JP4900888B2 - リチウム電池用リチウム遷移金属酸化物 - Google Patents

リチウム電池用リチウム遷移金属酸化物 Download PDF

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Description

本発明は、リチウム一次電池、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー電池などのリチウム電池の正極活物質として用いるリチウム遷移金属酸化物、特にサイクル特性に優れたリチウム電池を実現できるリチウム遷移金属酸化物に関する。
リチウム電池、特にリチウム二次電池は、単位電気量当たりの重量が小さく、それでいてエネルギー密度が高いため、ビデオカメラ、ノート型パソコン、携帯電話機などの携帯型電子機器や電気自動車などに搭載する駆動用電源として急速に普及しつつある。
リチウム二次電池の高いエネルギー密度は主に正極材料の電位に起因しており、この種の正極活物質としては、スピネル構造をもつリチウムマンガン酸化物(LiMn24)のほか、層状構造をもつLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2など、リチウム複合酸化物(LiMxy)が知られている。
現在市販されているリチウム二次電池の大半は、正極活物質として4Vの高電圧を有するLiCoO2であるが、Coが極めて高価であるためLiCoO2の代替材料として、例えば同様の層構造を有するリチウム複合酸化物(LiMxy)の研究開発が盛んに進められている。
例えば、特許文献1は、マンガンとニッケルの混合水溶液中にアルカリ溶液を加えてマンガンとニッケルを共沈させ、水酸化リチウムを加え、ついで焼成することによって式:LiNixMn1-xO2(式中、0.7≦x≦0.95)で示される活物質を得る方法を開示している。
また、特許文献2は、式:LiNix1-x2(式中、MはCo、Mn、Cr、Fe、VおよびAlの少なくとも一種、1>x≧0.5)で示される組成を有する好ましい粒子状活物質を開示し、NiおよびMnを含む活物質としてx=0.15のものを示している。
また、特許文献3は、共沈合成法で合成された式:Liy-x1Ni1-xx2(式中、MはCo、Al、Mg、Fe、MgまたはMn、0<x2≦0.5、0≦x1<0.2、x=x1+x2、0.9≦y≦1.3)で示される活物質を提案している。
特許文献4は、3種の遷移金属を含む酸化物の結晶粒子からなり、前記結晶粒子の結晶構造が層構造であり、前記酸化物を構成する酸素原子の配列が立方最密充填である、Li[Lix(APQR1-x]O2(式中、A、BおよびCはそれぞれ異なる3種の遷移金属元素、−0.1≦x≦0.3、0.2≦P≦0.4、0.2≦Q≦0.4、0.2≦R≦0.4)で表される正極活物質を開示している。
特開平8−171910号 特開平9−129230号 特開平10−69910号 特開2003−17052号
近年、携帯情報電子機器などの高性能化に伴い、サイクル特性が強く求められるようになり、従来のものより一層優れたサイクル特性を実現できる正極活物質の開発が強く求められている。
そこで本発明は、層構造を有するリチウム遷移金属酸化物において、より一層優れたサイクル特性を実現できる正極活物質を開発せんとするものである。
本発明は、組成式Li1+xMO2で表される層構造を有するリチウム遷移金属酸化物であって、当該組成式中のMが、Mn、Co及びNiをほぼ1:1:1の原子比で含む遷移金属からなり、かつxの値が0.01〜0.5であることを特徴とするリチウム遷移金属酸化物を提案する。
本発明のリチウム遷移金属酸化物は、リチウム電池の正極活物質として用いた場合、XRD測定によって測定される充電前の格子体積y(Å3)に対して、充電容量220mAh/gまで充電した後に測定される格子体積z(Å3)の変化率{100−(z/y×100)}(%)が3.0%以下となる特徴を示す。
従来、組成式LiMO2(MはMn:Co:Ni=1:1:1からなる遷移金属)で表される層構造を有するリチウム遷移金属酸化物について、これを正極活物質に用いてリチウム電池を構成し、充電途中の正極を抜き出してXRD測定を行い、得られた格子定数から求めた格子体積を充電容量に対してプロットすると、180mAh/g付近で大きく格子体積が減少することが報告されている(N.Yabuuchi,T.Ohzuku,Journal of Power Sources.119-121(2003)171-174)。
