以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係るプリンタの概略構成図である。図1に示すように、プリンタ1は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3、サブタンク4(液体貯留タンク)、チューブ5a〜5d、インクカートリッジ6a〜6d、チューブ7a〜7c、差圧弁9、チャージタンク12、吸引ポンプ14などを備えている。また、プリンタ1の動作は制御装置100によって制御されている。
キャリッジ2は、駆動装置18によって駆動されて、図1の左右方向(走査方向)に平行に延びた2本のガイド軸17に沿って走査方向に往復移動する。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2上に搭載されており、キャリッジ2とともに走査方向に往復しつつ、その下面に設けられたノズル95(図8参照)から、図示しない用紙搬送機構により図1の下方(紙送り方向)に搬送される記録用紙Pにインク(液体)を吐出する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
サブタンク4は、キャリッジ2上に搭載されており、サブタンク4にはインクジェットヘッド3に供給するためのインクが一時的に貯留される。チューブ5a〜5dは、例えば、合成樹脂材料などからなり、一端がサブタンク4に接続されているとともに、他端がそれぞれインクカートリッジ6a〜6dに接続されている。インクカートリッジ6a〜6dには、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯留されており、インクカートリッジ6a〜6dに貯留されたこれら4色のインクが、それぞれチューブ5a〜5dを介してサブタンク4に供給される。これにより、インクジェットヘッド3にはサブタンク4からこれら4色のインクが供給され、ノズル95(図8参照)からは、これら4色のインクが吐出される。
チューブ7a〜7cは、例えば、合成樹脂材料からなり、それぞれ、サブタンク4とチャージタンク12、チャージタンク12と差圧弁9、及び、差圧弁9と吸引ポンプ14とを接続している。これにより、サブタンク4と吸引ポンプ14とは、チューブ7a、チャージタンク12、チューブ7b、差圧弁9及びチューブ7cを介して接続される。なお、サブタンク4の後述する気体室49(図3参照)からサブタンク4の後述する排気ユニット23(図2参照)、チューブ7a、チャージタンク12、チューブ7b、差圧弁9及びチューブ7cを経て吸引ポンプ14に至る気体流路が、本発明に係る排気流路に相当する。
差圧弁9は、後述するように、チューブ7aとチューブ7bとの連通及びその遮断を切り替える。チャージタンク12は、後述するように、排気流路におけるサブタンク4と差圧弁9との間の部分を負圧に保持したときに、負圧に保持された状態が持続する時間を長くするためのものである。
吸引ポンプ14は、チューブ7cに接続されており、排気流路内の気体を吸引することにより、後述するように、サブタンク4内の気体及び増粘したインクを排出させる。
次に、サブタンク4について詳細に説明する。図2は図1のサブタンク4の概略を示す斜視図である。図3は図2の平面図である。図4(a)は図3のA−A線断面図である。図4(b)は図3のB−B線断面図である。図4(c)は図3のC−C線断面図である。図4(d)は図3のD−D線断面図である。図5は図3のE−E線断面図である。図6は、図4(a)〜(d)の一点鎖線で囲まれた部分を拡大した図である。なお、図面を分かりやすくするため、図3においては、後述する接続ユニット21の流入管31a〜31d及び後述する排気ユニット23を二点鎖線で示すとともに、後述する接続ユニット21の接続部32及びサブタンク本体22の一部の図示を省略している。また、図4(a)〜図4(d)の一点鎖線で囲まれた部分は、全て同様の構造を有しているので、図6においてはこれらを1つの図面で表し、図4(a)の一点鎖線で囲まれた部分については、括弧を付けずに符号を付し、図4(b)〜図4(d)の一点鎖線で囲まれた部分については、括弧付きで符号を付している。
図2〜図6に示すように、サブタンク4は、接続ユニット21、サブタンク本体22及び排気ユニット23を有している。
接続ユニット21は、チューブ5a〜5dをサブタンク4に接続するものであり、流入管31a〜31d及び接続部32を有している。流入管31a〜31dは互いに平行に紙送り方向に延びた円管であり、走査方向に沿って等間隔に配列されている。流入管31a〜31dは、図2における手前側の端部が、それぞれチューブ5a〜5dに接続されている(図2、図3ではチューブ5a〜5dの図示を省略している)とともに、図2における奥側の端部が接続部32に接続されている。接続部32は、サブタンク本体22の走査方向に関する一方の端部の上面に接合されており、流入管31a〜31dとサブタンク本体22の後述する接続口41a〜41dとを連通させる。
サブタンク本体22は、接続口41a〜41d、インク流路42a〜42d、43a〜43d、46a〜46d、47a〜47d、インク貯留室44a〜44d、ダンパフィルム45a〜45d、気体室49及び気体透過膜60を有している。接続口41a〜41dは、略円形の平面形状を有しており、サブタンク本体22の図3における右下端部において、図3の上下方向に配列されている。そして、サブタンク本体22には、接続口41a〜41dからインクが供給される。
インク流路42aは、接続口41aから図3の上方に延びており、途中で図3の右上方向に折れ曲がってインク貯留室44a〜44dの図3における下方に隣接する位置まで延びている。
インク流路42bは、接続口41bから図3の左方に延びているともに途中で図中上方に折れ曲がって延びており、さらに途中で図3の右上方向に折れ曲がってインク貯留室44a〜44dの図3における下方に隣接する位置まで延びている。
インク流路42cは、接続口41cから図3の左方に延びているともに途中で図中上方に折れ曲がって延びており、さらに途中で図3の左上方向に折れ曲がってインク貯留室44a〜44dの図3における下方に隣接する位置まで延びている。
インク流路42dは、接続口41dから図3の左方に延びているともに途中で図中上方に折れ曲がって延びており、さらに途中で図3の左上方向に折れ曲がってインク貯留室44a〜44dの図3における下方に隣接する位置まで延びている。
そして、インク流路42a〜42dは、上述したように配置されることにより、図3の上下方向に延びた部分が、図3の左右方向に沿って、右側からインク流路42a、42b、42c、42dの順に配列されている。
インク貯留室44a〜44dは、インク流路42a〜42dの図3における上端部の上方に隣接する位置に、平面視で互いに重なるように配置されており、図4に示すように、鉛直方向に関して上から順に、インク貯留室44b、44a、44d、44cの順に配置されている。また、インク貯留室44a〜44dは、平面視で図3の左右方向を長手方向とする略長方形状となっている。
