JP4887658B2 - 断熱体 - Google Patents

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Description

本発明は、芯材と気体吸着材とをガスバリア性を有する外被材で覆って前記外被材の内部を減圧してなる断熱体に関するものである。
近年、地球環境問題である温暖化を防止することの重要性から、省エネルギー化が望まれており、民生用機器に対しても省エネルギーの推進が行われている。特に冷凍冷蔵庫に関しては、冷熱を効率的に利用するという観点から、優れた断熱性を有する断熱材が求められている。
このような課題を解決する一手段として、空間を保持する芯材と、空間と外気を遮断する外被材によって構成される真空断熱体がある。その芯材として、一般に、粉体材料、繊維材料、連通化した発泡体などが用いられているが、近年では、真空断熱体への要求が多岐にわたってきており、一層高性能な真空断熱体が求められている。
真空断熱体の断熱原理は、熱を伝える空気を可能な限り排除し、気体による熱伝導を低減することである。従って、真空断熱体の断熱性能を向上するためには、内部圧力をより低圧とし、分子の衝突による気体熱伝導を抑制する必要がある。しかしながら、工業的レベルで実用的に達成可能な真空度は0.1torr程度であり、これ以上の高真空にすることは困難である。
また、真空断熱体内部から発生するガスや、外部から経時的に真空断熱体へ透過侵入してくる空気成分も真空断熱体の経時的な断熱性能の劣化を招く要因となる。よって、これらの気体、すなわち空気中の窒素および酸素、水分、水素を吸着除去することにより、初期断熱性能を向上し、経時的な断熱性能を維持することが可能となる。
また、これらの気体の吸着は、非可逆であることが要求されるため、物理吸着は不適であり、より強固な結合を形成する化学吸着が望ましい。しかしながら、空気の80%をしめる窒素は、安定な三重結合を有するため、化学吸着は非常に困難である。
例えば、希ガス中に不純物として含まれる窒素、あるいは炭化水素などを除去するものとしては、ジルコニウム、バナジウム及びタングステンからなる三元合金のゲッター材がある(例えば、特許文献1参照)。
上記三元合金は、100〜600℃の温度で、微量の不純物を含む希ガスと接触させることにより、希ガスから窒素等の不純物を除去するものである。
また、窒素に対して高ガス吸着効率を備える無蒸発ゲッター合金としては、ジルコニウム、鉄、マンガン、イットリウム、ランタンと、希土類元素の1種の元素を含む合金ある(例えば、特許文献2参照)。
上記の窒素に対して高ガス吸着効率を備える無蒸発ゲッター合金は、300〜500℃の間の温度で10〜20分間活性化処理を行うことにより、水素、炭化水素、窒素等の吸着に対して、室温でも作用することができるものである。
また、低温で窒素を除去する合金としては、Ba−Li合金がある(例えば、特許文献3参照)。
Ba−Li合金は、乾燥材と一緒に、断熱ジャケット内の真空を維持するためのデバイスとして使用され、室温においても窒素等のガスに対して反応性を示す。
また、精製対象ガスから窒素などの不純物ガスを除去するものとしては、銅イオン交換したZMS−5型ゼオライトからなる吸着材がある(例えば、特許文献4参照)。
これは、従来既存のイオン交換方法によって、ZMS−5型ゼオライトに銅イオンを導入し、熱処理を行うことによって、窒素吸着活性を付与するものであり、平衡圧力10Paにおける最大窒素吸着量は、0.238mol/kg(5.33cc/g)にて報告されている。
特開平6−135707号公報 特表2003−535218号公報 特表平9−512088号公報 特開2003―311148号公報
しかしながら、特許文献1に記載の吸着材では、300〜500℃で加熱し続けることが必要であり、高温での加熱であるため、エネルギーコストが大きく環境にも悪く、また、低温でのガス吸着を望む場合は使用できない。
また、特許文献2に記載の吸着材では、300〜500℃の前処理が必要であり、高温での前処理が困難な場合のガス除去、例えばプラスチック袋中のガスを常温下で除去することは困難である。
また、特許文献3に記載の吸着材では、活性化のための熱処理を必要とせず常温で窒素吸着可能であるが、そのため、取り扱い時に空気中の水分、窒素などと反応してしまうという問題がある。そして、一旦反応すると不可逆反応であるために、必要時までいかに活性を保持するか、取り扱い性が課題である。
また、合金材料であるためにゲッター自身の熱伝導率が高く、ゲッターを適用することにより断熱性能の悪化する部位が生じることとなる。
また、窒素吸着に対するさらなる大容量化が望まれていると共に、BaはPRTR指定物質であるため、工業的に使用するには環境や人体に対して問題のないものが望まれている。
また、特許文献4に記載の吸着材では、常温で窒素などの気体吸着が可能であるが、より大容量で気体吸着可能な吸着材が望まれている。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、気体吸着活性が高く、特に窒素に対する吸着容量の高い銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを得ることにより、常温常圧、あるいは常温減圧下でも大容量の気体を吸着可能な気体吸着材を備えた、高性能な断熱材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の断熱体は、芯材と気体吸着材とをガスバリア性を有する外被材で覆って前記外被材の内部を減圧してなる断熱体であって、前記気体吸着材が、少なくとも、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる気体吸着材であって、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうち、少なくとも73%以上の銅サイトが、銅1価サイトであり、銅1価サイトのうち、少なくとも84%以上が酸素三配位の銅1価サイトであることを特徴とするものである。
本発明で用いる気体吸着材は、従来の既存の気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を吸着、固定化できるため、工業的真空排気プロセスで除去しきれない窒素等および経時的に侵入する窒素等を吸着固定化する。
