JP2004075425A - 部分安定化ジルコニア焼結体 - Google Patents
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Abstract
【課題】高靭性でかつ耐摩耗性、耐衝撃性等の機械的性質の優れた新規なジルコニア焼結体の提供。
【解決手段】(イ)ZrO2結晶相が主として正方晶系ジルコニアと単斜晶系ジルコニアからなるZrO2−Y2O3系ジルコニア質焼結体であって、(ロ)単斜晶系ジルコニアが3〜20容積%であり、(ハ)Y2O3/ZrO2モル比が2.0/98.0〜4.0/96.0の範囲にあり、(ニ)Al2O3を0.01〜5.0重量%含有し、(ホ)前記ジルコニア質焼結体の平均結晶粒径が0.3μm以下、(ヘ)焼結体を鏡面に仕上げした表面の残留応力が50MPa以上であることを特徴とする部分安定化ジルコニア焼結体。
【選択図】 なし
【解決手段】(イ)ZrO2結晶相が主として正方晶系ジルコニアと単斜晶系ジルコニアからなるZrO2−Y2O3系ジルコニア質焼結体であって、(ロ)単斜晶系ジルコニアが3〜20容積%であり、(ハ)Y2O3/ZrO2モル比が2.0/98.0〜4.0/96.0の範囲にあり、(ニ)Al2O3を0.01〜5.0重量%含有し、(ホ)前記ジルコニア質焼結体の平均結晶粒径が0.3μm以下、(ヘ)焼結体を鏡面に仕上げした表面の残留応力が50MPa以上であることを特徴とする部分安定化ジルコニア焼結体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は機械的特性のすぐれる部分安定化ジルコニア焼結体に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、Y2O3含有強化ジルコニア(Y−TZP)は、粉砕用メディア、機械部品、光通信用フェルール、電子機器部材、軸受、生体材料、刃物など広範囲な分野で利用されている。
このY−TZPは応力誘起により正方晶系ジルコニアから単斜晶系ジルコニアへの相変態による高靭性材料であるが、耐摩耗性や耐衝撃性などの機械的特性を向上させるために結晶粒径を小さくすることが望ましいが、Y−TZPの場合、結晶粒径が小さくなると応力誘起相変態効果が小さくなり、靭性低下が起こる。以上のように高靭性かつ耐摩耗性、耐衝撃性等の機械的性質のよりすぐれたジルコニア焼結体が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高靭性でかつ耐摩耗性、耐衝撃性等の機械的性質の優れた新規なジルコニア焼結体に関する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意研究を重ねてきた結果、ZrO2粉末とY2O3粉末とを含むそれぞれの原料粉末を調合し、粉砕分散した粉末から作製したジルコニア質焼結体において、Y2O3/ZrO2モル比、Al2O3量、SiO2量、結晶粒径、結晶相をある範囲内に制御することにより、高強度、高靭性かつ耐摩耗性や耐衝撃性等の種々の機械的特性にすぐれることを見出し、ここに本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は(イ)ZrO2結晶相が主として正方晶系ジルコニアと単斜晶系ジルコニアからなるZrO2−Y2O3系ジルコニア質焼結体であって、(ロ)単斜晶系ジルコニアが3〜20容積%であり、(ハ)Y2O3/ZrO2モル比が2.0/98.0〜4.0/96.0の範囲にあり、(ニ)Al2O3を0.01〜5.0重量%含有し、(ホ)前記ジルコニア質焼結体の平均結晶粒径が0.3μm以下、(ヘ)焼結体を鏡面に仕上げした表面の残留応力が50MPa以上である、ことを特徴とする部分安定化ジルコニア焼結体に関する。
【0006】
以下に本発明の部分安定化ジルコニア焼結体が充足すべき各要件について詳細に説明する。
【0007】
(a)ZrO2結晶相が主として正方晶系ジルコニアと単斜晶系ジルコニアからなるZrO2−Y2O3系ジルコニア質焼結体である点について
従来、Y2O3−ZrO2系において、ジルコニア質焼結体に単斜晶系ジルコニアが含有されているとその結晶周辺に微細なクラックが生じ、応力が負荷されるとこの微細なクラックを起点として微小破壊が起こり、摩擦、衝撃、圧壊等に対する抵抗性が低下するので好ましくないとされている。しかしながら、本発明は、ジルコニア粉末、イットリア粉末、アルミナ粉末を調合し、粉砕分散した粉末から作製し得られた焼結体で、結晶粒径が微細で、微細組織レベルではイットリアが不均一に分散している。このような微細組織にすることにより単斜晶系ジルコニアを含有していても結晶周辺に微細なクラックが生じない。さらに単斜晶系ジルコニアは焼結体内部に大きな残留応力(圧縮応力)を存在させ、正方晶系ジルコニアは相変態強化に寄与する。さらに、大きな残留応力が存在するために相変態強化をより促進する効果がある。これら2つの効果により高強度、高靭性を実現させ、その結果、耐摩耗性、耐衝撃性等の種々の機械的特性を有しているものと推考されている。
