本発明に係る画像形成装置、特にインクジェットプリンタの実施例について説明するが、本発明は以下に記す実施例に限らず、これらをさらに組み合わせたり、この明細書の特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるべき他の技術にも応用することができる。
(第一実施例)
本実施例では、インクをメインタンクからサブタンクへインクを供給するときのみ供給路を接続する方式(本発明においてはピットイン供給方式と称呼するものとする)のインクジェットプリンタを例に説明する。
図1および図2は、本発明の一実施例に係るインクジェットプリンタの概略構造を表す断面図であり、本実施例の画像形成装置は、液体吐出ヘッドが主走査方向に移動するシリアルスキャン方式としての適用例である。なお、図2は図1中のA−A矢視断面図である。
図1において、プリンタ本体は、プリント媒体Sを給送する媒体給送部1と、プリント動作をするプリント部2と、インクを補給するインク補給部3などから構成されている。
設置台5に積載された複数のプリント媒体Sは、プリンタ本体の外装であるカバー4に設けられた挿入口4aに挿入され、排出口4bから排出される。カバー4内に設けられた側板6の内側には、搭載台8、給送ローラ9およびガイド部材11が設けられている。搭載台8は、プリント媒体Sを搭載する手段を構成するものであり、ばね7によって上方の給送ローラ9方向に付勢されている。給送ローラ9は、媒体給送手段を構成するものであり、搭載台8上における複数のプリント媒体Sの最上位置にあるものに当接する。ガイド部材11は、分離手段10によって分離された一枚のプリント媒体Sをプリント部2に向けて誘導する。
フォトセンサ12は、ガイド部材11の下流側を通過するプリント媒体Sを検出するためのものである。給送されたプリント媒体Sは、一対の搬送ローラ13によって一定速度で搬送され、画像をプリントした後のプリント媒体Sは一対の搬出ローラ14により搬出される。
キャリッジ19は、ガイド部材15、16によって図2中の矢印Bの主走査方向(プリント媒体Sの幅方向)に移動自在に案内されている。キャリッジ19は、一対のプーリ17の間に掛け渡されたベルト18を介し、キャリッジモータ70から伝達される駆動力によって、主走査方向に移動する。サブタンク20はキャリッジ19に交換可能に搭載される貯溜液体タンクである。本発明の液体吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッド20aは(以下、プリントヘッドと記述する)、サブタンク20から供給されるインクを画像情報に基づいて吐出する。
本実施例の場合、サブタンク20とプリントヘッド20aとは、一体的に結合したヘッドカートリッジを構成している。これらサブタンク20とプリントヘッド20aとを個別に構成し、相互に着脱可能に結合させるようにしてもよく、またキャリッジ19に対して個別に装着可能としてもよい。
カバー4の内側に配置された電気配線基板24は、カバー4を貫通してその表面から突出する複数の操作ボタン23が設けられている。制御手段25には、カバー4の内側に配置された制御用電気配線基板に、マイクロコンピュータやメモリなどが搭載されている。この制御手段25は、ホストコンピュータと通信をしながら本プリンタを制御する。
本実施例のメインタンク22は、図2に示すように、収容するインクの色毎に、黄色インク用のメインタンク22Y、マゼンタ色インク用のメインタンク22M、シアン色インク用のメインタンク22Cおよび黒色インク用のメインタンク22Bに分かれている。それぞれのメインタンク22Y、22M、22C、22B(以下、これらを一括して22と表記する場合がある)は、対応する配管(不図示)を介してインクの色毎に対応する供給ジョイントに連結されている(詳細は後述)。図2のサブタンク20はプリント媒体Sに印刷をしているときの位置にある。
本実施例におけるヘッドカートリッジの分解斜視図を図3に示す。以降の説明はサブタンク20Yについて進めるが他の3色のサブタンクも構成は同一である。プリントヘッド20aは、インク色毎に独立した複数のヘッド部からなり、それぞれのヘッド部には、対応するサブタンク20のインク供給口30に連通する共通インク室31と、それぞれインク滴を吐出する複数の吐出口32とが設けられている。共通インク室31と吐出口32とを連通するインク通路部分には、吐出口32からインクを吐出するためのエネルギーを発生する図示しない吐出エネルギー発生部が設けられている。ゴム材料で構成された密閉部材43は、インク供給時以外はサブタンクのインク取入口を密閉している。ガイド部材15、16は軸受部33、34によって摺動可能に軸支されている。
サブタンク20は樹脂製の天板35、底板36およびその間に構成されたインク袋37、その内部にステンレス製の板ばね38を有する。また、サブタンク20は、天板35には排気弁39、底板36にはインク取入口40、天板35から吐出口32近傍に接続される可撓性を有する排気チューブ41が備えられている。排気弁39から排気口42までの経路は、まず、排気弁39から天板35内部の流通路(点線)を経由して排気チューブ41に接続され、さらにプリントヘッド20aの流通路を介して排気口42に到達するよう形成されている。排気口42は吐出口32と同一面にあり各色ごとに1つ配置されている。プリントヘッド20a内部で排気口42までの流通路を1本にまとめて排気口42を1つにしても良い。天板35にはサブタンク20内部に向けて電極(詳細は後述)が配置されておりインクを検出する。フレキシブルケーブル60は電極からの信号線や排気弁を制御するための配線をまとめたものである。
