JP4897130B2 - ポリエステル、それから成るシ−ト状物、中空成形体及び延伸フイルム - Google Patents
ポリエステル、それから成るシ−ト状物、中空成形体及び延伸フイルム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料用ボトルをはじめとする中空成形容器、フィルム、シ−トなどの成形体の素材として好適に用いられるポリエステルおよびそれから成る成形体に関するものであり、特に、透明性及び耐熱寸法安定性に優れた大型中空成形体や透明性、滑り性および成形後の寸法安定性に優れたシ−ト状物を与える。また、本発明は,中空成形体を成形する際に熱処理金型からの離型性が良好で、長時間連続成形性に優れたポリエステルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(以下PETと略称することがある)は、その優れた透明性、機械的強度、耐熱性、ガスバリア−性等の特性により、炭酸飲料、ジュ−ス、ミネラルウォ−タ等の容器の素材として採用されており、その普及はめざましいものがある。これらの用途において、ポリエステル製ボトルに高温で殺菌した飲料を熱充填したり、また飲料を充填後高温で殺菌したりするが、通常のポリエステル製ボトルでは、このような熱充填処理時等に収縮、変形が起こり問題となる。ポリエステル製ボトルの耐熱性を向上させる方法として、ボトル口栓部を熱処理して結晶化度を高めたり、また延伸したボトルを熱固定させたりする方法が提案されている。特に口栓部の結晶化が不十分であったり、また結晶化度のばらつきが大きい場合にはキャップとの密封性が悪くなり、内容物の漏れが生ずることがある。
【0003】
また、果汁飲料、ウ−ロン茶およびミネラルウオ−タなどのように熱充填を必要とする飲料の場合には、プリフォ−ムまたは成形されたボトルの口栓部を熱処理して結晶化する方法(特開昭55−79237号公報、特開昭58−110221号公報等に記載の方法)が一般的である。このような方法、すなわち口栓部、肩部を熱処理して耐熱性を向上させる方法は、結晶化処理をする時間・温度が生産性に大きく影響し、低温でかつ短時間で処理できる、結晶化速度が速いPETであることが好ましい。一方、胴部についてはボトル内容物の色調を悪化させないように、成形時の熱処理を施しても透明であることが要求されており、口栓部と胴部では相反する特性が必要である。
【0004】
また、ボトル胴部の耐熱性を向上させるため、例えば、特公昭59−6216号公報に見られる通り、延伸ブロ−金型の温度を高温にして熱処理する方法が採られる。しかし、このような方法によって同一金型を用いて多数のボトル成形を続けると、長時間の運転に伴って得られるボトルが白化して透明性が低下し、商品価値のないボトルしか得られなくなる。これは金型表面にPETに起因する付着物が付き、その結果金型汚れとなり、この金型汚れがボトルの表面に転写するためであることが分かった。 特に、近年では、ボトルの小型化とともに成形速度が高速化されてきており、生産性の面から口栓部の結晶化のための加熱時間短縮や金型汚れはより大きな問題となってきている。
【0005】
また,PETをシ−ト状物に押出し,これを真空成形して得た容器に食品を充填後同一素材からなる蓋をし放置しておくと収縮が起こり蓋の開封性が悪くなったり、また該容器を長期間放置しておくと収縮が起こり蓋が出来なくなったりする。
【0006】
このような問題を解決するために種々の提案がなされている。
金型汚れを防止する方法としては、例えば、特開平10−114819号公報にはポリエステルを水処理する方法が開示されている。
結晶化速度を上げる方法としては、例えば、ポリエチレンテレフタレ−トにカオリン、タルク等の無機核剤を添加する方法(特開昭56−2342号公報、特開昭56−21832号公報)、モンタン酸ワックス塩等の有機核剤を添加する方法(特開昭57−125246号公報、特開昭57−207639号公報)があるが、これらの方法は異物やくもりの発生を伴い実用化には問題がある。また、原料ポリエステルに、該ポリエステルから溶融成形して得たポリエステル成形体を粉砕した処理ポリエステルを添加する方法(特開平5−105807号公報)があるが、この方法は溶融成形粉砕という余分な工程が必要であり、さらにこのような後工程でポリエステル以外の夾雑物が混入する危険性があり、経済的および品質的に好ましい方法ではない。また、耐熱性樹脂製ピ−スを口栓部に挿入する方法(特開昭61−259946号公報、特開平2−269638号公報)が提案されているが、ボトルの生産性が悪く、また、リサイクル性にも問題がある。
【0007】
さらには特開平8−302168号公報および特開平9−71639号公報にはポリエチレンを代表とするポリオレフィン樹脂を添加することにより、結晶化速度の高い透明な樹脂が得られることが開示さている。しかし、これら方法でも、口栓部を結晶化させた場合、ひずみが生じ、キャップをした場合に漏れるという問題を完全に解決することはできなかった。