JP3551189B2 - ポリエステル樹脂、それからなる中空成形体、シート状物および延伸フィルム - Google Patents

ポリエステル樹脂、それからなる中空成形体、シート状物および延伸フィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料用ボトルをはじめとする中空成形体、シート状物、延伸フィルムなどの成形体の素材として好適に用いられるポリエステルおよびそれからなる成形体に関するものであり、特に、透明性および耐熱寸法安定性に優れた小型中空成形体や透明性、滑り性および成形後の寸法安定性に優れたシート状物および延伸フィルムに関するものである。また、本発明は、小型中空成形体を成形する際に熱処理金型からの離型性が良好で、長時間連続成形性に優れたポリエステルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステル(以下PETと略称することがある)は、その優れた透明性、機械的強度、耐熱性、ガスバリアー性等の特性により、炭酸飲料、ジュース、ミネラルウォータ等の容器の素材として採用されており、その普及はめざましいものがある。これらの用途において、ポリエステル製ボトルに高温で殺菌した飲料を熱充填したり、また飲料を充填後高温で殺菌したりするが、通常のポリエステル製ボトルでは、このような熱充填処理時等に収縮、変形が起こり問題となる。ポリエステル製ボトルの耐熱性を向上させる方法として、ボトル口栓部を熱処理して結晶化度を高めたり、また延伸したボトルを熱固定させたりする方法が提案されている。特に口栓部の結晶化が不十分であったり、また結晶化度のばらつきが大きい場合にはキャップとの密封性が悪くなり、内容物の漏れが生ずることがある。
【0003】
また、果汁飲料、ウーロン茶およびミネラルウォータなどのように熱充填を必要とする飲料の場合には、プリフォームまたは成形されたボトルの口栓部を熱処理して結晶化する方法(特開昭55−79237号公報、特開昭58−110221号公報等に記載の方法)が一般的である。このような方法、すなわち口栓部、肩部を熱処理して耐熱性を向上させる方法は、結晶化処理をする時間・温度が生産性に大きく影響し、低温でかつ短時間で処理できる、結晶化速度が速いPETであることが好ましい。一方、胴部についてはボトル内容物の色調を悪化させないように、成形時の熱処理を施しても透明であることが要求されており、口栓部と胴部では相反する特性が必要である。
【0004】
また、ボトル胴部の耐熱性を向上させるため、例えば、特公昭59−6216号公報に見られる通り、延伸ブロー金型の温度を高温にして熱処理する方法が採られる。しかし、このような方法によって同一金型を用いて多数のボトル成形を続けると、長時間の運転に伴って得られるボトルが白化して透明性が低下し、商品価値のないボトルしか得られなくなる。これは金型表面にPETに起因する付着物が付き、その結果金型汚れとなり、この金型汚れがボトルの表面に転写するためであることが分かった。特に、近年では、ボトルの小型化とともに成形速度が高速化されてきており、生産性の面から口栓部の結晶化のための加熱時間短縮や金型汚れはより大きな問題となってきている。
【0005】
また、PETをシート状物に押出し、これを真空成形して得た容器に食品を充填後同一素材からなる蓋をし放置しておくと収縮が起こり蓋の開封性が悪くなったり、また該容器を長期間放置しておくと収縮が起こり蓋ができなくなったりする。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような問題を解決するために種々の提案がなされている。例えば、ポリエチレンテレフタレートにカオリン、タルク等の無機核剤を添加する方法(特開昭56−2342号公報、特開昭56−21832号公報)、モンタン酸ワックス塩等の有機核剤を添加する方法(特開昭57−125246号公報、特開昭57−207639号公報)があるが、これらの方法は異物やくもりの発生を伴い実用化には問題がある。また、耐熱性樹脂製ピースを口栓部に挿入する方法(特開昭61−259946号公報、特開平2−269638号公報)が提案されているが、ボトルの生産性が悪く、また、リサイクル性にも問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、透明性および耐熱寸法安定性の優れた成形体、特に小型中空成形体を高速成形により効率よく生産することができ、また金型を汚すことの少ない長時間連続成形性に優れたポリエステルおよびそれからなる成形体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のポリエステルは、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルであって、ファインを0.1〜500ppm含有し、該ポリエステルを溶融成形して得た成形体を昇温結晶化した場合に生成する球晶数が2×10〜100×10個/mの範囲にあることを特徴とする。
【0009】
ここで、昇温結晶化した場合に生成する球晶数とは、後記した方法により測定した球晶数を意味する。
上記の構成からなる本発明のポリエステルは、溶融成形することにより容易に透明性および耐熱寸法安定性の優れた成形体、特に小型中空成形体を得ることができ、該中空成形体の口栓部結晶化が良好で、かつ、口栓部収縮率が適正な範囲となる結晶化速度を持ち、また金型を汚すことの少ない長時間連続成形性に優れたポリエステルを得ることができる。
【0010】
この場合において、ポリエステルを溶融成形して得た成形体のヘイズが、15%以下であることができる。
また、この場合、ポリエステルの極限粘度が、0.70〜0.90dl/g、ポリエステルに共重合されたジエチレングリコール含有量が、該ポリエステルを構成するグリコール成分の1.5〜5.0モル%であることができる。