図4は板ばね38の斜視図である。側方からみた形状が略楕円形状の板ばね38は、排気弁39、インク供給口30のそれぞれに対応する部分に開口39a、39bが形成されている。
図5、6はサブタンクの正面図である。
図5はサブタンク20内にインクが満タンになっている状態である。板ばね38は天板35と底板36間を広げようとする方向に付勢しており、その力によって吐出口32からインクが漏れないようにかつ印刷の際に必要な負圧を得られる。側面のインク袋37はアルミフィルムと樹脂フィルムをラミネートしたもの、複数の樹脂フィルムをラミネートしたもの、フィルム材料の表面にガス透過を妨げるコーティングを施したもの、薄いゴム材料等のいずれで構成しても良い。吐出口32からインクを吐出してサブタンク20のインクが消費されると板ばね38の力に逆らって天板35が底板36方向に下降し、インク袋37は折りたたまれてサブタンク20が薄くなり、インクを最後まで使い切ると図6のような状態になる。このとき排気チューブ41は柔軟性があるので図6の紙面垂直方向にU字状に変形している。
次に図7〜図11を用いてインクジェットプリンタ内での実際の動作の状態について説明する。
図7は印刷時、図8は待機および電源オフの状態、図9はインク供給状態、図10、11はサブタンク20内の空気を抜きはじめ、および終了後の状態である。以下に各位置における詳細を説明する。
各サブタンク20のインク取入口40に接続可能な供給ジョイントは、密閉部材44、供給管45、バネ46および不図示の駆動系で構成されている。供給ジョイントの一端はメインタンク22Y、22M、22C、22Bに接続され、メインタンク22内のインクをサブタンク20内に補給することができる。
供給管45は先端付近の側面にインク供給口45aを有する形状となっており、ゴムで構成された密閉部材44がバネ46で上方向に付勢されていて、供給時以外はインク供給口45aは密閉されている。供給管45の先端は閉塞されており、その基端側は、メインタンク22に連結されている。上下動可能に設けられたキャップ部材47は、吸引ポンプ48を介して不図示の廃インク吸収体に連結されている。プラテン49はプリントヘッド20aによる画像のプリント位置にプリント媒体をガイドする。
図7は印刷中の状態を示し、一点鎖線はサブタンク20のインクが満タン時のサブタンク20の形状であり、吐出口32からインクを吐出してサブタンク20内のインクが減少していくと天板35が除々に下降し実線のような状態になる。印刷中は排気弁39は閉じたままである。
図8は、プリントヘッド20aがそのホームポジションに移動した状態を示す。キャップ部材47が上昇し、プリントヘッド20aの吐出口32がキャップされる。この場合、密閉部材44は供給管45のインク供給口45aを閉じたたままである。
基本的にはサブタンク20内部のほとんどはインクであり空気は少ないので、周囲温度の変化にともなうサブタンク20内の圧力変動による膨張、収縮は考慮しなくても良い。ただし、内部に空気が存在する場合、その膨張、収縮にともないサブタンク20の容積は変動するがそれはフィルムもしくはゴム材料で構成されたインク袋37が変形することにより吸収し排気弁39は閉じたままである。
ホームポジションにおけるプリントヘッド20aに対しては、画像形成に寄与しないインクを排出させるヘッド吐出回復処理(以下、単に回復処理と略称する)によって、インクの吐出状態を良好に保つことができる。この回復処理としては、プリントヘッド20aにキャップ部材47内を密着させ、吸引ポンプ48によって発生させた負圧により、吐出口32からインクを強制的に吸引排出させる処理や、吐出口32からキャップ部材47内に向けてインクを吐出させる処理などが含まれる。ホームポジションでは吐出口32とともに排気口42もキャップ部材47にキャップされているが排気弁39は閉じたままなので回復処理のときに排気弁39を経由してインクが吸引されることはない。
図9はメインタンク22からサブタンク20へインクを供給している状態を示す。インクの供給は、4色のインクのうちいずれか1色でもサブタンク20内のインク量が所定量を下回った時点で実施される。吐出したドット数を各色個別にカウントしておき、いずれか1色が所定ドット数に到達した時点をインク供給の時期と設定しても良いし、フォトセンサ12を用いサブタンク20の天板35の位置が所定位置まで下がったことを検出し、それをインク供給の時期と設定しても良い。図中の二点鎖線がインク供給前のサブタンク20の形状である。