さらには、上記の水処理方法を組み合わせた場合に、特に1.5リットル以上のボトル用のパリソンを成形するとパリソンの肉厚が厚いため金型内での冷却速度が遅くなり、パリソンのボトル胴部に当たる部分が結晶化し、得られたボトル胴部の透明性が低下するといった問題が発生した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の方法の有する問題点を解決し、透明性および耐熱寸法安定性の優れた成形体、特に大型中空成形品を効率よく生産することができ、また金型を汚すことの少ない長時間連続成形性に優れたポリエステルおよびそれから成る成形体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願発明は、テレフタール酸、エチレングリコ−ルおよび共重合成分からなる、繰返し単位の95.0%以上がエチレンテレフタレ−トである線状のポリエステルを含むポリエステル組成物であり、該ポリエステル組成物の極限粘度が0.55〜0.90dl/gであって、該ポリエステル組成物はポリエチレンを1ppb〜50ppm含有し、ポリエチレンの平均分散粒径が3μm以下に分散したポリエステル組成物であり、該ポリエステル組成物を溶融成形して得た成形体が下記(a)〜(c)の特性を示すことを特徴とするポリエステル組成物である。
(a)熱機械分析(TMA)により測定した寸法変化率が1.0%〜4.0%
(b)ヘイズが10%以下
(c)昇温時結晶化温度が165℃以下
【0010】
上記の特性を持つ本発明のポリエステルは、溶融成形することにより容易に透明性および耐熱寸法安定性の優れた成形体、特に1.5リットル以上の大型中空成形品を得ることができ、該中空成形品の口栓部結晶化速度が早く、従って生産性が高くまた金型を汚すことの少ない長時間連続成形性に優れたポリエステルを得ることができる。また、滑り性および成形後の寸法安定性に優れたシ−ト状物を得ることも出来る。
【0011】
この場合において、ポリエステルの極限粘度が0.55〜0.90dl/g、共重合されたジエチレングリコ−ル含量が該ポリエステルを構成するグリコ−ル成分の1.5〜5.0モル%であることができる。
【0012】
この場合において、ポリエステルの密度が1.37g/cm3以上であることができる。
【0013】
この場合において、アセトアルデヒド含量が10ppm以下で環状3量体含量が0.5重量%以下であることができる。
【0014】
この場合において、Ge化合物および/またはTi化合物を重縮合触媒として用いて得られたポリエステルであることができる。
【0015】
この場合において、290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体増加量が0.30重量%以下であることができる。
【0016】
またこの場合において、前記ポリエステルから成るシ−ト状物、中空成形体および少なくとも1方向に延伸された延伸フイルムであることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリエステルの実施の形態を具体的に説明する。
本発明の主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルは、エチレンテレフタレ−ト単位を好ましくは85モル%以上含む線状ポリエステルであり、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95.0%以上含む線状ポリエステルである。
【0018】
前記ポリエステルの共重合に使用されるジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0019】
前記ポリエステルの共重合に使用されるグリコ−ルとしては、ジエチレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ルなどが挙げられる。
【0020】
さらに、前記ポリエステル中の多官能化合物からなるその他の共重合成分としては、酸性分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコ−ル成分としてグリセリン、ペンタエリスリト−ルを挙げることができる。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0021】
本発明のポリエステルは、テレフタ−ル酸とエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、重縮合触媒としてたとえばSb化合物、Ge化合物またはTi化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物またはTi化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて主として減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。
【0022】
本発明で使用されるSb化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。
本発明で使用されるGe化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等が挙げられる。
【0023】
本発明で使用されるTi化合物としては、テトラエチルチタネ−ト、テトライソプロピルチタネ−ト、テトラ−n−プロピルチタネ−ト、テトラ−n−ブチルチタネ−ト等のテトラアルキルチタネ−トおよびそれらの部分加水分解物、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン等が挙げられる。
また、安定剤として種々のP化合物を使用することができる。本発明で使用されるP化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0024】
