JP4905988B2 - 使用済脱硝触媒の再生方法 - Google Patents

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本発明は、使用済排煙脱硝触媒を再生する方法に関する。
近年、廃棄物の発生量を低減するため、使用済触媒を再利用する必要が生じている。特に、石炭や重油を燃料としたボイラ排ガスの排ガス脱硝触媒では、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び砒素化合物による経時的な性能低下が起こっている。
そこで、触媒表面に酸化チタンを含む脱硝触媒成分の被覆層を設けることにより脱硝性能を高める再生方法を本発明者らは提案した(特許文献1)。この方法は使用済脱硝触媒の表面を任意の新品触媒にすることが可能であるため、元々の触媒の初期値以上まで高活性化できるという特徴も有している。
また、特許文献2には使用済脱硝触媒を硫酸アルミニウム溶液又は硫酸バナジルと硫酸アルミニウムの混合溶液に含浸させることで再生する方法が開示され、特許文献3には使用済脱硫触媒を水、硫酸又は蓚酸の水溶液で洗浄した後、乾燥し、次いで酸化チタンを含む脱硝粉末と無機酸化物のコロイド状物を含むスラリで表面をコートする方法が開示されている。なお、特許文献2、3記載の発明も本発明者らによる発明である。
さらに、前記触媒を使用中に脱硝触媒の鉄化合物含有率が高まり、SO2のSO3への酸化率(以下、SO2酸化率という)が上昇する場合がある。
特開平11−28358号公報 特開2004−267968号公報 特開2005−279452号公報
上記特許文献1記載の脱硝触媒成分の被覆層を形成する触媒再生方法は脱硝性能を初期値以上に回復可能であるが、鉄分が多い石炭を燃料に用いた場合、触媒中の酸化鉄の濃度が上昇し、それに伴い排ガスに含まれるSO2のSO3への酸化率が高くなる。このような触媒に対して硫酸アルミニウム水溶液を含浸し、硫酸アルミニウムの濃度をできるだけ高くすることによって、SO2酸化率を抑制した後、触媒成分の被覆層を設ける方法について本発明者らは提案している(特願2007−276000)。この方法で硫酸アルミニウム水溶液を使用済触媒に含浸させる場合に硫酸アルミニウムの濃度をできるだけ高くすることでSO2酸化率の抑制を促進することができる。しかしながら、含浸した使用済触媒を乾燥した後に再度含浸したところ、含浸した硫酸アルミニウムの一部が含浸液の水分を吸水するため、該触媒の表面に硫酸アルミニウムが析出することを本発明者らは確認した。その結果、触媒内部の細孔を閉塞できず、全体として触媒の細孔を閉塞することはできないことが分かった。
本発明の課題は、硫酸アルミニウムの含浸量をできるだけ高めるように使用済触媒に硫酸アルミニウム水溶液を含浸させて、脱硝触媒のSO2酸化率を抑制すると共に脱硝率も改善する使用済脱硝触媒の再生方法を提供することである。
上記本発明の課題は次の解決手段で解決される。
すなわち、本発明は、鉄化合物の含有率が高くなり、SO2酸化率が上昇したモリブデン、タングステン及びバナジウムのうち一元素以上の酸化物とチタニアを少なくとも成分として含む使用済排煙脱硝触媒に対してアルミニウムの水酸化物又は酸化物を含んだ硫酸アルミニウム水溶液(以下、含浸液(A)という)を含浸し、さらに乾燥又は焼成することにより、該使用済触媒のSO2酸化率を低減する。その後、少なくともバナジウムの酸化物及びチタニアを含んだ脱硝触媒成分(B)とコロイダルシリカとを含んだスラリをコーティングした後、乾燥又は焼成することにより、該使用済触媒の脱硝性能を改良する方法である。
ここで、アルミニウムの水酸化物や酸化物は前記含浸液とともに触媒内部に移動できるように、微粒子粉末やコロイド状物のような該含浸液中に分散状態で存在できる性状が望ましい。
また、溶出した硫酸と素早く反応できるように、アルミニウムの水酸化物又は酸化物としては、γアルミナ、水酸化アルミニウムやベーマイトのような比表面積の大きいものが望ましい。
なお、硫酸アルミニウムは100℃前後で自身の結晶水に溶解し、性状が大きく変化するので、使用済触媒に前記硫酸アルミニウム水溶液への含浸後及び触媒コーティング後の乾燥温度は100℃以上にすることが望ましい。
(作用)
触媒中の鉄化合物濃度が高い使用済触媒はSO2酸化率が高くなっている場合があり、そのような触媒に対しては硫酸アルミニウム水溶液を含浸し、SO2酸化率を低減した後、触媒成分の被覆層を設ける方法を本発明者らは提案し、特許出願(特願2007−276000)していることは先に述べた通りである。
