以下、本発明のポリエステルの実施の形態を具体的に説明する。
すなわち、本発明のポリエステルは、エチレンテレフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは97モル%以上含む線状ポリエステルである。
前記ポリエステルの共重合に使用されるジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニールー4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,3−フエニレンジオキシジ酢酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
前記ポリエステルの共重合に使用されるグリコールとしては、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコールなどが挙げられる。
さらに、前記ポリエステル中の多官能化合物からなるその他の共重合成分としては、酸性分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトールを挙げることができる。以上の共重合成分の使量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
前記の特性を持つ本発明のポリエステルは、例えば、エチレンテレフタレートを主繰返し単位とする下記の特性のポリエステルAとポリエステルBとを主成分として含み、両者の構成比が重量比で97/3〜3/97であるポリエステルとして得ることができるが、これに限定されるものではない。ここで、ポリエステルAの極限粘度IVAとポリエステルBの極限粘度IVBの差が0.05〜0.25デシリットル/グラムの範囲であり、ポリエステルAとポリエステルBのチップ嵩密度の差が0.10グラム/立方センチメートル以内で、かつ、ポリエステルAの降温時の結晶化温度とポリエステルBの降温時の結晶化温度との差(△Tc2)が15℃以内であることが好ましい。
ポリエステルA:極限粘度IVAが0.60〜0.75デシリットル/グラム、総末端基数に対する末端カルボキシル基の割合が7〜40重量%、アセトアルデヒド含有量が10ppm以下、チップの嵩密度が0.80〜0.97グラム/立方センチメートル、DSCで測定した昇温時の結晶化温度が140〜180℃、降温時の結晶化温度が160〜200℃であるポリエステル。
ポリエステルB:極限粘度IVBが0.73〜0.95デシリットル/グラム、総末端基数に対する末端カルボキシル基の割合が7〜40重量%、アセトアルデヒド含有量が10ppm以下、チップの嵩密度が0.80〜0.97グラム/立方センチメートル、DSCで測定した昇温時の結晶化温度が140〜180℃、降温時の結晶化温度が150〜190℃であるポリエステル。
またポリエステルAあるいはポリエステルBとしては、前記の特性範囲に入る各ポリエステルを少なくとも一種以上用いること、例えばポリエステルAとしてはIVのみ異なる2種のポリエステルを用い、ポリエステルBとしては1種のポリエステルを用いて前記の構成比になるように混合したポリエステルを用いることも可能である。
ここで、DSC測定は、下記の方法によってポリエステルAおよびポリエステルBを290℃で射出成形した成形板(2mm厚み)について下記の方法によって実施する。
ポリエステルAとポリエステルBの構成比は重量比で、好ましくは95/5〜5/95、さらに好ましくは90/10〜10/90である。ポリエステルAの極限粘度IVAとポリエステルBの極限粘度IVBの差は、好ましくは0.06〜0.23デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.07〜0.20デシリットル/グラム、特に好ましくは0.10〜0.17デシリットル/グラムである。前記の極限粘度差が0.05デシリットル/グラム未満の場合は、得られた成形体のアセトアルデヒド含有量を低減できず香味保持性が改良できない。また前記の極限粘度差が0.25デシリットル/グラムを越える場合は、得られた成形体に厚み斑や白化した流れ模様等が生じ問題となる。
また両者の嵩密度の差は、好ましくは0.08グラム/立方センチメートル以内、さらに好ましくは0.05グラム/立方センチメートル以内、特に好ましくは0.03グラム/立方センチメートル以内である。前記の嵩密度の差が0.10グラム/立方センチメートルを越える場合は、前記ポリエステルから成形体を製造する際、時系列方向での配合比率の変動が大きくなるために成形体の極限粘度や結晶化特性の変動が生じ、厚み斑、延伸斑や透明性斑の大きい成形体が生じて問題となる。また両者の嵩密度差が0.01グラム/立方センチメートル以内ではその効果は明らかではない。またポリエステルAの降温時の結晶化温度とポリエステルBの降温時の結晶化温度の差(△Tc2)は、好ましくは13℃以内、さらに好ましくは10℃以内、特に好ましくは8℃以内である。前記の降温時の結晶化温度の差(△Tc2)が15℃を超える場合は、得られた成形体の透明性は非常に悪くなる。
前記のポリエステルAおよびポリエステルBを主成分として含むポリエステルにおいては、低IV成分が可塑剤的な働きをするからか押出機内の溶融体の流動性が向上するため熱伝導性が良くなり、より低温度でも結晶核が溶融するので結晶化速度の遅い溶融体となり、さらに、ポリエステルAの降温時の結晶化温度とポリエステルBの降温時の結晶化温度の差(△Tc2)が15℃以内であるため前記溶融体からの成形体冷却時に結晶化が生じにくくなるのである。また、流動性が向上するため、局部的な過熱が少なく、また、剪断発熱も低く抑えられるため、アセトアルデヒドの発生量が押さえられるだけでなく、成形温度変化に対してもアセトアルデヒドの発生量の変化が低く抑えられる。
ポリエステルAの極限粘度IVAは好ましくは0.62〜0.74デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.63〜0.73デシリットル/グラム、総末端基数に対する末端カルボキシル基の割合は好ましくは8〜38当量%、さらに好ましくは9〜35当量%、アセトアルデヒド含有量が好ましくは6ppm以下、さらに好ましくは4ppm以下、嵩密度は好ましくは0.82〜0.96グラム/立方センチメートル、特に好ましくは0.83〜0.95グラム/立方センチメートル、昇温時の結晶化温度は好ましくは150〜178℃、さらに好ましくは155〜175℃、また降温時の結晶化温度は好ましくは165〜195℃、さらに好ましくは175〜190℃である。ポリエステルAの極限粘度IVAが0.60デシリットル/グラム未満の場合は得られた成形体の透明性が悪くなり問題である。また0.75デシリットル/グラムを越えるとアセトアルデヒドの低減効果が低くなる。
また総末端基数に対する末端カルボキシル基の割合が7当量%未満のポリエステルを得ようとすると、このようなポリエステルの製造時の固相重合時間が極端に長くなり経済性が問題となる。総末端基数に対する末端カルボキシル基の割合40当量%を越えると環状3量体の含有量が0.7重量%以上と多くなり、金型汚れ等の問題を引き起こすことがある。
またアセトアルデヒド含有量が10ppmを越える場合は得られた成形体の香味保持性が悪くなり問題となるが、一方経済的に採算が合う方法では1ppm以下が限度である。嵩密度が0.80グラム/立方センチメートル未満の場合は、成形機内でのチップの流動性が悪く両者の混合が不十分となる。また0.97グラム/立方センチメートルを越えるチップを製造することは経済的観点から無駄である。またポリエステルAの昇温時の結晶化温度が140℃未満の場合は成形体の透明性が悪くなり、また180℃を越える場合は口栓部の結晶化速度改良効果が悪くなり問題である。ポリエステルAの降温時の結晶化温度が160℃未満の場合は口栓部の結晶化速度改良効果が悪くなり、また200℃を越える場合は成形体の透明性が悪くなり問題である。
ポリエステルBの極限粘度IVBは好ましくは0.74〜0.90デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.75〜0.85デシリットル/グラム、総末端基数に対する末端カルボキシル基の割合は好ましくは8〜38当量%、さらに好ましくは9〜35当量%、アセトアルデヒド含有量が好ましくは6ppm以下、さらに好ましくは4ppm以下、嵩密度は好ましくは0.82〜0.96グラム/立方センチメートル、特に好ましくは0.83〜0.95グラム/立方センチメートル、また昇温時の結晶化温度は好ましくは150〜178℃、さらに好ましくは155〜175℃、降温時の結晶化温度は好ましくは155〜185℃、さらに好ましくは160〜180℃である。ポリエステルBの極限粘度IVBが0.73デシリットル/グラム未満の場合は得られた成形体の透明性が悪くなり問題である。また0.95デシリットル/グラムを越えると成形時の発熱が激しくなりアセトアルデヒドの低減効果が低くなる。
