JP4889602B2 - 生物学的物質用の保存及び貯蔵媒体 - Google Patents
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Description
殆どの生物学的物質の構造及び機能はそれらの水性環境に依存する。それ故、凍結方法及び乾燥方法から生じるそれらの水性環境の変化がしばしば生物学的物質に劇的な結果を有し得る。更に、凍結乾燥は凍結及び乾燥の両方のためのストレスを組み合わせる。この方法の凍結工程は望ましくない副作用、例えば、タンパク質及び酵素の変性、並びに細胞の破裂を有し得る。これらの作用はこれらの物質中の氷の結晶化により誘発された機械的ストレス、化学的ストレス、及び浸透圧ストレスから生じる。結果として、再水和後の生物学的物質の活性は完全に失われ、又はその物質が最早その意図される目的に有益ではないような有意な程度に失われる。
こうして、ポリマーゲル化剤、例えば、カルボキシメチルセルロース又はカルボキシエチルセルロースと組み合わせてトレハロースを使用することが提案されていた。ポリマーと組み合わせてのサッカリドが純粋なトレハロースよりも有効な低温保護剤であることがヒト血液について示唆されていた。米国特許第5,171,661号明細書;Sutton, R.L., J.Chem.Soc.Faraday Trans., 87, 3747 (1991)を参照のこと。不運なことに、ゲル化剤の有益な効果を確かめようとする試みは成功しなかった(G. Spieles, I. Heschel及びG. Rau, Cryo-Letters 17, 43-52 (1996), J.H. Crowe, A.E. Oliver, F.A. Hoekstra及びL.M. Crowe, Cryobiology 35, 20-30 (1997))。更に、この保護組み合わせは医療目的に使用し得ない。
何とならば、ポリマーゲル化剤は人体により良く受け入れられないからである。
結果として、この組み合わせは非常に有益ではなく、トレハロース単独の使用よりもあったとしても多くの実用的な改良を与えない。
それ故、現在では、トレハロースによる凍結乾燥は広範囲の貯蔵条件にわたって生物学的物質、例えば、タンパク質、酵素、細胞、組織、核酸、精液、血液及びその成分、哺乳類の器官、並びに食品の延長された貯蔵期間についての使用が制限されている。何とならば、その物質が分解し、再構成後に充分な活性を有しないからであろう。実用的な観点から、これは医療製品には明らかに受け入れられない。何とならば、物質を最初の場所で保存することの理由の一つが貯蔵安定性製品を提供することであるからである。
こうして、広範囲の生物学的物質に有益である保護剤混合物に対する要望がある。凍結乾燥方法及び周囲温度乾燥を伴う乾燥方法の両方に有効に使用し得る保護剤混合物に対する更なる要望が存する。又、現在使用される保護剤混合物よりもコストがかからない保護剤混合物に対する要望がある。最後に、非常に重要なことに、高温及び種々の程度の湿度(これらは物質の輸送及び貯蔵中に見られる)における時間の延長された期間にわたる生物学的物質の保存のための安定な媒体を提供するとともに、再水和後に有意な量の活性を依然として保持する保護剤混合物に対する要望がある。
これらの要望の全てが本発明の保護剤混合物、水性保護媒体及び得られる保存された生物学的物質組成物により満足される。
それ故、本発明は又上記保存媒体からの保存された生物学的物質組成物の調製方法だけでなく、保存された生物学的物質組成物それ自体を提供する。
広範囲の生物学的物質が本発明の保護剤混合物とともに使用されて本発明の水性保存媒体を生成し得る。次いでこの保存媒体が本発明の方法にかけられて保存された生物学的物質組成物をつくることができる。 これらの生物学的物質として、
(a)酵素、例えば、ラクテートデヒドロゲナーゼ及びホスホフラクトキナーゼ、
(b)タンパク質、例えば、インスリン、
(c)血清補体、
(d)ワクチン、
(e)皮膚、静脈及び動脈を含む組織、
(f)ウイルス、例えば、アデノウイルス、
(g)哺乳類の器官、例えば、肝臓、膵臓及び肺、
