JP2004043793A - ポリエステル組成物並びにそれからなる中空成形体、シ−ト状物及び延伸フイルム - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融成形時の結晶化コントロ−ル性、長時間連続成形性に優れたポリエステル組成物およびそれから得られた透明性、耐熱寸法安定性が優れ、特に、中空成形体の口栓部収縮率が適正な範囲となり、液体容器としたときに残留異味、異臭が発生しにくい中空成形体、シ−ト状物および延伸フイルを提供すること。
【解決手段】主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルのチップと、前記ポリエステルのチップと同一組成のポリエステルのファイン0.1〜5000ppmとからなるポリエステル組成物であって、DSC(示差走査熱量計)で測定した前記ファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)が170〜195℃の範囲であり、さらに前記ポリエステル組成物を290℃の温度で60分間溶融したときの環状三量体増加量が0.50重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物。
【解決手段】主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルのチップと、前記ポリエステルのチップと同一組成のポリエステルのファイン0.1〜5000ppmとからなるポリエステル組成物であって、DSC(示差走査熱量計)で測定した前記ファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)が170〜195℃の範囲であり、さらに前記ポリエステル組成物を290℃の温度で60分間溶融したときの環状三量体増加量が0.50重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル組成物並びにそれからなる中空成形体、シ−ト状物、及び延伸フィルムに関し、特に、溶融成形時の結晶化コントロ−ル性、長時間連続成形性に優れたポリエステル組成物並びに透明性及び耐熱寸法安定性に優れた成形体、シ−ト状物および延伸フイルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステル(以下PET樹脂と略称することがある)は、その優れた透明性、機械的強度、耐熱性、ガスバリアー性等の特性により、炭酸飲料、ジュース、ミネラルウォータ等の容器の素材として採用されており、その普及はめざましいものがある。これらの用途において、ポリエステル製ボトルに高温で殺菌した飲料を熱充填したり、また飲料を充填後高温で殺菌したりするが、通常のポリエステル製ボトルでは、このような熱充填処理時等に収縮、変形が起こり問題となる。ポリエステル製ボトルの耐熱性を向上させる方法として、ボトル口栓部を熱処理して結晶化度を高めたり、また延伸したボトルを熱固定させたりする方法が提案されている。特に口栓部の結晶化が不十分であったり、また結晶化度のばらつきが大きい場合にはキャップとの密封性が悪くなり、内容物の漏れが生ずることがある。
【0003】
また、ボトル胴部の耐熱性を向上させるため、例えば、特公昭59−6216号公報に見られる通り、延伸ブロー金型の温度を高温にして熱処理する方法が採られる。高温度での熱殺菌処理を受ける用途に使用されるボトルの場合には、結晶化速度が早いPET樹脂を用いると、透明性が悪く、口栓部の結晶化度変動が大きい熱処理ボトルしか得られない。特に成形工場において発生する不良品や使用済みボトルの回収品をボトル成形材料の一部として再使用する場合には、バ−ジン原料の結晶化特性が問題となる。容量が1.5リットル以上の大型ボトルでは肉厚が厚くなるため、このような問題が頻繁に発生する。
【0004】
また、このような方法によって同一金型を用いて多数のボトル成形を続けると、長時間の運転に伴って得られるボトルが白化して透明性が低下し、商品価値のないボトルしか得られなくなる。これは金型表面にPET樹脂に起因する付着物が付き、その結果金型汚れとなり、この金型汚れがボトルの表面に転写するためであることが分かった。特に、近年では、ボトル生産時のコスト低下を目的として、成形速度が高速化されてきており、生産性の面から金型汚れはより大きな問題となってきている。
【0005】
また、果汁飲料などのように熱充填を必要とする内容液の場合には、プリフォームまたは成形されたボトルの口栓部を熱処理して結晶化する方法(特許文献1、2参照)が一般的である。このような方法、すなわち口栓部、肩部を熱処理して耐熱性を向上させる方法は、結晶化処理をする時間・温度が生産性に大きく影響し、低温でかつ短時間で処理できる、結晶化速度が速いPET樹脂であることが好ましい。一方、胴部については充填物の色調を悪化させないように、成形時の熱処理を施しても透明であることが要求されており、口栓部と胴部では相反する特性が必要である。
【0006】
このような問題を解決するために種々の提案がなされている。例えば、ポリエチレンテレフタレートにカオリン、タルク等の無機核剤を添加する方法(特許文献3、4参照)、モンタン酸ワックス塩等の有機核剤を添加する方法(特許文献5、6参照)があるが、これらの方法は異物やくもりの発生を伴い実用化には問題がある。また、耐熱性樹脂製ピースを口栓部に挿入する方法(特許文献7、8参照)が提案されているが、ボトルの生産性が悪く、また、リサイクル性にも問題がある。
【0007】
また、PETチップを流動条件下にポリエチレン部材と接触させることによるPETの結晶化速度の改質法(特許文献9参照)、同様の条件下にポリプロピレン系樹脂またはポリアミド系樹脂からなる部材と接触させることによるPETの結晶化速度の改質法(特許文献10参照)、ポリエステル樹脂に0.1〜45ppbのポリエチレンを配合したポリエステル樹脂組成物(特許文献11参照)などが提案されているが、このような方法や組成物の使用によっても安定した結晶化速度や透明性を得るのが非常に難しいことが分かった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭55−79237号公報
【特許文献2】
特開昭58ー110221号公報
【特許文献3】
特開昭56−2342号公報
【特許文献4】
特開昭56−21832号公報
【特許文献5】
特開昭57−125246号公報
【特許文献6】
特開昭57−207639号公報
【特許文献7】
特開昭61−259946号公報
【特許文献8】
特開平2−269638号公報
【特許文献9】
特開平9−71639号公報
【特許文献10】
特開平11−209492号公報
【特許文献11】
特開平9−151308号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の技術の有する問題点を解決し、溶融成形時の結晶化コントロ−ル性、長時間連続成形性に優れたポリエステル組成物並びにそれから得られた透明性及び耐熱寸法安定性が良好で、特に、中空成形体の口栓部収縮率が適正な範囲となり、また得られた成形品に残留異味、異臭が発生しにくい中空成形体、シ−ト状物、及び延伸フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のポリエステル組成物は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルのチップと、前記ポリエステルのチップと同一組成のポリエステルのファイン0.1〜5000ppmとからなるポリエステル組成物であって、DSC(示差走査熱量計)で測定した前記ファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)が170〜195℃の範囲であり、さらに前記ポリエステル組成物を290℃の温度で60分間溶融したときの環状三量体増加量が0.50重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物である。
【0011】
この場合において、前記ポリエステルのチップと同一組成のポリエステルのフイルム状物の含有量が、10ppm以下であることができる。
【0012】
ここで、ファインとはJIS−Z8801による呼び寸法1.7mmの金網をはった篩いを通過したポリエステルの微粉末を意味し、またフイルム状物とはJIS−Z8801による呼び寸法5.6mmの金網をはった篩い上に残ったポリエステルのうち、2個以上のチップが融着したり、あるいは正常な形状より大きく切断されたチップ状物を除去後の、厚みが約0.5mm以下のフイルム状物を意味し、これらの含有量は下記の測定法によって測定する。
【0013】
またここで、下記に記載するようにファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)は示差走査熱量計(DSC)で測定する。DSC測定の昇温時に観察される結晶化ピーク温度を昇温時結晶化温度(Tc1’)と呼ぶが、この結晶化ピークは、普通、一つであるが、二つのピークから構成される場合がある。本発明においては、このような場合は、高温側の結晶化ピーク温度を「ファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)」とする。
【0014】
この場合において、環状3量体含有量が、0.70重量%以下であることができる。
【0015】
また、本発明のポリエステル組成物は、前記のポリエステル組成物に、さらにポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂0.1ppb〜50000ppmを配合してなることを特徴とする。
【0016】
また、この場合において、中空成形体が、前記記載のポリエステル組成物を成形してなるものであることができる。
【0017】
また、この場合において、シ−ト状物が、前記記載のポリエステル組成物を成形してなるものであることができる。
【0018】
さらにまた、この場合において、延伸フイルムが、シ−ト状物を少なくとも1方向に延伸してなるものであることができる。
【0019】
上記の本発明のポリエステル組成物は、成形時に金型汚れが発生しにくく、口栓部の結晶化コントロ−ル性に優れ、かつ優れた透明性、耐熱性、機械的特性、残留異味、異臭が少なく保香性の優れた中空成形体、シ−ト状物や延伸フイルムを与える。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリエステル組成物並びにそれからなる中空成形体、シ−ト状物及び延伸フイルムの実施の形態を具体的に説明する。
本発明に係るポリエステルは、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルであって、好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95%モル以上含む線状ポリエステルである。
【0021】
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0022】
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのグリコ−ルとしては、ジエチレングリコ−ル、1,3−トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ル等のポリアルキレングリコ−ルなどが挙げられる。
【0023】
さらに、前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としての多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコ−ル成分としてグリセリン、ペンタエリスリト−ルを挙げることができる。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0024】
前記のポリエステルは、テレフタ−ル酸とエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分を直接反応させて水を留去してエステル化した後、重縮合触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物またはチタン化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物またはアルミニウム化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて主として減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。
【0025】
前記の出発原料であるテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸またはエチレングリコールとしては、パラキシレンから誘導されるバージンのジメチルテレフタレート、テレフタル酸あるいはエチレンから誘導されるエチレングリコールは勿論のこと、使用済みPETボトルからメタノール分解やエチレングリコール分解などのケミカルリサイクル法により回収したジメチルテレフタレート、テレフタル酸、ビスヒドロキシエチルテレフタレートあるいはエチレングリコールなどの回収原料も、出発原料の少なくとも一部として利用することが出来る。前記回収原料の品質は、使用目的に応じた純度、品質に精製されていなければならないことは言うまでもない。
【0026】
さらにポリエステル樹脂の分子量を増大させ、アセトアルデヒド含有量を低下させるために固相重合を行ってもよい。固相重合前の結晶化促進のため、溶融重縮合ポリエステルを吸湿させたあと加熱結晶化させたり、また水蒸気を直接ポリエステルチップに吹きつけて加熱結晶化させたりしてもよい。
【0027】
まず固相重合に供される前記のポリエステルは、不活性ガス下または減圧下あるいは水蒸気または水蒸気含有不活性ガス雰囲気下において、100〜210℃の温度で1〜5時間加熱して予備結晶化される。次いで不活性ガス雰囲気下または減圧下に190〜230℃の温度で1〜30時間の固相重合を行う。
【0028】
前記溶融重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いし、また連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
【0029】
本発明に係るポリエステルの製造に使用されるアンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。アンチモン化合物は、生成ポリマ−中のアンチモン残存量として50〜250ppmの範囲になるように添加する。
【0030】
本発明に係るポリエステルの製造に使用されるゲルマニウム化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等が挙げられる。ゲルマニウム化合物を使用する場合、その使用量はポリエステル中のゲルマニウム残存量として5〜150ppm、好ましくは10〜100ppm、更に好ましくは15〜70ppmである。
【0031】
本発明に係るポリエステルの製造に使用されるチタン化合物としては、テトラエチルチタネ−ト、テトライソプロピルチタネ−ト、テトラ−n−プロピルチタネ−ト、テトラ−n−ブチルチタネ−ト等のテトラアルキルチタネ−トおよびそれらの部分加水分解物、酢酸チタン、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン、チタンハロゲン化物の加水分解物、シュウ化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸アンモニウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、チタンアセチルアセトナート等が挙げられる。チタン化合物は、生成ポリマ−中のチタン残存量として0.1〜10ppmの範囲になるように添加する。
【0032】
本発明に係るポリエステルの製造に使用されるアルミニウム化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn−プロポキサイド、アルミニウムiso−プロポキサイド、アルミニウムn−ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso−プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに塩基性酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。アルミニウム化合物は、生成ポリマ−中のアルミニウム残存量として5〜200ppmの範囲になるように添加する。
【0033】
これらの触媒化合物は、例えばエチレングリコール溶液としてエステル交換工程中またはエステル交換反応終了後から重縮合反応開始までの任意の段階、あるいはエステル化工程中またはエステル化反応終了後から重縮合反応開始までの任意の段階において添加することができる。
【0034】
また、本発明のポリエステル組成物は、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属化合物を含有してもよい。これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属としては、リチウム,ナトリウム、カリウム,ルビジウム,セシウム,ベリリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウムから選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルカリ金属ないしその化合物がより好ましい。アルカリ金属ないしその化合物を使用する場合、特に、リチウム,ナトリウム、カリウムの使用が好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、生成ポリマ−中のこれらの元素の残存量として1〜50ppmの範囲になるように添加する。
【0035】
またこれらのアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物は、重合反応の任意の段階で反応系に添加することができる。例えばエステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前および反応途中の任意の段階あるいは重縮合反応の開始直前あるいは重縮合反応途中の任意の段階で反応系への添加することができる。
前記のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液等として反応系に添加される。
【0036】
さらにまた、本発明のポリエステル組成物は、ケイ素、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ガリウム、ストロンチウム、ジルコニウム、錫、タングステン、鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含む金属化合物を含有してもよい。
これらの金属化合物としては、これら元素の酢酸塩等の飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸塩などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸塩などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸塩などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸塩などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、アルコキサイド、アセチルアセトナ−ト等とのキレ−ト化合物があげられ、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液、エチレングリコ−ルのスラリ−等として反応系に添加される。これらの金属化合物は、生成ポリマ−1トン当りのこれらの金属化合物の元素の残存量として0.05〜3.0モルの範囲になるように添加する。
【0037】
また、安定剤として種々のリン化合物を使用することができる。本発明で使用されるリン化合物としては、リン酸系化合物、亜リン酸系化合物、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニールエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニールホスホン酸ジメチルエステル、フェニールホスホン酸ジエチルエステル、フェニールホスホン酸ジフェニールエステル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。リン化合物は、生成ポリマ−中のリン残存量として5〜100ppmの範囲になるように前記のポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加する。
【0038】
また、前記以外の金属化合物も、本発明のポリエステル組成物の特性に影響を与えない範囲で用いることができる。具体的な例としては、銅、ホウ素、インジウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、ビスマス、クロム、モリブデン、テルル、ニッケルなどの、酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、アルコキサイドおよび脂肪族又は芳香族カルボン酸塩などが挙げられる。
【0039】
また、本発明に係るポリエステルの製造において、塩基性窒素化合物を用いることができる。塩基性窒素化合物としては、脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式窒素化合物のいずれでもかまわない。具体例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアニリン、ピリジン、キノリン、ジメチルベンジルアミン、ピペリジン、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイド、イミダゾール、イミダゾリン等が挙げられる。これらの化合物は遊離形で用いてもよいし、低級脂肪酸やTPAの塩として用いてもよい。またこれらの塩基性窒素化合物の反応系への添加は、初期重縮合反応が終了するまでの任意の段階で適宜選ぶことが出来、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0040】
