以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係るプリンタの概略構成図である。図1に示すように、プリンタ1は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3、サブタンク4、インクカートリッジ6a〜6d、チューブ5a〜5d、チューブ7a〜7c、差圧弁9、チャージタンク12、インク吸引キャップ13、吸引ポンプ14、切り替えユニット15などを備えている。
キャリッジ2は、駆動装置18によって駆動されて、図1の左右方向(走査方向)に平行に延びた2本のガイド軸17に沿って走査方向に往復移動する。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2上に搭載されており、キャリッジ2とともに走査方向に往復しつつ、その下面に設けられたノズル95(図5参照)から、図示しない用紙搬送機構により図1の下方(紙送り方向)に搬送される記録用紙Pにインク(液体)を吐出する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
サブタンク4は、キャリッジ2上に搭載されており、サブタンク4にはインクジェットヘッド3に供給するためのインクが一時的に貯留される。インクカートリッジ6a〜6dは、それぞれ、チューブ5a〜5dに接続されている。インクカートリッジ6a〜6dには、それぞれ、インクジェットヘッド3に供給するための、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯留されている。
チューブ5a〜5dは一端がサブタンク4に接続されているとともに、他端がそれぞれインクカートリッジ6a〜6dに接続されている。そして、インクカートリッジ6a〜6dに貯留された上記4色のインクが、それぞれチューブ5a〜5bを介してサブタンク4に供給される。これにより、インクジェットヘッド3にはサブタンク4からこれら4色のインクが供給され、ノズル95(図5参照)からは、これら4色のインクが吐出される。
チューブ7a〜7cは、それぞれ、サブタンク4とチャージタンク12、チャージタンク12と差圧弁9、及び、差圧弁9と切り替えユニット15とを接続している。これにより、サブタンク4と切り替えユニット15とは、チューブ7a〜7c、チャージタンク12及び差圧弁9を介して接続される。なお、サブタンク4の後述する気体室49から排気ユニット23(図2参照)、チューブ7a、チャージタンク12、チューブ7b、差圧弁9及びチューブ7cを経て切り替えユニット15に至る気体流路が、本発明に係る排気流路に相当する。
差圧弁9は、後述するように、チューブ7aとチューブ7bとの連通及びその遮断を切り替えることにより、排気流路と吸引ポンプ14との連通及びその遮断を切り替える。チャージタンク12は、後述するように、排気流路におけるサブタンク4と差圧弁9との間の部分を負圧に保持したときに、負圧に保持された状態が持続する時間を長くするためのものである。
インク吸引キャップ13は、キャリッジ2が移動可能な範囲で図1の最も右側にきたときにインクジェットヘッド3の下面と対向するように配置されており、インクジェットヘッド3がインク吸引キャップ13と対向する位置にきたときに、図1の紙面手前方向に移動して、インクジェットヘッド3の下面に形成されたノズル95を覆う。また、インク吸引キャップ13は切り替えユニット15に接続されている。
吸引ポンプ14は、切り替えユニット15に接続されている。切り替えユニット15は、吸引ポンプ14をチューブ7c及びインク吸引キャップ13のいずれか一方に選択的に接続させる。そして、切り替えユニット15により吸引ポンプ14とチューブ7cとを接続させた状態で吸引ポンプ14を動作させることにより、チューブ7cから排気流路内の気体を吸引することが可能となっているとともに、切り替えユニット15により吸引ポンプ14とインク吸引キャップ13とを接続させた状態で吸引ポンプ14を動作させることにより、ノズル95(図5参照)からインクジェットヘッド3内の増粘したインクを吸引することが可能となっている。
次に、サブタンク4について詳細に説明する。図2は図1のサブタンク4の概略を示す斜視図である。図3は図2の平面図である。図4(a)は図3のA−A線断面図である。図4(b)は図3のB−B線断面図である。図4(c)は図3のC−C線断面図である。図4(d)は図3のD−D線断面図である。なお、図面を分かりやすくするため、図3においては、後述する接続ユニット21の流入管31a〜31d及び後述する排気ユニット23を二点鎖線で示すとともに、後述する接続ユニット21の接続部32及びサブタンク本体22の一部の図示を省略している。図2〜図4に示すように、サブタンク4は、接続ユニット21、サブタンク本体22及び排気ユニット23を有している。
