JP4889155B2 - 快削性を有する高強度アルミナ質焼結体及びこれを用いた耐食性部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度を有するとともに、研削性に優れた快削性を有する高強度アルミナ質焼結体と、これを用いた、フッ素系や塩素系等の腐食性ガスあるいはそのプラズマ雰囲気下で使用する真空チャンバーの内壁材、マイクロ波導入窓、フォーカスリング、クランプリング、サセプタ等の如き耐食性部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、セラミック焼結体の中でも耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性等の点で優れた特性を有するとともに、圧倒的に安価でかつ工業的に有用な材料としてアルミナ質焼結体が使用されており、例えば摺動部材、粉砕部材、構造部材等の様々な分野で使用されている。
【0003】
しかしながら、アルミナ質焼結体は、上述のような優れた特性を有する反面、ジルコニア質焼結体や窒化珪素質焼結体などに比べて抗折強度が低いことから、高い応力のかかる部分に使用するには形状等の制約があった。
【0004】
例えば、生産性の向上に伴って大型化する構造部材に用いる場合、重量が重くなり、取り付け時やハンドリング時において欠けや割れが発生するという課題があり、曲げ強度を高めることが望まれていた。
【0005】
そこで、アルミナ質焼結体の抗折強度を向上させるため、例えば、炭化珪素やジルコニアなどの結晶粒子をアルミナ粒子内及び粒界に分散させたアルミナ質焼結体が提案されている(特公昭59−24751号公報、特公昭59−25748号公報参照)。
【0006】
一方、近年、半導体製造装置においては、フッ素系や塩素系等のハロゲン系腐食性ガスあるいはそのプラズマ雰囲気に曝される、真空チャンバーの内壁材、マイクロ波導入窓、フォーカスリング、クランプリング、サセプタ等の如き耐食性部材としてアルミナ質焼結体を用いることが提案されている(特開平5−217946号公報参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ジルコニアや炭化珪素を分散させたアルミナ質焼結体は、ジルコニアや炭化珪素を含まないものと比較して焼結体の強度及び硬度を向上させることができるものの、一般的に破壊靱性値も高くなることから研削加工を行った時の加工負荷が高く、加工に時間がかかるため、安価に構造部材を製作することができないといった課題があった。特に、構成部材が大型化すると加工面積が増えるため、加工に多大な時間を要することになり、この加工時間のアップが大きな問題となっていた。
【0008】
さらに、炭化珪素を分散させたアルミナ質焼結体では、常圧焼成にて緻密化することができないため、ホットプレスなどの高価な焼成装置を用いなければならず、構造部材を製作するうえにおいてさらに高価なものになってしまうといった不都合があった。
【0009】
一方、耐食性部材としてアルミナ質焼結体を用いたものでは、他のセラミック焼結体と比較して高い耐食性を有するものの、十分満足できるものではなく、さらに耐食性部材も大型化する傾向にあるが、研削性が良くないため、加工に時間がかかり、加工コストが耐食性部材の単価に跳ね返り、高価なものになってしまうといった課題があった。
【0010】
【発明の目的】
本発明の目的は、高強度でありながら加工性に優れたアルミナ質焼結体とこれを用いた、ハロゲン系腐食性ガスやそのプラズマに対する優れた抵抗性を有する耐食性部材を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題に鑑み、本発明の快削性を有する高強度アルミナ質焼結体は、アルミナを70〜95質量%、アルミニウム・イットリウム・ガーネットを5〜30質量%の範囲で含有した焼結体であって、焼結体中における上記アルミナの平均結晶粒子径が3〜7μm、上記アルミニウム・イットリウム・ガーネットの平均結晶粒子径が1.8〜5μmで、かつ上記アルミニウム・イットリウム・ガーネットの平均結晶粒子径に対する上記アルミナの平均結晶粒子径の比が1より大きく、3.18以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の快削性を有する高強度アルミナ質焼結体は、4点曲げ強度が340MPa以上であるとともに、破壊靱性値が2.9MPa・√m以下であることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の快削性を有する高強度アルミナ質焼結体を、ハロゲン系腐食性ガスあるいはそのプラズマに曝される耐食性部材に用いたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の快削性を有する高強度アルミナ質焼結体は、アルミナを主成分とし、副成分としてアルミニウム・イットリウム・ガーネット(以下、YAGという)を含有した焼結体であって、焼結体中における上記YAGの平均結晶粒子径を上記アルミナの平均結晶粒子径より適度に小さくしたことを特徴とする。