【0008】
(b)単斜晶系ジルコニア量が3〜20容積%である点について
本発明においては単斜晶系ジルコニアを3〜20容積%含有する。より好ましくは3〜15容積%である。単斜晶系ジルコニアが3容積%未満の場合は、焼結体内部に存在する残留応力が小さくなり、靭性向上の低下をきたすので好ましくない。一方、単斜晶系ジルコニアが20容積%を越える場合には結晶周辺にマイクロクラックが発生しやすくなり、強度、靭性等の低下ならびに耐摩耗性、耐衝撃性等の低下をきたすので好ましくない。
なお、本発明では、ジルコニアの結晶相である単斜晶系ジルコニア(M)の存在の有無及び含有量、正方晶系ジルコニア(T)及び立方晶系ジルコニア(C)の量については以下の方法でX線回折により求める。即ち、焼結体及び加工した焼結体の表面は応力誘起相変態により正方晶系ジルコニアから単斜晶系ジルコニアに変態しており、真の結晶相を同定することができないので、焼結体断面を鏡面にまで表面変態層が残らないように研磨する。すなわち、320メッシュ以下の細かいダイヤモンド砥石で30μm以上研磨除去し、次ぎに6μmのダイヤモンドペーストを用いて10μm以上研磨除去し、その後、3μmのダイヤモンドペーストで10μm以上研磨仕上げする。得られた鏡面をX線回折により、回折角27〜34度の範囲で測定し、単斜晶系ジルコニアの有無及び含有量を下記で示した式から求める。
【数1】
また、正方晶系ジルコニア及び立方晶系ジルコニアは、単斜晶系ジルコニアの有無を確認した方法と同様にして、X線回折により、回折角70〜77度の範囲で測定し、次式により求める。
【数2】
なお、本発明においては上記X線回折から求まる立方晶系ジルコニアは20容積%、より好ましくは10容積%まで許容することができる。
【0009】
(c)Y2O3/ZrO2モル比が2.0/98.0〜4.0/96.0である点について
本発明におけるY2O3/ZrO2モル比は2.0/98.0〜4.0/96.0、より好ましくは2.3/97.7〜3.5/96.5の範囲である。
通常ジルコニア原料中に少量含有することのあるハフニアが混入していても良く、このハフニア量を含めたジルコニアとハフニアの合量をジルコニア量とする。Y2O3/ZrO2モル比が2.0/98.0未満の場合には焼結体中の単斜晶系ジルコニア量が増加し、焼結体内部にクラックが発生して、機械的特性の低下をきたすので好ましくない。一方、Y2O3/ZrO2モル比が4.0/96.0を越えると単斜晶系および正方晶系ジルコニア量が低下し、立方晶系ジルコニアが増加し、機械的特性が低下するので好ましくない。
なお、Y2O3添加量の30モル%まで他の希土類酸化物の1種または2種以上で置換したものも用いることができる。このような酸化物としては、CeO2、Nd2O3、Yb2O3、Dy2O3等の希土類が含有していても良い。これらの希土類の添加時期はイットリアの一部にかえて用いるものであるから、イットリア粉末の添加時に配合する。
【0010】
(d)Al2O3を0.01〜5.0重量%含有する点について
本発明のジルコニア焼結体におけるAl2O3含有量は、0.01〜5.0重量%、好ましくは0.05〜3.0重量%とする。Al2O3はジルコニア結晶粒界にAl2O3結晶粒子として存在するだけでなく、ジルコニア結晶粒界及び粒界に極近傍に偏析している。Al2O3の添加は焼結性の向上による焼成温度の低温化効果があるだけでなく、ジルコニア結晶粒界の強化効果があるので耐衝撃性等の機械的特性の向上に寄与する。Al2O3含有量が0.01重量%未満の場合は、Al2O3添加の効果がなく、5.0重量%を越える場合は、ジルコニア結晶粒界にAl2O3結晶粒子が多く存在することになり機械的性質の低下をきたすので好ましくない。
【0011】
(e)焼結体の平均結晶粒径が0.3μm以下である点について
本発明のジルコニア焼結体の平均結晶粒径は0.3μm以下、好ましくは0.25μm以下とする。下限は0.1μm程度である。本発明においては平均結晶粒径が0.3μm以下にすることにより単斜晶系ジルコニアが存在していてもマイクロクラックの発生がなく、焼結体内部に高い残留応力を存在させることができ、高強度および高靭性であり、耐摩耗性、耐衝撃性等の種々の機械的特性にすぐれたものとすることが可能となる。平均結晶粒径が0.3μmを越える場合には結晶周辺にマイクロクラックが発生しやすくなり、強度や靭性等の低下により耐摩耗性、耐衝撃性等の低下をきたすので好ましくない。
なお、平均結晶粒径は焼結体表面を鏡面まで研磨し、次いで熱エッチングもしくは化学エッチングを施した後、走査電子顕微鏡で観察してインターセプト法により10点測定した平均値とする。算出式は下記の通りである。
【数3】
D=1.5×L/n
D:平均結晶粒径(μm)
n:測定長さL当たりの結晶粒子数
L:測定長さ(μm)
【0012】
(f)焼結体表面を鏡面に仕上げた表面の残留応力が50MPa以上である点について