また総末端基数に対する末端カルボキシル基の割合が7当量%未満のポリエステルを得ようとすると、このようなポリエステルの製造時の固相重合時間が極端に長くなり経済性が問題となる。総末端基数に対する末端カルボキシル基の割合40当量%を越えると環状3量体の含有量が0.7重量%以上と多くなり、金型汚れ等の問題を引き起こす。
またアセトアルデヒド含有量が10ppmを越える場合は得られた成形体の香味保持性が悪くなり問題となるが、一方経済的に採算が合う方法では1ppm以下が限度である。嵩密度についてはポリエステルAの場合と同じである。またポリエステルBの昇温時の結晶化温度が140℃未満の場合は成形体の透明性が悪くなり、また180℃を越える場合は口栓部の結晶化速度改良効果が悪くなり問題である。ポリエステルBの降温時の結晶化温度が150℃未満の場合は口栓部の結晶化速度改良効果が悪くなり、また190℃を越える場合は成形体の透明性が悪くなり問題である。
また、ポリエステルAおよびポリエステルBの組成は実質上同じであることが好ましい。ここで実質上同じとは、互いのポリエステル中の酸成分、グリコール成分とも、95モル%以上が同一であることが好ましく、さらには97モル%以上、特には98モル%以上が同一であることが好ましい。
本発明に係るポリエステルAおよびポリエステルBは、基本的には従来公知の溶融重縮合法あるいは溶融重縮合法―固相重合法によって製造することが出来る。溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。これらは回分式反応装置から構成されていてもよいし、また連続式反応装置から構成されていてもよい。また溶融重縮合工程と固相重合工程は連続的に運転してもよいし、分割して運転してもよい。以下に、ポリエチレンテレフタレート(PET)を例にして、本発明に係るポリエステルの好ましい連続式製造方法の一例について説明するが、これに限定されるものではない。即ち、テレフタル酸とエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、重縮合触媒の存在下に減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコールを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒の存在下に減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。次いで、極限粘度を増大させたり、また低フレーバー飲料用耐熱容器や飲料用金属缶の内面用フィルム等のように低アセトアルデヒド含有量や低環状3量体含有量とする場合には、このようにして得られた溶融重縮合されたポリエステルは、引き続き固相重合される。
まず、エステル化反応により低重合体を製造する場合には、テレフタル酸またはそのエステル誘導体1モルに対して1.02〜2.0モル、好ましくは1.03〜1.4モルのエチレングリコールが含まれたスラリーを調整し、これをエステル化反応工程に連続的に供給する。
エステル化反応は、少なくとも2個のエステル化反応器を直列に連結した多段式装置を用いてエチレングリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水またはアルコールを精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル化反応の温度は240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力は0.2〜3kg/cm2G、好ましくは0.5〜2kg/cm2Gである。最終段目のエステル化反応の温度は通常250〜280℃好ましくは255〜275℃であり、圧力は通常0〜1.5kg/cm2G、好ましくは0〜1.3kg/cm2Gである。3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらのエステル化反応の反応率の上昇は、それぞれの段階で滑らかに分配されることが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。これらのエステル化反応により分子量500〜5000程度の低次縮合物が得られる。
上記エステル化反応は原料としてテレフタル酸を用いる場合は、テレフタル酸の酸としての触媒作用により無触媒でも反応させることができるが重縮合触媒の共存下に実施してもよい。
また、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどの水酸化第4級アンモニウムおよび炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの塩基性化合物を少量添加して実施すると、ポリエチレンテレフタレートの主鎖中のジオキシエチレンテレフタレート成分単位の割合を比較的低水準(全ジオール成分に対して3モル%以下)に保持できるので好ましい。
次に、エステル交換反応によって低重合体を製造する場合は、テレフタル酸ジメチル1モルに対して1.1〜2.0モル、好ましくは1.2〜1.5モルのエチレングリコールが含まれた溶液を調整し、これをエステル交換反応工程に連続的に供給する。
エステル交換反応は、1〜2個のエステル交換反応器を直列に連結した装置を用いてエチレングリコールが還留する条件下で、反応によって生成したメタノールを精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル交換反応の温度は180〜250℃、好ましくは200〜240℃である。最終段目のエステル交換反応の温度は通常230〜270℃、好ましくは240〜265℃であり、エステル交換触媒として、Zn,Cd,Mg,Mn,Co,Ca,Baなどの脂肪酸塩、炭酸塩やPb,Zn,Ge酸化物等を用いる。これらのエステル交換反応により分子量約200〜500程度の低次縮合物が得られる。
前記の出発原料であるジメチルテレフタレート、テレフタル酸またはエチレングリコールとしては、パラキシレンから誘導されるバージンのジメチルテレフタレート、テレフタル酸あるいはエチレンから誘導されるエチレングリコールは勿論のこと、使用済みPETボトルからメタノール分解やエチレングリコール分解などのケミカルリサイクル法により回収したジメチルテレフタレート、テレフタル酸、ビスヒドロキシエチルテレフタレートあるいはエチレングリコールなどの回収原料も、出発原料の少なくとも一部として利用することが出来る。前記回収原料の品質は、使用目的に応じた純度、品質に精製されていなければならないことは言うまでもない。
次いで得られた低次縮合物は多段階の溶融縮重合工程に供給される。重縮合反応条件は、第1段階目の重縮合の反応温度は250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力は500〜20Torr、好ましくは200〜30Torrで、最終段階の重縮合反応の温度は265〜300℃、好ましくは275〜295℃であり、圧力は10〜0.1Torr、好ましくは5〜0.5Torrである。3段階以上で実施する場合には、中間段階の重縮合反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される極限粘度の上昇の度合は滑らかに分配されることが好ましい。なお、重縮合反応には一段式重縮合装置を用いてもよい。
重縮合反応は、重縮合触媒を用いて行う。重縮合触媒としては、Ge、Ti、SbまたはAlの化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物が用いられることが好ましい。これらの化合物は、粉体、水溶液、エチレングリコール溶液、エチレングリコールのスラリー等として反応系に添加される。