接続ユニット21は、チューブ5a〜5dをサブタンク4に接続するものであり、流入管31a〜31d及び接続部32を有している。流入管31a〜31dは互いに平行に紙送り方向に延びた円管であり、走査方向に沿って等間隔に配列されている。流入管31a〜31dは、図2における手前側の端部が、それぞれチューブ5a〜5dに接続されている(図2、図3ではチューブ5a〜5dの図示を省略している)とともに、図2における奥側の端部が接続部32に接続されている。接続部32は、サブタンク本体22の走査方向に関する一方の端部の上面に接合されており、流入管31a〜31dとサブタンク本体22の後述する接続口41a〜41dとを連通させる。
サブタンク本体22は、接続口41a〜41d、インク流路42a〜42d、43a〜43d、46a〜46d、47a〜47d、インク貯留室44a〜44d、ダンパフィルム45a〜45d、気体室49、気体透過膜60及びフィルタ70a〜70dを有している。接続口41a〜41dは、略円形の平面形状を有しており、サブタンク本体22の図3における右下端部において、図3の上下方向に配列されている。そして、サブタンク本体22には、接続口41a〜41dからインクが供給される。
インク流路42aは、接続口41aから図3の上方に延びており、途中で図3の右上方向に折れ曲がってインク貯留室44a〜44dの図3における下方に隣接する位置まで延びている。
インク流路42bは、接続口41bから図3の左方に延びているともに途中で図中上方に折れ曲がって延びており、さらに途中で図3の右上方向に折れ曲がってインク貯留室44a〜44dの図3における下方に隣接する位置まで延びている。
インク流路42cは、接続口41cから図3の左方に延びているともに途中で図中上方に折れ曲がって延びており、さらに途中で図3の左上方向に折れ曲がってインク貯留室44a〜44dの図3における下方に隣接する位置まで延びている。
インク流路42dは、接続口41dから図3の左方に延びているともに途中で図中上方に折れ曲がって延びており、さらに途中で図3の左上方向に折れ曲がってインク貯留室44a〜44dの図3における下方に隣接する位置まで延びている。
そして、インク流路42a〜42dは、上述したように配置されることにより、図3の上下方向に延びた部分が、図3の左右方向に沿って、右側からインク流路42a、42b、42c、42dの順に配列されている。
インク貯留室44a〜44dは、インク流路42a〜42dの図3における上端部の上方に隣接する位置に、平面視で互いに重なるように配置されており、図4に示すように、鉛直方向に関して上から順に、インク貯留室44b、44a、44d、44cの順に配置されている。また、インク貯留室44a〜44dは、平面視で図3の左右方向を長手方向とする略長方形状を有している。
インク貯留室44bの上面及びインク貯留室44aの下面には、それぞれ、ダンパフィルム45b、45aが設けられており、ダンパフィルム45b、45aがそれぞれインク貯留室44bの上面及びインク貯留室44aの下面を画定する壁となっている。また、インク貯留室44bとインク貯留室44aとの間には、隔壁50が設けられており、隔壁50によってインク貯留室44bとインク貯留室44aとが隔てられている。
インク貯留室44dの上面及びインク貯留室44cの下面には、それぞれ、ダンパフィルム45d、45cが設けられており、ダンパフィルム45d、45cがそれぞれインク貯留室44dの上面及びインク貯留室44cの下面を画定する壁となっている。また、インク貯留室44dとインク貯留室44cとの間には、隔壁51が設けられており、隔壁51によってインク貯留室44dとインク貯留室44cとが隔てられている。なお、インク貯留室44aとインク貯留室44dとの間(ダンパフィルム45aとダンパフィルム45dとの間)は空間となっている。
ここで、印刷を行う際などに、キャリッジ2とともにサブタンク4が走査方向に往復移動すると、サブタンク4内のインクが振動してサブタンク4内のインクに圧力の変動が生じるが、ダンパフィルム45a〜45dが変形することによりこのインクの圧力変動が抑制される。
インク流路43aは、インク流路42aの先端部(図3における上端部)から鉛直下方(図4(a)の下方)にインク貯留室44aと同じ高さまで延びており、そこから、さらに図4(a)の左方に折れ曲がって延び、インク貯留室44aと接続されている。
インク流路43bは、インク流路42bの先端部(図2における上端部)からさらにインク流路42bの延在方向(図4(b)の左方)に延びてインク貯留室44bと接続されている。
インク流路43cは、インク流路42cの先端部(図3における上端部)から鉛直下方(図4(c)の下方)にインク貯留室44cと同じ高さまで延びており、そこからさらに図4(c)の左方に折れ曲がって延び、インク貯留室44cと接続されている。