プリントヘッド20aがインク補給位置に移動すると、キャップ部材47が上昇してプリントヘッド20aの吐出口32が覆われる。密閉部材44がインク供給口45aを閉じたまま、不図示の昇降機構により供給管45、密閉部材44、バネ46を上昇させる。サブタンク20のインク取入口40の密閉部材43と密閉部材44が接するとそれ以降はバネ46が圧縮され密閉部材44が供給管45に対して相対的に下がりはじめ、供給管45は密閉部材43を貫通しサブタンク20内部でインク供給口45aが開放される。これがサブタンク20とメインタンク22との間にインク供給路が形成された状態である。なお、このときサブタンク20がガイド部材16を支点に回転しないように不図示のストッパが設けられている。
本実施例の構成では図9のようにインク供給口45aがサブタンク20内で開放された時点でインクの供給を開始する。その駆動源は通常サブタンク20内で所定の負圧を発生しているステンレス製の板ばね38である。メインタンク22内部の圧力が大気圧であるのに対し、ヘッドの吐出能力や板ばね38の仕様にもよるがサブタンク20内は−49Pa〜−1961Pa(−50〜−200mmAq)程度の圧力になっている。したがってメインタンク22とサブタンク20間にインク供給路が形成されるとその圧力差によってインクがサブタンク20へ供給される。天板35の上部にはストッパ50があり天板35はこのストッパ50の位置で止まる構成となっている。ストッパ50はインク供給時以外は、図9の二点鎖線で示す、天板35とは接しない位置にあるが、インク供給時は不図示の昇降機構によって実線の位置まで下降する。この昇降機構は駆動源を供給管45と同じにしても良い。インクが供給されて天板35がストッパ50に接したときはサブタンク20内の圧力はほぼ大気圧となっており、この状態からストッパ50を上昇させると板ばね38が発生する力により天板35は若干上昇し、釣り合った位置で所定の負圧を発生する。なおこの間、排気弁39は閉じたままである。
図10、11はサブタンク20内に蓄積した空気の抜きはじめ、および終了後の状態を示している。プリンタを長期間使用しないで放置したり、メインタンク22を着脱したりすることにより配管45部分やメインタンク22からサブタンク20間の流路やサブタンク20のインク袋37部分からサブタンク20内に除々に空気が浸入する。また、ピットイン供給を繰り返すことによってこの空気は除々にサブタンク20に蓄積されていく。図10は空気がサブタンク20内に蓄積した状態を示し、サブタンク20上部に斜線51で示した部分が蓄積された空気の領域である。
この図で示すようにプリントヘッド20aは図8のホームポジションより若干左に位置する、すなわち、吐出口32は開放し、排気口42を密閉する位置でキャップ部材47を上昇させる。
このとき吐出口32は開放状態になっているが空気抜きを行う際の短時間だけなので吐出口32内のインクが乾燥して固着してしまうことはない。空気抜きの間も吐出口32を密閉しなければならない何らかの理由がある場合はキャップ部材47の隣に吸引ポンプ48には連通せず小径の穴で大気に連通したダミーキャップを設ければよい。キャップ部材47が排気口42を密閉したら排気弁39は閉じたまま、まず吸引ポンプ48を駆動し排気弁39手前までの流通路内部を負圧にする。流通路内の圧力がサブタンク20内部の圧力より低くなった時点で排気弁39を開放する。開放するタイミングは流通路の容積と吸引ポンプ48の能力から算出される負圧到達時間で決定し、サブタンク20内の負圧よりも大きい負圧に到達する時間だけ吸引ポンプ48を駆動した後でも良いし、流通路内の圧力を検出する手段を備えてその検出値がサブタンク20内の負圧よりも大きく(より負圧に)なった時点でも良い。このような制御により空気抜きの間に、空気がサブタンク内に逆流してしまいサブタンク内の負圧が解消されてしまうことはない。したがってノズルからインクが流出してしまうこともない。
サブタンク20内は板ばね38以外は生インクが存在するだけなのでサブタンク20内部の空気は必ず上部に存在する。また、排気弁39は図のようにサブタンク20の上部に位置する。よって、排気弁39を開放し吸引ポンプ48を駆動するとサブタンク20の上方に蓄積した空気を排気チューブ41、排気口42を介して抜くことができる。サブタンク20内の空気が減少してきて天板35に形成された電極52がインクを検出したら排気弁39を閉じる。閉じるタイミングは吸引ポンプ48の吸引能力や電極52の長さから設定する。吸引能力(速度)が高い場合、電極52を長めにし、検出した瞬間に排気弁39を閉じれば良いし、吸引能力が低い場合は電極52の長さは任意とし、排気弁39を閉じるタイミングもそれに応じて設定すれば良い。いずれにせよインクが排気弁39を通過して排気口42への流通路へ浸入しないようなタイミングに設定すれば良い。そうすればインクを無駄に捨てなくて済む。
また電極52および排気弁39は各色に設けられているので各色の個別制御が可能である。例えば空気が蓄積していない色のサブタンク20は電極52がインクを検出した状態であり、吸引ポンプ48を駆動している間も排気弁39は閉じたままにしておけば良い。
特許文献1の構成は、回復ポンプで通気膜、一方向弁を介して空気を除去するというものであるが、回復ポンプの駆動を停止するタイミングについて詳細に記載されておらず除去する空気量にかかわらず一定の所定時間は回復ポンプを駆動するものとなっている。
