JP5230919B2 - 断熱体 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも、芯材と、ガスバリア性を有する外被材と、気体吸着材とを備え、前記外被材の内部を減圧してなる断熱体に関するものである。
近年、地球環境問題である温暖化を防止することの重要性から、省エネルギー化が望まれており、民生用機器に対しても省エネルギーの推進が行われている。特に冷凍冷蔵庫に関しては、冷熱を効率的に利用するという観点から、優れた断熱性を有する断熱体が求められている。
このような課題を解決する一手段として、空間を保持する芯材と、空間と外気を遮断する外被材によって構成される真空断熱体がある。その芯材として、一般に、粉体材料、繊維材料、連通化した発泡体などが用いられているが、近年では、真空断熱体への要求が多岐にわたってきており、一層高性能な真空断熱体が求められている。
真空断熱体の断熱原理は、熱を伝える空気を可能な限り排除し、気体による熱伝導を低減することである。従って、真空断熱体の断熱性能を向上するためには、内部圧力をより低圧とし、分子の衝突による気体熱伝導を抑制する必要がある。しかしながら、工業的レベルで実用的に達成可能な真空度は0.1torr程度であり、これ以上の高真空にすることは困難である。
また、真空断熱体内部から発生するガスや、外部から経時的に真空断熱体へ透過侵入してくる空気成分も真空断熱体の経時的な断熱性能の劣化を招く要因となる。よって、これらの気体、すなわち空気中の窒素および酸素、水分、水素を吸着除去することにより、初期断熱性能を向上し、経時的な断熱性能を維持することが可能となる。
また、これらの気体の吸着は、非可逆であることが要求されるため、物理吸着は不適であり、より強固な結合を形成する化学吸着が望ましい。しかしながら、空気の80%をしめる窒素は、安定な三重結合を有するため、化学吸着は非常に困難である。
困難な窒素吸着を解決する手段として、希ガス中に不純物として含まれる窒素、あるいは炭化水素などを取り除くため、ジルコニウム、バナジウム及びタングステンからなる三元合金のゲッター材と希ガスを加熱下に接触させる方法がある(例えば、特許文献1参照)。
これは、合金を100〜600℃の温度で微量の不純物を含む希ガスと接触させることにより、希ガスから窒素等の不純物を除去するものである。
また、窒素に対して高ガス吸着効率を備える無蒸発ゲッター合金として、ジルコニウム、鉄、マンガン、イットリウム、ランタンと、希土類元素の1種の元素を含む合金がある(例えば、特許文献2参照)。
これは、合金を300〜500℃の間の温度で10〜20分間活性化処理を行うことにより、水素、炭化水素、窒素等の吸着に対して室温でも作用することができるものである。
また、低温での窒素吸着合金として、Ba−Li合金が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
これは、断熱ジャケット内の真空を維持するためのデバイスであり、Ba−Li合金と、乾燥材とからなり、室温においても窒素等のガスに対して反応性を示す。
また、精製対象ガスから窒素などの不純物ガスを除去する方法として、銅イオン交換したZMS−5型ゼオライトからなる気体吸着材が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
これは、従来既存のイオン交換方法によって、ZSM−5型ゼオライトに銅イオンを導入し、熱処理を行うことによって、窒素吸着活性を付与するものであり、平衡圧力10Paにおける最大窒素吸着量は、0.238mol/kg(5.33cc/g)にて報告されている。
しかしながら、特許文献1に記載の上記従来の構成では、300〜500℃で加熱し続けることが必要であり、高温での加熱であるためエネルギーコストが大きく環境にも悪いまた、低温でのガス吸着を望む場合は使用できない。
また、特許文献2に記載の上記従来の構成では、300〜500℃の前処理が必要であり、高温での前処理が困難な場合のガス除去、例えばプラスチック袋中のガスを常温下で除去することは困難である。
また、特許文献3に記載の上記従来の構成では、活性化のための熱処理を必要とせず常温で窒素吸着可能であるが、そのため、取り扱い時に空気中の水分、窒素などと反応してしまうという問題がある。そして、一旦反応すると不可逆反応であるために、必要時までいかに活性を保持するか、取り扱い性が課題である。
また、合金材料であるためにゲッター自身の熱伝導率が高く、ゲッターを適用することにより断熱性能の悪化する部位が生じることとなる。
また、窒素吸着に対するさらなる大容量化が望まれている。
また、特許文献4に記載の上記従来の構成では、常温で窒素などの気体吸着が可能であるが、より大容量で気体吸着可能な気体吸着材が望まれている。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、気体吸着活性が高く、特に窒素に対する吸着容量の高い材料を使用した、常温常圧、あるいは常温減圧下でも大容量の気体を吸着可能な気体吸着材を備えた、高性能な断熱体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の断熱体は、少なくとも、芯材と、ガスバリア性を有する外被材と、気体吸着材とを備え、前記芯材と前記気体吸着材とを前記外被材で覆い前記外被材の内部を減圧してなる断熱体であって、前記気体吸着材が、少なくとも、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる気体吸着材であって、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換率が、130%以上、250%以下の範囲であることを特徴とするものである。