本発明のジルコニア焼結体の残留応力は50MPa以上、好ましくは70MPa以上である。残留応力が50MPa未満の場合は靭性の低下が起こり、それに伴って耐摩耗性、耐衝撃性等の種々の機械的性質の低下をきたすので好ましくない。残留応力の上限はほぼ250MPaである。
なお、本発明における残留応力の測定方法は下記の通りである。
残留応力の測定はX線回折法により行った。測定条件は測定角度:150〜157°、X線源:CrKα線(30kV、20mA)、測定面積:φ4mm、測定時間:1分で行い、解析条件はスムージング11点、半値幅中心法、応力定数を329.81MPaを用いて行った。なお、焼結体及び加工した焼結体の表面は応力誘起相変態により正方晶系ジルコニアから単斜晶系ジルコニアに変態しており、真の残留応力を測定することができないので、焼結体表面を鏡面にまで表面変態層が残らないように研磨する。すなわち、320メッシュ以下の細かいダイヤモンド砥石で30μm以上研磨除去し、次ぎに6μmのダイヤモンドペーストを用いて10μm以上研磨除去し、その後、3μmのダイヤモンドペーストで10μm以上研磨仕上げする。
【0013】
(g)焼結体の相対密度が94%以上である点について
本発明のジルコニア焼結体の相対密度は94%以上、より好ましくは97%以上である。相対密度が94%未満の場合は、耐摩耗性および機械的性質の低下をきたすので好ましくない。相対密度は当然上限は100%であるが、現実には99%程度が上限である。
なお、理論密度は単斜晶系ジルコニアの理論密度を5.6g/cm3、正方晶系及び立方晶系ジルコニアの理論密度を6.1g/cm3として算出した値から相対密度を求めることとする。
【0014】
(h)SiO2を1.5重量%以下含有である点について
本発明のジルコニア焼結体におけるSiO2は1.5重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下とする。下限はほぼ0.01重量%である。SiO2はジルコニア結晶粒界近傍に偏析しており、SiO2がジルコニア結晶粒界に存在することにより応力腐食を抑制し、さらに、ジルコニア結晶粒界結合を強くする効果があるため、特に負荷のかかった場合の耐久性向上に効果がある。SiO2が1.5重量%を越えるとジルコニア結晶粒界に非晶質相及びガラス相が多く形成され、ジルコニア結晶粒界結合を低下させ、応力腐食が進みやすくなるため機械的特性及び耐久性の低下を招くので好ましくない。
【0015】
本発明の部分安定性化ジルコニア焼結体の製造方法は、従来のジルコニア焼結体(Y−TZP)の製造方法と異なるものである。そこで、まず従来のジルコニア焼結体の製造方法と何故そのような方法が採用されていたかについて以下に説明する。
【0016】
従来のY2O3−ZrO2系ジルコニア焼結体の原料は液相法より作製している。
この液相法とはイットリウム溶液とジルコニウム溶液を混ぜて、加水分解あるいは中和反応などによって水和ジルコニウムまたは水酸化ジルコニウムを作製し、合成してイットリアを固溶させた原料粉体である。この方法で作製したジルコニア粉体は各ジルコニア粉体粒子の中に固溶しているイットリア量が均一に分布している。
何故、このような方法で作製した原料粉体が使用されてきているかは下記の理由による。
【0017】
その理由は、現状の技術では、ジルコニア粉末とイットリア粉末との混合物を焼成して得られた焼結体は、ジルコニア結晶粒子中にイットリアが多く固溶したところとそうでないところが生じ、全体として不均一性が高くなって、単斜晶系ジルコニア量が多く存在することになるからである。
この単斜晶系ジルコニアは高温下(焼成温度域)では正方晶系ジルコニアになっているが、イットリアが固溶できていないため、冷却中に単斜晶系ジルコニアへ変態する。この変態時に多数のクラックが発生し、亀裂を生じるなどの問題がおきる。そのためイットリアを均一にジルコニアに混ぜるために液相法が採用されている。
【0018】
これに対して、本発明の部分安定化ジルコニア焼結体を製造する方法は、従来の液相法により作製されたジルコニア原料粉末と異なり、ジルコニアとイットリア原料粉末を均一に粉砕分散させることにより、ジルコニア粉体中にはイットリアが分散しているが、この粉体を成形して焼成すると、得られた焼結体は液相法により得られたものに較べて明らかに、1個1個のジルコニア結晶粒子中に含有するイットリア量が不均一になっている点が特徴的である。
【0019】