インク流路43dは、インク流路42dの先端部(図3における上端部)から鉛直下方(図4(d)の下方)にインク貯留室44dと同じ高さまで延びており、そこからさらに図4(d)の左方に折れ曲がって延び、インク貯留室44dと接続されている。
インク流路46a〜46d(第2液体流路)は、それぞれ、インク貯留室44a〜44dの図4(a)〜図4(d)の左端部から水平方向(図中左方)に延びてインク流路47a〜47dに接続されている。インク流路47a〜47d(第1液体流路)は、それぞれ、鉛直方向(水平方向と交差する方向)に沿って延びているとともに、図3の左右方向に沿って、図3の左からインク流路47a、47b、47c、47dの順に配列されている。
インク流路47a〜47dの下端部は、それぞれ、その下端が開口したインク供給部48a〜48dとなっており、インク供給部48a〜48dは、それぞれインクジェットヘッド3の上面に形成されたインク供給口89(図5参照)に接続されている。すなわち、インクジェットヘッド3は、インク流路47a〜47dの下流端に接続されている。そして、インク流路47a〜47d内のインクは、インク供給部48a〜48dからインクジェットヘッド3に供給される。
気体室49は、図4の左右方向から見て、インク流路47a〜47dに重なる位置に、インク流路47a〜47dにまたがって設けられている。気体透過膜60は、インク流路47a〜47dと気体室49との間に、インク流路47a〜47dにまたがって配置されているとともに鉛直方向に延びている。そして、気体透過膜60が、インク流路47a〜47dの図4左側の側壁(延在方向に沿った壁の一部)を構成しているとともに、インク流路47a〜47dと気体室49とを仕切る壁となっている。
気体透過膜60は気体のみを透過させ、インクは透過させない。したがって、吸引ポンプ14により排気流路内の気体が吸引されたとき、あるいは、後述するように排気流路内の圧力が大気圧よりも低い負圧に保持された状態にあるときに、インク流路47a〜47d内の気体のみが、排気流路内の負圧により吸引されて気体室49(排気流路)に排出される。
フィルタ70a〜70dは、インク流路47a〜47d内のインク中の異物などを除去するためのものであり、それぞれ、インク流路47a〜47dのインク供給部48a〜48d近傍の、鉛直方向に関して、気体透過膜60と重なる位置に設けられている。フィルタ70a〜70dは、それぞれ、図4における左側の部分(気体透過膜60に近い部分)ほど上方に位置するように水平方向に対して傾斜しているとともに、図4における左端部が、気体透過膜60に接続されている。
インク流路47a〜47dにおいては、フィルタ70a〜70dの表面に気泡が付着しやすく、この気泡がフィルタ70a〜70dに付着した状態で滞留してしまうと、この気泡がインクとともにインクジェットヘッド3に流れ込み、ノズル95(図5参照)からのインクの吐出特性が変動してしまう虞がある。しかしながら、本実施の形態においては、フィルタ70a〜70dが、鉛直方向に関して、気体透過膜60と重なる位置に設けられているとともに、図4における左側の端が気体透過膜60に接続されているので、フィルタ70a〜70dに付着した気泡は、気体透過膜60を透過して気体室49に排出される。
さらに、フィルタ70a〜70dの下面には特に気泡が滞留しやすいが、フィルタ70a〜70dは図4における左側の部分ほど上方に位置するように水平方向に対して傾斜しているため、フィルタ70a〜70dの下面に付着した気体は、フィルタ70a〜70dの下面に沿って図4の左上方に気体透過膜60近傍まで移動する。これにより、フィルタ70a〜70dの下面に付着した気体を効率よく気体室49に排出することができる。
そして、プリンタ1においては、インクカートリッジ6a〜6dのインクがチューブ5a〜5dから流入管31a〜31dに流れ込み、さらに接続口41a〜41d及びインク流路42a〜42b、43a〜43dを介してインク貯留室44a〜44dに流れ込む。さらに、インク貯留室44a〜44dに一時的に貯留されたインクは、インク流路46a〜46dからインク流路47a〜47dに流れ込み、フィルタ70a〜70dを通過することで異物などが除去されてインク供給部48a〜48dからインクジェットヘッド3に供給される。
なお、インクカートリッジ6a〜6dから、チューブ5a〜5d、流入管31a〜31d、接続口41a〜41d、インク流路42a〜42d、43a〜43d、インク貯留室44a〜44d及びインク流路46a〜46d、47a〜47dを経て、インクジェットヘッド3に至るインク流路が、本発明に係る液体供給流路に相当する。