その結果、外被材の内部空間の到達圧力が、真空ポンプのみを使用した際より低減し、断熱体の断熱性能の向上を図ることができるため、優れた断熱性能を有する高性能な断熱体を提供することができるものである。
本発明の断熱体で用いる気体吸着材は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうち、少なくとも73%以上の銅サイトを、銅1価サイトとし、銅1価サイトのうち、少なくとも84%以上が酸素三配位の銅1価サイトとしたことにより、従来の既存の気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を吸着、固定化できるため、工業的真空排気プロセスで除去しきれない窒素等および経時的に侵入する窒素等を吸着固定化する。
その結果、外被材の内部空間の到達圧力が、真空ポンプのみを使用した際より低減し、断熱体の断熱性能の向上を図ることができるため、優れた断熱性能を有する高性能な断熱体を提供することができる。
請求項1に記載の断熱体の発明は、芯材と気体吸着材とをガスバリア性を有する外被材で覆って前記外被材の内部を減圧してなる断熱体であって、前記気体吸着材が、少なくとも、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる気体吸着材であって、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうち、少なくとも73%以上の銅サイトが、銅1価サイトであり、銅1価サイトのうち、少なくとも84%以上が酸素三配位の銅1価サイトであることを特徴とするものである。
従来より、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトが、窒素を化学吸着可能であることは知られている。これまでに報告されている銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、塩化銅水溶液やアンミン酸銅水溶液、酢酸銅水溶液など、銅の可溶性塩の水溶液にてイオン交換され、その後、熱処理を行うことにより、銅イオンを1価へ還元し、窒素吸着活性を付与されていた。
しかしながら、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、数種類の銅イオン交換サイトを有しており、特に気体吸着活性が高いサイトは、銅1価サイトであることがわかっている。しかしながら、従来の既知の方法で調製された銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトでは、銅サイト中に占める窒素吸着活性な銅1価サイトの割合の増大には限界があり、従来の最大割合は50%程度であった。
それに対して、本発明で用いる気体吸着材では、少なくとも73%以上の銅サイトが、吸着活性な銅1価サイトとして存在することによって、気体の吸着容量が増大し、かつ、窒素、一酸化炭素のみならず、水素、酸素などの気体種の吸着までが可能となった。その結果、従来の既存の気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を吸着、固定化でき、このような気体吸着材を備えた断熱体は、断熱体中の工業的排気プロセスで除去しきれない窒素および経時的に侵入する窒素を吸着除去できるため、優れた断熱性能を有する断熱体を提供できるものである。
なお、銅イオン交換された銅サイトのうち、銅1価サイトの割合は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト中の総銅モル量に対する、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトにおける一酸化炭素吸着モル量を算出することによって求められる。
また、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト中の総銅モル量は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを過塩素酸などで溶解し、EDTA滴定などによって求めることが可能である。
また、本発明における気体吸着材には、少なくとも60%以上の銅サイトが、銅1価サイトであることを特徴とする銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトが含まれていれば良く、さらに物理的や化学的に、水分および酸素などを吸着する物質を含むことに、なんら規制を加えるものではない。また、その気体吸着成分の構成比は、使用環境や内部発生ガスの種類により選択できるものである。
また、本発明における芯材としては、ポリスチレンやポリウレタンなどのポリマー材料の連通気泡体や、無機材料の連通気泡体、無機および有機の粉末、無機および有機の繊維材料などが利用できる。またそれらの混合物であっても良い。
また、本発明における外被材は、ガスバリア性を有するものが利用でき、金属容器やガラス容器、樹脂と金属の積層されたガスバリア容器、さらには表面保護層、ガスバリア層、および熱溶着層によって構成されるラミネートフィルムなど、気体侵入を阻害可能な種々の材料および複合材料が利用できる。
また、本発明の断熱体は、芯材と気体吸着材とをガスバリア性を有する外被材で覆って前記外被材の内部を減圧してなる断熱体であり、工業的真空排気手段および/または気体吸着材の作用により、ガスバリア性を有する外被材の内空間が減圧されているものである。
さらに、銅1価サイトのうち、少なくとも84%以上が酸素三配位の銅1価サイトであることを特徴とするものである。
銅1価サイトのうち、酸素三配位の銅1価サイトが、気体分子とより強い相互作用を生じ、気体を化学吸着可能であることが明らかとなっている。よって、銅1価サイトのうち、少なくとも84%以上を酸素三配位の銅1価サイトとすることにより、気体の吸着容量が増大すると共に、より強固に気体を吸着する化学吸着容量を増大させることが可能となり、また、窒素、一酸化炭素のみならず、水素、酸素、メタン、エタンなど低分子量の気体種の吸着までが室温領域で可能となることが確認できた。
なお、銅1価サイトのうち、酸素三配位の銅1価サイトの割合は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトにおける一酸化炭素吸着モル量に対する、窒素吸着モル数を算出することによって求められる。