Ge化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム粉末またはエチレングリコールのスラリー、結晶性二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解した溶液またはこれにエチレングリコールを添加加熱処理した溶液等が使用されるが、特に本発明で用いるポリエステルを得るには二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解した溶液、またはこれにエチレングリコールを添加加熱した溶液を使用するのが好ましい。また、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等の化合物も用いることが出来る。これらの重縮合触媒はエステル化工程中に添加することができる。Ge化合物を使用する場合、その使用量はポリエステル中のGe残存量として、10〜100ppm、好ましくは10〜60ppm、より好ましくは13〜50ppm、更に好ましくは15〜45ppmである。
Ti化合物としては、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のテトラアルキルチタネートおよびそれらの部分加水分解物、酢酸チタン、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン、チタンハロゲン化物の加水分解物、シュウ化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸アンモニウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、チタンアセチルアセトナート、ヒドロキシ多価カルボン酸または含窒素多価カルボン酸とのチタン錯体物、チタンおよびケイ素あるいはジルコニウムからなる複合酸化物、チタンアルコキサイドとリン化合物の反応物、チタンアルコキサイドと芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応物にリン化合物を反応させて得た反応生成物等が挙げられる。Ti化合物は、生成ポリマー中のTi残存量として0.1〜20ppm、好ましくは0.5〜10ppmの範囲になるように添加する。
Sb化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレート、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。Sb化合物は、生成ポリマ−中のSb残存量として50〜300ppm、好ましくは50〜250ppm、好ましくは50〜200ppm,さらに好ましくは50〜180ppmの範囲になるように添加する。
Al化合物としては、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうち酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。Al化合物は、生成ポリマー中のAl残存量として5〜100ppm、好ましくは10〜50ppmの範囲になるように添加する。
また、本発明に係るポリエステルの製造においては、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を必要に応じて併用してもよい。アルカリ金属、アルカリ土類金属としては、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルカリ金属ないしその化合物の使用がより好ましい。アルカリ金属ないしその化合物を使用する場合、特にLi,Na,Kの使用が好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
前記のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、粉体、水溶液、エチレングリコール溶液等として反応系に添加される。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、生成ポリマ−中のこれらの元素の残存量として1〜50ppmの範囲になるように添加する。
さらにまた、本発明に係るポリエステルは、ケイ素、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ガリウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、錫、ハフニウム、タリウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含む金属化合物を含有してもよい。これらの金属化合物としては、これら元素の酢酸塩等の飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸塩などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸塩などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸塩などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸塩などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、アルコキサイド、アセチルアセトナ−ト等とのキレート化合物があげられ、粉体、水溶液、エチレングリコール溶液、エチレングリコールのスラリ−等として反応系に添加される。これらの金属化合物は、生成ポリマ−1トン当りのこれらの金属化合物の元素の残存量として0.05〜3.0モルの範囲になるように添加する。これらの金属化合物は、前記のポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加することができる。
また、安定剤として、燐酸、ポリ燐酸やトリメチルフォスフェート等の燐酸エステル類、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物を使用するのが好ましい。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニールホスホン酸ジメチルエステル、フェニールホスホン酸ジエチルエステル、フェニールホスホン酸ジフェニールエステル等である。これらの安定剤はテレフタル酸とエチレングリコールのスラリー調合槽からエステル化反応工程中に添加することができる。P化合物は、生成ポリマ−中のP残存量として好ましくは5〜100ppmの範囲になるように添加する。
重縮合触媒としてAl化合物を用いる場合は、リン化合物と併用することが好ましく、アルミニウム化合物およびリン化合物が予め溶媒中で混合された溶液またはスラリーとして用いることが好ましい。Al化合物の場合、より好ましいリン化合物は、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。これらのリン化合物を用いることで触媒活性の向上効果が見られるとともに、ポリエステルの熱安定性等の物性が改善する効果が見られる。これらの中でも、ホスホン酸系化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
前記のようにして得られた溶融重縮合ポリエステルは、例えば、溶融重縮合終了後にダイス細孔より溶融ポリエステルを水中に押出して水中でカットする方式、あるいは溶融重縮合終了後にダイス細孔より空気中にストランド状に押出した後、冷却水で冷却しながらチップ化する方式によってチップ化される。
次いで、前期の溶融重縮合ポリエスエルチップは、不活性気体雰囲気下において、2段階以上の連続式結晶化装置で予備結晶化されることが好ましい。例えばPETの場合は、1段目の予備結晶化では100〜180℃の温度で1分〜5時間で、次いで2段目の予備結晶化では160〜210℃の温度で1分〜3時間の条件で、さらに2段目以上の予備結晶化では180〜210℃の温度で1分〜3時間の条件で、順次、段階的に結晶化することが好ましい。結晶化後のチップの結晶化度は30〜65%、好ましくは35〜63%、さらに好ましくは40〜60%の範囲であることが好ましい。なお、結晶化度はチップの密度より求めることができる。
次いで、不活性ガス雰囲気下または減圧下に前記プレポリマーに最適な温度に於いて、固相重合による極限粘度の増加が0.10デシリットル/グラム以上になるようにして固相重合を行う。例えば、PETの場合には、固相重合の温度としては、上限は215℃以下が好ましく、さらには210℃以下、特には208℃以下が好ましく、下限は190℃以上、好ましくは195℃以上である。
