JP4893823B2 - 液体吐出ヘッド及び液体吐出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に係り、特に、高粘度の微小な液滴を低い駆動電圧で飛翔させることのできる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
近年、インクジェットでの画質の高精細化の進展および工業用途における適用範囲の拡大に伴い、微細パターン形成および高粘度のインク吐出の要請がますます強まっており、これらの課題を解決するための液体吐出装置、及びその製造方法の開発が進んでいる(例えば、特許文献1から5参照。)
その中でも、前記要請に応え、微小化されたノズルから低粘度のみならず高粘度の液滴を吐出させる技術として、ノズル内の液体を帯電させ、ノズルと液滴の着弾を受ける対象物となる各種の基材との間に形成される電界から受ける静電吸引力により吐出させるいわゆる静電吸引方式の液滴吐出技術が知られている。
さらに、この液滴吐出技術と、ピエゾ素子の変形や液体内部での気泡の発生による圧力を利用して液滴を吐出する技術とを組み合わせた、いわゆる電界アシスト方式を用いた液滴吐出装置の開発が進んでいる。
この電界アシスト方式は、メニスカス形成手段と静電吸引力を用いてノズルの吐出口に液体のメニスカスを隆起させることにより、メニスカスに対する静電吸引力を高め、液表面張力に打ち勝ってメニスカスを液滴化し吐出する方法である。
電界アシスト方式においては、このように圧力と静電吸引力の合力によりノズルから液滴を形成し、形成された液滴を静電吸引力により基材に対して飛翔させるため、特に、微小な液滴に対してその着弾性は、従来のピエゾ方式やサーマル方式より優れている。
また、従来のピエゾ方式やサーマル方式ではメニスカスを形成し液滴を飛翔させ基材に着弾させるための全エネルギーをピエゾ素子の変形等による圧力で賄わなければならないのに対して、電界アシスト方式で必要となる発生圧力を生じさせるのに必要なエネルギーはメニスカスを形成し液滴を形成するだけのエネルギーだけで済むので、ピエゾ素子等の圧電アクチュエータからなる圧力発生手段の駆動電圧は従来方式に比べて低電圧で済むという利点がある。
特開2005−249436号公報 特開平8−85212号公報 特表2004−503377号公報 特開2000−229423号公報 特開2002−355977号公報
しかしながら、微小な液滴を吐出するためにノズル開口径を小さくしたり、高粘度の液滴を吐出させたりしようとする場合には、ノズル内の粘性抵抗が高くなるために、電界アシスト方式においても、メニスカスを隆起させ液滴を形成させるためにピエゾ素子の駆動電圧をある程度高くする必要がある。このため、その分ノズルを多数有するマルチヘッドに適用する際には消費電力の増大につながるという問題を有している。
本発明は、前記した点に鑑みてなされたものであり、電界アシスト方式において高粘度の微小な液滴を低い駆動電圧で高精度に飛翔させることができ、かつ、クリーニング等のメンテナンス性に優れる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、請求の範囲第1項に記載の液体吐出ヘッドは、
液体が供給される液体供給口、前記液体供給口から供給された液体を吐出する吐出口及び、前記液体供給口から前記吐出口に液体を供給する液体供給路を有するノズルが設けられたノズルプレートと、
前記液体供給口に連通するとともに前記吐出口から吐出される液体が貯蔵されるキャビティと、
前記キャビティの容積を変化させることにより該キャビティ内の液体に圧力を発生させる圧力発生手段と、
前記ノズル及び前記キャビティ内の液体と基材間に静電電圧を印加して静電吸引力を発生させる静電電圧発生手段と、
を備える液体吐出ヘッドであって、
前記ノズルの液体供給口側はシリコン層により形成され、前記ノズルの吐出口側は少なくとも一層の体積抵抗率1015Ωm以上、比誘電率3以下の熱硬化性又は感光性フッ素ポリマーからなる樹脂層により形成されるとともに、前記ノズルの液体供給口側のノズル径が前記ノズルの吐出口側のノズル径より大きいことを特徴とする。
請求の範囲第2項に記載の発明は、請求の範囲第1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記樹脂層の液体の吸収率は、0.3%以下であることを特徴とする。
請求の範囲第3項に記載の発明は、請求の範囲第1項又は請求の範囲第2項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記樹脂層の厚さは、5μm以上であることを特徴とする。
請求の範囲第4項に記載の発明は、請求の範囲第1項から請求の範囲第3項のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記樹脂層を形成する熱硬化性又は感光性フッ素ポリマーのガラス転移温度は、350℃以上であることを特徴とする。
請求の範囲第5項に記載の発明は、請求の範囲第2項から請求の範囲第4項のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記樹脂層は、Si又はSiHからなる中間層を介して2層以上で構成されていることを特徴とする。
請求の範囲第6項に記載の発明は、請求の範囲第1項から請求の範囲第5項のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記ノズルプレートの前記吐出口が開口された面には、SiOからなる中間層を介して撥液層が形成されていることを特徴とする。
請求の範囲第7項に記載の発明は、請求の範囲第6項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記SiOからなる中間層の厚さは、1μm以上であることを特徴とする。
