測定した。
(3)吸水率
JIS K7209に準じ、100mm×100mmサイズの試験片を用いて、50℃、24時間乾燥した後、23℃、24時間水浸漬した後の吸水率を測定した。
(4)光線透過率
分光光度計(日本分光工業(株)製、商品名:「Ubest−35」)を用いて550nmの光線透過率を測定した。
オーク社製の複屈折測定装置にて25℃で測定した。
(6)曲げ弾性率
長さ25(mm)×幅10(mm)の試験片を用いて、島津製作所社製「オートグラフAG−5kNE」(支点間距離20mm、0.5mm/分)にて25℃で測定した。
(7)鉛筆硬度
JIS K−5600に準じて測定した。
(8)撥水性
試験片のコート膜上に水滴を落とし、水との接触角(°)を測定した。
(9)酸素透過率
オキシトラン社製の酸素モコン測定器にて、23℃、80%RHの条件下で測定した。
(10)表面抵抗値
三菱化学社製の4端子法抵抗測定器(ロレスターMP)を用いて測定した。
[光重合性組成物の調整]
ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート(A)(新中村化学社製「DCP」)60部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(B)(新中村化学社製「A−TMMT」)40部、ペンタエリスルトールテトラキスチオプロピオネート(C)(淀化学製「PETP」)3部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(D)(チバガイギー社製「Irgacure184」)2部を、均一になるまで撹拌し、光重合性組成物を得た。
研磨ガラス板2枚を対向させ、厚さ0.2mmのシリコン板をスペーサーとした成形型に、上記光重合性組成物を注液し、メタルハライドランプを用いて、照度200mW/cm2、光量10J/cm2で紫外線を照射した。脱型し得られた硬化物を、180℃の真空オーブン中で2時間加熱して、幅150mm×長さ150mm×厚さ0.2mmの樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体の線膨張係数は50ppm/℃、吸水率は1%であり、低線膨張かつ低吸水であった。その他の物性は表2に示される通りであり、良好な光学特性と熱機械特性を有していた。
上記で得られた樹脂成形体の両面に、スパッタ法にて100℃で厚さ200Åの酸化珪素膜を成膜し、ガスバリア性フィルム1を得た。かかるガスバリア性フィルム1の酸素透過率を表3に示す。
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物として日本合成化学工業社製「UV7600B」20部、シランカップリング剤として信越化学製「KBM503」2部、光重合開始剤としてチバガイギー社製「Irgacure184」1部、および溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80部を用いて、ウレタンアクリレート系化合物を含有してなるハードコート剤を調整した。
かかるハードコート剤を、ガスバリア性フィルム1の酸化珪素膜面にスピンコートした(スピンコート条件:500rpm、室温)。100℃、5分で溶剤を乾燥した後、メタルハライドランプを用いて1Jの紫外線を照射して、厚さ2μmのハードコート膜を形成し、ガスバリア性フィルム2を得た。得られたガスバリア性フィルム2の酸素透過率と鉛筆硬度を表3に示す。
フッ素化アルキル基を含有するシランカップリング剤としてダイキン工業製「オプツールDSX」の1%パーフルオロヘキサン溶液を用いて、ガスバリア性フィルム1の酸化珪素膜面にスピンコートした(スピンコート条件:500rpm、室温)。40℃、90%RHの環境で1時間高温高湿処理した後、エタノールで洗浄してフッ素樹脂のコート膜を形成し、ガスバリア性フィルム3を得た。得られたガスバリア性フィルム3の酸素透過率と接触角を表3に示す。
ガスバリア性フィルム2の酸化珪素膜面(ハードコートの逆面)に、スパッタ法にて厚さ0.2μmのITO膜を成膜し、透明導電性フィルムを得た。かかる透明導電性フィルムの表面抵抗値を表4に示す。
表1に示される光重合性組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行った。比較例6においては、光重合性組成物の調整中に組成物がゲル化したため、目的とする樹脂成形体が得られなかった。得られた樹脂成形体の物性は表2に示される通りであった。更に、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムと透明導電性フィルムを得た。得られたガスバリア性フィルムと透明導電性フィルムの特性は表3と4に示される通りであった。
Claims (8)
- 下記の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有してなり、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、成分(A)を50〜70重量部、成分(B)を30〜50重量部、成分(C)を0.1〜5重量部含有してなる光重合性組成物を光硬化して得られることを特徴とする樹脂成形体。
成分(A):一般式(1)で示される脂環骨格2官能(メタ)アクリレート系化合物
成分(B):一般式(2)で示される脂肪族4官能(メタ)アクリレート系化合物
成分(C):一般式(3)で示される4官能メルカプタン系化合物
成分(D):光重合開始剤 - 厚さ50〜400μmであることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形体。
- 400〜700nmの波長における光線透過率が90%以上であり、かつリタデーションが1nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂成形体。
- 請求項1〜3いずれか記載の樹脂成形体の少なくとも片面にガスバリア膜が成膜されてなることを特徴とするガスバリア性フィルム。
- ガスバリア膜上に、更にウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含有してなるハードコート膜が成膜されてなることを特徴とする請求項4記載のガスバリア性フィルム。
- ガスバリア膜上に、更にフッ素系樹脂のコート膜が成膜されてなることを特徴とする請求項4記載のガスバリア性フィルム。
- 請求項4〜6いずれか記載のガスバリア性フィルムの少なくとも片面に透明導電膜が成膜されてなることを特徴とする透明導電性フィルム。
- 請求項4〜6いずれか記載のガスバリア性フィルム、または請求項7記載の透明導電性フィルムを用いてなることを特徴とするディスプレイ用基板。
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