つぎに、本発明の部分安定化ジルコニア焼結体の製造方法について説明する。本発明では平均粒子径が10μm以下(下限は現実には0.3μm程度である)、比表面積が6〜20m2/g、純度99.5%、より好ましくは99.7%以上からなるジルコニア及びイットリア粉末を用いることが必要である。さらにジルコニア粉末は液相法により精製された粉末を用いることが望ましい。本発明の部分安定化ジルコニア焼結体を製造するためにはジルコニア粉末とイットリア粉末を粉砕分散して、焼成時にイットリア粉末粒子がジルコニア粉末粒子に固溶しながら焼結することで非常に特徴のある微構造を有するものとすることができる。ジルコニア粉末とイットリア粉末が所定のY2O3/ZrO2モル比になるように配合し、さらにAl2O3を加え、場合によってはSiO2を所定量添加し、湿式で均一に粉砕分散し、平均粒子径0.5μm以下、好ましくは0.4μm以下、比表面積7〜25m2/g、好ましくは8〜20m2/gにする。得られた成形粉体粒度は平均粒子径0.5μm以下、より好ましくは0.4μm以下(下限はほぼ0.2μm程度が実情である)であることが望ましい。成形粉体粒度が0.5μmを越える場合には、十分に焼結しても焼結体内部に欠陥が多く存在するため、耐摩耗性、耐衝撃性等の低下が起こるので好ましくない。添加するAl2O3及びSiO2は水酸化物、炭化物及び酸化物等の形態で添加しても良い。得られたスラリーに必要により公知のバインダー(ワックスエマルジョン、PVA、アクリル系樹脂等)を加え、スプレードライヤー等の公知の方法で乾燥させて成形用粉体を得る。
得られた成形用粉体は、公知の成形方法、例えばプレス成形、ラバープレス成形等の方法による成形方法で十分に本発明の焼結体を得ることができる。また水を含有させた有機溶媒、可溶性高分子または水などを成形助剤として湿式または液中にて成形する方法であっても良い。
次いで得られた成形体を1200〜1480℃、好ましくは1280〜1450℃で焼成することによって焼結体を得る。さらに必要に応じてHIP(Hotisostatic press)処理を施すことにより摩擦、衝撃、圧壊等に対する抵抗性を高くすることができ、機械的特性の向上が可能となる。HIP処理は常圧焼結後、ArやN2などの不活性雰囲気またはO2雰囲気下で1350℃以下で行うことが好ましい。O2雰囲気下でのHIPはArなどの不活性ガス中にO2濃度が20体積%以下、より好ましくは15体積%以下にして行うことが好ましい。
【0020】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0021】
実施例1
平均粒子径が6μm、比表面積が10m2/gからなるジルコニア粉末および平均粒子径が7μm、比表面積が11m2/gからなるイットリア粉末を用い、所定のY2O3/ZrO2モル比になるように配合し、さらに平均粒子径が0.5μm、比表面積が8m2/gのアルミナを所定量添加した。また、SiO2を添加する場合は焼結体中に所定量のSiO2になるように、エチルシリケートを添加し、湿式で粉砕分散した。なお、比較例試料No.6のみは平均粒子径が8μm、比表面積が4m2/gからなるジルコニア粉末と平均粒子径が11μm、比表面積が5m2/gからなるイットリア粉末を用いた。さらに、比較例試料No.3は加水分解法により作製したイットリア固溶ジルコニア粉末を用いた。得られたスラリーを乾燥、整粒し、成形用粉体とした。この成形用粉体をCIP1tonf/cm2成形し、1150〜1500℃で1時間焼成して、50×50×5mmの焼結体を得た。なお、実施例試料No.4および比較例試料No.3は各々1350℃および1390℃で1時間保持の条件でHIP処理した。得られた焼結体を切断・研削加工してJIS1601に準拠した曲げ強さ測定用テストピースを作製した。作製したテストピースを用いて、JIS1601およびJIS1607に準拠した3点曲げ強さおよび破壊靭性(SEPB法)の測定を行った。これらの試料の特性を表1、表2に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
実施例2
耐摩耗性試験として実施例試料No.1、3および比較例試料No.4、5で得られた成形粉体を用いて転動造粒成形法により球状に成形した。得られた成形体を実施例1と同様に焼成し、直径3mmの球状の焼結体を得た。得られた直径3mmの球状の焼結体はバレル研磨して粉砕用ボールとした。
得られた粉砕用ボールを下記の測定方法により摩耗率を求めた。粉砕機として三井三池製アトライター(MA−01S)を用い、容量650mlのジルコニア製〔(株)ニッカトー製YTZ〕タンク中にボール表面をバレル研磨したφ3mmの粉砕用ボールを400ml投入し、300mlの水を入れてジルコニア製〔(株)ニッカトー製YTZ〕アームにて回転数400rpmで24時間を1サイクルとし、10サイクル運転するテストを行い各サイクル毎の単位時間あたりの摩耗率を下式により求めた。
【数4】
摩耗率={〔(Wb−Wa)/Wb〕×100}/24
(Wa:テスト後のボール重量 Wb:テスト前のボール重量)
サイクル毎の各試料の摩耗率の最大値を表3に示す。
【0025】
【表3】
以上のように本発明の部分安定化ジルコニア焼結体はすぐれた耐摩耗性と高靭性からなるジルコニア焼結体であり、従来の液相法より作製した焼結体(比較例)に比し、結晶粒径が小さく、かつ高い強度と靭性を同時に満足し、その結果、耐摩耗性、耐衝撃性等すぐれることが明かである。
【0026】
【発明の効果】