また、インクタンク内に存在する空気量はインク各色ごとに異なり、空気を排出しなくても良い状態のものもあれば、大量に空気を排出しなければならないものもあり、また全色とも排出する空気量が少ない場合や多い場合等が考えられ、排出に要する時間はその時によって異なる。すなわち、特許文献1の構成ではいろいろなパターンのうち最長時間に合わせて回復ポンプの駆動時間を設定しなければならず、印刷できない時間が長くなり印刷の高速化の妨げになってしまうという問題もあった。
一方、本実施例の場合、空気が蓄積したサブタンクに対しては空気を吸引排気する動作を実行し、空気が蓄積していないサブタンクには吸引排気動作を実行しないことで、各サブタンク20に対し最適な制御が可能となる。つまり本実施例によれば、すべてのサブタンク20の空気抜きを同時にでき、かつ必要なサブタンク20のみ選択的に空気抜きすることが可能なので短時間で排気処理を終了させることができる。
すべてのサブタンク20の電極52がインクを検出し排気弁39を閉じたら吸引ポンプ48の駆動を停止し空気抜きが終了する。通常は空気抜き動作を実行している間にサブタンク20から排気口42までの流通路の圧力が吐出口32のインクのメニスカスを破壊するような値にはならないが、空気抜き時の流通路内の圧力とメニスカス耐圧の値がもともと近い場合は、あらかじめ排気弁39から排気口42までの間に圧力調整手段を備えておけば良い。例えば、圧力調整手段として圧力センサおよび開放弁(第2の開閉手段)を設け、圧力センサによって流通路の圧力が所定値に到達したことが検出されたら開放弁を開放し、また、圧力(負圧)がある程度小さくなったら開放弁を閉じるよう制御しても良い。すなわち、吐出口32近傍のインクが、吐出口32からのインクの吐出方向と逆方向に流れない範囲の圧力となり、メニスカス破壊を防ぐことが可能なので空気抜きを行なった後に回復処理をする必要がなく廃液量を抑えることができる。
また、圧力調整手段としてゴム等の弾性材料で構成された開放弁を設けておき、その弾性力により所定の負圧以上の状態では開放弁は閉じており、負圧が高まると弾性力に打ち勝って開放弁開放される構成としても良い。
図11に空気抜きが終了した状態、すなわち、図10に示した、サブタンク20上部に斜線51で示した部分が蓄積された空気の排出が終了した状態を示す。この状態から次に印刷データがきている場合は印刷をスタートさせれば良いし、印刷しない場合はサブタンク20およびプリントヘッド20aを図8のホームポジションへと移動すればよい。また、空気抜きの後に必ずインクを満タンに供給するシーケンスとしても良い。
図12は排気弁39の分解斜視図であり2ヶ所に曲げ部分を有する形状記憶材料で構成された板ばね部材39aと、図中ほぼ上下対称形状のゴム材料で構成された弁部材39bから構成されている。板ばね部材39aはチタン−ニッケル系の合金であり打ち抜きで、中空円形で、円内の対向する部位に曲げ部39a1を有する形状としたものである。弁部材39bは円盤形状の基部39b1の上下面に中空円筒形状の封止部39b2がそれぞれ形成されている。排気弁39は、弁部材39bの基部39b1の下面を板ばね部材39aの曲げ部39a1の端部で支持した状態で天板35の開口部35aに配置されている(図13、14等参照)。
本実施例における排気弁39の開閉制御は、概略次の通りである。板ばね部材39aに通電し、通電で生じる抵抗熱によって板ばね部材39aの弾性係数が変動し弾性力が変化することを利用して曲げ部39a1を弾性変形させる。この曲げ部39a1の弾性変形により曲げ部39a1上の弁部材39bが上下することで弁の開閉が行われる。なお本図および関連する図面において板ばね部材39aの電気的な配線部分は省略している。
図13は排気弁39を開いている状態で図10の拡大図、図14は排気弁39を閉じた状態を示す図である。排気弁39は通常、図14のように弁部材39bの円盤状の基部39b1が板ばね部材39aの曲げ部39a1の端部と当接しており、弁部材39bの方が板ばね部材39aよりも弾性力が大きいので曲げ部39a1を若干下方に撓ませながら、弁部材39bの封止部39b2の先端部が天板35の開口部35aと密着し排気弁39を閉じた状態を維持している。
図10の説明でも述べたように排気弁42手前までの流通路内が所定の負圧になった時点で板ばね部材39aに通電する。通電によって生じる抵抗熱により板ばね部材39aの縦弾性係数(ヤング率E)は2〜3倍大きくなる。曲げ部39a1の撓み量は縦弾性係数に反比例するので1/2〜1/3に小さくなる、つまり無負荷状態に近づくように上方へ変位する。これにより弁部材39bの基部39b1が押し上げられることで図13のように変形し、基部39b1の下面側に形成された封止部39b2の先端部が天板35の開口部35aから離れて隙間35bが形成される。隙間35bが形成されることでサブタンク20内部から吸引ポンプ48までが連通状態となり、サブタンク20内に蓄積した空気はこの隙間35bを通過し排気チューブ41、排気口42、吸引ポンプ48を経て外部へ排出される。空気が排出されてインク液面が上昇し電極52がインクを検出すると通電を切ることにより排気弁39を閉じ空気抜きは終了する。排気弁39を閉じるタイミングは上述の通りである。