銅1価サイトの酸素配位状態は、発光スペクトルによっても確認することができる。本発明による断熱体に備えられた気体吸着材の、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅1価発光スペクトルを図1に、従来手法により銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの発光スペクトルを図2に示す。
図1においては、図2にと比較して、銅1価サイトとしての全体のピークスペクトルが大きく、かつ、酸素三配位のピーク強度が明らかに大きくなっていることが分かる。
発明における銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、酢酸銅と、酢酸アンモニウムとを含むイオン交換溶液を用いることにより、得ることができる。
本発明によれば、ZSM−5型ゼオライトへ銅イオンが交換される際、バッファー作用を有するイオンが、銅イオンの還元を促進する作用を有するために、銅1価サイトの割合を増大させ、その結果、気体吸着量の増大が得られるものである。
また、ZSM−5型ゼオライトへ銅イオンが交換される際、バッファー作用を有するイオンが、銅イオンを、酸素三配位のサイトへ導入する作用をも有するため、より強固に気体を吸着する化学吸着容量の増大が得られるものである。
ここで、バッファー作用を有するイオンとは、銅イオンを含む溶液の解離平衡を緩衝する作用を有するイオンのことを指している。
一例を挙げて説明すると、酢酸銅水溶液中のイオン解離挙動を(化1)に示す。
Figure 0004887658
この系へ、適切なバッファー作用を有するアニオン、たとえば、
Figure 0004887658
が加えられると、平衡は式中央へ進行し、アセテートとの会合種を含む1価イオン
Figure 0004887658
の生成が安定となる。これにより、銅1価サイトの割合、および、酸素三配位の銅1価サイトの割合が増大することが明らかとなった。
この要因について詳細は不明であるが、おそらくは窒素吸着活性なイオン交換サイトの位置及び、その細孔径とイオン径の立体的な障害などの、相対関係に起因する形状選択性、その三次元構造の特異性によるものと考える。
本発明によれば、銅1価サイトの割合が増大し、その結果、気体吸着量の増大が得られた。また、酸素三配位のサイトへの導入が増大し、より強固に気体を吸着する化学吸着容量の増大が得られた。
この要因は、酢酸銅などのカルボキシラトを含む化合物が、適した配位結合性を有するため、銅1価の会合種を生成できることによるものと考えられる。
ここで、酢酸銅は、カルボキシラトを含む化合物の中でも、そのイオンサイズが適当であることにより、イオン交換が容易であるため、交換回数に対する交換効率が優れ、生産プロセスが容易となるものである。また、工業的にも安価で生産性にも優れている。
本発明によれば、バッファー作用を有するイオンが、効果的に、銅イオンの還元を促進する作用を有するために、銅1価サイトの割合を増大させ、その結果、気体吸着量の増大が得られることとなる。
また、ZSM−5型ゼオライトへ銅イオンが交換される際、バッファー作用を有するイオンが、銅イオンを、酸素三配位のサイトへ導入する作用をも有するため、より強固に気体を吸着する化学吸着容量の増大が得られることとなる。
これらの要因について詳細は不明であるが、おそらくはZSM−5の細孔径とイオン径の相対関係に起因する形状選択性、および、その三次元構造の特異性によるものと考えられる。すなわち、ZSM−5の空隙間距離は5Å×7Åであり、この空間内に存在する、特に窒素吸着活性の高いと考えられる酸素三配位サイトへ、銅イオンを導入するために適した大きさであるためと考えられる。
本発明によれば、バッファー作用を有する酢酸イオンが、効果的に、銅イオンを、1価へ還元されやすいサイトへ導入する作用を有するために、銅1価サイトの割合を増大させ、その結果、気体吸着量の増大が得られるものである。
また、ZSM−5型ゼオライトへ銅イオンが交換される際、バッファー作用を有する酢酸イオンが、銅イオンを、酸素三配位のサイトへ導入する作用をも有するため、より強固に気体を吸着する化学吸着容量の増大が得られるものである。
本発明によれば、バッファーとして作用する酢酸イオンの対アニオンであるアンモニウムイオンは、加熱による還元時に、アンモニアとして脱離するため、ZSM−5型ゼオライト基材に残留し、気体吸着に悪影響を及ぼすことがないのである。
発明における気体吸着材を、還元雰囲気における熱処理を経て作製すると、一層銅1価サイトの形成が促進され、気体吸着量が増大する。ここで、還元雰囲気にするために、一酸化炭素、水素や、その他アルコールなどの有機物ガスを用いることが可能である。
また、熱処理温度は、200℃から400℃の範囲が好ましい。400℃以上であると、金属銅まで還元されてしまう恐れがあり、また、200℃以下の場合、効果的に還元が進行しない。
また、還元雰囲気における熱処理時間は、特に指定するものではないが、30分から2時間の間処理を行った際に、銅1価サイトの形成促進が確認できた。
本発明における気体吸着材が、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトに加え、少なくとも化学的水分吸着性物質を含む場合は、多湿環境下においても、化学的水分吸着性物質が、銅イオン交換型ゼオライト中のCuが水分接触によりCu−OHを形成し窒素吸着不活性となることを抑制することができ、短時間であれば、大気にさらしても失活することはない。
また、芯材に付着した水分の悪影響も化学的水分吸着性物質が除去するため、窒素吸着活性は維持される。より確実にCu−OH形成を抑制するためには、本発明の銅イオン交換されたゼオライトの周囲を化学的水分吸着性物質にて覆うことが望ましい。
本発明における気体吸着材の作製方法の一例について述べる。
窒素吸着活性を有する銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、窒素や水、酸素に触れることなく、高真空下あるいはArなどの不活性ガス雰囲気下で化学的水分吸着性物質と混合あるいは化学的水分吸着性物質により周囲を覆うなどして、ペレット化、あるいは取り扱い容易な形状に成形する。さらに不活性ガスを充填した気体不透過性容器にてこれを封止し、断熱体への適用時まで保管することが望ましい。