さらにポリエステルの極限粘度を増大させ、アセトアルデヒド含量を低下させるために固相重合を行ってもよい。
【0025】
前記のエステル化反応、エステル交換反応、溶融重縮合反応および固相重合反応は、回分式反応装置で行っても良いしまた連続式反応装置で行っても良い。
【0026】
本発明のポリエステルは、主たる繰返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルであって、該ポリエステルを溶融成形して得た成形体を熱機械分析(TMA)により測定した寸法変化率が1.0%〜4.0%であり,ヘイズが10%以下、好ましくは寸法変化率が1.2%〜4.0%、ヘイズが9%以下、さらに好ましくは寸法変化率が1.3%〜4.0%、ヘイズが8%以下である。
耐熱性ポリエステル中空成形容器を製造する場合には、口栓部を均一に結晶化させて高温飲料充填時に口栓部が変形、収縮しないようにするとともに、延伸ブロ−後に容器胴部を熱処理結晶化して耐熱性を向上させる。
【0027】
寸法変化率が1.0%以下の場合は、耐熱性中空成形容器の透明性が低下し、特に1.5リッタ−以上の大型中空成形容器で問題となる。また寸法変化率が4.0%以上の場合は,中空成形容器口栓部を熱処理する場合、加熱結晶化速度が遅く、一定の結晶化度を達成するのに処理時間が長くなる。また、口栓部のひずみが大きくなり過ぎ、キャッピング不良が起こりやすくなる。その結果、中空成形容器の生産性が悪くなり問題となる。またシ−トの真空成形の場合は成形後の収縮率が大となり,蓋の開封性や蓋との嵌合性が悪くなり問題となる。
【0028】
なお、ここで、本発明のポリエステルを特定する寸法変化率は、(株)マック・サイエンス社製の熱機械分析(TMA)、タイプTMA4000Sを用いて、後述する方法によって測定した。
【0029】
さらに、本発明のポリエステルは、該ポリエステルを溶融成形して得た成形体のヘイズが10%以下で有り,10%を越える場合は,得られた成形体の透明性が悪くなり、特に延伸成形体の場合には問題となる。
【0030】
また、本発明のポリエステルは、成形品の昇温時の結晶化温度(以下「Tc1」と称する)が165℃以下、好ましくは162℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。Tc1が165℃を越える場合は、加熱結晶化速度が非常に遅くなり結晶化の改良効果が期待できない。
【0031】
本発明のポリエステルは、例えば次のような方法で製造することが出来る。すなわち、ポリエステルにポリエチレンを1ppb〜50ppm含有させ、該ポリエチレンの平均分散粒径を3μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下に分散させることによって製造することが出来る。ポリエチレンはポリエステルの結晶化の核剤として作用し、ポリエステル成形品の加熱結晶化速度を高める効果があるが、ポリエステル成形品の結晶化速度をより一層高め、また均一に結晶化さすためには、ポリエチレンを平均分散粒径が3μm以下になるように分散させることが必要である。すなわち、ポリエチレンを1ppb〜50ppm含有させ、その平均分散粒径を3μm以下に分散させたポリエステルを用いることによって、成形体の寸法変化率を1.0〜4.0%でかつ成形体のヘイズを10%以下に納めることが可能であり、さらに成形体のTc1が165℃以下で、Tc1ピ−クがシャ−プとなり、結晶化速度が非常に早くて透明性に優れたポリエステルを得ることができる。
【0032】
ポリエチレンをポリエステル中に平均分散粒径が3μm以下に分散する方法としては、例えば次のような方法が挙げられる。すなわち、ポリエチレンを溶融重縮合前に添加し、次いで所定の極限粘度まで重縮合後溶融状態で3μmの焼結金属フィルタ−で濾過する方法、乾燥したポリエステルとポリエチレンを2軸押出機により3μmの焼結金属フィルタ−を通過させて混練押出しすることにより該混練組成物中のポリエチレンの分散粒径を3μm以下とした高濃度のマスタ−バッチを作り、これを溶融重縮合時に添加して重縮合する方法、あるいは前記マスタ−バッチを成形前にポリエステルにブレンドして成形する方法等がある。
【0033】
本発明のポリエステルのチップの極限粘度は0.55〜0.90デシリットル/グラムであるのが好ましく、0.58〜0.87デシリットル/グラムであるのがより好ましい。ポリエステルのチップの極限粘度が0.55デシリットル/グラムより小さい場合は、本発明のポリエステルを溶融成形して得られた成形品の透明性、耐熱性、機械特性等が充分満足されないことがある。また、極限粘度が0.90デシリットル/グラムより大きい場合は、成形時の発熱が激しくなり、このため成形品の着色が激しくなったり、またアセトアルデヒド含量が多くなる傾向にあり、飲料用ボトル等食品用途には適さなくなる。
【0034】
本発明のポリエステルの共重合されたジエチレングリコ−ル(DEG)含量が該ポリエステルを構成するグリコ−ル成分の好ましくは1.0〜5.0モル%の範囲であり、より好ましくは1.5〜4.8モル%、更に好ましくは2.0〜4.5モル%である。1.0モル%以下の場合は得られた中空成形体の透明性が非常に悪くなり、また5.0モル%以上の場合は熱製安定性が劣り、得られた中空成形体のAA含量が非常に高くなり内容物のフレ−バ−性が悪くなる。
【0035】