このように本実施例の排気弁39は、形状記憶材料である板ばね部材39aと、ゴム材料である弁部材39bだけで構成されており、電気的に制御するだけで開閉制御が可能なので、ソレノイドを用いた電磁弁よりも小さく、薄く構成できるとともに少ない部品点数で済む。
形状記憶材料としては、通常の温度では柔軟性を持ち、制御により剛性を獲得しうる材料ならばどのようなものでも用いられる。Ti−Ni系合金の他に、Cu−Zn−Al系、Cu−Au−Ni系等のCu系合金等、高分子を含む材料などがある。また、その制御は通電以外では加熱手段によって形状記憶材料を加熱することも考えられる。
図15は板ばね部材39aの曲げ部39a1の撓み状態を示したものである。一番上の点線53は曲げ部39a1が弁部材39bと接していない無負荷状態の形状を示し、一番下の実線の位置にあるときは曲げ部39a1が弁部材39bに押えられて排気弁39は閉じた状態にあり、真中の点線54は板ばね部材39aに通電し弾性係数が大きくなった状態であり曲げ部39a1が弁部材39aを変形させているときの位置を示す。
前述の通り、サブタンク20内の電極52の検出結果により排気弁39(板ばね部材39a)の通電制御を行うので全色のサブタンク20内に蓄積された空気をいっせいに処理しつつ個別に最適な制御が可能になり、廃インクの発生を抑え、処理時間も短くて済む。また吐出口32の回復処理を行う吸引ポンプ48で排気処理を行うので、何らかの理由で排気弁39から空気とともにインクを一緒に吸引してしまったとしても廃インク吸収体へ流れていくのでプリンタ外部へのインクの漏れを防止できる。
また、プリンタは炎天下の車中等の高温下に放置されることも考えられる。このときの温度が板ばね部材39aの弾性係数が変化する温度と同等の場合、プリンタの電源を入れていなくても板ばね部材39aに通電したのと同じ状態となり、弁部材39bが押し上げられてサブタンク20が開放状態になってしまう。しかし、排気口42は図8のように吐出口32とともにキャップ部材47でキャップされているため、排気弁39からインクが漏れてもキャップ部材47を介して廃インク吸収体へ流れていくのでプリンタ外部へのインクの漏れを防止できる。
また、こういった環境下における板ばね部材39aの動作をキャンセルする部材を使用しても良い。
図16、17はその例を示す分解斜視図および正面図である。図12で説明した板ばね部材39aおよび弁部材39bにさらに板ばね部材(以降キャンセルばね部材)55を板ばね部材39aに対向するように配置して追加したものである。このキャンセルばね部材55も板ばね部材39aと同様、形状記憶材料で形成されておりその曲げ部55a1が弁部材39bの基部39b1を下方に付勢する。キャンセルばね部材55は板ばね部材39aと比較してその板厚および曲げ部の幅を小さくしているので発生できる力は小さい。また、キャンセルばね部材55は、板ばね部材39aと異なり電気的には接続されておらず通電制御はできないように構成されている。
通常、空気抜き以外のときは弁部材39bの剛性およびキャンセルばね部材55の弾性力の合力が板ばね部材39aの弾性力より大きいので弁部材39bの先端部が天板35の開口部と密着し排気弁39を閉じた状態に維持している。
サブタンク20内の空気を抜くために排気弁39を開くときは先に述べたとおり、板ばね部材39aに通電して加熱、もしくは加熱手段により加熱することにより弾性係数が大きくなり、弁部材39bの剛性およびキャンセルばね部材55の力に打ち勝って弁部材39bと天板35間に隙間を作る。このときキャンセルばね部材55は通電されておらず、また板ばね部材39aとの間には熱伝導率の低いゴム材からなる弁部材39bが介在しているので板ばね部材39aの温度が上昇してもキャンセルばね部材55に板ばね部材39aからの熱は伝導しにくく、よってキャンセルばね部材55の温度はほとんど変化しない。このためキャンセルばね部材55の弾性係数は変化することはなく、いわゆる「弱いばね」のままである。
一方、プリンタが高温下で放置されて、板ばね部材39aの弾性係数が変化する温度に到達することがある。このときは板ばね部材39aだけでなくキャンセルばね部材55の弾性係数も同様に変化するので下方へ付勢する力、すなわち板ばね部材39aに対向する力が大きくなり、弁部材39bの剛性との合力が板ばね部材39aの力よりも大きくなるので弁部材39bの先端部は天板35と密着し密閉状態を維持する。
すなわち、板ばね部材39aの弾性力をFa(通電時、昇温時Faa)、弁部材39bの弾性力をFb、キャンセルばね部材55の弾性力をFc(昇温時Fcc)とすると、
通常の環境で空気抜きを行なわない場合は
Fa < Fb + Fc
空気抜きを行うために板ばね部材39aに通電したときは
Faa > Fb + Fc
環境温度が弾性変形する温度に到達したときは
Faa < Fb + Fcc
が成立するように各部材の形状、材質を設定すればよい。
次に空気抜きを行うタイミングについて説明する。
通常の回復処理と同様な考え方で、前回空気抜きを行なってからの経過時間によって決定する。この経過時間はインクが通過する流路、サブタンク20、供給ジョイント部を構成する材料のガス透過性を考慮して設計段階で決められる。また、ユーザが任意のタイミングで空気抜きを行なえるようにスイッチ、例えば「空気抜きスイッチ」を設けても良い。