インク貯留室44bの上端部及びインク貯留室44aの下端部には、それぞれ、ダンパフィルム45b、45aが設けられており、ダンパフィルム45b、45aがそれぞれインク貯留室44bの上面及びインク貯留室44aの下面を画定する壁となっている。また、インク貯留室44bとインク貯留室44aとの間には、隔壁50が設けられており、隔壁50によってインク貯留室44bとインク貯留室44aとが隔てられている。
インク貯留室44dの上端部及びインク貯留室44cの下端部には、それぞれ、ダンパフィルム45d、45cが設けられており、ダンパフィルム45d、45cがそれぞれインク貯留室44dの上面及びインク貯留室44cの下面を画定する壁となっている。また、インク貯留室44dとインク貯留室44cとの間には、隔壁51が設けられており、隔壁51によってインク貯留室44dとインク貯留室44cとが隔てられている。なお、インク貯留室44aとインク貯留室44dとの間(ダンパフィルム45aとダンパフィルム45dとの間)は空間となっている。
ここで、印刷を行う際などに、キャリッジ2とともにサブタンク4が走査方向に往復移動すると、サブタンク4内のインクが振動してサブタンク4内のインクに圧力変動が生じるが、ダンパフィルム45a〜45dが変形することによりこのインクの圧力変動が抑制される。
インク流路43aは、インク流路42aの先端部(図3における上端部)から鉛直下方(図4(a)の下方)にインク貯留室44aと同じ高さまで延びており、そこから、さらに図4(a)の左方に折れ曲がって延び、インク貯留室44aと接続されている。
インク流路43bは、インク流路42bの先端部(図3における上端部)からさらにインク流路42bの延在方向(図4(b)の左方)に延びてインク貯留室44bと接続されている。
インク流路43cは、インク流路42cの先端部(図3における上端部)から鉛直下方(図4(c)の下方)にインク貯留室44cと同じ高さまで延びており、そこからさらに図4(c)の左方に折れ曲がって延び、インク貯留室44cと接続されている。
インク流路43dは、インク流路42dの先端部(図3における上端部)から鉛直下方(図4(d)の下方)にインク貯留室44dと同じ高さまで延びており、そこからさらに図4(d)の左方に折れ曲がって延び、インク貯留室44dと接続されている。
インク流路46a〜46dは、それぞれ、インク貯留室44a〜44dの図4(a)〜図4(d)の左端部から図中左方に延びてインク流路47a〜47dに接続されている。インク流路47a〜47dは、それぞれ、鉛直方向に沿って延びているとともに、図3の左右方向に沿って、図3の左からインク流路47a、47b、47c、47dの順に互いに近接して配列されている。
インク流路47a〜47dの下端部は、それぞれ、その下端が開口したインク供給部48a〜48dとなっており、インク供給部48a〜48dは、それぞれインクジェットヘッド3の上面に形成されたインク供給口89(図8参照)に接続されている。そして、インク流路47a〜47d内のインクは、インク供給部48からインクジェットヘッド3に供給される。
そして、プリンタ1においては、インクカートリッジ6a〜6dに貯留されたインクはチューブ5a〜5dから流入管31a〜31dに流れ込み、さらに接続口41a〜41d及びインク流路42a〜42b、43a〜43dを介してインク貯留室44a〜44dに流れ込む。さらに、インク貯留室44a〜44dに一時的に貯留されたインクは、インク流路46a〜46dからインク流路47a〜47dに流れ込み、インク供給部48a〜48dからインクジェットヘッド3に供給される。
なお、インクカートリッジ6a〜6dから、チューブ5a〜5d、流入管31a〜31d、接続口41a〜41d、インク流路42a〜42d、43a〜43d、インク貯留室44a〜44d及びインク流路46a〜46d、47a〜47dを経てインクジェットヘッド3に至るインク流路が、本発明に係る液体供給流路に相当する。
気体室49は、インク流路47a〜47dの図4における左側に、図4の左右方向から見て、インク流路47a〜47dと重なる位置にまたがって配置されている。気体透過膜60は、インク流路47a〜47dと気体室49との境界、並びに、インク流路47a〜47d及び気体室49におけるこの境界と隣接する部分にまたがる領域(液体供給流路と排気流路との一方の接続部分)に、鉛直方向に延びて配置されており、気体透過膜60が、インク流路47a〜47dと気体室49とをそれぞれ仕切る壁となっている。
気体透過膜60は、気体のみを透過させ、インクは通過させない。したがって、インク流路47a〜47d内の気体が、気体透過膜60から気体室49に排出される。このとき、インク流路47a〜47d及び気体透過膜60が鉛直方向に延びているため、インク流路47a〜47dに流れ込む気体の量が多くなるほど、インク流路47a〜47d内のインクの液面が低下し、インク流路47a〜47d内の気体と気体透過膜60との接触面積が大きくなる。したがって、インク流路47a〜47dに大量の気体が流れ込んできた場合にも、気体を気体透過膜60から効率よく気体室49に排出することができる。
また、気体透過膜60の図4における左側(気体室49側)の面には、図4の左右方向から見てインク流路47a〜47dと重なる部分に、それぞれ、不織布55が設けられており、各不織布55の図4における左側(気体透過膜60と反対側)の面には、その上端部及び下端部に、それぞれ電極56及び電極57が配置されている。
前述したように、気体透過膜60は気体のみを透過させ、インクは透過させないが、プリンタ1の長期間の使用により、気体透過膜60がインクによって目詰まりし、最終的には、インク流路47a〜47d内のインクが、気体透過膜60から気体室49に漏れ出してしまう。
気体透過膜60からインクが漏れ出すと、漏れ出したインクは、不織布55に吸収されるとともに不織布55の全域に広がる。そして、不織布55の全域に広がったインクを介して電極56と電極57とが互いに導通する。したがって、電極56と電極57とが導通したことを検知することによって、気体透過膜60においてインク漏れが発生していることを検知することができる。なお、不織布55、電極56、57及び制御装置100の後述するインク漏れ検知部133が、本発明に係る液体漏れ検知手段に相当する。
排気ユニット23は、サブタンク本体22内の気体を外部に排出する排気流路の一部を構成するものであり、接続部61及び排気管62を有している。接続部61は、サブタンク本体22の上面の平面視でインク流路47a〜47d及び気体室49と重なる部分にまたがって、インク流路47a〜47d及び気体室49を覆うように配置されており、接続部61の内部には、排気流路を構成する連通流路63、個別気体室64a〜64d、共通気体室65及び隔壁59、66を有している。
連通流路63は、平面視で気体室49と重なる位置に設けられている。個別気体室64a〜64dは、図4における連通流路63の右側の平面視でインク流路47a〜47dと重なる位置にそれぞれ設けられている。個別気体室64aと個別気体室64bとの間、個別気体室64bと個別気体室64cとの間、及び、個別気体室64cと個別気体室64dとの間には、それぞれ隔壁66が設けられており、隔壁66によって個別気体室64a〜64dの間が仕切られている。