ここで、インク流路47a〜47d及び気体透過膜60が鉛直方向(水平方向と交差する方向)に延びているため、インク流路47a〜47dに気体が流れ込んだときには、流れ込んだ気体の量が多いほど、例えば、図4の一点鎖線で示すように、インク流路47a〜47dにおけるインクの液面が下がり、インクの液面が下がるほど、インク流路47a〜47d内の気体と気体透過膜60との接触面積が大きくなる。したがって、インクカートリッジ6a〜6dからサブタンク4に大量の気体が流れ込んできた場合にも、流れ込んだ気体をインク流路47a〜47dから気体透過膜60を介して気体室49に効率よく排出することができる。
このとき、インク流路47a〜47dは鉛直方向に延びているとともに、インク流路47a〜47dの下端部に設けられたインク供給部48a〜48dにおいてインクジェットヘッド3に接続されているため、インク流路47a〜47dにおいては、インクジェットヘッド3に向かって鉛直方向にインクが流れることとなる。したがって、インク流路47a〜47dに気体が流れ込んできたときに、インク流路47a〜47dにおけるインクの液面が確実に下がる。また、インク流路47a〜47dの延在方向を鉛直方向とすることにより、インク流路47a〜47dの水平方向に関する大きさを最小にすることができる。
また、インク流路47a〜47d内のインクが増粘した場合、増粘したインクが気体透過膜60に付着し、この増粘したインクによって気体透過膜60が目詰まりしてしまう虞がある。しかしながら、インク流路47a〜47dの上流端に接続されたインク流路46a〜46dが水平方向に延びているとともに、インク流路47a〜47dとの接続部分が、鉛直方向に関して気体透過膜60と重なる位置にあるため、インク流路46a〜46dからインク流路47a〜47dに流れ込むインクは、水平方向に気体透過膜60に向かって流れる。したがって、増粘して気体透過膜60に付着したインクは、インク流路46a〜46dからインク流路47a〜47dに流れ込むインクの流れによって除去される。
排気ユニット23は、サブタンク本体22内の気体を外部に排出する排気流路を構成するものであり、接続部61及び排気管62を有している。接続部61は、サブタンク本体22の上面の平面視でインク流路47a〜47d及び気体室49と重なる部分に、インク流路47a〜47d及び気体室49にまたがってインク流路47a〜47d及び気体室49を覆うように配置されており、接続部61の内部には、排気流路を構成する連通流路63及び気体室65が形成されている。
気体室65は、平面視でインク流路47a〜47d及び気体室49と重なる位置に、インク流路47a〜47d及び気体室49にまたがって設けられている。連通流路63は、気体室49と気体室65との間で上下方向に延びており、気体室49と気体室65とを連通させている。
排気管62は、一端が気体室65の図3における下側の側面の略中央部に接続された円管であり、図3の下方に延びているとともに、途中で図3の左方に折れ曲がっており、走査方向に関して、流入管31a〜31dと排気管62とが等間隔に配列されている。そして、図3の左方に延びた排気管62の先端が、チューブ7aに接続されている(図2、図3においては、チューブ7aの図示を省略している)。
次に、インクジェットヘッド3について説明する。図5は図1のインクジェットヘッド3の平面図である。図6は図5の部分拡大図である。図7は図6のVII−VII線断面図である。図8は図6のVIII−VIII線断面図である。ただし、図面を分かりやすくするため、図5においては後述する圧力室90、貫通孔92〜94の図示を省略するとともに、ノズル95を図6〜図8よりも大きく図示している。
図5〜図8に示すように、インクジェットヘッド3は、圧力室90などのインク流路が形成された流路ユニット67と、流路ユニット67の上面に配置された圧電アクチュエータ68とを有している。
流路ユニット67は、上から順にキャビティプレート71、ベースプレート72、マニホールドプレート73及びノズルプレート74の4枚のプレートが互いに積層されることによって構成されている。これら4枚のプレート71〜74のうち、ノズルプレート74を除く3枚のプレート71〜73は、ステンレスなどの金属材料からなり、ノズルプレート74は、ポリイミドなどの合成樹脂材料からなる。あるいは、ノズルプレート74も他の3枚のプレート71〜73と同様、金属材料によって構成されていてもよい。
ノズルプレート74には、複数のノズル95が形成されている。複数のノズル95は、紙送り方向(図5の上下方向)に沿って配列されてノズル列88を構成しており、このようなノズル列88が走査方向(図5の左右方向)に4列に配置されている。これら4つのノズル列88を構成するノズル95からは、図5の左側のノズル列88を構成しているものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
キャビティプレート71には、複数のノズル95に対応して複数の圧力室90が形成されている。圧力室90は走査方向を長手方向とする略楕円の平面形状を有しており、平面視で圧力室90の右端部がノズル95と重なるように配置されている。ベースプレート72には、平面視で圧力室90の長手方向の両端部に重なる位置に、それぞれ貫通孔92、93が形成されている。