固相重合終了後はアセトアルデヒドの発生を防ぐため、約30分以内、好ましくは20分以内、さらに好ましくは10分以内にチップ温度を約70℃以下、好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下にすることが好ましい。
ポリエステルAおよびポリエステルBは、重縮合触媒の種類及び添加量、溶融重縮合や固相重合条件などを適宜制御することによって製造することができる。またこのようにして得られたポリエステルチップに衝撃を与える方法、下記で説明するようにポリオレフィン樹脂、特にポリエチレン、ポリアミド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂等を配合する方法によっても得ることが出来る。
なお、本発明に係るポリエステルのチップの形状は、シリンダー型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は、通常1.0〜4mm、好ましくは1.0〜3.5mm、さらに好ましくは1.0〜3.0mmの範囲である。例えば、シリンダー型の場合は、長さは1.0〜4mm、径は1.0〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は5〜40mg/個の範囲が実用的である。また、固相重合速度を向上させたり、アルデヒド類の含有量をより効果的に低減させたりすることが必要な場合は、チップの平均重量は1〜5mg/個にすることも好ましい。
290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.40重量%以下である本発明のポリエステルは、ポリエステルA、ポリエステルBのうち少なくとも一種の重縮合触媒を失活処理することにより製造することができる。
前記ポリエステルの重縮合触媒を失活処理する方法としては、前記ポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。
熱水処理方法としては、ポリエステルA、ポリエステルB、あるいはこれらを主成分として含むポリエステルを水中に浸ける方法やシャワーでこれらのチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエステル1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエステルと水蒸気とを接触させる。ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
また、重縮合触媒を失活させる別の手段として、リン化合物を前記ポリエステルに配合し、成形時などの溶融状態において混合、反応させて重縮合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
ポリエステルにリン化合物を配合する方法としては、前記ポリエステルにリン化合物をドライブレンドする方法やリン化合物を溶融混練して配合したポリエステルマスターバッチチップとポリエステルチップを混合する方法によって所定量のリン化合物をポリエステルに配合後、押出機や成形機中で溶融し、重縮合触媒を不活性化する方法、チップをリン化合物溶液、特にリン酸水溶液に浸漬する方法、マスターバッチとして添加する方法などが挙げられる。また、これらリン化合物はポリエステルに共重合された状態であっても良い。
使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としては前記の化合物であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
ポリエステルAのチップとポリエステルBのチップをドライブレンドして成形する際、成形機内に樹脂が滞留したり、成形条件の変動(成形サイクルを長くする)があると、残存する触媒の活性により溶融中にエステル交換が進むため、分子量の均一化が進み、低IV成分による可塑化効果が得られずに、本願の効果が発揮できない場合がある。しかし、少なくともポリエステルAまたはポリエステルBのいずれか一方、好ましくは両方でポリエステルの触媒を失活させたものを用いることは、この成形中のエステル交換を低減させ、成形条件の変動による成形体の品質のばらつきを抑えることができるという点でも好ましい。
本発明のポリエステルは、従来公知の方法により前記のポリエステルAと前記のポリエステルBを所定の比率で均一に混合して得ることができる。例えば、前記のポリエステルAと前記のポリエステルBとをタンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、スタティックミキサー等でドライブレンドする方法、さらにドライブレンドした混合物を一軸押出機、二軸押出機、ニーダー等で1回以上溶融混合する方法などが挙げられる。具体的には、前記のポリエステルAとポリエステルBをチップ形態で前記の適当な方法により所定比率で均一に混合し、乾燥後、成形に供するのが一般的である。
前記ポリエステルを前記したような方法によってポリエステルAのチップとポリエステルBのチップをドライブレンドして得ようとする場合、これら両者の混合比率の変動が大きいと、ポリエステルからなる成形体の極限粘度の変動や結晶化特性などの変動が起こり、このため得られた成形体のアセトアルデヒド含有量、透明性、厚みなどの特性が変動し大きな問題となる。また、ドライブレンド後のポリエステルを乾燥機や成形機に供給したり、あるいはこれらの機器から排出したりする際、または移送配管中をポリエステルを気体などで移送する際などポリエステルを移動させる場合にポリエステルAやポリエステルBの配合割合が変動することがある。
成形機などへの供給前や溶融成形前の段階に於けるポリエステルAとポリエステルBのチップの配合割合の変動率は、±5%以内、好ましくは±3%以内、さらに好ましくは±1%以内である。
前記配合割合の変動要因としては、両者のチップの真密度の差や嵩密度の差があり、真密度は主として結晶化条件や固相重合温度や時間などの固相重合条件によって決まり、また嵩密度はチップサイズやチップの形状(切り口の状態)、微粉末(ファインとも言う)や細粒等の混入量によって決まる。
本発明に係るポリエステルAのチップとポリエステルBのチップの密度は1.370グラム/立方センチメートル以上、好ましくは1.380グラム/立方センチメートル以上、さらに好ましくは1.390グラム/立方センチメートル以上、特に好ましくは1.395グラム/立方センチメートル以上であることが望ましい。また1.415グラム/立方センチメートル以上の密度のチップを得ようとすると、固相重合時にチップの融着が発生したりして問題となる。チップの密度が1.390グラム/立方センチメートル未満の場合は環状3量体の含有量が0.7重量%以下に低減できず、金型汚れなどの問題が生じるので、成形体を熱処理する必要がある耐熱性成形体の場合は好ましくない。
本発明に係るポリエステルAのチップとポリエステルBのチップの密度の差は、0.025グラム/立方センチメートル以内、好ましくは0.02グラム/立方センチメートル以内、さらに好ましくは0.01グラム/立方センチメートル以内である。前記の密度の差が0.025グラム/立方センチメートルを越える場合は、前記ポリエステルから成形体を製造する際、時系列方向での配合比率の変動が大きくなるために成形体の極限粘度や結晶化特性の変動が生じ、厚み斑、延伸斑や透明性斑の大きい成形体が発生して問題となる。
また本発明に係るポリエステルAとポリエステルBのチップサイズとチップの嵩密度は前記のとうりである。
また、前記ポリエステルは製造中に発生する前記ポリエステルAまたはBに起因するファインを含むが、その含有量は0.1〜5000ppmであることが好ましい。ファインの含有量は、好ましくは0.1〜3000ppm、より好ましくは0.1〜1000ppm、さらに好ましくは0.1〜500ppm、最も好ましくは0.1〜100ppmである。ファインの含有量が0.1ppm未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形容器の口栓部の結晶化が不十分となり、このため口栓部の収縮量が規定値の範囲内に収まらず、キャッピング不可能となる。含有量が5000ppmを超える場合は、前記のポリエステルAとポリエステルBの配合量斑、配合量変動が起こり易くなり、その結果成形体の極限粘度変動が大きくなって結晶化速度や延伸性の変動が生じる。そしてシート状物の場合は、透明性や表面状態が悪くなりと共にこれらの特性の変動が大きく、これを延伸した場合、厚み斑が悪くなる。また中空成形体の口栓部の結晶化度が過大、かつ変動大となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないため口栓部のキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形体用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。特に、中空成形体用のポリエステルのファイン含有量は0.1〜500ppmが好ましい。