【0011】
また、この場合、ポリエステルの密度が、1.37g/cm以上であることができる。
また、この場合、ファイン含有量が、0.1〜100ppm、さらに好ましくは、0.1〜10ppmであることができる。
また、この場合、アセトアルデヒド含有量が、10ppm以下であることができる。
また、この場合、環状3量体含有量が、0.5重量%以下であることができる。
【0012】
また、この場合、290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が、0.30重量%以下であることができる。
【0013】
また、この場合、重縮合触媒としてGe化合物および/またはTi化合物を用いて得られたものであることができる。
また、この場合、中空成形体が、前記記載のポリエステルを成形してなるものであることができる。
また、この場合、シート状物が、前記記載のポリエステルを成形してなるものであることができる。
さらにまた、この場合、延伸フィルムが、シート状物を少なくとも一方向に延伸してなるものであることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリエステルの実施の形態を具体的に説明する。
本発明の主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルは、エチレンテレフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95.0%以上含む線状ポリエステルである。
【0015】
前記ポリエステルの共重合に使用されるジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニール−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸およびその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸およびその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸およびその機能的誘導体、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸およびその機能的誘導体などが挙げられる。
【0016】
前記ポリエステルの共重合に使用されるグリコールとしては、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコールなどが挙げられる。
【0017】
さらに、前記ポリエステル中の多官能化合物からなるその他の共重合成分としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトールを挙げることができる。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。
【0018】
本発明のポリエステルは、テレフタール酸とエチレングリコールおよび必要により上記共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物またはTi化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールおよび必要により上記共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させてメチルアルコールを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物またはTi化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて主として減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。これらの重合触媒はエステル交換反応あるいはエステル化反応の開始前または反応途中に添加してもよい。
本発明で使用されるSb化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレート、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。Sb化合物は、生成ポリマー中のSb残存量として50〜250ppmの範囲になるように添加する。
【0019】
本発明で使用されるGe化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等が挙げられる。Ge化合物を使用する場合、その使用量はポリエステル樹脂中のGe残存量として5〜150ppm、好ましくは10〜100ppm、さらに好ましくは15〜70ppmである。
【0020】
本発明で使用されるTi化合物としては、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のテトラアルキルチタネートおよびそれらの部分加水分解物、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン等が挙げられる。Ti化合物は、生成ポリマー中のTi残存量として0.1〜10ppmの範囲になるように添加する。
【0021】
また、安定剤として種々のP化合物を使用することができる。本発明で使用されるP化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニールエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニールホスホン酸ジメチルエステル、フェニールホスホン酸ジエチルエステル、フェニールホスホン酸ジフェニールエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。P化合物は、生成ポリマー中のP残存量として5〜100ppmの範囲になるように添加する。