マニホールドプレート73には、4つのノズル列88に対応してノズル列88の左側に紙送り方向に延びた4つのマニホールド流路91が形成されている。各マニホールド流路91は、平面視で、対応する圧力室90の略左半分と重なっている。各マニホールド流路91の図5の上端部にはそれぞれインク供給口89が設けられている。インク供給口89は、前述したようにサブタンク4のインク供給部48a〜48dと接続されており、サブタンク4内のインクがインク供給口89からマニホールド流路91に供給される。また、マニホールドプレート73には、平面視で貫通孔93とノズル95とに重なる位置に、貫通孔94が形成されている。
そして、流路ユニット67においては、マニホールド流路91が貫通孔92を介して圧力室90に連通し、圧力室90はさらに貫通孔93、94を介してノズル95に連通する。このように流路ユニット67には、マニホールド流路91の出口から圧力室90を経てノズル95に至る複数の個別インク流路が形成されている。
圧電アクチュエータ68は、振動板81、圧電層82及び複数の個別電極83を有している。振動板81は金属材料などの導電性材料からなり、複数の圧力室90を覆うようにキャビティプレート71の上面に接合されている。また、導電性を有する振動板81は、後述するように圧電層82の個別電極83との間に配置された部分に電界を作用させるための共通電極を兼ねており、図示しないドライバICに接続されて常にグランド電位に保持されている。
圧電層82は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であり、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなり、振動板81の上面に複数の圧力室90にまたがって連続的に配置されている。また、圧電層82は予めその厚み方向に分極されている。
複数の個別電極83は、圧電層82の上面に複数の圧力室90に対応して設けられている。個別電極83は、圧力室90よりも一回り小さい略楕円の平面形状を有しており、平面視で、圧力室90の略中央部に重なる位置に配置されている。また個別電極83の長手方向における一端部(図6の左端部)は、平面視で圧力室90と重ならない位置まで左方に延びており、その先端部が接点83aとなっている。接点83aには、図示しないフレキシブルプリント基板(FPC)等の配線部材を介して図示しないドライバICが接続される。そして、ドライバICにより、複数の個別電極83に選択的に駆動電位が付与される。
ここで、圧電アクチュエータ68の駆動方法について説明する。圧電アクチュエータ68においては、複数の個別電極83の電位は、図示しないドライバICにより予めグランド電位に保持されている。そして、ドライバICにより複数の個別電極83のいずれかに駆動電位が付与されると、駆動電位が付与された個別電極83とグランド電位に保持された共通電極としての振動板81との間に電位差が発生し、圧電層82のこの個別電極83と振動板81とに挟まれた部分に厚み方向の電界が発生する。この電界の向きは圧電層82の分極方向と平行であるため、圧電層82のこの部分は分極方向と直交する水平方向に収縮する。これに伴って、振動板81及び圧電層82の駆動電位が付与された個別電極83に対応する圧力室90に対向する部分が全体として圧力室90に向かって凸となるように変形し、この圧力室90内の容積が減少する。これにより、圧力室90内のインクの圧力が上昇し、圧力室90に連通するノズル95からインクが吐出される。
次に、差圧弁9について説明する。図9は図1の差圧弁9の構成を示す断面図である。
差圧弁9は、図9に示すように、排気流路を構成する気体室101、102及び連通流路103と、弁本体104とを有している。気体室101と気体室102とは、図9の左右方向に並んで配置されており、気体室101は、その図9における右端部に設けられた連通口107においてチューブ7cと連通しており、気体室102は、その図9における左端部に設けられた連通口109においてチューブ7bと連通している。連通流路103は、気体室101と気体室102との間で左右方向に延びて、気体室101と気体室102とを連通させる、図9の左右方向から見て略円形の流路であり、その径は、図9の上下方向及び紙面垂直方向に関する気体室101、102の長さよりも小さい。