請求の範囲第8項に記載の液体吐出装置は、
前記請求の範囲第1項から請求の範囲第7項のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに対向する対向電極と、を備え、
前記液体吐出ヘッドと前記対向電極との間に生じる前記静電吸引力と前記ノズル内に発生した圧力とにより前記液体を吐出することを特徴とする。
請求の範囲第1項に記載の発明によれば、ノズルの液体供給口側のシリコンにより平滑性及び剛性が得られ、ノズルの吐出口側の熱硬化性又は感光性フッ素ポリマーのノズル先端部に電界を集中させることが可能となることにより、長時間安定して強力な静電吸引力を発生させることができるために液体を吐出するのに必要な駆動電圧を低減することが可能となる。
また、低電圧の静電電圧でメニスカスが大きく隆起するため、静電電圧発生手段により印加される静電電圧の電圧値を低下させることが可能となる。
請求の範囲第2項に記載の発明によれば、ノズルが、液体の吸収率が0.3%以下である熱硬化性又は感光性ポリマーにより形成されているため液体の物性に影響を受けずに長時間安定して強力な静電吸引力を発生させることができるために液体を吐出するのに必要な駆動電圧を低減することが可能となる。
請求の範囲第3項に記載の発明によれば、熱硬化性又は感光性フッ素ポリマーの厚さを5μm以上とすることにより、ノズル周辺への電界集中が高まり、より強力な静電吸引力を発生させることができるため、メニスカス形成及び液滴形成において必要な駆動電圧をさらに低減することが可能となる。
請求の範囲第4項に記載の発明によれば、熱硬化性又は感光性フッ素ポリマーのガラス転移点が350℃以上であることにより、組み立て接合時に微細なノズルへの目詰まりを大幅に改善できる過熱プロセスを伴う陽極接合が可能となる。
請求の範囲第5項に記載の発明によれば、熱硬化性又は感光性フッ素ポリマーは、Si又はSiHを中間層とした2層以上で構成されていることにより、熱硬化性又は感光性フッ素ポリマーからなる層全体の厚さを増加させる際に、所望の厚さまで容易に増加させることが可能となり、その結果、さらにノズル周辺へぼ電界集中が高まるためより強力な静電吸引力が発生し、メニスカス形成及び液滴形成での必要な駆動電圧をさらに低減することが可能となる。
請求の範囲第6項に記載の発明によれば、ノズルプレートの吐出口が開口された面に、SiOからなる中間層を介して撥液層が形成されていることにより、撥液層の密着性をより強固にすることが可能となる。
請求の範囲第7項に記載の発明によれば、SiOからなる中間層の厚さを1μm以上にすることにより、ノズルの吐出口側に形成された熱硬化性又は感光性フッ素ポリマーのノズルの剛性があがり、射出特性を向上するとともに、撥液層の下地基板の剛性があがることでクリーニング時の耐磨耗性を向上させることが可能となる。
請求の範囲第8項に記載の発明によれば、ノズルから吐出された液滴は、電界からの静電吸引力の作用で、基材のより近い部分に着弾しようとするため、基材に対する着弾の際の角度等を安定させ、液滴を所定の着弾位置に正確に着弾させることが可能となる。また、前記各請求の範囲に記載の発明と同様に、低電圧の静電電圧でメニスカスが大きく隆起するため、静電電圧発生手段により印加される静電電圧の電圧値を低下させることが可能となり、前記各請求の範囲に記載の発明の効果をより有効に発揮することが可能となる。
本実施形態に係る液体吐出装置の全体構成を示す断面模式図である。 ノズルとノズルプレートの構成を示す拡大断面図である。 ノズルとノズルプレートの構成の変形例を示す拡大断面図である。 シュミレーションによるノズルの吐出口付近の電位分布を示す模式図である。 メニスカス先端部の電界強度とノズルプレートの体積抵抗率との関係を示す図である。 メニスカス先端部の電界強度とノズルプレートの樹脂層の厚さとの関係を示す図である。 メニスカス先端部の電界強度とノズルプレートの樹脂層の比誘電率との関係を示す図である。 駆動電圧とノズル径との関係を示す図である。 本実施形態に係る液体吐出ヘッドの形成工程の一部を示す断面図である。 本実施形態に係る液体吐出ヘッドの形成工程の一部を示す断面図である。 本実施形態に係る液体吐出ヘッドの駆動制御を説明する模式図である。 ピエゾ素子に印加する駆動電圧の変形例を示す図である。
符号の説明
1 液体吐出装置
2 液体吐出ヘッド
3 対向電極
4 ノズルプレート
41 シリコン層
42 樹脂層
43 中間層
5 ノズル
6 吐出面
61 撥液層
62 中間層
9 液体供給口
10 大径部
11 吐出口
12 小径部
14 帯電用電極
15 内周面
16 静電電圧電源(静電電圧発生手段)
19 ボディ層
20 キャビティ
21 可撓層
22 ピエゾ素子(圧力発生手段)
23 駆動電圧電源
24 動作制御手段
25 CPU
26 ROM
29 RAM
30 シリコン基板
31 熱硬化性フッ素ポリマー層
32 SiH膜
33 酸化膜
K 基材
L 液体
以下、本発明に係る液体吐出装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る液体吐出装置1の全体構成を示す断面模式図である。なお、本発明の液体吐出ヘッド2は、いわゆるシリアル方式或いはライン方式等の各種の液体吐出装置に適用可能である。
本実施形態の液体吐出装置1は、インク等の帯電可能な液体Lの液滴Dを吐出する後述するノズル5が形成された液体吐出ヘッド2と、液体吐出ヘッド2のノズル5に対向する対向面を有するとともにその対向面で液滴Dの着弾を受ける基材Kを支持する対向電極3とを備えている。
液体吐出ヘッド2の対向電極3に対向する側には、複数のノズル5が形成されたノズルプレート4が備えられている。