これに対し、本発明のリチウム遷移金属酸化物、すなわちLi比率を高めてLi/M=1.01〜1.5としたものは、Li/M=1のリチウム遷移金属酸化物に比べて、充電途中の格子体積の変化が顕著に小さく、しかも充放電容量250mAh/g程度まで格子体積の著しい減少が見られないことことが判明した。
したがって、本発明のリチウム遷移金属酸化物は、通常の充放電容量域でのサイクル特性が優れているばかりか、充放電容量250mAh/g程度まで構造安定性を維持できるため、充放電容量250mAh/gの領域まで使用する新たな用途に用いるリチウム電池用の正極活物質として利用することができる。
なお、本発明において「リチウム電池」とは、リチウム一次電池、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー電池など、電池内にリチウム又はリチウムイオンを含有する電池を全て包含する。
また、本発明が特定する数値範囲の上限値及び下限値は、特定する数値範囲から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の範囲に含まる意を包含する。
本発明のリチウム遷移金属酸化物は、組成式Li1+xMO2で表される層構造を有するリチウム遷移金属酸化物であって、当該組成式中のMが、Mn、Co及びNiをほぼ1:1:1の原子比で含む遷移金属からなり、かつxの値が0.01〜0.5であることを特徴とするリチウム遷移金属酸化物、すなわち、組成式Li1+x(Mn(1-x)/3Co(1-x)/3Ni(1-x)/3)O2(x=0.01〜0.5)で表される層構造を有するリチウム遷移金属酸化物である。
本発明のリチウム遷移金属酸化物は、遷移金属に対するLiの比率、すなわちLi/Mが定比組成よりも大きく、中でも1.01〜1.50、特に好ましくは1.03〜1.30である組成を特徴とする。
また、遷移金属Mは、Mn、Co及びNiの3元素を含み、Mn、Co及びNiをほぼ1:1:1の原子比で含むことを特徴とする。
なお、現段階では、Ni、Co及びMnをほぼ1:1:1の比率で含むリチウム遷移金属酸化物についての知見しか得られていないが、Ni、Co及びMnの比率が1:1:1から多少ずれても同様の結果が得られるものと考えられるから、Ni、Co及びMnの比率が10%ずれているリチウム遷移金属酸化物であっても、同様の効果が得られるものと考えられる。
本発明のリチウム遷移金属酸化物は、充放電後の格子体積変化率が顕著に小さいという特徴を備えている。すなわち、本発明のリチウム遷移金属酸化物をリチウム電池の正極活物質として用いた場合、XRD測定によって測定される充電前の格子体積y(Å3)に対して、充電容量220mAh/gまで充電した後に測定される格子体積z(Å3)の変化率|100−(z/y×100)|(%)が3.0%以下、好ましくは2.5%以下を示す特徴がある。なお、格子体積測定における詳しい条件は下記に示す。
充放電中の格子体積変化率がこのように小さいことから、本発明のリチウム遷移金属酸化物は、リチウム電池の正極活物質として用いた場合、構造安定性が特に優れ、サイクル特性が顕著に優れたリチウム電池を実現できる。
また、本発明のリチウム遷移金属酸化物は、充放電容量を250mAh/g程度まで高めても格子体積の著しい減少が見られないため、過充電領域までの構造安定性にも優れており、このような領域まで使用する新たな用途の電池用正極活物質として特に優れている。
(製造方法)
本発明のリチウム遷移金属酸化物の製造方法は特に限定されるものではない。例えば公知の製造方法(例えば特開2003−17052の[0022]〜[0030]に記載された方法)によって製造することができる。例えばリチウム塩化合物、ニッケル塩化合物、コバルト塩化合物及びマンガン塩化合物を所定比率で乾式混合して焼成する方法、金属塩と場合によってはLi塩を湿式で混合分散したスラリーをスプレードライヤーなどで乾燥して焼成する方法、特開2003-181639で示されているような連続式に湿式合成し、これを乾燥後焼成する方法、ニッケルイオン、コバルトイオン及びマンガンイオンを含む混合水溶液中にキレート剤を加えてこれらの遷移金属を共沈させ、この共沈で得られた遷移金属塩化合物とリチウム塩化合物とを混合して焼成する方法など、従来公知の方法で本発明のリチウム遷移金属酸化物を製造することができると考えられるが、中でも共沈法を利用して製造するのが好ましい。