また、本発明の気体吸着材は、少なくとも、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと化学的水分吸着性物質とを含み、化学的水分吸着材は水による銅イオン交換型ゼオライトの窒素吸着能の低下を予め抑制し、かつ、断熱体中の水分を吸着除去することができ、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトは断熱体中の工業的排気プロセスで除去しきれない窒素および経時的に侵入する窒素を吸着除去できる。
その結果、既存気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を、より強固に吸着、固定化でき、断熱体中の工業的排気プロセスで除去しきれない窒素および経時的に侵入する窒素を吸着除去できるため、信頼性に優れた、高性能な断熱体を提供できるものである。
また、さらにその他の気体吸着成分を含むことになんら規制を加えるものではない。
本発明における化学的水分吸着性物質は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物および水酸化物などの化学吸着剤などが使用できるが、化学的に水分を固定化できるものならば、特に規定するものではない。
本発明における気体吸着材が、少なくとも、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの周囲を、化学的水分吸着性物質に覆われて成形されている場合は、水分吸着性物質が、窒素吸着サイトである銅一価サイトが水分との接触によりCu−OHを形成し窒素吸着不活性となることを抑制するため、一層銅一価サイトの窒素吸着活性を維持することにより窒素吸着量を向上でき、その結果、外被材の内部空間の到達圧力が、真空ポンプのみを使用した際より低減し、断熱体の断熱性能の向上を図ることができるものである。
また、その周囲を水分吸着性物質に覆われていることにより、一層水分との接触を抑制でき、窒素吸着活性を活かせるものである。
本発明における断熱体が、少なくとも、真空ポンプによって外被材の内部を減圧される物理的排気工程と、前記気体吸着材によって気体が除去される吸着排気工程とを経て、作製される場合は、効率的に高真空を実現することが可能となると共に、到達真空度がより小さくなることにより、製造効率のよい高断熱性能を備えた断熱体が得られるものである。
すなわち、真空ポンプにより数分間の真空排気を行い、断熱体の内圧を10torr程度とし、その後は気体吸着材により空気成分を吸着除去するものである。
窒素を吸着した状態の本発明における気体吸着材(大容量の窒素を吸着、固定化が可能となった銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト)は、吸着材のFT−IRスペクトルに銅1価イオンに吸着した窒素分子の3重結合伸縮振動に帰属できる2295cm−1付近のピークが現れることで、確認できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図3は、本発明の実施の形態1における断熱体に用いる、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる気体吸着材の製造方法のフローチャートである。
本発明の実施の形態における、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる吸着材の製造は、銅イオンと、バッファー作用を有するイオンとを含むイオン交換溶液を用いたイオン交換工程(STEP1)と、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを洗浄する洗浄工程(STEP2)と、乾燥工程(STEP3)と、銅イオンを還元するための熱処理工程(STEP4)とからなるものである。
銅イオンを交換する前の原料であるZSM−5型ゼオライトは、市販の材料を使用することができるが、シリカ対アルミナ比は、2.6以上50以下であることが望ましい。この範囲を望ましいとしたのは、シリカ対アルミナ比が50を超えると、銅イオン交換量が少なく、すなわち窒素吸着活性が減少するからであり、シリカ対アルミナ比が2.6未満のZSM−5型ゼオライトは理論的に合成が不可能であるという理由からである。
イオン交換工程(STEP1)では、銅イオンを含む溶液として、酢酸銅、プロピオン酸銅、塩化銅など、従来の既存の化合物の水溶液を利用可能であるが、気体吸着量の増大と強固な吸着の実現のためには、酢酸銅が望ましい。
また、バッファー作用を有するイオンとしては、酢酸イオン、プロピオン酸イオンなど、銅イオンを含む溶液のイオン解離平衡を緩衝する作用を有するイオンが、利用可能である。
銅イオンと、バッファー作用を有するイオンとを含むイオン交換溶液は、それぞれのイオンを含む溶液を予め作製した後、混合しても良く、同一の溶媒にそれぞれの溶質を溶解しても良い。
イオン交換回数や銅イオン溶液の濃度、バッファー溶液の濃度、イオン交換時間、温度などは、特に限定するものではないが、イオン交換率としては、70%から140%の範囲において、優れた吸着性能を示す。より好ましくは、100%から130%の範囲である。
ここで示すイオン交換率とは、2つのNa+あたりにCu2+が交換されることを前提とした計算値であり、銅がCu+として交換された場合、計算上は100%を越えて算出される。
なお、洗浄工程(STEP2)では、蒸留水を用いて洗浄することが望ましい。また、乾燥工程(STEP3)では、100℃未満の条件で乾燥することが望ましく、室温での減圧乾燥でも良い。
また、熱処理工程(STEP4)では、減圧下、望ましくは10-5Pa未満の条件下で、500℃以上800℃以下の温度で熱処理することが望ましい。熱処理時間は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの量によるが、銅イオンを2価から1価へ還元可能な十分な時間が必要である。なお、500℃以上800℃以下の温度での熱処理が望ましいとしたのは、500℃未満では、1価への還元が不十分になる恐れがあり、800℃を超えると、ゼオライトの構造が破壊される恐れがあるという理由からである。
このようにして製造した銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる吸着材は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうち、少なくとも60%以上の銅サイトが、銅1価サイトであり、かつ/または、銅1価サイトのうち、少なくとも70%以上が酸素三配位の銅1価サイトであることを特徴とする気体吸着材となり、従来の既存の吸着材よりも、一層大容量の気体種を吸着、固定化できるものである。また、より強固な気体吸着を可能とするものである。