これらの塩基性窒素化合物の配合量は、ポリエステル当り0.01〜1モル%、好ましくは0.05〜0.7モル%、更に好ましくは0.1〜0.5モル%である。塩基性窒素化合物の配合量が0.01モル%未満では得られたポリエステルからの中空成形体、特に延伸熱固定中空成形体の透明性が非常に悪くなる。また、1モル%を超えるとポリエステルの色調が悪くなる。
【0041】
本発明のポリエステル組成物は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルのチップと、前記ポリエステルのチップと同一組成のポリエステルのファイン0.1〜5000ppmとからなるポリエステル組成物であって、DSC(示差走査熱量計)で測定した前記ファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)が170〜195℃の範囲であり、さらに前記ポリエステル組成物を290℃の温度で60分間溶融したときの環状三量体増加量が0.50重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物である。
【0042】
ポリエステルの製造工程の中で、溶融重合ポリマーをチップ化する工程、固相重合工程、溶融重合ポリマーチップや固相重合ポリマーチップを輸送する工程等において、本来造粒時に設定した大きさのチップよりかなり小さな粒状体や粉等が発生する。ここでは、このような微細な粒状体や粉等をファイン、また厚みが約0.5mm以下の薄膜状物をフイルム状物と称する。ポリエステルを製造する工程では純度の高い原料や副材料を使用すると共に、溶融重縮合ポリマ−の濾過、ポリエステルチップの冷却水の濾過やイオン交換処理、チップの水処理に系外より導入する水の濾過やイオン交換処理、チップの搬送等に使用する気体の濾過等により使用ポリエステル以外の異物や夾雑物が混入しないような対策を実施するので、前記ファインやフイルム状物にはポリエステル以外の異物や夾雑物を含まないようにすることが出来る。
【0043】
このようなファインやフイルム状物は結晶化を促進させる性質を持っており、多量に存在する場合には、このようなポリエステル組成物から成形した成形体、特にボトルの透明性が非常に悪くなったり、ボトル口栓部結晶化時の収縮量が規定値の範囲内に収まらずキャップで密栓できなくなる。特に、ポリエステル組成物が含有するファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)特性が、得られた成形体の結晶化速度やその変動に影響を及ぼすことが分かってきた。
【0044】
本発明のポリエステル組成物中での前記のファインの含有量は、0.1〜5000ppm、好ましくは0.1〜3000ppm以下、より好ましくは0.1〜1000ppm以下、さらに好ましくは0.1〜500ppm以下、最も好ましくは0.1〜100ppm以下である。前記ファインの含有量が0.1ppm未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形体の口栓部の結晶化が不十分となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良現象が発生したり、また容器成形後の寸法安定性が悪いシ−ト状物を与える。また5000ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなると共に、その速度の変動も大きくなる。したがって、シート状物の場合は、透明性や表面状態が悪くなり、これを延伸した場合、厚み斑が悪くなる。また中空成形体の口栓部の結晶化度が過大、かつ変動大となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないため口栓部のキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。特に、中空成形体用のポリエステル組成物のファイン含有量は、0.1〜500ppmより好ましく0.1〜200ppm、さらに好ましくは0.1〜100ppmが特には0.1〜70ppmが望ましい。
【0045】
そして、本発明のポリエステル組成物を構成するファインの、DSC(示差走査熱量計)で測定される昇温時結晶化温度(Tc1’)が170〜195℃の範囲、好ましくは172〜193℃の範囲、さらに好ましくは175〜190℃の範囲であることが必要である。
【0046】
170℃未満の昇温時結晶化温度(Tc1’)のファインを含む場合には、得られた中空成形体等の成形体の結晶化速度が早いために、中空成形体口栓部の加熱時、結晶化速度が早くなるので口栓部の結晶化が過大となる。その結果、口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないため口栓部のキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたりする。また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となり、厚み斑が生じ、また結晶化速度が速いため得られた中空成形体の透明性が悪くなり、また透明性の変動も大となる。また、得られたシ−ト状物は透明性が悪く、結晶化速度が早いので、正常な延伸が不可能で、厚み斑の大きな、透明性の悪い延伸フイルムしか得られない。
【0047】
また、195℃を超える昇温時結晶化温度(Tc1’)のファインを含むようにしようとするには、エチレンテレフタレート単位が85モル%未満のポリエステルでないと不可能となり、このようなポリエステルでは目的とする用途に使用できない。
【0048】
また、本発明のポリエステル組成物中での前記ポリエステルと同一組成のフイルム状物の含有量は、10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下である。フイルム状物は、配向結晶化しているためか、ファインよりも結晶化促進効果が高く、そのため悪影響を与えない配合量の限度値は低くなる。配合量が10ppmを超える場合は、結晶化速度が非常に早くなり、中空成形容器の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮量が規定値の範囲内に収まらず、口栓部のキャッピング不良となり、内容物の漏れが生じたり、また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。
また、本発明において、ポリエステルのファインやフイルム状物がポリエステルのチップと同一組成とは、ファインやフイルム状物の共重合成分、及び前記共重合成分含有量が、ポリエステルのチップと同一であることを意味する。
【0049】
また、必要に応じて、引き続き固相重合する場合には、前記のようにしてチップ化し、ファインやフイルム状物の除去処理を行った溶融重縮合ポリエステルを再度、固相重合工程直前で空気流による気流分級工程等によってファインやフイルム状物の除去を行い、固相重合工程へ投入する。溶融重縮合したプレポリマ−チップを固相重合設備へ輸送する際や固相重合後のポリエステルチップを篩分工程、下記の水あるいは水蒸気との接触処理工程や貯槽等へ輸送する際には、これらの輸送の大部分はプラグ輸送方式やバケット式コンベヤ輸送方式を採用し、また結晶化装置や固相重合反応器からのチップの抜出しはスクリュ−フィ−ダ−を使用するなどして、チップと工程の機器や輸送配管等との衝撃を出来るだけ抑えることができる装置を使用するのが好ましい。そして、製品として容器に充填する直前において振動篩工程および空気流による気流分級工程によってファイン等の除去処理を行う。
【0050】
また、下記のように溶融重縮合ポリエステルや固相重合ポリエステルを水や水蒸気と接触処理を行う場合は、前記処理直前に空気流による気流分級工程等を設けてファインやフイルム状物の除去を実施し、次工程への輸送にはプラグ輸送方式やバケット式コンベヤ−輸送方式を採用するのが好ましい。そして、前記と同じように、製品として容器に充填する直前において振動篩工程および空気流による気流分級工程によってファイン等の除去処理を行う。
【0051】
本発明において、ポリエステルのファインやフイルム状物の含有量を前記の範囲に調節する方法としては、例えば、篩分工程を通していない、昇温時結晶化温度(Tc1’)が170〜195℃のファインやフイルム状物の含有量の高いポリエステルチップと篩分工程及び空気流によるファイン等除去工程を通した、昇温時結晶化温度(Tc1’)が170〜195℃のファインやフイルム状物の含有量の非常に少ないポリエステルチップを適当な割合で混合する方法によるほか、ファイン等除去工程の篩の目開きを変更することにより調節することもでき、また篩分速度を変更することによるなど任意の方法を用いることができる。
【0052】
また、透明性に優れ、透明性の変動が少なく、また成形時の結晶化コントロ−ル性に優れた成形体を与えるポリエステル組成物を得るためには、ポリエステル組成物を構成するチップ単独を成形して得た成形体の昇温時結晶化温度(Tc1)や降温時結晶化温度(Tc2)の値も重要であって、チップ単独からの成形体の昇温時結晶化温度(Tc1)は150℃以上、また降温時結晶化温度(Tc2)は190℃以下であることが望ましい。なお、成形体の昇温時結晶化温度(Tc1)や降温時結晶化温度(Tc2)は、次のようにして求める。ポリエステル組成物からチップのみを選び、下記の実施例(12)の方法によって得た段付成形板の2mm厚みのプレートの中央部からの試料10mgを下記の測定法(8)に記載した装置を用いて、室温から290℃まで20℃/分の速度で昇温し、その途中において観察される結晶化ピークの頂点温度を求め、これを昇温時結晶化温度(Tc1)とし、さらに290℃まで昇温したあと290℃で3分間保持し、次いで240℃までは10℃/分の速度で降温し、さらに室温までは7℃/分の速度で降温して、降温時に観察される結晶化ピーク温度を求め、これを成形体の降温時結晶化温度(Tc2)とする。
【0053】
また、本発明のポリエステル組成物を290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.50重量%以下であることが必要である。環状3量体の増加量は好ましくは0.40重量%以下、より好ましくは0.30重量%以下、さらに好ましくは0.20重量%以下であることが好ましい。290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.50重量%を越えると、成形の樹脂溶融時に環状3量体量が増加し、加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
【0054】
本発明のポリエステル組成物は、例えば下記のようにして製造することができる。すなわち、溶融重縮合後ダイスより溶融ポリエステルを水中に押出して水中でカットする、チップ切断面に衝撃力やせん断力が出来るだけ掛からない造粒方式によって、下記の(1)〜(4)の少なくとも一つを満足する冷却水を用いて冷却しながらチップ化し、ついでチップ状に形成したポリエステルチップを水切り後、振動式篩工程や振動篩工程および空気流による気流分級工程によって所定のサイズ以外の形状のチップやファインやフイルム状物を除去し、プラグ輸送方式やバケット式コンベヤ−輸送方式により貯蔵用タンクに送る。前記タンクからのチップの抜出はスクリュ−式フィ−ダ−により、次工程へはプラグ輸送方式やバケット式コンベヤ−輸送方式によって輸送し、次工程の直前に空気流による気流分級工程等を設けてファイン等除去処理を行うのが好ましい。
N ≦ 1.0(ppm) (1)
M ≦ 0.5(ppm) (2)
S ≦ 2.0(ppm) (3)
C ≦ 1.0(ppm) (4)
【0055】
ここで、冷却水中のナトリウム含有量(N)は、好ましくはN≦0.5ppmであり、さらに好ましくはN≦0.1ppmである。
冷却水中のマグネシウム含有量(M)は、好ましくはM≦0.3ppmであり、さらに好ましくはM≦0.1ppmである。
また、冷却水中の珪素の含有量(S)は、好ましくはS≦0.5ppmであり、さらに好ましくはS≦0.3ppmである。
さらに、冷却水中のカルシウム含有量(C)は、好ましくはC≦0.5ppmであり、さらに好ましくはC≦0.1ppmである。
【0056】
また、冷却水中のナトリウム含有量(N)、マグネシウム含有量(M)、珪素の含有量(S)およびカルシウム含有量(C)の下限値は、N≧0.001ppm、M≧0.001ppm、S≧0.02ppmおよびC≧0.001ppmである。このような下限値以下にするには、莫大な設備投資が必要であり、また運転費用も非常に高くなり経済的な生産は困難である。
【0057】
カット面にせん断力がかかり難い水中カット方式以外のカット方式によって、前記の条件を外れる冷却水を用いてチップ化した場合には、これらの金属含有化合物がポリエステルチップ表面に付着し、得られたポリエステルが含むファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)が170℃未満になり、そのために結晶化速度が非常に早く、またその変動が大きくなり好ましくない。
【0058】
また、前記の条件を外れる冷却水を用いて冷却しながらチップ化した溶融重縮合ポリエステルを固相重合すると、チップ化工程においてチップ表面に付着して固相重合反応装置に持ち込まれた前記の金属含有物質は、ポリエステルチップの表面層の一部と共に固相重合装置の器壁に固着し、これが約170℃以上の高温度での長時間加熱によって金属含有量の高いスケールとなって器壁に付着していく。そして、これが時々剥離してポリエステルチップ中に混入し、ボトル等成形体中の異物となって商品価値を低下さすという問題が発生する。
【0059】
また、シ−トを製造する際には、製膜時に前記のスケ−ルが溶融ポリマ−濾過フィルタ−に詰まるためフィルタ−濾過圧の上昇が激しくなり、操業性や生産性が悪くなるという問題も発生する。
【0060】
以下にチップの冷却水のナトリウム含有量、マグネシウム含有量、珪素含有量、カルシウム含有量を前記の範囲に抑える方法を例示するが、本発明はこれに限定するものではない。
【0061】
冷却水のナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を低減させるために、チップ化工程に工業用水が送られるまでの工程で少なくとも1ヶ所以上にナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を除去する装置を設置する。また、粒子状になった二酸化珪素やアルミノ珪酸塩等の粘土鉱物を除去するためにはフィルターを設置する。ナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を除去する装置としては、イオン交換装置、限外濾過装置や逆浸透膜装置などが挙げられる。
【0062】
また、系外から導入する導入水の中に存在する粒径が1〜25μmの粒子を50000個/10ml以下にした水を使用することが望ましい。導入水中の粒径1〜25μmの粒子の個数は、好ましくは10000個/10ml以下、さらに好ましくは1000個/10ml以下、特に好ましくは100個/10ml以下である。
【0063】
次いで、290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.50重量%以下であるポリエステル組成物を得るため、溶融重縮合後や固相重合後に得られたポリエステルの重縮合触媒を失活処理することが必要である。ポリエステルの重縮合触媒を失活処理する方法としては、溶融重縮合後や固相重合後にポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。
【0064】
前記の目的を達成するためにポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法を次に述べる。
熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
【0065】
以下に水処理を工業的に行う方法を例示するが、これに限定するものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
【0066】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわちバッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的又は間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
【0067】
そして、水処理方法が連続方式の場合であってもバッチ的の場合であっても、系外から導入する水の中に存在する粒径が1〜25μmの粒子の個数をX、ナトリウムの含有量をN、マグネシウムの含有量をM、カルシウムの含有量Cを、珪素の含有量をSとした場合、下記(5)〜(9)の少なくとも一つを満足させて水処理を行う。
1 ≦ X ≦ 50000 (個/10ml) (5)
0.001 ≦ N ≦ 1.0 (ppm) (6)
0.001 ≦ M ≦ 0.5 (ppm) (7)
0.001 ≦ C ≦ 1.0 (ppm) (8)
0.01 ≦ S ≦ 2.0 (ppm) (9)
【0068】
水処理槽に導入する水中の粒子個数、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、珪素の含有量のいずれかを上記範囲に設定することにより、スケールと呼ばれる酸化物や水酸化物等の金属含有物質が処理水中に浮遊、沈殿、さらには処理槽壁や配管壁に付着したりし、これがポリエステルチップに付着、浸透して、成形時での結晶化が促進され、透明性の悪いボトルになることを防ぐことができる。
【0069】
水処理槽に導入する水中の粒子数を50000個/10ml以下にする方法としては、工業用水等の自然水を処理槽に供給するまでの工程の少なくとも1ヶ所以上に粒子を除去する装置を設置する。
【0070】
また水処理槽に導入する水中のナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を低減させるために、工業用水等の自然水を処理槽に供給するまでの工程で少なくとも1ヶ所以上にナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を除去する装置を設置する。これらの装置としてはチップ冷却水の処理に使用するのと同様の装置が挙げられる。
【0071】
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエチレンテレフタレ−ト1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気とを接触させる。
【0072】
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
【0073】
以下に粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気または水蒸気含有ガスとの接触処理を工業的に行なう方法を例示するが、これに限定されるものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
【0074】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行なう。
【0075】
ポリエステルのチップを連続的に水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエチレンテレフタレ−トを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
上記の如く、水又は水蒸気で処理した場合は粒状ポリエチレンテレフタレ−トを必要に応じて振動篩機、シモンカ−タ−などの水切り装置で水切りし、コンベヤ−によって次の乾燥工程へ移送する。
【0076】
水又は水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパ−型の通気乾燥機が通常使用される。
バッチ方式で乾燥する乾燥機としては大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
【0077】
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
【0078】
また重縮合触媒を失活させる別の手段として、リン化合物を溶融重縮合後または固相重合後のポリエステルの溶融物に添加、混合して重合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0079】
溶融重合ポリエステルの場合には、溶融重合反応終了後のポリエステルと、リン化合物を配合したポリエステル樹脂とを溶融状態で混合できるラインミキサ−等の機器中で混合して重縮合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0080】
また固相重合ポリエステルにリン化合物を配合する方法としては、固相重合ポリエステルにリン化合物をドライブレンドする方法やリン化合物を溶融混練して配合したポリエステルマスタ−バッチチップと固相重合ポリエステルチップを混合する方法によって所定量のリン化合物をポリエステルに配合後、押出機や成形機中で溶融し、重縮合触媒を不活性化する方法等が挙げられる。
【0081】
使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0082】
また本発明のポリエステル組成物の環状3量体の含有量は、好ましくは0.50重量%以下、より好ましくは0.45重量%以下、さらに好ましくは0.40重量%以下である。本発明のポリエステル組成物から耐熱性の中空成形体等を成形する場合は加熱金型内で熱処理を行うが、環状3量体の含有量が0.50重量%以上含有する場合には、加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
【0083】