本発明による高耐摩耗性ジルコニア焼結体は、高強度、高靭性を有し、すぐれた耐摩耗性、耐衝撃性等の種々の機械的性質を有しているため、粉砕機用部材、産業用耐摩耗構造材のみならず、生体材料、光ファイバー用コネクター等の電子及び通信機器部品などの現在のY−TZP向けの用途などに対して広く利用できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は機械的特性のすぐれる部分安定化ジルコニア焼結体に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、Y2O3含有強化ジルコニア(Y−TZP)は、粉砕用メディア、機械部品、光通信用フェルール、電子機器部材、軸受、生体材料、刃物など広範囲な分野で利用されている。
このY−TZPは応力誘起により正方晶系ジルコニアから単斜晶系ジルコニアへの相変態による高靭性材料であるが、耐摩耗性や耐衝撃性などの機械的特性を向上させるために結晶粒径を小さくすることが望ましいが、Y−TZPの場合、結晶粒径が小さくなると応力誘起相変態効果が小さくなり、靭性低下が起こる。以上のように高靭性かつ耐摩耗性、耐衝撃性等の機械的性質のよりすぐれたジルコニア焼結体が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高靭性でかつ耐摩耗性、耐衝撃性等の機械的性質の優れた新規なジルコニア焼結体に関する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意研究を重ねてきた結果、ZrO2粉末とY2O3粉末とを含むそれぞれの原料粉末を調合し、粉砕分散した粉末から作製したジルコニア質焼結体において、Y2O3/ZrO2モル比、Al2O3量、SiO2量、結晶粒径、結晶相をある範囲内に制御することにより、高強度、高靭性かつ耐摩耗性や耐衝撃性等の種々の機械的特性にすぐれることを見出し、ここに本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は(イ)ZrO2結晶相が主として正方晶系ジルコニアと単斜晶系ジルコニアからなるZrO2−Y2O3系ジルコニア質焼結体であって、(ロ)単斜晶系ジルコニアが3〜20容積%であり、(ハ)Y2O3/ZrO2モル比が2.0/98.0〜4.0/96.0の範囲にあり、(ニ)Al2O3を0.01〜5.0重量%含有し、(ホ)前記ジルコニア質焼結体の平均結晶粒径が0.3μm以下、(ヘ)焼結体を鏡面に仕上げした表面の残留応力が50MPa以上である、ことを特徴とする部分安定化ジルコニア焼結体に関する。
【0006】
以下に本発明の部分安定化ジルコニア焼結体が充足すべき各要件について詳細に説明する。
【0007】
(a)ZrO2結晶相が主として正方晶系ジルコニアと単斜晶系ジルコニアからなるZrO2−Y2O3系ジルコニア質焼結体である点について
従来、Y2O3−ZrO2系において、ジルコニア質焼結体に単斜晶系ジルコニアが含有されているとその結晶周辺に微細なクラックが生じ、応力が負荷されるとこの微細なクラックを起点として微小破壊が起こり、摩擦、衝撃、圧壊等に対する抵抗性が低下するので好ましくないとされている。しかしながら、本発明は、ジルコニア粉末、イットリア粉末、アルミナ粉末を調合し、粉砕分散した粉末から作製し得られた焼結体で、結晶粒径が微細で、微細組織レベルではイットリアが不均一に分散している。このような微細組織にすることにより単斜晶系ジルコニアを含有していても結晶周辺に微細なクラックが生じない。さらに単斜晶系ジルコニアは焼結体内部に大きな残留応力(圧縮応力)を存在させ、正方晶系ジルコニアは相変態強化に寄与する。さらに、大きな残留応力が存在するために相変態強化をより促進する効果がある。これら2つの効果により高強度、高靭性を実現させ、その結果、耐摩耗性、耐衝撃性等の種々の機械的特性を有しているものと推考されている。
【0008】
(b)単斜晶系ジルコニア量が3〜20容積%である点について
本発明においては単斜晶系ジルコニアを3〜20容積%含有する。より好ましくは3〜15容積%である。単斜晶系ジルコニアが3容積%未満の場合は、焼結体内部に存在する残留応力が小さくなり、靭性向上の低下をきたすので好ましくない。一方、単斜晶系ジルコニアが20容積%を越える場合には結晶周辺にマイクロクラックが発生しやすくなり、強度、靭性等の低下ならびに耐摩耗性、耐衝撃性等の低下をきたすので好ましくない。
なお、本発明では、ジルコニアの結晶相である単斜晶系ジルコニア(M)の存在の有無及び含有量、正方晶系ジルコニア(T)及び立方晶系ジルコニア(C)の量については以下の方法でX線回折により求める。即ち、焼結体及び加工した焼結体の表面は応力誘起相変態により正方晶系ジルコニアから単斜晶系ジルコニアに変態しており、真の結晶相を同定することができないので、焼結体断面を鏡面にまで表面変態層が残らないように研磨する。すなわち、320メッシュ以下の細かいダイヤモンド砥石で30μm以上研磨除去し、次ぎに6μmのダイヤモンドペーストを用いて10μm以上研磨除去し、その後、3μmのダイヤモンドペーストで10μm以上研磨仕上げする。得られた鏡面をX線回折により、回折角27〜34度の範囲で測定し、単斜晶系ジルコニアの有無及び含有量を下記で示した式から求める。