前記ポリエステルを構成するポリエステルAおよびポリエステルBのファイン含有量も同様に0.1〜5000ppmであることが好ましい。ファインの含有量は、好ましくは0.1〜3000ppm、より好ましくは0.1〜1000ppm、さらに好ましくは0.1〜500ppm、最も好ましくは0.1〜100ppmである。
また本発明のポリエステル中に共重合されたジエチレングリコール量は、前記ポリエステルを構成するグリコール成分の1.3〜5.0モル%、好ましくは1.5〜4.0モル%、より好ましくは1.8〜3.5モル%、さらに好ましくは2.0〜3.0モル%、特に好ましくは2.0〜2.9モル%である。ジエチレングリコール量が5.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成型時に分子量低下が大きくなったり、またアセトアルデヒド含有量やホルムアルデヒド含有量の増加量が大となり好ましくない。またジエチレングリコール含有量が1.0モル%未満の場合は、得られた成形体の透明性が悪くなる。
さらにまた、本発明のポリエステル中には、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂を0.1ppb〜50000ppm含むことが好ましい。本発明において用いられる前記樹脂のポリエステルへの配合割合は、0.1ppb〜10000ppm、好ましくは0.3ppb〜1000ppm、より好ましくは0.5ppb〜100ppm、さらに好ましくは1.0ppb〜1ppm、特に好ましくは1.0ppb〜45ppbである。配合量が0.1ppb未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形体の口栓部の結晶化が不十分となるため、サイクルタイムを短くすると口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となったり、また、耐熱性中空成形体を成形する延伸熱固定金型の汚れが激しく、透明な中空成形体を得ようとすると頻繁に金型掃除をしなければならない。また50000ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなり、中空成形体の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形体用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。また、シート状物の場合、50000ppmを越えると透明性が非常に悪くなり、また延伸性もわるくなって正常な延伸が不可能で、厚み斑の大きな、透明性の悪い延伸フィルムしか得られない。
また、範囲内にすることにより、結晶性のバラツキが抑えられ、安定して成形を行うことができる。
本発明のポリエステルに配合されるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはα−オレフィン系樹脂が挙げられる。またこれらの樹脂は結晶性でも非晶性でもかまわない。
本発明のポリエステルに配合されるポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、不飽和エポキシ化合物等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、超低・低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン系樹脂が挙げられる。
また本発明のポリエステルに配合されるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと、エチレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体、あるいはヘキサジエン、オクタジエン、デカジエン、ジシクロペンタジエン等のジエンとの共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、プロピレン単独重合体(アタクチック、アイソタクチック、シンジオタクチックポリプロピレン)、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等のプロピレン系樹脂が挙げられる。
また本発明のポリエステルに配合されるα−オレフィン系樹脂としては、4−メチルペンテン−1等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ブテン−1単独重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、ブテン−1−エチレン共重合体、ブテン−1−プロピレン共重合体等のブテン−1系樹脂や4−メチルペンテン−1とC2〜C18のα−オレフィンとの共重合体、等が挙げられる。
また、本発明のポリエステルに配合されるポリアミド樹脂としては、例えば、ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムの重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/MXD6、ナイロンMXD6/MXDI、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/12、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等が挙げられる。またこれらの樹脂は結晶性でも非晶性でもかまわない。
また、本発明のポリエステルに配合されるポリアセタール樹脂としては、例えばポリアセタール単独重合体や共重合体が挙げられる。ポリアセタール単独重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.40〜1.42g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロー比(MFR)が0.5〜50g/10分の範囲のポリアセタールが好ましい。
また、ポリアセタール共重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.38〜1.43g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロー比(MFR)が0.4〜50g/10分の範囲のポリアセタール共重合体が好ましい。これらの共重合成分としては、エチレンオキサイドや環状エーテルが挙げられる。
本発明における前記のポリオレフィン樹脂等を配合したポリエステルの製造は、前記ポリエステルAおよび/またはポリエステルBに前記ポリオレフィン樹脂等の樹脂を、その含有量が前記範囲となるように直接に添加し溶融混練する方法、または、マスターバッチとして添加し溶融混練する方法等の慣用の方法によるほか、前記樹脂を、前記ポリエステルAおよび/またはポリエステルBの製造段階、例えば、溶融重縮合時、溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合時、固相重合直後等のいずれかの段階、または、製造段階を終えてから成形段階に到るまでの工程などで、粉粒体として直接に添加するか、或いは、前記ポリエステルAのチップおよび/またはポリエステルBのチップを流動条件下に前記樹脂製部材に接触させる等の方法で混入させる方法、または前記の接触処理後、溶融混練する方法等によることもできる。