また、本発明のポリエステル組成物は、前記のポリエステル組成物にポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂0.1ppb〜50000ppmを配合してなることを特徴とするポリエステル組成物である。本発明のポリエステル組成物中での前記のポリオレフィン樹脂等の配合割合は0.1ppb〜50000ppm、好ましくは0.3ppb〜10000ppm、より好ましくは0.5ppb〜100ppm、さらに好ましくは1.0ppb〜1ppm、特に好ましくは1.0ppb〜45ppbである。配合量が0.1ppb未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形体の口栓部の結晶化が不十分となるため、サイクルタイムを短くすると口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となったり、また、耐熱性中空成形体を成形する延伸熱固定金型の汚れが激しく、透明な中空成形体を得ようとすると頻繁に金型掃除をしなければならない。また50000ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなり、中空成形体の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形体用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。また、シ−ト状物の場合、50000ppmを越えると透明性が非常に悪くなり、また延伸性もわるくなって正常な延伸が不可能で、厚み斑の大きな、透明性の悪い延伸フイルムしか得られない。また、前記のポリオレフィン樹脂等を単独使用する場合は、加熱金型汚れ防止には殆ど効果がないが、特定量のファインとの共存によって金型汚れに非常に効果があることが分かっている。
【0084】
本発明のポリエステル組成物に配合されるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはα−オレフィン系樹脂が挙げられる。またこれらの樹脂は結晶性でも非晶性でもかまわない。
【0085】
本発明のポリエステル組成物に配合されるポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン系樹脂が挙げられる。
【0086】
また本発明のポリエステル組成物に配合されるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと、エチレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ブロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等のプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0087】
また本発明のポリエステル組成物に配合されるα−オレフィン系樹脂としては、4−メチルペンテン−1等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ブテン−1単独重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、ブテン−1−エチレン共重合体、ブテン−1−プロピレン共重合体等のブテン−1系樹脂や4−メチルペンテン−1とC2〜C18のα−オレフィンとの共重合体、等が挙げられる。
【0088】
また、本発明のポリエステル組成物に配合されるポリアミド樹脂としては、例えば、ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムの重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/MXD6、ナイロンMXD6/MXDI、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/12、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等が挙げられる。またこれらの樹脂は結晶性でも非晶性でもかまわない。
【0089】
また、本発明のポリエステル組成物に配合されるポリアセタ−ル樹脂としては、例えばポリアセタ−ル単独重合体や共重合体が挙げられる。ポリアセタ−ル単独重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.40〜1.42g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロー比(MFR)が0.5〜50g/10分の範囲のポリアセタ−ルが好ましい。
【0090】
また、ポリアセタ−ル共重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.38〜1.43g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロー比(MFR)が0.4〜50g/10分の範囲のポリアセタ−ル共重合体が好ましい。これらの共重合成分としては、エチレンオキサイドや環状エ−テルが挙げられる。
【0091】
本発明における前記のポリオレフィン樹脂等を配合したポリエステル組成物の製造は、前記ポリエステルに前記ポリオレフィン樹脂等の樹脂を、その含有量が前記範囲となるように直接に添加し溶融混練する方法、または、マスタ−バッチとして添加し溶融混練する方法等の慣用の方法によるほか、前記樹脂を、前記ポリエステルの製造段階、例えば、溶融重縮合時、溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合時、固相重合直後等のいずれかの段階、または、製造段階を終えてから成形段階に到るまでの工程などで、粉粒体として直接に添加するか、或いは、前記ポリエステルチップを流動条件下に前記樹脂製部材に接触させる等の方法で混入させる方法、または前記の接触処理後、溶融混練する方法等によることもできる。
【0092】
ここで、ポリエステルチップを流動条件下に前記樹脂製の部材に接触させる方法としては、前記樹脂製の部材が存在する空問内で、ポリエステルチップを前記部材に衝突接触させることが好ましく、具体的には、例えば、ポリエステルの溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合直後等の製造工程時、また、ポリエステルチップの製品としての輸送段階等での輸送容器充填・排出時、また、ポリエステルチップの成形段階での成形機投入時、等における気力輸送配管、重力輸送配管、サイロ、マグネットキャッチャ−のマグネット部等の一部を前記樹脂製とするか、前記樹脂製フイルム、シート、成形体などを貼り付けるか、または、前記樹脂をライニングするとか、或いは前記移送経路内に棒状又は網状体等の前記樹脂製部材を設置する等して、ポリエステルチップを移送する方法が挙げられる。ポリエステルチップの前記部材との接触時間は、通常、0.01秒〜数分程度の極短時間であるが、ポリエステルに前記樹脂を微量混入させることができる。
【0093】
また、溶融重縮合工程または固相重合工程以降のポリエステルと接触する気体として、粒径0.3〜5μmの粒子が1000000(個/立方フィ−ト)以下の、好ましくは500000(個/立方フィ−ト)以下、さらに好ましくは100000(個/立方フィ−ト)以下の、系外より導入される気体を使用することが望ましい。気体中の粒径5μmを超える粒子は、特に限定するものではないが、好ましくは5(個/立方フィ−ト)以下、さらに好ましくは1(個/立方フィ−ト)以下である。
【0094】
ポリエステルの製造工程において、溶融重縮合工程や固相重合工程等から篩分工程や気流分級工程等の各工程を経由してサイロ、成形機のホッパ−、輸送用コンテナ−等の容器に充填されるが、これらの工程間のポリエステルの輸送や乾燥には、一般に送風機等によって処理設備近辺の空気を工程に採りいれて使用される。従来は、このような空気は、これを未処理のままで使用するか、または、JIS B 9908(1991)で規定される形式3のような低性能フィルタユニットを装着した清浄機によって処理しただけで使用するのが一般的であった。しかし、このような工程で処理されたポリエステルからは、透明性が悪い成形体しか得られないという問題が生じる場合があった。特に、前記樹脂からなる部材との接触処理工程の前後において、ポリエステルと接触する気体として前記のような品質の空気を用いると、得られた成形体の結晶化速度や透明性等の変動が大となり問題となる可能性が大きい。
【0095】
したがって、本発明のポリエステル組成物の製造方法においては、溶融重縮合後、固相重合後、水処理後あるいは前記樹脂からなる部材との接触処理後のポリエステルのうち、少なくとも一つのポリエステルが、次工程への輸送工程、篩分工程、貯蔵工程、容器充填工程のいづれか一つの工程において接触する気体として、粒径0.3〜5μmの粒子が1000000(個/立方フィ−ト)以下の系外より導入される気体を使用することが望ましい。
【0096】
なお、気体中の粒径0.3μm未満の粒子に関しては、特に規定するものではないが、透明な成形体を与える樹脂を得るためには、少ない方が好ましい。粒径0.3μm未満の粒子数としては好ましくは10000000(個/立方フィ−ト)以下、より好ましくは5000000(個/立方フィ−ト)以下、さらに好ましくは2000000(個/立方フィ−ト以下)である。
以下に、系外から導入する気体中の粒径0.3〜5μmの粒子数を1000000(個/立方フィ−ト)以下に制御する方法を例示するが、本発明はこれに限定するものではない。
【0097】
系外から導入する気体中の粒径0.3〜5μmの粒子数を1000000(個/立方フィ−ト)以下にする方法としては、系外から導入する気体がポリエステルチップと接触するまでの工程中の少なくとも1ケ所以上に前記粒子を除去する清浄化装置を設置する。前記気体が処理設備近辺の空気の場合は、前記空気採りいれ口から送風機によって導入した空気がポリエステルチップと接触するまでの工程中に、JIS B 9908(1991)で規定される形式1又は/及び形式2のフィルタユニットを装着した気体清浄装置を設置し、前記空気中の粒径0.3〜5μmの粒子数を1000000(個/立方フィ−ト)以下にすることが好まし。また、前記空気採りいれ口にJIS B 9908(1991)で規定される形式3のフィルタユニットを装着した気体清浄装置を設置して、前記のフィルタユニットを装着した気体清浄装置と併用することによって前記のフィルタユニットの寿命を延ばすことが可能である。
【0098】
気体中の粒子を除去するJIS B 9908(1991)で規定される形式1の超高性能のフィルタ(以下、HEPAフィルタと略称する)ユニットの素材としては、ガラス繊維からなる濾紙が挙げられる。
【0099】
また、JIS B 9908(1991)で規定される形式2の高性能フィルタユニットの素材としては、ポリプロピレン繊維からなるフィルタやテフロン(R)フイルムとPET繊維布の積層体からのフィルタ等が挙げられる。
一般には、ポリプロピレン繊維製の静電フィルタが使用される。
【0100】
また、JIS B 9908(1991)で規定される形式3の低性能フィルタユニットの素材としては、PETやポリプロピレンからなる不織布等が挙げられる。
【0101】
本発明のポリエステル組成物の極限粘度は、0.55〜1.50デシリットル/グラムであるのが好ましく、0.58〜1.20デシリットル/グラムであるのがより好ましい。ポリエステルの極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満の場合は、本発明のポリエステル組成物を溶融成形して得られた成形体の透明性、耐熱性、機械特性等が充分満足されないことがある。また、極限粘度が1.50デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、成形体が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0102】
また、本発明のポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量は、50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下である。アセトアルデヒド含有量が50ppm以上の場合は、このポリエステルから成形された容器等の内容物の風味や臭い等が悪くなる。
【0103】
また本発明に係るポリエステル中に共重合されたジエチレングリコ−ル量は、前記ポリエステルを構成するグリコ−ル成分の好ましくは0.5〜5.0モル%、より好ましくは1.0〜4.5モル%、さらに好ましくは1.5〜4.0モル%である。ジエチレングリコ−ル量が5.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成型時に分子量低下が大きくなったり、またアセトアルデヒド含有量やホルムアルデヒド含有量の増加量が大となり好ましくない。またジエチレングリコ−ル含有量が0.5モル%未満の場合は、得られた成形体の透明性が悪くなる。
【0104】
また本発明のポリエステル組成物の環状3量体の含有量は、好ましくは0.70重量%以下、より好ましくは0.50重量%以下、さらに好ましくは0.40重量%以下である。本発明のポリエステル組成物から耐熱性の中空成形体等を成形する場合は加熱金型内で熱処理を行うが、環状3量体の含有量が0.7重量%を越える場合には、加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
【0105】
本発明において、ポリエステルのチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は通常1.5〜5mm、好ましくは1.6〜4.5mm、さらに好ましくは1.8〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.5〜4mm、径は1.5〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は10〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0106】
また、本発明のポリエステル組成物は、これを射出成形して得られた厚さ5mmの成形板のヘイズが15%以下、また射出成形して得た厚さ2mmの成形体からの試験片の昇温時の結晶化温度(以下「Tc1」と称する)が、150〜172℃の範囲であることが望ましい。成形板のヘイズは、好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下であり、また昇温時の結晶化温度(Tc1)は、好ましくは153〜170℃、さらに好ましくは155〜168℃の範囲である。
成形板のヘイズが15%を超える場合は,得られた中空成形体の透明性が悪くなり、特に延伸中空成形体の場合には問題となる。また、Tc1が168℃を越える場合は、加熱結晶化速度が非常に遅くなり中空成形体口栓部の結晶化が不十分となり、内容物の漏れの問題が発生する。また、Tc1が150℃未満の場合は、中空成形体の透明性が低下し問題となる。
【0107】
本発明のポリエステル組成物は、使用済みPETボトルをケミカルリサイクル法によって精製し回収したジメチルテレフタレートやテレフタル酸などの原料を少なくとも出発原料の一部として用いて得たPETや、使用済みPETボトルをメカニカルリサイクル法により精製し回収したフレーク状PETやチップ状PETなどと混合して用いることができる。
【0108】
本発明のポリエステル組成物に飽和脂肪酸モノアミド、不飽和脂肪酸モノアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等を同時に併用することも可能である。
【0109】
飽和脂肪酸モノアミドの例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸モノアミドの例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドリシノ−ル酸アミド等が挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド等が挙げられる。また、不飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。好ましいアミド系化合物は、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等である。このようなアミド化合物の配合量は、10ppb〜1×105ppmの範囲である。
【0110】
また炭素数8〜33の脂肪族モノカルボン酸の金属塩化合物、例えばナフテン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、リノ−ル酸等の飽和及び不飽和脂肪酸のリチュウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、及びコバルト塩等を同時に併用することも可能である。これらの化合物の配合量は、10ppb〜300ppmの範囲である。
【0111】
本発明のポリエステル組成物は、中空成形体、トレ−、2軸延伸フイルム等の包装材、金属缶被覆用フイルム等として好ましく用いることが出来る。また、本発明のポリエステル組成物は、多層成形体や多層フイルム等の1構成層としても用いることが出来る。
【0112】
本発明のポリエステル組成物は、一般的に用いられる溶融成形法を用いてフィルム、シート、容器、その他の包装材料を成形することができる。また、本発明のポリエステル組成物からなるシ−ト状物を少なくとも一軸方向に延伸することにより機械的強度を改善することが可能である。本発明のポリエステル組成物からなる延伸フィルムは射出成形もしくは押出成形して得られたシート状物を、通常PETの延伸に用いられる一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のうちの任意の延伸方法を用いて成形される。また圧空成形、真空成形によリカップ状やトレイ状に成形することもできる。
【0113】
延伸フィルムを製造するに当たっては、延伸温度は通常は80〜130℃である。延伸は一軸でも二軸でもよいが、好ましくはフィルム実用物性の点から二軸延伸である。延伸倍率は一軸の場合であれば通常1.1〜10倍、好ましくは1.5〜8倍の範囲で行い、二軸延伸であれば縦方向および横方向ともそれぞれ通常1.1〜8倍、好ましくは1.5〜5倍の範囲で行えばよい。また、縦方向倍率/横方向倍率は通常0.5〜2、好ましくは0.7〜1.3である。得られた延伸フィルムは、さらに熱固定して、耐熱性、機械的強度を改善することもできる。熱固定は通常緊張下、120℃〜240、好ましくは150〜230℃で、通常数秒〜数時間、好ましくは数十秒〜数分間行われる。
【0114】
中空成形体を製造するにあたっては、本発明のポリエステル組成物から成形したブリフォームを延伸ブロー成形してなるもので、従来PETのブロー成形で用いられている装置を用いることができる。具体的には例えば、射出成形または押出成形で一旦プリフォームを成形し、そのままあるいは口栓部、底部を加工後、それを再加熱し、ホットパリソン法あるいはコールドパリソン法などの二軸延伸ブロー成形法が適用される。この場合の成形温度、具体的には成形機のシリンダー各部およびノズルの温度は通常260〜300℃の範囲である。延伸温度ば通常70〜120℃、好ましくは90〜110℃で、延伸倍率は通常縦方向に1.5〜3.5倍、円周方向に2〜5倍の範囲で行えばよい。得られた中空成形体は、そのまま使用できるが、特に果汁飲料、ウーロン茶などのように熱充填を必要とする飲料の場合には一般的に、さらにブロー金型内で熱固定処理を行い、耐熱性を付与して使用される。熱固定は通常、圧空などによる緊張下、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、数秒〜数時間、好ましくは数秒〜数分間行われる。
【0115】
また、口栓部に耐熱性を付与するために、射出成形または押出成形により得られたプリフォ−ムの口栓部を遠赤外線や近赤外線ヒ−タ設置オ−ブン内で結晶化させたり、あるいはボトル成形後に口栓部を前記のヒ−タで結晶化させる。
【0116】
本発明のポリエステル組成物には、必要に応じて公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、染料、顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。
【0117】
また、本発明のポリエステル組成物をフイルム用途に使用する場合には、滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性を改善するために、ポリエステル組成物中に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の無機粒子、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等の有機塩粒子やジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体等の架橋高分子粒子などの不活性粒子を含有させることが出来る。
なお、本発明における、主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0118】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定させるものではない。なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0119】
(2)ポリエステルのジエチレングリコ−ル含有量(以下[DEG含有量」という)
メタノ−ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0120】
(3)ポリエステルの環状3量体の含有量(以下「CT含有量」という)
試料300mgをヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロフォルム30mlを加えて希釈する。これにメタノ−ル15mlを加えてポリマ−を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミド10mlで定容とし、高速液体クロマトグラフ法により環状3量体を定量した。
【0121】
(4)ポリエステルのアセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れた上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定し、濃度をppmで表示した。