【0015】
即ち、副成分として含有するYAGはアルミナの粒成長を抑制する作用があるため、焼結体を緻密化することができ、YAGを含まないアルミナ質焼結体と比較して曲げ強度及び硬度を向上させることができるとともに、焼結体中におけるYAGの粒子径をアルミナの粒子径より適度に小さくしてあることから、破壊靱性値を2.3〜3.5MPa・√m程度にまで下げることができ、焼結体の研削加工による加工性を向上させることができる。
【0016】
ところで、このようなアルミナ質焼結体を得るには、アルミナを70〜95質量%、YAGを5〜30質量%の範囲で含有する必要がある。
【0017】
なぜなら、アルミナの含有量が70質量%未満となると(YAGの含有量が30質量%を超えると)、YAGの比率が高くなり、焼結体の曲げ強度や硬度がYAGを含まないアルミナ質焼結体より低下するからであり、逆に、アルミナの含有量が95質量%を超えると(YAGの含有量が5質量%未満となると)、YAGの含有量が少ないことからアルミナの粒成長を抑制する効果が小さく、焼結体の曲げ強度や硬度を向上させることができず、また、焼結体の破壊靱性値を下げる効果も得られないからである。
【0018】
また、焼結体中におけるアルミナの平均結晶粒子径は3〜7μm、YAGの平均結晶粒子径は1.8〜5μmの範囲にあるものを用いる必要がある。
【0019】
即ち、アルミナの平均結晶粒子径が7μmを超えると、焼結体中に気孔が多数介在することになり、焼結体の曲げ強度や硬度を向上させることができないからであり、逆にアルミナの平均結晶粒子径が3μm未満となると、焼結体の破壊靱性値が高くなり、快削性が損なわれるからである。
【0020】
また、YAGの平均結晶粒子径が5μmを超えると、焼結体の破壊靱性値が小さくなり過ぎるため、研削加工時にチッピングや欠けを生じ、精度良く製作することが難しくなるとともに、ハンドリング時に欠けや割れが生じるからであり、逆にYAGの平均結晶粒径が1.8μm未満となると、焼結体の破壊靱性値が高くなり過ぎ、加工性が損なわれるからである。
【0022】
さらに、焼結体中におけるYAGは、その平均結晶粒子径が主成分であるアルミナの平均結晶粒子径より適度に小さく、上記YAGの平均結晶粒子径に対するアルミナの平均結晶粒子径の比が1より大きく、3.18以下であることが重要である。
【0023】
即ち、YAGの平均結晶粒子径に対するアルミナの平均結晶粒子径の比が1より小さいと、YAGの粒子径がアルミナの粒子径に近くなり、焼結体の曲げ強度や硬度が低下するとともに、破壊靱性値が大きく低下し過ぎてしまうからであり、逆にYAGの平均結晶粒子径に対するアルミナの平均結晶粒子径の比が3.18より大きいと、破壊靱性値が高くなり過ぎるために加工性が損なわれるからである。
【0024】
また、本発明の快削性を有する高強度アルミナ質焼結体は、主成分のアルミナと副成分のYAGが上述した範囲内にあれば、他の助剤成分を含有していても良く、例えば、アルミナ質焼結体の焼結助剤として用いられるMgO、SiO2、CaOを含んでいても構わない。
【0025】
このような範囲内にある本発明の快削性を有する高強度アルミナ質焼結体は、4点曲げ強度340MPa以上、ビッカース硬度16GPa以上の高強度、高硬度を有するとともに、耐熱衝撃性(ΔT)160℃以上、破壊靱性値が2.3〜3.5MPa・√mの範囲にあり、ハンドリング時に破損することなく、焼結体の研削性を向上させることができる。
【0026】
ところで、このような快削性を有する高強度アルミナ質焼結体を得るには、まず、出発原料としてアルミナ粉末とYAG粉末及び必要に応じて焼結助剤等の助剤成分を用意する。
【0027】
アルミナ粉末はアルミナ純度が95%以上を有するとともに、平均粒子径が1〜15μm、BET比表面積が1〜4m2/gのものを用いることが好ましい。
