上記したように、正極に遷移金属酸化物を用いるリチウムイオン二次電池では、元素の比重が大きいため、現状を上回る高容量二次電池の製造が原理的に困難であった。このため、本発明は、エネルギー密度が高く、高容量で安定性に優れた新規な二次電池用の活物質を提供することを課題としている。
上記課題を解決する本発明によれば、以下に示す二次電池が提供される。
[I]二次電池の電極反応に関与する二次電池用活物質であって、該活物質の電極反応における反応物または生成物が中性のラジカル化合物であるものであることを特徴とする二次電池用活物質。
上記二次電池用活物質において、前記ラジカル化合物は、平衡状態におけるスピン濃度が1021spins/g以上である状態が1秒以上継続されるものである構成とすることができる。
以上の二次電池用活物質のほか、本明細書は以下のことを開示する。
[1]少なくとも正極、負極、電解質を構成要素とする二次電池において、正極、負極の少なくとも一方の活物質がラジカル化合物を含有することを特徴とする二次電池。
[2]少なくとも正極、負極、電解質を構成要素とする二次電池において、正極、負極の少なくとも一方の活物質が、ラジカル化合物であることを特徴とする二次電池。
[3]少なくとも正極、負極、電解質を構成要素とする二次電池において、正極、負極の少なくとも一方の活物質が、2種以上の物質からなり、そのうち少なくとも一つがラジカル化合物であることを特徴とする二次電池。
[4]活物質の電極反応を利用する二次電池において、正極、負極の少なくとも一方の電極反応がラジカル化合物を反応物もしくは生成物とする電極反応であることを特徴とする二次電池。
[5]活物質の電極反応を利用する二次電池において、正極、負極の少なくとも一方の電極反応が2種以上であり、そのうちの少なくとも一種の電極反応がラジカル化合物を反応物もしくは生成物とする電極反応であることを特徴とする二次電池。
上記二次電池において、上記活物質が、正極活物質である構成とすることができる。
上記二次電池において、上記電極反応が、正極における電極反応である構成とすることができる。
上記二次電池において、上記正極における電極反応が、ラジカル化合物を反応物とする放電反応である構成とすることができる。
上記二次電池において、上記正極における電極反応が、ラジカル化合物を生成物とする放電反応である構成とすることができる。
上記二次電池において、上記放電反応が、ラジカル化合物と電解質カチオンとの結合を生成する放電反応である構成とすることができる。
上記二次電池において、上記放電反応が、ラジカル化合物と電解質アニオンとの結合を開裂する放電反応である構成とすることができる。
上記二次電池において、上記電解質カチオンが、リチウムイオンである構成とすることができる。
上記二次電池において、上記ラジカル化合物のスピン濃度が1021spins/g以上である構成とすることができる。
上記二次電池において、上記ラジカル化合物が中性ラジカル化合物である構成とすることができる。
上記二次電池において、上記ラジカル化合物が安定ラジカル化合物である構成とすることができる。
上記二次電池において、上記ラジカル化合物の例として以下のものを例示することができる。
(上式においてX1、X2は少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、X1、X2が脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2が芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2がヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。X1、X2がアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2は同一であっても異なっていてもよい。X1、X2が環を形成してもよい。)
(上式においてRはアルキル基である。アルキル基は置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよい。またアルキル基は1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。一方上式において、Xは少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、Xが脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xがヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。Xがアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが環を形成してもよい。)
上記アルキル基Rは、たとえばターシャリーブチル基である構成とすることができる。
(上式においてR1、R2はアルキル基である。ただし、R1、R2は置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。R1、R2は同一であっても異なっていてもよい。一方上式においてX1、X2は少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、X1、X2が脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2が芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2がヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。X1、X2がアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2は同一であっても異なっていてもよい。X1、X2が環を形成してもよい。)
上記アルキル基R1〜R2は、すべてメチル基である構成とすることができる。
(上式においてR1〜R4はアルキル基である。但し、アルキル基は置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。R1〜R4は同一であっても異なっていてもよい。一方上式においてX1、X2は少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、X1、X2が脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2が芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2がヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。X1、X2がアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2は同一であっても異なっていてもよい。X1、X2が環を形成してもよい。)
上記アルキル基R1〜R4は、すべてメチル基である構成とすることができる。
また、上記ラジカル化合物として、下記一般式(A6)の構造で示される、ニトロキシルラジカル基を構成する窒素原子が、少なくとも1つのアリール基と結合したニトロキシルラジカル化合物とすることができる。
(上式においてArはアリール基である。アリール基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。一方上式において、Xは少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、Xが脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xがヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。Xがアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが環を形成してもよい。)
上記アリール基は、置換もしくは無置換のフェニル基とすることができる。
また、上記ラジカル化合物として、下記一般式(A7)の構造で示される、置換または無置換の複素環を形成する化合物とすることもできる。
(上式においてXは炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子のいずれかである。ただし、Xはすべて同一でもそれぞれ異なっていてもよい。Xは飽和結合で結ばれていても不飽和結合で結ばれていてもよい。Xはあらゆる置換基と結合を形成していてもよい。本化合物は高分子化合物でもよい。高分子の形状は鎖状、環状もしくは分岐状であってもよい。上式においてnは2以上10以下の整数である。)
また、上記ラジカル化合物として、下記一般式(A8)で示される、ピペリジノキシルラジカル環の構造を有するニトロキシルラジカル化合物とすることができる。
(上式においてR1〜R4はアルキル基である。アルキル基は置換または無置換の場合があり、鎖状、環状または分岐状の場合がある。またアルキル基は1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含む場合がある。一方上式において、Xは少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、Xが脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xがヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。Xがアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが環を形成してもよい。)
また、上記ラジカル化合物として、下記一般式(A9)で示される、ピロリジノキシルラジカル環の構造を有するニトロキシルラジカル化合物とすることができる。
(上式においてR1〜R4はアルキル基である。アルキル基は置換または無置換の場合があり、鎖状、環状または分岐状の場合がある。またアルキル基は1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含む場合がある。一方上式において、Xは少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、Xが脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xがヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。Xがアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが環を形成してもよい。)
また、上記ラジカル化合物として、下記一般式(A10)で示される、ピロリノキシルラジカル環の構造を有するニトロキシルラジカル化合物とすることができる。
(上式においてR1〜R4はアルキル基である。アルキル基は置換または無置換の場合があり、鎖状、環状または分岐状の場合がある。またアルキル基は1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含む場合がある。一方上式において、Xは少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、Xが脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和また不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xがヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。Xがアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが環を形成してもよい。)
また、上記ラジカル化合物として、下記一般式(A11)の構造で示される、ニトロニルニトロキシド構造を形成する化合物とすることができる。
(上式においてX1〜X3は少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、X1〜X3が脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1〜X3が芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1〜X3がヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。X1〜X3がアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1〜X3は同一であっても異なっていてもよい。X1〜X3が環を形成してもよい。)
上記二次電池において、上記ラジカル化合物が、高分子化合物である構成とすることができる。
高分子化合物は、ポリアセチレン鎖を主鎖とする高分子化合物、ポリフェニレンビニレンを主鎖とする高分子化合物等とすることができる。
上記二次電池において、上記ラジカル化合物が、オキシラジカル化合物を含有する構成とすることができる。
オキシラジカル化合物としては、アリールオキシラジカル化合物等とすることができる。
アリールオキシラジカル化合物としては、アリールポリオキシラジカル基を有するもの、ターシャリーブチル基を有するもの、ジターシャリーブチルフェノキシラジカル基を有するもの等を例示できる。
上記二次電池において、上記オキシラジカル化合物がセミキノンを含む化合物である構成とすることができる。
上記二次電池において、上記オキシラジカル化合物が塩基性溶媒に難溶性の化合物である構成とすることができる。
上記二次電池において、上記オキシラジカル化合物が高分子ラジカル化合物である構成とすることができる。
高分子ラジカル化合物としては、ポリオレフィン構造を有する化合物、ポリアセチレン構造を有する化合物、ポリフェニレン構造を有する化合物等が例示される。特に、芳香族複素五員環式構造を有する化合物や三次元網目構造を有する高分子化合物が好ましく用いられる。
上記二次電池において、上記ラジカル化合物が、窒素原子上にラジカルを有する化合物を含有する構成とすることができる。
上記二次電池において、上記ラジカル化合物が、酸化状態で窒素原子上にラジカルを有する化合物を含有する構成とすることができる。
上記二次電池において、上記ラジカル化合物が、還元状態で窒素原子上にラジカルを有する化合物を含有する構成とすることができる。