【0122】
(5)ポリエステルの溶融時の環状3量体増加量(△CT量)
乾燥したポリエステルチップ3gをガラス製試験管に入れ、窒素雰囲気下で290℃のオイルバスに60分浸漬させ溶融させる。溶融時の環状3量体増加量は、次式により求める。
溶融時の環状3量体増加量(重量%)=溶融後の環状3量体含有量(重量%)−溶融前の環状3量体含有量(重量%)
【0123】
(6)ファインの含有量およびフイルム状物含有量の測定
樹脂約0.5kgを、JIS−Z8801による呼び寸法5.6mmの金網をはった篩(A)と呼び寸法1.7mmの金網をはった篩(直径20cm)(B)を2段に組合せた篩の上に乗せ、テラオカ社製揺動型篩い振トウ機SNF−7で1800rpmで1分間篩った。この操作を繰り返し、樹脂を合計20kg篩った。
前記の篩(A)上に、厚みが約0.5mm以下のフイルム状物とは別に、2個以上のチップがお互いに融着したものや正常な形状より大きなサイズに切断されたチップ状物が捕捉されている場合は、これらを除去した残りの、厚みが約0.5mm以下のフイルム状物および篩(B)の下にふるい落とされたファインは、別々にイオン交換水で洗浄し岩城硝子社製G1ガラスフィルターで濾過して集めた。これらをガラスフィルターごと乾燥器内で100℃で2時間乾燥後、冷却して秤量した。再度、イオン交換水で洗浄、乾燥の同一操作を繰り返し、恒量になったことを確認し、この重量からガラスフィルターの重量を引き、ファイン重量およびフイルム状物の重量を求めた。ファイン含有量あるいはフイルム状物含有量は、ファイン重量またはフイルム状物重量/篩いにかけた全樹脂重量、である。これらの値より合計含有量を求める。
【0124】
(7)ファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)測定
セイコ−電子工業(株)製の示差走査熱量計(DSC)、RDC−220を用いて測定。(6)において、20kgのポリエステルから集めたファインを25℃で3日間減圧下に乾燥し、これから一回の測定に試料10mgを使用した。室温から290℃まで昇温速度20℃/分の速度で昇温し、290℃で3分間保持した後、液体窒素で急冷する。次いで、再度同様の条件で昇温した時に観察される結晶化ピ−ク温度を求め、これを昇温時結晶化温度(Tc1’)とする。ただし、結晶化ピーク温度が二つの場合には高温側の結晶化ピーク温度を求め、これを昇温時結晶化温度(Tc1’)とする。測定は、ファインの試料、最大10ヶについて実施して、これらの昇温時結晶化温度(Tc1’)の平均値を求め、これをファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)とする。
【0125】
(8)成形体の昇温時の結晶化温度(Tc1)
セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定。下記(13)の成形板の2mm厚みのプレ−トの中央部からの試料10mgを使用。昇温速度20℃/分で昇温し、その途中において観察される結晶化ピ−クの頂点温度を測定し、昇温時結晶化温度(Tc1’)とする。
【0126】
(9)ポリエステルチップの平均密度およびプリフォ−ム口栓部の密度
硝酸カルシュウム/水混合溶液の密度勾配管で30℃で測定した。
【0127】
(10)ヘイズ(霞度%)およびヘイズ斑
下記(13)の成形体(肉厚5mm)および(14)の中空成形体の胴部(肉厚約0.4mm)より試料を切り取り、日本電色(株)製ヘイズメ−タ−、modelNDH2000で測定。また、10回連続して成形した成形板(肉厚5mm)のヘイズを測定し、ヘイズ斑は下記により求めた。
ヘイズ斑=ヘイズの最大値/ヘイズの最小値
【0128】
(11)プリフォ−ム口栓部の加熱による密度上昇
プリフォ−ム口栓部を自家製の赤外線ヒ−タ−によって180秒間熱処理し、天面から試料を採取し密度を測定した。
【0129】
(12)段付成形板の成形
本特許記載にかかる段付成形板の成形においては、減圧乾燥機を用いて140℃で16時間程度減圧乾燥したポリエステルチップを名機製作所製射出成形機M−150C−DM型射出成形機により図1、図2に示すようにゲート部(G)を有する、2mm〜11mm(A部の厚み=2mm、B部の厚み=3mm、C部の厚み=4mm、D部の厚み=5mm、E部の厚み=10mm、F部の厚み=11mm)の厚さの段付成形板を射出成形した。
ヤマト科学製真空乾燥器DP61型を用いて予め減圧乾燥したポリエステルチップを用い、成形中にチップの吸湿を防止するために、成形材料ホッパー内は乾燥不活性ガス(窒素ガス)パージを行った。M−150C−DM射出成形機による可塑化条件としては、フィードスクリュウ回転数=70%、スクリュウ回転数=120rpm、背圧0.5MPa、シリンダー温度はホッパー直下から順に45℃、250℃、以降ノズルを含め290℃に設定した。射出条件は射出速度及び保圧速度は20%、また成形品重量が146±0.2gになるように射出圧力及び保圧を調整し、その際保圧は射出圧力に対して0.5MPa低く調整した。
射出時間、保圧時間はそれぞれ上限を10秒、7秒,冷却時間は50秒に設定し、成形品取出時間も含めた全体のサイクルタイムは概ね75秒程度である。
金型には常時、水温10℃の冷却水を導入し温調するが、成形安定時の金型表面温度は22℃前後である。
成形品特性評価用のテストプレートは、成形材料導入し樹脂置換を行った後、成形開始から11〜18ショット目の安定した成形品の中から任意に選ぶものとした。
2mm厚みのプレート(図1のA部)は昇温時の結晶化温度(Tc1)測定、5mm厚みのプレート(図1のD部)はヘイズ(霞度%)測定、に使用する。
【0130】
(13)中空成形体の成形
ポリエステルを脱湿空気を用いた乾燥機で乾燥し、各機製作所製M−150C(DM)射出成形機により樹脂温度290℃でプリフォームを成形した。このプリフォームの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた。次にこの予備成形体をCORPOPLAST社製のLB−01E成形機で縦方法に約2.5倍、周方向に約3.8倍の倍率に二軸延伸ブローし、引き続き約150℃に設定した金型内で約7秒間熱固定し、容量が2000ccの容器(胴部肉厚0.45mm)を成形した。延伸温度は100℃にコントロールした。
【0131】
(14)中空成形体からの内容物の漏れ評価
前記(13)で成形した中空成形体に90℃の温湯を充填し、キャッピング機によりキャッピングをしたあと容器を倒し放置後、内容物の漏洩を調べた。また、キャッピング後の口栓部の変形状態も調べた。
【0132】
(15)チップ化工程の冷却水および水処理工程の導入水中のナトリウム含有量、カルシウム含有量、マグネシウム含有量および珪素含有量
粒子除去およびイオン交換済みの冷却水または導入水を採取し、岩城硝子社製1G1ガラスフィルタ−で濾過後、濾液を島津製作所製誘導結合プラズマ発光分析装置で測定。
【0133】
(16)チップ化工程の冷却水中、および水処理工程の導入水中およびリサイクル水中の粒子数の測定
チップ化工程の冷却水、粒子除去およびイオン交換済みの導入水、または濾過装置(5)および吸着塔(8)で処理したリサイクル水を光遮断法による粒子測定器である株式会社セイシン企業製のPAC 150を用いて測定し、粒子数を個/10mlで表示した。
【0134】
(17)ポリエステルチップと接触する気体中の粒子数の測定
気体を強制的に送るための送風機等によって送られ、気体清浄装置を通過した気体をチップと接触する前に気体本流と分岐して粒子測定器に導入して測定する。5回測定を繰返し、平均値を求め、気体1立方フィート当たりの個数を計算する。
粒子測定器としては、リオン株式会社製の光散乱式粒子測定器、KC−01Bを用いた。
【0135】
(実施例1)
予め反応物を含有している第1エステル化反応器に、高純度テレフタル酸とエチルグリコ−ルとのスラリ−を連続的に供給し、撹拌下、約250℃、0.5kg/cm2Gで平均滞留時間3時間反応を行った。この反応物を第2エステル化反応器に送付し、撹拌下、約260℃、0.05kg/cm2で所定の反応度まで反応を行った。また、結晶性二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解し、これにエチレングリコ−ルを添加加熱処理した触媒溶液および燐酸のエチレングリコ−ル溶液を、別々にこの第2エステル化反応器に連続的に供給した。このエステル化反応生成物を連続的に第1重縮合反応器に供給し、撹拌下、約265℃、25torrで1時間、次いで第2重縮合反応器で撹拌下、約265℃、3torrで1時間、さらに最終重縮合反応器で撹拌下、約275℃、0.5〜1torrで1時間重縮合させた。溶融重縮合プレポリマ−の極限粘度は0.56dl/gであった。
【0136】
溶融重縮合反応物を冷却水(ナトリウム含有量が0.03ppm、マグネシウム含有量が0.03ppm、カルシウム含有量が0.02ppm、珪素含有量が0.09ppm)で冷却しながら水中カット造粒装置でチップ化後、約50℃以下のチップを貯蔵用タンクへ輸送し、次いで振動式篩分工程および気流分級工程によってファインおよびフイルム状物を除去することにより、ファイン含有量を約50ppm以下とした。次いでバケット式コンベヤー輸送方式によって結晶化装置に送り、窒素ガス流通下に約155℃で3時間連続的に結晶化し、次いで塔型固相重合器に投入し、窒素ガス流通下、約208℃で連続的に固相重合し、固相重合ポリエステルを得た。固相重合後、篩分工程およびファイン等除去工程で連続的に処理しファインやフイルム状物を除去し、貯蔵タンクに保管した。
【0137】
このポリエステルを次のようにして水処理した。ポリエステルチップの水処理には、図3に示す装置を用い、処理槽上部の原料チップ供給口(1)、処理槽の処理水上限レベルに位置するオ−バ−フロ−排出口(2)、処理槽下部のポリエステルチップと処理水の混合物の排出口(3)、このオ−バ−フロ−排出口から排出された処理水と、処理槽から排出された処理水と、処理槽下部の排出口から排出された水切り装置(4)を経由した処理水が、濾材が紙製の連続式フィルタ−である微粉除去装置(5)を経由して再び水処理槽へ送られる配管(6)、これらの微粉除去済み処理水の導入口(7)、微粉除去済み処理水中のアセトアルデヒドを吸着処理させる吸着塔(8)、及び新しいイオン交換水の導入口(9)を備えた内容量約50m3リットルの塔型の処理槽を使用した。
【0138】
前記の固相重合PETチップを気流分級工程および振動式篩分工程によりファインおよびフイルム状物を除去処理後、処理水温度95℃にコントロ−ルされた水処理槽へ50kg/時間の速度で処理槽上部の供給口(1)から連続投入して水処理し、処理槽下部の排出口(3)からPETチップとして50kg/時間の速度で処理水と共に連続的に抜き出した。上記処理装置のイオン交換水導入口(9)の手前で採取した導入水中の粒径1〜25μmの粒子含有量は約1900個/10ml、ナトリウム含有量が0.03ppm、マグネシウム含有量が0.02ppm、カルシウム含有量が0.03ppm、珪素含有量が0.09ppmであり、また濾過装置(5)および吸着塔(8)で処理後のリサイクル水の粒径1〜40μmの粒子数は約10000個/10mlであった。
水処理後、振動式篩工程および気流分級工程でファイン等の除去処理を行った。
【0139】
得られたPET組成物の極限粘度は0.74デシリットル/グラム、DEG含有量は2.7モル%、環状三量体の含有量は0.30重量%、環状三量体増加量は0.10重量%、平均密度は1.4025g/cm3、AA含有量は2.8ppm、ファイン含有量は約50ppmであった。また、ファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)は185℃であった。また原子吸光分析により測定したGe残存量は48ppm、またP残存量は30ppmであった。
【0140】
得られたPET組成物について前記(12)および(13)の方法によって成形板および二軸延伸成形ボトルによる評価を実施した。結果を表1に示す。
成形板のヘイズは4.0%、成形板ヘイズ斑は0.2%、成形板のTc1は170℃、口栓部の密度は1.377g/cm3、口栓部密度偏差は0.002g/cm3と問題のない値であった。また、内容物の漏れ試験でも、問題はなく、口栓部の変形もなかった。得られたボトルの胴部ヘイズは0.8%と良好であった。ボトルのAA含有量は16.3ppmと問題のない値であった。また、5000本以上の連続延伸ブロ−成形を実施したが、金型汚れは認められず、問題がなかった。
なお、製造工程における溶融重合プレポリマ−チップや固相重合チップ、水処理チップの輸送は全てバケット式コンベヤー輸送方式により、反応器や貯層からのチップの抜き出しは全てスクリュウ式フィ−ダ−を用いた。
【0141】
また溶融重縮合PETチップや固相重合PETチップを輸送用容器や保管用容器に充填、貯蔵するまでにチップと接触する空気として、JIS B 9908(1991)の形式3のPET不織布製フィルタユニットを装着した空気清浄機及びJIS B 9908(1991)の形式1の粒子捕集率99%以上のHEPAフィルタユニットを装着した空気清浄機で濾過した空気(粒径0.3〜5μmの粒子数は約500個/立方フィ−ト)を使用した。実施例2、実施例3、および比較例1でも同様にした。
【0142】
(実施例2)
結晶性二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液の替わりに、チタン酸テトライソプロピルのエチレングリコ−ル溶液と結晶性二酸化ゲルマニウムのエチレングリコ−ル溶液を用い、これらの触媒溶液を個別に、第2エステル化反応器に連続的に供給し、次いで、燐酸のエチレングリコ−ル溶液を第2エステル化反応器から第1重縮合反応器への輸送配管中に連続的に供給する以外は実施例1と同様にしてエステル化及び重縮合を実施し、次いで、実施例1と同様の条件下でチップ化し、IV0.56dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト・プレポリマ−を得た。
【0143】
次いで、実施例1と同様にして固相重合及び水処理を行った。
得られたPET組成物の極限粘度は0.74デシリットル/グラム、DEG含有量は2.7モル%、環状三量体の含有量は0.30重量%、環状三量体増加量は0.23重量%、平均密度は1.4028g/cm3、AA含有量は2.8ppm、ファイン含有量は約50ppm、またその昇温時結晶化温度(Tc1’)は183℃であった。原子吸光分析により測定したGe残存量は18ppm、Ti残存量は0.5ppm、またP残存量は10ppmであった。
【0144】
得られたPET組成物について前記(12)および(13)の方法によって成形板および二軸延伸成形ボトルによる評価を実施した。結果を表1に示す。成形板のヘイズは4.7%、成形板のTc1は168℃、口栓部の密度は1.378g/cm3と問題のない値であった。また、内容物の漏れ試験でも、問題はなく、口栓部の変形もなかった。得られたボトルの胴部ヘイズは0.9%良好であった。ボトルのAA含有量は17.9ppmと問題のない値であった。また、5000本以上の連続延伸ブロ−成形を実施したが、金型汚れは認められず、問題がなかった。
【0145】
なお、製造工程における溶融重縮合チップの輸送及び抜き出しのみ、実施例1と同様の装置を用いて同様の方法で行った。固相重合PETチップの輸送は低密度輸送方式によった。
【0146】
(実施例3)
結晶性二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液の替わりに、結晶性二酸化ゲルマニウムのエチレングリコ−ル溶液と塩基性酢酸アルミニウムの水/エチレングリコ−ル溶液を用い、これらの触媒溶液と燐酸のエチレングリコ−ル溶液を、別々に第2エステル化反応器に連続的に供給する以外は実施例1と同様にしてエステル化及び重縮合を実施し、次いで、実施例1と同様の条件下でチップ化し、IV0.56dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト・プレポリマ−を得た。次いで、実施例1と同様にして固相重合及び水処理を行った。
【0147】
得られたPET組成物の極限粘度は0.74デシリットル/グラム、DEG含有量は2.7モル%、AA含有量は2.8ppm、環状三量体の含有量は0.31重量%、環状三量体の増加量は0.30重量%、平均密度は1.4027g/cm3、ファイン含有量は約50ppm、またその昇温時結晶化温度(Tc1’)は186℃であり、またフイルム状物はなかった。
【0148】
得られたPET組成物について前記(12)および(13)の方法によって成形板および二軸延伸成形ボトルによる評価を実施した。結果を表1に示す。
成形板のヘイズは3.9%、成形板ヘイズ斑は0.2%、成形板のTc1は169℃であった。ボトル口栓部の密度は1.380g/cm3、口栓部密度偏差は0.002g/cm3と問題のない値であり、ボトルの胴部ヘイズは0.8%と良好であった。また、内容物の漏れ試験でも、問題はなく、口栓部の変形もなかった。ボトルのAA含有量は18.0ppmと問題のない値であった。また、5000本以上の連続延伸ブロ−成形を実施したが、金型汚れは認められず、問題がなかった。
なお、製造工程における溶融重合プレポリマ−チップや固相重合チップ、水処理チップの輸送は、実施例1と同様にして行った。
【0149】
(実施例4)
異種樹脂製ボトルを選別除去後、ラベル及びキャップを取り外した使用済みポリエチレンテレフタレートボトルを粉砕、水洗して得た回収フレークを解重合触媒の存在下にエチレングリコールで解重合し、次いでメタノールでエステル交換反応して得られた粗テレフタル酸ジメチルを蒸留精製し、この様にして得た精製テレフタル酸ジメチルを加水分解して高純度のテレフタル酸を得た。
【0150】
前記テレフタル酸及びエチレングリコール(バージン品)のスラリー(エチレングリコール/テレフタル酸モル比=1.6)を、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートが仕込まれ、温度250℃、常圧に保持されたエステル化反応槽に供給し、副生する水を系外に溜出させながら4時間でエステル化反応を行い、このエステル化反応生成物の100kgを重縮合槽に移送した。
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された前記重縮合槽に、複数の重縮合触媒供給配管より、実施例1で用いたのと同じ結晶性二酸化ゲルマニウムのエチレングリコ−ル溶液および燐酸のエチレングリコ−ル溶液を、添加した後、系内を1時間かけて250℃から275℃まで昇温すると共に、1時間で常圧から350Paとし、引き続き150Paの減圧下、277℃で、得られる樹脂の固有粘度が0.54dl/gとなる時間溶融重縮合させた。
重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、実施例1で用いたと同質のイオン交換水で冷却しながらチップ化してチップ温度を約50℃以下とし、次いで振動式篩分機によってファインおよびフイルム状物を除去することにより、ファイン含有量を約50ppm以下とした。
【0151】
引き続いて、前記で得られたポリエステル樹脂チップを、約160℃に保持された攪拌流動式結晶化機で結晶化させた後、充填塔式固相重合塔に移し、窒素流通下209℃で固相重合し、次いで篩分工程およびファイン除去工程で処理しファインを除去し、ファイン含有量を約50ppmとした。
【0152】
次いで、実施例1と同様にして水処理し、篩分工程およびファイン除去工程で処理しファインを除去し、ファイン含有量を約50ppmとした。
得られたPETのIVは0.75デシリットル/グラム、DEG含有量は3.0モル%、AA含有量は4.1ppm、環状3量体の含有量は0.36重量%、環状三量体の増加量は0.16重量%、フイルム状物は含有せず、またファインのTc1’は187℃であった。Ge残存量は48ppm、またP残存量は30ppmであった。
このPETについて成形板及び二軸延伸成形ボトルによる評価を実施した。
【0153】
成形板のヘイズは8.2%、成形板ヘイズ斑は0.3%、成形板のTc1は166℃であった。ボトル口栓部の密度は1.379g/cm3、口栓部密度偏差は0.003g/cm3と問題のない値であり、ボトルの胴部ヘイズは1.3%と良好であった。
また、内容物の漏れ試験でも、問題はなく、口栓部の変形もなかった。ボトルのAA含有量は18.2ppm、と問題のない値であった。
なお、製造工程における溶融重合プレポリマ−チップや固相重合チップなどの輸送は、実施例1と同様にして行った。
【0154】
(比較例1)
結晶性二酸化ゲルマニウムの添加量を増やす以外は実施例1と同様にして溶融重縮合したプレポリマ−を、同水質の冷却水で冷却しながらチップ化してチップ温度を約65℃とし、ファイン等の除去処理を行わずに低密度輸送方式によって一時的な貯蔵用サイロに輸送した。次いでこれを回転式タンブラ−に投入し、回転しながら減圧下において140℃で結晶化後、215℃で固相重合した。固相重合装置への輸送及び固相重合後の輸送は全て低密度輸送方式によった。
【0155】
得られたPET組成物を実施例1と同一条件で水処理を実施した。溶融重縮合から水処理後までの全ての工程においてファイン等の除去装置で処理を行なわなかった。
得られたPET、これを成形した成形板および二軸延伸成形ボトルの特性を表1に示す。得られたボトルの透明性は悪く、また口栓部の変形、及び内容物の漏洩を調べたが、内容物の漏れが激しく、問題であった。
また、5000本以上の連続延伸ブロ−成形を実施したが、金型汚れが激しく、問題であった。
【0156】
【表1】
【0157】
【発明の効果】
本発明のポリエステル組成物によれば、溶融成形時の結晶化コントロ−ル性、長時間連続成形性に優れており、それから得られた中空成形体、シ−ト状物および延伸フイルムは、透明性、耐熱寸法安定性が優れ、特に、中空成形体の口栓部収縮率が適正な範囲であり、液体容器としたときに残留異味、異臭が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において使用した段付成形板の平面図
【図2】図1の段付成形板の側面図
【図3】実施例で用いた水処理装置の概略図
【符号の説明】
1 原料チップ供給口
2 オーバーフロー排出口
3 ポリエステルチップと処理水との排出口
4 水切り装置
5 微粉除去装置
6 配管
7 処理水導入口
8 吸着塔
9 イオン交換水導入口