本発明の断熱体の気体吸着材に使用した銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、気体吸着活性が高く、特に窒素に対する吸着容量が高いので、本発明の断熱体に用いた気体吸着材は、常温常圧、あるいは常温減圧下でも大容量の気体を吸着可能であり、本発明の断熱体は、断熱性能に優れる。
本発明の断熱体は、気体吸着材が、既存の気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を吸着、固定化できるため、工業的真空排気プロセスで除去しきれない窒素等および経時的に侵入する窒素等を大容量で吸着固定化することができる。
その結果、外被材の内部空間の到達圧力が、真空ポンプのみを使用した際より低減し、断熱体の断熱性能の向上を図ることができるため、優れた断熱性能を有する高性能な断熱体を提供することができるものである。
また、より強固な気体吸着を可能とするものであり、信頼性にも優れた、高性能な断熱体を提供することができるものである。
本発明は、少なくとも、芯材と、ガスバリア性を有する外被材と、気体吸着材とを備え、前記芯材と前記気体吸着材とを前記外被材で覆い前記外被材の内部を減圧してなる断熱
体であって、前記気体吸着材が、少なくとも、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる気体吸着材であって、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換率が、130%以上、250%以下の範囲であることを特徴とするものである。
従来から、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトが、窒素に対して、物理吸着に加え、化学吸着可能であることは知られている。その技術は、ZSM−5型ゼオライトを、塩化銅水溶液やアンミン酸銅水溶液、酢酸銅水溶液など、銅の可溶性塩の水溶液にてイオン交換し、その後、熱処理を行うことにより、銅イオンを1価へ還元し、窒素吸着活性を付与するものである。
しかし、従来の既知の方法で調製された銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトでは、イオン交換率は最大でも150%程度であった。また、従来既知の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトでは、70%から140%の範囲において、特に120%近傍で優れた吸着性能を示すとの報告がされていた。
しかしながら、本願の発明者らはイオン交換率が、200%以上となる現象を見出し、130%以上、250%以下の範囲において、窒素の吸着容量が増大することに加え、一酸化炭素のみならず、水素、酸素などの気体種の吸着までが可能となることを見出した。
従来、気体吸着量を最大とするためのイオン交換率の最適範囲は、70%から140%の範囲と考えられてきたが、本発明による最適範囲は、130%以上、250%以下であり、より望ましくは、140%以上、220%以下である。
ここで、本発明における銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換率の求め方について、以下に説明する。
まず、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを過塩素酸などで溶解し、EDTA滴定やICP測定などによって、ゼオライトの単位重量あたりに含まれる銅モル量を求める。
一方で、熱重量測定を用いて加熱による重量減少率からゼオライトに含まれる水分量を計測し、水分を除いたゼオライトの真重量を求める。
上記2つのデータから、ゼオライトの真重量に対する銅の含有率が算出でき、銅と交換される前に含まれていた陽イオンに対して、銅イオン交換された割合を算出することができる。
ここで示すイオン交換率とは、銅交換前の陽イオンをNaとすると、2つのNaあたりにCu2+が交換されることを前提とした計算値である。従って、銅がCuとして交換された場合、計算上は100%を越えて算出され、完全に交換された場合は200%となるが、理論的に200%を超えることはない。
しかし、本発明によると、200%を越えるイオン交換率が得られるものである。
イオン交換率130%以上、250%以下の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの特徴は、常温・常圧において白褐色を帯びており、従来既存のイオン交換率70%から140%の範囲の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの淡青色とは、明らかに色が異なる。
これらの要因について詳細は明らかでないが、少なくとも一部の銅がゼオライト中に導入される形態が、従来既存のZSM−5型ゼオライトとは異なるためであると考える。その結果、イオン交換率の最適範囲も異なっているものと考える。
すなわち、従来既存のイオン交換で交換される銅の形態は、通常、銅2価イオンまたは銅1価イオンである。よって、イオン交換率は、200%を越えることはない。
一方、本発明においては、少なくとも一部の銅は、有機−銅化合物イオン複合体の形態でイオン交換されていると推測される。ここでの有機−銅化合物イオン複合体とは、有機物および銅化合物の重合物やオリゴマーのイオンを指し、1つの陽イオン中に銅が1つであっても、複数含まれていてもよい。その結果、1つのイオン交換サイトに、1つの銅を持つ陽イオンだけではなく、複数の銅を有する陽イオンが交換されるため、見かけ上、イオン交換率が200%を越えるのである。
なお、有機−銅化合物イオン複合体の形態でのイオン交換は、イオン交換溶液の適切な加熱や、マイクロ波照射、超音波による加熱などで実現できる。