その結果、既存気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を、より強固に吸着、固定化でき、信頼性に優れた、高性能な断熱体を提供できるものである。
本実施の形態による、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる吸着材において、銅イオンと、バッファー作用を有するイオンとを含むイオン交換溶液の濃度、イオン交換回数などを変えて、気体吸着特性を評価した結果を実施例1から実施例4に示す。なお、使用したZSM−5型ゼオライトのシリカアルミナ比は11.9であり、熱処理は、600℃にて行い、4時間保持とした。なお、比較対象は、従来の既存プロセスを経て作製された比較例1とした。
(実施例1)
銅イオンと、バッファー作用を有するイオンとを含むイオン交換溶液調整するために、酢酸銅と酢酸アンモニウムを用いた。それぞれの濃度は、酢酸銅を0.03Mと、酢酸アンモニウムを0.03Mとし、それぞれを1:0.1の比で混合した溶液を用いて、常温にてイオン交換を30回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。
熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは13.0cc/g、10Paでは8.2cc/gであった。
本実施例における、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうち、銅1価サイトは、92%であり、銅1価サイトのうち、酸素三配位の銅1価サイトは、84%であった。また、イオン交換率は、130%であった。
比較例1に比べ、窒素吸着量は、13200Paでは2.2cc/g、10Paでは3.6cc/gの増大が認められた。また、低圧領域における強固な吸着が、より増大していることがわかる。これは、銅1価サイトおよび、酸素三配位の銅1価サイトの増大に起因するものである。
(実施例2)
銅イオンと、バッファー作用を有するイオンとを含むイオン交換溶液調整するために、酢酸銅と酢酸アンモニウムを用いた。それぞれの濃度は、酢酸銅を0.01Mと、酢酸アンモニウムを0.01Mとし、それぞれを1:0.1の比で混合した溶液を用いて、常温にてイオン交換を30回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。
熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは12.2cc/g、10Paでは8.0cc/gであった。
本実施例における、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうち、銅1価サイトは、73%であり、銅1価サイトのうち、酸素三配位の銅1価サイトは、89%であった。また、イオン交換率は、130%であった。
比較例1に比べ、窒素吸着量は、13200Paでは1.4cc/g、10Paでは3.4cc/gの増大が認められた。また、低圧領域における強固な吸着が、より増大していることがわかる。これは、銅1価サイトおよび、酸素三配位の銅1価サイトの増大に起因するものである。
(実施例3)
銅イオンと、バッファー作用を有するイオンとを含むイオン交換溶液調整するために、酢酸銅と酢酸アンモニウムを用いた。それぞれの濃度は、酢酸銅を0.01Mと、酢酸アンモニウムを0.01Mとし、それぞれを1:0.5の比で混合した溶液を用いて、常温にてイオン交換を30回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。
熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは11.0cc/g、10Paでは7.6cc/gであった。
本実施例における、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうち、銅1価サイトは、89%であり、銅1価サイトのうち、酸素三配位の銅1価サイトは、85%であった。また、イオン交換率は、114%であった。
比較例1に比べ、窒素吸着量は、13200Paでは0.2cc/g、10Paでは3.0cc/gの増大が認められた。また、低圧領域における強固な吸着が、より増大していることがわかる。これは、銅1価サイトおよび、酸素三配位の銅1価サイトの増大に起因するものである。
(実施例4)
銅イオンと、バッファー作用を有するイオンとを含むイオン交換溶液調整するために、酢酸銅と酢酸アンモニウムを用いた。それぞれの濃度は、酢酸銅を0.01Mと、酢酸アンモニウムを0.01Mとし、それぞれを1:1の比で混合した溶液を用いて、常温にてイオン交換を30回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。
熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは11.3cc/g、10Paでは6.6cc/gであった。
本実施例における、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうち、銅1価サイトは、88%であり、銅1価サイトのうち、酸素三配位の銅1価サイトは、85%であった。また、イオン交換率は、109%であった。
比較例1に比べ、窒素吸着量は、13200Paでは0.5cc/g、10Paでは2.0cc/gの増大が認められた。また、低圧領域における強固な吸着が、より増大していることがわかる。これは、銅1価サイトおよび、酸素三配位の銅1価サイトの増大に起因するものである。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる気体吸着材の製造方法のフローチャートである。
本発明における、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる吸着材の製造は、銅イオンと、バッファー作用を有するイオンとを含むイオン交換溶液を用いたイオン交換工程(STEP1)と、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを洗浄する洗浄工程(STEP2)と、乾燥工程(STEP3)と、銅イオンを還元するための熱処理工程(STEP4)と、1価還元促進のための還元熱処理工程(STEP5)からなるものである。
