JP4902159B2 - セラミックス焼結体及びガラスの分離回収方法 - Google Patents

セラミックス焼結体及びガラスの分離回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、セラミックス焼結体及びガラスの分離回収方法に関し、特に、ガラスから分離した導電性セラミックス焼結体のリサイクルに有用なセラミックス焼結体及びガラスの分離回収方法に関する。
自動車リアガラスのガラス板には、図2に示すように、各種のガラス板とは異質の物質が付着している。図2の自動車リアガラス50において、ガラス板52には、ガラス板52を車体に固着するための接着剤や、この接着剤を車外側から隠蔽するための暗色セラミックス焼結体53や、ガラス板52の曇りを除去したりアンテナ機能をガラス板52に付与したりするための導電性セラミックス焼結体51等のガラス板とは異質の物質が付着している。
このガラス板52をリサイクル可能な状態で回収するために、ガラス板52から導電性セラミックス焼結体51を除去する方法として、導電性セラミックス焼結体51に向けて微粒子を含む流体をノズルから噴出し、導電性セラミックス焼結体51に対し微粒子を含む流体を衝突させ、ガラス板52から導電性セラミックス焼結体51を削り取る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−80461号公報
しかしながら、上記方法において、微粒子を含む流体を衝突させてガラス板52から導電性セラミックス焼結体51を削り取るので、削り取った導電性セラミックス焼結体51にガラス板52の破片が混入する。そのため、ガラス板52をリサイクル可能な状態で回収することはできるが、導電性セラミックス焼結体51を構成する導電材料(例えば銀等)をリサイクル可能な状態で回収することはできない。
本発明の目的は、ガラス表面の一部に暗色セラミックス焼結体が形成され、ガラス面上及び暗色セラミックス焼結体上に導電性セラミックス焼結体が形成されたセラミックス焼結体付きガラスから、暗色セラミックス焼結体、導電性セラミックス焼結体及びガラスを分別回収することができる分回収方法を提供することにある。
上述の目的を達成するために、請求項1記載のセラミックス焼結体及びガラスの分離回収方法は、ガラス表面の一部に暗色セラミックス焼結体が形成され、前記ガラス表面上及び前記暗色セラミックス焼結体上に導電性セラミックス焼結体が形成されたセラミックス焼結体付きガラスから、前記導電性セラミックス焼結体、前記暗色セラミックス焼結体及び前記ガラスを分別回収する方法であって、前記セラミックス焼結体付きガラスを、塩酸を含む酸性水溶液に浸漬し、該塩酸を含む酸性水溶液によって前記導電性セラミックス焼結体と前記暗色セラミックス焼結体との界面及び前記導電性セラミックス焼結体と前記ガラスとの界面における前記導電性セラミックス焼結体を選択的にエッチングして前記塩酸を含む酸性水溶液を前記両界面に浸透させて前記導電性セラミックス焼結体を前記一部に暗色セラミックス焼結体が形成されたガラスから分離して前記導電性セラミックス焼結体を回収する第1の浸漬ステップと、前記導電性セラミックス焼結体が分離された前記一部に暗色セラミックス焼結体が形成されたガラスを、フッ素イオンを含む酸性水溶液に浸漬し、該フッ素イオンを含む酸性水溶液を前記暗色セラミックス焼結体と前記ガラスとの界面に浸透させて前記暗色セラミックス焼結体と前記ガラスとを分離して前記暗色セラミックス焼結体及び前記ガラスを回収する第2の浸漬ステップとを備えることを特徴とする。
請求項2記載の分離回収方法は、請求項1記載の分離回収方法において、前記塩酸を含む酸性水溶液における塩酸の濃度が0.27mol/L(1.0wt%)以上であることを特徴とする。
請求項3記載の分離回収方法は、請求項1又は2記載の分離回収方法において、前記フッ素イオンを含む酸性水溶液における前記フッ素イオンは、HF であり、HF の濃度が0.005mol/L以上であることを特徴とする。