各ノズル5は、図1及び図2に示すように、ノズルプレート4を穿孔することにより形成されており、後述するキャビティ20から液体Lを供給される液体供給口9と連通する大径部(液体供給口側)10と、大径部10の底面の一部に連通されている小径部(吐出口側)12との2段構造であって、大径部10のノズル径が、小径部12のノズル径より大きくなるように構成されている。
ここで、ノズル径とは、開口が円形の場合は、その直径をさす。なお、開口形状は円形形状に限定されることはなく、円形形状の代わりに、楕円形状や多角形状等としてもよい。尚、形状が円形でない場合、その面積を同じ面積の円形に置き換えた場合の直径をノズル径とする。
小径部12の底面は、吐出面6に開口された吐出口11と連通されており、吐出口11から対向電極3に対して液滴Dを吐出するようになっている。
ノズルプレート4は、シリコン層41と、熱硬化性フッ素ポリマーで形成される樹脂層42とからなり積層構造をなしている。
樹脂層42を形成する熱硬化性フッ素ポリマーは、体積抵抗1015Ωm以上、比誘電率3以下、ガラス転移温度350℃以上という物性値を有しており、例えば、asahi Low−K polymer(旭硝子(株))等を用いることができる。
ノズルプレート4をこのように構成することにより、ノズル5のシリコン層41に、より平滑性及び剛性が得られ、樹脂層42のノズル先端部に電界を集中させることができる。
また、樹脂層42の液体Lの吸水率は0.3%以下としている。このため、液体Lの物性に影響を受けずに長時間安定して強力な静電吸引力を発生させることができる。
また、樹脂層42は、ノズル5の周辺への電界集中を高め、より強力な静電吸引力を発生させることができるように厚さ5μm以上に形成されている。
また、各ノズル5の小径部12はノズルプレート4の樹脂層42を穿孔して形成されている。
液体吐出ヘッド2のノズルプレート4の吐出面6には、吐出口11からの液体Lの滲み出しを抑制するための撥液層61が吐出口11を除く吐出面6全面に設けられている。撥液層61は、例えば、液体Lが水性であれば撥水性を有する材料が用いられ、液体Lが油性であれば撥油性を有する材料を用いることが好ましい。一般に、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン)、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)、フッ素シロキサン、フルオロアルキルシラン、アモルファスパーフルオロ樹脂等のフッ素樹脂等が用いられることが多く、塗布や蒸着等の方法で吐出面6に成膜されている。
また、撥液層61と前記樹脂層42との臨界面には、撥液層61の密着性を向上させるためにSiOからなる中間層62が設けられている。中間層62の厚さは1μm以上に設定されており、このように構成することにより、樹脂層42のノズル先端部の剛性があがり、射出特性が向上するとともに、撥液層61の下地基板の剛性が向上する。
液体吐出ヘッド2は、ノズルプレート4の対向電極3に対向する吐出面6からノズル5が突出しない、或いはノズル5が30μm程度しか突出しないフラットな吐出面を有するヘッドとして構成されている。
ノズルプレート4の吐出面6と反対側の面には、例えばNiP等の導電素材よりなりノズル5内の液体Lを帯電させるための帯電用電極14が層状に設けられている。本実施形態では、帯電用電極14は、ノズル5の大径部10の内周面15まで延設されており、ノズル内の液体Lに接するようになっている。
また、帯電用電極14は、静電吸引力を生じさせる静電電圧を印加する静電電圧発生手段としての静電電圧電源16に接続されており、単一の帯電用電極14がすべてのノズル5内の液体Lに接触しているため、静電電圧電源16から帯電用電極14に静電電圧が印加されると、全ノズル5内の液体Lが同時に帯電され、液体吐出ヘッド2と対向電極3との間、特に液体Lと基材Kとの間に静電吸引力が発生されるようになっている。
帯電用電極14の背後には、ボディ層19が設けられている。ボディ層19の前記各ノズル5の大径部10の開口端に面する部分には、それぞれ開口端にほぼ等しい内径を有する略円筒状の空間が形成されており、各空間は、吐出される液体Lを一時貯蔵するためのキャビティ20とされている。
ボディ層19の背後には、可撓性を有する金属薄板やシリコン等よりなる可撓層21が設けられており、可撓層21により液体吐出ヘッド2が外界と画されている。
なお、ボディ層19の可撓層21との境界部には、キャビティ20に液体Lを供給するための図示しない流路が形成されている。具体的には、ボディ層19としてのシリコンプレートをエッチング加工して共通流路および共通流路とキャビティ20とを結ぶ流路とが設けられており、共通流路には、外部の図示しない液体タンクから液体Lを供給する図示しない供給管が連絡されており、供給管に設けられた図示しない供給ポンプにより或いは液体タンクの配置位置による差圧により流路やキャビティ20、ノズル5等の液体Lに所定の供給圧力が付与されるようになっている。
可撓層21の外面の各キャビティ20に対応する部分には、それぞれ圧力発生手段としての圧電素子アクチュエータであるピエゾ素子22が設けられており、ピエゾ素子22には、素子に駆動電圧を印加して素子を変形させるための駆動電圧電源23が接続されている。ピエゾ素子22は、駆動電圧電源23からの駆動電圧の印加により変形して、ノズル内の液体Lに圧力を生じさせてノズル5の吐出口11に液体Lのメニスカスを形成させるようになっている。なお、圧力発生手段は、本実施形態のような圧電素子アクチュエータのほかに、例えば、静電アクチュエータやサーマル方式等を採用することも可能である。
駆動電圧電源23および帯電用電極14に静電電圧を印加する前記静電電圧電源16は、それぞれ動作制御手段24に接続されており、それぞれ動作制御手段24による制御を受けるようになっている。