弁本体104は、円柱部104a、遮断部104b、抜け落ち防止部104cを有している。円柱部104aは、連通流路103よりも若干径の小さい略円柱形状を有しており、連通流路103を通過して、気体室101の図9における左端部から気体室102の図9の右端部まで延びている。遮断部104bは、円柱部104aの図9の右端部に設けられており、円柱部104aから円柱部104aの径方向外側に傘状に延びているとともに、その径が連通流路103の径よりも大きくなっている。抜け落ち防止部104cは、円柱部104aの図9の左端部に設けられており、円柱部104aから円柱部104aの径方向外側に延びているとともに、その径が連通流路103よりも大きくなっている。また、抜け落ち防止部104cには、図9の左右方向に関して連通流路103の縁近傍の部分と重なる部分に複数の貫通穴104dが設けられている。
そして、吸引ポンプ14により排気流路内の気体が吸引されているときには、吸引ポンプ14の吸引力により弁本体104が図9の右方に移動する。これにより、遮断部104bと気体室101の図9左側の壁面との間に隙間ができる(弁が開く)。その結果、気体室101と気体室102とは、貫通穴104d、連通流路103を介して連通する。これにより、排気流路と切り替えユニット15(吸引ポンプ14)とが連通する。このとき、抜け落ち防止部104cの右側の表面が気体室102の右側の壁面に接触するため、弁本体104が連通流路103から抜け落ちてしまうのが防止される。そして、この状態で吸引ポンプ14により排気流路内の気体が吸引されることにより、排気流路内の気圧が低下して大気圧よりも低い負圧となる。
一方、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引した後には、気体室102の圧力が負圧となっているため、弁本体104はこの負圧により吸引されて図8の左方に移動し、遮断部104bの外縁部が気体室101の図9左側の壁面に押し付けられる。これにより、遮断部104bと気体室101の左側の壁面との間の隙間がなくなり、気体室101と連通流路103及び気体室102との連通が遮断される。このとき、排気流路のうち、差圧弁9と気体透過膜60との間の部分は外部との連通が遮断されて密閉される。
したがって、排気流路のうち差圧弁9と気体透過膜60との間の部分は、負圧に保持された状態となる。これにより、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引した後も、インク流路47a〜47d内の気体は、この負圧によって吸引されて排気流路に排出される。
このように、本実施形態の差圧弁9は、弁本体104よりもサブタンク4側の排気流路内空間の圧力が、弁本体104よりも切り替えユニット15側(吸引ポンプ14側)の排気流路内空間の圧力よりも十分に小さい場合(サブタンク4側の排気流路内空間の圧力の方が小さく、2つの空間の差圧が所定量以上の場合)に、これら2つの空間の連通を遮断し、そうでない場合(2つの空間の差圧が所定量よりも小さい場合、または、2つの空間の圧力が等しいか、切り替えユニット15側の排気流路内空間の圧力の方が小さい場合)には2つの空間の連通を許容するものである。また、本実施形態の差圧弁9は、サブタンク4側から切り替えユニット15側に向かう気体の流れを許容し、切り替えユニット15側からサブタンク4側に向かう気体の流れを遮断する一方向弁でもある。
次にチャージタンク12について説明する。図10はチャージタンク12の構成を示す断面図であり、(a)が後述するチャージ室122c内の圧力が大気圧である場合、(b)がチャージ室122c内の圧力が負圧となった状態を示している。図10に示すように、チャージタンク12は、排気流路を構成する気体流路121と、ベローズ部122及び圧力検出センサ123とを有している。
気体流路121は、図10の左右方向に延びており、図中左右両端部に設けられた連通口121a、121bにおいて、それぞれ、チューブ7a、7bと連通している。また、気体流路121における図10の略中央部の上面には、気体流路121とベローズ部122の後述するチャージ室122cとを連通させる連通口121cが設けられている。
ベローズ部122は、図10の上下方向に延びており、内部に天井壁122b及び側壁122aに囲まれたチャージ室122cが形成されている。天井壁122bは、チャージ室122cの上端部を画定する壁であり、略円形の平面形状を有している。側壁122aは、チャージ室122cの側面を画定する壁であり、天井壁122bの外縁部から、互いに逆方向に交互に折り曲げられつつ下方に延びている。これにより、天井壁122bに鉛直方向に力が加わることで、天井壁122bが鉛直方向に移動するとともに、側壁122aの折り曲げ角度θが変化して、チャージ室122cの容積が変化する。また、チャージ室122cの下端は開口しており、連通口121cに接続されている。これにより、気体流路121とチャージ室122cとが連通している。