【数1】
また、正方晶系ジルコニア及び立方晶系ジルコニアは、単斜晶系ジルコニアの有無を確認した方法と同様にして、X線回折により、回折角70〜77度の範囲で測定し、次式により求める。
【数2】
なお、本発明においては上記X線回折から求まる立方晶系ジルコニアは20容積%、より好ましくは10容積%まで許容することができる。
【0009】
(c)Y2O3/ZrO2モル比が2.0/98.0〜4.0/96.0である点について
本発明におけるY2O3/ZrO2モル比は2.0/98.0〜4.0/96.0、より好ましくは2.3/97.7〜3.5/96.5の範囲である。
通常ジルコニア原料中に少量含有することのあるハフニアが混入していても良く、このハフニア量を含めたジルコニアとハフニアの合量をジルコニア量とする。Y2O3/ZrO2モル比が2.0/98.0未満の場合には焼結体中の単斜晶系ジルコニア量が増加し、焼結体内部にクラックが発生して、機械的特性の低下をきたすので好ましくない。一方、Y2O3/ZrO2モル比が4.0/96.0を越えると単斜晶系および正方晶系ジルコニア量が低下し、立方晶系ジルコニアが増加し、機械的特性が低下するので好ましくない。
なお、Y2O3添加量の30モル%まで他の希土類酸化物の1種または2種以上で置換したものも用いることができる。このような酸化物としては、CeO2、Nd2O3、Yb2O3、Dy2O3等の希土類が含有していても良い。これらの希土類の添加時期はイットリアの一部にかえて用いるものであるから、イットリア粉末の添加時に配合する。
【0010】
(d)Al2O3を0.01〜5.0重量%含有する点について
本発明のジルコニア焼結体におけるAl2O3含有量は、0.01〜5.0重量%、好ましくは0.05〜3.0重量%とする。Al2O3はジルコニア結晶粒界にAl2O3結晶粒子として存在するだけでなく、ジルコニア結晶粒界及び粒界に極近傍に偏析している。Al2O3の添加は焼結性の向上による焼成温度の低温化効果があるだけでなく、ジルコニア結晶粒界の強化効果があるので耐衝撃性等の機械的特性の向上に寄与する。Al2O3含有量が0.01重量%未満の場合は、Al2O3添加の効果がなく、5.0重量%を越える場合は、ジルコニア結晶粒界にAl2O3結晶粒子が多く存在することになり機械的性質の低下をきたすので好ましくない。
【0011】
(e)焼結体の平均結晶粒径が0.3μm以下である点について
本発明のジルコニア焼結体の平均結晶粒径は0.3μm以下、好ましくは0.25μm以下とする。下限は0.1μm程度である。本発明においては平均結晶粒径が0.3μm以下にすることにより単斜晶系ジルコニアが存在していてもマイクロクラックの発生がなく、焼結体内部に高い残留応力を存在させることができ、高強度および高靭性であり、耐摩耗性、耐衝撃性等の種々の機械的特性にすぐれたものとすることが可能となる。平均結晶粒径が0.3μmを越える場合には結晶周辺にマイクロクラックが発生しやすくなり、強度や靭性等の低下により耐摩耗性、耐衝撃性等の低下をきたすので好ましくない。
なお、平均結晶粒径は焼結体表面を鏡面まで研磨し、次いで熱エッチングもしくは化学エッチングを施した後、走査電子顕微鏡で観察してインターセプト法により10点測定した平均値とする。算出式は下記の通りである。
【数3】
D=1.5×L/n
D:平均結晶粒径(μm)
n:測定長さL当たりの結晶粒子数
L:測定長さ(μm)
【0012】
(f)焼結体表面を鏡面に仕上げた表面の残留応力が50MPa以上である点について
本発明のジルコニア焼結体の残留応力は50MPa以上、好ましくは70MPa以上である。残留応力が50MPa未満の場合は靭性の低下が起こり、それに伴って耐摩耗性、耐衝撃性等の種々の機械的性質の低下をきたすので好ましくない。残留応力の上限はほぼ250MPaである。
なお、本発明における残留応力の測定方法は下記の通りである。
残留応力の測定はX線回折法により行った。測定条件は測定角度:150〜157°、X線源:CrKα線(30kV、20mA)、測定面積:φ4mm、測定時間:1分で行い、解析条件はスムージング11点、半値幅中心法、応力定数を329.81MPaを用いて行った。なお、焼結体及び加工した焼結体の表面は応力誘起相変態により正方晶系ジルコニアから単斜晶系ジルコニアに変態しており、真の残留応力を測定することができないので、焼結体表面を鏡面にまで表面変態層が残らないように研磨する。すなわち、320メッシュ以下の細かいダイヤモンド砥石で30μm以上研磨除去し、次ぎに6μmのダイヤモンドペーストを用いて10μm以上研磨除去し、その後、3μmのダイヤモンドペーストで10μm以上研磨仕上げする。
【0013】
(g)焼結体の相対密度が94%以上である点について