本発明によれば、塩酸を含む酸性水溶液及びフッ素イオンを含む酸性水溶液が、ガラス及び導電性セラミックス焼結体の少なくとも一方に対するエッチング力を有するので、ガラス及び導電性セラミックス焼結体の界面へ浸透し易くすることができ、もって、ガラスから分離された導電性セラミックス焼結体をリサイクル可能な状態で回収することができる。
本発明によれば、分離用水溶液は酸性水溶液であるので、ガラス及び導電性セラミックス焼結体の少なくとも一方を溶解し、界面におけるガラス及び導電性セラミックス焼結体の少なくとも一方に対するエッチング力を向上させることができ、もってガラス及び導電性セラミックス焼結体の界面へ分離用水溶液が浸透し易くすることができる。
本発明によれば、酸性水溶液は強酸を含むので、導電性セラミックス焼結体に対するエッチング力をさらに向上させることができる。
本発明によれば、強酸は塩酸であるので、塩素イオンが導電性セラミックス焼結体に含まれる銀を溶解し、導電性セラミックス焼結体の表面からガラスとの界面に容易に浸透して導電性セラミックス焼結体に対するエッチング力をさらに向上させることができ、もって暗色セラミックス焼結体を分離することなく、導電性セラミック焼結体のみを選択的にガラスから分離することができる。
本発明によれば、塩酸の濃度が0.27mol/L(1.0wt%)であるので、導電性セラミックス焼結体に対するエッチング力をさらに向上させることができる。
本発明によれば、酸性水溶液はフッ素イオンを含むので、フッ素イオンが導電性セラミックス焼結体の表面からガラスとの界面に容易に浸透して導電性セラミックス焼結体に対するエッチング力をさらに向上させることができる。
本発明によれば、フッ素イオンとしてHF を含むので、ガラスに対して高いエッチング力を有する。
本発明によれば、フッ素イオンとしてのHF の濃度が0.005mol/L以上であるので、ガラスに対するエッチング力を向上させることができる。
本発明において、分離用水溶液錯体形成成分を含む場合、ガラス中のアルカリ土類金属元素を捕捉することによりガラスを侵食し、フッ素イオンがガラスに含まれるシロキサン結合を破壊する効率を向上させ、もってガラスと導電性セラミックスとを容易に分離することができる。
本発明において、錯体形成成分は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等のアミノカルボン酸及びその塩と、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸及びその塩と、リン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)、トリポリリン酸(STPP)等のホスホン酸及びその塩とから成る群から選ばれる1又は2以上であることが好ましく、これによって、分離用水溶液が酸性であってもエッチングレートを向上させることができる。
本発明において、酸性水溶液界面活性剤を含む場合、酸性水溶液を導電性セラミックス焼結体の表面からガラスとの界面に容易に浸透させることができると共に、酸性水溶液を暗色セラミックス焼結体とガラスとの界面に容易に浸透させることができる。
本発明によれば、塩酸を含む酸性水溶液又はフッ素イオンを含む酸性水溶液に導電性セラミックス焼結体付きガラスを浸漬するので、ガラスから分離された導電性セラミックス焼結体をリサイクル可能な状態で回収することができる。
本発明によれば、暗色セラミックス焼結体上に導電性セラミックス焼結体が付着したガラスを塩酸を含む酸性水溶液に浸漬して暗色セラミックス焼結体付きガラスと導電性セラミックス焼結体とに分離し、分離された暗色セラミックス焼結体付きガラスをフッ素イオンを含む酸性水溶液に浸漬して暗色セラミックス焼結体とガラスとに分離するので、暗色セラミックス焼結体上に導電性セラミックス焼結体が付着したガラスを効率良く分別回収することができる。
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、ガラスと導電性セラミックス焼結体とを分離する導電性セラミックス焼結体の分離用水溶液が、ガラス及び導電性セラミックス焼結体の少なくとも一方に対するエッチング力を有すると、ガラスから分離された導電性セラミックス焼結体をリサイクル可能な状態で回収することができることを見出した。また、暗色セラミックス焼結体上に導電性セラミックス焼結体が形成された導電性セラミックス焼結体付きガラスについても、前記導電性セラミックス焼結体付きガラスから暗色セラミックス焼結体、導電性セラミックス焼結体及びガラスをそれぞれ分別回収することができることを見出した。