メインタンク22からサブタンク20間のインク流路はメインタンク22を着脱するときにわずかながら空気が浸入することがあり、メインタンク22の着脱後、メインタンク22からサブタンク20へインクが供給されるとその空気もサブタンク20内へ浸入してしまう。したがってメインタンク22を着脱しサブタンク20へインクが供給された後に空気抜きを行なってもよい。着脱後1回目の供給後、もしくは、ある一定回数の供給後に空気抜きを行うようにしてもよい。
もちろんこれらのタイミング下においても全色のサブタンク20の電極52がインクを検知していたら、空気抜き動作は不要であるため、空気抜きを行なわない。
また、これらのタイミング下においてプリンタが天地逆に置かれたり、大きく傾けられているときに排気弁39を開放するとサブタンク20内のインクが流出してしまい廃インクが増加してしまう。こういったことを防ぐために最初にプリンタ内に角度、姿勢を検出するセンサを備え、その検出結果によっては空気抜きを行なわないでプリンタ本体からアラームでユーザに警告するかプリンタが接続されているコンピュータの画面上に警告を表示する。また、空気抜きの最中もプリンタの姿勢を検出しておき、姿勢が急に変化して姿勢検知センサの出力が、ある所定範囲を越えた場合にはその時点で排気弁39を閉じて、吸引ポンプ48の駆動を停止する。いずれの場合もプリンタ上もしくは画面上に出た警告をユーザが操作することにより解除されたら再度、センサによりプリンタの角度、姿勢を検出するステップに戻る。
以上の流れを図18〜20に示す。
図18は電源をオンにしてから印刷開始までのフローチャートである。
電源ONすると(ステップS1)、まず、不図示の制御手段が、前回の空気抜きから所定時間経過したかどうかを判断する(ステップS2)。
所定時間経過していないのであれば、印刷ジョブの有無を判断し(ステップS10)、印刷を開始する(ステップS11)。印刷ジョブが無ければ、サブタンク20をホームポジションへ移動し、キャップ部材47でキャッピングする(ステップS14)。所定時間経過していたなら、プリンタの角度・姿勢が所定範囲内であるかどうかを判断する(ステップS3)。
プリンタの角度・姿勢が所定範囲内にないのであれば、アラームで警告、もしくは、パーソナルコンピュータのモニタ上に警告を表示する等、ユーザの注意を喚起する動作を実施する(ステップS12)。ユーザは発せられた警告を解除し(ステップS13)、ステップS3に戻る。このように警告を発することで開口部35aからインクが流出するような姿勢では排気弁39を開放しないようにしたため廃液量を抑えることができる。
プリンタの角度・姿勢が所定範囲内であれば、続いて電極52がインクを検出したかどうかを判断する(ステップS4)。ここで、いずれの色についてもインクが検出されたならば、サブタンク20の空気抜き動作は不要と判断し、印刷ジョブの有無を判断し(ステップS10)、印刷を開始する(ステップS11)。いずれか色についてインクが検出していないのであれば、空気がサブタンク20内にあると判断し、サブタンク20を空気抜きポジションへ移動させ、排気口42をキャップ部材47でキャッピングする(ステップS5)。キャッピング後、まず、吸引ポンプ48を駆動(ステップS6)する。次いで、インクが検出されなかった色のサブタンク20の排気弁39を開く(ステップS7)。
サブタンク20内の空気の除去後、インクを検出した色のサブタンク20の排気39を閉じる(ステップS8)。
全色の排気弁39が閉じたら吸引ポンプ48の駆動を停止する(ステップS9)。
このように、吸引ポンプ48を駆動後、排気弁39が開き、空気の除去動作を行い、これが終了後、排気弁39を閉じてから吸引ポンプ48を停止するため、インクを捨てることなく空気を除去できるとともにサブタンク20内への空気の逆流を防止することができる。よって、吐出口からインクが流出することを防ぐこともできる。
印刷ジョブの有無を判断し(ステップS10)、印刷を開始する(ステップS11)。
図19はユーザが空気抜きのスイッチ(空気抜きスイッチを設けた構成の場合)を操作してから印刷開始までのフローチャートである。
ユーザが「空気抜きスイッチ」をONする(ステップS21)と、プリンタの角度・姿勢が所定範囲内であるかどうかを判断する(ステップS22)。なお、プリンタの角度・姿勢を判断するステップ以降の動作(ステップS22〜S33)は、図18に示したフローチャートの(ステップS2〜S14)と同じであるため、詳細の説明は省略する。
図20はメインタンク22を着脱してから印刷開始までのフローチャートである。
いずれかの色のメインタンクが着脱され(ステップS41)、メインタンクからサブタンクへと所定回数のインク供給がなされる(ステップS42)。所定回数のインク供給がなされると、プリンタの角度・姿勢が所定範囲内であるかどうかを判断する(ステップS43)。なお、プリンタの角度・姿勢を判断するステップ以降の動作(ステップS43〜S54)は、図18に示したフローチャートの(ステップS2〜S14)と同じであるため、詳細の説明は省略する。