窒素原子上にラジカルを有する化合物としては、以下のものが例示される。
化学式(C1)に示した3価のフェルダジル基もしくは化学式(C2)で示す4価のフェルダジル基上にラジカルを有する化合物。
化学式(C3)または化学式(C4)に示すトリフェニルフェルダジル基を有する化合物。
化学式(C5)に示す、3価のヒドラジル基上にラジカルを有する化合物。
化学式(C6)に示す3価のヒドラジル基上にラジカルを有する化合物。
(式中、R1〜R5は、それぞれ独立して水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族あるいは芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、又はカルボキシル基を表す。)
また、窒素原子上にラジカルを有する化合物として、ジフェニルピクリルヒドラジルを用いることができる。
また、窒素原子上にラジカルを有する化合物として、一般式(C7)で表されるアミノトリアジン構造を有する化合物を用いることができる。
(式中、R6は、水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族あるいは芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、カルボキシル基、オキソラジカルを表す。)
窒素原子上にラジカルを有する化合物は、高分子化合物とすることもできる。たとえば、上記一般式(C7)で表されるアミノトリアジン構造を繰り返し単位として有する高分子化合物とすることができる。
また本明細書は、以下の二次電池用活物質を開示する。
[1]ラジカル化合物を含有することを特徴とする二次電池用活物質。
[2]二次電池の電極反応に関与する活物質であって、該活物質の電極反応による反応物または生成物がラジカル化合物であることを特徴とする二次電池用活物質。
上記二次電池用活物質において、上記ラジカル化合物のスピン濃度が1021spins/g以上である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、二次電池の正極に用いられる構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記ラジカル化合物が、下記化学式(A1)の構造で示される官能基を有するニトロキシルラジカル化合物を含有する構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記ラジカル化合物が、下記一般式(A2)で示されるニトロキシルラジカル化合物を含有する構成とすることができる。
(上式においてX1、X2は少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、X1、X2が脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2が芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2がヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。X1、X2がアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2は同一であっても異なっていてもよい。X1、X2が環を形成してもよい。)
上記二次電池用活物質において、上記ラジカル化合物が、下記一般式(A3)の構造で示される、ニトロキシルラジカル基を構成する窒素原子が少なくとも1つのアルキル基と結合したニトロキシルラジカル化合物である構成とすることができる。
(上式においてRはアルキル基である。アルキル基は置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよい。またアルキル基は1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。一方上式において、Xは少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、Xが脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xがヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。Xがアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが環を形成してもよい。)
上記二次電池用活物質において、上記アルキル基が、ターシャリーブチル基である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記ラジカル化合物が、下記一般式(A4)の構造で示される、ニトロキシルラジカル基を構成する窒素原子が少なくとも2つのアルキル基と結合した炭素原子少なくとも1つと結合したニトロキシルラジカル化合物である構成とすることができる。
(上式においてR1、R2はアルキル基である。ただし、R1、R2は置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。R1、R2は同一であっても異なっていてもよい。一方上式においてX1、X2は少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、X1、X2が脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2が芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2がヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。X1、X2がアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2は同一であっても異なっていてもよい。X1、X2が環を形成してもよい。)
上記二次電池用活物質において、上記アルキル基R1〜R2が、すべてメチル基である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記ラジカル化合物が、下記一般式(A5)の構造で示される、ニトロキシルラジカル基を構成する窒素原子が少なくとも2つのアルキル基と結合した炭素原子2つと結合したニトロキシルラジカル化合物である構成とすることができる。
(上式においてR1〜R4はアルキル基である。但し、アルキル基は置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。R1〜R4は同一であっても異なっていてもよい。一方上式においてX1、X2は少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、X1、X2が脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2が芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2がヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。X1、X2がアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1、X2は同一であっても異なっていてもよい。X1、X2が環を形成してもよい。)
上記二次電池用活物質において、上記アルキル基R1〜R4が、すべてメチル基である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記ラジカル化合物が、下記一般式(A6)の構造で示される、ニトロキシルラジカル基を構成する窒素原子が、少なくとも1つのアリール基と結合したニトロキシルラジカル化合物である構成とすることができる。
(上式においてArはアリール基である。アリール基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。一方上式において、Xは少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、Xが脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xがヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。Xがアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが環を形成してもよい。)
上記二次電池用活物質において、上記アリール基が、置換もしくは無置換のフェニル基である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記ラジカル化合物が、下記一般式(A7)の構造で示される、置換または無置換の複素環を形成する構成とすることができる。
(上式においてXは炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子のいずれかである。ただし、Xはすべて同一でもそれぞれ異なっていてもよい。Xは飽和結合で結ばれていても不飽和結合で結ばれていてもよい。Xはあらゆる置換基と結合を形成していてもよい。本化合物は高分子化合物でもよい。高分子の形状は鎖状、環状もしくは分岐状であってもよい。上式においてnは2以上10以下の整数である。)
上記二次電池用活物質において、上記ニトロキシルラジカル化合物が、下記一般式(A8)で示される、ピペリジノキシルラジカル環の構造を有するニトロキシルラジカル化合物である構成とすることができる。
(上式においてR1〜R4はアルキル基である。アルキル基は置換または無置換の場合があり、鎖状、環状または分岐状の場合がある。またアルキル基は1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含む場合がある。一方上式において、Xは少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、Xが脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xがヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。Xがアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが環を形成してもよい。)
上記二次電池用活物質において、上記ニトロキシルラジカル化合物が、下記一般式(A9)で示される、ピロリジノキシルラジカル環の構造を有するニトロキシルラジカル化合物である構成とすることができる。
(上式においてR1〜R4はアルキル基である。アルキル基は置換または無置換の場合があり、鎖状、環状または分岐状の場合がある。またアルキル基は1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含む場合がある。一方上式において、Xは少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、Xが脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xがヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。Xがアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが環を形成してもよい。)
上記二次電池用活物質において、上記ニトロキシルラジカル化合物が、下記一般式(A10)で示される、ピロリノキシルラジカル環の構造を有するニトロキシルラジカル化合物である構成とすることができる。
(上式においてR1〜R4はアルキル基である。アルキル基は置換または無置換の場合があり、鎖状、環状または分岐状の場合がある。またアルキル基は1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含む場合がある。一方上式において、Xは少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、Xが脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和また不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xがヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。Xがアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。Xが環を形成してもよい。)
上記二次電池用活物質において、上記ラジカル化合物が、下記一般式(A11)の構造で示される、ニトロニルニトロキシド構造を形成する化合物とすることができる。
(上式においてX1〜X3は少なくとも1つの脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、もしくは水素原子を含む置換基である。但し、X1〜X3が脂肪族基を含む場合、脂肪族基は飽和または不飽和であってよく、置換または無置換であってよく、鎖状、環状または分岐状であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1〜X3が芳香族基を含む場合、芳香族基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1〜X3がヒドロキシル基を含む場合、ヒドロキシル基は金属原子と塩を形成していてもよい。X1〜X3がアルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを含む場合、これら置換基は置換または無置換であってよく、1個以上の酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子を含んでもよい。X1〜X3は同一であっても異なっていてもよい。X1〜X3が環を形成してもよい。)