(h)血液、並びに赤血球、白血球及び血小板を含むその成分、
(i)原核生物細胞(細菌を含む)及び真核生物細胞を含む細胞、
(j)精液、
(k)核酸、及び脂質小胞を含むその他の生物学的物質、並びに
(l)食品、
が挙げられるが、これらに限定されない。
以上は特許請求の範囲に記載の本発明の保護剤混合物、水性保存媒体及び方法を使用して特許請求の範囲に記載の本発明の保存された生物学的物質組成物にし得る生物学的物質の非常に多数のうちの幾つかの単なる例示である。その後の使用のための保存が望ましい生物学的物質は保護剤混合物とともに使用されて、保存媒体を生成することができ、次いでこれが本発明の保存方法により保存されて保存された組成物を生成し得る。
本発明に有益なポリヒドロキシ化合物として、天然及び合成の単糖類及び多糖類、その他の炭水化物、並びにポリアルコール及びそれらの誘導体が挙げられる。ここで、“多糖類”は二つ以上のモノサッカリド単位を含むサッカリドと定義される。個々のポリヒドロキシ化合物は単独で、又はその他の型のポリヒドロキシ化合物と組み合わせて使用し得る。多種の有益なポリヒドロキシ化合物から、モノサッカリド及びポリサッカリドの使用が好ましい。サッカリドのうち、二糖類、例えば、トレハロース、マルトース、ラクトース、及び蔗糖が本発明における使用に好ましく、トレハロースが最も好ましい。
本発明の保護剤混合物、保存媒体、及び保存された組成物中に存在するポリヒドロキシ化合物の量は使用のために選ばれる特定のポリヒドロキシ化合物、及び生物学的物質だけでなく、保存される生物学的物質の質量に依存する。これは所定の系について調節され、最適化し得る。
保護剤混合物が固体、例えば、粉末として供給される場合、ポリヒドロキシ化合物は混合物の約10質量%から約95質量%までの合計量で存在すべきであり、混合物の約20質量%から約95質量%までの範囲の量が好ましい。保護剤混合物が水溶液である場合、ポリヒドロキシ化合物は混合物中のポリヒドロキシ化合物の合計量が混合物の約5質量%から約40質量%までであるような合計量で存在することが好ましく、混合物の約10質量%から約30質量%の範囲の量が特に好ましい。
同様に、ポリヒドロキシ化合物は水性保存媒体中のポリヒドロキシ化合物の合計量が水性保存媒体の約5質量%から約60質量%までであるような量で本発明の保存媒体中に存在すべきである。存在するポリヒドロキシ化合物の合計量は水性保存媒体の約5質量%から約40質量%であることが好ましく、水性保存媒体の約10質量%から約30質量%までの範囲の量が特に好ましい。
本発明の水性保存媒体中のポリヒドロキシ化合物の上記の量の使用は液体水の部分的又は完全除去後に組成物の約5質量%から約95質量%のポリヒドロキシ化合物を有する保存された生物学的物質組成物をもたらすであろう。再度、この量は保存される生物学的物質の質量、存在するリン酸塩の量、及び保存中に系から除去される水の量に依存するであろう。保存された生物学的組成物中のポリヒドロキシ化合物の量は保護剤混合物及び/又は水性保存媒体中に存在する量から測定し得る。又、保存された生物学的物質組成物中のポリヒドロキシ化合物の量は当業界で知られている分析方法、例えば、カラムクロマトグラフィーにより測定し得る。
リン酸イオンのあらゆる源が本発明の保護剤混合物、保存媒体、保存方法、及び保存された組成物に使用し得る。いかなる特別な理論により束縛されたくないが、リン酸イオンはポリヒドロキシ化合物と錯体を生成し、これはリン酸イオンにより架橋された三次元の超分子構造中にポリヒドロキシ化合物の幾つかの分子を含み得る。水性保存媒体は同じ量のポリヒドロキシ化合物単独を含む系よりも極めて高い粘度を有し、保存された生物学的物質組成物はポリヒドロキシ化合物のみを含む組成物よりも高いガラス転移温度(Tg)を有する。
先に記載したように、リン酸イオンは酸及び塩を含むあらゆる源から用意し得る。ナトリウム塩及びカリウム塩の使用が好ましい。カリウム塩が最も好ましい。何とならば、それらが低温で優れた溶解性特性を有し、無水結晶として結晶化するからである。それ故、リン酸イオンはナトリウム塩及び/又はカリウム塩の使用により用意されることが好ましく、一塩基性リン酸カリウムと二塩基性リン酸カリウムの混合物が特に好ましい。