本発明は、上記研究の結果に基づいてなされたものである。
以下、本発明の実施の形態に係る導電性セラミックス焼結体の分離用水溶液及び分離方法を説明する。
本発明の実施の形態に係る導電性セラミックス焼結体の分離用水溶液として、塩酸(以下、「タイプA処理液」という)を作製した。なお、酸性の分離用水溶液は塩酸に限定されるものではなく、硝酸、若しくは硫酸等の強酸、又はスルファミン酸、リン酸、酢酸、蟻酸、塩酸、若しくは炭酸等の弱酸を用いてもよい。
また、本発明の実施の形態に係る導電性セラミックス焼結体の分離用水溶液として、フッ化水素酸(以下、「タイプB処理液」という)、及びフッ化アンモニウムと酸の混合物(以下、「タイプC処理液」という)を作製した。なお、フッ素イオンを含む分離用水溶液はこれらに限定されるものではなく、硫酸アンモニウムとフッ化水素酸の混合物、フッ化水素酸と酸の混合物、又は珪フッ化水素酸等を用いてもよい。これらの分離用水溶液はいずれもシロキサン結合を切断するイオン種であるHF を含む。フッ化水素酸と酸の混合物において、混合される酸としてスルファミン酸、リン酸、硝酸、硫酸、酢酸、蟻酸、塩酸、又は炭酸等を用いることができる。
まず、濃度が8.2mol/L(30wt%)の濃塩酸を純水で希釈することにより、タイプA処理液を作製した。
タイプA処理液は塩酸を含むので、導電性セラミックス焼結体に含まれた金属成分を溶解し、導電性セラミックス焼結体をエッチングすることができ、もってガラス及び導電性セラミックス焼結体の界面へ浸透し易くすることができる。その結果、ガラスと導電性セラミックス焼結体とをリサイクル可能な状態で分離することができる。
また、タイプA処理液は塩酸を含むので、塩素イオンが導電性セラミックス焼結体に含まれる金属成分(例えば銀)を溶解し、導電性セラミックス焼結体の表面からガラスとの界面に容易に浸透して導電性セラミックス焼結体に対するエッチング力をさらに向上させることができ、もって暗色セラミックス焼結体上に導電性セラミックス焼粘体が付着したガラスにおいて、導電性セラミックス焼結体のみを選択的にエッチングし、もって、タイプA処理液がガラス及び導電性セラミックス焼結体の界面へ浸透し易くすることができる。その結果、暗色セラミックス焼結体を分離することなく、導電性セラミックス焼結体のみを選択的にガラスから分離することができる。塩酸濃度が所定の濃度以上であれば、同等のエッチング能力が得られる。例えば、塩酸濃度が1.35mol/L(5wt%)の場合も、塩酸濃度が0.27mol/L(1wt%)の場合と導電性セラミックス焼結体に対するエッチング能力(金属成分を溶解する能力)は同等である。なお、必要以上に塩酸濃度が高いと導電性セラミックス中の金属成分(例えば銀)の溶解量が増加するため、塩酸濃度が低い方が導電性セラミックス焼結体のリサイクルには有利である。
タイプB処理液において、シロキサン結合を切断するイオン種、すなわちHF の濃度が0.005mol/L(HF濃度が0.05mol/L(0.10wt%))未満になると、導電性セラミックス焼結体とガラスの分離処理中にHF の濃度が低下し、ガラスや導電性セラミックス焼結体に対するエッチングレートの低下が顕著になる。そのため、短時間で分離するためには、HF の濃度が0.005mol/L(HF濃度が0.05mol/L(0.10wt%))以上であることが好ましい。但し、HF の濃度が必要以上に高いと、エッチング残渣としてフッ化物の沈殿が多量に発生し、操業上問題となる。
ここで、タイプB処理液中に存在する主たる化学種は、HF、H、F、HF であり、以下の平衡式(1)及び(2)で表される。
[HF]⇔[H]+[F]・・・(1)
[HF ]⇔[HF]+[F]・・・(2)
平衡式(1)及び(2)における平衡定数をそれぞれK、Kとする。K、Kは、電気化学的手法をはじめとする様々な手法で見積もられる。K、Kの値と、フッ化水素酸中の水素イオン濃度[H]とフッ化水素酸濃度[HF]から[HF ]濃度を算出することができる。