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル組成物並びにそれからなる中空成形体、シ−ト状物、及び延伸フィルムに関し、特に、溶融成形時の結晶化コントロ−ル性、長時間連続成形性に優れたポリエステル組成物並びに透明性及び耐熱寸法安定性に優れた成形体、シ−ト状物および延伸フイルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステル(以下PET樹脂と略称することがある)は、その優れた透明性、機械的強度、耐熱性、ガスバリアー性等の特性により、炭酸飲料、ジュース、ミネラルウォータ等の容器の素材として採用されており、その普及はめざましいものがある。これらの用途において、ポリエステル製ボトルに高温で殺菌した飲料を熱充填したり、また飲料を充填後高温で殺菌したりするが、通常のポリエステル製ボトルでは、このような熱充填処理時等に収縮、変形が起こり問題となる。ポリエステル製ボトルの耐熱性を向上させる方法として、ボトル口栓部を熱処理して結晶化度を高めたり、また延伸したボトルを熱固定させたりする方法が提案されている。特に口栓部の結晶化が不十分であったり、また結晶化度のばらつきが大きい場合にはキャップとの密封性が悪くなり、内容物の漏れが生ずることがある。
【0003】
また、ボトル胴部の耐熱性を向上させるため、例えば、特公昭59−6216号公報に見られる通り、延伸ブロー金型の温度を高温にして熱処理する方法が採られる。高温度での熱殺菌処理を受ける用途に使用されるボトルの場合には、結晶化速度が早いPET樹脂を用いると、透明性が悪く、口栓部の結晶化度変動が大きい熱処理ボトルしか得られない。特に成形工場において発生する不良品や使用済みボトルの回収品をボトル成形材料の一部として再使用する場合には、バ−ジン原料の結晶化特性が問題となる。容量が1.5リットル以上の大型ボトルでは肉厚が厚くなるため、このような問題が頻繁に発生する。
【0004】
また、このような方法によって同一金型を用いて多数のボトル成形を続けると、長時間の運転に伴って得られるボトルが白化して透明性が低下し、商品価値のないボトルしか得られなくなる。これは金型表面にPET樹脂に起因する付着物が付き、その結果金型汚れとなり、この金型汚れがボトルの表面に転写するためであることが分かった。特に、近年では、ボトル生産時のコスト低下を目的として、成形速度が高速化されてきており、生産性の面から金型汚れはより大きな問題となってきている。
【0005】
また、果汁飲料などのように熱充填を必要とする内容液の場合には、プリフォームまたは成形されたボトルの口栓部を熱処理して結晶化する方法(特許文献1、2参照)が一般的である。このような方法、すなわち口栓部、肩部を熱処理して耐熱性を向上させる方法は、結晶化処理をする時間・温度が生産性に大きく影響し、低温でかつ短時間で処理できる、結晶化速度が速いPET樹脂であることが好ましい。一方、胴部については充填物の色調を悪化させないように、成形時の熱処理を施しても透明であることが要求されており、口栓部と胴部では相反する特性が必要である。
【0006】
このような問題を解決するために種々の提案がなされている。例えば、ポリエチレンテレフタレートにカオリン、タルク等の無機核剤を添加する方法(特許文献3、4参照)、モンタン酸ワックス塩等の有機核剤を添加する方法(特許文献5、6参照)があるが、これらの方法は異物やくもりの発生を伴い実用化には問題がある。また、耐熱性樹脂製ピースを口栓部に挿入する方法(特許文献7、8参照)が提案されているが、ボトルの生産性が悪く、また、リサイクル性にも問題がある。
【0007】
また、PETチップを流動条件下にポリエチレン部材と接触させることによるPETの結晶化速度の改質法(特許文献9参照)、同様の条件下にポリプロピレン系樹脂またはポリアミド系樹脂からなる部材と接触させることによるPETの結晶化速度の改質法(特許文献10参照)、ポリエステル樹脂に0.1〜45ppbのポリエチレンを配合したポリエステル樹脂組成物(特許文献11参照)などが提案されているが、このような方法や組成物の使用によっても安定した結晶化速度や透明性を得るのが非常に難しいことが分かった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭55−79237号公報
【特許文献2】
特開昭58ー110221号公報
【特許文献3】
特開昭56−2342号公報
【特許文献4】
特開昭56−21832号公報
【特許文献5】
特開昭57−125246号公報
【特許文献6】
特開昭57−207639号公報
【特許文献7】
特開昭61−259946号公報
【特許文献8】
特開平2−269638号公報
【特許文献9】
特開平9−71639号公報
【特許文献10】
特開平11−209492号公報
【特許文献11】
特開平9−151308号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の技術の有する問題点を解決し、溶融成形時の結晶化コントロ−ル性、長時間連続成形性に優れたポリエステル組成物並びにそれから得られた透明性及び耐熱寸法安定性が良好で、特に、中空成形体の口栓部収縮率が適正な範囲となり、また得られた成形品に残留異味、異臭が発生しにくい中空成形体、シ−ト状物、及び延伸フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のポリエステル組成物は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルのチップと、前記ポリエステルのチップと同一組成のポリエステルのファイン0.1〜5000ppmとからなるポリエステル組成物であって、DSC(示差走査熱量計)で測定した前記ファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)が170〜195℃の範囲であり、さらに前記ポリエステル組成物を290℃の温度で60分間溶融したときの環状三量体増加量が0.50重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物である。
【0011】
この場合において、前記ポリエステルのチップと同一組成のポリエステルのフイルム状物の含有量が、10ppm以下であることができる。
【0012】
ここで、ファインとはJIS−Z8801による呼び寸法1.7mmの金網をはった篩いを通過したポリエステルの微粉末を意味し、またフイルム状物とはJIS−Z8801による呼び寸法5.6mmの金網をはった篩い上に残ったポリエステルのうち、2個以上のチップが融着したり、あるいは正常な形状より大きく切断されたチップ状物を除去後の、厚みが約0.5mm以下のフイルム状物を意味し、これらの含有量は下記の測定法によって測定する。
【0013】
またここで、下記に記載するようにファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)は示差走査熱量計(DSC)で測定する。DSC測定の昇温時に観察される結晶化ピーク温度を昇温時結晶化温度(Tc1’)と呼ぶが、この結晶化ピークは、普通、一つであるが、二つのピークから構成される場合がある。本発明においては、このような場合は、高温側の結晶化ピーク温度を「ファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)」とする。
【0014】
この場合において、環状3量体含有量が、0.70重量%以下であることができる。
【0015】
また、本発明のポリエステル組成物は、前記のポリエステル組成物に、さらにポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂0.1ppb〜50000ppmを配合してなることを特徴とする。
【0016】
また、この場合において、中空成形体が、前記記載のポリエステル組成物を成形してなるものであることができる。
【0017】
また、この場合において、シ−ト状物が、前記記載のポリエステル組成物を成形してなるものであることができる。
【0018】
さらにまた、この場合において、延伸フイルムが、シ−ト状物を少なくとも1方向に延伸してなるものであることができる。
【0019】
上記の本発明のポリエステル組成物は、成形時に金型汚れが発生しにくく、口栓部の結晶化コントロ−ル性に優れ、かつ優れた透明性、耐熱性、機械的特性、残留異味、異臭が少なく保香性の優れた中空成形体、シ−ト状物や延伸フイルムを与える。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリエステル組成物並びにそれからなる中空成形体、シ−ト状物及び延伸フイルムの実施の形態を具体的に説明する。
本発明に係るポリエステルは、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルであって、好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95%モル以上含む線状ポリエステルである。
【0021】
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0022】
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのグリコ−ルとしては、ジエチレングリコ−ル、1,3−トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ル等のポリアルキレングリコ−ルなどが挙げられる。
【0023】
さらに、前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としての多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコ−ル成分としてグリセリン、ペンタエリスリト−ルを挙げることができる。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0024】
前記のポリエステルは、テレフタ−ル酸とエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分を直接反応させて水を留去してエステル化した後、重縮合触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物またはチタン化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物またはアルミニウム化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて主として減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。
【0025】
前記の出発原料であるテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸またはエチレングリコールとしては、パラキシレンから誘導されるバージンのジメチルテレフタレート、テレフタル酸あるいはエチレンから誘導されるエチレングリコールは勿論のこと、使用済みPETボトルからメタノール分解やエチレングリコール分解などのケミカルリサイクル法により回収したジメチルテレフタレート、テレフタル酸、ビスヒドロキシエチルテレフタレートあるいはエチレングリコールなどの回収原料も、出発原料の少なくとも一部として利用することが出来る。前記回収原料の品質は、使用目的に応じた純度、品質に精製されていなければならないことは言うまでもない。
【0026】
さらにポリエステル樹脂の分子量を増大させ、アセトアルデヒド含有量を低下させるために固相重合を行ってもよい。固相重合前の結晶化促進のため、溶融重縮合ポリエステルを吸湿させたあと加熱結晶化させたり、また水蒸気を直接ポリエステルチップに吹きつけて加熱結晶化させたりしてもよい。
【0027】
まず固相重合に供される前記のポリエステルは、不活性ガス下または減圧下あるいは水蒸気または水蒸気含有不活性ガス雰囲気下において、100〜210℃の温度で1〜5時間加熱して予備結晶化される。次いで不活性ガス雰囲気下または減圧下に190〜230℃の温度で1〜30時間の固相重合を行う。
【0028】
前記溶融重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いし、また連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
【0029】
本発明に係るポリエステルの製造に使用されるアンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。アンチモン化合物は、生成ポリマ−中のアンチモン残存量として50〜250ppmの範囲になるように添加する。
【0030】
本発明に係るポリエステルの製造に使用されるゲルマニウム化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等が挙げられる。ゲルマニウム化合物を使用する場合、その使用量はポリエステル中のゲルマニウム残存量として5〜150ppm、好ましくは10〜100ppm、更に好ましくは15〜70ppmである。
【0031】
本発明に係るポリエステルの製造に使用されるチタン化合物としては、テトラエチルチタネ−ト、テトライソプロピルチタネ−ト、テトラ−n−プロピルチタネ−ト、テトラ−n−ブチルチタネ−ト等のテトラアルキルチタネ−トおよびそれらの部分加水分解物、酢酸チタン、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン、チタンハロゲン化物の加水分解物、シュウ化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸アンモニウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、チタンアセチルアセトナート等が挙げられる。チタン化合物は、生成ポリマ−中のチタン残存量として0.1〜10ppmの範囲になるように添加する。
【0032】
本発明に係るポリエステルの製造に使用されるアルミニウム化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn−プロポキサイド、アルミニウムiso−プロポキサイド、アルミニウムn−ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso−プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに塩基性酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。アルミニウム化合物は、生成ポリマ−中のアルミニウム残存量として5〜200ppmの範囲になるように添加する。
【0033】
これらの触媒化合物は、例えばエチレングリコール溶液としてエステル交換工程中またはエステル交換反応終了後から重縮合反応開始までの任意の段階、あるいはエステル化工程中またはエステル化反応終了後から重縮合反応開始までの任意の段階において添加することができる。
【0034】
また、本発明のポリエステル組成物は、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属化合物を含有してもよい。これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属としては、リチウム,ナトリウム、カリウム,ルビジウム,セシウム,ベリリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウムから選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルカリ金属ないしその化合物がより好ましい。アルカリ金属ないしその化合物を使用する場合、特に、リチウム,ナトリウム、カリウムの使用が好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、生成ポリマ−中のこれらの元素の残存量として1〜50ppmの範囲になるように添加する。
【0035】
またこれらのアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物は、重合反応の任意の段階で反応系に添加することができる。例えばエステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前および反応途中の任意の段階あるいは重縮合反応の開始直前あるいは重縮合反応途中の任意の段階で反応系への添加することができる。
前記のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液等として反応系に添加される。
【0036】
さらにまた、本発明のポリエステル組成物は、ケイ素、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ガリウム、ストロンチウム、ジルコニウム、錫、タングステン、鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含む金属化合物を含有してもよい。
これらの金属化合物としては、これら元素の酢酸塩等の飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸塩などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸塩などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸塩などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸塩などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、アルコキサイド、アセチルアセトナ−ト等とのキレ−ト化合物があげられ、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液、エチレングリコ−ルのスラリ−等として反応系に添加される。これらの金属化合物は、生成ポリマ−1トン当りのこれらの金属化合物の元素の残存量として0.05〜3.0モルの範囲になるように添加する。
【0037】
また、安定剤として種々のリン化合物を使用することができる。本発明で使用されるリン化合物としては、リン酸系化合物、亜リン酸系化合物、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニールエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニールホスホン酸ジメチルエステル、フェニールホスホン酸ジエチルエステル、フェニールホスホン酸ジフェニールエステル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。リン化合物は、生成ポリマ−中のリン残存量として5〜100ppmの範囲になるように前記のポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加する。
【0038】
また、前記以外の金属化合物も、本発明のポリエステル組成物の特性に影響を与えない範囲で用いることができる。具体的な例としては、銅、ホウ素、インジウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、ビスマス、クロム、モリブデン、テルル、ニッケルなどの、酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、アルコキサイドおよび脂肪族又は芳香族カルボン酸塩などが挙げられる。
【0039】
また、本発明に係るポリエステルの製造において、塩基性窒素化合物を用いることができる。塩基性窒素化合物としては、脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式窒素化合物のいずれでもかまわない。具体例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアニリン、ピリジン、キノリン、ジメチルベンジルアミン、ピペリジン、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイド、イミダゾール、イミダゾリン等が挙げられる。これらの化合物は遊離形で用いてもよいし、低級脂肪酸やTPAの塩として用いてもよい。またこれらの塩基性窒素化合物の反応系への添加は、初期重縮合反応が終了するまでの任意の段階で適宜選ぶことが出来、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0040】
これらの塩基性窒素化合物の配合量は、ポリエステル当り0.01〜1モル%、好ましくは0.05〜0.7モル%、更に好ましくは0.1〜0.5モル%である。塩基性窒素化合物の配合量が0.01モル%未満では得られたポリエステルからの中空成形体、特に延伸熱固定中空成形体の透明性が非常に悪くなる。また、1モル%を超えるとポリエステルの色調が悪くなる。
【0041】
本発明のポリエステル組成物は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルのチップと、前記ポリエステルのチップと同一組成のポリエステルのファイン0.1〜5000ppmとからなるポリエステル組成物であって、DSC(示差走査熱量計)で測定した前記ファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)が170〜195℃の範囲であり、さらに前記ポリエステル組成物を290℃の温度で60分間溶融したときの環状三量体増加量が0.50重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物である。
【0042】
ポリエステルの製造工程の中で、溶融重合ポリマーをチップ化する工程、固相重合工程、溶融重合ポリマーチップや固相重合ポリマーチップを輸送する工程等において、本来造粒時に設定した大きさのチップよりかなり小さな粒状体や粉等が発生する。ここでは、このような微細な粒状体や粉等をファイン、また厚みが約0.5mm以下の薄膜状物をフイルム状物と称する。ポリエステルを製造する工程では純度の高い原料や副材料を使用すると共に、溶融重縮合ポリマ−の濾過、ポリエステルチップの冷却水の濾過やイオン交換処理、チップの水処理に系外より導入する水の濾過やイオン交換処理、チップの搬送等に使用する気体の濾過等により使用ポリエステル以外の異物や夾雑物が混入しないような対策を実施するので、前記ファインやフイルム状物にはポリエステル以外の異物や夾雑物を含まないようにすることが出来る。