上記二次電池用活物質において、上記ニトロキシルラジカル化合物が、高分子化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記高分子化合物が、ポリアセチレン鎖を主鎖とする高分子化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記高分子化合物が、ポリフェニレンビニレンを主鎖とする高分子化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記ラジカル化合物が、オキシラジカル化合物を含有する構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記オキシラジカル化合物がアリールオキシラジカル化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記アリールオキシラジカル化合物がアリールポリオキシラジカル基を有するものである構成とすることができる。81に記載の二次電池用活物質。
上記二次電池用活物質において、上記アリールオキシラジカル化合物がターシャリーブチル基を有するものである構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記アリールオキシラジカル化合物がジターシャリーブチルフェノキシラジカル基を有するものである構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記オキシラジカル化合物がセミキノンを含む化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記オキシラジカル化合物が塩基性溶媒に難溶性の化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記オキシラジカル化合物が高分子ラジカル化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記高分子ラジカル化合物がポリオレフィン構造を有する化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記高分子ラジカル化合物がポリアセチレン構造を有する化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記高分子ラジカル化合物がポリフェニレン構造を有する化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記高分子ラジカル化合物が芳香族複素五員環式構造を有する化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記高分子ラジカル化合物が三次元網目構造を有する高分子化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記ラジカル化合物が、窒素原子上にラジカルを有する化合物を含有する構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記ラジカル化合物が、酸化状態で窒素原子上にラジカルを有する化合物を含有する構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記ラジカル化合物が、還元状態で窒素原子上にラジカルを有する化合物を含有する構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記窒素原子上にラジカルを有する化合物が、化学式(C1)に示した3価のフェルダジル基もしくは化学式(C2)で示す4価のフェルダジル基上にラジカルを有する化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記窒素原子上にラジカルを有する化合物が、化学式(C3)または化学式(C4)に示すトリフェニルフェルダジル基を有するものとすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記窒素原子上にラジカルを有する化合物が、化学式(C5)に示す、3価のヒドラジル基上にラジカルを有する化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記窒素原子上にラジカルを有する化合物が、化学式(C6)に示す3価のヒドラジル基上にラジカルを有する化合物である構成とすることができる。
(式中、R1〜R5は、それぞれ独立して水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族あるいは芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、又はカルボキシル基を表す。)
上記二次電池用活物質において、上記窒素原子上にラジカルを有する化合物が、ジフェニルピクリルヒドラジルである構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記窒素原子上にラジカルを有する化合物が、一般式(C7)で表されるアミノトリアジン構造を有する化合物である構成とすることができる。
(式中、R6は、水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族あるいは芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、カルボキシル基、オキソラジカルを表す。)
上記二次電池用活物質において、上記窒素原子上にラジカルを有する化合物が、高分子化合物である構成とすることができる。
上記二次電池用活物質において、上記アミノトリアジン構造を有する化合物が、上記一般式(C7)で表されるアミノトリアジン構造を繰り返し単位として有する高分子化合物である構成とすることができる。
本発明は、ラジカル化合物を電極活物質として利用するという、従来にない新規なメカニズムによる二次電池を提供するものである。ラジカル化合物が、炭素や水素、酸素など、質量の小さい物質のみから構成される場合には、質量当たりのエネルギー密度が大きな二次電池を得ることが期待される。しかも、本発明の二次電池ではラジカル部位のみが反応に寄与するため、サイクル特性が活物質の拡散に依存しない安定性に優れた二次電池を得ることができる。また、ラジカル化合物では反応する不対電子がラジカル原子に局在化して存在するため、反応部位の濃度を増大させることができ、高容量二次電池が期待できる。本発明は、充放電を行う二次電池および二次電池用活物質に好適に適用できる。
電極活物質とは、充電反応、放電反応といった電極反応に、直接寄与する物質のことであり、二次電池システムの中心的役割を果たす。本発明における活物質は、正極活物質、負極活物質のいずれにも用いることができるが、金属酸化物系の活物質に比べて、質量が小さいという特徴を有しており、金属酸化物系に比べてエネルギー密度が優れているので、正極活物質として用いるのがより好ましい。
さらに安定性の観点から、正極での電極反応のうち、放電時の電極反応が、ラジカル化合物を反応物とする電極反応であることが特に好ましい。しかも、この反応の生成物が電解質カチオンとの結合を形成する反応であれば、更なる安定性の向上が期待される。電解質カチオンは任意のものを用いることができるが、容量の点から特にリチウムイオンが好ましい。
本発明における反応物とは、化学反応を起こす物質であり、しかも長時間に亘って安定に存在する物質のことである。一方、生成物とは化学反応の結果生じる物質であり、しかも長時間に亘って安定に存在する物質のことである。本発明は、反応物または生成物がラジカル化合物であり、電極反応の反応過程に生じる反応中間体として、ごく一瞬だけラジカルを発生するようなものは、本発明の範疇に含まれない。
ところで、統計力学的に見れば室温ではどのような化学物質でもラジカル状態の原子種が存在すると考えられる。しかしながら、本発明においては、二次電池の活物物質として機能する程度のラジカル濃度を有していることが重要である。たとえば、前述の特許第2715778号明細書には、電極活物質としてポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ポリチオフェン、ジスルフィド化合物といった有機化合物が示されているが、これらの有機化合物のラジカル濃度は、高いものでも1018spins/g程度である。
これに対して本発明におけるラジカル化合物は、二次電池の容量の点から、ラジカル濃度が、1019spins/g 以上に保たれていることが好ましく、さらに1021spins/g以上に保たれていることがより好ましい。
一般に、ラジカル濃度はスピン濃度で表すことができる。すなわち、スピン濃度は単位重量当りの不対電子(ラジカル)数を意味し、例えば電子スピン共鳴スペクトル(以下ESRスペクトルとする)の吸収面積強度から以下の方法で求められる値である。まず、ESRスペクトルの測定に供する試料を乳鉢等ですりつぶして粉砕する。この処理により表皮効果(マイクロ波が中まで通らない現象)が無視できる程度の大きさの粒子に粉砕することができる。この粉砕試料の一定量を内径2mm以下、望ましくは1−0.5mmの石英ガラス製細管に充填し、10-5mmHg以下に脱気して封止し、ESRスペクトルを測定する。ESRスペクトルは、例えば、JEOL-JES-FR30 型ESRスペクトロメーター等を用いて測定する。スピン濃度は得られたESRシグナルを二回積分して検量線と比較して求めることができる。ただし、本発明ではスピン濃度が正しく測定できる方法であれば測定機や測定条件は問わない。前述したように、ラジカル化合物のスピン濃度は、例えば電子スピン共鳴スペクトル等によって評価することができる。また、ラジカル化合物の荷電状態は、充放電反応の容易さの点から、中性であることが好ましい。さらに二次電池の安定性を考慮すると、ラジカル化合物は安定なラジカル化合物であることが望まれる。ここで、安定ラジカル化合物とはラジカルの寿命が長い化合物のことである。ラジカルの寿命は長いほど良いが、これはラジカル自体の反応性と共に溶剤等の周囲の環境によっても影響を受ける。
ラジカルとは不対電子を有する化学種であり、この化学種を持つ化合物がラジカル化合物である。ラジカルは一般的に、反応性に富んだ化学種であり、各種反応の中間体として発生する不安定なものが多い。これら不安定なラジカルは、反応系に存在する周辺物質と結合を作り、ある程度の寿命をもって消失する。
ところが、安定ラジカル化合物の中には、周辺物質との結合を作らず、比較的長い時間に亘って安定に存在するものもある。これらの化合物は、例えば有機保護基による立体障害やπ電子の非局在化によってラジカルを安定化させている。本発明の電極活物質はこのような化合物を利用するものであり、電子スピン共鳴分析で測定されたスピン濃度が長時間、たとえば1秒間以上にわたって、通常、1019〜1023spins/g の範囲内にある。
特に本発明では、平衡状態におけるスピン濃度が1021spins/g以上である状態が1秒以上継続される化合物を安定ラジカル化合物と呼んでいる。
なお、本発明におけるラジカル化合物とは、未結合手という意味での不対電子を有する化合物であって、内殻に安定した不対電子をもつ遷移金属化合物は含まないものとする。
一般に、二次電池の電極活物質は出発状態と電極反応によって酸化もしくは還元された状態の二つの状態を取るが、本発明では活物質が出発状態と酸化もしくは還元された状態の何れかの状態でラジカル化合物を含んでいることを特徴としている。充放電のメカニズムとしては、活物質中のラジカル基が電極反応によってラジカルの状態とイオンの状態に可逆的に変化して電荷を蓄積するものが考えられるが、詳細は明らかではない。また、本発明では、正極、もしくは負極での電極反応にラジカル化合物が直接寄与することを特徴としているため、活物質材料として用いる電極は正極もしくは負極のいずれかに限定されるものではない。ただし、エネルギー密度の観点から、特に正極の電極活物質としてラジカル化合物を用いることが好ましい。さらに安定性の観点から、正極での電極反応のうち、放電時の電極反応がラジカル化合物を反応物とする電極反応であることが特に好ましい。しかも、この反応の生成物が電解質塩のカチオンとの結合を形成する反応であれば、更なる安定性の向上が期待される。本特許ではこれら電解質カチオンは特に限定されないが、容量の点から特にリチウムイオンが好ましい。
本発明におけるラジカル化合物としては、ニトロキシルラジカル基を有する化合物、オキシラジカル化合物、硫黄ラジカルを有する化合物、窒素原子上にラジカルを有する化合物、炭素ラジカルを有する化合物等が挙げられる。
(ニトロキシルラジカル化合物)
ニトロキシルラジカル化合物は、ラジカルの安定性という点において特に優れている。ニトロキシルラジカル化合物とは、式(A1)で示したニトロキシルラジカル基を含む化合物のことである。
ニトロキシルラジカル基は、酸素原子と窒素原子の結合したニトロキシド基を形成する酸素原子が不対電子を有していることを特徴とする置換基である。一般に、ラジカル化合物は反応性に富んだ化学種であり、周囲の物質との相互作用によって、ある程度の寿命をもって消失する不安定なものが多い。しかしニトロキシルラジカル化合物の場合は、窒素原子の電子吸引性によって酸素上にある不対電子が安定化されているのが特徴である。
(オキシラジカル化合物)
オキシラジカル化合物とは、不対電子を有する酸素原子からなる置換基を含む化合物である。一般に、オキシラジカルは反応性に富んだ化学種であり、周囲の物質との相互作用によって、ある程度の寿命をもって消失するものが多いが、共鳴効果や立体障害、溶媒和の状態によっては安定なものとなる。これら安定なオキシラジカル化合物では、電子スピン共鳴分析で測定されたスピン濃度が長時間にわたって、1019〜1023 spins/gの範囲内にあるものもある。
オキシラジカル化合物が、炭素や水素、酸素など、質量の小さい物質のみから構成される場合には、質量当たりのエネルギー密度が大きな二次電池を得ることができる。しかも、本発明の二次電池ではオキシラジカル部位のみが反応に寄与するため、サイクル特性が活物質の拡散に依存しない安定性に優れたものとなる。また、オキシラジカル化合物では電極活物質として反応する不対電子がラジカル原子に局在化して存在するため、反応部位であるオキシラジカルの濃度を増大させることができ、高エネルギー密度で大容量の二次電池となる。
(窒素原子上にラジカルを有する化合物)
窒素原子上にラジカルを有する化合物とは不対電子を有する窒素原子からなる置換基を含む化合物である。一般に、ラジカルは反応性に富んだ化学種であり、周囲の物質との相互作用によって、ある程度の寿命をもって消失するものが多いが、共鳴効果や立体障害、溶媒和の状態によっては安定なものとなる。これら安定な窒素原子上にラジカルを有する化合物では、電子スピン共鳴分析で測定されたスピン濃度が長時間にわたって、1019〜1023 spins/gの範囲内にあるものもある。