還元熱処理工程は、還元雰囲気において、熱処理を行うことにより銅イオンの1価還元を促進し、気体吸着量の増大を得るものであり、還元雰囲気とするために、一酸化炭素や水素、その他アルコールなどの有機物ガスが利用でき、熱処理温度は200℃から400℃が適当である。
本実施の形態による、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる気体吸着材における実施例を、実施例5に示す。なお、熱処理は、600℃にて行い、4時間保持とした。
(実施例5)
銅イオンと、バッファー作用を有するイオンとを含むイオン交換溶液調整するために、酢酸銅と酢酸アンモニウムを用いた。それぞれの濃度は、酢酸銅を0.01Mと、酢酸アンモニウムを0.01Mとし、それぞれを1:0.1の比で混合した溶液を用いて、常温にてイオン交換を30回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。熱処理後、400℃にて一酸化炭素雰囲気で還元熱処理を1時間行った。
還元熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは12.6cc/g、10Paでは8.2cc/gであった。
本実施例における、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうち、銅1価サイトは、82%であり、銅1価サイトのうち、酸素三配位の銅1価サイトは、85%であった。また、イオン交換率は、89%であった。
比較例1に比べ、窒素吸着量は、13200Paでは1.4cc/g、10Paでは3.6cc/gの増大が認められた。
また、同等条件で調製した実施例2と比較すると、還元熱処理により、窒素吸着量は、13200Paでは0.4cc/g、10Paでは0.2cc/gの増加が見られた。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における、断熱体の作製フローチャートを示すものである。
本発明の実施の形態における、断熱体の製造は、外被材へ芯材および気体吸着材を挿入し、真空チャンバー内で真空排気する、物理的排気工程(STEP6)と、外被材内部を減圧条件で封止する封止工程(STEP7)と、その後、断熱体を放置しておくことにより、気体吸着材によって内部気体が吸着除去される、吸着排気工程(STEP8)とからなるものである。
本構成により、気体吸着材が、出荷までに外被材中に残存する気体を固定化除去するため、高断熱が実現されるものである。
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4における、少なくとも、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトと化学的水分吸着性物質とを含むことを特徴とする気体吸着材の断面図および拡大図を示すものである。
気体吸着材1は、本発明における銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2と、化学的水分吸着性物質3と、酸素吸着材4と、水素吸着材5とを含み、これらの材料をアルゴンなどの不活性気体中で混合し、ペレット化を施したものである。
以上のように構成された気体吸着材1では、工業的真空排気プロセスで除去しきれない水分及び内部発生水分を化学的水分吸着性物質3が吸着除去し、水分が吸着除去されたことにより、窒素吸着活性を発現する銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2が工業的真空排気プロセスで除去しきれない窒素および経時的に侵入する窒素を吸着固定化する。また、酸素吸着材4と、水素吸着材5がそれぞれ酸素及び水素を吸着除去し、工業的真空排気プロセスで除去しきれない窒素等の気体、および経時的に侵入する気体を吸着固定化する。
その結果、外被材の内部空間の到達圧力が、真空ポンプのみを使用した際より低減し、断熱体の断熱性能の向上を図ることができる。
(実施の形態5)
図7は、本発明の実施の形態5における、少なくとも、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトと化学的水分吸着性物質とを含むことを特徴とする気体吸着材の断面図を示すものである。
気体吸着材1は、本発明における銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2を中心に、その周囲を酸素吸着材4と、水素吸着材5と、化学的水分吸着性物質3とが覆うような構造で、不活性ガス雰囲気中で成型を施したものである。
以上のように構成された気体吸着材1では、工業的真空排気プロセスで除去しきれない水分及び内部発生水分を化学的水分吸着性物質3が吸着除去し、水分が吸着除去されたことにより、窒素吸着活性を発現する銅イオン交換ZSM−5型ゼオライト11が工業的真空排気プロセスで除去しきれない窒素および経時的に侵入する窒素を吸着固定化する。また、酸素吸着材4と、水素吸着材5がそれぞれ酸素及び水素を吸着除去し、その結果、断熱体の断熱性能の向上を図ることができる。
また、窒素吸着活性である銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2が化学的水分吸着性物質3に周囲を覆われているため、水分による窒素吸着活性サイトの低減がより一層抑制される。
断熱体への適用効果を、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトとして実施例1の材料を、化学的水分吸着性物質3には酸化カルシウムを、酸素吸着材4には金属酸化物を、水素吸着材5には、水素吸着活性でもある銅イオン交換ZSM−5型ゼオライト2を用いて、評価した結果を実施例6に示す。
評価は、気体吸着材を封止した平板状パネルの熱伝導率にて、次のように行った。
外被材内に気体吸着材のみを封止し、真空ポンプによる物理的排気によって初期内圧を1300Paとし、24時間経過後、すなわち気体吸着材によって吸着排気が生じた後の内圧と熱伝導率を測定した。また、比較対象は、比較例3および4とした。