また、連通流路63と個別気体室64a〜64dとの間(排気流路における気体透過膜60と開閉弁69との間の部分)には、連通流路63と個別気体室64a〜64dとの接続部分の下面から上方に延びた隔壁59が設けられており、連通流路63と個別気体室64a〜64dとは、隔壁59よりも上方の部分においてのみ連通している。なお、隔壁59は、個別気体室64a〜64d内のインクが連通流路63から気体室49に流れ込むのを防止する、本発明に係る液体流入防止壁に相当するものである。
さらに、個別気体室64a〜64dとインク流路47a〜47dとの間には、それぞれ、個別気体室64a〜64dの下面からインク流路47a〜47dの上面まで上下方向に延びた、平面視で略円形の貫通穴58a〜58dが形成されている。そして、貫通穴58a〜58dを介して、インク流路47a〜47dと個別気体室64a〜64dとがそれぞれ連通している。
さらに、インク流路47a〜47dの上端部、貫通穴58a〜58d及び個別気体室64a〜64の下端部にまたがった領域(液体供給流路と排気流路との他方の接続部分)には、それぞれ、開閉弁69が設けられている。
開閉弁69は、円柱部69a、遮断部69b及び押圧部69cを有している。円柱部69aは貫通穴58a〜58dよりも若干径が小さい略円柱状の部分であり、インク流路47a〜47dの上端部から貫通穴58a〜58dを通過して個別気体室64a〜64dの下端部まで延びている。遮断部69bは、円柱部69aの上端部に設けられており、円柱部69aから円柱部69aの径方向外側に傘状に延びており、貫通穴58a〜58dよりも径が大きくなっている。
押圧部69cは、円柱部69aの下端部に設けられており、円柱部69aから円柱部69aの径方向外側に延びている。インク流路47a〜47dの上面と押圧部69cの上面との間にはバネ70が配置されており、押圧部69cがバネ70により図4の下方に押圧されることによって、開閉弁69が図4の下方に押圧されている。
共通気体室65は、図4における個別気体室64a〜64dの右側に、図4の左右方向から見て、個別気体室64a〜64dに重なる位置に、個別気体室64a〜64dにまたがって設けられており、個別気体室64a〜64dと連通している。
ここで、気体室49、気体透過膜60、連通流路63、個別気体室64a〜64d、貫通穴58a〜58d及び開閉弁69がこのように配置されることにより、気体透過膜60と開閉弁69とが異なる平面上に配置されることとなる。したがって、両者を一平面上に配置した場合と比較して、サブタンク4の図4の左右方向に関する長さを小さくすることができる。
また、サブタンク4において、インク流路47a〜47dは、気体透過膜60を介して気体室49に接続されているとともに、貫通穴58a〜58dを介して個別気体室64a〜64dに接続されている。すなわち、液体供給流路と排気流路とは、サブタンク4に対して互いに異なる2か所において接続されており、これら2か所の接続部分に、それぞれ、気体透過膜60及び開閉弁69が設けられている。
液体供給流路を構成するサブタンク4は、同じく液体供給流路を構成するチューブ5a〜5d(液体供給流路の他の部分)と比較して大きいため、このように、サブタンク4において液体供給流路と排気流路とを2か所において接続し、これらの接続部分に、それぞれ、気体透過膜60及び開閉弁69を設けることにより、チューブ5a〜5dの途中などに気体透過膜や開閉弁を設ける場合よりも、気体透過膜60及び開閉弁69を大きくすることができる。これにより、後述するように、インク流路47a〜47d内の気体及び増粘したインクを排気流路に効率よく排出することができる。
排気管62は、一端が共通気体室65の図3における下側の側面の略中央部に接続された円管であり、共通気体室65との接続部分から図3の下方に延びているとともに、途中で図3の左方に折れ曲がっており、走査方向に関して、流入管31a〜31dと排気管62とが等間隔に配列されている。そして、図3の左方に延びた排気管62の先端が、チューブ7aに接続されている(図2、図3においては、チューブ7aの図示を省略している)。
ここで、開閉弁69の動作について説明する。図7は、図4の開閉弁69の動作を示す図であり、(a)が遮断状態、(b)が開放状態をそれぞれ示している。なお、インク流路47a〜47dにそれぞれ対応して設けられた開閉弁69の動作は全て同様であるので、図7では、これら4つの開閉弁69のうち、インク流路47aに対応して設けられたもののみを図示している。開閉弁69は、個別気体室64a〜64d(排気流路)内の圧力に応じて、以下に説明する開放状態及び遮断状態のいずれか一方を選択的にとることができるように構成されている。
吸引ポンプ14により排気流路内の気体が吸引されると、排気流路を構成する気体室49、連通流路63、個別気体室64a〜64d及び共通気体室65内の気体が排気管62から吸引され、気体室49、連通流路63、個別気体室64a〜64d及び共通気体室65内の圧力が低下する。これにより、開閉弁69には、個別気体室64a〜64dとインク流路47a〜47dとの圧力差によって図7の上向きの力が作用する。
そして、個別気体室64a〜64内の圧力が所定の圧力以上のときには、個別気体室64a〜64dとインク流路47a〜47dとの圧力差により開閉弁69に作用する力がバネ70により開閉弁69が押圧される力以下となる。この場合には、図7(a)に示すように、開閉弁69はバネ70により図4の下方に押圧されることにより、遮断部69bが個別気体室64a〜64dの下面に押し付けられ、遮断部69bと個別気体室64a〜64dの下面との間に隙間がなくなる。この状態では、インク流路47a〜47dと個別気体室64a〜64dとが連通しておらず、インク流路47a〜47d内のインクが個別気体室64a〜64dに流れ出ない(遮断状態となっている)。この場合には、インク流路47a〜47d内の気体が気体透過膜60から気体室49に排出される。
一方、個別気体室64a〜64d内の圧力が上記所定の圧力よりも低くなったときには、個別気体室64a〜64dとインク流路47a〜47d内の圧力差により開閉弁69に作用する力がバネ70により開閉弁69が押圧されるよりも大きくなる。この場合には、図7(b)に示すように、開閉弁69がバネ70の押圧力に逆らって図4の上方に移動する。これにより、遮断部69bと個別気体室64a〜64dの下面との間に隙間ができ、インク流路47a〜47dと個別気体室64a〜64dとが、それぞれ、貫通穴58a〜58dを介して連通する(開放状態となる)。
これにより、インク流路47a〜47d内の増粘したインクが、吸引ポンプ14の吸引力により、貫通穴58a〜58dから個別気体室64a〜64d(排気流路)に排出され、排気流路から外部に排出される。なお、この場合には、インク流路47a〜47d内の気体は、気体透過膜60から気体室49に排出されるとともに、インクとともに貫通穴58a〜58dから個別気体室64a〜64dにも排出される。