また、フッ化水素酸(タイプB処理液)にプロトン供給源として硫酸等の強酸を添加すると、シロキサン結合を切断するイオン種であるHF の濃度を高めることができ、より好ましい。
以上より、フッ化水素酸(タイプB処理液)、又はフッ化水素酸に強酸を加えた処理液は、ガラス及び導電性セラミックス焼結体界面へ処理液を浸透し易くすることができ、もってガラスと導電性セラミックス焼結体とを分離することができる。
フッ化アンモニウムと酸の混合物(タイプC処理液)においても、フッ化水素酸(タイプB処理液)と同様に、HF の濃度が0.005mol/L(HF濃度が0.05mol/L(0.10wt%))以上であることが好ましい。
ここで、タイプC処理液中に存在する主たる化学種はNHF、HF、H、F、HF 、NH であり、以下の平衡式(4)〜(6)で表される。
[HF]⇔[H]+[F]・・・(4)
[NHF]⇔[NH ]+[F]・・・(5)
[HF ]⇔[HF]+[F]・・・(6)
平衡式(4)〜(6)における平衡定数をそれぞれK、K、Kとする。K、K、Kは、電気化学的手法をはじめとする様々な手法で見積もられる。K、K、Kの値と、水素イオン濃度[H]、フッ化アンモニウム濃度[NHF]から[HF ]濃度を算出することができる。
なお、導電性セラミックス焼結体はガラスのボトム面に成膜されることが多く、エッチングレートを向上させる必要がある。そこで、エッチングレートを向上させるために、タイプA〜C処理液に錯体形成成分を添加してもよい。錯体形成成分としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等のアミノカルボン酸及びその塩と、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸及びその塩と、リン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)と、トリポリリン酸(STPP)等のホスホン酸及びその塩等を適宜組み合わせて使用することができる。錯体形成成分としては、酸性水溶液中での安定性から、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、グルコン酸、リン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)、トリポリリン酸(STPP)及びそれらの塩がより好ましい。
本実施の形態によれば、ガラス及び導電性セラミックス焼結体の少なくとも一方に対するエッチング力を有するので、ガラス及び導電性セラミックス焼結休の界面へ分離用水溶液が浸透し易くすることができ、もって、ガラスから分離した導電性セラミックス焼結体をリサイクル可能な状態で回収することができる。
本発明における導電性セラミックス焼結体が形成されたガラスとしては、自動車窓用のガラス、建築窓用のガラス、プラズマディスプレイ用のガラス等の導電性セラミックス焼結体が形成されたガラスを例示できる。自動車窓は、フロントウインドウ、リヤウインドウ、サイドウインドウ等の各部位の窓を意味する。一方で、フロントウインドウは通常合わせガラスからなり、その他の部位の窓は強化ガラスからなる。合わせガラスは複数のガラスが中間膜を介して積層されたものである。したがって、フロントウインドウ用ガラスを回収し再生するためには、別途中間膜とガラスとを分離する。いずれにしても、導電性セラミックス焼結体が形成されたガラスから、本発明により導電性セラミックス焼結体を分離できる。
ガラスから分離される導電性セラミックス焼結体としては、ガラスにアンテナ機能や防曇機能を付与する導電性セラミックス焼結体を例示できる。導電性セラミックス焼結体の組成としては、例えば銀を主成分としてビスマス、酸化ビスマス、亜鉛、酸化亜鉛、ホウ酸等を挙げることができる。
実施例1において、40℃に昇温した塩酸(タイプA処理液)、フッ化水素酸(タイプB処理液)、フッ化アンモニウムと酸の混合物(タイプC処理液)に導電性セラミックス焼結体付きガラスを浸漬した。