また、本発明のポリエステル樹脂のアセトアルデヒド含量は好ましくは10ppm以下、より好ましくは8ppm以下、更に好ましくは5ppm以下である。アセトアルデヒド含量が10ppm以上の場合は、このポリエステル樹脂から成形された容器等の内容物の風味や臭い等が悪くなる。
【0036】
また、本発明のポリエステルは、環状3量体を若干含んでもよいが、その含有量は好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.45重量%以下、さらに好ましくは0.40重量%以下である。本発明のポリエステルから耐熱性の中空成形品を成形する場合は加熱金型内で熱処理を行うが、環状3量体の含有量が0.5重量%以上含有する場合には、加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形品の透明性が非常に悪化する。
【0037】
また、本発明のポリエステルは、290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が好ましくは0.30重量%以下、より好ましくは0.20重量%以下、さらに好ましくは0.10重量%以下である。環状3量体増加量が0.30重量%を超えるポリエステルを用いて中空成形を行うと、環状3量体などのオリゴマ−類が金型内面や金型のガス排気口および排気管に付着し、透明な中空成形容器を得ようとすると頻繁に金型掃除をしなけらばならない。
【0038】
290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.30重量%以下である本発明のポリエステルは、溶融重縮合後や固相重合後に得られたポリエステルの重縮合触媒を失活処理することにより製造することができる。ポリエステルの重縮合触媒を失活処理する方法としては、溶融重縮合後や固相重合後にポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。
【0039】
熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
【0040】
以下に水処理を工業的に行う方法を例示するが、これに限定するものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
【0041】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわちバッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。あるいは回転筒型の処理槽にポリエステルのチップを受け入れ、回転させながら水処理を行い水との接触をさらに効率的にすることもできる。
ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的又は間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
【0042】
ポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエステル1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエステルと水蒸気とを接触させる。
【0043】
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
【0044】
以下に粒状ポリエステルと水蒸気または水蒸気含有ガスとの接触処理を工業的に行なう方法を例示するが、これに限定されるものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
【0045】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行なう。あるいは回転筒型の接触処理装置に粒状ポリエステルを受け入れ、回転させながら接触処理を行ない接触をさらに効率的にすることもできる。
【0046】
ポリエステルのチップを連続で水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエステルを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
【0047】
ポリエステルチップの熱水処理方法の例として下記の様な方法が挙げられる。
すなわち、重縮合後チップ状に形成したポリエステルを、熱水処理槽中において処理槽から戻ってきた排水を含む処理水で温度40〜120℃において処理する方法が挙げられる。また、処理層からチップと共に排出した排水を処理層に戻さずに同一の温度範囲において処理する方法も挙げられる。さらに、重縮合後チップ状に形成したポリエステルを、該処理槽中においてポリエステルの微粉の含有量が1000ppm以下の処理水で処理する方法もある。なお、ここで言う微粉とは、水処理層中にチップと共に共存する細かいポリエステルの粉である。
【0048】
上記の如く、水又は水蒸気で処理した場合は粒状ポリエステルを必要に応じて振動篩機、シモンカ−タ−などの水切り装置で水切りし、次の乾燥工程へ移送する。
【0049】
水又は水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパ−型の通気乾燥機が通常使用される。乾燥ガス量を減らし、効率的に乾燥する方法としては回転ディスク型加熱方式の連続乾燥機が用いられ、少量の乾燥ガスを通気しながら、回転ディスクや外部ジャケットに加熱蒸気、加熱媒体などを供給しポリエステルのチップを間接的に加熱乾燥することができる。