動作制御手段24は、本実施形態では、CPU25やROM26、RAM29等が図示しないBUSにより接続されて構成されたコンピュータからなっており、CPU25は、ROM26に格納された電源制御プログラムに基づいて静電電圧電源16および各駆動電圧電源23を駆動させてノズル5の吐出口11から液体Lを吐出させるようになっている。
液体吐出ヘッド2の下方には、基材Kを支持する平板状の対向電極3が液体吐出ヘッド2の吐出面6に平行に所定距離離間されて配置されている。対向電極3と液体吐出ヘッド2との離間距離は、0.1〜3.0mm程度の範囲内で適宜設定される。
本実施形態では、対向電極3は接地されており、常時接地電位に維持されている。そのため、前記静電電圧電源16から帯電用電極14に静電電圧が印加されると、ノズル5の吐出口11の液体Lと対向電極3の液体吐出ヘッド2に対向する対向面との間に電界が生じるようになっている。また、帯電した液滴Dが基材Kに着弾すると、対向電極3はその電荷を接地により逃がすようになっている。
なお、対向電極3または液体吐出ヘッド2には、液体吐出ヘッド2と基材Kとを相対的に移動させて位置決めするための図示しない位置決め手段が取り付けられており、これにより液体吐出ヘッド2の各ノズル5から吐出された液滴Dは、基材Kの表面に任意の位置に着弾させることが可能とされている。
液体吐出装置1による吐出を行う液体Lは、例えば、無機液体としては、水、COCl、HBr、HNO、HPO、HSO、SOCl、SOCl、FSOHなどが挙げられる。
また、有機液体としては、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのアルコール類;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類;ジオキサン、フルフラール、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エピクロロヒドリンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−4−ペンタノン、アセトフェノンなどのケトン類;ギ酸、酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸などの脂肪酸類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−3−メトキシブチル、酢酸−n−ペンチル、プロピオン酸エチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、セロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、アセト酢酸エチル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチルなどのエステル類;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、o−トルイジン、p−トルイジン、ピペリジン、ピリジン、α−ピコリン、2,6−ルチジン、キノリン、プロピレンジアミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N',N'−テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどの含窒素化合物類;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫黄化合物類;ベンゼン、p−シメン、ナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキセンなどの炭化水素類;1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン(cis−)、テトラクロロエチレン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、2−クロロ−2−メチルプロパン、ブロモメタン、トリブロモメタン、1−ブロモプロパンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。また、上記各液体を二種以上混合して用いてもよい。
さらに、高電気伝導率の物質(銀粉等)が多く含まれるような導電性ペーストを液体Lとして使用し、吐出を行う場合には、前述した液体Lに溶解又は分散させる目的物質としては、ノズルで目詰まりを発生するような粗大粒子を除けば、特に制限されない。
PDP、CRT、FEDなどの蛍光体としては、従来より知られているものを特に制限なく用いることができる。例えば、赤色蛍光体として、(Y,Gd)BO:Eu、YO:Euなど、緑色蛍光体として、ZnSiO:Mn、BaAl1219:Mn、(Ba,Sr,Mg)O・α−Al:Mnなど、青色蛍光体として、BaMgAl1423:Eu、BaMgAl1017:Euなどが挙げられる。