本発明によれば、電極反応に関与する物質としてラジカル化合物を用いているため、エネルギー密度が高く、高容量で安定性に優れた二次電池用の活物質を実現することができる。
(電極の構成物質)
本発明に係る二次電池においては、以下の構成を採用する。
(i)ラジカル化合物を含有する材料を活物質として用いる構成。
(ii)ラジカル化合物を反応物もしくは生成物とする電極反応を利用する構成。
上記(ii)における電極反応は、ラジカル化合物を反応物とする放電反応、または、ラジカル化合物を生成物とする放電反応とすることができる。ラジカル化合物を反応物とする放電反応の例としては、ラジカル化合物と電解質カチオンとの結合を生成する放電反応が挙げられる。ラジカル化合物を生成物とする放電反応の例としては、ラジカル化合物と電解質アニオンとの結合を開裂する放電反応が挙げられる。
本発明に用いられるラジカル化合物としては、以下のように化学式1〜3に示すようなニトロキシルラジカル化合物、化学式4〜6に示すような高分子ニトロキシルラジカル化合物、化学式7、化学式8に示すようなフェノキシルラジカル化合物、化学式9、化学式10に示すような高分子フェノキシルラジカル化合物、化学式11〜13に示すようなヒドラジルラジカル化合物、化学式14、化学式15に示すような高分子ヒドラジルラジカル化合物、炭素ラジカル化合物、硫黄ラジカル化合物、ホウ素ラジカル化合物等が挙げられ、低分子化合物、高分子化合物いずれをも挙げることができ、これらの化合物が構造中に存在する高分子化合物等も挙げることができる。また、ラジカル化合物は2種類以上を混合して用いても良い。また、化学式16に示すように、充電によってリチウムを放出してラジカル化合物を生成する物質を用いることもできる。
本発明において高分子化合物とは分子量の大きな分子である高分子が集合したものであり、低分子に比べて分子間の相互作用が大きいために各種の溶媒にも溶けにくいという特徴を有している。このため、高分子ラジカル化合物を用いて二次電池を構成した場合には電極からの溶出が抑えられ、安定性に優れたものとなる。また、本発明では活物質であるラジカル化合物は充放電過程の間、電極上にあることが必要である。このため、ラジカル化合物は電解液を構成する塩基性溶媒に溶けにくいものが好ましい。ただし、高容量の二次電池を構成する場合には活物質に対する電解質や電解質溶液の量は小さいので、溶解度(溶媒100gに対する溶質の量(グラム))はおおむね1g以下の難溶性のものであれば電極上に安定に存在することができる。
本発明は正極層と負極層の両方、およびどちらか一方にラジカル化合物からなる活物質を用いるが、このうち、どちらか一方に用いた場合には、もう一方の電極層に二次電池の活物質として従来公知のものが利用できる。このようなものとして、例えば負極層にラジカル化合物を用いる場合には正極層として金属酸化物粒子、ジスルフィド化合物、導電性高分子等が挙げられる。ここで、金属酸化物としては例えばLiMnO2、LixMn2O4(0<x<2)等のマンガン酸リチウムあるいはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム、MnO2、LiCoO2、LiNiO2、あるいはLixV2O5(0<x<2)等が、また、導電性高分子にはポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール等が挙げられる。
本発明ではこれらの正極層材料を単独、もしくは組み合わせて使用することもできる。また、従来公知の活物質とラジカル化合物とを混合して複合活物質として用いてもよい。
一方、正極にラジカル化合物を用いた場合には負極層としてはグラファイトや非晶質カーボンのような炭素材料、リチウム金属やリチウム合金、リチウムイオン吸蔵炭素、導電性高分子等が挙げられる。これらの形状としては、例えばリチウム金属では薄膜状のものに限らず、バルク状のもの、粉末を固めたもの、繊維状のもの、フレーク状のもの等の任意のものを用いることができる。
本発明ではラジカル化合物を含む電極層を形成する際に、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材やイオン伝導補助材を混合させても良い。これらの材料としては、導電補助材として、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、もしくはポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子が、また、イオン伝導補助材として、ゲル電解質、もしくは固体電解質が挙げられる。
本発明では、各構成材料間の結びつきを強めるために、結着剤を用いても良い。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド等の樹脂バインダーが挙げられる。
本発明では、電極反応をより円滑に行うために触媒を用いても良い。触媒としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子、ピリジン誘導体、ピロリドン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、アクリジン誘導体等の塩基性化合物、金属イオン錯体等が挙げられる。
本発明では正極、負極の少なくとも一方の活物質がラジカル化合物を含有することを特徴としているが、その含有量は特に限定されない。ただし、含まれるラジカル化合物の量に応じて二次電池としての容量が決まるため、発明の効果の点から1質量%以上の含有量が望ましい。それ以下の含有量ではエネルギー密度が高く高容量であるという本発明の効果が不明確となる。
(二次電池の構造)
本発明による二次電池は、例えば図1に示すような構成を有している。図に示された二次電池は負極層1と正極層2とを電解質を含むセパレーター5を介して重ね合わせた構成を有している。本発明では、負極層1もしくは正極層2に用いられる活物質がラジカル化合物である。
図2には積層型二次電池の断面図を示す。その構造は、正極集電体4、正極層2、電解質を含むセパレーター5、負極層1、負極集電体3を順に重ね合わせた構造である。本発明では正極層、および負極層の積層方法は任意のものを用いることができ、多層積層体、集電体の両面に積層したものを組み合わせたものや巻回したもの等が利用できる。
負極集電体3、正極集電体4として、ニッケルやアルミニウム、銅、金、銀、アルミニウム合金、ステンレス等の金属箔や金属平板、メッシュ状電極、炭素電極等を用いることができる。また、集電体に触媒効果を持たせたり、活物質と集電体とを化学結合させたりしてもよい。一方、上記の正極、および負極が接触しないように多孔質フィルムからなるセパレーターや不織布を用いることもできる。
セパレーター5に含まれる電解質は、負極層1と正極層2の両極間の荷電担体輸送を行うものであり、一般には室温で10-5〜10-1S/cmの電解質イオン伝導性を有している。本発明では、電解質としては、例えば電解質塩を溶剤に溶解した電解液を利用することができる。このような溶剤としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒が挙げられる。本発明ではこれらの溶剤を単独もしくは2種類以上混合して用いることもできる。また、電解質塩としては、例えばLiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3等が挙げられる。
また、電解質としては固体電解質を用いても良い。これら固体電解質に用いられる高分子物質としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体や、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリルニトリル系重合体、さらにポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、これらのアクリレート体やメタクリレート体の重合体などが挙げられる。これらの高分子物質に電解液を含ませてゲル状にしたものを用いることができ、また高分子物質のみをそのまま用いても良い。
本発明における二次電池の形状は従来公知の方法を用いることができる。二次電池形状としては、電極積層体、あるいは巻回体を金属ケース、樹脂ケース、あるいはアルミニウム箔などの金属箔と合成樹脂フィルムからなるラミネートフィルム等によって封止したものが挙げられる。また外観としては、円筒型、角型、コイン型、およびシート型等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明における二次電池の製造方法としては従来公知の方法を用いることができる。例えば、活物質に溶剤を加えスラリー状にして電極集電体に塗布し、セパレータを介して対極と積層したもの、あるいはこれを巻回したものを外装体で包み、電解液を注入して封止するといった方法である。二次電池を製造する際には、ラジカル化合物そのものを用いて二次電池を製造する場合と、二次電池反応によってラジカル化合物に変化する化合物を用いて二次電池を製造する場合とがある。これら二次電池反応によってラジカル化合物に変化する化合物の例としては、ラジカル化合物を還元したアニオンのリチウム塩やナトリウム塩などが挙げられる。本発明では、これらのように、二次電池反応の結果ラジカル化合物に変化する化合物を用いて二次電池を製造してもよい。
(ニトロキシルラジカル化合物)
本発明に用いられるニトロキシルラジカル化合物は、分子構造中にニトロキシルラジカル基を有する。化学式A12〜A49にニトロキシルラジカル化合物の例を示す。
ニトロキシルラジカル基を形成する窒素原子に嵩高いアルキル基が結合している化合物は、その立体障害効果により高い安定性が期待される。それらアルキル基としてはターシャリーブチル基が好ましい。ニトロキシルラジカル基を形成する窒素原子にターシャリーブチル基が結合している化合物としては、化学式(A12)〜化学式(A19)に示すものが例として挙げられる。
ラジカルの安定性という観点から、ニトロキシルラジカル基を形成する窒素原子に対し、少なくとも2つのアルキル基と結合した炭素原子が結合していることが好ましい。特にそれぞれ少なくとも2つのアルキル基と結合した2つの炭素原子が結合している場合は、より安定性の高いラジカル化合物になることが期待される。この場合のアルキル基としてはメチル基が好ましい。これらの2つのメチル基が結合した炭素原子が、ニトロキシルラジカル基を形成する窒素原子に結合した化合物の例としては、化学式(A12)〜化学式(A20)および化学式(A24)〜化学式(A48)に示すものが挙げられる。
さらにニトロキシルラジカル基を形成する窒素原子にアリール基が結合している化合物は、電子の非局在効果により高い安定性が期待される。この場合芳香族基としては、安定性の観点から、置換もしくは無置換のフェニル基が好ましい。ニトロキシルラジカル基を形成する窒素原子にアリール基が結合している化合物の例としては、化学式(A13)〜化学式(A19)、化学式(A21)、化学式(A22)に示すものが挙げられる。
一方ニトロキシルラジカル基を形成する窒素原子が、複素環を形成する1原子となっている場合は、ニトロキシルラジカル基の分子内反応が起こりにくくなるため、ラジカルの安定性向上が期待される。この場合の複素環としては安定性の観点から、ピペリジノキシ環、ピロリジノキシ環、ピロリノキシ環が好ましい。ニトロキシルラジカル基を形成する窒素原子が、複素環を形成する1原子となっている例としては、化学式(A23)〜化学式(A48)に示すものが挙げられるが、そのうち化学式(A26)〜化学式(A30)に示すものはピペリジノキシ環、化学式(A31)〜化学式(A36)に示すものはピペリジノキシ環、化学式(A37)〜化学式(A42)に示すものはピペリジノキシ環を形成している。
またニトロキシルラジカル基が、ニトロニルニトロキシド構造を形成している場合は、電子が非局在化するためラジカルが安定化することが期待される。ニトロキシルニトロキシド構造を有する化合物の例としては、化学式(A43)〜化学式(A48)に示すものが挙げられる。
またニトロキシルラジカル化合物が高分子化合物である場合は、電解液によって溶解されにくく、長期にわたって劣化のない優れた安定性が得られ好ましい。このような高分子化合物の形状は、鎖状、環状もしくは分岐状であっても良い。さらにポリアセチレン鎖を主鎖とする場合、あるいは、ポリフェニレンビニレンを主鎖とする場合には、電子の非局在化効果により高い安定性が得られる。
本発明の二次電池において活物質であるニトロキシルラジカル化合物は固体状態であっても、また、溶液に溶解した状態であっても、動作の点からは特に限定されないが、充放電の速度、および効率の面から塩基性溶媒に不溶性のものが好ましい。また、本発明ではニトロキシルラジカル化合物の分子量は特に限定されず、必要に応じて低分子化合物から高分子化合物まで利用できるが、充電状態、および放電状態の安定性の面から高分子ラジカル化合物が好ましく、特に、ポリアセチレン、ポリフェニレン構造を有する高分子ラジカル化合物が好ましい。ニトロキシルラジカル化合物が高分子化合物を形成している例としては、化学式(A16)〜化学式(A20)、化学式(A22)、化学式(A25)、化学式(A29)、化学式(A30)、化学式(A42)、化学式(A46)〜化学式(A48)が挙げられる。そのうちポリアセチレン鎖を主鎖としているのものが化学式(A16)、化学式(A17)、化学式(A22)、化学式(A29)、化学式(A30)、化学式(A46)に相当し、ポリフェニレンビニレン鎖を主鎖としているものが化学式(A18)、化学式(A19)、化学式(A47)に相当する。
(オキシラジカル化合物)
本発明に用いられるオキシラジカル化合物は、分子構造中にオキシラジカル基を有する。ラジカル状態の安定性の面からアリールオキシラジカル基を有するもの、もしくはセミキノンを含むものが好ましい。
オキシラジカル化合物の例を下記式に示す。
本発明において、アリールオキシラジカル基を有するものとはベンゼン、ナフタレン、チオフェン等の芳香族化合物であってオキシラジカル基を有する化合物であり、セミキノンを含むものとはベンゼノイド化合物とキノイド化合物の不完全酸化還元によって生ずる構造を有する化合物である。このうち、アリールオキシラジカル基を有するものの中ではアリールポリオキシラジカル基を有するもの、もしくはターシャリーブチル基を有するものが好ましく、ターシャリーブチル基を有するアリールオキシラジカル基を有するものの中では特にジターシャリーブチルフェノキシラジカル基を有するものが好ましい。アリールオキシラジカル基を有するものとしては例えば化学式B1〜3に示す化合物およびその誘導体が、アリールポリオキシラジカル基を有するものとしては化学式B4に示す化合物およびその誘導体が、ジターシャリーブチル基を有するアリールオキシラジカル化合物としては化学式B5〜8に示す低分子化合物およびその誘導体が、また、セミキノンとしては化学式B9に示す化合物およびその誘導体が挙げられる。