【0050】
バッチ方式で乾燥する乾燥機としてはダブルコ−ン型回転乾燥機が用いられ、真空下であるいは真空下少量の乾燥ガスを通気しながら乾燥することができる。あるいは大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
【0051】
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
【0052】
上記のようにポリエステルに水又は水蒸気処理を施すことによって、ポリエステルの固相重縮合速度が減少するとともに、該ポリエステルを290℃の温度に加熱溶融した後のオリゴマ−増加量を抑制することができる。
【0053】
ポリエステルのチップの形状は、シリンダ−型、角型、または扁平な板状等の何れでもよく、その大きさは、縦、横、高さがそれぞれ通常1.6〜3.5mm、好ましくは1.8〜3.5mmの範囲である。例えばシリンダ−型の場合は、長さは1.8〜3.5mm、径は1.8〜3.5mm程度であるのが実用的である。また、チップの重量は15〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0054】
前記の製造工程の中で、溶融重縮合ポリマ−をチップ化する工程、固相重合工程、水処理工程、溶融重縮合ポリマ−チップや固相重合ポリマ−チップを輸送する工程等において、本来造粒時に設定した大きさのチップよりかなり小さな粒状体や粉等が発生する。ここでは、このような微細な粒状体や粉等をファインと称する。本発明のポリエステルを製造する工程では純度の高い原料や副材料を使用すると共に、溶融重縮合ポリマ−の濾過、ポリエステルチップの冷却水の濾過、チップの水処理に系外より導入する水の濾過、該チップの搬送等に使用する気体の濾過等により使用ポリエステル以外の異物や夾雑物が混入しないような対策を実施するので、該ファインはポリエステル以外の異物や夾雑物を含まないようにすることが出来る。
【0055】
前記のポリエステルのファインの極限粘度は通常、0.55〜0.90、好ましくは0.57〜0.88、さらに好ましくは0.58〜0.87である。極限粘度が0.55より小さい場合は、得られた成形品の透明性が悪くなる。好ましくはポリエステルのチップの極限粘度と同一か、またはポリエステルのチップの極限粘度より0.03高い極限粘度の範囲であることが好ましい。
【0056】
また、前記の対象となるポリエステルのファインは、その粒径がJIS−Z8801による10.5メッシュの標準篩を通過する大きさのファインであり、好ましくはJIS−Z8801による20メッシュの標準篩を通過する大きさの粒径のファインである。
【0057】
本発明において、ポリエステルのファインの含有量を前記の範囲に調節する方法としては、篩分工程を通していないファイン含有量の高いポリエステルのチップと篩分工程及び空気流によるファイン除去工程を通したファイン含有量の非常に少ないポリエステルチップを適当な割合で混合する方法による他、ファイン除去工程の篩の目開きを変更することにより調節することもでき、また篩分速度を変更することによるなど任意の方法を用いることができる。
【0058】
本発明のポリエステルに飽和脂肪酸モノアミド、不飽和脂肪酸モノアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等を同時に併用することも可能である。
【0059】
飽和脂肪酸モノアミドの例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸モノアミドの例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドリシノ−ル酸アミド等が挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド等が挙げられる。また、不飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。好ましいアミド系化合物は、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等である。このようなアミド化合物の配合量は、10ppb〜1×105ppmの範囲である。
【0060】
また炭素数8〜33の脂肪族モノカルボン酸の金属塩化合物、例えばナフテン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、リノ−ル酸等の飽和及び不飽和脂肪酸のリチュウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、及びコバルト塩等を同時に併用することも可能である。これらの化合物の配合量は、10ppb〜300ppmの範囲である。
【0061】
本発明のポリエステルは、中空成形容器、トレ−、2軸延伸フイルム等の包装材、金属缶被覆用フイルム等として好ましく用いることが出来る。また、本発明のポリエステルは、多層成形体や多層フイルム等の1構成層としても用いることが出来る。
【0062】
本発明のポリエステルには、必要に応じて公知の紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。
なお、本発明における、主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0063】