リン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基のモル比は保存方法中に実質的に一定に留まり、リン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基の実質的に同じモル比を有する保存された生物学的物質をもたらすであろう。こうして、保存された生物学的物質組成物中に存在するリン酸イオンの量は直接に水性保存媒体中に存在する量ということになる。又、保存された生物学的物質組成物中のリン酸イオンの量は、イオンクロマトグラフィー及びケミルミネセンスを含む、当業界で知られている方法により分析で測定し得る。
所定の生物学的物質の構造及び機能を安定化し、保存する際のリン酸イオンの有効性はリン酸イオン対ヒドロキシル基のモル比が0から増大するにつれて増大するが、或る点(最適比)までに過ぎず、その後に追加のリン酸イオンの使用は有効性に増大を与えず、又はほんのわずかな増大を与えるに過ぎないことがわかった。既に説明したように、最適比は使用される生物学的物質の量及び型、保存媒体中のポリヒドロキシ化合物の量及び型、保存媒体のpH、並びに利用される保存技術を含む、幾つかの因子に依存する。
本発明の保護剤混合物及び/又は水性保存媒体はその他の成分を含み得る。例えば、それらは所定の生物学的物質について媒体のpHを最適値に維持するために緩衝剤を含んでもよい。混合物及び/又は媒体中のリン酸イオンは同様に緩衝剤として作用し、こうして追加の非リン酸塩緩衝剤が必要とされなくてもよいことが注目されるべきである。リン酸塩緩衝剤が使用される場合、緩衝剤中に存在するリン酸イオンの量は混合物及び/又は水性保存媒体だけでなく、得られる保存された生物学的物質組成物中のリン酸イオン対ポリヒドロキシ化合物のヒドロキシル基のモル比を決める際に含まれるべきである。所定の生物学的物質が最も安定であるpHは当業界で知られている。一般に、本発明の保存媒体は約5から約10までの範囲のpHを有するべきであり、約6から約9までの範囲のpHが最も好ましい。
保護剤混合物及び/又は水性保存媒体は又乾燥剤及び/又は浸透圧保護剤として作用し得るその他の成分、例えば、メタノール、エタノール、グリセロール及びDMSOを含んでもよい。これらの成分は本発明の水性保存媒体からつくられた保存された生物学的物質組成物において残留水分を減少し、又は浸透圧ストレスを相殺する傾向があり、これらは或る場合に一層良好な貯蔵能力をもたらし得る。
本発明の保護剤混合物は以下のように調製し得る。ポリヒドロキシ化合物及びリン酸イオンの源が所望の比率で水溶液に添加される。リン酸イオン源はポリヒドロキシ化合物の添加の前にその溶液に溶解されることが好ましい。混合物は溶解を行なうために必要により加熱されてもよい。溶液は、均一な保護剤混合物が得られるまで、充分に混合されるべきである。次いでこの保護剤混合物が水溶液として貯蔵でき、又は当業界で知られている種々の方法にかけられて固体混合物、例えば、粉末を製造し得る。粉末は無水であってもよく、又は部分結晶性水和物質であってもよい。保護剤混合物が粉末の如き固体である場合、それが本発明の水性保存媒体をつくるのに使用される前にそれは水溶液で再構成されるべきである。しかしながら、固体混合物は生物学的物質を含む水溶液に直接添加されて水性の本媒体を生成し得る。
次いで水溶液の形態の保護剤混合物が生物学的物質の水溶液に添加される。保護剤混合物が水性緩衝液中で調製された場合、生物学的物質の水溶液は同緩衝液中で調製されることが好ましい。次いでこれらの2種の溶液が充分に混合されて、本発明の水性保存媒体を生成する。酸化防止剤が使用されている場合、それは一般に保護剤溶液の添加の前に生物学的物質の水溶液に添加される。