上記タイプ処理液Aとして、塩酸濃度が0.03〜1.35mol/L(0.1〜5.0wt%)になるように、6種類の処理液(サンプルA1〜A6)を調整した。サンプルA1〜A6の組成は表1に示した。
上記タイプB処理液として、HF濃度が0.05〜0.5mol/L(0.1〜1.0wt%)になるように、6種類の処理液(サンプルB1〜B6)を調整した。サンプルB1〜B6のHF の濃度は、0.005〜0.05mol/Lと見積もられた。サンプルB1〜B6の組成は表2に示した。
タイプC処理液として、フッ化アンモニウム、スルファミン酸、及びリン酸の混合液で、HF の濃度が0.01mol/L及び0.014mol/Lになるように、2種類のサンプル(サンプルC1及びC2)を調整した。サンプルC1及びC2の組成は表3に示した。
図1は、本発明の実施の形態に係る導電性セラミックス焼結体の分離用水溶液にガラスを浸漬するために用いられる液槽の構成を概略的に示す断面図である。
図1において、液槽10は、導電性セラミックス焼結体の分離用水溶液20としてのタイプA〜C処理液を蓄える容器11と、分離用水溶液20の温度を調整する温調装置12とを備える。容器11に分離用水溶液20を投入し、投入した分離用水溶液20を40℃に温調し、導電性セラミックス焼結体付きガラス30を容器11内に投入した。
上記分離用水溶液20に浸漬した導電性セラミックス焼結体付きガラス30について、導電性セラミックス焼結体がガラスから分離するまでの時間(分離時間)を計測した。
上記分離用水溶液としての処理液(タイプA、B、C)の組成、温度、及び計測された剥離時間を表1〜3に示す。
Figure 0004902159
Figure 0004902159
Figure 0004902159
表1〜表3より、タイプA〜C処理液に導電性セラミックス焼結体付きガラスを浸漬することによって、ガラスと導電性セラミックス焼結体とを分離し、ガラスから分離された導電性セラミックス焼結体をリサイクル可能な状態で回収することができることが分かった。
タイプA処理液において、塩酸濃度が高いほど分離時間が短く、サンプルA5,A6に浸漬した場合は、タイプB又はタイプC処理液浸漬した場合と比較して、分離時間が最も短かった。また、タイプA処理液において、塩酸濃度が0.27mol/L(1wt%)の場合(サンプルA5への浸漬)は、塩酸濃度が1.35mol/L(5wt%)の場合(サンプルA6への浸漬)とは同等の分離時間であった。
タイプB処理液において、フッ酸濃度を0.25mol/L(0.5wt%)にしてHF の濃度を0.025mol/Lにすると(サンプルB2への浸漬)、フッ酸濃度を0.05mol/L(0.1wt%)にしてHF の濃度を0.005mol/Lにした場合(サンプルB1への浸漬)と比較して分離時間が短くなったが、さらにフッ酸濃度を0.5mol/L(1wt%)にしてHF の濃度を0.05mol/Lに変更しても(サンプルB3への浸漬)、大きく分離時間は変化しなかった。
また、処理液Bとして、サンプルB1に錯体形成成分としての酒石酸0.0067mol/L(0.1wt%)を添加したもの(サンプルB4への浸漬)を用いると、錯体形成成分である酒石酸を添加しない場合(サンプルB1への浸漬)と比較して、エッチングレートが高く、分離時間が短くなった。
次に、処理液Bとして、サンプルB1に界面活性剤を0.5wt%添加したもの(サンプルB5への浸漬)を用いると、界面活性剤を添加しない場合(サンプルB1への浸漬)と比較して、フッ化水素酸が導電性セラミックス焼結体の表面からガラスとの界面に容易に浸透することにより、分離時間が短くなった。
次に、処理液CとしてサンプルC1は、フッ化アンモニウムが0.1mol/L(0.35wt%)含まれており、HF の濃度が0.01mol/Lとなっている。同等のHF の濃度のサンプルB6への浸漬とサンプルC1への浸漬とを比べるとサンプルC1への浸漬の方が分離時間が短い。これは錯体形成成分としてリン酸の添加によってエッチングレートが向上するからである。
実施例2において、実施例1と同等の方法で上述したサンプルA5、B6、C1を作製して45℃に昇温し、暗色セラミックス焼結体上に導電性セラミックス焼結体が付着したガラスを浸漬した。