ここで、液体供給流路のうち、サブタンク4は、液体供給流路の他の部分よりも容積が大きく、他の部分よりも大量の気体及び増粘したインクが存在している。また、液体供給流路のサブタンク4よりも上流側の部分を構成する、合成樹脂材料等からなるチューブ5a〜5d内のインクは、チューブ5a〜5dの壁からの水分の蒸発などにより増粘しやすく、チューブ5a〜5dにおいて増粘したインクがサブタンク4に流れ込むため、サブタンク4には、さらに多くの増粘したインクが存在することとなる。
したがって、前述したように、サブタンク4に液体供給流路と排気流路との2か所の接続部分を設け、これら2か所の接続部部に、それぞれ、気体透過膜60及び開閉弁69を設けることにより、液体供給流路内の気体及び増粘したインクを効率よく排出することができる。
さらに、前述したように、気体透過膜60及び開閉弁69を大きくすることができるため、液体供給流路内の気体及び増粘したインクを、さらに効率よく排気流路に排出することができる。
加えて、排気流路においては、個別気体室64a〜64d(開閉弁69)が気体室49(気体透過膜60)よりも排気管62側(吸引ポンプ14側)に配置されているため、吸引ポンプ14により排気流路からインク流路47a〜47d内のインクを吸引したときに、個別気体室64a〜64dに流れ込んだインクは、共通気体室65(吸引ポンプ14側)に流れ込みやすく、連通流路63(気体透過膜60側)には流れ込みにくい。これにより、気体透過膜60の左側の面にはインクが付着しにくい。また、連通流路63と個別気体室64a〜64dとの間に隔壁59が設けられているため、個別気体室64a〜64d内のインクはさらに連通流路63には流れ込みにくくなる。さらに、気体透過膜60が鉛直方向に延びているため、個別気体室64a〜64d内のインクが連通流路63を介して気体室49に流れ込んだとしても、流れ込んだインクは気体室49の底に落下し、気体透過膜60の図4の左側の面(不織布55)に付着しにくい。なお、気体室49に流れ込んだインクが不織布55に付着して吸収されたとしても、不織布55に付着するインクは少量であるため、不織布55に吸収されたインクを介して電極56と電極57とが導通して、気体透過膜60におけるインク漏れが誤検知されることはない。
また、上述したように、インク流路47a〜47d内の増粘したインクはノズル95(図8参照)を通過することなく排出されるため、増粘したインクによってノズル95が目詰まりしてしまうことがない。
次に、インクジェットヘッド3について説明する。図8は図1のインクジェットヘッド3の平面図である。図9は図8の部分拡大図である。図10は図9のX−X線断面図である。図11は図9のXI−XI線断面図である。ただし、図面を分かりやすくするため、図8においては後述する圧力室90及び貫通孔92〜94の図示を省略するとともに、ノズル95を図9〜図11よりも大きく図示している。
図8〜図11に示すように、インクジェットヘッド3は、圧力室90などのインク流路が形成された流路ユニット67と、流路ユニット67の上面に配置された圧電アクチュエータ68とを有している。
流路ユニット67は、上から順にキャビティプレート71、ベースプレート72、マニホールドプレート73及びノズルプレート74の4枚のプレートが互いに積層されることによって構成されている。これら4枚のプレート71〜74のうち、ノズルプレート74を除く3枚のプレート71〜73は、ステンレスなどの金属材料からなり、ノズルプレート74は、ポリイミドなどの合成樹脂材料からなる。あるいは、ノズルプレート74も他の3枚のプレート71〜73と同様、金属材料によって構成されていてもよい。
ノズルプレート74には、複数のノズル95が形成されている。複数のノズル95は、紙送り方向(図8の上下方向)に沿って配列されてノズル列88を構成しており、このようなノズル列88が走査方向(図8の左右方向)に4列に配置されている。これら4つのノズル列88を構成するノズル95からは、図8の左側のノズル列88を構成しているものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
キャビティプレート71には、複数のノズル95に対応して複数の圧力室90が形成されている。圧力室90は走査方向を長手方向とする略楕円の平面形状を有しており、平面視で圧力室90の右端部がノズル95と重なるように配置されている。ベースプレート72には、平面視で圧力室90の長手方向の両端部に重なる位置に、それぞれ貫通孔92、93が形成されている。
マニホールドプレート73には、4つのノズル列88に対応してノズル列88の左側に紙送り方向に延びた4つのマニホールド流路91が形成されている。各マニホールド流路91は、平面視で、対応する圧力室90の略左半分と重なっている。各マニホールド流路91の図8の上端部にはそれぞれインク供給口89が設けられている。インク供給口89は、前述したようにサブタンク4のインク供給部48a〜48dと接続されており、サブタンク4内のインクがインク供給口89からマニホールド流路91に供給される。また、マニホールドプレート73には、平面視で貫通孔93とノズル95とに重なる位置に、貫通孔94が形成されている。
そして、流路ユニット67においては、マニホールド流路91が貫通孔92を介して圧力室90に連通し、圧力室90はさらに貫通孔93、94を介してノズル95に連通する。このように流路ユニット67には、マニホールド流路91の出口から圧力室90を経てノズル95に至る複数の個別インク流路が形成されている。
圧電アクチュエータ68は、振動板81、圧電層82及び複数の個別電極83を有している。振動板81は金属材料などの導電性材料からなり、複数の圧力室90を覆うようにキャビティプレート71の上面に接合されている。また、導電性を有する振動板81は、後述するように圧電層82の個別電極83との間に配置された部分に電界を作用させるための共通電極を兼ねており、図示しないドライバICに接続されて常にグランド電位に保持されている。
圧電層82は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であり、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなり、振動板81の上面に複数の圧力室90にまたがって連続的に配置されている。また、圧電層82は予めその厚み方向に分極されている。
複数の個別電極83は、圧電層82の上面に複数の圧力室90に対応して設けられている。個別電極83は、圧力室90よりも一回り小さい略楕円の平面形状を有しており、平面視で、圧力室90の略中央部に重なる位置に配置されている。また個別電極83の長手方向における一端部(図9の左端部)は、平面視で圧力室90と重ならない位置まで左方に延びており、その先端部が接点83aとなっている。接点83aには、図示しないフレキシブルプリント基板(FPC)等の配線部材を介して図示しないドライバICが接続される。そして、ドライバICにより、複数の個別電極83に選択的に駆動電位が付与される。