上記の目的物質を記録媒体上に強固に接着させるために、各種バインダーを添加するのが好ましい。用いられるバインダーとしては、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース及びその誘導体;アルキッド樹脂;ポリメタクリタクリル酸、ポリメチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート・メタクリル酸共重合体、ラウリルメタクリレート・2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体などの(メタ)アクリル樹脂及びその金属塩;ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリN,N−ジメチルアクリルアミドなどのポリ(メタ)アクリルアミド樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・イソプレン共重合体などのスチレン系樹脂;スチレン・n−ブチルメタクリレート共重合体などのスチレン・アクリル樹脂;飽和、不飽和の各種ポリエステル樹脂;ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン化ポリマー;ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;エポキシ系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールなどのポリアセタール樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合樹脂などのポリエチレン系樹脂;ベンゾグアナミンなどのアミド樹脂;尿素樹脂;メラミン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂及びそのアニオンカチオン変性;ポリビニルピロリドン及びその共重合体;ポリエチレンオキサイド、カルボキシル化ポリエチレンオキサイドなどのアルキレンオキシド単独重合体、共重合体及び架橋体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール;ポリエーテルポリオール;SBR、NBRラテックス;デキストリン;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン及びその誘導体、カゼイン、トロロアオイ、トラガントガム、プルラン、アラビアゴム、ローカストビーンガム、グアガム、ペクチン、カラギニン、にかわ、アルブミン、各種澱粉類、コーンスターチ、こんにゃく、ふのり、寒天、大豆蛋白などの天然或いは半合成樹脂;テルペン樹脂;ケトン樹脂;ロジン及びロジンエステル;ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルフォン酸、ポリビニルスルフォン酸などを用いることができる。これらの樹脂は、ホモポリマーとしてだけでなく、相溶する範囲でブレンドして用いてもよい。
液体吐出装置1をパターンニング手段として使用する場合には、代表的なものとしてはディスプレイ用途に使用することができる。具体的には、プラズマディスプレイの蛍光体の形成、プラズマディスプレイのリブの形成、プラズマディスプレイの電極の形成、CRTの蛍光体の形成、FED(フィールドエミッション型ディスプレイ)の蛍光体の形成、FEDのリブの形成、液晶ディスプレイ用カラーフィルター(RGB着色層、ブラックマトリクス層)、液晶ディスプレイ用スペーサー(ブラックマトリクスに対応したパターン、ドットパターン等)などを挙げることができる。
なお、リブとは一般的に障壁を意味し、プラズマディスプレイを例に取ると各色のプラズマ領域を分離するために用いられる。その他の用途としては、マイクロレンズ、半導体用途として磁性体、強誘電体、導電性ペースト(配線、アンテナ)などのパターンニング塗布、グラフィック用途としては、通常印刷、特殊媒体(フィルム、布、鋼板など)への印刷、曲面印刷、各種印刷版の刷版、加工用途としては粘着材、封止材などの本発明を用いた塗布、バイオ、医療用途としては医薬品(微量の成分を複数混合するような)、遺伝子診断用試料等の塗布等に応用することができる。
ここで、本発明の液体吐出ヘッド2における液体Lの吐出原理について本実施形態を用いて説明する。
本実施形態では、静電電圧電源16から帯電用電極14に静電電圧を印加し、ノズル5の吐出口11の液体Lと対向電極3の液体吐出ヘッド2に対向する対向面との間に電界を生じさせる。また、駆動電圧電源23からピエゾ素子22に駆動電圧を印加してピエゾ素子22を変形させ、それにより液体Lに生じた圧力でノズル5の吐出口11に液体Lのメニスカスを形成させる。
本実施形態のように、ノズルプレート4の絶縁性が高くなると、図4にシミュレーションによる等電位線で示すように、ノズルプレート4の内部に、吐出面6に対して略垂直方向に等電位線が並び、ノズル5の小径部12の液体Lや液体Lのメニスカス部分に向かう強い電界が発生する。
特に、図4でメニスカスの先端部では等電位線が密になっていることから分かるように、メニスカス先端部では非常に強い電界集中が生じる。そのため、電界の静電力によってメニスカスが引きちぎられてノズル内の液体Lから分離されて液滴Dとなる。さらに、液滴Dは静電力により加速され、対向電極3に支持された基材Kに引き寄せられて着弾する。その際、液滴Dは、静電力の作用でより近い所に着弾しようとするため、基材Kに対する着弾の際の角度等が安定し正確に行われる。
発明者らが、電極間の電界の電界強度が実用的な値である1.5kV/mmとなるように構成し、各種のノズルプレート4を形成して下記の実験条件に基づいて行った実験では、ノズル5から液滴Dが吐出される場合と吐出されない場合があった。
[実験条件]
ノズルプレート4の吐出面6と対向電極3の対向面との距離:1.0mm
ノズルプレート4の厚さ:125μm
ノズル径:10μm
静電電圧:1.5kV
駆動電圧:20V
この実機による実験で、液滴Dがノズル5から安定に吐出されたすべての場合について、メニスカス先端部の電界強度を求めた。実際には、メニスカス先端部の電界強度を直接測定することが困難であるため、電界シミュレーションソフトである「PHOTO-VOLT」(商品名、株式会社フォトン製)で電流分布解析モードによるシミュレーションにより算出した。その結果、すべての場合においてメニスカス先端部の電界強度は1.5×10V/m(15kV/mm)以上であった。