本発明は、アルミニウムの水酸化物又は酸化物が下記のような反応によって、硫酸と反応し、溶解する現象を利用している。
2Al(OH)3+3H2SO4→Al2(SO43+6H2
Al23+3H2SO4→Al2(SO43+3H2
硫酸アルミニウム水溶液からなる含浸液中に硫酸根を含んだ使用済触媒を浸漬すると、前記含浸液は使用済触媒の細孔内に浸透し、該触媒中の硫酸が含浸液に溶出する。本発明では、アルミニウムの水酸化物や酸化物を加えた含浸液に硫酸根が溶出し、前述のアルミニウムの水酸化物や酸化物が硫酸アルミニウム化するため、前記含浸液液中の硫酸アルミニウム濃度が高くなり、溶解度を超えた硫酸アルミニウムが細孔内に沈殿するという現象を利用する。
硫酸アルミニウムの生成と沈殿は硫酸根溶出の停止又は、該含浸液中の水分が乾燥や焼成によって無くなるまで継続するので、単純に高濃度な硫酸アルミニウム液を含浸した場合よりも多くの硫酸アルミニウムが該細孔を埋めることになり、同じ濃度の硫酸アルミニウム溶液を含浸するより細孔容積を低減できる。
ここで、前記含浸液に添加するアルミニウムの水酸化物又は酸化物は溶出した硫酸根とできるだけ素早く反応できるように、微粒子粉末または微粒のコロイド状物であることが望ましい。また、γアルミナ、水酸化アルミニウムやベーマイトのような比表面積の大きな物質は含浸液との接触面積を相対的に大きくできるので望ましい。
この後、特許出願(特願2007−276000)で述べた方法と同様に触媒表面にコーティング層を設けることによって、従来行われてきたSO2高酸化率化要因の洗浄除去法(例えば、特許第3915173号)を行うことなく、SO2酸化率の低減と脱硝率の改善を両立させることができる。
近年、使用済触媒の洗浄液は重金属や有毒物質を含んでいるため廃棄が困難になり、例えば特許第3915173号の発明のように洗浄液を再利用するための工程が必要になってきているが、本発明では再生処理を実行する際に溶出物を抑制できるため、含浸液及びスラリは使用減少量を補充することにより、再生作業中は廃棄せずに連続的に使用可能である。そのため、前記洗浄除去法のような洗浄廃液の再生処理は不要である。
また、本発明の触媒再生法では細孔が硫酸アルミニウムにより埋められるため、触媒が高密度化され、曲げ強度も高くなる。従来の洗浄含浸による再生法では、灰分や付着成分が除去され、その分触媒内部の空孔が増大するため、触媒強度が低下することが知られているが(特開2004−267968号公報参照)、本方法ではそのような問題も発生しない。
こうして本発明により、得られた再生触媒はSO2酸化率を低減し、脱硝率を向上させることが可能になる。
本発明によって、使用済触媒体を廃棄することなく再利用できることに加えて、洗浄しなくても良いので産業廃棄物及び廃水削減に効果がある。
本発明の以下に述べる実施例では、石炭焚ボイラで長期間使用され、脱硝性能が劣化した脱硝触媒を再生する方法であるが、本実施例の再生法を用いる脱硝触媒は当該使用済みの脱硝触媒の製造業者とは限らず、本実施例の触媒再生法は該触媒の製造法によって処理法を調整するものではない。そのため当該脱硝触媒がどのような製造方法で作製されたかを問わないで、当該使用済み触媒の表面にコーティングする粉末の作製法として捉えることができる。
本実施例1〜5と比較例1、2は、石炭焚ボイラの排ガス処理に約7年間使用され、350℃における脱硝率が実機使用前の約70%まで劣化した脱硝触媒エレメント(SUS430製のラス板を基材にした板状触媒、幅450mmで排ガス入口から出口の長さ580mm)を用いた。前記エレメントから100mm角の平板状サンプルを切り出し、下記の処理を行った。前記触媒はチタンの酸化物と活性成分としてモリブデンとバナジウムの酸化物を含んだもので、蛍光X線の分析によると、ラス板を取り除いた触媒のTi/Mo/Vモル比は90/10/2、触媒に含まれる鉄化合物はFe23換算で2〜3重量%、そしてSO3含有率は約5〜6重量%であった。
含浸液(A)は硫酸アルミニウム濃度25wt%(無水塩換算)、水酸化アルミニウム微粉末(粒径1μm)10wt%、液温度20℃で使用した。
脱硝触媒成分(B)を含むスラリは脱硝触媒粉末(Ti/Mo/Vモル比(89/5/6))、20%酸化ケイ素を含むコロイダルシリカと水からなり、脱硝触媒粉末:コロイダルシリカ:水の重量比が1:1:1であった。このうち、脱硝触媒粉末は酸化チタン粉末20kgにモリブデン酸アンモニウム((NH46・Mo724・4H2O)を2.38kg、メタバナジン酸アンモニウム(NH4VO3)1.89kg、蓚酸3.0kgに水を加えてニーダで混練してペースト状にしたものを直径3mmの柱状に造粒後、流動層乾燥器で乾燥、500℃で2時間焼成し、続いてハンマーミルで粉砕して得た。