【0043】
このようなファインやフイルム状物は結晶化を促進させる性質を持っており、多量に存在する場合には、このようなポリエステル組成物から成形した成形体、特にボトルの透明性が非常に悪くなったり、ボトル口栓部結晶化時の収縮量が規定値の範囲内に収まらずキャップで密栓できなくなる。特に、ポリエステル組成物が含有するファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)特性が、得られた成形体の結晶化速度やその変動に影響を及ぼすことが分かってきた。
【0044】
本発明のポリエステル組成物中での前記のファインの含有量は、0.1〜5000ppm、好ましくは0.1〜3000ppm以下、より好ましくは0.1〜1000ppm以下、さらに好ましくは0.1〜500ppm以下、最も好ましくは0.1〜100ppm以下である。前記ファインの含有量が0.1ppm未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形体の口栓部の結晶化が不十分となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良現象が発生したり、また容器成形後の寸法安定性が悪いシ−ト状物を与える。また5000ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなると共に、その速度の変動も大きくなる。したがって、シート状物の場合は、透明性や表面状態が悪くなり、これを延伸した場合、厚み斑が悪くなる。また中空成形体の口栓部の結晶化度が過大、かつ変動大となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないため口栓部のキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。特に、中空成形体用のポリエステル組成物のファイン含有量は、0.1〜500ppmより好ましく0.1〜200ppm、さらに好ましくは0.1〜100ppmが特には0.1〜70ppmが望ましい。
【0045】
そして、本発明のポリエステル組成物を構成するファインの、DSC(示差走査熱量計)で測定される昇温時結晶化温度(Tc1’)が170〜195℃の範囲、好ましくは172〜193℃の範囲、さらに好ましくは175〜190℃の範囲であることが必要である。
【0046】
170℃未満の昇温時結晶化温度(Tc1’)のファインを含む場合には、得られた中空成形体等の成形体の結晶化速度が早いために、中空成形体口栓部の加熱時、結晶化速度が早くなるので口栓部の結晶化が過大となる。その結果、口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないため口栓部のキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたりする。また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となり、厚み斑が生じ、また結晶化速度が速いため得られた中空成形体の透明性が悪くなり、また透明性の変動も大となる。また、得られたシ−ト状物は透明性が悪く、結晶化速度が早いので、正常な延伸が不可能で、厚み斑の大きな、透明性の悪い延伸フイルムしか得られない。
【0047】
また、195℃を超える昇温時結晶化温度(Tc1’)のファインを含むようにしようとするには、エチレンテレフタレート単位が85モル%未満のポリエステルでないと不可能となり、このようなポリエステルでは目的とする用途に使用できない。
【0048】
また、本発明のポリエステル組成物中での前記ポリエステルと同一組成のフイルム状物の含有量は、10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下である。フイルム状物は、配向結晶化しているためか、ファインよりも結晶化促進効果が高く、そのため悪影響を与えない配合量の限度値は低くなる。配合量が10ppmを超える場合は、結晶化速度が非常に早くなり、中空成形容器の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮量が規定値の範囲内に収まらず、口栓部のキャッピング不良となり、内容物の漏れが生じたり、また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。
また、本発明において、ポリエステルのファインやフイルム状物がポリエステルのチップと同一組成とは、ファインやフイルム状物の共重合成分、及び前記共重合成分含有量が、ポリエステルのチップと同一であることを意味する。
【0049】
また、必要に応じて、引き続き固相重合する場合には、前記のようにしてチップ化し、ファインやフイルム状物の除去処理を行った溶融重縮合ポリエステルを再度、固相重合工程直前で空気流による気流分級工程等によってファインやフイルム状物の除去を行い、固相重合工程へ投入する。溶融重縮合したプレポリマ−チップを固相重合設備へ輸送する際や固相重合後のポリエステルチップを篩分工程、下記の水あるいは水蒸気との接触処理工程や貯槽等へ輸送する際には、これらの輸送の大部分はプラグ輸送方式やバケット式コンベヤ輸送方式を採用し、また結晶化装置や固相重合反応器からのチップの抜出しはスクリュ−フィ−ダ−を使用するなどして、チップと工程の機器や輸送配管等との衝撃を出来るだけ抑えることができる装置を使用するのが好ましい。そして、製品として容器に充填する直前において振動篩工程および空気流による気流分級工程によってファイン等の除去処理を行う。
【0050】
また、下記のように溶融重縮合ポリエステルや固相重合ポリエステルを水や水蒸気と接触処理を行う場合は、前記処理直前に空気流による気流分級工程等を設けてファインやフイルム状物の除去を実施し、次工程への輸送にはプラグ輸送方式やバケット式コンベヤ−輸送方式を採用するのが好ましい。そして、前記と同じように、製品として容器に充填する直前において振動篩工程および空気流による気流分級工程によってファイン等の除去処理を行う。
【0051】
本発明において、ポリエステルのファインやフイルム状物の含有量を前記の範囲に調節する方法としては、例えば、篩分工程を通していない、昇温時結晶化温度(Tc1’)が170〜195℃のファインやフイルム状物の含有量の高いポリエステルチップと篩分工程及び空気流によるファイン等除去工程を通した、昇温時結晶化温度(Tc1’)が170〜195℃のファインやフイルム状物の含有量の非常に少ないポリエステルチップを適当な割合で混合する方法によるほか、ファイン等除去工程の篩の目開きを変更することにより調節することもでき、また篩分速度を変更することによるなど任意の方法を用いることができる。
【0052】
また、透明性に優れ、透明性の変動が少なく、また成形時の結晶化コントロ−ル性に優れた成形体を与えるポリエステル組成物を得るためには、ポリエステル組成物を構成するチップ単独を成形して得た成形体の昇温時結晶化温度(Tc1)や降温時結晶化温度(Tc2)の値も重要であって、チップ単独からの成形体の昇温時結晶化温度(Tc1)は150℃以上、また降温時結晶化温度(Tc2)は190℃以下であることが望ましい。なお、成形体の昇温時結晶化温度(Tc1)や降温時結晶化温度(Tc2)は、次のようにして求める。ポリエステル組成物からチップのみを選び、下記の実施例(12)の方法によって得た段付成形板の2mm厚みのプレートの中央部からの試料10mgを下記の測定法(8)に記載した装置を用いて、室温から290℃まで20℃/分の速度で昇温し、その途中において観察される結晶化ピークの頂点温度を求め、これを昇温時結晶化温度(Tc1)とし、さらに290℃まで昇温したあと290℃で3分間保持し、次いで240℃までは10℃/分の速度で降温し、さらに室温までは7℃/分の速度で降温して、降温時に観察される結晶化ピーク温度を求め、これを成形体の降温時結晶化温度(Tc2)とする。
【0053】
また、本発明のポリエステル組成物を290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.50重量%以下であることが必要である。環状3量体の増加量は好ましくは0.40重量%以下、より好ましくは0.30重量%以下、さらに好ましくは0.20重量%以下であることが好ましい。290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.50重量%を越えると、成形の樹脂溶融時に環状3量体量が増加し、加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
【0054】
本発明のポリエステル組成物は、例えば下記のようにして製造することができる。すなわち、溶融重縮合後ダイスより溶融ポリエステルを水中に押出して水中でカットする、チップ切断面に衝撃力やせん断力が出来るだけ掛からない造粒方式によって、下記の(1)〜(4)の少なくとも一つを満足する冷却水を用いて冷却しながらチップ化し、ついでチップ状に形成したポリエステルチップを水切り後、振動式篩工程や振動篩工程および空気流による気流分級工程によって所定のサイズ以外の形状のチップやファインやフイルム状物を除去し、プラグ輸送方式やバケット式コンベヤ−輸送方式により貯蔵用タンクに送る。前記タンクからのチップの抜出はスクリュ−式フィ−ダ−により、次工程へはプラグ輸送方式やバケット式コンベヤ−輸送方式によって輸送し、次工程の直前に空気流による気流分級工程等を設けてファイン等除去処理を行うのが好ましい。
N ≦ 1.0(ppm) (1)
M ≦ 0.5(ppm) (2)
S ≦ 2.0(ppm) (3)
C ≦ 1.0(ppm) (4)
【0055】
ここで、冷却水中のナトリウム含有量(N)は、好ましくはN≦0.5ppmであり、さらに好ましくはN≦0.1ppmである。
冷却水中のマグネシウム含有量(M)は、好ましくはM≦0.3ppmであり、さらに好ましくはM≦0.1ppmである。
また、冷却水中の珪素の含有量(S)は、好ましくはS≦0.5ppmであり、さらに好ましくはS≦0.3ppmである。
さらに、冷却水中のカルシウム含有量(C)は、好ましくはC≦0.5ppmであり、さらに好ましくはC≦0.1ppmである。
【0056】
また、冷却水中のナトリウム含有量(N)、マグネシウム含有量(M)、珪素の含有量(S)およびカルシウム含有量(C)の下限値は、N≧0.001ppm、M≧0.001ppm、S≧0.02ppmおよびC≧0.001ppmである。このような下限値以下にするには、莫大な設備投資が必要であり、また運転費用も非常に高くなり経済的な生産は困難である。
【0057】
カット面にせん断力がかかり難い水中カット方式以外のカット方式によって、前記の条件を外れる冷却水を用いてチップ化した場合には、これらの金属含有化合物がポリエステルチップ表面に付着し、得られたポリエステルが含むファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)が170℃未満になり、そのために結晶化速度が非常に早く、またその変動が大きくなり好ましくない。
【0058】
また、前記の条件を外れる冷却水を用いて冷却しながらチップ化した溶融重縮合ポリエステルを固相重合すると、チップ化工程においてチップ表面に付着して固相重合反応装置に持ち込まれた前記の金属含有物質は、ポリエステルチップの表面層の一部と共に固相重合装置の器壁に固着し、これが約170℃以上の高温度での長時間加熱によって金属含有量の高いスケールとなって器壁に付着していく。そして、これが時々剥離してポリエステルチップ中に混入し、ボトル等成形体中の異物となって商品価値を低下さすという問題が発生する。
【0059】
また、シ−トを製造する際には、製膜時に前記のスケ−ルが溶融ポリマ−濾過フィルタ−に詰まるためフィルタ−濾過圧の上昇が激しくなり、操業性や生産性が悪くなるという問題も発生する。
【0060】
以下にチップの冷却水のナトリウム含有量、マグネシウム含有量、珪素含有量、カルシウム含有量を前記の範囲に抑える方法を例示するが、本発明はこれに限定するものではない。
【0061】
冷却水のナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を低減させるために、チップ化工程に工業用水が送られるまでの工程で少なくとも1ヶ所以上にナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を除去する装置を設置する。また、粒子状になった二酸化珪素やアルミノ珪酸塩等の粘土鉱物を除去するためにはフィルターを設置する。ナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を除去する装置としては、イオン交換装置、限外濾過装置や逆浸透膜装置などが挙げられる。
【0062】
また、系外から導入する導入水の中に存在する粒径が1〜25μmの粒子を50000個/10ml以下にした水を使用することが望ましい。導入水中の粒径1〜25μmの粒子の個数は、好ましくは10000個/10ml以下、さらに好ましくは1000個/10ml以下、特に好ましくは100個/10ml以下である。
【0063】
次いで、290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.50重量%以下であるポリエステル組成物を得るため、溶融重縮合後や固相重合後に得られたポリエステルの重縮合触媒を失活処理することが必要である。ポリエステルの重縮合触媒を失活処理する方法としては、溶融重縮合後や固相重合後にポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。
【0064】
前記の目的を達成するためにポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法を次に述べる。
熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
【0065】
以下に水処理を工業的に行う方法を例示するが、これに限定するものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
【0066】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわちバッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的又は間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
【0067】
そして、水処理方法が連続方式の場合であってもバッチ的の場合であっても、系外から導入する水の中に存在する粒径が1〜25μmの粒子の個数をX、ナトリウムの含有量をN、マグネシウムの含有量をM、カルシウムの含有量Cを、珪素の含有量をSとした場合、下記(5)〜(9)の少なくとも一つを満足させて水処理を行う。
1 ≦ X ≦ 50000 (個/10ml) (5)
0.001 ≦ N ≦ 1.0 (ppm) (6)
0.001 ≦ M ≦ 0.5 (ppm) (7)
0.001 ≦ C ≦ 1.0 (ppm) (8)
0.01 ≦ S ≦ 2.0 (ppm) (9)
【0068】
水処理槽に導入する水中の粒子個数、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、珪素の含有量のいずれかを上記範囲に設定することにより、スケールと呼ばれる酸化物や水酸化物等の金属含有物質が処理水中に浮遊、沈殿、さらには処理槽壁や配管壁に付着したりし、これがポリエステルチップに付着、浸透して、成形時での結晶化が促進され、透明性の悪いボトルになることを防ぐことができる。
【0069】
水処理槽に導入する水中の粒子数を50000個/10ml以下にする方法としては、工業用水等の自然水を処理槽に供給するまでの工程の少なくとも1ヶ所以上に粒子を除去する装置を設置する。
【0070】
また水処理槽に導入する水中のナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を低減させるために、工業用水等の自然水を処理槽に供給するまでの工程で少なくとも1ヶ所以上にナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を除去する装置を設置する。これらの装置としてはチップ冷却水の処理に使用するのと同様の装置が挙げられる。
【0071】
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエチレンテレフタレ−ト1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気とを接触させる。
【0072】
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
【0073】
以下に粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気または水蒸気含有ガスとの接触処理を工業的に行なう方法を例示するが、これに限定されるものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
【0074】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行なう。
【0075】
ポリエステルのチップを連続的に水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエチレンテレフタレ−トを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
上記の如く、水又は水蒸気で処理した場合は粒状ポリエチレンテレフタレ−トを必要に応じて振動篩機、シモンカ−タ−などの水切り装置で水切りし、コンベヤ−によって次の乾燥工程へ移送する。
【0076】
水又は水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパ−型の通気乾燥機が通常使用される。
バッチ方式で乾燥する乾燥機としては大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
【0077】
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
【0078】
また重縮合触媒を失活させる別の手段として、リン化合物を溶融重縮合後または固相重合後のポリエステルの溶融物に添加、混合して重合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0079】
溶融重合ポリエステルの場合には、溶融重合反応終了後のポリエステルと、リン化合物を配合したポリエステル樹脂とを溶融状態で混合できるラインミキサ−等の機器中で混合して重縮合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0080】
また固相重合ポリエステルにリン化合物を配合する方法としては、固相重合ポリエステルにリン化合物をドライブレンドする方法やリン化合物を溶融混練して配合したポリエステルマスタ−バッチチップと固相重合ポリエステルチップを混合する方法によって所定量のリン化合物をポリエステルに配合後、押出機や成形機中で溶融し、重縮合触媒を不活性化する方法等が挙げられる。
【0081】
使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0082】
また本発明のポリエステル組成物の環状3量体の含有量は、好ましくは0.50重量%以下、より好ましくは0.45重量%以下、さらに好ましくは0.40重量%以下である。本発明のポリエステル組成物から耐熱性の中空成形体等を成形する場合は加熱金型内で熱処理を行うが、環状3量体の含有量が0.50重量%以上含有する場合には、加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
【0083】
また、本発明のポリエステル組成物は、前記のポリエステル組成物にポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂0.1ppb〜50000ppmを配合してなることを特徴とするポリエステル組成物である。本発明のポリエステル組成物中での前記のポリオレフィン樹脂等の配合割合は0.1ppb〜50000ppm、好ましくは0.3ppb〜10000ppm、より好ましくは0.5ppb〜100ppm、さらに好ましくは1.0ppb〜1ppm、特に好ましくは1.0ppb〜45ppbである。配合量が0.1ppb未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形体の口栓部の結晶化が不十分となるため、サイクルタイムを短くすると口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となったり、また、耐熱性中空成形体を成形する延伸熱固定金型の汚れが激しく、透明な中空成形体を得ようとすると頻繁に金型掃除をしなければならない。また50000ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなり、中空成形体の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形体用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。また、シ−ト状物の場合、50000ppmを越えると透明性が非常に悪くなり、また延伸性もわるくなって正常な延伸が不可能で、厚み斑の大きな、透明性の悪い延伸フイルムしか得られない。また、前記のポリオレフィン樹脂等を単独使用する場合は、加熱金型汚れ防止には殆ど効果がないが、特定量のファインとの共存によって金型汚れに非常に効果があることが分かっている。
【0084】
本発明のポリエステル組成物に配合されるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはα−オレフィン系樹脂が挙げられる。またこれらの樹脂は結晶性でも非晶性でもかまわない。
【0085】