ここで、圧電アクチュエータ68の駆動方法について説明する。圧電アクチュエータ68においては、複数の個別電極83の電位は、図示しないドライバICにより予めグランド電位に保持されている。そして、ドライバICにより複数の個別電極83のいずれかに駆動電位が付与されると、駆動電位が付与された個別電極83とグランド電位に保持された共通電極としての振動板81との間に電位差が発生し、圧電層82のこの個別電極83と振動板81とに挟まれた部分に厚み方向の電界が発生する。この電界の向きは圧電層82の分極方向と平行であるため、圧電層82のこの部分は分極方向と直交する水平方向に収縮する。これに伴って、振動板81及び圧電層82の駆動電位が付与された個別電極83に対応する圧力室90に対向する部分が全体として圧力室90に向かって凸となるように変形し、この圧力室90内の容積が減少する。これにより、圧力室90内のインクの圧力が上昇し、圧力室90に連通するノズル95からインクが吐出される。
次に、差圧弁9について説明する。図12は図1の差圧弁9の構成を示す断面図である。
差圧弁9は、図12に示すように、気体室101、102、連通流路103及び弁本体104を有している。気体室101と気体室102とは、図12の左右方向に並んで配置されているとともに、気体室101はその図12における右端部に設けられた連通口107においてチューブ7cに接続されており、気体室102は、その図12における左端部に設けられた連通口109においてチューブ7bに接続されている。連通流路103は、気体室101と気体室102との間で左右方向に延びて、気体室101と気体室102とを連通させる、図12の左右方向から見て略円形の流路であり、その径は、図12の上下方向及び紙面垂直方向に関する気体室101、102の長さよりも小さい。
弁本体104は、円柱部104a、遮断部104b、抜け落ち防止部104cを有している。円柱部104aは、連通流路103よりも若干径の小さい略円柱形状を有しており、連通流路103を通過して、気体室101の図12における左端部から気体室102の図12の右端部まで延びている。遮断部104bは、円柱部104aの図12の右端部に設けられており、円柱部104aから円柱部104aの径方向外側に傘状に延びて、その径が連通流路103の径よりも大きくなっている。抜け落ち防止部104cは、円柱部104aの図12における左端部に設けられており、円柱部104aから円柱部104aの径方向外側に延びて、その径が連通流路103よりも大きくなっている。また、抜け落ち防止部104cには、図12の左右方向に関して連通流路103の縁近傍の部分と重なる部分に複数の貫通穴104dが設けられている。
そして、吸引ポンプ14により排気流路内の気体が吸引されているときには、吸引ポンプ14の吸引力により弁本体104が図12の右方に移動する。これにより、遮断部104bと気体室101の図12左側の壁面との間に隙間ができる(弁が開く)。その結果、気体室101と気体室102とが、貫通穴104d及び連通流路103を介して連通し、これにより、排気流路と吸引ポンプ14とが連通する。このとき、抜け落ち防止部104cの右側の表面が気体室102の右側の壁面に接触するため、弁本体104が連通流路103から抜け落ちてしまうのが防止される。そして、この状態で吸引ポンプ14により排気流路内の気体が吸引されることによって、前述したように、排気流路内及びインク流路47a〜47d内の気体が気体透過膜60から気体室49(排気流路)に排出され、排気流路内の気圧が低下して大気圧よりも低い負圧となる。
ここで、排気流路内の圧力が所定の圧力以上のときには、前述したように、個別気体室64a〜64dとインク流路47a〜47dその圧力差によって開閉弁69に生じる力が、バネ70が開閉弁69を押圧する力以下であり、開閉弁69が遮断状態となっているため、インク流路47a〜47d内の気体が気体透過膜60から気体室49に排出されるが、インク流路47a〜47d内のインクは排出されない。
一方、排気流路内の圧力が所定の圧力よりも低いときには、前述したように、個別気体室64a〜64dと排気流路とインク流路47a〜47dとの圧力差によって開閉弁69に生じる力が、バネ70が開閉弁69を押圧する力よりも大きくなり、開閉弁69が開放状態となるため、インク流路47a〜47d内の気体が気体透過膜60から気体室49に排出されるのに加えて、インク流路47a〜47d内の増粘したインクが、貫通穴58a〜58dを介して個別気体室64a〜64dに排出される。
そして、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引した後には、気体室102の圧力が負圧となっているため、弁本体104はこの負圧により吸引されて図11の左方に移動し、遮断部104bの外縁部が気体室101の図12左側の壁面に押し付けられる。これにより、遮断部104bと気体室101の左側の壁面との間の隙間がなくなり(弁が閉じ)、気体室101と連通流路103及び気体室102との連通が遮断される。このとき、排気流路のうち、差圧弁9と気体透過膜60aとの間の部分は外部との連通が遮断されて密閉される。
したがって、排気流路のうち差圧弁9と気体透過膜60aとの間の部分は、負圧に保持された状態となる。これにより、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引した後も、インク流路47a〜47d内の気体は、この負圧によって吸引されて排気流路に排出される。
ここで、インク流路47a〜47d内のインクが貫通穴58a〜58dから排気流路に排出されていた場合には、吸引ポンプ14による排気流路内の気体の吸引を停止させた直後は、排気流路内の圧力は所定の圧力よりも低くなっているため、開閉弁69は開放状態となったままであり、引き続き、インク流路47a〜47d内のインクが貫通穴58a〜58dから個別気体室64a〜64dに排出され続ける。
しかしながら、この場合には、吸引ポンプ14による排気流路内の気体の吸引が停止されているため、インク流路47a〜47d内のインクが排気流路に排出されるに連れて、排気流路内の圧力が上昇する。そして、個別気体室64a〜64d内の圧力が所定の圧力以上となり、個別気体室64a〜64dとインク流路47a〜47dとの圧力差によって開閉弁69に作用する力が、バネ70により開閉弁が押圧される力以下となった時点で、開閉弁69が遮断状態となる。
なお、この状態でも、排気流路の差圧弁9よりもサブタンク4側の部分は、所定の圧力以上の負圧に保持されており、この負圧により、インク流路47a〜47d内の気体が気体透過膜60から気体室49に排出される。
また、この場合にも、隔壁59が設けられているため、個別気体室64a〜64dに排出されたインクは気体室49には流れ込みにくく、気体室49にインクが流れ込んだとしても、流れ込んだインクは気体室49の底に落下し、気体透過膜60の図4の左側の面(不織布55)には付着にしにくい。また、不織布55にインクが付着して吸収されたとしても、不織布55に付着するインクは少量であるので、不織布55に吸収されたインクを介して電極56と電極57とが導通して、気体透過膜60におけるインク漏れを誤検知してしまうことはない。