共沈法とは、水溶液中で中和反応を利用して複数元素を同時に沈殿させて複合酸化物を得る方法であり、本発明のリチウム遷移金属酸化物の製造においては、例えば、ニッケルイオン、コバルトイオン及びマンガンイオンを所定量含む混合水溶液中にキレート剤とアルカリ溶液とを混合し、この混合溶液のpHを所定範囲に調整することによってニッケルイオン、コバルトイオン及びマンガンイオンを共沈させて遷移金属塩化合物を得、得られた遷移金属塩化合物とリチウム塩化合物とを混合して所定の条件下で焼成するようにすればよい。
以下、共沈法を利用した製造方法についてさらに詳細に説明する。
先ず、マンガン、ニッケル及びコバルトの原子比が実質的に1:1:1となる遷移金属塩化合物を得るため、マンガン、ニッケル及びコバルトの原子比が実質的に1:1:1となるように秤量したマンガン塩化合物、ニッケル塩化合物及びコバルト塩化合物を水に添加し、キレート剤溶液(錯化剤)を加え、アルカリ溶液を加えてこの反応溶液のpHを調整しながら反応させ、ニッケルイオン、コバルトイオン及びマンガンイオンを共沈させて遷移金属塩化合物粒子を得る。
この際、マンガン塩化合物の種類を特に限定するものではなく、例えば硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガンなどを用いることができ、中でも硫酸マンガン水和物が好ましい。
また、ニッケル塩化合物の種類も特に制限はなく、例えば硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケルなどを用いることができ、中でも硫酸ニッケル水和物が好ましい。
コバルト塩化合物の種類も特に制限はなく、例えば硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルトなどを用いることができ、中でも硫酸コバルト水和物が好ましい。
キレート剤の溶液としては、例えばアンモニウムイオン供給体(塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、弗化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、アンモニア水、アンモニアガスなど)、ヒドラジン、グリシン、グルタミン酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリト三酢酸、ウラシル二酢酸などのアミノカルボン酸またはそれらの塩、シュウ酸・リンゴ酸・クエン酸・サリチル酸などのオキシカルボン酸またはそれらの塩が挙げられ、中でもアンモニア水溶液が好ましい。
アルカリ溶液としては、例えばアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化リチウム 、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられ、中でも水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
反応溶液(母液)のpHは、10.0〜13.0、特に10.5〜12.5の範囲に調整するのが好ましい。pH10.0を下回ると溶液中のNiイオンが沈殿しづらくなり、結果として沈殿物中の金属イオン量の組成ずれを起こし易くなる。逆にpH13.0を上回ると沈殿物が微粒となり、洗浄・回収操作が著しく困難になる。
次に、このようにして得られた遷移金属塩化合物を乾燥後、リチウム塩化合物と所定比率で混合し、焼成する。
リチウム塩化合物としては、例えば水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(Li2CO3)、硝酸リチウム(LiNO3)、LiOH・H2O、酸化リチウム(Li2O)、その他脂肪酸リチウムやリチウムハロゲン化物等が挙げられる。中でもリチウムの水酸化物塩、炭酸塩、硝酸塩が好ましい。
