JP4891845B2 - ウォーターポンプのインペラ - Google Patents

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Description

本発明は、自動車のエンジンを冷却するためのウォーターポンプにおいて、冷却水の移送効率を向上させると共に、製造が簡単であり耐久性に優れたウォーターポンプのインペラに関する。
自動車のエンジンに冷却水を循環させるウォーターポンプが多く使用されている。一般に、ウォーターポンプ等の遠心ポンプではインペラの回転時に冷却水が羽根に当たることにより、該冷却水には遠心力が与えられて、前記インペラの遠心方向に移動する。そして遠心方向には吐出口が設置されると、該吐出口を通して冷却水が流れ出して行くことができる。このようなウォーターポンプにおいて、インペラはポンプハウジング等の相手部材と相互に干渉してインペラは回転不能となったり、破損することがないようにするために、前記インペラと相手部材との間には、若干のクリアランスを設けることが必要である。
特開2002−70792 EP1533104
ところが、そのインペラの羽根と、相手部材とのクリアランス部分に流れた冷却水は、インペラがいくら回転しても、遠心力(エネルギー)が与えられない領域となっている。更に、羽根によって遠心方向に押し出された冷却水は前記クリアランス領域に移動しようとするため、ウォーターポンプの効率を向上させることができない要因になっている。すなわち、冷却水は前述したようにインペラの回転によって、その羽根が冷却水に遠心力を与えてインペラの外方に冷却水を跳ね飛ばすように作用するものである。
そして、前記冷却水は、遠心力が与えられて、羽根の外側に移動し、冷却水は部分的にクリアランス領域に吐き出される。しかし、クリアランス部分はインペラの羽根が存在しない部分であるために、クリアランス部分に存在する冷却水には、ほとんどエネルギが与えられず、冷却水が停滞した状態にある。このように、クリアランスは必要であるが、そのクリアランスが大きいと、前記インペラによる冷却水の移送効率は低下することになり、ポンプ効率が悪くなる。
そこで上記のような問題点を解決するために、インペラが仕事を与えられる領域から冷却水が逃げないように工夫したクローズドタイプインペラと呼ばれるタイプのものが使用されている。これは羽根のフロント側、リア側がプレートで覆われたものであり、特許文献1(特開2002−70792)及び特許文献2(EP1533104)に開示されている。特許文献1は、インペラ羽根のフロント側にプレートを溶接で固定したものであり、特許文献2は、樹脂成形において、フロントプレートを超音波溶接やレーザ溶接により固定したものである。これらの特許文献1,2による手法によって、ウォーターポンプの効率を向上させることは可能であり、ある程度の強度向上を図ることが出来る。
ただし、上記特許文献1,2においては以下に示す課題が存在する。まず製造コストが上昇することである。すなわち、フロントプレートを取り付ける工程が完全に別工程であるため、コストの大幅な上昇が避けられないものである。次に、品質確認の困難さ及び強度にバラツキが生じることである。プレスプレート(フロントプレート)を溶接で取り付ける構造としたり、又は樹脂プレート(フロントプレート)を超音波やレーザ溶接で取り付ける構造としても、外観からだけでは、そのフロントプレート,プレスプレート或いは樹脂プレート等のカバープレートがしっかり確実に固定されているか否かを判定することが非常に困難である。
さらに、溶接による固定は、取付け強度が非常にバラツクため、かなり安全を見て仕様を検討する必要がある。上記のように製品の品質確認の困難さ、安全率を大きめにせざるを得ない仕様設計のため、コストはますます高くなる。そこで、本発明の目的は、ウォーターポンプにおけるポンプ効率を良好に維持することができ、且つその力学的強度及び製造コストを低く抑えることができるウォーターポンプのインペラを提供することにある。
請求項1の発明を、一枚の金属板からなり、基礎円部の周囲には放射状に複数の羽根ベース部が同一平面となるように形成され、該羽根ベース部の直径線に対して前縁が後縁よりも中心側に位置するようにして適宜の傾斜角度を有する羽根板片が略直角に折曲形成され、該羽根板片の外端から略直角に羽根カバー片が折曲形成され、各羽根カバー片の外端側は隣接する羽根カバー片の内端側に略近接して、複数の羽根カバー片によって略輪状に連続形成されてなるウォーターポンプのインペラとしたことにより、上記課題を解決したものである。