このように、本実施形態の差圧弁9は、弁本体104よりもサブタンク4側の排気流路内空間の圧力が、弁本体104よりも吸引ポンプ14側の排気流路内空間の圧力よりも十分に小さい場合(サブタンク4側の排気流路内空間の圧力の方が小さく、2つの空間の差圧が所定量以上の場合)に、これら2つの空間の連通を遮断し、そうでない場合(2つの空間の差圧が所定量よりも小さい場合、または、2つの空間の圧力が等しいか、吸引ポンプ14側の排気流路内空間の圧力の方が小さい場合)には2つの空間の連通を許容するものである。また、本実施形態の差圧弁9は、サブタンク4側から吸引ポンプ14側に向かう気体の流れを許容し、吸引ポンプ14側からサブタンク4側に向かう気体の流れを遮断する一方向弁でもある。
ここで、インク流路47a〜47d内の気体がインクジェットヘッド3に流れ込むと、ノズル95からのインクの吐出特性が変動してしまう虞がある。しかしながら、インク流路47a〜47d内の気体は、上述したように排気流路に排出されるため、ノズル95からのインクの吐出特性が変動してしまうのが防止される。
次に、チャージタンク12について説明する。図13はチャージタンク12の構成を示す断面図であり、(a)が後述するチャージ室122c内の圧力が大気圧である場合、(b)がチャージ室122c内の圧力が負圧となった状態を示している。図13に示すように、チャージタンク12は、気体流路121、ベローズ部122及び圧力センサ123を有している。
気体流路121は、図13の左右方向に延びており、図中左右両端部にそれぞれ、チューブ7a、7bと連通する連通口121a、121bが設けられている。また、気体流路121における図13の略中央部の上面には、気体流路121とベローズ部122の後述するチャージ室122cとを連通させる連通口121cが設けられている。
ベローズ部122は、図13の上下方向に延びており、内部に天井壁122b及び側壁122aに囲まれたチャージ室122cが形成されている。天井壁122bは、チャージ室122cの上面を画定する壁であり、略円形の平面形状を有している。側壁122aは、チャージ室122cの側面を画定する壁であり、天井壁122bの外縁部から、互いに逆方向に交互に折り曲げられつつ下方に延びている。これにより、天井壁122bに鉛直方向に力が加わることで、天井壁122bが鉛直方向に移動するとともに、側壁122aの折り曲げ角度θが変化して、チャージ室122cの容積が変化する。また、チャージ室122cの下端は開口しており、連通口121cに接続されている。これにより、気体流路121とチャージ室122c(排気流路)とが連通している。
ベローズ部122は、チャージ室122c内の圧力が大気圧のときには、図13(a)に示すように、天井壁122bが最も高い位置にあるとともに、側壁122aの折り曲げ角度θが最大となっている。そして、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引することによってチャージ室122c内の圧力が低下すると、天井壁122bには、外部の大気圧とチャージ室122c内の負圧との差によって下向きの力が生じる。これにより、図13(b)に示すように、天井壁122bが下方に移動し、これに伴って、側壁122aの折り曲げ角度θが小さくなる。そして、このようなベローズ部122の変形により、チャージ室122cの容積が低下する。
ここで、側壁122aの折り曲げ角度θが小さくなると、側壁122aには図13(a)の状態に戻ろうとする図12上向きの反発力が生じ、側壁122aの折り曲げ角度θが小さくなるほどこの反発力は大きくなる。したがって、ベローズ部122は、大気圧とチャージ室122c内の圧力との差によって生じる力と上記反発力とがつりあったときにチャージ室122cの容積の変化が止まる。したがって、チャージ室122c内の圧力と、チャージ室122cの容積とは所定の関係にあり、チャージ室122c内の圧力が低いほどチャージ室122cの容積は小さくなる。
逆に、図13(b)に示すように、チャージ室122c内が負圧に保持されているときに、インク流路47a〜47dの気体が対応する気体透過膜60を介して個別気体室64a〜64dに排出されると、個別気体室64a〜64dに連通するチャージ室122c内の圧力が増加する。これにより、大気圧とチャージ室122c内の圧力との差によって生じる力が小さくなり、ベローズ部122においては、天井壁122bが上方に移動し、これに伴って側壁122aの折り曲げ角度θが大きくなる。このようなベローズ部122の変形によって、チャージ室122cの容積が増加する。
このとき、排気流路にチャージ室122cが連通しているため、排気流路とチャージ室122cとを合わせた容積は、チャージタンク12が設けられていない場合の排気流路のみの容積と比較して、チャージ室122cの分だけ大きくなる。これにより、インク流路47a〜47dから排気流路に気体が流れ込んだときの排気流路内の圧力上昇を緩やかにすることができ、排気流路内が負圧に保持される時間が長くなる。
なお、当然のことであるが、インク流路47a〜47dから排気流路に気体が流れ込み、チャージ室122c内の容積が増加する際にも、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引する場合と同様、大気圧とチャージ室122c内の圧力との差によって生じる力と、ベローズ部122の側壁122aによる反発力とがつりあったときに、チャージ室122cの容積の変化が止まる。すなわち、この場合にも、チャージ室122c内の圧力と、チャージ室122cの容積とは所定の関係にある。
圧力センサ123は、可動部124、複数のスリット125及びスリット検出センサ126を有している。可動部124は、ベローズ部122の天井壁122bとともに上下方向に移動する。複数のスリット125は、可動部124における図12右端部に設けられており、それぞれが図中左右方向に延びているとともに上下方向に配列されている。スリット検出センサ126は、各スリット125がスリット検出センサ126を上下方向に通過したことを検出する。複数のスリット125は、天井壁122bとともに上下方向に移動するため、スリット検出センサ126により各スリット125がスリット検出センサ126を通過したことを検出することによって、チャージ室122cの容積を検出することができる。
ここで、前述したように、チャージ室122cの容積、すなわち、天井壁122bの位置と、チャージ室122c内の圧力とは所定の対応関係にある。したがって、圧力センサ123においては、スリット検出センサ126により、天井壁122bとともに上下方向に移動する可動部124に設けられた複数のスリット125がスリット検出センサ126を通過したことを検出することによってチャージ室122c内の圧力を検出することができる。
このように、圧力センサ123により排気流路内の圧力を検出することができるため、圧力センサ123によって検出された圧力に基づいて吸引ポンプ14の動作を制御して排気流路内の圧力を自由に変更することができる。