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0064】
(2)ジエチレングリコ−ル含量(以下[DEG含量」という)
メタノ−ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0065】
(3)アセトアルデヒド含量(以下「AA含量」という)
試料/蒸留水=1g/2mlを窒素置換したガラスアンプルに入れて上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定し濃度をppmで表示した。
【0066】
(4)ポリエステルの環状3量体の含量
試料をヘキサフルオロイソプロパノール/クロロフォルム混合液に溶解し、さらにクロロフォルムを加えて希釈する。これにメタノールを加えてポリマーを沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミドで定容とし、液体クロマトグラフ法よりエチレンテレフタレート単位から構成される環状3量体を定量した。
【0067】
(5)ポリエステルの溶融時の環状3量体増加量(△CT)
乾燥したポリエステルチップ3gをガラス製試験管に入れ、窒素雰囲気下で290℃のオイルバスに60分浸漬させ溶融させる。溶融時の環状3量体増加量は、次式により求める。
溶融時の環状3量体増加量(重量%)=
溶融後の環状3量体含有量(重量%)−溶融前の環状3量体含有量(重量%)
【0068】
(6)ファインの含量測定
JIS−Z8801による10.5メッシュの標準篩いを用い、1000kgのサンプルを篩い分け、篩を通過したファインの量を秤量し含量を求める。
【0069】
(7)ポリエステルチップおよび成形板の密度
四塩化炭素/n−ヘプタン混合溶媒の密度勾配管で25℃で測定する。
【0070】
(8)ヘイズ(霞度%)
下記(12)の成形体および中空成形容器の胴部(肉厚約4mm)より試料を切り取り、東洋製作所製ヘイズメ−タ−で測定。
【0071】
(9)成形体の寸法変化率
下記(12)の段付き成形板から3mm厚みのプレート部より8mm×10mmの大きさの試験片を切り出し、測定試料とした。成形板には、成形加工時の流動に由来する分子配向が存在するが、配向状態は成形板の部位によりまちまちである。そこで、偏光面を直交させた2枚の偏光板の間に成形板を挟み込み、偏光板表面に垂直な方向から可視光を照射した際の、成形板を透過する光の強度分布を観察することによって配向状態を確認した。上記寸法内に分子配向の不均一(配向度や配向方向のゆらぎなど)を含むことのない部位より試験片を切り出した。その際にあらかじめ光学異方性の方位を確認し、切り出す試験片の方位との関係を以下のようにする。光学異方性の方位は、偏光顕微鏡と鋭敏色検板を用い、新高分子実験学6 高分子の構造(2)(共立出版株式会社)に記載の方法で決定した。
【0072】
屈折率の小さい軸(光の速度が速い軸)の方向と、試験片の長軸が平行になるように切り出した。試験片を切り出す際に導入される配向乱れや切断面の凹凸は測定結果に著しく影響を与える。そこで、切断面の凹凸や配向の乱れた部位をカッターを用いて削除し、平坦な面を得た。また、試験片の密度や分子配向の度合いも結果に影響を及ぼす。密度及び複屈折の値は、それぞれ1.3345〜1.3355g/cm3及び1.30×10−4〜1.50×10−4でなければならない。密度は、試験片採取部位の近傍よりサンプリングした樹脂を試料として、水系密度勾配管を用いて測定した。複屈折は、偏光顕微鏡(ニコン社製ECLIPSEE600 POL)を用いて、ベレックコンペンセーター法で測定した。測定値は試験片の中央部で得られた値を採用した。上記のように作製した試験片の昇降温過程の寸法変化を、マック・サイエンス社製の熱機械分析(TMA)、タイプTMA4000Sで測定した。測定は、圧縮荷重モードで行い、試験片の長軸に平行な方向の試料長の変化を観測した。0.2gの一定圧縮荷重、Ar雰囲気下で、室温から210℃まで27℃/min.の速度で昇温し、210℃で180秒間保持後、室温まで47℃/min.の速度で降温させ、寸法変化を測定した。寸法変化率の算出は、下記の式を用いた。
寸法変化率(%)=
〔(室温での測定前試料長)−(室温での測定後試料長)〕
/(室温での測定前試料長)× 100
【0073】
(10)成形体の昇温時の結晶化温度(Tc1)
セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定。下記(12)の成形板の2mm厚みのプレ−トの中央部からの試料10mgを使用。昇温速度20度C/分で昇温し、その途中において観察される結晶化ピ−クの頂点温度を測定し、昇温時結晶化温度(Tc1)とする。
【0074】
(11)ボトル口栓部の加熱による密度上昇
ボトル口栓部を自家製の赤外線ヒ−タ−によって60秒間熱処理し、天面から試料を採取し密度を測定した。
【0075】
(12)段付成形板の成形
乾燥したポリエステルを名機製作所製M−100射出成型機により、シリンダー温度290℃において、10℃に冷却した段付平板金型を用い成形する。この段付成形板は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11mmの厚みの約3cm×約5cm角のプレートを階段状に備えたもので、1個の重量は約146gである。2mm厚みのプレ−トは密度上昇速度測定およびTc1測定に、3mm厚みのプレ−トは寸法変化率測定に、また5mm厚みのプレ−トはヘイズ(霞度%)測定に使用する。