また、前記実験条件と同様のパラメータを同ソフトに入力してメニスカス先端部の電界強度を演算した結果、図5に示すように、電界強度はノズルプレート4の体積抵抗率に強く依存することが分かった。
図5は、ノズルプレート4の体積抵抗率を1014Ωmから1018Ωmとした場合、静電電圧を印加開始後、メニスカス先端部の電界強度が変化していく様子を計算した結果を示している。この計算においては空気の体積抵抗率を設定する必要があり1020Ωmとした。図5より、ノズルプレート4のイオン分極により、その体積抵抗率が1014Ωmの場合は静電電圧を印加し始めて100秒後にはメニスカス先端部の電界強度が大きく低下する。この静電電圧の印加開始からメニスカス先端部の電界強度が低下し始めるまでの時間は空気の体積抵抗率とノズルプレート4の体積抵抗率の比で決まり、ノズルプレート4の体積抵抗率が大きいほどメニスカス先端部の電界強度が低下し始める時間が遅くなる。つまり、体積抵抗率が大きいほど必要な電界強度が得られる時間が長くなり有利である。
文献等では絶縁体または誘電体とされる物質の体積抵抗率は1010Ωm以上のものを指すことが多く、代表的な絶縁体として知られているボロシリケイトガラス(例えば、PYREX(登録商標)ガラス)の体積抵抗率は1014Ωmである。
しかし、このような体積抵抗率の絶縁体では、液滴Dは吐出されない。これは、射出有無の評価中、又は評価する前に電界強度が低下してしまい必要な電界強度が得られなくなったためと推定される。なお、射出評価に要した時間及び観察時間から空気の体積抵抗率を1020Ωmとした場合が実験結果と合致した。一旦、メニスカス先端部の電界強度が低下した後は、ノズルプレート4に用いる絶縁体のイオン分極を除電し、初期状態に戻す必要がある。
前記のように、ノズル5から液滴Dを安定に吐出させるためにはメニスカス先端部の電界強度が1.5×10V/m以上であることが必要であり、図5から、ノズルプレート4の体積抵抗率は少なくとも1000秒間メニスカス先端部の電界強度が維持できる1015Ωm以上であることが実用上必要であることが分かり実験上も同様の結果であった。
ノズルプレート4の体積抵抗率とメニスカス先端部の電界強度との関係が図5のような特徴的な関係になるのは、ノズルプレート4の体積抵抗率が低いと、静電電圧を印加してもノズルプレート内で等電位線が図4に示したように吐出面6に対して略垂直方向に並ぶような状態にはならず、ノズル内の液体Lおよび液体Lのメニスカスへの電界集中が十分に行われないためであると考えられる。
理論上、体積抵抗率が1015Ωm未満のノズルプレート4でも、静電電圧を非常に大きくすればノズル5から液滴Dが吐出される可能性はあるが、電極間でのスパークの発生等により基材Kが損傷される可能性があるため、本発明では採用されない。
なお、図5に示したようなメニスカス先端部の電界強度のノズルプレート4の体積抵抗率に対する特徴的な依存関係は、ノズル径を種々に変化させてシミュレーションを行った場合でも同様に得られており、どの場合も体積抵抗率が1015Ωm以上の場合にメニスカス先端部の電界強度が1.5×10V/m以上になることが分かっている。また、前記実験条件中のノズルプレート4の厚さとは、本実施形態の場合は、ノズル5の小径部12の長さと大径部10の長さの和に等しい。
また、体積抵抗率が1015Ωm以上の絶縁体を用いてノズルプレート4を作製してもノズル5から液滴Dが吐出されない場合がある。特開2006−181926号公報に示されるように、液体Lとして水などの導電性溶媒を含有する液体を用いた実験では、ノズルプレート4の液体の吸収率が0.3%以下であることが液体の種類にもよるが好ましい。
これは、ノズルプレート4が液体L中から導電性溶媒を吸収すると導電性の液体である水分子等の分子がノズルプレート4内に存在することになるため、結果的にノズルプレート4の電気伝導度が高くなり、特に液体Lに接する局部の実効的な体積抵抗率の値が低下し、図5に示す関係に従ってメニスカス先端部の電界強度が弱まり、液体Lの吐出に必要な電界集中が得られなくなるためと考えられる。
また、液体Lとして絶縁性溶媒に帯電可能な粒子を分散した液体を用いた場合には、ノズルプレート4は、その液体に対する吸収率に係わりなく、体積抵抗率が1015Ωm以上であれば液体Lを吐出することが分かっっている。これは、絶縁性溶媒がノズルプレート4内に吸収されても絶縁性溶媒の電気伝導度が低いためノズルプレート4の電気伝導度が大きく変化せず、実効的な体積抵抗率が低下しないためであると考えられる。
なお、前記絶縁性溶媒に分散されている帯電可能な粒子は、例えば、電気伝導度が極めて大きな金属粒子であってもノズルプレート4には吸収されないため、ノズルプレート4の電気伝導度を高めることはない。なお、前記絶縁性溶媒とは、単体では静電吸引力により吐出されない溶媒をいい、具体的には、例えば、キシレンやトルエン、テトラデカン等が挙げられる。また、導電性溶媒とは、電気伝導度が10−10S/cm以上の溶媒をいう。
また、前記シュミレーションにおいて、ノズル径を5μmとしてノズルプレート4の樹脂層42の厚さ及び比誘電率を変化させた場合のメニスカス先端部の電界強度を、図6及び図7にそれぞれ示す。この結果から、メニスカス先端部の電界強度は、樹脂層42の厚さ及び比誘電率に依存し、メニスカス先端部の電界強度を1.5×10V/m程度以上とするためには、樹脂層42の厚さは5μm以上、比誘電率は3以下であることが好ましいことが分かる。
メニスカス先端部の電界強度がノズルプレート4の樹脂層42の厚さに依存し、その厚さが増すにつれ電界強度が増加する理由としては、ノズルプレート4の樹脂層42の厚さがより厚くなることで、ノズルプレート4の絶縁性が増すためメニスカス先端部への電界集中が生じ易くなることが考えられる。