【0028】
また、YAG粉末は、Al2O3粉末とY2O3粉末を下式の割合で混合して1000〜1600℃で仮焼した後、これらを粉砕することにより得ることができ、平均粒子径0.6〜1.2μm、BET比表面積2〜5m2/gの粉末を用いることが好ましい。
(式) A+B=1
0.365≦A≦0.385
0.615≦B≦0.635
A:イットリアのモル量
B:酸化アルミニウムのモル量
そして、上記アルミナ粉末を70〜95質量%、上記YAG粉末を5〜30質量%の範囲で混合し、さらにワックスエマルジョン(ワックス+乳化剤)、PVA(ポリビニルアルコール)、PEG(ポリエチレングリコール)等の所望の有機バインダーを添加混合し、混練してスラリーを作製するか、あるいは混練乾燥させて造粒粉を作製し、スラリーを用いる場合、鋳込成形法、射出成形法、ドクターブレード法等のテープ成形法により所定形状に成形し、また、造粒粉を用いる場合、型内に充填してプレス成形等の一軸加圧成形法を用いるか、あるいはラバープレス成形等のように等加圧成形法を用いて所定形状に成形し、しかる後、得られた成形体を必要に応じて300〜600℃で脱脂し、しかる後、大気雰囲気中にて1500〜1750℃の温度範囲で焼成する。
【0029】
ここで、焼成温度を1500〜1750℃とするのは、1500℃未満であると、十分に焼結が進まず、緻密化することができないからであり、逆に1750℃を超えると、アルミナ粒子やYAG粒子が異常粒成長を起こし、焼結体の曲げ強度、硬度、破壊靱性値等の機械的特性が低下するからである。
【0030】
以上のような条件にて焼成することにより、4点曲げ強度340MPa以上、ビッカース硬度16GPa以上の高強度、高硬度を有するとともに、耐熱衝撃性(ΔT)160℃以上、破壊靱性値が2.3〜3.5MPa・√mの範囲にあるアルミナを主成分とする快削性を有した高強度アルミナ質焼結体を得ることができ、このアルミナ質焼結体を所定形状に加工するため、各種加工装置の留め具にハンドリングしても欠けや割れを生じ難く、また、研削加工を施せば、快削性に優れるため、比較的短時間で加工することができる。
【0031】
次に、本発明の快削性を有する高強度アルミナ質焼結体を耐食性部材に用いた応用例について説明する。
【0032】
ここで、耐食性部材とは、ハロゲン系腐食性ガスあるいはそのプラズマに曝される部材のことであり、具体的には、真空チャンバーの内壁材、マイクロ波導入窓、フォーカスリング、クランプリング、サセプタとして用いられるものである。
【0033】
ハロゲン系腐食性ガスとしては、SF6、CF4、CHF3、ClF3、NF3、C4F8、HF等のフッ素系ガス、Cl2、HCl、BCl3、CCl4等の塩素系ガス、あるいはBr2、HBr、BBr3等の臭素系ガスなどがある。そして、これらのハロゲン系腐食性ガスが使用される雰囲気下でマイクロ波や高周波が導入されると、これらのガスがプラズマ化されることになる。また、エッチング効果をより高めるために、ハロゲン系腐食性ガスとともに、Ar等の不活性ガスを導入してプラズマを発生させることもある。
【0034】
そして、このようなハロゲン系腐食性ガスあるいはそのプラズマに曝される耐食性部材として本発明の快削性を有する高強度アルミナ質焼結体を用いれば、その構成成分であるYAGがフッ素系や塩素系等の腐食性ガスやそのプラズマに対する耐食性に優れ、しかもこのYAG結晶が腐食を受け易いアルミナ質焼結体の粒界層に介在していることから、焼結体の耐食性を、YAGを含まないアルミナ質焼結体と比較して向上させることができる。
【0035】
本発明の耐食性部材は、アルミナを70〜95質量%、YAGを5〜30質量%の範囲で含有するとともに、焼結体中におけるアルミナの平均結晶粒子径が3〜7μm、YAGの平均結晶粒子径が1.8〜5μmの範囲にあり、かつ上記YAGの平均結晶粒子径に対するアルミナの平均結晶粒子径の比が1より大きく、3.18以下である本発明の快削性を有する高強度アルミナ質焼結体を用いる。
【0036】
即ち、アルミナの含有量が70質量%未満となると(YAGの含有量が30質量%を超えると)、YAGの比率が高くなり、焼結体の曲げ強度や硬度がYAGを含まないアルミナ質焼結体より低くなるとともに、さらに破壊靱性値が2.3MPa・√m未満となるからであり、逆に、アルミナの含有量が95質量%を超えると(YAGの含有量が5質量%未満となると)、YAGの含有量が少ないことからアルミナの粒成長を抑制する効果が小さく、焼結体を緻密化できないため、曲げ強度や硬度を向上させることができず、また、YAGを含むことによる耐食性の向上が望めないからである。