請求項2の発明を、前述の構成において、前記羽根カバー片は外周辺及び内周辺側が円弧形成されてなるウォーターポンプのインペラとしたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、前述の構成において、前記羽根ベース部,羽根板片及び羽根カバー片は略乙形に折曲されてなるウォーターポンプのインペラとしたことにより、上記課題を解決した。
請求項4の発明を、前述の構成において、前記羽根ベース部,羽根板片及び羽根カバー片は略コ字形に折曲されてなるウォーターポンプのインペラとしたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、前述の構成において、前記羽根カバー片の外端側は隣接する羽根カバー片の内端側に溶接接続されてなるウォーターポンプのインペラとしたことにより、上記課題を解決した。請求項6の発明を、前述の構成において、前記基礎円部にはボス部が形成されてなるウォーターポンプのインペラとしたことにより、上記課題を解決した。
請求項1の発明によって、インペラは、一枚の金属板から形成され、その基礎円部の周囲には放射状に羽根ベース部が同一平面に形成され、該羽根ベース部の直径線に対して前縁が後縁よりも中心側に位置するようにして、適宜の傾斜角度を有する羽根板片部が略直角に折曲形成され、該羽根板片部の外端から略直角に羽根カバー片が折曲形成され、該羽根カバー片の外端は隣接する羽根カバー片の内端側に略近接して、複数の羽根カバー片によって略連続する輪が形成されることにより、複数の羽根カバー片による略輪状の列が、インペラのフロントプレートとなり、よって1枚の金属板から、フロントプレートが設けられたインペラを製造することができ、且つ1つのプレスライン上でフロントプレート形状を形成することが出来、従来タイプのように、別材をインペラに取り付けるという別工程が不要となり、製造効率を向上させることができる。
さらに、フロントプレートは、溶接による接着(固着)ではないため、力学的強度のバラツキが少なく、よって無駄に安全率を上げる必要が無く、強度設計も容易であり、大幅なコストダウンが可能となる。また、合成樹脂製のクローズドインペラでは、強度が鋼板より劣るため、板厚がどうしても厚くなってしまうものであったが、金属板によるクローズドインペラでは、合成樹脂より強度において勝るため、前記フロントプレートは、合成樹脂製の場合に比べて格段に板厚を薄くすることができ、更なる効率の向上が可能となる。また、合成樹脂製のものに対して、金属板から形成されたインペラは、熱膨張による体積増加も少なく、ポンプハウジング内で安定した装着状態にすることができる。
請求項2の発明によって、前記羽根カバー片は外周辺及び内周辺側が円弧形成されたことにより、複数の羽根カバー片が輪状の列を構成すると、略輪状円板となり、良好なフロントプレートを構成することができる。請求項3の発明によって、前記羽根ベース部,羽根板片及び羽根カバー片は略乙形に折曲されることにより、前記インペラの羽根の加工成形が容易且つ効率的にできる。請求項4の発明では、前記請求項3の発明と同様の効果を奏する。請求項5の発明によって、前記羽根カバー片の外端は隣接する羽根カバー片の内端に溶接接続されたことにより、複数の羽根カバー片により形成されたフロントプレートは、より一層強度が増加する。請求項6の発明は、中心部にボスが形成されることで、ポンプ軸への装着が容易となる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明は、図1(E)に示す一枚の金属製の原板から形成されるものであって、該原板には基礎円部1が形成され、該基礎円部1にはボス部11が形成されている。前記基礎円部1は、平板状に形成され、前記ボス部11は、略円筒カップ形状に形成されたものである。また、ボス部11が不要であれば形成されなくてもよい。前記基礎円部1は、仮想的に設定された円板であり、インペラの中心部分に位置するものである。そして、前記基礎円部1の周囲には放射状に複数の羽根ベース部2,2,…が形成されている。該羽根ベース部2は、後述する羽根板片3を前記基礎円部1に連結して支持する部位となる。