本発明のジルコニア焼結体の相対密度は94%以上、より好ましくは97%以上である。相対密度が94%未満の場合は、耐摩耗性および機械的性質の低下をきたすので好ましくない。相対密度は当然上限は100%であるが、現実には99%程度が上限である。
なお、理論密度は単斜晶系ジルコニアの理論密度を5.6g/cm3、正方晶系及び立方晶系ジルコニアの理論密度を6.1g/cm3として算出した値から相対密度を求めることとする。
【0014】
(h)SiO2を1.5重量%以下含有である点について
本発明のジルコニア焼結体におけるSiO2は1.5重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下とする。下限はほぼ0.01重量%である。SiO2はジルコニア結晶粒界近傍に偏析しており、SiO2がジルコニア結晶粒界に存在することにより応力腐食を抑制し、さらに、ジルコニア結晶粒界結合を強くする効果があるため、特に負荷のかかった場合の耐久性向上に効果がある。SiO2が1.5重量%を越えるとジルコニア結晶粒界に非晶質相及びガラス相が多く形成され、ジルコニア結晶粒界結合を低下させ、応力腐食が進みやすくなるため機械的特性及び耐久性の低下を招くので好ましくない。
【0015】
本発明の部分安定性化ジルコニア焼結体の製造方法は、従来のジルコニア焼結体(Y−TZP)の製造方法と異なるものである。そこで、まず従来のジルコニア焼結体の製造方法と何故そのような方法が採用されていたかについて以下に説明する。
【0016】
従来のY2O3−ZrO2系ジルコニア焼結体の原料は液相法より作製している。
この液相法とはイットリウム溶液とジルコニウム溶液を混ぜて、加水分解あるいは中和反応などによって水和ジルコニウムまたは水酸化ジルコニウムを作製し、合成してイットリアを固溶させた原料粉体である。この方法で作製したジルコニア粉体は各ジルコニア粉体粒子の中に固溶しているイットリア量が均一に分布している。
何故、このような方法で作製した原料粉体が使用されてきているかは下記の理由による。
【0017】
その理由は、現状の技術では、ジルコニア粉末とイットリア粉末との混合物を焼成して得られた焼結体は、ジルコニア結晶粒子中にイットリアが多く固溶したところとそうでないところが生じ、全体として不均一性が高くなって、単斜晶系ジルコニア量が多く存在することになるからである。
この単斜晶系ジルコニアは高温下(焼成温度域)では正方晶系ジルコニアになっているが、イットリアが固溶できていないため、冷却中に単斜晶系ジルコニアへ変態する。この変態時に多数のクラックが発生し、亀裂を生じるなどの問題がおきる。そのためイットリアを均一にジルコニアに混ぜるために液相法が採用されている。
【0018】
これに対して、本発明の部分安定化ジルコニア焼結体を製造する方法は、従来の液相法により作製されたジルコニア原料粉末と異なり、ジルコニアとイットリア原料粉末を均一に粉砕分散させることにより、ジルコニア粉体中にはイットリアが分散しているが、この粉体を成形して焼成すると、得られた焼結体は液相法により得られたものに較べて明らかに、1個1個のジルコニア結晶粒子中に含有するイットリア量が不均一になっている点が特徴的である。
【0019】
つぎに、本発明の部分安定化ジルコニア焼結体の製造方法について説明する。本発明では平均粒子径が10μm以下(下限は現実には0.3μm程度である)、比表面積が6〜20m2/g、純度99.5%、より好ましくは99.7%以上からなるジルコニア及びイットリア粉末を用いることが必要である。さらにジルコニア粉末は液相法により精製された粉末を用いることが望ましい。本発明の部分安定化ジルコニア焼結体を製造するためにはジルコニア粉末とイットリア粉末を粉砕分散して、焼成時にイットリア粉末粒子がジルコニア粉末粒子に固溶しながら焼結することで非常に特徴のある微構造を有するものとすることができる。ジルコニア粉末とイットリア粉末が所定のY2O3/ZrO2モル比になるように配合し、さらにAl2O3を加え、場合によってはSiO2を所定量添加し、湿式で均一に粉砕分散し、平均粒子径0.5μm以下、好ましくは0.4μm以下、比表面積7〜25m2/g、好ましくは8〜20m2/gにする。得られた成形粉体粒度は平均粒子径0.5μm以下、より好ましくは0.4μm以下(下限はほぼ0.2μm程度が実情である)であることが望ましい。成形粉体粒度が0.5μmを越える場合には、十分に焼結しても焼結体内部に欠陥が多く存在するため、耐摩耗性、耐衝撃性等の低下が起こるので好ましくない。添加するAl2O3及びSiO2は水酸化物、炭化物及び酸化物等の形態で添加しても良い。得られたスラリーに必要により公知のバインダー(ワックスエマルジョン、PVA、アクリル系樹脂等)を加え、スプレードライヤー等の公知の方法で乾燥させて成形用粉体を得る。
得られた成形用粉体は、公知の成形方法、例えばプレス成形、ラバープレス成形等の方法による成形方法で十分に本発明の焼結体を得ることができる。また水を含有させた有機溶媒、可溶性高分子または水などを成形助剤として湿式または液中にて成形する方法であっても良い。