【0022】
さらに、ポリエステルの極限粘度を増大させ、アセトアルデヒド含有量を低下させるために固相重合を行ってもよい。
【0023】
前記のエステル化反応、エステル交換反応、溶融重縮合反応および固相重合反応は、回分式反応装置で行ってもよいしまた連続式反応装置で行ってもよい。
【0024】
ポリエステルのチップの形状は、シリンダー型、角型、または扁平な板状等の何れでもよく、その大きさは、縦、横、高さがそれぞれ通常1.6〜3.5mm、好ましくは1.8〜3.5mmの範囲である。例えばシリンダー型の場合は、長さは1.8〜3.5mm、径は1.8〜3.5mm程度であるのが実用的である。また、チップの重量は15〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0025】
前記の製造工程の中で、溶融重縮合ポリマーをチップ化する工程、固相重合工程、水処理工程、溶融重縮合ポリマーチップや固相重合ポリマーチップを輸送する工程等において、本来造粒時に設定した大きさのチップよりかなり小さな粒状体や粉等が発生する。ここでは、このような微細な粒状体や粉等をファインと称する。本発明のポリエステルを製造する工程では純度の高い原料や副材料を使用すると共に、溶融重縮合ポリマーの濾過、ポリエステルチップの冷却水の濾過、チップの水処理に系外より導入する水の濾過、該チップの搬送等に使用する気体の濾過等により使用ポリエステル以外の異物や夾雑物が混入しないような対策を実施するので、該ファインにはポリエステル以外の異物や夾雑物を含まないようにすることができる。
【0026】
本発明のポリエステルは、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルであって、該ポリエステルを溶融成形して得た厚さ3mmの成形体からの試験片を昇温結晶化した場合に生成する球晶数が2×10〜100×10個/mの範囲にあり、好ましくは2.5×10〜50×10個/mの範囲、さらに好ましくは3.0×10〜30×10個/mの範囲である。
【0027】
球晶数が2×10個/mに達しない場合は、中空成形体口栓部を熱処理する場合、加熱結晶化速度が遅く、一定の結晶化度を達成するまでの処理時間が長くなる。その結果、中空成形体の生産性が悪くなり、特に小型容器成形時に問題となる。また、シートの真空成形の場合は成形後の収縮率が大となり、蓋の開封性や蓋との嵌合性が悪くなり問題となる。また、球晶数が100×10個/mを越える場合は、耐熱性中空成形体の透明性が低下し、特に1.5リッター以上の大型中空成形体でその透明性が問題となる。
なお、ここで、本発明のポリエステルを特定する成形体の昇温結晶化時の球晶数は、(株)マック・サイエンス社製の熱機械分析(TMA)、タイプTMA4000Sを用いて成形板を熱処理し、後記する方法によって測定した。
【0028】
さらに、本発明のポリエステルは、該ポリエステルを溶融成形して得た厚さ5mmの成形体のヘイズが15%以下であり、好ましくは13%以下、さらに好ましくは10%以下である。ヘイズが15%を越える場合は、得られた成形体の透明性が悪くなり、特に延伸成形体の場合には問題となる。
【0029】
本発明のポリエステルは、例えば次のような方法で製造することができる。すなわち、ポリエステルにポリアセタールを0.1ppb〜1000ppm含有させ、かつ前記のファインを0.1〜500ppm含有させることによって製造することができる。ポリアセタール含有量が0.1ppb未満の場合やポリアセタール含有量が0.1ppb未満で、かつファインの含有量が0.1ppm未満の場合は、昇温結晶化時に生成する球晶数が2×10個/m以下となる。またポリアセタール含有量が1000ppmを越える場合やポリアセタール含有量が1000ppmを越え、かつファインの含有量が500ppmを越える場合は、昇温結晶化時に生成する球晶数が100×10個/mを超え、得られた成形体の透明性が悪くなる。
【0030】
本発明において使用されるポリアセタールとしては、ポリアセタールホモポリマーまたはポリアセタールコポリマーが挙げられる。
【0031】
本発明で使用されるポリアセタールホモポリマーとしては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.40〜1.42g/cm、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトインデックス(MI)が0.5〜50g/10分の範囲のポリアセタールが好ましい。
また、ポリアセタールコポリマーとしては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.38〜1.43g/cm、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトインデックス(MI)が0.4〜50g/10分の範囲のポリアセタールコポリマーが好ましい。これらの共重合成分としては、エチレンオキサイドや環状エーテルが挙げられる。
【0032】
これらのポリアセタールをポリエステル中に添加する時期、添加方法は特に限定されず、溶融成形前の任意の段階で行うことができる。例えば、溶融重縮合終了までの任意の時点で添加する方法、高濃度のマスターバッチを作りブレンドする方法、ポリエステルにタンブラーブレンダー等の混合機で混合し押出機等を用いて溶融混錬りする方法などを例示することができる。
【0033】
また、前記の対象となるポリエステルのファインは、その粒径がJIS−Z8801による呼び寸法1.7mmの標準篩を通過する大きさのファインであり、好ましくはJIS−Z8801による呼び寸法0.71mmの標準篩を通過する大きさの粒径のファインである。前記のポリエステルのファインの極限粘度は通常、0.55〜0.90、好ましくは0.57〜0.88、さらに好ましくは0.58〜0.87である。極限粘度が0.55より小さい場合は、得られた成形体の透明性が悪くなる。好ましくはポリエステルのチップの極限粘度と同一か、またはポリエステルのチップの極限粘度より0.03高い極限粘度の範囲であることが好ましい。