(実施例6)
有効吸着成分のうち、化学的水分吸着性物質3を75wt%と、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2を10wt%と、酸素吸着材4を15%とを含む、気体吸着材1を作製し、その24時間経過後の内圧と熱伝導率を測定した。24時間経過後の内圧は、13Paであり、熱伝導率は、0.067W/mKであった。
比較例3に対し、内圧は同等レベルであったが、熱伝導率は48%の改善が見られた。これは、本発明の気体吸着材の気体吸着容量が大きく、また、合金材料と比較して、固体熱伝導率が低いことによるものである。
また比較例4に対し、内圧は1/10まで下がっており、熱伝導率は30%の改善が見られた。これは、本発明の気体吸着材の気体吸着容量が大きく、また、より強固に気体を吸着する化学吸着容量も大きいため、到達最低圧力が非常に小さいため、気体熱伝導率が低減したものと考える。
(実施の形態6)
図8は、本発明の実施の形態6における、芯材と、ガスバリア性を有する外被材と、気体吸着材とを備え、前記外被材の内部を減圧してなる断熱体であって、少なくとも、本発明の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと化学的水分吸着性物質とを含むことを特徴とする気体吸着材を適用した断熱体の断面図を示すものである。
断熱体6は、芯材7として無機繊維集合体を、外被材8として表面保護層、ガスバリア層、および熱溶着層によって構成されるラミネートフィルムを、気体吸着材1として実施の形態6の気体吸着材1が用いられたことを特徴とするものであり、以上のように構成された気体吸着材1では、工業的真空排気プロセスで除去しきれない水分及び内部発生水分を化学的水分吸着性物質3が吸着除去し、水分が吸着除去されたことにより、窒素吸着活性を発現する銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2が工業的真空排気プロセスで除去しきれない窒素および経時的に侵入する窒素を吸着固定化する。その結果、断熱体6の断熱性能の向上を図ることができる。また、気体吸着材による熱伝導率の増大を抑制することができるものである。
実施例6の気体吸着材1を適用した断熱体における窒素吸着の評価結果を実施例7に示す。評価は、いずれも初期の内圧を1300Paとし、1ヶ月経過後の内圧を比較例3及び4の気体吸着材を適用した比較例5及び6の断熱体と比較して行った。なお、気体吸着材1つあたりの重量は約2g、断熱体の芯材の占める空間体積は約400cm3である。
(実施例7)
実施例6の気体吸着材を適用した断熱体にて、経時1ヶ月後の内圧は13Paであり、経時的な劣化は比較例5および6より小さく、外部より侵入した気体および内部発生ガスを気体吸着材がより効果的に吸着除去していると考える。
(実施の形態7)
図9は、本発明の実施の形態7における、芯材と、ガスバリア性を有する外被材と、気体吸着材とを備え、前記外被材の内部を減圧してなる断熱体の断面図を示すものである。
断熱体9は、芯材7として無機繊維集合体と、ガスバリア性を有する外被材8としてステンレス鋼からなる筐体と、少なくとも、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2と化学的水分吸着性物質3とを含むことを特徴とする気体吸着材1とを備え、前記外被材8の内部を減圧してなるものである。
以上のように構成された気体吸着材1は、工業的真空排気プロセスで除去しきれない水分及び内部発生水分を化学的水分吸着性物質3が吸着除去し、水分が吸着除去されたことにより、窒素吸着活性を発現する銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2が工業的真空排気プロセスで除去しきれない窒素および経時的に侵入する窒素を吸着固定化する。
その結果、断熱体9の断熱性能の向上を図ることができる。また、気体吸着材による熱伝導率の増大を抑制することができるものである。
以上のように本発明の気体吸着材は、少なくとも、窒素吸着材として銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと、前記銅イオン交換型ゼオライトの窒素吸着活性を制御するための化学的水分吸着性物質とを含むことにより、化学的水分吸着性物質が、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト中のCu+が水分接触によりCu−OHを形成し窒素吸着不活性となることを抑制することができるため、前記銅イオン交換型ゼオライトが効果的に工業的真空排気プロセスで除去しきれない窒素を吸着し、その結果、断熱体の断熱性能の向上を図ることができる。
また、気体吸着材による熱伝導率の増大を抑制することができるものである。
その結果、優れた断熱性能を有する高性能な断熱体を提供することができるものである。
次に本発明の気体吸着材および断熱体に対する比較例を示す。評価方法は実施例に準じるものとする。また、いかなる吸着材をも適用しなかった断熱体の結果は比較例7に示す。
(比較例1)
従来の既存の特許文献4のプロセスにてイオン交換するために、イオン交換溶液として酢酸銅水溶液を用いた。酢酸銅水溶液の濃度は、0.01Mとし、常温にてイオン交換を30回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。熱処理は、実施例と同等とした。
熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは10.8cc/g、10Paでは4.6cc/gであった。
本実施例における、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうち、銅1価サイトは、59%であり、銅1価サイトのうち、酸素三配位の銅1価サイトは、64%であった。また、イオン交換率は、121%であった。
(比較例2)
従来の既存のプロセスにてイオン交換するために、イオン交換溶液として塩化銅水溶液を用いた。酢酸銅水溶液の濃度は、0.01Mとし、90℃にてイオン交換を20回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。熱処理は、実施例と同等とした。
熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは5.3cc/g、10Paでは2.0cc/gであった。