ベローズ部122は、チャージ室122c内の圧力が大気圧のときには、図10(a)に示すように、天井壁122bが最も高い位置にあるとともに、側壁122aの折り曲げ角度θが最大となっている。そして、吸引ポンプ14によりチューブ7cから気体を吸引することによってチャージ室122c内の圧力が低下すると、天井壁122bには、外部の大気圧とチャージ室122c内の負圧との差によって下向きの力が生じる。これにより、図10(b)に示すように、天井壁122bが下方に移動し、これに伴って、側壁122aの折り曲げ角度θが小さくなる。そして、このようなベローズ部122の変形により、チャージ室122cの容積が低下する。
ここで、側壁122aの折り曲げ角度θが小さくなると、側壁122aには図10(a)の状態に戻ろうとする図10上向きの反発力が生じ、側壁122aの折り曲げ角度θが小さくなるほどこの反発力は大きくなる。したがって、ベローズ部122は、大気圧とチャージ室122c内の圧力との差によって生じる力と上記反発力とがつりあったときにチャージ室122cの容積の変化が止まる。したがって、チャージ室122c内の圧力が低いほどチャージ室122cの容積は小さくなる。すなわち、チャージ室122c内の圧力と、チャージ室122cの容積とは所定の関係にある。
逆に、図10(b)に示すように、チャージ室122c内が負圧に保持されているときに、インク流路47a〜47dの気体が気体透過膜60を介して気体室49に排出されると、気体が排出された分だけ気体室49に連通するチャージ室122c内の圧力が増加する。これにより、大気圧とチャージ室122c内の圧力との差によって生じる力が小さくなり、ベローズ部122においては、天井壁122bが上方に移動し、これに伴って側壁122aの折り曲げ角度θが大きくなる。このようなベローズ部122の変形によって、チャージ室122cの容積が増加する。
このとき、排気流路にチャージ室122cが連通しているため、排気流路とチャージ室122cとを合わせた容積は、チャージタンク12が設けられていないときの排気流路の容積と比較して、チャージ室122cの分だけ大きくなる。これにより、インク流路47a〜47dから排気流路に気体が流れ込んだときの排気流路内の圧力上昇を緩やかにすることができ、排気流路内が負圧に保持される時間が長くなる。なお、インク流路47a〜47dから排気流路に気体が流れ込み、チャージ室122c内の容積が増加する際にも、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引する場合と同様、大気圧とチャージ室122c内の圧力との差によって生じる力と、ベローズ部122の側壁122aによる反発力とがつりあったときに、チャージ室122cの容積の変化が止まる。すなわち、この場合にも、チャージ室122c内の圧力と、チャージ室122cの容積とは所定の関係にある。
圧力検出センサ123は、可動部124、複数のスリット125及びスリット検出センサ126を有している。可動部124は、ベローズ部122の天井壁122bとともに上下方向に移動する。複数のスリット125は、可動部124の図10における右端部に設けられており、それぞれが図中左右方向に延びているとともに上下方向に配列されている。スリット検出センサ126は、各スリット125がスリット検出センサ126を上下方向に通過したことを検出する。複数のスリット125は、天井壁122bとともに上下方向に移動するため、スリット検出センサ126により各スリット125がスリット検出センサ126を通過したことを検出することで、チャージ室122cの容積を検出することができる。
ここで、前述したように、天井壁122bの位置、つまり、チャージ室122cの容積と、チャージ室122c内の圧力とは所定の対応関係にある。したがって、圧力検出センサ123においては、スリット検出センサ126により、天井壁122bとともに上下方向に移動する可動部124に設けられた複数のスリット125の各々がスリット検出センサ126を通過したことを検出することによってチャージ室122c内の圧力を検出することができる。
以上に説明した実施の形態によると、インク流路47a〜47dが、鉛直方向(水平方向に対して交差する方向)に延びており、気体透過膜60がインク流路47a〜47dの側壁(延在方向に沿った壁)の一部を構成しているため、インク流路47a〜47dに流れ込む気体の量が多いほど、インク流路47a〜47dの液面が下がり、インク流路47a〜47d内の気体と気体透過膜60との接触面積が大きくなる。したがって、インク流路47a〜47dに大量の気体が流れ込んだ場合にも、インク流路47a〜47d内の気体を効率よく排出することができる。
このとき、インク流路47a〜47dが鉛直方向に延びているとともにその下端部のインク供給部48a〜48dにおいてインクジェットヘッド3に接続されているため、インク流路47a〜47dにおいては、インクジェットヘッド3に向かって鉛直方向にインクが流れることとなる。したがって、インク流路47a〜47dに気体が流れ込んできたときに、インク流路47a〜47d内のインクの液面が確実に下がる。