【0034】
本発明において、ポリエステルのファインの含有量を前記の範囲に調節する方法としては、篩分工程を通していないファイン含有量の高いポリエステルのチップと篩分工程および空気流によるファイン除去工程を通したファイン含有量の非常に少ないポリエステルチップを適当な割合で混合する方法による他、ファイン除去工程の篩の目開きを変更することにより調節することもでき、また篩分速度を変更することによるなど任意の方法を用いることができる。
【0035】
また、本発明のポリエステルは、下記するようにポリエステルチップを水処理する場合には、次のような方法によっても製造可能である。すなわち、まず、水処理の工程において、処理するための水の少なくとも一部は処理槽から排出した水を再度処理槽に戻し返し繰り返し使用されている水であることが好ましい。水を再使用することにより、処理水中の微粉量をコントロールすることが可能で、ひいてはポリエステルのファイン含有量をコントロールすることが容易である。微粉量が0である水を水処理に用いると、ポリエステルチップに付着していたファインが水によって流され0.1ppmを下回ることがある。
【0036】
さらに、処理水中の微粉量を1000ppm以下になるように調節しながら行うことが好ましい。微粉量が1000ppmを越える水を用いるとポリエステルのファイン含有量が500ppmを越えることがある。
本発明のポリエステルのチップの極限粘度は0.55〜0.90デシリットル/グラムであるのが好ましく、0.58〜0.87デシリットル/グラムであるのがより好ましい。ポリエステルのチップの極限粘度が0.55デシリットル/グラムより小さい場合は、本発明のポリエステルを溶融成形して得られた成形体の透明性、耐熱性、機械特性等が充分満足されないことがある。また、極限粘度が0.90デシリットル/グラムより大きい場合は、成形時の発熱が激しくなり、このため成形体の着色が激しくなったり、またアセトアルデヒド(以下AAと称することがある)含有量が多くなる傾向にあり、飲料用ボトルなどの食品用途には適さなくなる。
【0037】
本発明のポリエステルの共重合されたジエチレングリコール(DEG)含有量が該ポリエステルを構成するグリコール成分の1.0〜5.0モル%の範囲であり、好ましくは1.5〜4.8モル%、さらに好ましくは2.0〜4.5モル%である。1.0モル%未満の場合は得られた中空成形体の透明性が非常に悪くなり、また5.0モル%を越える場合は熱製安定性が劣り、得られた中空成形体のAA含有量が非常に高くなり内容物のフレーバー性が悪くなる。
【0038】
また、本発明のポリエステルは、環状3量体を若干含んでもよいが、その含有量は0.5重量%以下、好ましくは0.45重量%以下、さらに好ましくは0.40重量%以下である。本発明のポリエステルから耐熱性の中空成形体を成形する場合は加熱金型内で熱処理を行うが、環状3量体の含有量が0.5重量%を越える場合には、加熱金型表面へのオリゴマー付着が急激に増加し、得られた中空成形体の透明性が非常に悪化する。
【0039】
また、本発明のポリエステルは、290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.30重量%以下、好ましくは0.20重量%以下、さらに好ましくは0.10重量%以下である。環状3量体増加量が0.30重量%を超えるポリエステルを用いて中空成形を行うと、環状3量体などのオリゴマー類が金型内面や金型のガス排気口および排気管に付着し、透明な中空成形体を得ようとすると頻繁に金型掃除をしなけらばならない。
【0040】
290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.30重量%以下である本発明のポリエステルは、溶融重縮合後や固相重合後に得られたポリエステルの重縮合触媒を失活処理することにより製造することができる。ポリエステルの重縮合触媒を失活処理する方法としては、溶融重縮合後や固相重合後にポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。
【0041】
熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワーでチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
【0042】
以下に水処理を工業的に行う方法を例示するが、これに限定するものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式の何れであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
【0043】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわちバッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。あるいは回転筒型の処理槽にポリエステルのチップを受け入れ、回転させながら水処理を行水との接触をさらに効率的にすることもできる。
【0044】
ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的または間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
【0045】
ポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエステル1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエステルと水蒸気とを接触させる。
【0046】
このポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
【0047】
以下に粒状ポリエステルと水蒸気または水蒸気含有ガスとの接触処理を工業的に行う方法を例示するが、これに限定されるものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式の何れであっても差し支えない。
【0048】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行う。あるいは回転筒型の接触処理装置に粒状ポリエステルを受け入れ、回転させながら接触処理を行い接触をさらに効率的にすることもできる。
【0049】
ポリエステルのチップを連続で水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエステルを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。ポリエステルチップの熱水処理方法の例として下記の様な方法が挙げられる。すなわち、重縮合後チップ状に形成したポリエステルを、熱水処理槽中において処理槽から戻ってきた排水を含む処理水で温度40〜120℃において処理する方法が挙げられる。また、処理層からチップと共に排出した排水を処理層に戻さずに同一の温度範囲において処理する方法も挙げられる。さらに、重縮合後チップ状に形成したポリエステルを、該処理槽中においてポリエステルの微粉の含有量が1000ppm以下の処理水で処理する方法もある。なお、ここで言う微粉とは、水処理層中にチップと共に共存する細かいポリエステルの粉であり、通常その粒径は30〜1300μm程度のものである。
【0050】
上記の如く、水または水蒸気で処理した場合は粒状ポリエステルを必要に応じて振動篩機、シモンカーターなどの水切り装置で水切りし、次の乾燥工程へ移送する。
【0051】
水または水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパー型の通気乾燥機が通常使用される。乾燥ガス量を減らし、効率的に乾燥する方法としては回転ディスク型加熱方式の連続乾燥機が用いられ、少量の乾燥ガスを通気しながら、回転ディスクや外部ジャケットに加熱蒸気、加熱媒体などを供給しポリエステルのチップを間接的に加熱乾燥することができる。
【0052】
バッチ方式で乾燥する乾燥機としてはダブルコーン型回転乾燥機が用いられ、真空下であるいは真空下少量の乾燥ガスを通気しながら乾燥することができる。あるいは大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
【0053】
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
【0054】
上記のようにポリエステルに水または水蒸気処理を施すことによって、ポリエステルの固相重縮合速度が減少するとともに、該ポリエステルを290℃の温度に加熱溶融した後のオリゴマー増加量を抑制することができる。
【0055】
本発明のポリエステルに飽和脂肪酸モノアミド、不飽和脂肪酸モノアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等を同時に併用することも可能である。
【0056】
飽和脂肪酸モノアミドの例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸モノアミドの例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドリシノール酸アミド等が挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド等が挙げられる。また、不飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。好ましいアミド系化合物は、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等である。
このようなアミド化合物の配合量は、10ppb〜1×10ppmの範囲である。
【0057】
また、炭素数8〜33の脂肪族モノカルボン酸の金属塩化合物、例えばナフテン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、リノール酸等の飽和および不飽和脂肪酸のリチュウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシュウム塩、およびコバルト塩等を同時に併用することも可能である。これらの化合物の配合量は、10ppb〜300ppmの範囲である。
【0058】
本発明のポリエステルは、中空成形体、トレー、2軸延伸フィルムなどの包装材、金属缶被覆用フィルムなどとして好ましく用いることができる。また、本発明のポリエステルは、多層成形体や多層フィルムなどの一構成層としても用いることができる。
【0059】
本発明のポリエステルには、必要に応じて公知の紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。
【0060】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
なお、本発明における、主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0061】
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0062】
(2)ジエチレングリコール含有量(以下[DEG含有量」という)