次いで得られた成形体を1200〜1480℃、好ましくは1280〜1450℃で焼成することによって焼結体を得る。さらに必要に応じてHIP(Hotisostatic press)処理を施すことにより摩擦、衝撃、圧壊等に対する抵抗性を高くすることができ、機械的特性の向上が可能となる。HIP処理は常圧焼結後、ArやN2などの不活性雰囲気またはO2雰囲気下で1350℃以下で行うことが好ましい。O2雰囲気下でのHIPはArなどの不活性ガス中にO2濃度が20体積%以下、より好ましくは15体積%以下にして行うことが好ましい。
【0020】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0021】
実施例1
平均粒子径が6μm、比表面積が10m2/gからなるジルコニア粉末および平均粒子径が7μm、比表面積が11m2/gからなるイットリア粉末を用い、所定のY2O3/ZrO2モル比になるように配合し、さらに平均粒子径が0.5μm、比表面積が8m2/gのアルミナを所定量添加した。また、SiO2を添加する場合は焼結体中に所定量のSiO2になるように、エチルシリケートを添加し、湿式で粉砕分散した。なお、比較例試料No.6のみは平均粒子径が8μm、比表面積が4m2/gからなるジルコニア粉末と平均粒子径が11μm、比表面積が5m2/gからなるイットリア粉末を用いた。さらに、比較例試料No.3は加水分解法により作製したイットリア固溶ジルコニア粉末を用いた。得られたスラリーを乾燥、整粒し、成形用粉体とした。この成形用粉体をCIP1tonf/cm2成形し、1150〜1500℃で1時間焼成して、50×50×5mmの焼結体を得た。なお、実施例試料No.4および比較例試料No.3は各々1350℃および1390℃で1時間保持の条件でHIP処理した。得られた焼結体を切断・研削加工してJIS1601に準拠した曲げ強さ測定用テストピースを作製した。作製したテストピースを用いて、JIS1601およびJIS1607に準拠した3点曲げ強さおよび破壊靭性(SEPB法)の測定を行った。これらの試料の特性を表1、表2に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
実施例2
耐摩耗性試験として実施例試料No.1、3および比較例試料No.4、5で得られた成形粉体を用いて転動造粒成形法により球状に成形した。得られた成形体を実施例1と同様に焼成し、直径3mmの球状の焼結体を得た。得られた直径3mmの球状の焼結体はバレル研磨して粉砕用ボールとした。
得られた粉砕用ボールを下記の測定方法により摩耗率を求めた。粉砕機として三井三池製アトライター(MA−01S)を用い、容量650mlのジルコニア製〔(株)ニッカトー製YTZ〕タンク中にボール表面をバレル研磨したφ3mmの粉砕用ボールを400ml投入し、300mlの水を入れてジルコニア製〔(株)ニッカトー製YTZ〕アームにて回転数400rpmで24時間を1サイクルとし、10サイクル運転するテストを行い各サイクル毎の単位時間あたりの摩耗率を下式により求めた。
【数4】
摩耗率={〔(Wb−Wa)/Wb〕×100}/24
(Wa:テスト後のボール重量 Wb:テスト前のボール重量)
サイクル毎の各試料の摩耗率の最大値を表3に示す。
【0025】
【表3】
以上のように本発明の部分安定化ジルコニア焼結体はすぐれた耐摩耗性と高靭性からなるジルコニア焼結体であり、従来の液相法より作製した焼結体(比較例)に比し、結晶粒径が小さく、かつ高い強度と靭性を同時に満足し、その結果、耐摩耗性、耐衝撃性等すぐれることが明かである。
【0026】
【発明の効果】
本発明による高耐摩耗性ジルコニア焼結体は、高強度、高靭性を有し、すぐれた耐摩耗性、耐衝撃性等の種々の機械的性質を有しているため、粉砕機用部材、産業用耐摩耗構造材のみならず、生体材料、光ファイバー用コネクター等の電子及び通信機器部品などの現在のY−TZP向けの用途などに対して広く利用できる。
Claims (3)
- (イ)ZrO2結晶相が主として正方晶系ジルコニアと単斜晶系ジルコニアからなるZrO2−Y2O3系ジルコニア質焼結体であって、(ロ)単斜晶系ジルコニアが3〜20容積%であり、(ハ)Y2O3/ZrO2モル比が2.0/98.0〜4.0/96.0の範囲にあり、(ニ)Al2O3を0.01〜5.0重量%含有し、(ホ)前記ジルコニア質焼結体の平均結晶粒径が0.3μm以下、(ヘ)焼結体を鏡面に仕上げした表面の残留応力が50MPa以上である、ことを特徴とする部分安定化ジルコニア焼結体。
- 焼結体の相対密度が94%以上である請求項1記載の部分安定化ジルコニア焼結体。
- SiO2を1.5重量%以下含有している請求項1または2記載の部分安定化ジルコニア焼結体。
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