【0076】
(13)ポリエチレンの平均分散粒径測定
ポリエステルチップをヘキサフルオロイソプロパノールに溶解(約1%濃度)し、不溶分を0.2μmのメンブランフィルタ−で濾過後、走査型電子顕微鏡にて写真をとり、粒径を測定する。フィルタ−上のポリエチレン粒子10個の平均値を求める。
【0077】
(14)金型汚れの評価
ポリエステルを脱湿空気を用いた乾燥機で乾燥し、名機製作所製M−100射出成型機により樹脂温度290℃でプリフォ−ムを成形した。このプリフォ−ムの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた後、コ−ポプラスト社製LB−01延伸ブロ−成型機を用いて二軸延伸ブロ−成形し、引き続き約150℃に設定した金型内で10秒間熱固定し、1500ccの中空成形容器を得た。成形が定常状態になった中空成形容器の胴部のヘイズを測定する。同様の条件で連続的に延伸ブロ−成形し、目視で判断して容器の透明性が損なわれるまでの成形回数で金型汚れを評価した。また、ヘイズ測定用試料としては、5000回連続成形後の容器の胴部を供した。
【0078】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0079】
(実施例1)
予め反応物を含有している第1エステル化反応器に、高純度テレフタル酸とエチルグリコ−ルとのスラリ−を連続的に供給し、撹拌下、約250℃、0.5kg/cm2Gで平均滞留時間3時間反応を行った。この反応物を第2エステル化反応器に送付し、撹拌下、約260℃、0.05kg/cm2Gで所定の反応度まで反応を行った。また、結晶性二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解し、これにエチレングリコ−ルを添加加熱処理した触媒溶液、および燐酸のエチレングリコ−ル溶液を別々にこの第2エステル化反応器に連続的に供給した。このエステル化反応生成物を連続的に第1重合反応器に供給し、撹拌下、約265℃、25torrで1時間、次いで第2重合反応器で撹拌下、約265℃、3torrで1時間、さらに最終重合反応器で撹拌下、約275℃、0.5〜1torrで1時間重合させた。最終重縮合反応器の後に設置した混合機で直鎖状低密度ポリエチレン(MI=0.9g/10分、密度=0.923g/cm3)を平均分散粒径2μm以下に分散させた溶融PETマスタ−を表1の添加量になるように混合し、引き続きチップ化した。得られたPETのIVは0.54、DEG含量は2.4モル%であった。なお、ポリエチレンを微分散させたPETマスタ−(ポリエチレン、約100ppm)は、乾燥PETと該ポリエチレン粉末を2軸押出機で混練りし、3μmの焼結金属フィルタ−を通過させた後ペレット化させて作り、ポリエチレンの平均分散径を測定し、2μm以下であることを確認した。
【0080】
このPETチップをひきつづき窒素雰囲気下、約155℃で結晶化し、さらに窒素雰囲気下で約200℃に予熱後、連続固相重合反応器に送り窒素雰囲気下で約205℃で固相重合した。固相重合後、篩分工程およびファイン除去工程で連続的に処理し表1記載のPETを得た。
得られたPETの極限粘度は0.74デシリットル/グラム、環状3量体の含量は0.38重量%、密度は1.400g/cm3、AA含量は2.7ppmであった。また、得られたPETの成形板の寸法変化率は、2.3%、Tc1は153.7℃、成形板ヘイズは3.8%、ポリエチレンの平均分散粒子径は2μmであった。
このPETについて二軸延伸成型ボトルによる評価を実施した。結果を表1に示す。
【0081】
口栓部の密度は1.379g/cm3と問題のない値であり、5000本以上の連続延伸ブロー成形を実施したが、金型汚れは認められず、またボトルの透明性も良好であった。また、このボトルに85℃の温湯を充填し、キャッピング機によりキャッピングをした後ボトルを倒し放置後、ボトル口栓部の変形および内容物の漏れを調べたが、問題はなかった。得られたボトルの胴部ヘイズは1.0%と良好であった。また、金型汚れまでの成形回数は12000回と問題がなかった。ボトルのAA含量は20.3ppmと問題のない値であった。
【0082】
(実施例2)
ポリエチレンの添加量を変更する以外は実施例1と同様にしてPETを得た。表1に示す通り寸法変化率は1.4%、Tc1は149.3℃、成形板ヘイズは6.7%、ポリエチレンの平均分散粒子径は2μmであった。ボトル口栓部の変形および内容物の漏れ評価では、問題はなかった。ボトル胴部ヘ−ズは1.5%と良好で、金型汚れまでの成形回数は10000回と問題のない結果が得られた。
【0083】
(実施例3)
重縮合触媒としてテトラ−n−ブチルチタネ−トを使用し、ポリエチレン添加量を変更する以外は実施例1と同様にしてPETを得た。種々の評価を実施したが、表1に示す通り実施例1と同様に問題のない結果が得られた。
【0084】
(実施例4)
ポリエチレンの添加量を変更する以外は実施例1と同様にして重縮合し、ファイン除去能力を強化してファイン含有量を0.1ppm以下のPETを得た。このPETチップを熱水処理した。