メタノールにより分解し、ガスクロマトグラフィーによりDEG含有量を定量し、全グリコール成分に対する割合(モル%)で表した。
【0063】
(3)アセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)
試料/蒸留水=1g/2mlを窒素置換したガラスアンプルに入れて上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィーで測定し濃度をppmで表示した。
【0064】
(4)ポリエステルの環状3量体の含有量(CT含有量)
試料をヘキサフルオロイソプロパノール/クロロフォルム混合液に溶解し、さらにクロロフォルムを加えて希釈する。これにメタノールを加えてポリマーを沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミドで定容とし、液体クロマトグラフ法よりエチレンテレフタレート単位から構成される環状3量体を定量した。
【0065】
(5)ポリエステルの溶融時の環状3量体増加量(△CT量)
乾燥したポリエステルチップ3gをガラス製試験管に入れ、窒素雰囲気下で290℃のオイルバスに60分浸漬させ溶融させる。溶融時の環状3量体増加量は、次式により求める。
溶融時の環状3量体増加量(重量%)=溶融後の環状3量体含有量(重量%)−溶融前の環状3量体含有量(重量%)
【0066】
(6)ファインの含有量測定
JIS−Z8801による呼び寸法1.7mmの標準篩を用い、1000kgのサンプルを篩い分け、篩を通過したファインの重量を秤量し含有量を求める。
【0067】
(7)ポリエステルチップおよび成形板の密度
硝酸カルシュウム/水混合溶液の密度勾配管で30℃で測定した。
【0068】
(8)ヘイズ(霞度%)
下記(11)の成形体(肉厚5mm)および(12)の中空成形容器の胴部(肉厚約0.4mm)より試料を切り取り、日本電色(株)製ヘイズメーターで測定。
【0069】
(9)成形体の昇温結晶化時の球晶数
下記(11)の段付き成形板から3mm厚みのプレート部より8mm×10mmの大きさの試験片を切り出し、測定試料とした。成形板には、成形加工時の流動に由来する分子配向が存在するが、配向状態は成形板の部位によりまちまちである。そこで、偏光面を直交させた2枚の偏光板の間に成形板を挟み込み、偏光板表面に垂直な方向から可視光を照射した際の、成形板を透過する光の強度分布を観察することによって配向状態を確認した。上記寸法内に分子配向の不均一(配向度や配向方向のゆらぎなど)を含むことのない部位より試験片を切り出した。
【0070】
その際に予め光学異方性の方位を確認し、切り出す試験片の方位との関係を以下のようにする。光学異方性の方位は、偏光顕微鏡と鋭敏色検板を用い、新高分子実験学6 高分子の構造(2)(共立出版株式会社)に記載の方法で決定した。屈折率の小さい軸(光の速度が速い軸)の方向と、試験片の長軸が平行になるように切り出した。試験片を切り出す際に導入される配向乱れや切断面の凹凸は測定結果に著しく影響を与える。そこで、切断面の凹凸や配向の乱れた部位をカッターを用いて削除し、平坦な面を得た。また、試験片の密度や分子配向の度合いも結果に影響を及ぼす。密度および複屈折の値は、それぞれ1.3345〜1.3355g/cmおよび1.30×10−4〜1.50×10−4でなければならない。密度は、試験片採取部位の近傍よりサンプリングした樹脂を試料として、水系密度勾配管を用いて測定した。複屈折は、偏光顕微鏡(Nikon製偏光顕微鏡 ECLIPSE E600POL)を用いて、ベレックコンペンセーター法で測定した。測定値は試験片の中央部で得られた値を採用した。上記のように作製した試験片を、マック・サイエンス社製の熱機械分析(TMA)、タイプTMA 4000Sで熱処理した。0.2gの一定圧縮荷重、Ar雰囲気下で、室温から210℃まで27℃/min.の速度で昇温し、210℃で180秒間保持後、室温まで47℃/min.の速度で降温させ、下記の方法により球晶数を測定する。
【0071】
Leica製ミクロトームRM2065を用いて、試験片の端部より厚さ2μmの切片を作製する。この切片をNikon製偏光顕微鏡 ECLIPSE E600POLを用いて観察する。観察はハロゲンランプ光を光源とし、干渉フィルター等による単色化は行わない。偏光子と検光子の光軸を直交させたいわゆるクロスニコルの状態に光学系を調整し、さらに、530nmの鋭敏色検板を光路に挿入する。像は、偏光顕微鏡に接続したカラーCCDカメラ(HITACHI HV−C205)で観察し、イメージキャプチャーボードを介してマッキントッシュコンピューターに静止画像として保存する。
【0072】
以上のような光学系で切片を観察すると、多数の球晶が観察される。530nm鋭敏色検板を光路に挿入して観察した場合、球晶はその内部での光学異方性の方位を反映した対象性を示す。具体的には、球晶はその中心を対称にして4分割されたように観察される。そして、鋭敏色検板の屈折率の低い軸(挿入方向と平行)に対して平行方向および垂直方向にそれぞれ異なる色を呈する。この色は、検板により生じるレターデーションが試料によって増加した場合の干渉色および、その逆に減少した場合に相当する干渉色であり、挿入した検板の光学軸の方位と球晶内部の光学異方性の方位の関係によって決まる。
【0073】