リチウム塩化合物と遷移金属塩化合物とのモル比は、遷移金属元素合計モル数に対するLiのモル数比率(Li/M)において、1.01〜1.50、特に好ましくは1.03〜1.30となるように調整する。この際、Li/Mが1.01を下回ると、本発明が規定する格子体積変化率より大きくなり、期待するサイクル特性が得られなくなる。その一方、Li/Mが1.5を上回ると、充分な放電容量を得られないばかりか、層構造物質以外の不純物相が出現し著しい電池性能の低下を招く可能性がある。
リチウム塩化合物と遷移金属塩化合物との混合は、均一に混合できれば、その方法を特に限定するものではない。例えばミキサー等の公知の混合機を用いて各原料を同時又は適当な順序で加えて乾式で攪拌混合すればよい。
また、必要に応じて、焼成前に、混合した原料を所定の大きさに造粒するようにしてもよい。造粒方法は、湿式でも乾式でもよく、押し出し造粒、転動造粒、流動造粒、混合造粒、噴霧乾燥造粒、加圧成型造粒、或いはロール等を用いたフレーク造粒でもよい。但し、湿式造粒した場合には、焼成前に充分に乾燥させることが必要である。乾燥方法としては、噴霧熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、フリーズドライなどの公知の乾燥方法によって乾燥させればよい。
焼成は、大気雰囲気中で行うのが好ましく、800℃以上、好ましくは850℃〜1000℃で、1時間〜30時間、好ましくは5時間〜25時間保持するように焼成する。なお、ここでの焼成温度は焼成炉内の品温を意味する。
焼成炉としては、ロータリーキルン或いは静置炉等を用いることができる。
焼成雰囲気は、大気雰囲気下のほか、酸化性雰囲気を採用することも可能である。
また、焼成に続いて特定の温度でアニーリング(熱処理)するようにしてもよい。
このように焼成すると、組成式Li1+x(Mn(1-x)/3Co(1-x)/3Ni(1-x)/3)O2(x=0.01〜0.5)で表され、遷移金属としてNi、Co、Mnをほぼ1:1:1の比率で含む層構造を有するリチウム遷移金属酸化物粉体を得ることができる。
以上のように焼成して得られたリチウム遷移金属酸化物粉体は、必要に応じて解砕・分級した後、リチウム電池の正極活物質として有効に利用することができる。例えば、リチウム遷移金属酸化物と、カーボンブラック等からなる導電材と、テフロン(登録商標)バインダー等からなる結着剤とを混合して正極合剤を製造することができる。
そしてそのような正極合剤を正極に用い、負極にはリチウムまたはカーボン等のリチウムを吸蔵、脱蔵できる材料を用い、非水系電解質には六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のリチウム塩をエチレンカーボネート−ジメチルカーボネート等の混合溶媒に溶解したものを用いてリチウム電池を構成することができる。
このように構成したリチウム電池は、例えばノート型パソコン、携帯電話、コードレスフォン子機、ビデオムービー、液晶テレビ、電気シェーバー、携帯ラジオ、ヘッドホンステレオ、バックアップ電源、メモリーカード等の電子機器、ペースメーカー、補聴器等の医療機器、電気自動車搭載用の駆動電源に使用することができる。中でも、優れたサイクル特性が要求される携帯電話機、PDA(携帯情報端末)やノート型パソコンなどの各種携帯型コンピュータ、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)、電力貯蔵用電源などの駆動用電源として特に有効である。
次に、実際に製造した実施例及び比較例に基づいて、本発明について更に説明するが、本発明が以下に示す実施例に限定されるものではない。
(電池評価の方法)
Li電池評価は以下の方法で行った。
正極活物質10.4gとアセチレンブッラク(電気化学工業社製)0.86gおよびNMP(N-メチルピロリドン)中にPVdF(ダイキン工業社製)10wt%溶解した液8.6gを正確に計り取り、そこにNMPを10.8g加え十分に混合し、ペーストを作成した。このペーストを集電体であるアルミ箔上にのせ150μmのギャップに調整したアプリケーターで塗膜化し、120℃で120min乾燥した後、50μmのギャップに調整したロールプレスで厚密した。その後Φ13mmに打ち抜き正極とした。電池作成直前に120℃で12hr以上乾燥し水分を十分に除去し電池に組み込んだ。また予めΦ13mmのアルミ箔の重さの平均を求めておき、正極の重さからアルミ箔の重さを差し引き正極合材の重さを求め、また正極活物質とアセチレンブラックおよびPVdFの混合割合から正極活物質の含有量を求めた。負極はΦ16mm×厚さ0.6mmの金属Liとし、これらの材料を使用して図1に示す2032型コイン電池を作製した。