本発明の二次電池において活物質であるオキシラジカル化合物は固体状態であっても、また、溶液に溶解した状態であっても動作の点からは特に限定されないが、充放電の速度、および効率の面から塩基性溶媒に不溶性のものが好ましい。また、本発明ではオキシラジカル化合物の分子量は特に限定されず、必要に応じて低分子化合物から高分子化合物まで利用できるが、充電状態、および放電状態の安定性の面から高分子ラジカル化合物が好ましく、特に、ポリオレフィン構造、もしくはポリアセチレン、ポリフェニレン構造、芳香族複素五員環構造を有する高分子ラジカル化合物が好ましく、中でも三次元網目構造を有する高分子ラジカル化合物が好ましい。このようなポリオレフィン構造を有するものとしては例えば化学式B10〜11に示す高分子化合物およびその誘導体が、ポリアセチレン構造を有するものとしては例えば化学式B12〜15に示す高分子化合物およびその誘導体が、ポリフェニレン構造を有するものとしては、例えば化学式B16〜20に示す高分子化合物およびその誘導体が、芳香族複素五員環式構造を有するものとしては、例えば化学式B21〜23に示す化合物およびその誘導体が挙げられる。また、三次元網目構造を有する化合物としては例えば化学式B24に示す化合物およびその誘導体が挙げられる。
(窒素原子上にラジカルを有する化合物)
本発明の活物質として用いられる窒素原子上にラジカルを有する化合物は、分子構造において窒素原子上にラジカルを有している。例としては、島村修ほか著、「遊離基反応」、24頁−34頁(東京化学同人、1964年)に述べられているアミノ基上にラジカルを有する化合物、化学式(C8)に示したフェルダジル基上にラジカルを有する化合物、
化学式(C9)に示したヒドラジル基上にラジカルを有する化合物、
大河原信著、「高分子の化学反応」、340頁−346頁(化学同人、1972年)に述べられている高分子化合物が挙げられる。
より具体的には、化学式(C10)で表されるロフィン誘導体、化学式(C11)で表されるテトラフェニルピロール誘導体、化学式(C12)で表されるフェノチアジン誘導体、化学式(C13)で表される2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル、化学式(C14)で表される1,1,5,5−テトラフェニル−1,2,4,5−テトラアザ−2−ペンテン誘導体、化学式(C15)で表される1,3,5−トリフェニルフェルダジル、および化学式(C16)、(17)で表されるトリフェニルフェルダジル基を有する化合物、化学式(C18)から(25)で表されるトリフェニルフェルダジル基を有する高分子化合物、化学式(C26)から(28)で表されるアミノトリアジン構造を有する高分子化合物が挙げられる。
(上記各式においてnは1から8を表す。)
本発明において窒素原子上にラジカルを有する化合物の分子量は特に限定されず、必要に応じて低分子化合物から高分子化合物まで利用できる。高分子化合物は、一般に電解液に対する溶解性が低分子化合物に比べて低いため、電解液への溶解による容量低下が少ない。高分子化合物としては、化学式C18から化学式C28、およびC31、C32に示した構造の化合物が挙げられる。また、その他にポリオレフィン構造、ポリアセチレン、ポリフェニレン構造、芳香族複素五員環構造をもつ高分子化合物が挙げられる。また、高分子化合物は、三次元網目構造であってもよい。本発明の二次電池において活物質である窒素原子上にラジカルを有する化合物は固体状態であっても、また、電解質へ溶解または分散した状態であってもよい。ただし、固体状態で用いる場合、電解液への溶解による容量低下が少ないため、電解液に対し不溶性または低溶解性のものが好ましい。また、本発明の二次電池において活物質である窒素原子上にラジカルを有する化合物は、通常単独で用いられるが、二種類以上を組み合わせて用いても良い。また、他の活物質と組み合わせて用いても良い。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
まず、実施例1〜5で用いた化合物を以下に示す。
実施例1
ガス精製装置を備えたドライボックス中でアルゴンガス雰囲気下、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体60mgに1mol/lのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液(混合比1:1)からなる電解液140mgを混合し、テトラヒドロフラン1130mgを加えて室温で溶解させ、ゲル電解質テトラヒドロフラン溶液を作製した。
続いてガラス製容器に、ラジカル化合物として、ニトロキシルラジカル化合物の1つで、前掲の化学式1で示す分子構造を有する2,2,6,6-テトラメチルピペリドキシルラジカル(TEMPOラジカル)30mgを入れ、導電補助材としてグラファイト粉末60mgを混合し、そこにイオン伝導補助材として前述のゲル電解質テトラヒドロフラン溶液200mgを加えて混合した。その後、テトラヒドロフラン1000mg を加えて全体が均一になるまでさらに混合したところ、黒色のスラリーが得られた。得られたスラリー200mg を、リード線を備えたアルミニウム箔(面積:1.5cm×1.5cm、厚さ:100μm)の表面に滴下し、ワイヤーバーで全体が均一な厚さとなるように展開した。室温で60分放置したところ、溶剤のテトラヒドロフランが気化し、アルミニウム箔上にTEMPOラジカルを含む有機化合物の層が形成された。
この塗膜の一部を取って粉砕し、電子スピン共鳴スペクトルを測定した。ところ、スピン濃度の測定は、JEOL-JES-FR30 型ESRスペクトロメーターを用い、マイクロ波出力4mW、変調周波数100khz、変調幅79μTの条件下で335.9mT±5mTの範囲で測定した。吸収面積強度は上記の方法で得られた一次微分型のESRスペクトルを2回積分して求め、同一条件で測定した既知試料の吸収面積強度と比較してスピン濃度を測定した。その結果、スピン濃度は1021spins/g以上であり、初期状態でラジカルを形成していることがわかった。
次に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体600mgに1mol/lのLiPF6 を含むエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液(混合比1:1)からなる電解液1400mg を混合し、テトラヒドロフラン11.3gを加えて室温で撹拌した。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が溶解した後、段差をつけたガラス板上に塗布し、厚さが1mmとなるようにした。1時間放置し、溶剤のテトラヒドロフランを自然乾燥させると、ガラス板上に厚さ150μmのゲル電解質膜が得られた。
次に、上記のTEMPOラジカルを含む有機化合物の層を形成したアルミニウム箔に、2.0cm×2.0cmに切り出したゲル電解質膜を積層し、さらに、リード線を備えたリチウム張り合わせ銅箔(リチウム膜厚30μm、銅箔の膜厚20μm)を重ね合わせた。全体を厚さ5mm のポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池を作製した。
以上のように作製した二次電池に対して、TEMPOラジカルを含む有機化合物の層を形成したアルミニウム箔を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1mA の定電流で放電を行った。結果を図3に示すが、2.3V付近に電圧平坦部が認められ、二次電池として動作していることがわかった。また、放電後の試料からTEMPOラジカルを含む化合物の層を一部切り取り、前述の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1019spins/g以下であった。このことから、TEMPOラジカルは放電が終わった状態において、リチウムイオンとの結合を形成し、二次電池反応に有効なラジカルが消失したものと考えられた。
さらに同様にして二次電池を作製し、充放電に伴う電圧の変化を測定した。充放電サイクルを10回繰り返した結果を図4に示す。充放電を繰り返しても放電曲線に平坦部が認められ、二次電池としても動作していることがわかった。
ニトロキシルラジカル化合物のうち、実施例1で用いたTEMPOラジカルに代えて、化学式2、化学式3に示すような化合物、化学式4〜6に示すような高分子化合物を用いて二次電池を作製しても、実施例1と同様に二次電池としての動作が確認された。
比較例1
実施例1のガラス製容器にTEMPOラジカルを含まない以外は実施例1と同様の方法で導電補助材、イオン伝導補助材、およびエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液、テトラヒドロフランを加えて混合し、黒色のスラリーを得た。その後、実施例1と同様の方法でアルミニウム箔上にTEMPOラジカルを含まない化合物の層を形成した。この層の一部を取って実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1019spins/g以下であり、ラジカルの濃度は小さいことがわかった。
次に、上記のTEMPOラジカルを含まない化合物の層を形成したアルミニウム箔に、実施例1のゲル電解質膜を積層し、さらに実施例1のリチウム張り合わせ銅箔を重ね合わせた。最後に実施例1と同様に全体をポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池とした。
以上のように作製した二次電池に対して、TEMPOラジカルを含まない化合物の層を形成したアルミニウム箔を正極、リチウム貼り合せ銅箔を負極として、0.1mA の定電流で放電を行った。結果を図3に示すが、二次電池としての挙動は示さなかった。また、0.1mA の定電流を流し充電を試みたところ、電圧は瞬間的に上昇して3.0Vを超え、再び放電しても電圧曲線に平坦部は認められなかった。このことから、この電池の構成は二次電池として動作しないことがわかった。
実施例2
実施例1のガラス製容器にTEMPOラジカルに代えて、フェノキシルラジカル化合物の1つで、前掲の化学式7で示す分子構造を有するガルビノキシルラジカルを用いる以外は実施例1と同様の方法で導電補助材、イオン伝導補助材、およびエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液、テトラヒドロフランを加えて混合し、黒色のスラリーを得た。その後、実施例1と同様の方法でアルミニウム箔上にガルビノキシルラジカルを含む化合物の層を形成した。この層の一部を切り取って実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1021spins/g以上であり、初期状態でラジカルを形成していることがわかった。
次に、上記のガルビノキシルラジカルを含む化合物の層を形成したアルミニウム箔に、実施例1のゲル電解質膜、およびリチウム張り合わせ銅箔を順に重ね合わせた。最後に実施例1と同様に全体をポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池に対して、ガルビノキシルラジカルを含む化合物の層を形成したアルミニウム箔を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1mAの定電流で放電を行った。結果を図3に示すが、2.3V および2.0V、1.5V付近に平坦部が認められ、二次電池として動作していることがわかった。また、放電後の試料からガルビノキシルラジカルを含む化合物の層を一部切り取り、実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1019spins/g以下であった。このことから、ガルビノキシルラジカルは放電が終わった状態において、リチウムイオンとの結合を形成し、二次電池反応に有効なラジカルが消失したものと考えられる。
さらに実施例1と同様の方法で充放電に伴う電池電圧の変化を測定した。その結果、繰り返し充放電が可能で二次電池としても動作していることがわかった。
フェノキシルラジカル化合物のうち、実施例2で用いたガルビノキシルラジカルに代えて、化学式8に示すような化合物、化学式9、化学式10に示すような高分子化合物を用いて二次電池を作製しても、実施例2と同様に二次電池としての動作が確認された。
実施例3
実施例1のガラス製容器にTEMPOラジカルに代えて、ヒドラジルラジカル化合物の1つで、前掲の化学式11で示す分子構造を有する2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジルラジカル(DPPHラジカル)を用いる以外は実施例1と同様の方法で導電補助材、イオン伝導補助材、およびエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液、テトラヒドロフランを加えて混合し、黒色のスラリーを得た。
その後、実施例1と同様の方法でアルミニウム箔上にDPPHラジカルを含む化合物の層を形成した。この層の一部を切り取って実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1021spins/g以上であり、初期状態でラジカルを形成していることがわかった。
次に、上記のDPPHラジカルを含む化合物の層を形成したアルミニウム箔に、実施例1のゲル電解質、およびリチウム張り合わせ銅箔を順に重ね合わせた。最後に実施例1と同様に全体をポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池に対して、DPPHラジカルを含む化合物の層を形成した銅箔を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1mAの定電流で放電を行った。結果を図3に示すが、3.1V 、および2.5V付近に平坦部が認められ、二次電池として動作していることがわかった。また、放電後の試料からDPPHラジカルを含む化合物の層を一部切り取り、実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1019spins/g以下であった。このことから、DPPHラジカルは放電が終わった状態において、リチウムイオンとの結合を形成し、二次電池反応に有効なラジカルは消失したものと考えられる。