さらに、ノズルプレート4の樹脂層42の厚さを5μm、比誘電率を2.5とした場合の圧電素子アクチュエータに印加した駆動電圧とノズル径の関係を図8に実線で示す。また、比較例として、圧電吐出方式による駆動電圧とノズル径の関係を図8に破線で示す。
ここで、「圧電吐出方式」とは、液体に圧力を発生させることにより、液体の一部を分離させて液滴を形成すると共にその液滴を飛翔させる方式をいう。なお、ノズル径は、3μm、5μm、10μmの場合で比較を行っている。
この結果から、ノズルプレート4の樹脂層42の厚さを5μm、比誘電率を2.5とした場合には、駆動電圧は、ノズル径によらずほぼ一定に保たれることがわかる。
次に、本実施形態の液体吐出ヘッド2のノズル5の形成方法について説明する。
まず、図9(a)に示すように、厚さ200μmの両面ミラーウェハの上面(A面)及び下面(B面)に、厚さ2μmの熱酸化膜がそれぞれ形成されたシリコン基板30を用意する。
次に、図9(b)に示すように、シリコン基板30のA面の酸化膜を除去し、スピンコート法により熱硬化性フッ素ポリマー層31を形成し、さらにその上面にSiH膜32を成膜する。
次に、SiH膜32上に酸化膜33を形成し、リソグラフィー技術を用いて、図9(c)に示すように、酸化膜33に開口部34−1を形成する。また、B面の酸化膜35には開口部36−1を形成する。
次に、A面において、図9(d)に示すように、酸化膜33をマスクとして、シリコン基板30に達するまでSiH膜32及び熱硬化性フッ素ポリマー層31にエッチングを施すことでSiH膜32及び熱硬化性フッ素ポリマー層31に開口部34−2を形成し、その後、酸化膜33の除去を行う。
次に、図10(a)に示すように、シリコン基板30のB面が上側となるように、シリコン基板30のA面をシリコンからなるダミーウェハ上にクールグリース等を用いて固定する。
次に、図10(b)に示すように、酸化膜35をマスクとして、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)法により、開口部36−1を介してシリコン基板30を選択的にエッチングする。そして、シリコン基板30を貫通するまで最終的に掘り下げて開口部36−2を形成する。
次に、図10(c)に示すように、酸化膜35を反応性イオンエッチングで除去し、必要に応じて表面処理を行った後、これをノズルプレート4として使用する。上記開口部36−2は、ノズル5の大径部10に相当し、開口部34−2はノズル5の小径部12に相当する。
なお、B面の開口部36−1を介してシリコン基板30を所定の深さまで掘り下げて36−2を形成した後、A面から開口部34−2を介して開口部36−2に達するまで選択的にエッチングを行いシリコン基板30を貫通させてもよい。
また、B面に開口部36−2を形成した後に、A面の熱硬化性フッ素ポリマー層31及びSiH膜32に開口部34−2を形成してもよい。
以上のようにして作製されたノズルプレート4に帯電用電極14を形成し、別途成型したボディ層19を、帯電用電極14を介して陽極接合法により接合することで本実施形態の液体吐出ヘッド2を形成する。
この場合、帯電用電極14付きのノズルプレート4とボディ層19とを接触させる。
次に、この状態で350℃〜450℃に加熱し、ノズルプレート4とボディ層19の間にリーク電流が流れる寸前の電圧を印加することにより、ノズルプレート4及びボディ層19を接合する。ノズルプレート4とボディ層19とが接合されることによって、ノズル5に接続する液体流路が形成される。
液体流路が形成された後に、ピエゾ素子22を付設し、必要な配線接続、パッケージングが行われる。
次に、本実施形態の液体吐出ヘッド2及び液体吐出装置1の作用について説明する。
図11は、本実施形態の液体吐出装置における液体吐出ヘッドの駆動制御を説明する図である。本実施形態では、液体吐出装置1の動作制御手段24は、帯電電圧電源16から帯電用電極14に一定の静電電圧Vを印加させる。これにより、そのノズル5内の液体Lが帯電し、液体Lと対向電極3との間に電界が生じる。
また、動作制御手段24は、液滴Dを吐出させるべきノズル5ごとに、そのノズル5に対応する駆動電圧電源23からピエゾ素子22に対してパルス状の駆動電圧Vを印加させる。このような駆動電圧Vが印加されると、ピエゾ素子22が変形してノズル内部の液体Lの圧力を上げ、ノズル5では、液体Lは図中Aの状態からメニスカスが隆起し始め、Bのようにメニスカスが大きく隆起した状態となる。
すると、前述したように、メニスカス先端部に高度な電界集中が生じて電界強度が非常に強くなり、メニスカスに対して前記静電電圧Vにより形成された電界から強い静電吸引力が加わる。この強い静電吸引力による吸引とピエゾ素子22による圧力とにより図中Cのようにメニスカスが引きちぎられるようにして液滴Dが形成される。液滴Dは、電界で加速されて対向電極方向に吸引され、対向電極3に支持された基材Kに着弾する。
その際、液滴Dには空気の抵抗等が加わるが、前述したように、静電力の作用で液滴Dはより近い所に着弾しようとするため、基材Kに対する着弾方向がぶれることなく安定し、基材Kに正確に着弾する。
なお、ピエゾ素子22に印加する駆動電圧Vとしては、本実施形態のようにパルス状の電圧とすることも可能であるが、この他にも、例えば、電圧が漸増した後漸減するいわば三角状の電圧や、電圧が漸増した後一旦一定値を保ちその後漸減する台形状の電圧、或いはサイン波の電圧を印加するように構成することも可能である。また、図12(A)に示すように、ピエゾ素子22に常時電圧Vを印加しておいて一旦切り、再度電圧Vを印加してその立ち上がり時に液滴Dを吐出させるようにしてもよい。また、図12(B)、(C)に示すような種々の駆動電圧Vを印加するように構成してもよく適宜決定される。