また、インク流路47a〜47dが鉛直方向に延びているため、水平方向に関するインク流路47a〜47dの大きさを最小にすることができる。
また、インク流路47a〜47dにおいては、インクが増粘して気体透過膜60に付着し、このインクによって気体透過膜60が目詰まりしてしまう虞があるが、インク流路47a〜47dの上流端にそれぞれ接続されたインク流路46a〜46dが水平方向に延びているとともに、鉛直方向(図4の上下方向)に関して、気体透過膜60と重なる位置においてインク流路46a〜46dがインク流路47a〜47dに接続されているので、インク流路46a〜46dからインク流路47a〜47に流れ込むインクは気体透過膜60に向かって流れる。したがって、このインクの流れにより、気体透過膜60に付着した増粘したインクを除去することができる。
また、フィルタ70a〜70dにおいては、その表面に気泡が付着しやすいが、フィルタ70a〜70dが水平方向から見て気体透過膜60と重なる位置に設けられているため、フィルタ70a〜70dに付着した気泡は気体透過膜60から気体室49に排出される。さらに、フィルタ70a〜70dの下面には特に気泡がたまりやすいが、フィルタ70a〜70dは、気体透過膜60に近い部分ほど上方に位置するように水平方向に対して傾斜しているので、フィルタ70a〜70dの下面に付着した気泡は、フィルタ70a〜70dの下面に沿って気体透過膜60側の端まで移動する。これにより、フィルタ70a〜70dに付着した気泡を効率よく排出することができる。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
一変形例では、図11に示すように、フィルタ170a〜170dが、水平方向に延びているとともに図11における左端部において気体透過膜60に接続されている(変形例1)。この場合でも、フィルタ170a〜170dに付着した気体は、気体透過膜60から気体室49に排出されるため、フィルタ170a〜170dに付着した気体を効率よく排出することができる。
別の一変形例では、図12に示すように、気体透過膜160が鉛直方向に対して傾斜した方向に延びており、気体透過膜160の水平方向(図12の左右方向)に対する交差角がφとなっている(変形例2)。この場合でも、インク流路47a〜47dに流れ込む気体の量が多いほどインク流路47a〜47dの液面が低下し、インク流路47a〜47d内の気体と気体透過膜160との接触面積が増加するため、インク流路47a〜47dに大量の気体が流れ込んだ場合にも、流れ込んだ気体を効率よく排出することができる。なお、気体透過膜160の延在方向が水平方向に近いほど、気体透過膜160を設けるインク流路47a〜47dが水平方向(図12の左右方向)に関して大きくなってしまうため、インク流路47a〜47dが水平方向に関して過度に大きくなってしまうのを防止するという観点から、気体透過膜160の水平方向に対する交差角であるφは、45°〜135°の範囲にあることが好ましい(φ=90°の場合は、実施の形態の構成となる)。
また、本実施の形態では、インク流路47a〜47dが鉛直方向に延びていたが、これには限られず、インク流路47a〜47dが鉛直方向以外の水平方向と交差する方向に延びていてもよい。この場合でも、インク流路47a〜47dに流れ込む気体の量が多くなるほど、インク流路47a〜47dにおけるインクの液面が低下して、インク流路47a〜47d内の気体と、気体透過膜60との接触面積が大きくなる。なお、この場合も、インク流路47a〜47dが水平方向に関して過度に大きくなってしまうのを防止するという観点から、インク流路47a〜47dの水平方向に対する交差角は、気体透過膜と同様、45°〜135°の範囲にあることが好ましい。
また、本実施の形態では、インク流路47a〜47dにフィルタ70a〜70dが設けられていたが、インク流路47a〜47d以外の部分にフィルタが設けられていてもよい。
また、本実施の形態では、インク流路47a〜47dの上流端に接続されたインク流路46a〜46dが水平方向に延びているとともに、水平方向に関して気体透過膜60と対向する位置においてインク流路47a〜47dに接続されていたが、インク流路46a〜46dの延在方向及びインク流路47a〜47dとの接続位置はこれには限られない。
また、本実施の形態では、気体透過膜60がサブタンク4に形成されたインク流路47a〜47dの延在方向に関する壁を構成していたが、これには限られず、気体透過膜が、インクカートリッジ6a〜6dからインクジェットヘッド3に至るインク流路における、インク流路47a〜47d以外の水平方向と交差する方向に延びた部分(第1液体流路)の延在方向に関する壁面を構成していてもよい。
以上の説明では、本発明を、ノズルからインクを吐出するプリンタに適用した例について説明したが、本発明をノズルからインク以外の液体を吐出する液体吐出装置に適用することも可能である。