ここで、ポリエステルチップを流動条件下に前記樹脂製の部材に接触させる方法としては、前記樹脂製の部材が存在する空問内で、ポリエステルチップを前記部材に衝突接触させることが好ましく、具体的には、例えば、ポリエステルの溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合直後等の製造工程時、また、ポリエステルチップの製品としての輸送段階等での輸送容器充填・排出時、また、ポリエステルチップの成形段階での成形機投入時、等における気力輸送配管、重力輸送配管、サイロ、マグネットキャッチャーのマグネット部等の一部を前記樹脂製とするか、前記樹脂製フィルム、シート、成形体などを貼り付けるか、または、前記樹脂をライニングするとか、或いは前記移送経路内に棒状又は網状体等の前記樹脂製部材を設置する等して、ポリエステルチップを移送する方法が挙げられる。ポリエステルチップの前記部材との接触時間は、通常、0.01秒〜数分程度の極短時間であるが、ポリエステルに前記樹脂を微量混入させることができる。
本発明のポリエステルを290℃で成形した2mm厚みの成形体のホルムアルデヒド含有量は、7ppm以下、好ましくは5ppm以下、より好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下であることが好ましい。ホルムアルデヒド含有量が7ppm以上の場合は、このポリエステルから成形された容器等の内容物の風味や臭い等が悪くなる。
本発明のポリエステルからなる中空成形体などの最終製品である成形体のアセトアルデヒド含有量は、20ppm以下、好ましくは15ppm以下、より好ましくは13ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下に低減できるので、低フレーバー性飲料はもとよりその他の清涼飲料水用容器材料として好適に用いることが出来る。
また、本発明のポリエステルからなる中空成形体などの最終製品である成形体の環状3量体含有量は、0.7重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下で、更に好ましくは0.35重量%以下あることが望ましい。耐熱性ボトルの場合には、0.4重量%を越えると成形時の金型汚れが酷くなり問題である。
本発明のポリエステルを290℃で溶融成形して得た厚さ2mmの成形板の昇温時の結晶化温度(以下「成形板Tc1」と称する)が、145〜175℃の範囲、好ましくは150〜173℃の範囲、さらに好ましくは153〜172℃の範囲であることが望ましい。成形板Tc1が175℃を越える場合は、加熱結晶化速度が非常に遅くなり結晶化の改良効果が期待できない。また、成形板Tc1が145℃未満の場合は、加熱結晶化速度非常に早くなり、特に胴部の厚みが厚い大型中空成形体の場合にはプリフォームを再加熱してブロー延伸する際に透明性が低下し問題となる。
本発明のポリエステルは、中空成形体、トレー、2軸延伸フィルム等の包装材、金属缶被覆用フィルム、モノフィラメントを含む繊維などとして好ましく用いることが出来る。また、本発明のポリエステルは、多層成形体や多層フィルム等の1構成層としても用いることが出来る。
本発明のポリエステルは、一般的に用いられる溶融成形法を用いてフィルム、シート、容器、その他の包装材料を成形することができる。また、本発明のポリエステルからなるシート状物を少なくとも一軸方向に延伸することにより機械的強度を改善することが可能である。本発明のポリエステルからなる延伸フィルムは射出成形もしくは押出成形して得られたシート状物を、通常PETの延伸に用いられる一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のうちの任意の延伸方法を用いて成形される。また圧空成形、真空成形によりカップ状やトレイ状に成形することもできる。
以下には、PETの場合の種々の用途についての具体的な製法を簡単に説明する。
延伸フィルムを製造するに当たっては、延伸温度は通常は80〜130℃である。延伸は一軸でも二軸でもよいが、好ましくはフィルム実用物性の点から二軸延伸である。延伸倍率は一軸の場合であれば通常1.1〜10倍、好ましくは1.5〜8倍の範囲で行い、二軸延伸であれば縦方向および横方向ともそれぞれ通常1.1〜8倍、好ましくは1.5〜5倍の範囲で行えばよい。また、縦方向倍率/横方向倍率は通常0.5〜2、好ましくは0.7〜1.3である。得られた延伸フィルムは、さらに熱固定して、耐熱性、機械的強度を改善することもできる。熱固定は通常緊張下、120℃〜240、好ましくは150〜230℃で、通常数秒〜数時間、好ましくは数十秒〜数分間行われる。
中空成形体を製造するにあたっては、本発明のポリエステルから成形したブリフォームを延伸ブロー成形してなるもので、従来PETのブロー成形で用いられている装置を用いることができる。具体的には例えば、射出成形または押出成形で一旦プリフォームを成形し、そのままあるいは口栓部、底部を加工後、それを再加熱し、ホットパリソン法あるいはコールドパリソン法などの二軸延伸ブロー成形法が適用される。この場合の成形温度、具体的には成形機のシリンダー各部およびノズルの温度は通常260〜300℃の範囲である。延伸温度は通常70〜120℃、好ましくは90〜110℃で、延伸倍率は通常縦方向に1.5〜3.5倍、円周方向に2〜5倍の範囲で行えばよい。得られた中空成形体は、そのまま使用できるが、特に果汁飲料、ウーロン茶などのように熱充填を必要とする飲料の場合には一般的に、さらにブロー金型内で熱固定処理を行い、耐熱性を付与して使用される。熱固定は通常、圧空などによる緊張下、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、数秒〜数時間、好ましくは数秒〜数分間行われる。
また、口栓部に耐熱性を付与するために、射出成形または押出成形により得られたプリフォームの口栓部を遠赤外線や近赤外線ヒーター設置オーブン内で結晶化させたり、あるいはボトル成形後に口栓部を前記のヒーターで結晶化させる。
また、本発明のポリエステルは、これを溶融押出し後に切断した溶融塊を圧縮成形して得たプリフォームを延伸ブロー成形する、所謂、圧縮成形法による延伸中空成形体の製造にも用いることができる。
本発明のポリエステルには、必要に応じて公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、アセトアルデヒド低減剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、青み付け剤、染料、顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。
また、本発明のポリエステルをフィルム用途に使用する場合には、滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性を改善するために、ポリエステル中に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の無機粒子、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等の有機塩粒子やジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体等の架橋高分子粒子などの不活性粒子を含有させることが出来る。
以下本発明を実施例により具体的に説明するが本発明はこの実施例に限定されるものではない。
なお、主な特性値の測定法を以下に説明する。
(1)、(2)、(3)のポリエステルの組成や各特性は、チップを冷凍粉砕して十分に混合した後、測定する。
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。ポリエステルのIVは構成するポリエステルのIVから計算した加重平均値とした。
(2)ポリエステルのジエチレングリコール含有量(以下[DEG含有量」という)
メタノールにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコール成分に対する割合(モル%)で表した。
(3)ポリエステルの環状三量体の含有量(以下「CT含有量」という)
冷凍粉砕した試料300mgをヘキサフルオロイソプロパノール/クロロフォルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロフォルム30mlを加えて希釈する。これにメタノール15mlを加えてポリマ−を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミド10mlで定容とし、高速液体クロマトグラフ法により環状三量体を定量した。