以上のように、本実施形態にかかる発明によれば、ノズル5の先端部に電界を集中させることが可能となることにより、長時間安定して強力な静電吸引力を発生させることができるために液体Lを吐出するのに必要な駆動電圧を低減することが可能となる。また、低電圧の静電電圧でメニスカスが大きく隆起するため、静電電圧発生手段により印加される静電電圧の電圧値を低下させることが可能となる。
また、ノズル5から吐出された液滴は、電界からの静電吸引力の作用で、基材Kのより近い部分に着弾しようとするため、基材Kに対する着弾の際の角度等を安定させ、液滴を所定の着弾位置に正確に着弾させることが可能となる。
また、ノズル5が形成された樹脂層42の吸水率が0.3%以下である熱硬化性ポリマーにより形成されているため、液体の物性に影響を受けずに長時間安定して強力な静電吸引力を発生させることができ、液体を吐出するのに必要な駆動電圧を低減することが可能となる。
また、樹脂層42の厚さを5μm以上とすることにより、ノズル周辺への電界集中が高まり、より強力な静電吸引力を発生させることができるため、メニスカス形成及び液滴形成において必要な駆動電圧をさらに低減することが可能となる。
また、樹脂層42を形成する熱硬化性フッ素ポリマーのガラス転移点が350℃以上であることにより、組み立て接合時に微細なノズルへの目詰まりを大幅に改善できる過熱プロセスを伴う陽極接合が可能となる。
さらに、中間層62の厚さを1μm以上にすることにより、ノズルの剛性があがり、射出特性を向上するとともに、撥液層61の下地基板の剛性があがることでクリーニング時の耐磨耗性を向上させることが可能となる。
なお、本実施形態においては熱硬化性フッ素ポリマーを用いてノズルプレート4の樹脂層42を形成したが、樹脂層42を形成する材料としては、体積抵抗1015Ωm以上、比誘電率3以下、ガラス転移温度350℃以上、液体の吸収率0.3%以下という、本実施形態と同じ物性値を有する感光性フッ素ポリマーを用いることもできる。この場合には、リソグラフィー技術によって、感光性フッ素ポリマーからなる樹脂層上にマスクをし紫外線等の特定の光を照射した後に現像を行って、液体吐出ヘッド2のノズル5を形成すればよい。
また、ノズルプレート4の樹脂層42の構造としては、図3に示すように、2層以上の樹脂層42a,42bを、Si又はSiHからなる中間層43を介して積層した構成とすることもできる。このように構成した場合、樹脂層42全体の厚さを増加させる際に、容易に増加させることができる。
その結果、さらにノズル周辺へ電界集中が高まるためより強力な静電吸引力が発生し、メニスカス形成及び液滴形成での必要な駆動電圧をさらに低減することが可能となる。

Claims (8)

  1. 液体が供給される液体供給口、前記液体供給口から供給された液体を吐出する吐出口及び、前記液体供給口から前記吐出口に液体を供給する液体供給路を有するノズルが設けられたノズルプレートと、
    前記液体供給口に連通するとともに前記吐出口から吐出される液体が貯蔵されるキャビティと、
    前記キャビティの容積を変化させることにより該キャビティ内の液体に圧力を発生させる圧力発生手段と、
    前記ノズル及び前記キャビティ内の液体と基材間に静電電圧を印加して静電吸引力を発生させる静電電圧発生手段と、
    を備える液体吐出ヘッドであって、
    前記ノズルの液体供給口側はシリコン層により形成され、前記ノズルの吐出口側は少なくとも一層の体積抵抗率1015Ωm以上、比誘電率3以下の熱硬化性又は感光性フッ素ポリマーからなる樹脂層により形成されるとともに、前記ノズルの液体供給口側のノズル径が前記ノズルの吐出口側のノズル径より大きいことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  2. 前記樹脂層の液体の吸収率は、0.3%以下であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の液体吐出ヘッド。
  3. 前記樹脂層の厚さは、5μm以上であることを特徴とする請求の範囲第1項又は請求の範囲第2項に記載の液体吐出ヘッド。
  4. 前記樹脂層を形成する熱硬化性又は感光性フッ素ポリマーのガラス転移温度は、350℃以上であることを特徴とする請求の範囲第1項から請求の範囲第3項のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
  5. 前記樹脂層は、Si又はSiHからなる中間層を介して2層以上で構成されていることを特徴とする請求の範囲第2項から請求の範囲第4項のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
  6. 前記ノズルプレートの前記吐出口が開口された面には、SiOからなる中間層を介して撥液層が形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項から請求の範囲第5項のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
  7. 前記SiOからなる中間層の厚さは、1μm以上であることを特徴とする請求の範囲第6項に記載の液体吐出ヘッド。
  8. 前記請求の範囲第1項から請求の範囲第7項のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
    前記液体吐出ヘッドに対向する対向電極と、を備え、
    前記液体吐出ヘッドと前記対向電極との間に生じる前記静電吸引力と前記ノズル内に発生した圧力とにより前記液体を吐出することを特徴とする液体吐出装置。
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