さらに実施例1と同様の方法で充放電に伴う電池電圧の変化を測定した。その結果、繰り返し充放電が可能で二次電池としても動作していることがわかった。
ヒドラジルラジカル化合物のうち、実施例3で用いたDPPHラジカルに代えて、化学式12、化学式13に示すような化合物、化学式14、化学式15に示すような高分子化合物を用いて二次電池を作製しても、実施例3と同様に二次電池としての動作が確認された。
実施例4
実施例1のガラス製容器にTEMPOラジカルに代えて、前掲の化学式16で示す分子構造を有するリチウム-2,4,6-トリターシャリーブチルフェノキシドを用いる以外は実施例1と同様の方法で導電補助材、イオン伝導補助材、およびエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液、テトラヒドロフランを加えて混合し、黒色のスラリーを得た。その後、実施例1と同様の方法でアルミニウム箔上にリチウム-2,4,6-トリターシャリーブチルフェノキシドを含む化合物の層を形成した。この層の一部を切り取って実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1019spins/g以下であり、初期状態でラジカルを有していないことがわかった。
次に、上記のリチウム-2,4,6-トリターシャリーブチルフェノキシドを含む化合物の層を形成したアルミニウム箔に、実施例1のゲル電解質、およびリチウム張り合わせ銅箔を順に重ね合わせた。最後に実施例1と同様に全体をポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池に対して、リチウム-2,4,6-トリターシャリーブチルフェノキシドを含む化合物の層を形成した銅箔を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1mAの定電流で充電を行った。電池電圧が3Vになったら電圧を一定に保ち、電流値が0.01mAになった時点で充電を終了した。その後5分間のインターバルをおいて、再び放電を開始すると放電曲線が得られた。その結果2.3V 付近に平坦部が認められ、二次電池として動作していることがわかった。また、充電が終わった直後の試料からリチウム-2,4,6-トリターシャリーブチルフェノキシドを含む化合物の層を一部切り取り、実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1021spins/g以上であった。このことから、リチウム-2,4,6-トリターシャリーブチルフェノキシドは充電が終わった状態において2,4,6-トリターシャリーブチルフェノキシルラジカルの状態に変化していると考えられた。
さらに実施例1と同様の方法で充放電に伴う電池電圧の変化を測定した。その結果、繰り返し充放電が可能で二次電池としても動作していることがわかった。
実施例5
実施例4と同様の方法でアルミニウム箔上にリチウム-2,4,6-トリターシャリーブチルフェノキシドを含む化合物の層を形成した。この層の一部を切り取って実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1019spins/g以下であり、初期状態でラジカル濃度が小さいことがわかった。
次に、厚さ20μmの銅箔上にポリフッ化ビニリデン、N−メチル−2−ピロリドン、粉末石油コークス、アセチレンブラックを1:30:20:1の重量比で混合したスラリーを流延し、ワイヤーバーを用いて均一に成形した。100℃で2時間真空乾燥させた後、1.5cm×1.5cmの大きさに切り取り、粉末石油コークスを含む電極層を得た。
上記のリチウム-2,4,6-トリターシャリーブチルフェノキシドを含む化合物の層を形成したアルミニウム箔に、実施例4のゲル電解質、および粉末石油コークスを含む電極層を順に重ね合わせた。最後に実施例1と同様に全体をポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池に対して、リチウム-2,4,6-トリターシャリーブチルフェノキシドを含む化合物の層を形成した銅箔を正極、粉末石油コークスの層を形成した銅箔を負極として、0.1mAの定電流で充電を行った。電池電圧が3Vになったら電圧を一定に保ち、電流値が0.01mAになった時点で充電を終了した。その後5分間のインターバルをおいて、放電を開始すると放電曲線が得られた。その結果2.0V 付近に平坦部が認められ、二次電池として動作していることがわかった。また、充電が終わった直後の試料からリチウム-2,4,6-トリターシャリーブチルフェノキシドを含む化合物の層を一部切り取り、実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1021spins/g以上であった。このことから、リチウム-2,4,6-トリターシャリーブチルフェノキシドは充電が終わった状態において2,4,6-トリターシャリーブチルフェノキシルラジカルの状態に変化していると考えられた。さらに実施例1と同様の方法で充放電に伴う電池電圧の変化を測定した。その結果、繰り返し充放電が可能で二次電池としても動作していることがわかった。
実施例6
ガス精製装置を備えたドライボックス中でアルゴンガス雰囲気下、ガラス製容器に化学式(A26)に示した分子構造を有する2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシルラジカル(TEMPOαラジカル)50 mgを入れ、補助導電材としてグラファイト粉末60 mgを混合し、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体20 mgとテトラヒドロフラン1 gを加えて、全体が均一になるまでさらに数分間混合したところ、黒色のスラリーが得られた。使用したTEMPOαラジカルを試料として実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1021 spins/g以上であった。
以上のようにして得られたスラリー200mgを、リード線を備えたアルミニウム箔(面積:1.5 cm×1.5 cm、厚さ:100μm)の表面に滴下し、ワイヤーバーで全体が均一な厚さとなるように展開した。これをそのまま室温で60分間放置したところ、溶剤のテトラヒドロフランが蒸発し、アルミニウム箔上にTEMPOαラジカルを含む層が形成された。
次に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体600 mgに1mol/lのLiPF6を電解質塩として含んだエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液(混合比1:1)からなる電解液1400 mgを混合し、テトラヒドロフラン11.3 gを加えて室温で攪拌した。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が溶解した後、段差をつけたガラス板上に塗布し、室温で一時間放置してテトラヒドロフランを自然乾燥させ、厚さが1 mmのキャストフィルムを得た。
次に、上で作製したTEMPOαラジカルを含む電極層を形成したアルミニウム箔に、2.0 cm×2.0 cmに切り出したゲル電解質膜を積層し、さらに、リード線を備えたリチウム張り合わせ銅箔(リチウム膜厚30μm、銅箔の膜厚20μm)を重ね合わせた。その後、全体を厚さ5 mm のポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池を試料として、TEMPOαラジカルを含む電極層を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1 mAの定電流で放電を行うと、二次電池としての動作が確認された。さらに、この二次電池を繰り返し充放電したところ10サイクル以上にわたって充放電が可能な二次電池として動作することがわかった。
実施例7
ガス精製装置を備えたドライボックス中でアルゴンガス雰囲気下、ガラス製容器に化学式(A12)に示した分子構造を有するジブチルニトロキシルラジカル(DBNOラジカル)50 mgを入れ、補助導電材としてグラファイト粉末60 mgを混合し、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体20 mgとテトラヒドロフラン1 gを加えて、全体が均一になるまでさらに数分間混合したところ、黒色のスラリーが得られた。使用したDBNOラジカルを試料として実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1021 spins/g以上であった。
以上のようにして得られたスラリー200 mgをリード線を備えたアルミニウム箔(面積:1.5 cm×1.5 cm、厚さ:100μm)の表面に滴下し、ワイヤーバーで全体が均一な厚さとなるように展開した。これをそのまま室温で60分間放置したところ、溶剤のテトラヒドロフランが蒸発し、アルミニウム箔上にDBNOラジカルラジカルを含む層が形成された。
次に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体600 mgに1mol/lのLiPF6を電解質塩として含んだエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液(混合比1:1)からなる電解液1400 mgを混合し、テトラヒドロフラン11.3 gを加えて室温で攪拌した。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が溶解した後、段差をつけたガラス板上に塗布し、室温で一時間放置してテトラヒドロフランを自然乾燥させ、厚さが1 mmのキャストフィルムを得た。
次に、上で作製したDBNOラジカルを含む電極層を形成したアルミニウム箔に、2.0 cm×2.0 cmに切り出したゲル電解質膜を積層し、さらに、リード線を備えたリチウム張り合わせ銅箔(リチウム膜厚30μm、銅箔の膜厚20μm)を重ね合わせた。その後、全体を厚さ5 mm のポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池を試料として、DBNOラジカルを含む電極層を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1 mAの定電流で放電を行うと、二次電池としての動作が確認された。さらに、この二次電池を繰り返し充放電したところ10サイクル以上にわたって充放電が可能な二次電池として動作することがわかった。
実施例8
ガス精製装置を備えたドライボックス中でアルゴンガス雰囲気下、ガラス製容器に化学式(A21)に示した分子構造を有するジフェニルニトロキシルラジカル(DPNOラジカル)50 mgを入れ、補助導電材としてグラファイト粉末60 mgを混合し、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体20 mgとテトラヒドロフラン1 gを加えて、全体が均一になるまでさらに数分間混合したところ、黒色のスラリーが得られた。使用したDPNOラジカルを試料として実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1021 spins/g以上であった。
以上のようにして得られたスラリー200 mgをリード線を備えたアルミニウム箔(面積:1.5 cm×1.5 cm、厚さ:100μm)の表面に滴下し、ワイヤーバーで全体が均一な厚さとなるように展開した。これをそのまま室温で60分間放置したところ、溶剤のテトラヒドロフランが蒸発し、アルミニウム箔上にBPNOラジカルを含む層が形成された。
次に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体600 mgに1mol/lのLiPF6を電解質塩として含んだエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液(混合比1:1)からなる電解液1400 mgを混合し、テトラヒドロフラン11.3 gを加えて室温で攪拌した。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が溶解した後、段差をつけたガラス板上に塗布し、室温で一時間放置してテトラヒドロフランを自然乾燥させ、厚さが1 mmのキャストフィルムを得た。
次に、上で作製したDPNOラジカルを含む電極層を形成したアルミニウム箔に、2.0 cm×2.0 cmに切り出したゲル電解質膜を積層し、さらに、リード線を備えたリチウム張り合わせ銅箔(リチウム膜厚30μm、銅箔の膜厚20μm)を重ね合わせた。その後、全体を厚さ5 mm のポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池を試料として、DPNOラジカルを含む電極層を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1 mAの定電流で放電を行うと、二次電池としての動作が確認された。さらに、この二次電池を繰り返し充放電したところ10サイクル以上にわたって充放電が可能な二次電池として動作することがわかった。
実施例9
ガス精製装置を備えたドライボックス中でアルゴンガス雰囲気下、ガラス製容器に化学式(A33)に示した分子構造を有する3−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピロリジノキシルラジカル(TEMPOβラジカル)50 mgを入れ、補助導電材としてグラファイト粉末60 mgを混合し、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体20 mgとテトラヒドロフラン1 gを加えて、全体が均一になるまでさらに数分間混合したところ、黒色のスラリーが得られた。使用したラジカルを試料として実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1021 spins/g以上であった。
以上のようにして得られたスラリー200 mgをリード線を備えたアルミニウム箔(面積:1.5 cm×1.5 cm、厚さ:100μm)の表面に滴下し、ワイヤーバーで全体が均一な厚さとなるように展開した。これをそのまま室温で60分間放置したところ、溶剤のテトラヒドロフランが蒸発し、アルミニウム箔上にTEMPOβラジカルラジカルを含む層が形成された。