【0037】
また、アルミナの平均結晶粒子径が7μmを超えると、焼結体中に気孔が多数介在することになり、焼結体の曲げ強度や硬度を向上させることができず、また、プラズマに曝されると、気孔のエッジが腐食を受け易いため、腐食の進行が加速されるからであり、逆にアルミナの平均結晶粒子径が3μm未満となると、焼結体の破壊靱性値が高くなり、加工性が損なわれるからである。
【0038】
さらに、YAGの平均結晶粒子径が5μmを超えると、焼結体の破壊靱性値が小さくなり過ぎるため、研削加工時にチッピングや欠けを生じ、精度良く製作することが難しくなるとともに、ハンドリング時等においても欠けや割れが生じるからであり、逆にYAGの平均結晶粒径が1.8μm未満となると、焼結体の破壊靱性値が高くなり過ぎ、加工性が悪くなるからである。
【0039】
また、YAGの平均結晶粒子径に対するアルミナの平均結晶粒子径の比が1より小さくなると、YAGの粒子径がアルミナの粒子径に近くなり、焼結体の曲げ強度、硬度、破壊靱性値等の機械的特性が低下するとともに、焼結体の耐熱衝撃性が低下してしまうからであり、逆にYAGの平均結晶粒子径に対するアルミナの平均結晶粒子径の比が3.18より大きくなると、焼結体の曲げ強度や硬度の向上とともに、破壊靱性値が高くなるために加工性が悪くなるからである。
【0040】
さらに、本発明の快削性を有する高強度アルミナ質焼結体により形成した耐食性部材は、耐熱衝撃性(△T)160℃以上を有することから、熱が加わるような環境下で使用したとしても熱衝撃等で割れる恐れが小さく、常に安定して使用することができる。
【0041】
【実施例】
(実施例1)
ここで、アルミナ及びYAGの含有量、アルミナとYAGの平均結晶粒子径をそれぞれ異ならせたアルミナ質焼結体を製作し、その4点曲げ強度、ビッカース硬度、破壊靱性値、耐熱衝撃性について調べる実験を行った。
本実験に用いるアルミナ質焼結体は、出発原料として、平均粒径が1〜15μm、アルミナ純度が99.5%以上のアルミナ粉末と、平均粒径が0.6〜1.2μmのYAG粉末を用い、表1に示す割合で調合し、さらにイオン交換水とバインダーとしてワックスエマルジョン(ワックス+乳化剤)、PVA(ポリビニルアルコール)及びPEG(ポリエチレングリコール)を添加して混練乾燥させることにより造粒粉を作製した。
【0042】
次に、得られた造粒粉を金型内に充填し、プレス成形法にて直径60mm、厚さ5mmの円盤状をした成形体を製作し、しかる後、成形体を400℃で脱脂し、さらに大気雰囲気中にて1500〜1750℃の温度で5時間程度焼成することにより、試料としてのアルミナ質焼結体を得た。
【0043】
なお、同様の条件にて製作したもののアルミナ及びYAGの同定とその含有量を粉末X線回折法にて調べたところ、添加した時の含有量と同様の範囲内にあった。また、同様の条件にて製作したものを走査型電子顕微鏡にて観察し、アルミナ及びYAGの各平均結晶粒子径を画像解析装置(ルーゼックス)にて測定したところ、表1に示す通りであった。
【0044】
そして、得られた各試料の4点曲げ強度は、JIS R 1601 に準拠して測定し、その値が基準試料として用意したアルミナ質焼結体(アルミナ含有量99.5質量%)の4点曲げ強度より高いものを優れたものとし、○で示し、340MPa以上と高い曲げ強度を有するものを◎で示した。なお、×は本発明範囲外のものである。
【0045】
また、得られた各試料のビッカース硬度は、JIS R 1610 に準拠して測定し、その値が基準試料として用意したアルミナ質焼結体(アルミナ含有量99.5質量%)の4点曲げ強度より高いものを優れたものとした。
【0046】
さらに、得られた各試料の破壊靱性値は、JIS R 1607 に準拠して測定し、その値が2.0〜3.9MPa・√mの範囲内にあるものは加工性に優れるとともに、ハンドリングしても破損することがないため、優れたものとし、○で示し、特に2.3〜3.5MPa・√mの範囲内にあるものはさらに精度の点においても優れていることから、◎で示した。なお、×は本発明範囲外のものである。
【0047】
また、得られた各試料の耐熱衝撃性は、投下式水中急冷法に準拠し、水中投下した後に、4点曲げ強度を測定し、強度劣化した時の△Tが150℃以上であるものを良好とした。
【0048】
そして、4点曲げ強度、ビッカース硬度、破壊靱性値、耐熱衝撃性の全ての要件に対して優れている又は良好であったものを優れたものとした。