(第二実施例)
上記実施例においてはセンサによりプリンタの角度、姿勢を検出し空気抜きを行うか判断していたが、電極だけで構成することも可能である。
図21はサブタンクの斜視図である。第一実施例と同じものは符号を同一とし、内部の板ばね38(図3参照)は省略してある。上部電極は天板35に52a、52b、52c、下部電極は底板36に61a、61b、61cのそれぞれ3ヶ所備えられている。上部電極52a、52b、52cは排気弁39を中心に約120°、下部電極61a、61b、61cはインク供給口30を中心に約120°の間隔で均等に配置されサブタンク20内のインクを検出する。
サブタンク20内に空気が入っていない場合もしくは入っていても微量でありすべての電極がインクと接している場合、プリンタの姿勢によらず上部電極52a、52b、52cと下部電極61a、61b、61c間および上部電極間に電圧を印加すると導通する。したがって排気弁39は開放されず空気抜きは行なわない。
次に、図22は電源をオンにしてから印刷開始までのフローチャートを図22に示す。
電源ONすると(ステップS61)、まず、不図示の制御手段が、前回の空気抜きから所定時間経過したかどうかを判断する(ステップS62)。
所定時間経過していないのであれば、印刷ジョブの有無を判断し(ステップS70)、印刷を開始する(ステップS711)。印刷ジョブが無ければ、サブタンク20をホームポジションへ移動し、キャップ部材47でキャッピングする(ステップS76)。所定時間経過していたなら、いずれかの色の上部電極52a、52b、52cの全てがインクを未検出かどうかを判断する(ステップS63)。
上部電極52a、52b、52cがすべてインクと接していない場合は、続いていずれかの色の上部電極52a、52b、52cの全てがインクを検出しているかどうかを判断し(ステップS72)、インクを検出してないのであれば、アラームで警告、もしくは、パーソナルコンピュータのモニタ上に警告を表示する等、ユーザの注意を喚起する動作を実施する(ステップS74)。ユーザは発せられた警告を解除し(ステップS75)、ステップS63に戻る。ステップS72においていずれかの色の上部電極52a、52b、52cの全てがインクを検出していると判断した場合には、さらに下部電極61a、61b、61cの全てがインクを検出しているかどうかを判断する(ステップS73)。下部電極61a、61b、61cの全てがインクを検出していないと判断した場合は、プリンタが逆さに置かれていると判断し、警告を発し(ステップS74)、ユーザが警告解除後(ステップS75)、ステップS63に戻る。下部電極61a、61b、61cの全てがインクを検出したなら、サブタンク20の空気抜き動作は不要と判断し、印刷ジョブの有無を判断し(ステップS70)、印刷を開始する(ステップS71)。
ステップS63において、いずれかの色の上部電極52a、52b、52cの全てがインクを未検出であると判断した場合、サブタンク20を空気抜きポジションへ移動させ、排気口42をキャップ部材47でキャッピングする(ステップS64)。キャッピング後、吸引ポンプ48を駆動し(ステップS65)、その後、インクが検出されなかった色のサブタンク20の排気弁39を開く(ステップS66)。
排気弁39が開放されて空気が除去されることで上部電極52a、52b、52cのうち1つがインクを検出した後、所定時間経過しても2つ目の電極でインクが検出されるかどうかを判断する(ステップS67)。2つ目の電極でインクが検出されない場合は、プリンタが大きく傾いていると制御手段が判断し、排気弁39を閉じ、警告を発し(ステップS74)、ユーザが警告解除後(ステップS75)、ステップS63に戻る。一方、2つ目の電極でインクが検出された場合は、排気後、すべての色の排気弁39を閉じる(ステップS68)。なお、この所定時間は電極の配置、ポンプの能力等によりあらかじめ設定されている。略水平にプリンタが置かれている場合にはサブタンク20の3つの各上部電極52a、52b、52cがほぼ同時にインクに接するので、この所定時間はそれほど長く設定する必要はない。
全ての上部電極52a、52b、52cがインクを検出した色のサブタンク20の排気弁39を閉じていき(ステップS68)、全色の排気弁39が閉じたら吸引ポンプ48の駆動を停止し(ステップS69)、印刷ジョブの有無を判断し(ステップS70)、印刷を開始する(ステップS71)。
以上、上部電極52a、52b、52cがすべてインクと接していないことを検知した場合のみ空気抜きを行ない、1つの電極がインクを検出し、所定時間経過後2つ目以降の電極がインクを検出しなかった場合、すべてのサブタンク20の排気弁39を閉じることにより空気抜きの間に複数のサブタンク20すべてからインクが流出しないようにしたため各サブタンク20からの廃液量を抑えることができる。
またサブタンクの下部にも下部電極61a、61b、61cを設けたことによりプリンタが天地逆のような場合にも対応できるため、いろいろな姿勢で置くことができるモバイルプリンタのサブタンクの空気抜きにも採用できる。
図23はユーザが空気抜きのスイッチを操作してから印刷開始までのフローチャートである。