(4)ポリエステルのアセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れた上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定し、濃度をppmで表示した。なお、成形体のアセトアルデヒド含有量は、(10)の方法において290℃設定で成形した2mm厚みのプレート(図1のA部)から試料採取する。
(5)ポリエステルの溶融時の環状三量体増加量(△CT量)
(10)の方法で280℃で成形された3mm厚みのプレートから試料を採取し、140℃、0.1mmHg以下で16時間程度減圧乾燥後、その試料3gをガラス製試験管に入れ、窒素雰囲気下で290℃のオイルバスに60分浸漬させ溶融させる。溶融時の環状三量体増加量は、次式により求める。
なお、溶融前の環状三量体含有量は、前記プレートの環状三量体含有量を用いた。
溶融時の環状三量体増加量(重量%)=
溶融後の環状三量体含有量(重量%)−溶融前の環状三量体含有量(重量%)
(6)ファインの含有量の測定
樹脂約0.5kgを、JIS−Z8801による呼び寸法5.6mmの金網をはった篩(A)と呼び寸法1.7mmの金網をはった篩(直径20cm)(B)を2段に組合せた篩の上に乗せ、テラオカ社製揺動型篩い振トウ機SNF−7で1800rpmで1分間篩った。この操作を繰り返し、樹脂を合計20kg篩った。ただし、ファイン含有量が少ない場合には、試料の量を適宜変更する。
前記の篩(B)の下にふるい落とされたファインは、0.1%のカチオン系界面活性剤水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水で洗浄し岩城硝子社製G1ガラスフィルターで濾過して集めた。これらをガラスフィルターごと乾燥器内で100℃で2時間乾燥後、冷却して秤量した。再度、イオン交換水で洗浄、乾燥の同一操作を繰り返し、恒量になったことを確認し、この重量からガラスフィルターの重量を引き、ファイン重量を求めた。ファイン含有量は、ファイン重量/篩いにかけた全樹脂重量、である。
(7)成形体の昇温時の結晶化温度(Tc1)および降温時の結晶化温度(Tc2)
セイコー電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定。下記(10)の成形板の2mm厚みのプレートの中央部からの試料10mgを使用。昇温速度20度C/分で昇温し、290℃で3分間保持したのち、290℃から240℃までを10℃/分で降温し、更に240℃から130℃までを7℃/分で降温した。昇温時に観察される結晶化ピ−クの頂点温度を昇温時結晶化温度(Tc1)、降温時に観察される結晶化ピ−クの頂点温度を降温時結晶化温度とする。
(8)ポリエステルチップの密度
硝酸カルシュウム/水溶液の密度勾配管で30℃で測定した。
(9)ヘイズ(霞度%)
下記(10)の成形体(肉厚5mm)より試料を切り取り、日本電色(株)製ヘイズメーター、modelNDH2000で測定。
(10)段付成形板の成形
減圧乾燥機を用いて140℃、0.1mmHg以下で16時間程度減圧乾燥したポリエステルを名機製作所製射出成形機M−150C−DM型射出成形機により図1、図2に示すようにゲート部(G)を有する、2mm〜11mm(A部の厚み=2mm、B部の厚み=3mm、C部の厚み=4mm、D部の厚み=5mm、E部の厚み=10mm、F部の厚み=11mm)の厚さの段付成形板を射出成形した。
ヤマト科学製真空乾燥器DP61型を用いて予め減圧乾燥したポリエステルを用い、成形中に吸湿を防止するために、成形材料ホッパー内は乾燥不活性ガス(窒素ガス)パージを行った。M−150C−DM射出成形機による可塑化条件としては、フィードスクリュウ回転数=70%、スクリュウ回転数=120rpm、背圧0.5MPa、シリンダー温度はホッパー直下から順に45℃、250℃、以降ノズルを含め280℃あるいは290℃に設定した。射出条件は射出速度及び保圧速度は20%、また成形品重量が146±0.2gになるように射出圧力及び保圧を調整し、その際保圧は射出圧力に対して0.5MPa低く調整した。
射出時間、保圧時間はそれぞれ上限を10秒、7秒,冷却時間は50秒に設定し、成形品取出時間も含めた全体のサイクルタイムは概ね75秒程度である。
金型には常時、水温10℃の冷却水を導入し温調するが、成形安定時の金型表面温度は22℃前後である。
成形品特性評価用のテストプレートは、成形材料導入し樹脂置換を行った後、成形開始から11〜18ショット目の安定した成形品の中から任意に選ぶものとした。
なお、成形温度とは、前記のノズルを含めバレルの設定温度を言う。成形板のAA含有量測定には、280℃成形温度の成形板および290℃成形温度の成形板を用いた。
2mm厚みのプレート(図1のA部)は昇温時の結晶化温度(Tc1)、降温時の結晶化温度(Tc2)測定およびAA測定、3mm厚みのプレート(図1のB部)は溶融時の環状3量体増加量(△CT量)の測定、5mm厚みのプレート(図1のD部)はヘイズ(霞度%)測定、に使用する。
(11)中空成形体の成形
ポリエステルを脱湿空気を用いた乾燥機で乾燥し、各機製作所製M−150C―DM射出成形機により樹脂温度280℃および290℃でプリフォーム(肉厚約4.1mm)を成形した。成形安定時の金型の表面温度は22℃前後である。これらのプリフォームの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた。次にこの予備成形体をCORPOPLAST社製のLB−01E成形機で二軸延伸ブローし、引き続き約150℃に設定した金型内で約5秒間熱固定し、容量が2000ccの容器を成形した。延伸温度は100℃にコントロールした。
280℃成形のプリフォームからの容器は(13)の中空成形体の外観評価に、また290℃成形のプリフォームからの容器は(12)の官能試験に用いた。
(12)官能試験
上記(11)で得た中空容器に沸騰した蒸留水を入れ密栓後30分保持し、50℃へ冷却し同温度で1週間放置し、開栓後風味、臭い等の試験を行った。比較用のブランクとして、蒸留水を使用。官能試験は10人のパネラーにより次の基準により実施し、平均値で比較した。
(評価基準)
◎ :異味、臭いを感じない
○ :ブランクとの差をわずかに感じる
△ :ブランクとの差を感じる
× :ブランクとのかなりの差を感じる
××:ブランクとの非常に大きな差を感じる
(13)中空成形体の外観
前記(11)の成形開始10本目から20本の中空成形体を目視で観察し、下記のように評価した。
◎ : 透明で外観問題なし
△ : 中空成形体に白化した流れ模様や白化物が少し有り
× : 中空成形体に白化した流れ模様や白化物あり
(14)ポリエステルの嵩密度
JIS K6721に準じた方法により測定した。
(15)ポリエステルの末端カルボキシル基濃度(AV)
冷凍粉砕し乾燥した試料200mgをベンジルアルコール10mlに加熱溶解し、これにクロロフォルム10mlを加えて希釈後、フェノールレッドを指示薬とし、0.01N―水酸化カリ/ベンジルアルコール溶液により滴定し、定量した。
総末端基濃度(TEnV)(eq/トン)は下記の式から求めた。
TEnV = {2×106/(1359×IV)}1.460
総末端基数に対する末端カルボキシル基の割合(AV/TEnV)(当量%)は、下記の式から求めた。
100×末端カルボキシル基濃度(AV) / 総末端基濃度(TEnV)
(16)ポリエステルのナトリウム含有量、カルシウム含有量、マグネシウム含有量
試料約5〜10gを白金坩堝に入れて約550℃で灰化し、次いで6N塩酸に溶解後蒸発乾固し、残差を1N塩酸に溶解する。この溶液を原子吸光分析法により測定した。
(17)ポリエステルの珪素含有量
試料約5〜10gを白金坩堝に入れて約550℃で灰化し、次いで炭酸ナトリウムを加えて加熱溶解し、1N塩酸に溶解する。この溶液を島津製作所製誘導結合プラズマ発光分析装置で測定した。
(18)チップ冷却水中のナトリウム含有量、カルシウム含有量、マグネシウム含有量および珪素含有量
チップ冷却水を採取し、岩城硝子社製1G1ガラスフィルターで濾過後、濾液を島津製作所製誘導結合プラズマ発光分析装置で測定した。
(19)金型汚れ
下記のように評価した。
○ : 金型汚れ無し
△ : 若干の金型汚れ有り
× : 金型汚れ酷い
(ポリエステル1(Pes1))