次に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体600 mgに1mol/lのLiPF6を電解質塩として含んだエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液(混合比1:1)からなる電解液1400 mgを混合し、テトラヒドロフラン11.3 gを加えて室温で攪拌した。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が溶解した後、段差をつけたガラス板上に塗布し、室温で一時間放置してテトラヒドロフランを自然乾燥させ、厚さが1 mmのキャストフィルムを得た。
次に、上で作製したTEMPOβラジカルを含む電極層を形成したアルミニウム箔に、2.0 cm×2.0 cmに切り出したゲル電解質膜を積層し、さらに、リード線を備えたリチウム張り合わせ銅箔(リチウム膜厚30μm、銅箔の膜厚20μm)を重ね合わせた。その後、全体を厚さ5 mm のポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池を試料として、TEMPOβラジカルを含む電極層を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1 mAの定電流で放電を行うと、二次電池としての動作が確認された。さらに、この二次電池を繰り返し充放電したところ10サイクル以上にわたって充放電が可能な二次電池として動作することがわかった。
実施例10
ガス精製装置を備えたドライボックス中でアルゴンガス雰囲気下、ガラス製容器に化学式(A39)に示した分子構造を有する3−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピロリノキシルラジカル(TEMPOγラジカル)50 mgを入れ、補助導電材としてグラファイト粉末60 mgを混合し、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体20 mgとテトラヒドロフラン1 gを加えて、全体が均一になるまでさらに数分間混合したところ、黒色のスラリーが得られた。使用したTEMPOγラジカルを試料として実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1021 spins/g以上であった。
以上のようにして得られたスラリー200 mgをリード線を備えたアルミニウム箔(面積:1.5 cm×1.5 cm、厚さ:100μm)の表面に滴下し、ワイヤーバーで全体が均一な厚さとなるように展開した。これをそのまま室温で60分間放置したところ、溶剤のテトラヒドロフランが蒸発し、アルミニウム箔上にTEMPOγラジカルを含む層が形成された。
次に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体600 mgに1mol/lのLiPF6を電解質塩として含んだエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液(混合比1:1)からなる電解液1400 mgを混合し、テトラヒドロフラン11.3 gを加えて室温で攪拌した。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が溶解した後、段差をつけたガラス板上に塗布し、室温で一時間放置してテトラヒドロフランを自然乾燥させ、厚さが1 mmのキャストフィルムを得た。
次に、上で作製したTEMPOγラジカルを含む電極層を形成したアルミニウム箔に、2.0 cm×2.0 cmに切り出したゲル電解質膜を積層し、さらに、リード線を備えたリチウム張り合わせ銅箔(リチウム膜厚30μm、銅箔の膜厚20μm)を重ね合わせた。その後、全体を厚さ5 mm のポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池を試料として、TEMPOγラジカルを含む電極層を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1 mAの定電流で放電を行うと、二次電池としての動作が確認された。さらに、この二次電池を繰り返し充放電したところ10サイクル以上にわたって充放電が可能な二次電池として動作することがわかった。
実施例11
ガス精製装置を備えたドライボックス中でアルゴンガス雰囲気下、ガラス製容器に化学式(A43)に示した分子構造を有するニトロニルニトロキシド化合物(NONO)50 mgを入れ、補助導電材としてグラファイト粉末60 mgを混合し、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体20 mgとテトラヒドロフラン1 gを加えて、全体が均一になるまでさらに数分間混合したところ、黒色のスラリーが得られた。使用したNONOを試料として実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1021 spins/g以上であった。
以上のようにして得られたスラリー200 mgをリード線を備えたアルミニウム箔(面積:1.5 cm×1.5 cm、厚さ:100μm)の表面に滴下し、ワイヤーバーで全体が均一な厚さとなるように展開した。これをそのまま室温で60分間放置したところ、溶剤のテトラヒドロフランが蒸発し、アルミニウム箔上にNONOを含む層が形成された。
次に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体600 mgに1mol/lのLiPF6を電解質塩として含んだエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液(混合比1:1)からなる電解液1400 mgを混合し、テトラヒドロフラン11.3 gを加えて室温で攪拌した。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が溶解した後、段差をつけたガラス板上に塗布し、室温で一時間放置してテトラヒドロフランを自然乾燥させ、厚さが1 mmのキャストフィルムを得た。
次に、上で作製したNONOを含む電極層を形成したアルミニウム箔に、2.0cm×2.0 cmに切り出したゲル電解質膜を積層し、さらに、リード線を備えたリチウム張り合わせ銅箔(リチウム膜厚30μm、銅箔の膜厚20μm)を重ね合わせた。その後、全体を厚さ5 mm のポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池を試料として、NONOを含む電極層を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1 mAの定電流で放電を行うと、二次電池としての動作が確認された。さらに、この二次電池を繰り返し充放電したところ10サイクル以上にわたって充放電が可能な二次電池として動作することがわかった。
実施例12
ガス精製装置を備えたドライボックス中でアルゴンガス雰囲気下、ガラス製容器に化学式B5に示した分子構造を有するガルビノキシル50 mgを入れ、補助導電材としてグラファイト粉末60 mgを混合し、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体20 mgとテトラヒドロフラン1 gを加えて、全体が均一になるまでさらに数分間混合したところ、黒色のスラリーが得られた。使用したガルビノキシルを試料として実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1021 spins/g以上であり、初期状態で化学式5に示したオキシラジカルを有する構造であることがわかった。
以上のようにして得られたスラリー200 mgをリード線を備えたアルミニウム箔(面積:1.5 cm×1.5 cm、厚さ:100μm)の表面に滴下し、ワイヤーバーで全体が均一な厚さとなるように展開した。これをそのまま室温で60分間放置したところ、溶剤のテトラヒドロフランが蒸発し、アルミニウム箔上にガルビノキシルラジカルを含む層が形成された。
次に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体600 mgに1mol/lのLiPF6を電解質塩として含んだエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液(混合比1:1)からなる電解液1400 mgを混合し、テトラヒドロフラン11.3 gを加えて室温で攪拌した。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が溶解した後、段差をつけたガラス板上に塗布し、室温で一時間放置してテトラヒドロフランを自然乾燥させ、厚さが1 mmのキャストフィルムを得た。
次に、上で作製したガルビノキシルラジカルを含む電極層を形成したアルミニウム箔に、2.0 cm×2.0 cmに切り出したゲル電解質膜を積層し、さらに、リード線を備えたリチウム張り合わせ銅箔(リチウム膜厚30μm、銅箔の膜厚20μm)を重ね合わせた。その後、全体を厚さ5 mm のポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池を試料として、ガルビノキシルラジカルを含む電極層を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1 mAの定電流で放電を行った。その結果、2.3 V付近に電圧平坦部が認められ、二次電池として動作していることがわかった。さらに、この二次電池を繰り返し充放電したところ10サイクル以上にわたって充放電が可能な二次電池として動作することがわかった。また、放電後の試料から正極層の一部を切り取り、実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1019 spins/g以下であった。このことから、ガルビノキシルラジカルは放電が終わった状態では、リチウムイオンとの結合を形成してラジカルが消失しているものと考えられた。
実施例13
ポリ(ビニル−ジ−ターシャリーブチルフェノール)50mgに等モルのフェリシアン化カリウムと水酸化ナトリウムを作用させてポリ(ビニル−ジ−ターシャリーブチルフェノキシラジカル)を得た。これを試料として実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1021 spins/g以上であり、初期状態で化学式B10に示したオキシラジカルを有する構造であることがわかった。
次に、実施例12のガルビノキシルに代えてポリ(ビニル−ジ−ターシャリーブチルフェノキシラジカル)を使う以外は実施例12と同様の方法で補助導電材、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラヒドロフランを加えて混合し、黒色のスラリーを得た。その後、実施例12と同様の方法でアルミニウム箔上にポリ(ビニル−ジ−ターシャリーブチルフェノキシラジカル)を含む化合物の層を形成した。
得られたポリ(ビニル−ジ−ターシャリーブチルフェノキシラジカル)を形成したアルミニウム箔に実施例12で作成した1mol/lのLiPF6を電解質塩として含んだエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液とフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体電解質からなるキャストフィルムを2.0cm×2.0 cmに切り出して積層し、実施例12と同様にリチウム貼り合せ箔を重ねて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池を試料として、ポリ(ビニル−ジ−ターシャリーブチルフェノキシラジカル)を含む電極層を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1 mAの定電流で放電を行った。その結果、2.4 V付近に電圧の平坦部が認められ、二次電池として動作していることがわかった。さらに、この二次電池の充放電に伴う電圧の変化を測定したところ二次電池として動作することがわかった。また、放電後の試料から正極層の一部を切り取り、実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1019 spins/g以下であった。このことから、正極のポリ(ビニル−ジターシャリーブチルフェノキシラジカル)は放電状態では、リチウムイオンとの結合等を形成してラジカルが消失しているものと考えられた。
実施例14
アセチル−ジターシャリーブチルフェノールをベンゼン中で5塩化モリブデンを用いて40℃で反応させ、ポリ(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニルアセチレン)を合成した。これに実施例13と同様にフェリシアン化カリウムと水酸化ナトリウムを作用させてポリ(アセチル−ジ−ターシャリーブチルフェノキシラジカル)を得た。これを試料として実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1021 spins/g以上であり、初期状態で化学式12に示したオキシラジカルを有する構造であることがわかった。
次に、実施例12のガルビノキシルに代えてポリ(アセチル−ジ−ターシャリーブチルフェノキシラジカル)を使う以外は実施例12と同様の方法で補助導電材、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラヒドロフランを加えて混合し、黒色のスラリーを得た。その後、実施例12と同様の方法でアルミニウム箔上にポリ(アセチル−ジターシャリーブチルフェノキシラジカル)を含む化合物の層を形成した。