次いで水性保存媒体が、凍結、凍結乾燥、真空乾燥、周囲空気乾燥、及び/又は噴霧乾燥を含む、当業界で知られている一種以上の技術により保存されて、本発明の保存された生物学的物質組成物を得ることができる。得られる保存された生物学的物質組成物は無水であってもよく、又は部分結晶性水和物質であってもよい。保存された生物学的物質はその性質が実質的に無水であることが好ましい。ここで、“実質的に無水”は保存された生物学的物質組成物がカールフィッシャー分析により測定して10%未満の水を含むことを意味する。
前もって決めた量のポリヒドロキシ化合物及びリン酸イオンを添加し、混合して均一な溶液を生成することにより、水溶液形態の種々の保護剤混合物をバターフィールド緩衝液(7.2のpHを有する0.6mMリン酸カリウム緩衝水)中でつくった。次いで所定の保護剤混合物を1:1の質量比でL.アシドフィルス細胞溶液に添加し、得られる水性保護媒体を充分に混合し、室温で30分間インキュベートした。
L.アシドフィルス細胞溶液を以下のように調製した。15.3質量%の乾燥質量を有する濃縮L.アシドフィルス細菌培養物を1.9%のチオ硫酸ナトリウムと混合してL.アシドフィルス細胞溶液を生成し、室温で30分間インキュベートした。
次いで上記様式でつくった夫々の水性保護媒体のサンプルを凍結、凍結乾燥又は真空乾燥にかけた。
凍結乾燥されたサンプルを先に詳述したように凍結にかけ、得られるペレットをビルチス12EK凍結乾燥機中で-45℃以下の温度に前もって冷却した棚の上に置いた。更に、保存媒体の小サンプルを計量してそれらの密度を測定し、次いでガラス皿中で薄層として凍結乾燥した。これらのサンプルを凍結乾燥の前後に計量して凍結乾燥中に夫々のサンプルにより失われた水の量を計算し、それ故、再水和に必要とされる水の量を測定した。
真空乾燥にかけたサンプルについて、保存媒体0.2mlを1.8mlのプラスチック微小遠心分離管に入れた。次いでサンプルをサバント・インストルメンツSVC-100Hスピードバク・コンセントレーター真空乾燥機に入れ、11.3パスカル(85ミリトル)の最終圧力で約4日にわたって室温で回転蒸発させて、保存された細胞組成物を得た。次いで管をシールし、デシケーター中で室温で貯蔵した。
サンプルをつくり、凍結、真空乾燥又は凍結乾燥にかけた時点で、水性保存媒体からの追加のサンプルを採取し、希釈し、通常の注入塗布技術を使用して寒天培地に塗布して保存方法を行なう前に保存媒体中の生存細胞数を測定した。最初に、サンプルを希釈して約100の細胞/mlの細胞濃度を得た。次いで希釈された保存媒体1ml又は2mlをペトリ皿に入れ、45℃で液体寒天増殖培地(55g/LのMRSラクトバチルス・ブロース及び0.1%のL-システインを含む15g/Lの寒天)と混合した。皿を冷却し、寒天を固化し、その時点で皿を倒立させ、37℃で2-3日にわたって嫌気増殖チャンバー(ガスパック・ジャー)に入れ、その時点でコロニーが寒天中で見えた。原則として、夫々のコロニーは保存媒体中の単一生存細胞に相当する。
サンプルの所定の組に関する結果を下記の表1に示し、表中、数字は再水和後に回復された初期活性の%を表す。“溶液”欄は所定の保存媒体中の生存細胞の量を示し、“細胞単独”サンプル中の生存細胞の量が100%と定義される。
実施例2
種々の量のポリヒドロキシ化合物とともにリン酸イオン、炭酸イオン、又は硫酸イオンを使用して、実施例1の操作を繰り返した。サンプルの所定の組に関する結果を下記の表2に示し、表中、数字は再水和後に回復された初期活性の%を表す。“溶液”欄は所定の保存媒体中の生存細胞の量を示し、“細胞単独”サンプル中の生存細胞の量が100%と定義される。
実施例3
凍結乾燥したサンプルを50℃に乾燥した以外は、種々の量のリン酸イオンの種々の源、及び種々の量のトレハロースを含む保存媒体を使用して、実施例1の操作を繰り返した。加えて、凍結乾燥したサンプル中の残留水をカールフィッシャー(KF)分析により測定し、ガラス転移温度(Tg)を得た。サンプルの所定の組に関する結果を下記の表3に示し、表中、数字は再水和後に回復された初期活性の%を表す。“溶液”欄は所定の保存媒体中の生存細胞の量を示し、“細胞単独”サンプル中の生存細胞の量が100%と定義される。
実施例4