ユーザが「空気抜きスイッチ」をONする(ステップS81)と、いずれかの色の上部電極52a、52b、52cの全てがインクを未検出かどうかを判断する(ステップS82)。なお、上部電極52a、52b、52cの全てがインクを未検出かどうかを判断するステップ以降の動作(ステップS82〜S95)は、図22に示したフローチャートの(ステップS63〜S76)と同じであるため、詳細の説明は省略する。
図24はメインタンク22を着脱してから印刷開始までのフローチャートである。
いずれかの色のメインタンクが着脱され(ステップS101)、メインタンクからサブタンクへと所定回数のインク供給がなされる(ステップS102)。所定回数のインク供給がなされると、上部電極52a、52b、52cの全てがインクを未検出かどうかを判断するステップ以降の動作(ステップS103〜S116)は、図22に示したフローチャートの(ステップS63〜S76)と同じであるため、詳細の説明は省略する。
なお、上部電極の配置はなるべくサブタンク20内に空気を残さないために相互に近接させるのが望ましい。電極の本数は天板、底板とも3本に限らず、必要に応じて配置すればよい。
(第三実施例)
上記実施例においては板ばね部材39aおよびキャンセルばね部材55は板状の形状記憶材料を打ち抜いたもので構成したがコイルバネで構成しても良い。
図25、26はその断面図を示すもので電気的な配線は省略してある。
本実施例の排気弁39は、ゴム材料で構成された弁部材56と、ステンレス線等の一般的な材料で構成されたコイルばね57を有する。コイルばね57は第一実施例と同じく形状記憶材料で構成された開放ばね58およびキャンセルばね59を有する。
図25は排気弁を閉じた状態を示すものでコイルバネ57とキャンセルばね59の合力が開放ばね58の力よりも大きいので弁部材56は下方へ付勢され天板35の開口部35aを密閉している。
図26は排気弁39を開放した状態を示すもので、このとき開放ばね58に通電し弾性係数が変化することによりその弾性力がコイルバネ57とキャンセルばね59の合力を上回り弁部材56を上方に移動させ、天板35の開口部35aを開放する。
キャンセルばね59は第一実施例と同様、電気的には接続されておらず通電制御はできないように構成されている。開放ばね58に通電しているときもキャンセルばね59は「弱いばね」のままである。第一実施例と同様、プリンタが炎天下の車中等の高温下に放置され開放ばね58およびキャンセルばね59の弾性係数が変化してしまう場合、プリンタの電源を入れていなくても2つのばねの弾性係数は大きくなってしまう。このとき開放ばね58の弾性力よりもコイルバネ57とキャンセルばね59の合力が大きくなるように構成しているので排気弁を閉じた状態に維持する。
(第四実施例)
上記実施例においてプリンタはピットイン供給方式であったがサブタンクとメインタンクを常時チューブで接続したチューブ供給方式についても本発明は適用可能である。
図27に示すように、キャリッジ1001にインクジェット記録ヘッド1002およびサブタンク1010を配置し、メインタンク1003からチューブ1004を介してサブタンク1010インクを供給する方式がある。キャリッジ1001はガイドシャフト1005の軸方向に摺動可能に搭載されている。記録紙1007は、搬送ローラ1006により搬送され、インクジェット記録ヘッド1002から吐出されたインクにより画像が形成される。電源をオフにしたときや待機状態においてインクジェット記録ヘッド1002の吐出口を密閉し乾燥を防ぐキャップ部材1008はホームポジションに配置されている。
チューブ1004とサブタンク1010を接続する部分には不図示の弁があり、メインタンク1003からサブタンク1010へインクを供給するとき以外は閉じている。サブタンク1010、キャップ部材1008および排気弁、吸引ポンプの構成、配置は上記実施例と同様である。
チューブ供給方式ではチューブ1004を可撓性のある材料で構成しなければならず、この部分から浸入する空気量が非常に多い。サブタンク1010へのインク供給を繰り返すことによりその空気はサブタンクへ蓄積される。
排気弁の構造、配置、制御方法および動作は第一実施例と同じである。またチューブ1004からの空気の浸入量はピットイン供給方式より多い可能性があるので空気抜きを行う回数はピットイン供給方式より多めに設定しても良い。
また第二実施例のようにサブタンクに複数の電極を設けて姿勢を検出する構成でも良い。チューブ方式の場合はほとんどが卓上に据え置きで使われることが多く、天地逆に置かれることはないため、電極は上部にのみ設ければ良い。
ピットイン供給方式、チューブ供給方式以外では、メインタンクを持たないオンキャリッジ供給方式(インクがなくなるとサブタンクを交換する方式)にも本発明の方式は採用可能である。
また、上記各実施例においては、インクジェット記録装置本体の吸引ポンプを利用してサブタンク内の空気抜きを行ったが、別途空気抜き専用ポンプを設ける構成であっても構わない。空気抜き専用ポンプを設けると、記録装置本体が印字中の場合でもサブタンク内から空気を抜くことが可能となりタンク内のインクの液体収容効率をより高めることが可能である。