CCDカメラを用いて、試料上で105μm×79μmの領域を撮影し、コンピューターの記録デバイス(ハードディスクや光磁気ディスクなど)に保存する。この画像より、マッキントッシュコンピューター上で画像処理ソフトウエアUltimage/Pro(株式会社イメージアンドメジャーメント)を用いて以下の手順で球晶の数を計測する。上述したように、球晶は2種類の色を呈している。この一方の色のみが残るようにThresholdレベルを設定し2値化を行う。この操作により、一方の色を持つ部分のみが計測対象となる。さらに、Primary MorphologyメニューのErosionをNumber of integrations=1で実行する。この操作により、本来異なる球晶に属する領域であるにもかかわらず連結しているような部分は分離される。この操作を実行した後に、particleメニューを実行し、Detected particlesの値を読む。このとき、4ピクセル以下の面積のparticleは計測しない。ひとつの球晶あたり、particleは2つ計測されるので、先ほど読んだDetected particlesの値を2で割った値を球晶の数とする。
【0074】
(10)ボトル口栓部の加熱による密度上昇
ボトル口栓部を自家製の赤外線ヒーターによって60秒間熱処理し、天面から試料を採取し密度を測定した。
【0075】
(11)段付き成形板の成形
乾燥したポリエステルを名機製作所製M−150C(DM)射出成形機により、シリンダー温度290℃において、10℃に冷却した段付き平板金型を用い成形する。得られた段付き成形板は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11mmの厚みの約3cm×約5cm角のプレートを階段状に備えたもので、1個の重量は約146gである。3mm厚みのプレートは球晶数測定に、また5mm厚みのプレートはヘイズ(霞度%)測定に使用する。
【0076】
(12)金型汚れの評価
ポリエステルを脱湿空気を用いた乾燥機で乾燥し、名機製作所製M−150C(DM)射出成形機により樹脂温度290℃でプリフォームを成形した。このプリフォームの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた後、コーポプラスト社製LB−01延伸ブロー成形機を用いて二軸延伸ブロー成形し、引き続き約155℃に設定した金型内で7秒間熱固定し、350ccの中空成形容器を得た。成形が定常状態になった中空成形容器の胴部のヘイズを測定する。同様の条件で連続的に延伸ブロー成形し、目視で判断して容器の透明性が損なわれるまでの成形回数で金型汚れを評価した。また、ヘイズ測定用試料としては、5000回連続成形後の容器の胴部を供した。
【0077】
(13)中空成形容器からの内容物の漏れ評価
前記(12)で成形した中空成形容器に90℃の温湯を充填し、キャッピング機によりキャッピングをした後容器を倒し、放置後、内容物の漏洩を調べた。また、キャッピング後の口栓部の変形状態も調べた。
【0078】
(実施例1〜2)
予め反応物を含有している第1エステル化反応器に、高純度テレフタル酸とエチルグリコールとのスラーを連続的に供給し、撹拌下、約250℃、0.5kg/cmGで平均滞留時間3時間反応を行った。また、結晶性二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解し、これにエチレングリコールを添加加熱処理した触媒溶液、燐酸のエチレングリコール溶液、および表1に示す量のポリアセタール(MI=1.0g/10分、密度=1.41g/cm)を別々にこの第1エステル化反応器に連続的に供給した。この反応物を第2エステル化反応器に送付し、撹拌下、約260℃、0.05kg/cmGで所定の反応度まで反応を行った。このエステル化反応生成物を連続的に第1重縮合反応器に送り、撹拌下、約265℃、25torrで1時間、次いで第2重縮合反応器で撹拌下、約265℃、3torrで1時間、さらに第3重縮合反応器で撹拌下、約275℃、0.5〜1torrで1時間重縮合させた。得られたPETのIVは0.54、DEG含有量は2.8モル%であった。反応終了後、重縮合槽よりストランド状で取り出し、水冷後チップ状にカットした。この溶融重縮合PETを結晶化後、205℃で窒素気流下に固相重合した。固相重合後篩分工程およびファイン除去工程で処理速度を変更して処理しファイン含有量の異なる本発明のPETを得た。実施例1および2のPETのAA含有量は3.3ppmおよび3.4ppm、また密度は1.398g/cmおよび1.399g/cmであった。原子吸光分析により測定した実施例1および2のPETのGe残存量は48ppmと47ppm、またP残存量は38ppmと37ppmであった。
【0079】
成形板および二軸延伸成形ボトルによる前記の評価を実施した。結果を表1に示す。これらのPETから得られた成形板の球晶数は、それぞれ4.2×10個/m、12.7×10個/mであった。5000本以上の連続延伸ブロー成形を実施したが、金型汚れは認められず、またボトルの透明性も良好であった。また、これらの容器に90℃の温湯を充填し、キャッピング機によりキャッピングをした後ボトルを倒し放置後、口栓部の変形、および内容物の漏洩を調べたが、問題はなかった。
【0080】
(実施例3)
ポリアセタールの添加量を変更する以外は実施例1と同様にして重縮合し、ファイン除去能力を強化してファイン含有量を0.1ppm以下のPETを得た。なお、PETのDEG含有量は2.3モル%、AA含有量は2.9ppm、また密度は1.400g/cmであった。原子吸光分析により測定したPETのGe残存量は50ppm、またP残存量は36ppmであった。
このPETチップを熱水処理した。ポリエステルチップの水処理には、図1に示す装置を用い、処理槽上部の原料チップ供給口(1)、処理槽の処理水上限レベルに位置するオーバーフロー排出口(2)、処理槽下部のポリエステルチップと処理水の混合物の排出口(3)、このオーバーフロー排出口から排出された処理水と、処理槽から排出された処理水と、処理槽下部の排出項から排出された水切り装置(4)を経由した処理水が、濾材が紙製の30μmの連続式フィルターである微粉除去装置(5)を経由して再び水処理槽へ送られる配管(6)、これらの微粉除去済み処理水の導入口(7)、微粉除去済み処理水中のアセトアルデヒドを吸着処理させる吸着塔(8)、および新しいイオン交換水の導入口(9)を備えた内容量約500リットルの塔型の処理槽を使用した。