前記含浸液(A)(硫酸アルミニウム濃度25wt%(無水塩換算)及び水酸化アルミニウム微粉末(粒径1μm)10wt%からなる)に前記使用済触媒を10分含浸した後、液切りを行い、150℃で1時間通風乾燥した。触媒温度が室温まで低下した後、前記脱硝触媒成分(B)を含むスラリ(20%酸化ケイ素を含むコロイダルシリカと水からなる)をコーティング液として、このコーティング液に使用済触媒を1分間浸漬する。その後で液切りを行い、常温で30分間風乾を行った後、150℃で1時間通風乾燥した。触媒粉末は100mm角触媒当り約0.80g付着した。
前記含浸液(A)の水酸化アルミニウム微粉末の代わりに、ベーマイト(Al23・H2O)粉末を用いた以外は実施例1と同条件で使用済触媒の再生処理を行った。
再生対象の使用済触媒が活性成分としてタングステンとバナジウムの酸化物を含んだものであることが実施例1とは相違し、さらに石炭焚用ボイラでの使用により350℃における脱硝率が実機使用前の約70%まで劣化しており、蛍光X線の分析によるとTi/W/Vモル比は90/10/2、Fe23換算のFe化合物含有率が2.5重量%、SO3含有率が5重量%であったものを使用した以外は実施例1と同じ条件で使用済触媒の再生処理を行った。
前記実施例1の脱硝触媒成分(B)を含むスラリの脱硝触媒粉末として酸化チタン粉末20kgに、モリブデン酸アンモニウム((NH46・Mo724・4H2O)の代わりにタングステン酸アンモニウム((NH46・[H21240]・nH2O,n=6)を3.44kg加え、さらにメタバナジン酸アンモニウム(NH4VO3)1.89kg、蓚酸3.0kgに水を加えてニーダで混練してペースト状にしたものを直径3mmの柱状に造粒後、流動層乾燥器で乾燥、500℃で2時間焼成し、続いてハンマーミルで粉砕して得た。それ以外は実施例3と同じ条件で使用済触媒の再生処理を行った
前記実施例1の脱硝触媒成分(B)を含むスラリの脱硝触媒粉末として酸化チタン粉末20kgにメタバナジン酸アンモニウム(NH4VO3)1.89kg、蓚酸3.0kgに水を加えてニーダで混練してペースト状にしたものを直径3mmの柱状に造粒後、流動層乾燥器で乾燥、500℃で2時間焼成し、続いてハンマーミルで粉砕して得た。それ以外は実施例1と同じ条件で使用済触媒の再生処理を行った。
比較例1
アルミナ粒子を含浸液(A)に添加しなかった以外は実施例1と同じ条件で使用済触媒の再生処理を行った。
比較例2
アルミナ粒子を含浸液(A)に添加しなかった以外は実施例3と同じ条件で行った。
以上の各実施例と比較例で得られた再生触媒について触媒活性の測定を次のように行った。
触媒活性の測定条件はガス組成:NO:200ppm、NH3:240ppm、SO2:500ppm、SO3:50ppm、CO2:12%、H2O:12%、O2:3%、N2:バランス、反応温度は350℃であった。
脱硝率とSO2酸化率の測定結果を無処理の値を100とした相対値で表1に示す。
Figure 0004905988
以上から、本発明の実施例1では比較例1、2よりSO2酸化率が低減されている。これは、溶出した硫酸と水酸化アルミニウムが反応して硫酸アルミニウム化して細孔を閉塞したものと考えられる。実施例1と同じ効果は実施例2のように、水酸化アルミニウムの代わりに酸化アルミニウムを用いた場合でも確認された。また、本発明は活性成分がタングステンとバナジウムである触媒でも同様であることが比較例2と実施例3、4から明らかである。さらに脱硝触媒成分(B)を実施例1〜3とは代えた実施例4、5においても比較例1、2よりSO2酸化率が低減されている。また、上記スラリに含まれる触媒成分が使用済脱硝触媒と必ずしも一致していなくても、性能回復できることが実施例2、5から明らかである。
本発明により、触媒再生において、洗浄なしでSO2酸化率の低減と脱硝率の改善が可能になり、産業上の利用可能性が高い。

Claims (1)

  1. モリブデン、タングステン及びバナジウムのうち一元素以上の酸化物とチタニアを少なくとも成分として含む使用済排煙脱硝触媒に、アルミニウムの水酸化物又は酸化物を含んだ硫酸アルミニウム水溶液を含浸した後、乾燥又は焼成し、その後、少なくともバナジウムの酸化物及びチタニアを含んだ脱硝触媒成分とコロイダルシリカとを含むスラリを該触媒表面にコーティングした後、さらに乾燥又は焼成することを特徴とする使用済脱硝触媒の再生法。
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