予め反応物を含有している第1エステル化反応器に、高純度テレフタル酸とエチルグリコールを連続的に供給し、撹拌下、約250℃、0.5kg/cm2Gで平均滞留時間3時間反応を行った。また、結晶性二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解し、これにエチレングリコールを添加加熱処理した触媒溶液及び燐酸のエチレングリコール溶液とを別々にこの第1エステル化反応器に連続的に供給した。この反応物を第2エステル化反応器に送付し、撹拌下、約260℃、0.05kg/cm2Gで所定の反応度まで反応を行った。このエステル化反応生成物を連続的に第1重合反応器に送り、撹拌下、約265℃、25torrで1時間、次いで第2重合反応器で撹拌下、約265℃、3torrで1時間、さらに第3重合反応器で撹拌下、約275℃、0.5〜1torrで重合させた。得られたPET樹脂の極限粘度(IV)は0.55であった。
この樹脂をファイン除去後、引き続き窒素雰囲気下、約155℃で結晶化し、さらに窒素雰囲気下で約200℃に予熱後、連続固相重合反応器に送り窒素雰囲気下約209℃で固相重合した。固相重合後篩分工程およりファイン除去工程で連続的に処理しファインを除去した。
得られたPETの極限粘度は0.68デシリットル/グラム、AV/TEnVは21%、Aアセトアルデヒド(AA)含有量は3.5ppm、環状3量体の含量は0.34重量%、ファイン含有量は約50ppm、チップ密度は1.398g/cm3であった。得られたPETの特性を表−1に示す。
(ポリエステル2(Pes2)、3(Pes3)、4(Pes4))
重縮合触媒添加量、固相重合時間を変更する以外は実施例1と同様にして反応させてポリエステル2,3,4を得た。
得られたPETの特性を表−1に示す。ファイン含有量は約50ppmであった。
(ポリエステル5(Pes5))
重縮合触媒添加量を変更する以外は実施例1と同様にして溶融重縮合させてプレポリマーを得た。
得られたプレポリマ−を回転式減圧固相重合装置に投入し、回転しながら減圧下において70〜160℃で結晶化後、210℃で固相重合した。固相重合後、篩分工程でファイン等の除去処理をおこなった。その後、水処理をしなかった。ファイン含有量は約700ppmであった。得られたPETの特性を表−1に示す。
(ポリエステル6(Pes6)、7(Pes7))
重縮合触媒として、塩基性酢酸アルミニウムのエチレングリコール溶液と、Irganox1222(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)とエチレングリコールを事前に加熱処理したエチレングリコール溶液を用いる以外は実施例1と同様にして反応させてポリエステル6、7を得た。ファイン含有量は約50ppmであった。
得られたPETの特性を表−1に示す。
(ポリエステル8(Pes8)、9(Pes9))
重縮合触媒として、チタニウムテトラブトキシドのエチレングリコール溶液、酢酸マグニシウム4水和物のエチレングリコール溶液を用いる以外は実施例1と同様にして反応させてポリエステル8、9を得た。ファイン含有量は約50ppmであった。
得られたPETの特性を表−1に示す。
(ポリエステル10(Pes10))
前記のポリエステル2を処理水温度95℃にコントロ−ルされた下記の水処理槽へ50kg/時間の速度で処理槽上部の供給口(1)から連続投入して水処理し、処理槽下部の排出口(3)からPETチップとして50kg/時間の速度で処理水と共に連続的に抜き出した。水処理装置のイオン交換水導入口(9)の手前で採取した導入水中の粒径1〜25μmの粒子含有量は約1800個/10ml、ナトリウム含有量が0.02ppm、マグネシウム含有量が0.05ppm、カルシウム含有量が0.03ppm、珪素含有量が0.10ppmであり、また濾過装置(5)および吸着塔(8)で処理後のリサイクル水の粒径1〜40μmの粒子数は約10000個/10mlであった。水処理後、実施例1と同様にしてファイン等の除去処理を行った。
なおポリエステルチップの水処理には、図3に示す装置を用い、処理槽上部の原料チップ供給口(1)、処理槽の処理水上限レベルに位置するオーバーフロー排出口(2)、処理槽下部のポリエステルチップと処理水の混合物の排出口(3)、このオーバーフロー排出口から排出された処理水と、処理槽から排出された処理水と、処理槽下部の排出口から排出された水切り装置(4)を経由した処理水が、濾材が紙製の連続式フィルタ−である微粉除去装置(5)を経由して再び水処理槽へ送られる配管(6)、これらの微粉除去済み処理水の導入口(7)、微粉除去済み処理水中のアセトアルデヒドを吸着処理させる吸着塔(8)、及び新しいイオン交換水の導入口(9)を備えた内容量約50m3の塔型の処理槽を使用した。
得られたPETの特性は、溶融時の環状三量体増加量(△CT量)が0.17重量%であることを除き表−1記載のポリエステル2の特性と同じである。
(ポリエステル11(Pes11))
ポリエステル3を前記と同様にして水処理して、ポリエステル11を得た。
得られたPETの特性は、溶融時の環状三量体増加量(△CT量)が0.15重量%であることを除き表−1記載のポリエステル3の特性と同じである。
(ポリエステル12(Pes12)、13(Pes13))
重縮合触媒として三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液、酢酸コバルトのエチレングリコール溶液、安定剤として燐酸のエチレングリコール溶液を用い、固相重合温度を207℃とする以外はポリエステル1と同様にして反応させてポリエステル12および13を得た。ファイン含有量は約50ppm、残存Sb金属含有量は203ppmであった。得られたPETの特性を表−1に示す。
(ポリエステル14(Pes14))
重縮合触媒として三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液のみを用い、エステル化温度および重縮合温度を、それぞれ約5℃高温にし、固相重合温度を200℃でとする以外はポリエステル1と同様にして反応させて(ファイン除去装置で処理せず)ポリエステル14を得た。ファイン含有量は約9100ppm、残存Sb金属含有量は約380ppmであった。得られたPETの特性を表−1に示す。
(実施例1)
上記のポリエステル1とポリエステル2のペレットを8:2の割合でブレンドして得たポリエステルを(10)および(11)の方法により得た成形板および中空成形容器による評価を実施した。結果を表2に示す。
成形板の△AAは1.1ppm、ヘイズ差Yは9.5%と良好であり、中空成形容器の官能試験および外観も問題なかった。また、中空成形体のAA含有量は13.1ppmと良好であった。
(実施例2、3、6)
表2に示す組成により同様にして、実施例2、3、4、5のポリエステルについて評価を実施した。結果を表2に示す。
評価した全ての特性は実施例1と同様に良好であった。
(実施例4)
表2に示す組成により同様にして、実施例4のポリエステルについて評価を実施した。結果を表2に示す。
評価した全ての特性は実施例1と同様に良好であった。
(実施例5)
ポリエステル6とポリエステル7の7:3の混合物のチップ表面に燐酸をP含有量とAl含有量のモル比(P/Al)が約1.7になるようにまぶし、実施例1と同様にして成形板および中空成形容器による評価を実施した。結果を表2に示す。評価した全ての特性は実施例1と同様に良好であった。
(実施例7)
表2に示す組成により同様にして、実施例7のポリエステルについて評価を実施した。結果を表2に示す。
評価した全ての特性は実施例1と同様に良好であった。
(実施例8)
ポリエステル8とポリエステル9の7:3の混合物のチップ表面に燐酸をP含有量とTi含有量のモル比(P/Ti)が約2.0になるようにまぶし、実施例1と同様にして成形板および中空成形容器による評価を実施した。結果を表2に示す。評価した全ての特性は実施例1と同様に良好であった。
(実施例9)
表2に示す組成により同様にして、実施例9のポリエステルについて評価を実施した。結果を表2に示す。
評価した全ての特性は実施例1と同様に良好であった。
(比較例1)
表2に示すように比較例1のポリエステル4について評価を実施した。
実施例と比較すると明らかに、比較例1の△AAおよびヘイズ差Yが高く、中空成形体の外観も悪かった。結果を表2に示す。
(比較例2)
表2に示すように比較例2のポリエステルについて評価を実施した。
実施例と比較すると明らかに、成形板の△AA、ヘイズ差Y及び中空成形体のAA含有量が高く、官能試験及び外観も悪かった。結果を表2に示す。
(比較例3)
表2に示すように比較例3のポリエステルについて評価を実施した。
実施例と比較すると明らかに、成形板の△AA、ヘイズ差Y及び中空成形体のAA含有量が高く、官能試験及び外観も悪かった。結果を表2に示す。