【0049】
なお、比較例としてYAG焼結体も用い、同様の条件にて測定を行った。
【0050】
それぞれの結果は表1に示す通りである。
【0051】
【表1】
【0052】
この結果、表1より判るように、アルミナを70〜95質量%、YAGを5〜30質量%含有し、アルミナの平均結晶粒子径が3〜7μm、YAGの平均結晶粒子径が1.8〜5μmで、かつYAGの平均結晶粒子径に対するアルミナの平均結晶粒子径の比を1より大きく、3.18以下である試料No.3〜8は、4点曲げ強度及びビッカース硬度の点で基準試料として用意した従来のアルミナ質焼結体よりも高強度、高硬度を有するとともに、破壊靱性値が2.3〜3.5MPa・√mと加工性に優れ、しかも耐熱衝撃性(ΔT)が160℃以上と全ての要件を満足することができ、優れていた。
【0053】
特に、試料No.5〜8は、4点曲げ強度が340MPa以上、ビッカース硬度が16GPaと非常に高い強度と硬度を有し、破壊靱性値が2.9MPa・√m以下と加工性だけでなく加工精度的にも優れ、しかも耐熱衝撃性(ΔT)が160℃以上と優れていた。
【0054】
(実施例2)次に、表1の試料No.2〜11に示す各試料を耐食性部材として用いた時のプラズマを発生させた塩素系ガス雰囲気下での耐食性について調べる実験を行った。具体的には、各試料の表面をラップ加工により鏡面とし、RIE(Reactive Ion Etching)装置にセットしてCl2ガス雰囲気下でプラズマ中に3時間曝し、その前後の質量の減少量から1分間当たりのエッチングレートを算出し、基準試料として用意したアルミナ質焼結体(アルミナ含有量99.5質量%)のエッチングレートを1としたときの相対比較値として求め、この相対比較値が1未満であるものを優れたものとした。
【0055】
結果は表2に示す通りである。
【0056】
【表2】
【0057】
この結果、いずれの試料も基準試料として用意したアルミナ質焼結体よりも腐食摩耗し難く、耐食性に優れていることが判る。
【0058】
この結果、本発明の快削性を有する高強度アルミナ質焼結体は、耐食性部材としても好適に用いることができることが判る。
【0059】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、アルミナを30〜95質量%、アルミニウム・イットリウム・ガーネットを5〜30質量%含有し、焼結体中における上記アルミナの平均結晶粒子径を3〜7μmとするとともに、上記アルミニウム・イットリウム・ガーネットの平均結晶粒子径を1.8〜5μmとし、かつ上記アルミニウム・イットリウム・ガーネットの平均結晶粒子径に対する上記アルミナの平均結晶粒子径の比を1より大きく、3.18以下として快削性に優れた高強度アルミナ質焼結体を形成したことから、YAGを含まないアルミナ質焼結体と比較して曲げ強度や硬度を向上させつつ、破壊靱性値を若干下げることができるため、高強度、高硬度でありながら、加工性に優れたものとすることができる。その為、大型の構造部材として用いたとしても十分な機械的強度を有しつつ、加工コストを下げることができ、しかも材料そのものが比較的安価なアルミナを主成分とするものであるから、構造部材を安価に提供することができる。
【0060】
また、本発明の快削性に優れた高強度アルミナ質焼結体は、フッ素系や塩素系等のハロゲン系腐食ガスやそのプラズマに対して優れた耐食性を有することから、耐食性部材として用いれば、長期間にわたって安定して使用することができる。
Claims (3)
- アルミナを70〜95質量%、アルミニウム・イットリウム・ガーネットを5〜30質量%含有する焼結体であって、該焼結体中における上記アルミナの平均結晶粒子径が3〜7μm、上記アルミニウム・イットリウム・ガーネットの平均結晶粒子径が1.8〜5μmで、かつ上記アルミニウム・イットリウム・ガーネットの平均結晶粒子径に対する上記アルミナの平均結晶粒子径の比が1より大きく、3.18以下であることを特徴とする快削性を有する高強度アルミナ質焼結体。
- 4点曲げ強度が340MPa以上であるとともに、破壊靱性値が2.9MPa・√m以下であることを特徴とする請求項1に記載の快削性を有する高強度アルミナ質焼結体。
- 請求項1又は請求項2に記載の快削性を有する高強度アルミナ質焼結体を用いたことを特徴とする耐食性部材。
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