次に、制御装置100について説明する。図14は図1の制御装置100のブロック図である。図14に示すように、制御装置100は、印刷制御部131、吸引ポンプ制御部132及びインク漏れ検知部133を有している。印刷制御部131は、印刷を行う際のインクジェットヘッド3及びキャリッジ2の動作を制御する。吸引ポンプ制御部132は、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引する際の、吸引ポンプ14の動作を制御する。
より詳細には、排気流路内の気体を吸引するが、インク流路47a〜47d内のインクを排出させないときには、吸引ポンプ制御部132は、排気流路内の圧力が上記所定の圧力以上の負圧となるように吸引ポンプ14の動作を制御する。この場合には、インク流路47a〜47d内の気体が気体透過膜60から気体室49に排出される。
一方、インク流路47a〜47d内のインクを排気流路から排出させるときには、吸引ポンプ制御部132は、排気流路内の圧力が上記所定の圧力よりも低い負圧となるように吸引ポンプ14の動作を制御する。
インク漏れ検知部133は、インク流路47a〜47d内のインクが気体透過膜60から気体室49に漏れ出したときに、前述したように電極56と電極57とが導通していることを検知することにより、気体透過膜60においてインク漏れが発生していることを検知する。
気体透過膜60にインク漏れが生じている場合、気体透過膜60は気体の透過性が悪くなっているため、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引しても、インク流路47a〜47d内のインクは、ほとんど気体透過膜60から気体室49に排出されない。
そこで、インク漏れ検知部133により気体透過膜60のインク漏れが検知されている場合には、吸引ポンプ制御部132は、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引するときに、常に、個別気体室64a〜64d内の圧力が所定の圧力よりも低い負圧となるように、吸引ポンプ14を制御する。これにより、開閉弁69が開き、インク流路47a〜47d内の気体がインクともに、貫通穴58a〜58dから排気流路に排出される。
ここで、吸引ポンプ14により排気流路内の気体が吸引される過程について説明する。図15は、この過程を示すフローチャートである。
吸引ポンプ14により排気流路内の気体が吸引される際には、まず、インク漏れ検知部133により気体透過膜60におけるインク漏れが検知されているか否かが判断され(ステップ101、以下、単にS101などとする)、インク漏れが検知されている場合には(S101:YES)、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引して、個別気体室64a〜64d内の圧力を上記所定の圧力よりも低い負圧にする(S102)。これにより、前述したように開閉弁69が開放状態となり、インク流路47a〜47d内の気体が、インクとともに貫通穴58a〜58dを介して個別気体室64a〜64dに排出される。
一方、インク漏れが検知されていない場合には(S102:NO)、インク流路47a〜47d内の増粘したインクを排出させるか否かが判断され(S103)、インク流路47a〜47d内の増粘したインクを排出させる場合には(S103:YES)、上記S102に進み、これにより、インク流路47a〜47d内の増粘したインクが、貫通穴58a〜58dから個別気体室64a〜64d(排気流路)に排出される。
インク流路47a〜47d内の増粘したインクを排出させない場合には(S103:NO)、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引して、個別気体室64a〜64d内の圧力を上記所定の圧力以上の負圧にする(S104)。これにより、インク流路47a〜47d内の気体が、気体透過膜60から気体室49(排気流路)に排出されるが、開閉弁69は遮断状態となっており、インク流路47a〜47d内のインクが排気流路に排出されることはない。
以上に説明した実施の形態によると、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引して個別気体室64a〜64d内の圧力を所定の圧力よりも低くすると、開閉弁69が開放状態となり、インク流路47a〜47d内の増粘したインクが排気流路から排出される。このとき、増粘したインクはノズル95を通過することなく排出されるので、増粘したインクによってノズル95が目詰まりしてしまうのを防止することができる。
また、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引して、個別気体室64a〜64d内の圧力を所定の圧力以上とすると、開閉弁69が遮断状態となり、インク流路47a〜47d内のインクは排気流路には排出されず、インク流路47a〜47d内の気体が気体透過膜60から気体室49に排出される。
また、液体供給流路を構成するサブタンク4は、同じく液体供給流路を構成するチューブ5a〜5dと比較して大きいため、サブタンク4において液体供給流路と排気流路とを互いに異なる2か所で接続し、これらの接続部分に、それぞれ、気体透過膜60及び開閉弁69を設けることにより、チューブ5a〜5dの途中などに気体透過膜や開閉弁を設ける場合よりも、気体透過膜60及び開閉弁69を大きくすることができる。これにより、液体供給流路内の気体及び増粘したインクを、さらに効率よく排気流路に排出することができる。
さらに、液体供給流路のうち、サブタンク4は、液体供給流路の他の部分よりも容積が大きいため、他の部分よりも大量の気体及び増粘したインクが存在しているとともに、サブタンク4には、チューブ5a〜5dの壁からの水分が蒸発するなどして増粘したインクが流れ込むため、サブタンク4には、さらに多くの増粘したインクが存在することとなる。したがって、前述したように、サブタンク4に気体透過膜60及び開閉弁69を設けることにより、液体供給流路内の気体及び増粘したインクを効率よく排出することができる。
また、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引し、個別気体室64a〜64d内の圧力を所定の圧力よりも低くすることにより、開閉弁69を開放状態とすることができるとともに、個別気体室64a〜64d内の圧力を所定の圧力以上とすることにより、開閉弁69を遮断状態にすることができるため、別途、開閉弁69の開閉を切り替えるための装置などを必要とせず、プリンタ1の構成が簡単になる。
また、気体透過膜60においてインク漏れが発生している場合に、インク流路47a〜47d内の気体を排出する際に、開閉弁69を開放状態にして、インク流路47a〜47d内の気体をインク流路47a〜47d内のインクとともに、貫通穴58a〜58dから個別気体室64a〜64dに排出することにより、気体透過膜60の気体透過性が悪くなり、インク流路47a〜47d内の気体を気体透過膜60から気体室49に十分に排出することができなくなった場合にも、インク流路47a〜47d内の気体を排気流路に排出することができる。