前記羽根ベース部2は、前記基礎円部1の直径線Lに対して回転方向に沿って略円弧状板片として形成されたものである〔図1(B),(D),(E)参照〕。各羽根ベース部2の外端箇所から羽根板片3が形成されている。そして、前記羽根板片3は、回転方向前縁31が回転方向後縁32よりも基礎円部1の中心1P側寄りとなるようにして、適宜の傾斜角度θを有するものであり、且つ前記羽根ベース部2に対して略直角に折曲形成されたものである。前記インペラの回転方向は、冷却水をインペラの外方に吹飛ばす方向であり、前記羽根片3の回転方向後縁32から冷却水が飛び出すようになっている。
前記羽根板片3は、図1(E),図2等に示すように、略台形状に形成されたものである。また前記羽根板片3の回転方向前縁31は、先鋭状に形成され、その内面側に傾斜端面311が形成されている。そして、該傾斜端面311は、羽根板片3の形成方向に対して略30度の角度に形成されたものである〔図1(D)参照〕。前記羽根板片3の外端から、該羽根板片3に対して略直角となるように羽根カバー片4が折曲形成されている。該羽根カバー片4は、略円弧状の板片として形成されたものである。複数の羽根カバー片4は、輪状に連続する列を構成するものであり、円形且つ平坦板状の輪を構成する。この円板状の輪は、インペラのフロントプレート4Fとしての役目をなすことになる。
前記羽根カバー片4は、前述したように円板状の輪を構成するものであり、円弧板状に形成されている。そして、円板状の輪を構成した状態において、外周側を形成する外周辺41と、内周側を形成する内周辺42が存在し、それぞれ円弧形成されている。さらに、前記羽根カバー片4と前記羽根板片3との折曲箇所側を羽根カバー片4の内端側43と称する。さらに該内端側43と反対側に位置する端部を外端側44と称する〔図1(A),(B)参照〕。
そして、各羽根カバー片4の外端側44は、隣接する羽根カバー片4の内端側43に略近接して、これら複数の羽根カバー片4,4,…によって略輪状に連続形成され、輪状の円板が形成され、フロントプレート4Fとなるものである〔図1(A),(B)参照〕。前記羽根カバー片4の内端側43と外端側44とは、輪状に連続配列されたときに、それぞれの端部の傾斜が一致して、近接が確実に行われるようになっている。複数の前記羽根カバー片4,4,…によって構成される円板状の輪は、前記基礎円部1に対して平行(略平行も含む)となる。このようなインペラは、前述したように、1枚の金属板から形成される。
図1(E),図2は、本発明のインペラを形成するための展開状態にされた原板である。該原板は、基礎円部1の周囲に放射状に複数の羽根ベース部2,2,…が同一平面に形成されている。さらに、各羽根ベース部2には、同一平面に羽根板片3が形成されている。前記羽根ベース部2と羽根板片3との間には、直角に折曲されるための第1折曲仮想線Taが示されている。該第1折曲仮想線Taは、前記羽根板片3の底部位置となる部位である。
そして、各羽根板片3には、羽根カバー片4が同一平面に形成されている。前記羽根板片3と前記羽根カバー片4との間には直角に折曲されるための第2折曲仮想線Tbが形成されている。前記第1折曲仮想線Taは、前記基礎円部1の仮想直径線に対して適宜の角度を有して設定されたものである。すなわち、前記羽根板片3の回転方向前縁31が回転方向後縁32よりも前記基礎円部1の中心寄りとなるように、前記第1折曲仮想線Taが設定されている。
前記原板からインペラを組み立てるには、まず図3(A),(B)の状態から、第1折曲仮想線Taに沿って前記羽根板片3を前記羽根ベース部2に対して直角に折り曲げる。図3(C),(D)は、その折り曲げの第2段目の工程を示すものである。次に、前記第2折曲仮想線Tbに沿って、羽根カバー片4を直角に折り曲げる。このとき、該羽根カバー片4の折り曲げは、前記羽根ベース部2と羽根板片3との折り曲げ方向とは反対方向となるように折り曲げられる。具体的には前記羽根ベース部2,羽根板片3と羽根カバー片4とは、略「乙」字形状を構成するようにして折り曲げ形成されている〔図3(E),(F)参照〕。
ただし、前述したように前記羽根ベース部2,羽根板片3と羽根カバー片4は、すべて相互に直角となるようにして折曲形成されている。そして、各羽根カバー片4の外端側44は、隣接する羽根カバー片4の内端側43に略近接するように仕上げられるものである。実際の折り曲げ工程では、種々のパターンが存在し、原板から羽根板片3及び羽根カバー片4が一組ずつ順番に折曲形成されたり、或いは図4(A)乃至(C)に示すように、1つのプレス加工ライン上で一つの流れとして行われることにより、極めて迅速且つ効率的に製造することができる。