本発明のポリエステル組成物に配合されるポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン系樹脂が挙げられる。
【0086】
また本発明のポリエステル組成物に配合されるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと、エチレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ブロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等のプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0087】
また本発明のポリエステル組成物に配合されるα−オレフィン系樹脂としては、4−メチルペンテン−1等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ブテン−1単独重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、ブテン−1−エチレン共重合体、ブテン−1−プロピレン共重合体等のブテン−1系樹脂や4−メチルペンテン−1とC2〜C18のα−オレフィンとの共重合体、等が挙げられる。
【0088】
また、本発明のポリエステル組成物に配合されるポリアミド樹脂としては、例えば、ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムの重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/MXD6、ナイロンMXD6/MXDI、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/12、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等が挙げられる。またこれらの樹脂は結晶性でも非晶性でもかまわない。
【0089】
また、本発明のポリエステル組成物に配合されるポリアセタ−ル樹脂としては、例えばポリアセタ−ル単独重合体や共重合体が挙げられる。ポリアセタ−ル単独重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.40〜1.42g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロー比(MFR)が0.5〜50g/10分の範囲のポリアセタ−ルが好ましい。
【0090】
また、ポリアセタ−ル共重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.38〜1.43g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロー比(MFR)が0.4〜50g/10分の範囲のポリアセタ−ル共重合体が好ましい。これらの共重合成分としては、エチレンオキサイドや環状エ−テルが挙げられる。
【0091】
本発明における前記のポリオレフィン樹脂等を配合したポリエステル組成物の製造は、前記ポリエステルに前記ポリオレフィン樹脂等の樹脂を、その含有量が前記範囲となるように直接に添加し溶融混練する方法、または、マスタ−バッチとして添加し溶融混練する方法等の慣用の方法によるほか、前記樹脂を、前記ポリエステルの製造段階、例えば、溶融重縮合時、溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合時、固相重合直後等のいずれかの段階、または、製造段階を終えてから成形段階に到るまでの工程などで、粉粒体として直接に添加するか、或いは、前記ポリエステルチップを流動条件下に前記樹脂製部材に接触させる等の方法で混入させる方法、または前記の接触処理後、溶融混練する方法等によることもできる。
【0092】
ここで、ポリエステルチップを流動条件下に前記樹脂製の部材に接触させる方法としては、前記樹脂製の部材が存在する空問内で、ポリエステルチップを前記部材に衝突接触させることが好ましく、具体的には、例えば、ポリエステルの溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合直後等の製造工程時、また、ポリエステルチップの製品としての輸送段階等での輸送容器充填・排出時、また、ポリエステルチップの成形段階での成形機投入時、等における気力輸送配管、重力輸送配管、サイロ、マグネットキャッチャ−のマグネット部等の一部を前記樹脂製とするか、前記樹脂製フイルム、シート、成形体などを貼り付けるか、または、前記樹脂をライニングするとか、或いは前記移送経路内に棒状又は網状体等の前記樹脂製部材を設置する等して、ポリエステルチップを移送する方法が挙げられる。ポリエステルチップの前記部材との接触時間は、通常、0.01秒〜数分程度の極短時間であるが、ポリエステルに前記樹脂を微量混入させることができる。
【0093】
また、溶融重縮合工程または固相重合工程以降のポリエステルと接触する気体として、粒径0.3〜5μmの粒子が1000000(個/立方フィ−ト)以下の、好ましくは500000(個/立方フィ−ト)以下、さらに好ましくは100000(個/立方フィ−ト)以下の、系外より導入される気体を使用することが望ましい。気体中の粒径5μmを超える粒子は、特に限定するものではないが、好ましくは5(個/立方フィ−ト)以下、さらに好ましくは1(個/立方フィ−ト)以下である。
【0094】
ポリエステルの製造工程において、溶融重縮合工程や固相重合工程等から篩分工程や気流分級工程等の各工程を経由してサイロ、成形機のホッパ−、輸送用コンテナ−等の容器に充填されるが、これらの工程間のポリエステルの輸送や乾燥には、一般に送風機等によって処理設備近辺の空気を工程に採りいれて使用される。従来は、このような空気は、これを未処理のままで使用するか、または、JIS B 9908(1991)で規定される形式3のような低性能フィルタユニットを装着した清浄機によって処理しただけで使用するのが一般的であった。しかし、このような工程で処理されたポリエステルからは、透明性が悪い成形体しか得られないという問題が生じる場合があった。特に、前記樹脂からなる部材との接触処理工程の前後において、ポリエステルと接触する気体として前記のような品質の空気を用いると、得られた成形体の結晶化速度や透明性等の変動が大となり問題となる可能性が大きい。
【0095】
したがって、本発明のポリエステル組成物の製造方法においては、溶融重縮合後、固相重合後、水処理後あるいは前記樹脂からなる部材との接触処理後のポリエステルのうち、少なくとも一つのポリエステルが、次工程への輸送工程、篩分工程、貯蔵工程、容器充填工程のいづれか一つの工程において接触する気体として、粒径0.3〜5μmの粒子が1000000(個/立方フィ−ト)以下の系外より導入される気体を使用することが望ましい。
【0096】
なお、気体中の粒径0.3μm未満の粒子に関しては、特に規定するものではないが、透明な成形体を与える樹脂を得るためには、少ない方が好ましい。粒径0.3μm未満の粒子数としては好ましくは10000000(個/立方フィ−ト)以下、より好ましくは5000000(個/立方フィ−ト)以下、さらに好ましくは2000000(個/立方フィ−ト以下)である。
以下に、系外から導入する気体中の粒径0.3〜5μmの粒子数を1000000(個/立方フィ−ト)以下に制御する方法を例示するが、本発明はこれに限定するものではない。
【0097】
系外から導入する気体中の粒径0.3〜5μmの粒子数を1000000(個/立方フィ−ト)以下にする方法としては、系外から導入する気体がポリエステルチップと接触するまでの工程中の少なくとも1ケ所以上に前記粒子を除去する清浄化装置を設置する。前記気体が処理設備近辺の空気の場合は、前記空気採りいれ口から送風機によって導入した空気がポリエステルチップと接触するまでの工程中に、JIS B 9908(1991)で規定される形式1又は/及び形式2のフィルタユニットを装着した気体清浄装置を設置し、前記空気中の粒径0.3〜5μmの粒子数を1000000(個/立方フィ−ト)以下にすることが好まし。また、前記空気採りいれ口にJIS B 9908(1991)で規定される形式3のフィルタユニットを装着した気体清浄装置を設置して、前記のフィルタユニットを装着した気体清浄装置と併用することによって前記のフィルタユニットの寿命を延ばすことが可能である。
【0098】
気体中の粒子を除去するJIS B 9908(1991)で規定される形式1の超高性能のフィルタ(以下、HEPAフィルタと略称する)ユニットの素材としては、ガラス繊維からなる濾紙が挙げられる。
【0099】
また、JIS B 9908(1991)で規定される形式2の高性能フィルタユニットの素材としては、ポリプロピレン繊維からなるフィルタやテフロン(R)フイルムとPET繊維布の積層体からのフィルタ等が挙げられる。
一般には、ポリプロピレン繊維製の静電フィルタが使用される。
【0100】
また、JIS B 9908(1991)で規定される形式3の低性能フィルタユニットの素材としては、PETやポリプロピレンからなる不織布等が挙げられる。
【0101】
本発明のポリエステル組成物の極限粘度は、0.55〜1.50デシリットル/グラムであるのが好ましく、0.58〜1.20デシリットル/グラムであるのがより好ましい。ポリエステルの極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満の場合は、本発明のポリエステル組成物を溶融成形して得られた成形体の透明性、耐熱性、機械特性等が充分満足されないことがある。また、極限粘度が1.50デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、成形体が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0102】
また、本発明のポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量は、50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下である。アセトアルデヒド含有量が50ppm以上の場合は、このポリエステルから成形された容器等の内容物の風味や臭い等が悪くなる。
【0103】
また本発明に係るポリエステル中に共重合されたジエチレングリコ−ル量は、前記ポリエステルを構成するグリコ−ル成分の好ましくは0.5〜5.0モル%、より好ましくは1.0〜4.5モル%、さらに好ましくは1.5〜4.0モル%である。ジエチレングリコ−ル量が5.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成型時に分子量低下が大きくなったり、またアセトアルデヒド含有量やホルムアルデヒド含有量の増加量が大となり好ましくない。またジエチレングリコ−ル含有量が0.5モル%未満の場合は、得られた成形体の透明性が悪くなる。
【0104】
また本発明のポリエステル組成物の環状3量体の含有量は、好ましくは0.70重量%以下、より好ましくは0.50重量%以下、さらに好ましくは0.40重量%以下である。本発明のポリエステル組成物から耐熱性の中空成形体等を成形する場合は加熱金型内で熱処理を行うが、環状3量体の含有量が0.7重量%を越える場合には、加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
【0105】
本発明において、ポリエステルのチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は通常1.5〜5mm、好ましくは1.6〜4.5mm、さらに好ましくは1.8〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.5〜4mm、径は1.5〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は10〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0106】
また、本発明のポリエステル組成物は、これを射出成形して得られた厚さ5mmの成形板のヘイズが15%以下、また射出成形して得た厚さ2mmの成形体からの試験片の昇温時の結晶化温度(以下「Tc1」と称する)が、150〜172℃の範囲であることが望ましい。成形板のヘイズは、好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下であり、また昇温時の結晶化温度(Tc1)は、好ましくは153〜170℃、さらに好ましくは155〜168℃の範囲である。
成形板のヘイズが15%を超える場合は,得られた中空成形体の透明性が悪くなり、特に延伸中空成形体の場合には問題となる。また、Tc1が168℃を越える場合は、加熱結晶化速度が非常に遅くなり中空成形体口栓部の結晶化が不十分となり、内容物の漏れの問題が発生する。また、Tc1が150℃未満の場合は、中空成形体の透明性が低下し問題となる。
【0107】
本発明のポリエステル組成物は、使用済みPETボトルをケミカルリサイクル法によって精製し回収したジメチルテレフタレートやテレフタル酸などの原料を少なくとも出発原料の一部として用いて得たPETや、使用済みPETボトルをメカニカルリサイクル法により精製し回収したフレーク状PETやチップ状PETなどと混合して用いることができる。
【0108】
本発明のポリエステル組成物に飽和脂肪酸モノアミド、不飽和脂肪酸モノアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等を同時に併用することも可能である。
【0109】
飽和脂肪酸モノアミドの例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸モノアミドの例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドリシノ−ル酸アミド等が挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド等が挙げられる。また、不飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。好ましいアミド系化合物は、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等である。このようなアミド化合物の配合量は、10ppb〜1×105ppmの範囲である。
【0110】
また炭素数8〜33の脂肪族モノカルボン酸の金属塩化合物、例えばナフテン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、リノ−ル酸等の飽和及び不飽和脂肪酸のリチュウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、及びコバルト塩等を同時に併用することも可能である。これらの化合物の配合量は、10ppb〜300ppmの範囲である。
【0111】
本発明のポリエステル組成物は、中空成形体、トレ−、2軸延伸フイルム等の包装材、金属缶被覆用フイルム等として好ましく用いることが出来る。また、本発明のポリエステル組成物は、多層成形体や多層フイルム等の1構成層としても用いることが出来る。
【0112】
本発明のポリエステル組成物は、一般的に用いられる溶融成形法を用いてフィルム、シート、容器、その他の包装材料を成形することができる。また、本発明のポリエステル組成物からなるシ−ト状物を少なくとも一軸方向に延伸することにより機械的強度を改善することが可能である。本発明のポリエステル組成物からなる延伸フィルムは射出成形もしくは押出成形して得られたシート状物を、通常PETの延伸に用いられる一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のうちの任意の延伸方法を用いて成形される。また圧空成形、真空成形によリカップ状やトレイ状に成形することもできる。
【0113】
延伸フィルムを製造するに当たっては、延伸温度は通常は80〜130℃である。延伸は一軸でも二軸でもよいが、好ましくはフィルム実用物性の点から二軸延伸である。延伸倍率は一軸の場合であれば通常1.1〜10倍、好ましくは1.5〜8倍の範囲で行い、二軸延伸であれば縦方向および横方向ともそれぞれ通常1.1〜8倍、好ましくは1.5〜5倍の範囲で行えばよい。また、縦方向倍率/横方向倍率は通常0.5〜2、好ましくは0.7〜1.3である。得られた延伸フィルムは、さらに熱固定して、耐熱性、機械的強度を改善することもできる。熱固定は通常緊張下、120℃〜240、好ましくは150〜230℃で、通常数秒〜数時間、好ましくは数十秒〜数分間行われる。
【0114】
中空成形体を製造するにあたっては、本発明のポリエステル組成物から成形したブリフォームを延伸ブロー成形してなるもので、従来PETのブロー成形で用いられている装置を用いることができる。具体的には例えば、射出成形または押出成形で一旦プリフォームを成形し、そのままあるいは口栓部、底部を加工後、それを再加熱し、ホットパリソン法あるいはコールドパリソン法などの二軸延伸ブロー成形法が適用される。この場合の成形温度、具体的には成形機のシリンダー各部およびノズルの温度は通常260〜300℃の範囲である。延伸温度ば通常70〜120℃、好ましくは90〜110℃で、延伸倍率は通常縦方向に1.5〜3.5倍、円周方向に2〜5倍の範囲で行えばよい。得られた中空成形体は、そのまま使用できるが、特に果汁飲料、ウーロン茶などのように熱充填を必要とする飲料の場合には一般的に、さらにブロー金型内で熱固定処理を行い、耐熱性を付与して使用される。熱固定は通常、圧空などによる緊張下、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、数秒〜数時間、好ましくは数秒〜数分間行われる。
【0115】
また、口栓部に耐熱性を付与するために、射出成形または押出成形により得られたプリフォ−ムの口栓部を遠赤外線や近赤外線ヒ−タ設置オ−ブン内で結晶化させたり、あるいはボトル成形後に口栓部を前記のヒ−タで結晶化させる。
【0116】
本発明のポリエステル組成物には、必要に応じて公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、染料、顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。
【0117】
また、本発明のポリエステル組成物をフイルム用途に使用する場合には、滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性を改善するために、ポリエステル組成物中に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の無機粒子、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等の有機塩粒子やジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体等の架橋高分子粒子などの不活性粒子を含有させることが出来る。
なお、本発明における、主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0118】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定させるものではない。なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0119】
(2)ポリエステルのジエチレングリコ−ル含有量(以下[DEG含有量」という)
メタノ−ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0120】
(3)ポリエステルの環状3量体の含有量(以下「CT含有量」という)
試料300mgをヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロフォルム30mlを加えて希釈する。これにメタノ−ル15mlを加えてポリマ−を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミド10mlで定容とし、高速液体クロマトグラフ法により環状3量体を定量した。
【0121】
(4)ポリエステルのアセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れた上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定し、濃度をppmで表示した。
【0122】
(5)ポリエステルの溶融時の環状3量体増加量(△CT量)
乾燥したポリエステルチップ3gをガラス製試験管に入れ、窒素雰囲気下で290℃のオイルバスに60分浸漬させ溶融させる。溶融時の環状3量体増加量は、次式により求める。
溶融時の環状3量体増加量(重量%)=溶融後の環状3量体含有量(重量%)−溶融前の環状3量体含有量(重量%)
【0123】
(6)ファインの含有量およびフイルム状物含有量の測定
樹脂約0.5kgを、JIS−Z8801による呼び寸法5.6mmの金網をはった篩(A)と呼び寸法1.7mmの金網をはった篩(直径20cm)(B)を2段に組合せた篩の上に乗せ、テラオカ社製揺動型篩い振トウ機SNF−7で1800rpmで1分間篩った。この操作を繰り返し、樹脂を合計20kg篩った。
前記の篩(A)上に、厚みが約0.5mm以下のフイルム状物とは別に、2個以上のチップがお互いに融着したものや正常な形状より大きなサイズに切断されたチップ状物が捕捉されている場合は、これらを除去した残りの、厚みが約0.5mm以下のフイルム状物および篩(B)の下にふるい落とされたファインは、別々にイオン交換水で洗浄し岩城硝子社製G1ガラスフィルターで濾過して集めた。これらをガラスフィルターごと乾燥器内で100℃で2時間乾燥後、冷却して秤量した。再度、イオン交換水で洗浄、乾燥の同一操作を繰り返し、恒量になったことを確認し、この重量からガラスフィルターの重量を引き、ファイン重量およびフイルム状物の重量を求めた。ファイン含有量あるいはフイルム状物含有量は、ファイン重量またはフイルム状物重量/篩いにかけた全樹脂重量、である。これらの値より合計含有量を求める。
【0124】
(7)ファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)測定