得られたポリ(アセチル−ジターシャリーブチルフェノキシラジカル)を形成したアルミニウム箔に実施例12で作成した1mol/lのLiPF6を電解質塩として含んだエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液とフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体電解質からなるキャストフィルムを2.0cm×2.0 cmに切り出して積層し、実施例12と同様にリチウム貼り合せ箔を重ねて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池を試料として、ポリ(ビニル−ジ−ターシャリーブチルフェノキシラジカル)を含む電極層を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1 mAの定電流で放電を行った。その結果、3.3 V付近に電圧の平坦部が認められ、二次電池として動作していることがわかった。さらに、この二次電池の充放電に伴う電圧の変化を測定したところ二次電池として動作することがわかった。また、放電後の試料から正極層の一部を切り取り、実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1019 spins/g以下であった。このことから、正極のポリ(アセチル−ジターシャリーブチルフェノキシラジカル)は放電状態では、リチウムイオンとの結合等を形成してラジカルが消失しているものと考えられた。
実施例15
電解反応セルに0.25 MのLiAsF6、0.25 MのCuCl2、および0.5 Mのベンゼンを溶解、もしくは分散したニトロベンゼン溶液を入れ、2枚の白金板を挿入して電圧10 Vで電解反応を行った。その結果、陽極表面に膜厚10μmの導電性のポリパラフェニレンフィルムが生成した。反応終了後に電極を短絡させて電極から引き剥がした。その後、得られたポリパラフェニレンフィルムを真空容器に入れ、そのモノマー単位に対して0.1モルの酸素とともに450℃まで昇温し、2時間熱処理した。これを室温まで冷却し、試料とした。この試料のNMRスペクトル、IRスペクトルを測定したところ、その分子構造は化学式B9で示されるようにポリパラフェニレンの一部が酸素で置換されたセミキノンであると推定された。また、ESRスペクトルの測定結果より、得られた試料のスピン濃度は2×1021 spins/gであることがわかった。
次に、セミキノン構造を有する試料を直接アルミニウム箔に積層し、加圧して圧着した。このアルミニウム箔に実施例12で作成した1 mol/lのLiPF6を電解質塩として含んだエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液とフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体電解質からなるキャストフィルムを2.0 cm×2.0 cmに切り出して積層し、実施例12と同様にリチウム貼り合せ箔を重ねて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池を試料として、セミキノン構造を有する化合物を積層した電極を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1 mAの定電流で放電を行った。その結果、3.1 V付近に電圧の平坦部が認められ、二次電池として動作していることがわかった。さらに、この二次電池の充放電に伴う電圧の変化を測定したところ二次電池として動作することがわかった。また、放電後の試料から正極層の一部を切り取り、電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1019 spins/g以下であった。このことから、正極のセミキノン構造を有する化合物は放電状態では、リチウムイオンとの結合等を形成してラジカルが消失しているものと考えられた。
実施例16
真空容器に1,3,5-トリスジアゾ-シクロヘキサン-2,4,6-トリオンの粉末を入れ、真空下で600℃まで昇温してそのまま20時間保持した。これを室温まで冷却し、試料とした。この試料のNMRスペクトル、IRスペクトルを測定したところ、その分子構造は化学式B4で示される基本構造を有するように網目状のポリオキシラジカルであると推定された。また、ESRスペクトルの測定結果より、得られた試料のスピン濃度は8×1021 spins/gであることがわかった。
次に、実施例12のガルビノキシルに代えて網目状のポリオキシラジカルと推定される化合物を使う以外は実施例12と同様の方法で補助導電材、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラヒドロフランを加えて混合し、黒色のスラリーを得た。その後、実施例12と同様の方法でアルミニウム箔上に網目状のポリオキシラジカルと推定される化合物の層を形成した。
得られた網目状のポリオキシラジカルと推定される化合物の層を形成したアルミニウム箔に実施例12で作成した1 mol/lのLiPF6を電解質塩として含んだエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液とフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体電解質からなるキャストフィルムを2.0 cm×2.0 cmに切り出して積層し、実施例12と同様にリチウム貼り合せ箔を重ねて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池を試料として、網目状のポリオキシラジカルと推定される化合物を含む電極層を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1 mAの定電流で放電を行った。その結果、3.3 V付近に電圧の平坦部が認められ、二次電池として動作していることがわかった。さらに、この二次電池の充放電に伴う電圧の変化を測定したところ二次電池として動作することがわかった。また、放電後の試料から正極層の一部を切り取り、実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1019 spins/g以下であった。このことから、正極の網目状のポリオキシラジカルと推定される化合物は放電状態では、リチウムイオンとの結合等を形成してラジカルが消失しているものと考えられた。
実施例17
活物質として化学式(C29)で示したジフェニルピクリルヒドラジルを用いた二次電池の製造方法を以下に示す。なお、あらかじめジフェニルピクリルヒドラジルの電子スピン共鳴スペクトルを測定し、スピン濃度が1021spins/g以上であることを確認した。
ガス精製装置を備えたドライボックス中でアルゴンガス雰囲気下、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体60mgに1mol/lのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液(混合比1:1)からなる電解液140mgを混合し、テトラヒドロフラン1130mgを加えて室温で溶解させ、ゲル電解質のテトラヒドロフラン溶液を作製した。次に、ガラス製容器にジフェニルピクリルヒドラジル30mgを入れ、導電補助材としてグラファイト粉末60mgを混合し、さらにイオン伝導補助材として前述のゲル電解質のテトラヒドロフラン溶液200mgを加えて混合した。ここに、テトラヒドロフラン1000mgを加えて3時間撹拌をおこうことにより黒色のスラリーを得た。以上のようにして得られたスラリー200mgをリード線を備えたアルミニウム箔(面積:1.5 cm×1.5 cm、厚さ:100μm)の表面に滴下し、ワイヤーバーで全体が均一な厚さとなるように展開した。これをそのまま室温で3時間放置したところ、溶剤のテトラヒドロフランがほぼ揮発し、アルミニウム箔上にジフェニルピクリルヒドラジルを含む電極層を形成した。
次に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体600 mgに1mol/lのLiPF6を電解質塩として含んだエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液(混合比1:1)からなる電解液1400 mgを混合し、テトラヒドロフラン11.3 gを加えて室温で攪拌した。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が溶解した後、ガラス枠をつけたガラス板上に塗布し、室温で一時間放置してテトラヒドロフランを自然乾燥させた。その結果、ガラス板上に厚さが300μmのキャストフィルムを得た。
次に、上で作製したジフェニルピクリルヒドラジルを含む電極層を形成したアルミニウム箔に、2.0cm×2.0cmに切り出したゲル電解質膜を積層し、さらに、リード線を備えたリチウム張り合わせ銅箔(リチウム膜厚30μm、銅箔の膜厚20μm)を重ね合わせた。その後、全体を厚さ5 mmのポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池の構成とした。
以上のように作製した二次電池を試料として、ジフェニルピクリルヒドラジルを含む電極層を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1mAの定電流で放電を行った。その結果、5時間程度2.5V付近で電圧は一定となり、さらに電圧が1V以下となるまで12時間要した。さらに充放電を10回繰り返しても2.5V付近で電圧が一定となることを確認した。これより、この二次電池は二次電池として動作していることがわかった。また、放電後の試料から正極層の一部を切り取り、電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1019 spins/g以下であった。これは、ジフェニルピクリルヒドラジルは放電時における電極反応において、ラジカルを有さない化合物に変化したためであると考えられる。正極においてジフェニルピクリルヒドラジルが活物質となり、この二次電池は動作したと考えられる。
実施例18
実施例17と同様の方法で、但し、ジフェニルピクリルヒドラジルに代えて、下記の化学式(C30)で示す分子構造を有するトリフェニルフェルダジルを用いて二次電池を作製し、放電を行った。なお、あらかじめトリフェニルフェルダジルの電子スピン共鳴スペクトルを測定し、スピン濃度が1021spins/g以上であることを確認した。
以上のように作製した二次電池に対して、トリフェニルフェルダジルを含む化合物の層を形成したアルミニウム箔を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1mAの定電流で放電を行った。その結果、2.3V付近に平坦部が認められ、また、1V以下となるまでは8時間要した。また、放電後の試料から正極層の一部を切り取り、実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1019 spins/g以下であった。これは、トリフェニルフェルダジルが放電時における電極反応において、ラジカルを有さない化合物に変化したためであると考えられる。正極においてトリフェニルフェルダジルが活物質となり、この二次電池は動作したと考えられる。
実施例19
実施例17と同様の方法で、但し、ジフェニルピクリルヒドラジルに代えて、下記のフェルダジル構造を有する化学式(C31)で表される高分子化合物を用いて二次電池を作製し、放電を行った。なお、あらかじめ化学式(C31)で表される分子構造を有する高分子化合物の電子スピン共鳴スペクトルを測定し、スピン濃度が1021spins/g以上であることを確認した。
以上のように作製した二次電池に対して、化学式(C31)で表される分子構造を有する高分子化合物の層を形成したアルミニウム箔を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1mAの定電流で放電を行った。その結果、2.3V付近に平坦部が認められ、また、1V以下となるまでは12時間要した。
実施例20
実施例17と同様の方法で、但し、ジフェニルピクリルヒドラジルに代えて、下記のアミノトリアジン構造を有する化学式(C32)で表される高分子化合物を用いて二次電池を作製し、放電を行った。なお、あらかじめ化学式(C32)で表される分子構造を有する高分子化合物の電子スピン共鳴スペクトルを測定し、スピン濃度が1021spins/g以上であることを確認した。
以上のように作製した二次電池に対して、化学式(C32)で表される分子構造を有する高分子化合物の層を形成したアルミニウム箔を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1mAの定電流で放電を行った。その結果、2.3V付近に平坦部が認められ、また、1V以下となるまでは10時間要した。
比較例2
実施例17と同様の方法で、ただし活物質として窒素原子上にラジカルを有する化合物を用いずに二次電池を作製した。0.1mAの定電流で放電を行ったところ、電圧は約50分で0.8Vまで急激に低下した。また、0.1mA の定電流を流し充電を試みたところ、電圧は瞬間的に上昇して3.0Vを超え、再び放電しても電圧は約50分で0.8Vまで急激に低下した。このことから、この電池の構成は二次電池として動作しないことがわかった。
実施例21
実施例1で作製したTEMPOラジカルを含む有機化合物の層を形成したアルミニウム箔上に実施例1の方法ゲル電解質膜を積層し、さらに、リード線を備えたリチウム張り合わせ銅箔を重ね合わ、全体を厚さ5mm のポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、圧力を加えて二次電池を作製した。
以上のように作製した二次電池に対して、TEMPOラジカルを含む有機化合物の層を形成したアルミニウム箔を正極、リチウム張り合わせ銅箔を負極として、0.1mA の定電流で充電を行った。その結果、3.5V付近に電圧平坦部が認められ、二次電池として動作していることがわかった。また、充電後の試料からTEMPOラジカルを含む化合物の層を一部切り取り、実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1019spins/g以下であった。このことから、TEMPOラジカルは充電が終わった状態において、電解質アニオンとの結合を形成し、ラジカルが消失しているものと考えられる。この二次電池を 0.1mA の定電流で放電し、実施例1の方法で電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、スピン濃度は1021spins/g以上であり、この正極は放電によって電解質アニオンとの結合が開裂し、ラジカル化合物が生成するものであることが考えられた。
さらに同様にして二次電池を作製し、充放電に伴う電圧の変化を測定した。充放電を繰り返しても放電曲線に平坦部が認められ、二次電池としても動作していることがわかった。