また、気体透過膜60と開閉弁69とが異なる平面上に設けられているため、サブタンク4の図4における左右方向に関する長さを小さくすることができる。
また、排気流路において、開閉弁69が設けられた個別気体室64a〜64dが、気体透過膜60が設けられた気体室49よりも吸引ポンプ14側に配置されているため、インク流路47a〜47d内のインクを排気流路に排出させたときに、インクが個別気体室64a〜64dから気体室49に向かって流れないため、気体透過膜60の図4における左側の面(インク流路47a〜47dと反対側の面)にインクが付着するのを防止することができる。
さらに、気体透過膜60が設けられた気体室49に連通する連通流路63と開閉弁69が設けられた個別気体室64a〜64dとの間に隔壁59が設けられているため、個別気体室64a〜64d内のインクが気体室49に流れ込むのを効果的に防止することができる。
加えて、気体透過膜60が鉛直方向に延びているため、個別気体室64a〜64dから気体室49に多少インクが流れ込んだとしても、流れ込んだインクは気体室49の底に落下し、気体透過膜60にインクが付着しにくい。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
一変形例においては、図16に示すように、インク流路47a〜47dの上面の、開閉弁69の左側の部分に、水平方向に延びた気体透過膜160が設けられている。すなわち、開閉弁69と気体透過膜160とが同一平面上に設けられているとともに、気体透過膜160は、気体透過膜60(図4参照)とは異なり、鉛直方向には延びていない。また、気体透過膜160の上方に、個別気体室64a〜64dの図16における左側に隣接して、気体室163が設けられており、気体室163は、気体透過膜160を介してインク流路47a〜47dと連通するとともに、個別気体室64a〜64dと連通している。そして、気体室163と個別気体室64a〜64dとの間に隔壁59が設けられている(変形例1)。
この場合でも、実施の形態と同様、個別気体室64a〜64d内の圧力が所定の圧力以上の場合には、開閉弁69が遮断状態となっており、インク流路47a〜47d内の気体が気体透過膜160を介して気体室163に排出され、個別気体室64a〜64d内の圧力が所定の圧力よりも低くなったときには、開閉弁69が開放状態となり、インク流路47a〜47d内のインクが、貫通穴58a〜58dから個別気体室64a〜64d(排気流路)に排出される。
また、この場合も、排気流路において、開閉弁69が気体透過膜160よりも吸引ポンプ14側に配置されているため、排気流路にインクが排出されたときに、個別気体室64a〜64dから気体室163にインクが流れ込みにくい。さらに、個別気体室64a〜64dと気体室163との間に隔壁59が設けられているため、個別気体室64a〜64dに排出されたインクが気体室163にさらに流れ込みにくい。
また、本実施の形態では、連通流路63と個別気体室64a〜64dとの間に隔壁59が設けられていたが、隔壁59は設けられていなくてもよい。この場合でも、個別気体室64a〜64dは、排気流路において、気体室49よりも吸引ポンプ14側に設けられているため、吸引ポンプ14によりインク流路47a〜47d内の増粘したインクを吸引したときに、個別気体室64a〜64dに排出されたインクは、共通気体室65に流れ込みやすく、気体室49に流れ込みにくい。したがって、気体透過膜60にインクが付着しにくい。
また、本実施の形態では、排気流路において、開閉弁69が気体透過膜60よりも吸引ポンプ14側に配置されていたが、気体透過膜60が開閉弁69よりも吸引ポンプ14側に設けられていてもよい。この場合には、排気流路にインクが排出されたときに、気体透過膜60にインクが付着することになるが、気体透過膜60はインクが付着したからといって直ちに気体の透過性が悪くなるわけではないので、この場合でも、実施の形態と同様、サブタンク4内の増粘したインクを開閉弁69から排出することができるとともに、サブタンク4内の気体を気体透過膜60から排気流路に排出することができる。
また、本実施の形態では、排気流路がサブタンク4に対して互いに異なる2か所で接続されていたが、これには限られず、排気流路とチューブ5a〜5dとが、それぞれ、互いに異なる2か所において接続されており、これら2か所の接続部分に、それぞれ、気体透過膜及び開閉弁が設けられていてもよい。
また、本実施の形態においては、気体透過膜60の気体室49側の面に不織布55を配置し、不織布55の気体透過膜60と反対側の面に電極56、57を配置し、電極56と電極57とが、気体透過膜60から漏れ出して不織布55に吸収されるとともに不織布55の全域に広がったインクを介して導通していることを検知することによって、気体透過膜60におけるインク漏れを検知したが、他の方法によって気体透過膜60におけるインク漏れを検知してもよい。
あるいは、気体透過膜60におけるインク漏れを検知するための装置が設けられていなくてもよい。この場合には、気体透過膜60が目詰まりして気体の透過性が悪くなってしまうと、開閉弁69と遮断状態として、インク流路47a〜47d内の気体を気体透過膜60から気体室49に排出しても、インク流路47a〜47d内の気体が十分に排出されないが、開閉弁69を開放状態として、インク流路47a〜47d内の増粘したインクを貫通穴58a〜58dから個別気体室64a〜64dに排出する際に、インク流路47a〜47d内の気体も同時に排出されることになるため、インク流路47a〜47d内に気体が残留し続けることはない。
また、本実施の形態では、開閉弁69が、個別気体室64a〜64d内の圧力が所定の圧力以上のときには遮断状態となり、個別気体室64a〜64d内の圧力が所定の圧力よりも低くなったときに開放状態となる、排気流路内の圧力に連動して動作するものであったが、これには限られず、開閉弁69の代わりに、例えば電磁バルブなど、排気流路内の圧力とは独立して開閉を行うことが可能な開閉弁が設けられていてもよい。
この場合には、インク流路47a〜47d内の増粘したインクを排出させるときにのみ、開閉弁を開き(開放状態にし)、それ以外のときには開閉弁を閉じておけば(遮断状態とすれば)よい。
同様に、本実施の形態では、排気流路に吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引しているときには開き、吸引ポンプ14による排気流路内の気体の吸引を停止させたときには閉じる差圧弁9が設けられていたが、差圧弁9の代わりに、例えば電磁バルブなど、吸引ポンプ14の動作とは独立して開閉を行うことが可能な弁が設けられていてもよい。
また、以上では、ノズルからインクを吐出することによって印刷を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、ノズルからインク以外の液体を吐出する液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。