さらに、前記羽根カバー片4の外端側44は、図5に示すように、隣接する羽根カバー片4の内端側43に溶接手段によって溶接される溶接接続部5が設けられる実施形態も存在する。これによって、複数の独立した羽根カバー片4,4,…は、一つの円板形状の輪を一体的に形成することとなり、これによって力学的強度を向上させたフロントプレート4Fを形成することができる。その溶接は、隣接する羽根カバー片4同士の内端側43と外端側44の全体に亘って施されるものであるが、スポット的に溶接されたものであっても構わない。
図7は、インペラの第2実施形態の構造を示すものであって、前記羽根ベース部2,羽根板片3と羽根カバー片4とが略「コ」字形状を構成するようにして折り曲げ形成されるものである。すなわち、第1折曲仮想線Taに沿って前記羽根ベース部2と羽根板片3との折曲方向と、該羽根板片3と前記羽根カバー片4との折曲方向とが同一方向となるように折曲形成されるものである。この第2実施形態では、原板からの組立工程が前記第1実施形態の組立工程とは異なるが、仕上がりの形状は略同一である。図6では、本発明のインペラがポンプハウジング6に装着された状態を示すものである。
(A)は本発明のインペラの斜視図、(B)はインペラの平面図、(C)は(B)のXa−Xa矢視断面図、(D)はフロントプレートを除いたインペラの横断平面図、(E)はインペラの展開図である。 インペラの展開斜視図である。 (A)は未加工状態の羽根ベース部,羽根板片及び羽根カバー片の斜視図、(B)は(A)のXb−Xb矢視断面図、(C)は折曲の第2段目の工程の羽根ベース部,羽根板片及び羽根カバー片の斜視図、(D)は(C)のXc−Xc矢視断面図、(E)は羽根ベース部,羽根板片及び羽根カバー片の折曲加工が完了した状態の斜視図、(F)は(E)のXd−Xd矢視断面図である。 (A)乃至(C)は原板からインペラを加工する途中の工程図である。 (A)は溶接接続部を設けた実施形態のインペラの斜視図、(B)は(A)のインペラの平面図、(C)は(B)のXe−Xe矢視断面図である。 本発明のインペラをポンプハウジングに装着した状態の縦断側面図である。 (A)は本発明の第2実施形態のインペラの展開図、(B)は第2実施形態のインペラの平面図、(C)は(B)のXf−Xf矢視断面図、(D)は要部拡大斜視図である。
符号の説明
1…基礎円部、2…羽根ベース部、3…羽根板片、31…回転方向前縁、
32…回転方向後縁、4…羽根カバー片、41…外周辺、42…内周辺、44…外端側、43…内端側、5…溶接接続部。

Claims (6)

  1. 一枚の金属板からなり、基礎円部の周囲には放射状に複数の羽根ベース部が同一平面となるように形成され、回転方向前縁が回転方向後縁よりも中心側に位置するようにして適宜の傾斜角度を有する羽根板片が略直角に折曲形成され、該羽根板片の外端から略直角に羽根カバー片が折曲形成され、各羽根カバー片の外端側は隣接する羽根カバー片の内端側に略近接して、複数の羽根カバー片によって略輪状に連続形成されてなることを特徴とするウォーターポンプのインペラ。
  2. 請求項1において、前記羽根カバー片は外周辺及び内周辺側が円弧形成されてなることを特徴とするウォーターポンプのインペラ。
  3. 請求項1又は2において、前記羽根ベース部,羽根板片及び羽根カバー片は略乙形に折曲されてなることを特徴とするウォーターポンプのインペラ。
  4. 請求項1又は2において、前記羽根ベース部,羽根板片及び羽根カバー片は略コ字形に折曲されてなることを特徴とするウォーターポンプのインペラ。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項において、前記羽根カバー片の外端側は隣接する羽根カバー片の内端側に溶接接続されてなることを特徴とするウォーターポンプのインペラ。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項において、前記基礎円部にはボス部が形成されてなることを特徴とするウォーターポンプのインペラ。
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