セイコ−電子工業(株)製の示差走査熱量計(DSC)、RDC−220を用いて測定。(6)において、20kgのポリエステルから集めたファインを25℃で3日間減圧下に乾燥し、これから一回の測定に試料10mgを使用した。室温から290℃まで昇温速度20℃/分の速度で昇温し、290℃で3分間保持した後、液体窒素で急冷する。次いで、再度同様の条件で昇温した時に観察される結晶化ピ−ク温度を求め、これを昇温時結晶化温度(Tc1’)とする。ただし、結晶化ピーク温度が二つの場合には高温側の結晶化ピーク温度を求め、これを昇温時結晶化温度(Tc1’)とする。測定は、ファインの試料、最大10ヶについて実施して、これらの昇温時結晶化温度(Tc1’)の平均値を求め、これをファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)とする。
【0125】
(8)成形体の昇温時の結晶化温度(Tc1)
セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定。下記(13)の成形板の2mm厚みのプレ−トの中央部からの試料10mgを使用。昇温速度20℃/分で昇温し、その途中において観察される結晶化ピ−クの頂点温度を測定し、昇温時結晶化温度(Tc1’)とする。
【0126】
(9)ポリエステルチップの平均密度およびプリフォ−ム口栓部の密度
硝酸カルシュウム/水混合溶液の密度勾配管で30℃で測定した。
【0127】
(10)ヘイズ(霞度%)およびヘイズ斑
下記(13)の成形体(肉厚5mm)および(14)の中空成形体の胴部(肉厚約0.4mm)より試料を切り取り、日本電色(株)製ヘイズメ−タ−、modelNDH2000で測定。また、10回連続して成形した成形板(肉厚5mm)のヘイズを測定し、ヘイズ斑は下記により求めた。
ヘイズ斑=ヘイズの最大値/ヘイズの最小値
【0128】
(11)プリフォ−ム口栓部の加熱による密度上昇
プリフォ−ム口栓部を自家製の赤外線ヒ−タ−によって180秒間熱処理し、天面から試料を採取し密度を測定した。
【0129】
(12)段付成形板の成形
本特許記載にかかる段付成形板の成形においては、減圧乾燥機を用いて140℃で16時間程度減圧乾燥したポリエステルチップを名機製作所製射出成形機M−150C−DM型射出成形機により図1、図2に示すようにゲート部(G)を有する、2mm〜11mm(A部の厚み=2mm、B部の厚み=3mm、C部の厚み=4mm、D部の厚み=5mm、E部の厚み=10mm、F部の厚み=11mm)の厚さの段付成形板を射出成形した。
ヤマト科学製真空乾燥器DP61型を用いて予め減圧乾燥したポリエステルチップを用い、成形中にチップの吸湿を防止するために、成形材料ホッパー内は乾燥不活性ガス(窒素ガス)パージを行った。M−150C−DM射出成形機による可塑化条件としては、フィードスクリュウ回転数=70%、スクリュウ回転数=120rpm、背圧0.5MPa、シリンダー温度はホッパー直下から順に45℃、250℃、以降ノズルを含め290℃に設定した。射出条件は射出速度及び保圧速度は20%、また成形品重量が146±0.2gになるように射出圧力及び保圧を調整し、その際保圧は射出圧力に対して0.5MPa低く調整した。
射出時間、保圧時間はそれぞれ上限を10秒、7秒,冷却時間は50秒に設定し、成形品取出時間も含めた全体のサイクルタイムは概ね75秒程度である。
金型には常時、水温10℃の冷却水を導入し温調するが、成形安定時の金型表面温度は22℃前後である。
成形品特性評価用のテストプレートは、成形材料導入し樹脂置換を行った後、成形開始から11〜18ショット目の安定した成形品の中から任意に選ぶものとした。
2mm厚みのプレート(図1のA部)は昇温時の結晶化温度(Tc1)測定、5mm厚みのプレート(図1のD部)はヘイズ(霞度%)測定、に使用する。
【0130】
(13)中空成形体の成形
ポリエステルを脱湿空気を用いた乾燥機で乾燥し、各機製作所製M−150C(DM)射出成形機により樹脂温度290℃でプリフォームを成形した。このプリフォームの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた。次にこの予備成形体をCORPOPLAST社製のLB−01E成形機で縦方法に約2.5倍、周方向に約3.8倍の倍率に二軸延伸ブローし、引き続き約150℃に設定した金型内で約7秒間熱固定し、容量が2000ccの容器(胴部肉厚0.45mm)を成形した。延伸温度は100℃にコントロールした。
【0131】
(14)中空成形体からの内容物の漏れ評価
前記(13)で成形した中空成形体に90℃の温湯を充填し、キャッピング機によりキャッピングをしたあと容器を倒し放置後、内容物の漏洩を調べた。また、キャッピング後の口栓部の変形状態も調べた。
【0132】
(15)チップ化工程の冷却水および水処理工程の導入水中のナトリウム含有量、カルシウム含有量、マグネシウム含有量および珪素含有量
粒子除去およびイオン交換済みの冷却水または導入水を採取し、岩城硝子社製1G1ガラスフィルタ−で濾過後、濾液を島津製作所製誘導結合プラズマ発光分析装置で測定。
【0133】
(16)チップ化工程の冷却水中、および水処理工程の導入水中およびリサイクル水中の粒子数の測定
チップ化工程の冷却水、粒子除去およびイオン交換済みの導入水、または濾過装置(5)および吸着塔(8)で処理したリサイクル水を光遮断法による粒子測定器である株式会社セイシン企業製のPAC 150を用いて測定し、粒子数を個/10mlで表示した。
【0134】
(17)ポリエステルチップと接触する気体中の粒子数の測定
気体を強制的に送るための送風機等によって送られ、気体清浄装置を通過した気体をチップと接触する前に気体本流と分岐して粒子測定器に導入して測定する。5回測定を繰返し、平均値を求め、気体1立方フィート当たりの個数を計算する。
粒子測定器としては、リオン株式会社製の光散乱式粒子測定器、KC−01Bを用いた。
【0135】
(実施例1)
予め反応物を含有している第1エステル化反応器に、高純度テレフタル酸とエチルグリコ−ルとのスラリ−を連続的に供給し、撹拌下、約250℃、0.5kg/cm2Gで平均滞留時間3時間反応を行った。この反応物を第2エステル化反応器に送付し、撹拌下、約260℃、0.05kg/cm2で所定の反応度まで反応を行った。また、結晶性二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解し、これにエチレングリコ−ルを添加加熱処理した触媒溶液および燐酸のエチレングリコ−ル溶液を、別々にこの第2エステル化反応器に連続的に供給した。このエステル化反応生成物を連続的に第1重縮合反応器に供給し、撹拌下、約265℃、25torrで1時間、次いで第2重縮合反応器で撹拌下、約265℃、3torrで1時間、さらに最終重縮合反応器で撹拌下、約275℃、0.5〜1torrで1時間重縮合させた。溶融重縮合プレポリマ−の極限粘度は0.56dl/gであった。
【0136】
溶融重縮合反応物を冷却水(ナトリウム含有量が0.03ppm、マグネシウム含有量が0.03ppm、カルシウム含有量が0.02ppm、珪素含有量が0.09ppm)で冷却しながら水中カット造粒装置でチップ化後、約50℃以下のチップを貯蔵用タンクへ輸送し、次いで振動式篩分工程および気流分級工程によってファインおよびフイルム状物を除去することにより、ファイン含有量を約50ppm以下とした。次いでバケット式コンベヤー輸送方式によって結晶化装置に送り、窒素ガス流通下に約155℃で3時間連続的に結晶化し、次いで塔型固相重合器に投入し、窒素ガス流通下、約208℃で連続的に固相重合し、固相重合ポリエステルを得た。固相重合後、篩分工程およびファイン等除去工程で連続的に処理しファインやフイルム状物を除去し、貯蔵タンクに保管した。
【0137】
このポリエステルを次のようにして水処理した。ポリエステルチップの水処理には、図3に示す装置を用い、処理槽上部の原料チップ供給口(1)、処理槽の処理水上限レベルに位置するオ−バ−フロ−排出口(2)、処理槽下部のポリエステルチップと処理水の混合物の排出口(3)、このオ−バ−フロ−排出口から排出された処理水と、処理槽から排出された処理水と、処理槽下部の排出口から排出された水切り装置(4)を経由した処理水が、濾材が紙製の連続式フィルタ−である微粉除去装置(5)を経由して再び水処理槽へ送られる配管(6)、これらの微粉除去済み処理水の導入口(7)、微粉除去済み処理水中のアセトアルデヒドを吸着処理させる吸着塔(8)、及び新しいイオン交換水の導入口(9)を備えた内容量約50m3リットルの塔型の処理槽を使用した。
【0138】
前記の固相重合PETチップを気流分級工程および振動式篩分工程によりファインおよびフイルム状物を除去処理後、処理水温度95℃にコントロ−ルされた水処理槽へ50kg/時間の速度で処理槽上部の供給口(1)から連続投入して水処理し、処理槽下部の排出口(3)からPETチップとして50kg/時間の速度で処理水と共に連続的に抜き出した。上記処理装置のイオン交換水導入口(9)の手前で採取した導入水中の粒径1〜25μmの粒子含有量は約1900個/10ml、ナトリウム含有量が0.03ppm、マグネシウム含有量が0.02ppm、カルシウム含有量が0.03ppm、珪素含有量が0.09ppmであり、また濾過装置(5)および吸着塔(8)で処理後のリサイクル水の粒径1〜40μmの粒子数は約10000個/10mlであった。
水処理後、振動式篩工程および気流分級工程でファイン等の除去処理を行った。
【0139】
得られたPET組成物の極限粘度は0.74デシリットル/グラム、DEG含有量は2.7モル%、環状三量体の含有量は0.30重量%、環状三量体増加量は0.10重量%、平均密度は1.4025g/cm3、AA含有量は2.8ppm、ファイン含有量は約50ppmであった。また、ファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)は185℃であった。また原子吸光分析により測定したGe残存量は48ppm、またP残存量は30ppmであった。
【0140】
得られたPET組成物について前記(12)および(13)の方法によって成形板および二軸延伸成形ボトルによる評価を実施した。結果を表1に示す。
成形板のヘイズは4.0%、成形板ヘイズ斑は0.2%、成形板のTc1は170℃、口栓部の密度は1.377g/cm3、口栓部密度偏差は0.002g/cm3と問題のない値であった。また、内容物の漏れ試験でも、問題はなく、口栓部の変形もなかった。得られたボトルの胴部ヘイズは0.8%と良好であった。ボトルのAA含有量は16.3ppmと問題のない値であった。また、5000本以上の連続延伸ブロ−成形を実施したが、金型汚れは認められず、問題がなかった。
なお、製造工程における溶融重合プレポリマ−チップや固相重合チップ、水処理チップの輸送は全てバケット式コンベヤー輸送方式により、反応器や貯層からのチップの抜き出しは全てスクリュウ式フィ−ダ−を用いた。
【0141】
また溶融重縮合PETチップや固相重合PETチップを輸送用容器や保管用容器に充填、貯蔵するまでにチップと接触する空気として、JIS B 9908(1991)の形式3のPET不織布製フィルタユニットを装着した空気清浄機及びJIS B 9908(1991)の形式1の粒子捕集率99%以上のHEPAフィルタユニットを装着した空気清浄機で濾過した空気(粒径0.3〜5μmの粒子数は約500個/立方フィ−ト)を使用した。実施例2、実施例3、および比較例1でも同様にした。
【0142】
(実施例2)
結晶性二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液の替わりに、チタン酸テトライソプロピルのエチレングリコ−ル溶液と結晶性二酸化ゲルマニウムのエチレングリコ−ル溶液を用い、これらの触媒溶液を個別に、第2エステル化反応器に連続的に供給し、次いで、燐酸のエチレングリコ−ル溶液を第2エステル化反応器から第1重縮合反応器への輸送配管中に連続的に供給する以外は実施例1と同様にしてエステル化及び重縮合を実施し、次いで、実施例1と同様の条件下でチップ化し、IV0.56dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト・プレポリマ−を得た。
【0143】
次いで、実施例1と同様にして固相重合及び水処理を行った。
得られたPET組成物の極限粘度は0.74デシリットル/グラム、DEG含有量は2.7モル%、環状三量体の含有量は0.30重量%、環状三量体増加量は0.23重量%、平均密度は1.4028g/cm3、AA含有量は2.8ppm、ファイン含有量は約50ppm、またその昇温時結晶化温度(Tc1’)は183℃であった。原子吸光分析により測定したGe残存量は18ppm、Ti残存量は0.5ppm、またP残存量は10ppmであった。
【0144】
得られたPET組成物について前記(12)および(13)の方法によって成形板および二軸延伸成形ボトルによる評価を実施した。結果を表1に示す。成形板のヘイズは4.7%、成形板のTc1は168℃、口栓部の密度は1.378g/cm3と問題のない値であった。また、内容物の漏れ試験でも、問題はなく、口栓部の変形もなかった。得られたボトルの胴部ヘイズは0.9%良好であった。ボトルのAA含有量は17.9ppmと問題のない値であった。また、5000本以上の連続延伸ブロ−成形を実施したが、金型汚れは認められず、問題がなかった。
【0145】
なお、製造工程における溶融重縮合チップの輸送及び抜き出しのみ、実施例1と同様の装置を用いて同様の方法で行った。固相重合PETチップの輸送は低密度輸送方式によった。
【0146】
(実施例3)
結晶性二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液の替わりに、結晶性二酸化ゲルマニウムのエチレングリコ−ル溶液と塩基性酢酸アルミニウムの水/エチレングリコ−ル溶液を用い、これらの触媒溶液と燐酸のエチレングリコ−ル溶液を、別々に第2エステル化反応器に連続的に供給する以外は実施例1と同様にしてエステル化及び重縮合を実施し、次いで、実施例1と同様の条件下でチップ化し、IV0.56dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト・プレポリマ−を得た。次いで、実施例1と同様にして固相重合及び水処理を行った。
【0147】
得られたPET組成物の極限粘度は0.74デシリットル/グラム、DEG含有量は2.7モル%、AA含有量は2.8ppm、環状三量体の含有量は0.31重量%、環状三量体の増加量は0.30重量%、平均密度は1.4027g/cm3、ファイン含有量は約50ppm、またその昇温時結晶化温度(Tc1’)は186℃であり、またフイルム状物はなかった。
【0148】
得られたPET組成物について前記(12)および(13)の方法によって成形板および二軸延伸成形ボトルによる評価を実施した。結果を表1に示す。
成形板のヘイズは3.9%、成形板ヘイズ斑は0.2%、成形板のTc1は169℃であった。ボトル口栓部の密度は1.380g/cm3、口栓部密度偏差は0.002g/cm3と問題のない値であり、ボトルの胴部ヘイズは0.8%と良好であった。また、内容物の漏れ試験でも、問題はなく、口栓部の変形もなかった。ボトルのAA含有量は18.0ppmと問題のない値であった。また、5000本以上の連続延伸ブロ−成形を実施したが、金型汚れは認められず、問題がなかった。
なお、製造工程における溶融重合プレポリマ−チップや固相重合チップ、水処理チップの輸送は、実施例1と同様にして行った。
【0149】
(実施例4)
異種樹脂製ボトルを選別除去後、ラベル及びキャップを取り外した使用済みポリエチレンテレフタレートボトルを粉砕、水洗して得た回収フレークを解重合触媒の存在下にエチレングリコールで解重合し、次いでメタノールでエステル交換反応して得られた粗テレフタル酸ジメチルを蒸留精製し、この様にして得た精製テレフタル酸ジメチルを加水分解して高純度のテレフタル酸を得た。
【0150】
前記テレフタル酸及びエチレングリコール(バージン品)のスラリー(エチレングリコール/テレフタル酸モル比=1.6)を、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートが仕込まれ、温度250℃、常圧に保持されたエステル化反応槽に供給し、副生する水を系外に溜出させながら4時間でエステル化反応を行い、このエステル化反応生成物の100kgを重縮合槽に移送した。
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された前記重縮合槽に、複数の重縮合触媒供給配管より、実施例1で用いたのと同じ結晶性二酸化ゲルマニウムのエチレングリコ−ル溶液および燐酸のエチレングリコ−ル溶液を、添加した後、系内を1時間かけて250℃から275℃まで昇温すると共に、1時間で常圧から350Paとし、引き続き150Paの減圧下、277℃で、得られる樹脂の固有粘度が0.54dl/gとなる時間溶融重縮合させた。
重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、実施例1で用いたと同質のイオン交換水で冷却しながらチップ化してチップ温度を約50℃以下とし、次いで振動式篩分機によってファインおよびフイルム状物を除去することにより、ファイン含有量を約50ppm以下とした。
【0151】
引き続いて、前記で得られたポリエステル樹脂チップを、約160℃に保持された攪拌流動式結晶化機で結晶化させた後、充填塔式固相重合塔に移し、窒素流通下209℃で固相重合し、次いで篩分工程およびファイン除去工程で処理しファインを除去し、ファイン含有量を約50ppmとした。
【0152】
次いで、実施例1と同様にして水処理し、篩分工程およびファイン除去工程で処理しファインを除去し、ファイン含有量を約50ppmとした。
得られたPETのIVは0.75デシリットル/グラム、DEG含有量は3.0モル%、AA含有量は4.1ppm、環状3量体の含有量は0.36重量%、環状三量体の増加量は0.16重量%、フイルム状物は含有せず、またファインのTc1’は187℃であった。Ge残存量は48ppm、またP残存量は30ppmであった。
このPETについて成形板及び二軸延伸成形ボトルによる評価を実施した。
【0153】
成形板のヘイズは8.2%、成形板ヘイズ斑は0.3%、成形板のTc1は166℃であった。ボトル口栓部の密度は1.379g/cm3、口栓部密度偏差は0.003g/cm3と問題のない値であり、ボトルの胴部ヘイズは1.3%と良好であった。
また、内容物の漏れ試験でも、問題はなく、口栓部の変形もなかった。ボトルのAA含有量は18.2ppm、と問題のない値であった。
なお、製造工程における溶融重合プレポリマ−チップや固相重合チップなどの輸送は、実施例1と同様にして行った。
【0154】
(比較例1)
結晶性二酸化ゲルマニウムの添加量を増やす以外は実施例1と同様にして溶融重縮合したプレポリマ−を、同水質の冷却水で冷却しながらチップ化してチップ温度を約65℃とし、ファイン等の除去処理を行わずに低密度輸送方式によって一時的な貯蔵用サイロに輸送した。次いでこれを回転式タンブラ−に投入し、回転しながら減圧下において140℃で結晶化後、215℃で固相重合した。固相重合装置への輸送及び固相重合後の輸送は全て低密度輸送方式によった。
【0155】
得られたPET組成物を実施例1と同一条件で水処理を実施した。溶融重縮合から水処理後までの全ての工程においてファイン等の除去装置で処理を行なわなかった。
得られたPET、これを成形した成形板および二軸延伸成形ボトルの特性を表1に示す。得られたボトルの透明性は悪く、また口栓部の変形、及び内容物の漏洩を調べたが、内容物の漏れが激しく、問題であった。
また、5000本以上の連続延伸ブロ−成形を実施したが、金型汚れが激しく、問題であった。
【0156】
【表1】
【0157】
【発明の効果】
本発明のポリエステル組成物によれば、溶融成形時の結晶化コントロ−ル性、長時間連続成形性に優れており、それから得られた中空成形体、シ−ト状物および延伸フイルムは、透明性、耐熱寸法安定性が優れ、特に、中空成形体の口栓部収縮率が適正な範囲であり、液体容器としたときに残留異味、異臭が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において使用した段付成形板の平面図
【図2】図1の段付成形板の側面図
【図3】実施例で用いた水処理装置の概略図
【符号の説明】
1 原料チップ供給口
2 オーバーフロー排出口
3 ポリエステルチップと処理水との排出口
4 水切り装置
5 微粉除去装置
6 配管
7 処理水導入口
8 吸着塔
9 イオン交換水導入口
Claims (7)
- 主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルのチップと、前記ポリエステルのチップと同一組成のポリエステルのファイン0.1〜5000ppmとからなるポリエステル組成物であって、DSC(示差走査熱量計)で測定した前記ファインの昇温時結晶化温度(Tc1’)が170〜195℃の範囲であり、さらに前記ポリエステル組成物を290℃の温度で60分間溶融したときの環状三量体増加量が0.50重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物。
- 前記ポリエステルのチップと同一組成のポリエステルのフイルム状物の含有量が、10ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル組成物。
- 環状3量体の含有量が、0.70重量%以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル組成物に、さらにポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂0.1ppb〜50000ppmを配合してなることを特徴とするポリエステル組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル組成物を成形してなることを特徴とする中空成形体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル組成物を押出成形してなることを特徴とする
シ−ト状物。 - 請求項6記載のシ−ト状物を少なくとも1方向に延伸して成ることを特徴とする延伸フイルム。
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Legal Events
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