凍結乾燥したサンプルを50℃の温度に乾燥した以外は、保存媒体中に種々の量のトレハロース及び異なるリン酸イオン源を使用して、実施例1の操作を繰り返した。2種のサンプルでは、エタノールを乾燥剤として保存媒体に添加し、一方、一種のサンプルでは、L.アシドフィルス細胞を“洗浄”(遠心分離、デカントそして再懸濁)して残留増殖培地を除去した。又、異なる緩衝液を含む媒体を試験した。サンプルの所定の組に関する結果を下記の表4に示し、表中、数字は再水和後に回復された初期活性の%を表す。“溶液”欄は所定の保存媒体中の生存細胞の量を示し、“細胞単独”サンプル中の生存細胞の量が100%と定義される。
サンプルを50℃の温度に凍結乾燥した以外は、トレハロース、リン酸イオン、及び種々の酸化防止剤を使用して、又は使用しないで、実施例1の操作を繰り返した。サンプルの所定の組に関する結果を下記の表5に示し、表中、数字は再水和後に回復された初期活性の%を表す。“溶液”欄は所定の保存媒体中の生存細胞の量を示し、“細胞単独”サンプル中の生存細胞の量が100%と定義される。
ペディオコッカス種をL.アシドフィルス細胞に代えて使用し、凍結乾燥したサンプルを25℃の温度に乾燥し、又は更に50℃に乾燥した以外は、実施例1の操作を繰り返した。サンプルの所定の組に関する結果を下記の表6に示し、表中、数字は再水和後に回復された初期活性の%を表す。“溶液”欄は所定の保存媒体中の生存細胞の量を示し、“細胞単独+チオ”サンプル中の生存細胞の量が100%と定義される。
L-ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH、EC1.1.1.27、型II、ウサギの筋肉)を4℃でpH7.5の100mMリン酸カリウム緩衝液中で一夜透析した。シグマ・ケミカル社(セントルイス、ミズーリー)から購入したタンパク質測定キットであるシグマ・ダイアグノスチックを使用し、Ohnishi及びBarr, “ビウレット試薬及びフェノール試薬を使用するタンパク質を定量するための簡素化方法”, Analytical Biochem. 86:193-200 (1978)の改良ビウレット方法を使用して、全タンパク質含量をアッセイした。バリアンUVスペクトロフォトメーターを使用してタンパク質アッセイを室温で725nmにおける特徴的な吸収で行なった。反応混合物は100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)、0.150mM NADH、及び1.20mMピルビン酸を含んでいた。
サンプルを調製するために、透析したLDHを透析に使用されたのと同じリン酸カリウム緩衝液で希釈した。得られる酵素溶液は100mMのリン酸イオン濃度、及び50μg/mlのLDH濃度を有していた。次いで保護剤混合物の三つの組をつくった。混合物の組は夫々200mM、400mM及び600mMのトレハロース濃度を有していた。
夫々の混合物の組は夫々100mM、300mM、500mM及び700mMの濃度のリン酸イオンを含む、4種の別々の保護剤サンプルからなった。トレハロースを所定の量のリン酸イオンを含むリン酸塩水溶液に溶解することによりこれらのサンプルをつくった。
次いでLDH溶液2mlを12種の保護剤混合物の夫々2mlと混合して100mM、200mM、又は300mMのトレハロース濃度、25μg/mlのLDH濃度、及び100mM、200mM、300mM又は400mMのリン酸イオン濃度を有する水性保存媒体の溶液4mlを得た。上記サンプル調製を表7に示す。
サンプルの所定の組に関する結果を図1(凍結乾燥)及び図2(凍結)に示す。
L-ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH、EC1.1.1.27、型II、ウサギの筋肉)を4℃でpH7.5の100mMリン酸カリウム緩衝液中で一夜透析した。シグマ・ケミカル社(セントルイス、ミズーリー)から購入したタンパク質測定キットであるシグマ・ダイアグノスチックを使用し、Ohnishi及びBarr, “ビウレット試薬及びフェノール試薬を使用するタンパク質を定量するための簡素化方法”, Analytical Biochem. 86:193-200 (1978)の改良ビウレット方法を使用して、全タンパク質含量をアッセイした。バリアンUVスペクトロフォトメーターを使用してタンパク質アッセイを室温で725nmにおける特徴的な吸収で行なった。反応混合物は100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)、0.150mM NADH、及び1.20mMピルビン酸を含んでいた。