上記サンプルA5、B6、C1に浸漬した暗色セラミックス焼結体上に導電性セラミックス焼結体が付着したガラスにおいて、導電性セラミックス焼結体が暗色セラミックス焼結体から分離するまでの時間及び暗色セラミックス焼結体がガラスから分離するまでの時間をそれぞれ計測した。その結果を表4に示す。
Figure 0004902159
サンプルA5に暗色セラミックス焼結体上に導電性セラミックス焼結体が付着したガラスを浸漬することにより、暗色セラミックス焼結体をガラスから分離させることなく導電性セラミックス焼結体のみを選択的に暗色セラミックス焼結体から分離することができ、暗色セラミックス焼結体から分離された導電性セラミックス焼結体をリサイクル可能な状態で回収することができることが分かった。
サンプルB6への浸漬では20分、サンプルC1への浸漬では15分後に導電性セラミックス焼結体が暗色セラミックス焼結体から分離したが、25分後に暗色セラミックス焼結体もガラスから分離した。
実施例3において、暗色セラミックス焼結体上に導電性セラミックス焼結体が付着したガラスを第1の処理液としてサンプルA5に浸漬し、続いて第2の処理液としてサンプルB3に順次浸漬した。
上記サンプルA5、B3に順次浸漬した暗色セラミックス焼結体上に導電性セラミックス焼結体が付着したガラスにおいて、導電性セラミックス焼結体が暗色セラミックス焼結体から分離するまでの時間及び暗色セラミックス焼結体がガラスから分離するまでの時間をそれぞれ計測した。その結果、第1の処理液A5に浸漬することで導電性セラミックス焼結体が分離するまでの時間が1分、順次第2の処理液B3に浸漬することで暗色セラミックス焼結体が分離するまでの時間が8分という短時間で、暗色セラミックス焼結体上に導電性セラミックス焼結体が付着したガラスを効率良く分別回収できることがわかった。
本発明の実施の形態に係る導電性セラミックス焼結体の分離用水溶液にガラスを浸漬するために用いられる液槽の構成を概略的に示す断面図である。 従来の自動車リアガラスの構成を概略的に示す図である。
符号の説明
10 液槽
11 容器
12 温調装置
20 分離用水溶液
30 導電性セラミック焼結体付きガラス

Claims (3)

  1. ガラス表面の一部に暗色セラミックス焼結体が形成され、前記ガラス表面上及び前記暗色セラミックス焼結体上に導電性セラミックス焼結体が形成されたセラミックス焼結体付きガラスから、前記導電性セラミックス焼結体、前記暗色セラミックス焼結体及び前記ガラスを分別回収する方法であって、
    前記セラミックス焼結体付きガラスを、塩酸を含む酸性水溶液に浸漬し、該塩酸を含む酸性水溶液によって前記導電性セラミックス焼結体と前記暗色セラミックス焼結体との界面及び前記導電性セラミックス焼結体と前記ガラスとの界面における前記導電性セラミックス焼結体を選択的にエッチングして前記塩酸を含む酸性水溶液を前記両界面に浸透させて前記導電性セラミックス焼結体を前記一部に暗色セラミックス焼結体が形成されたガラスから分離して前記導電性セラミックス焼結体を回収する第1の浸漬ステップと、
    記導電性セラミックス焼結体が分離された前記一部に暗色セラミックス焼結体が形成されたガラスを、フッ素イオンを含む酸性水溶液に浸漬し、該フッ素イオンを含む酸性水溶液を前記暗色セラミックス焼結体と前記ガラスとの界面に浸透させて前記暗色セラミックス焼結体と前記ガラスと分離して前記暗色セラミックス焼結体及び前記ガラスを回収する第2の浸漬ステップとを備えることを特徴とするセラミックス焼結体及びガラスの分離回収方法。
  2. 前記塩酸を含む酸性水溶液における塩酸の濃度が0.27mol/L(1.0wt%)以上であることを特徴とする請求項記載の分離回収方法
  3. 前記フッ素イオンを含む酸性水溶液における前記フッ素イオンは、HF であり、HF の濃度が0.005mol/L以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の分離回収方法
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