図1のコイン電池は、耐有機電解液性のステンレンス鋼製の正極ケース11の内側に、同じくステンレス鋼製の集電体13がスポット溶接されている。この集電体13の上面には前記正極合材からなる正極15が圧着されている。この正極15の上面には、電解液を含浸した微孔性のポリプロピレン樹脂製のセパレータ16が配置されている。前記正極ケースの22の開口部には、下方に金属Liからなる負極14を接合した封口板12がポリプロピレン製のガスケット17をはさんで配置され、これにより電池は密封されている。前記封口板12は負極端子をかね、正極ケースと同様ステンレス製である。
電池の直径は20mm、電池の総高は3.2mmとした。電解液は、エチレンカーボネートと1,3-ジメトキシカーボネートを等体積混合したものを溶媒とし、これに溶質としてLiPF6を1moL/L溶解させたものを用いた。
充放電条件は下記の通りとした。
充放電電圧範囲は3.0〜4.3Vとした。但し、充電中の格子体積を測定する際の充電電圧範囲はこの限りではない。正極中の正極活物質の含有量から0.2Cの充放電レートになるよう電流値を算出して電流を通じた。これらの条件のもと、充放電を繰り返して初期放電容量に対するサイクル維持率を算出した。測定温度は25℃とした。
(格子体積の測定方法)
XRD測定は、RINT2100(株式会社リガク製)で行い、格子体積を得るための格子定数は、粉末XRDの精密測定を行い、六方晶であることを確認してから、(003)(101)(104)(105)(107)(113)の6つの面指数よりa軸長、c軸長を求めた。
充電前の正極電極の格子体積は次のように測定した。上述のようにLi電池を組み、上記充放電条件で3サイクルの充放電を行い、放電で終了した正極をコインセルから取り出してDEC中でよく洗浄しXRD測定を行い、充電前の格子体積を前述の要領で格子定数を求めて算出した。
充電時の正極電極の格子体積は次のようにして測定した。上述のようにLi電池を組み3サイクルの充放電を行い、4サイクル目の充電の際に所定の充電容量を充電した後、正極をコインセルから取り出してDEC中でよく洗浄し、XRD測定を行って前述の要領で格子定数を求め、格子体積を算出した。
(実施例1)
攪拌機付きの10Lの密閉容器(オイルジャケット付き)に市水を2.5L量入れ、硫酸マンガン・5水和物(柳島製薬社製)588g、硫酸コバルト・6水和物(関西触媒社製)703gおよび硫酸ニッケル・6水和物(三井金属社製)762gを溶解し、4Lになるよう水を加え調整した。その中に25wt%のアンモニア水(アガタ薬品工業社製)300mLを加え、この溶液を攪拌しながら6moL/Lの苛性ソーダ水溶液を加え、pH計を用いてpH11.5に調整した。浴温は45℃に保ち12時間攪拌した。攪拌後の沈殿物を上澄みの導電率が1mS以下となるまでデカンテーション洗浄を繰り返し、その後反応溶液をろ過により固液分離し、固形物を120℃で10hr乾燥し、金属水酸化物原料(上記「遷移金属塩化合物」に相当)を得た。
この金属水酸化物原料の金属元素のみのモル数をAモルとし、炭酸リチウム中のLi元素のモル数Bが、B/A=1.03となるように金属水酸化物原料と炭酸リチウム(SQM社製)を計り取り、ボールミルで十分に混合し、原料混合粉を得、この原料混合粉を大気中で900℃20時間焼成し、正極活物質を得た。
得られた正極活物質について、充電前の格子体積と充電中の格子体積とを上述した方法で求め、格子体積変化率を算出し、その結果を表1に示した。また、サイクル特性の結果を図4に示した。
(実施例2)
実施例1と同じ金属水酸化物原料と炭酸リチウムをB/A=1.10となるように計り取り、ボールミルで十分に混合し、原料混合粉を得、この原料混合粉を大気中で900℃20時間焼成し、正極活物質を得た。
得られた正極活物質について、充電前の格子体積と充電中の格子体積とを上述した方法で求め、格子体積変化率を算出し、その結果を表1に示した。また、サイクル特性の結果を図4に示した。