次いでLDHサンプルを保護剤混合物と混合して25μg/mlのLDH濃度、200mMのトレハロース濃度並びに種々のLDH濃度及びリン酸イオン濃度を有する水性保存媒体の溶液50mlを得た。サンプル1-4に関するリン酸イオン濃度は夫々10mM、100mM、300mM、及び500mMであり、サンプル1について0.05、サンプル2について0.5、サンプル3について1.5、又サンプル4について2.5のリン酸イオン対トレハロースのモル比であった。上記サンプル調製を下記の表8に示す。
凍結乾燥が完結した後、バイアル中の保存されたLDHサンプルを除去し、バイアルをシールし、37℃のインキュベーター、30℃のインキュベーター又は4℃の冷蔵庫中で貯蔵した。
次いでLDH活性をサンプルについて周期的に測定した。活性を測定する前に、夫々のサンプルを計量して水損失の量を測定し、失われた水の量の精製水(ミリポア社からのミリQシステム)で再水和した。次いで先に説明したのと同じ方法を使用してLDH活性を測定した。
サンプルの所定の組に関する結果を図3-5に示し、図中、“Z”はリン酸イオン対トレハロースのモル比である。
実施例1の操作を繰り返した。結果を下記の表9に示し、表中、数字は再水和後に回復された初期活性の%を表す。“溶液”欄は所定の保存媒体中の生存細胞の量を示し、“細胞単独”サンプル中の生存細胞の量が100%と定義される。
モル基準で7.5%の蔗糖又はトレハロースと一リン酸カリウムもしくは二リン酸カリウムにより得られた種々の量のリン酸イオンとを含む水性保護剤混合物を調製し、夫々の混合物25μlをアルミニウム示差走査熱量測定パンにシールした。次いでサンプルを液体窒素中の浸漬により急冷し、示差走査熱量測定器(これは-140℃に前もって冷却されていた)に装填した。次いでサンプルを50℃の温度まで5℃/分の速度で走査し、ガラス転移温度(Tg)を測定した。夫々のサンプルに関する結果を図6に示す。
Claims (6)
- 細胞を凍結乾燥保存するための水性保存媒体であって、以下の成分、
(a)前記媒体中の合計量が、該媒体の5質量%から60質量%までであるトレハロース、
(b)一塩基性リン酸カリウム又は二塩基性リン酸カリウムによって提供されるリン酸イオンであって、該媒体中の合計量が、リン酸イオン対トレハロース中のヒドロキシル基のモル比が0.0375から0.625までであるリン酸イオン、及び
(c)酸化防止剤、
を含み、
前記媒体のpHが、6〜9であることを特徴とする水性保存媒体。 - 前記媒体のpHが、5から9までである請求の範囲第1項記載の水性保存媒体。
- 前記媒体中のトレハロースの合計量が、該媒体の10質量%から30質量%までである請求の範囲第1項記載の水性保存媒体。
- 保存された細胞組成物の調製方法であって、以下の工程、
(a)水性保存媒体を生成する工程であって、前記媒体が、(i)細胞、(ii)前記媒体中の合計量が、該媒体の5質量%から60質量%までであるトレハロース、(iii)一塩基性リン酸カリウム又は二塩基性リン酸カリウムによって提供されるリン酸イオンであって、該媒体中の合計量が、リン酸イオン対トレハロース中のヒドロキシル基のモル比が0.0375から0.625までであるリン酸イオン、及び(iv)酸化防止剤を含む工程、そして
(b)凍結乾燥を使用して水性保存媒体を保存する工程、
を有し、
前記媒体のpHが、6〜9であることを特徴とする方法。 - 前記媒体のpHが、5から9までである請求の範囲第4項記載の方法。
- 前記媒体中のトレハロースの合計量が、該媒体の10質量%から30質量%までである請求の範囲第4項記載の方法。
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