本実施例における、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうち、銅1価サイトは、55%であり、銅1価サイトのうち、酸素三配位の銅1価サイトは、65%であった。また、イオン交換率は、111%であった。
(比較例3)
有効吸着成分のうち、酸化カルシウムを75wt%と、Ba−Li合金を5wt%と、コバルト酸化物を20wt%とを含むペレットを作製した。
24時間経過後の内圧は、13Paであり、熱伝導率は、0.130W/mkであった。また、Ba−Li合金は、PRTR指定物質であり、作業環境が規制されている物質である。
(比較例4)
有効吸着成分のうち、酸化カルシウムを75wt%と、比較例1の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを10wt%と、酸素吸着材4を15%とを含む、気体吸着材1を作製し、その24時間経過後の内圧と熱伝導率を測定した。
24時間経過後の内圧は、130Paであり、熱伝導率は、0.097W/mKであった。
(比較例5)
比較例3の気体吸着材を適用した断熱体にて、経時1ヶ月後の内圧は102Paであった。
(比較例6)
比較例4の気体吸着材を適用した断熱体にて、経時1ヶ月後の内圧は130Paであった。
(比較例7)
気体吸着材を適用しない断熱体にて、経時1ヶ月後の内圧は197Paであった。
以上の実施例1〜実施例5と比較例1、比較例2の結果を(表1)に示す。
Figure 0004887658
(表1)から、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうちの銅1価サイトの割合が60%以上である実施例1〜実施例5は、銅1価サイトの割合が60%未満である比較例1、比較例2よりも、窒素吸着量が増大していることが分かる。
また、銅1価サイトのうちの酸素三配位の銅1価サイトの割合が70%以上である実施例1〜実施例5は、酸素三配位の銅1価サイトの割合が70%未満である比較例1、比較例2よりも、窒素吸着量が増大していることが分かる。
また、実施例2と実施例5とを比較すると、還元熱処理工程があることにより、窒素吸着量が増えていることが分かる。
また、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトが、カルボキシラトを含む化合物である酢酸銅から生じた銅イオンと、酢酸アンモニウムから生じた、バッファー作用を有し、イオンサイズが5Å以上10Å以下の陰イオンである、酢酸イオンとを含むイオン交換溶液にてイオン交換されたものである、実施例1〜実施例5は、そうでない比較例1、比較例2よりも、窒素吸着量が増大していることが分かる。
また、実施例6と比較例3、比較例4の結果からは、従来技術である合金材料や、既存の銅1価サイトの割合が60%未満である銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトに比較して、銅サイトのうちの銅1価サイトの割合が60%以上であり、酸素三配位の銅1価サイトの割合が70%以上である銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを適用した実施例6では、到達圧力および熱伝導率が共に低く、優れた断熱性能を有する断熱材を提供することができるものである。
また、実施例7と比較例5、比較例6の結果からも、従来技術である合金材料や、既存の銅1価サイトの割合が60%未満である銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトに比較して、銅サイトのうちの銅1価サイトの割合が60%以上であり、酸素三配位の銅1価サイトの割合が70%以上である銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを適用した実施例7では、到達圧力が低く、気体熱伝導率を抑制した、優れた断熱性能を有する断熱材を提供することができるものである。
以上のように、本発明にかかる断熱体は、従来既存品よりも、より大容量の気体を吸着可能な気体吸着材を適用したために、本発明にかかる断熱体は、工業的真空排気プロセスで除去しきれない窒素およびその他気体を吸着し、その結果、断熱体の断熱性能の向上を図ることができる一方で、ゼオライト構造体は、気体吸着材による熱伝導率の増大を抑制することができるため、優れた断熱性能を発現可能なものである。よって、冷凍冷蔵庫および冷凍機器をはじめとした温冷熱機器への効率的な利用が可能であり、省エネルギーに貢献できるあらゆる機器や、熱や寒さから保護したい物象などのあらゆる断熱用途に適用できる。
本発明による吸着材の銅1価発光スペクトルを示す特性図 従来手法により銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの発光スペクトルを示す特性図 本発明の実施の形態1における気体吸着材の製造方法を示すフローチャート 本発明の実施の形態2における気体吸着材の製造方法を示すフローチャート 本発明の実施の形態3における断熱体の製造方法を示すフローチャート 本発明の実施の形態4における気体吸着材の断面図 本発明の実施の形態5における気体吸着材の断面図 本発明の実施の形態6における断熱体の断面図 本発明の実施の形態7における断熱体の断面図
符号の説明
1 気体吸着材
2 銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト
3 化学的水分吸着性物質
4 酸素吸着材
5 水素吸着材
6 断熱体
7 芯材
8 外被材
9 断熱体

Claims (1)

  1. 芯材と気体吸着材とをガスバリア性を有する外被材で覆って前記外被材の内部を減圧してなる断熱体であって、前記気体吸着材が、少なくとも、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる気体吸着材であり、前記銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうち、少なくとも73%以上銅1価サイトであり、前記銅1価サイトのうち、少なくとも84%以上が酸素三配位の銅1価サイトであることを特徴とする断熱体。
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