(実施例3)
実施例1と同じ金属水酸化物原料と炭酸リチウムをB/A=1.20となるように計り取り、ボールミルで十分に混合し、原料混合粉を得、この原料混合粉を大気中で900℃20時間焼成し、正極活物質を得た。
得られた正極活物質について、充電前の格子体積と充電中の格子体積とを上述した方法で求め、格子体積変化率を算出し、その結果を表1に示した。また、サイクル特性の結果を図4に示した。
さらに図2には、充電中の格子体積を小刻みに測定してプロットした。また、図3は、4サイクル目の充電を270mAh/gまで行った時の充電曲線である。充電容量220mAh/g時の充電電圧は約4.6Vであり、この充電電圧においても格子体積の変化率が小さいことは耐過充電性に優れた正極活物質であることを示している。
(実施例4)
実施例1と同じ金属水酸化物原料と炭酸リチウムをB/A=1.30となるように計り取り、ボールミルで十分に混合し、原料混合粉を得、この原料混合粉を大気中で900℃20時間焼成し、正極活物質を得た。
得られた正極活物質について、充電前の格子体積と充電中の格子体積とを上述した方法で求め、格子体積変化率を算出し、その結果を表1に示した。また、サイクル特性の結果を図4に示した。
(比較例1)
実施例1と同じ金属水酸化物原料と炭酸リチウムをB/A=1.00となるように計り取り、ボールミルで十分に混合し、原料混合粉を得、この原料混合粉を大気中で900℃20時間焼成し、正極活物質を得た。
得られた正極活物質について、充電前の格子体積と充電中の格子体積とを上述した方法で求め、格子体積変化率を算出し、その結果を表1に示した。また、サイクル特性の結果を図4に示した。
図2には、充電中の格子体積を小刻みに測定してプロットした。実施例3のものと比較して比較例1の格子体積の変化は著しく、格子体積の変化率を小さくすること、すなわち、充電時の正極活物質の構造を安定化させるためにはB/Aの比、言い換えれば組成式組成式Li1+x(Mn(1-x)/3Co(1-x)/3Ni(1-x)/3)O2において、リチウム過剰量xの値を厳密に制御することが重要である。
Figure 0004900888
電池評価のために作製した2032型コイン電池の構成を示す断面図である。 実施例3及び比較例1で得られた正極活物質について、充電容量に対する格子体積の変化を比較したグラフである。 実施例3で得られた正極活物質について、4サイクル目の充電曲線、すなわち充電容量に対する電圧の変化を示したグラフである。 実施例1〜4及び比較例1で得られた各正極活物質について、サイクル数とサイクル維持率との関係を示したグラフである。
符号の説明
11 正極ケース
12 封口板
13 集電体
15 正極
16 セパレータ
14 負極
17 ガスケット

Claims (7)

  1. 組成式Li1+xMO2で表される層構造を有するリチウム遷移金属酸化物であって、当該組成式中のMは、Mn、Co及びNiを1:1:1の原子比で含む遷移金属からなり、かつxの値が0.10〜0.50であることを特徴とするリチウム遷移金属酸化物(但し、組成式Li1+xMO2で表される層構造を有するリチウム遷移金属酸化物であって、当該組成式中のMは、Mn、Co及びNiを1:1:1の原子比で含む遷移金属からなり、かつxの値が0.10又は0.11であるリチウム遷移金属酸化物を除く)を用いたリチウム電池用正極活物質であって、
    XRD測定によって測定される充電前の格子体積y(Å3)に対して、充電容量220mAh/gまで充電した後に測定される格子体積z(Å3)の変化率{100−(z/y×100)}(%)が3.0%以下であることを特徴とするリチウム電池用正極活物質。
  2. 請求項に記載の正極活物質を用いたリチウム電池用電極。
  3. 請求項に記載のリチウム電池用電極を正極として用いたリチウム電池。
  4. 請求項に記載のリチウム電池を駆動用電源として用いた携帯電話機。
  5. 請求項に記載のリチウム電池を駆動用電源として用いた携帯型コンピュータ。
  6. 請求項に記載のリチウム電池を駆動用電源として用いた電気自動車。
  7. 請求項に記載のリチウム電池を駆動用電源として用いた電力貯蔵用電源。
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