ポリエステルチップの水処理には、図1に示す装置を用い、処理槽上部の原料チップ供給口(1)、処理槽の処理水上限レベルに位置するオ−バ−フロ−排出口(2)、処理槽下部のポリエステルチップと処理水の混合物の排出口(3)、このオ−バ−フロ−排出口から排出された処理水と、処理槽から排出された処理水と、処理槽下部の排出項から排出された水切り装置(4)を経由した処理水が、濾材が紙製の30μmの連続式フィルタ−である微粉除去装置(5)を経由して再び水処理槽へ送られる配管(6)、これらの微粉除去済み処理水の導入口(7)、微粉除去済み処理水中のアセトアルデヒドを吸着処理させる吸着塔(8)、及び新しいイオン交換水の導入口(9)を備えた内容量約320リットルの塔型の処理槽を使用した。
【0085】
処理水温度95℃にコントロ−ルされた水処理槽へ50kg/時間の速度で処理槽上部の供給口(1)から連続投入し、微粉含有量が約130ppmの処理水を用いて水処理時間4時間で処理槽下部の排出口(3)からPETチップとして50kg/時間の速度で処理水と共に連続的に抜き出した。得られたPETのファイン含有量は30ppmであった。なお、処理水中の微粉量は、処理層の処理水排出口からJIS規格20メッシュのフィルタ−を通過した処理水を1000cc採取し、岩城硝子社製1G1ガラスフィルタ−で濾過後、100℃で2時間乾燥し室温下で冷却後、重量を測定して算出する。
種々の評価を実施したが、表1に示す通り実施例1と同様に問題のない結果が得られた。
【0086】
(比較例1)
ポリエチレンの平均分散径および添加量を変更する以外は実施例1と同一の方法で、ポリエチレン含量が0.1ppbおよびポリエチレンの平均分散粒径が5μmのPETを得た。なお、PETマスタ−作成時のフィルタ−は5μmの焼結金属フィルタ−を使用した。
表1に示す通り得られたPETからの成形板の寸法変化率は6.8%、Tc1は173.4℃、成形板ヘイズは3.0%であった。またこのPETから成形したボトルに85℃の温湯を充填し、キャッピング機によりキャッピングをした後ボトルを倒し放置後、ボトル口栓部の変形および内容物の漏れを調べたが、ボトル口栓部の変形および内容物の漏れが認められた。ボトル胴部ヘ−ズは9.3%と悪く、また金型汚れまでの成形回数は3000回と低かった。
【0087】
(比較例2)
ポリエチレンの平均分散径および添加量を変更し、固相重合後のファイン除去能力を強化する以外は実施例1と同一の方法でPETを得た。なお、PETマスタ−作成時のフィルタ−は10μmの焼結金属フィルタ−を使用した。
表1に示す通り得られたPETからの成形板の寸法変化率は5.1%、Tc1は167.8℃、成形板ヘイズは13.5%であった。またこのPETから成形したボトルに85℃の温湯を充填し、キャッピング機によりキャッピングをした後ボトルを倒し放置後、ボトル口栓部の変形および内容物の漏れを調べたが、ボトル口栓部の変形および内容物の漏れが認められた。ボトル胴部ヘ−ズは5.9%と悪く、また金型汚れまでの成形回数は5000回と低かった。
【0088】
(比較例3)
ポリエチレンの平均分散径および添加量を変更する以外は実施例1と同様にしてPETを得た。なお、PETマスタ−作成時のフィルタ−は50μmの焼結金属フィルタ−を使用した。
表1に示す通り通り得られたPETからの成形板の寸法変化率は0.5%、Tc1は138.0℃、成形板ヘイズは23.9%であった。またこのPETを成形したボトルに85℃の温湯を充填し、キャッピング機によりキャッピングをした後ボトルを倒し放置後、ボトル口栓部の変形および内容物の漏れを調べたが、ボトル口栓部の変形および内容物の漏れが認められた。ボトル胴部ヘ−ズは11.4%と悪かった。
【0089】
【表1】
【0090】
【発明の効果】
本発明のポリエステルによれば、透明性のよい、耐熱性が優れた大型中空成形品を得ることができ、またシ−ト成形、ボトル成形等において金型汚れが少なく、長時間連続成形性に優れ、多数の成形品を透明性が優れた状態で容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル樹脂を得るための装置の一例の略図である。
【符号の説明】
1 原料チップ供給口
2 オーバーフロー排出口
3 ポリエステルチップと処理水との排出口
4 水切り装置
5 ファイン除去装置
6 配管
7 処理水導入口
8 吸着塔
9 イオン交換水導入口
Claims (5)
- テレフタール酸、エチレングリコ−ルおよび共重合成分からなる、繰返し単位の95.0%以上がエチレンテレフタレ−トである線状のポリエステルを含むポリエステル組成物であり、該ポリエステル組成物の極限粘度が0.55〜0.90dl/gであって、該ポリエステル組成物はポリエチレンを1ppb〜50ppm含有し、ポリエチレンの平均分散粒径が3μm以下に分散したポリエステル組成物であり、該ポリエステル組成物を溶融成形して得た成形体が下記(a)〜(c)の特性を示すことを特徴とするポリエステル組成物。
(a)熱機械分析(TMA)により測定した寸法変化率が1.0%〜4.0%
(b)ヘイズが10%以下
(c)昇温時結晶化温度が165℃以下 - Ge化合物及び/又はTi化合物を重縮合触媒として用いて得られたことを特徴とする請求項1記載のポリエステル組成物。
- 請求項1または2記載のポリエステル組成物を押出成形して成ることを特徴とするシ−ト状物。
- 請求項1または2記載のポリエステル組成物から成ることを特徴とする中空成形体。
- 請求項3記載のシ−ト状物を少なくとも1方向に延伸して成ることを特徴とする延伸フイルム。
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