処理水温度95℃にコントロールされた水処理槽へ50kg/時間の速度で処理槽上部の供給口(1)から連続投入し、微粉含有量が約500ppmの処理水を用いて水処理時間4時間で処理槽下部の排出口(3)からPETチップとして50kg/時間の速度で処理水と共に連続的に抜き出した。得られたPETのファイン含有量は約300ppmであった。なお、処理水中の微粉量は、処理層の処理水排出口からJIS規格(JIS−Z−8801)による呼び寸法850μmのフィルターを通過した処理水を1000ml採取し、岩城硝子社製1G1ガラスフィルター(細孔100〜120μm)で濾過後、100℃で2時間乾燥し室温下で冷却後、重量を測定して算出する。種々の評価を実施したが、表1に示す通り実施例1と同様に問題のない結果が得られた。
【0081】
(実施例4)
実施例3で得られたPETを用いて、自家製シート成形機にてバレル温度290℃で0.5mm厚みのシートを成形した。次いで該押出シートを三和興業製真空圧空成形機TVP−33型にて約110℃で予熱後満注容量約400ccの蓋溝付き容器を成形した。同時に前記の容器用の蓋も成形した。容器に内容物を充填後前記の蓋の突出部を容器の溝にかみ合わせ、1ヶ月間室温で放置し、蓋の開封性を調べたところ、簡単に開封できた。
【0082】
(比較例1)
ポリアセタールは無添加で、ファイン含有量を変更する以外は実施例1と同一の方法で、ファイン含有量が0.02ppmのPETを得た。
表1に示す通り、得られたPETから得られた成形板の球晶数は、0.3×10個/mで、またこのPETから成形したボトルに90℃の温湯を充填し、キャッピング機によりキャッピングをした後ボトルを倒し放置後、ボトルの口栓部変形および内容物の漏洩を調べたが、口栓部の変形および内容物の漏れが認められた。ボトル胴部ヘーズは8.7%と悪く、また金型汚れまでの成形回数は4000回と低かった。
【0083】
【表1】
Figure 0003551189
【0084】
【発明の効果】
本発明のポリエステルによれば、透明性のよい、耐熱寸法安定性が優れた小型中空成形体および成形後の寸法安定性に優れたシート状物を得ることができ、またシート成形、ボトル成形等において金型汚れが少なく、長時間連続成形性に優れ、多数の成形体を透明性が優れた状態で容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステルの製造方法に用いる装置の概略図。
【符号の説明】
1 原料チップ供給口
2 オーバーフロー排出口
3 ポリエステルチップと処理水との排出口
4 水切り装置
5 微粉除去装置
6 配管
7 処理水導入口
8 吸着塔
9 イオン交換水導入口

Claims (13)

  1. 主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルであって、ファインを0.1〜500ppm含有し、該ポリエステルを溶融成形して得た成形体を昇温結晶化した場合に生成する球晶数が2×10〜100×10個/mの範囲にあることを特徴とするポリエステル。
  2. 該ポリエステルを溶融成形して得た成形体のヘイズが、15%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル。
  3. ポリエステルの極限粘度が、0.55〜0.90dl/g、ポリエステルに共重合されたジエチレングリコール含有量が、該ポリエステルを構成するグリコール成分の1.0〜5.0モル%であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル。
  4. ポリエステルの密度が、1.37g/cm以上であることを特徴とする請求項1、2または3に記載のポリエステル。
  5. ファイン含有量が、0.1〜100ppmであることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載のポリエステル。
  6. ファイン含有量が、0.1〜10ppmであることを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載のポリエステル。
  7. アセトアルデヒド含有量が、10ppm以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6に記載のポリエステル。
  8. 環状3量体含有量が、0.5重量%以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7に記載のポリエステル。
  9. 290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体増加量が、0.30重量%以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8に記載のポリエステル。
  10. 重縮合触媒としてGe化合物および/またはTi化合物を用いて得られたものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9に記載のポリエステル。
  11. 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に記載のポリエステルからなることを特徴とする中空成形体。
  12. 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に記載のポリエステルを押出成形してなることを特徴とするシート状物。
  13. 請求項12記載のシート状物を少なくとも1方向に延伸してなることを特徴とする延伸フィルム。
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