本発明によるイオン交換率の増大により、吸着活性サイトが増大し、吸着量の増大および低圧領域での吸着活性の増大が得られるものである。
その結果、既存の気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を吸着、固定化でき、このような気体吸着材を備えた断熱体は、断熱体中の工業的排気プロセスで除去しきれない気体および経時的に侵入する気体を吸着除去できるため、優れた断熱性能を有する断熱体を提供できるものである。
また、本発明における気体吸着材は、少なくともイオン交換率が130%以上、250%以下の範囲の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトが一部含まれているものであり、その他の気体吸着材や加工のためのバインダーなどが含まれていても良い。
例えば、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトに加え、水分吸着材や酸素吸着材などが、ともに存在していて気体吸着材を形成していてもよい。
もちろん、イオン交換率が130%以上、250%以下の範囲の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトが単独であっても、イオン交換率が130%以上、250%以下の範囲外の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトとの混合体であってもよい。
その気体吸着成分の構成比は、使用環境や内部発生ガスの種類により選択できるものである。
また、本発明における芯材としては、ポリスチレンやポリウレタンなどのポリマー材料の連通気泡体や、無機材料の連通気泡体、無機および有機の粉末、無機および有機の繊維材料などが利用できる。またそれらの混合物であっても良い。
また、本発明における外被材は、ガスバリア性を有するものが利用でき、金属容器やガラス容器、樹脂と金属の積層されたガスバリア容器、さらには表面保護層、ガスバリア層、および熱溶着層によって構成されるラミネートフィルムなど、気体侵入を阻害可能な種々の材料および複合材料が利用できる。
また、本発明の断熱体は、工業的真空排気手段および/または本発明に記載の気体吸着材の作用により、ガスバリア性を有する外被材の内空間が減圧となっているものである。
また、本発明は、気体吸着材が、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと共に、少なくとも有機−銅化合物を含むことを特徴とするものである。
本発明における気体吸着材に含まれる有機−銅化合物を、蛍光X線、および、FT−IRにより分析した結果、蛍光X線からは、銅を主成分とする有機複合体であることが確認された。さらに、FT−IRの結果を加え、有機−銅を含む酸化物、水酸化物などの複合物であることが明らかとなった。これを本発明においては、有機−銅化合物と表記し、そのイオンを有機−銅化合物イオン複合体と示す。
本発明における有機−銅化合物のFT−IRスペクトルを図1に示す。蛍光X線の結果及び図1より、有機−銅化合物は、O−H結合、C=O結合、C−H結合などを含む銅の有機複合体であると考えられる。
イオン交換溶液中に存在するこれらの有機−銅化合物は、有機−銅化合物イオン複合体の形態でイオン交換されるとともに、不純物としても銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトに混在する。この有機−銅化合物は、イオン交換率を求めるにあたって、過塩素酸などでゼオライトを溶解する際にも一緒に溶解されるため、イオン交換率を増大する要因となる。
また、この有機−銅化合物の存在自体が、何らかの形で吸着活性に寄与し、吸着量の増大を促進していると推測される。おそらくは、熱処理により有機−銅化合物自身も、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトともに還元処理がなされ、吸着活性を有していると考えられる。
また、熱処理の際、有機−銅化合物中の有機成分が、銅イオンの還元を促進する作用を有するために、吸着活性サイトである銅1価の割合を増大させ、その結果、気体吸着量、特に化学吸着量の増大が得られるものである。
その結果、既存の気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を、より強固に吸着、固定化でき、断熱体中の工業的排気プロセスで除去しきれない気体および経時的に侵入する気体を吸着除去できるため、信頼性に優れた、高性能な断熱体を提供できるものである。
また、本発明は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトが、少なくとも、銅イオンと、有機−銅化合物とを含むイオン交換溶液にてイオン交換されたことを特徴とするものである。
ここでの有機−銅化合物とは、銅と有機物の重合物やオリゴマーなどの有機−銅化合物であり、さらに酸化物や水酸化物を含むものであってもよい。
これらを含むイオン交換溶液にてイオン交換することにより、イオン交換率が130%以上となり、その結果、吸着量の増大および低圧領域での吸着活性の増大が得られるものである。
また、熱処理の際、有機−銅化合物中の有機成分が、銅イオンの還元を促進する作用を有するために、吸着活性サイトである銅1価の割合を増大させ、その結果、気体吸着量、特に化学吸着量の増大が得られるものである。
その結果、既存の気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を、より強固に吸着、固定化でき、断熱体中の工業的排気プロセスで除去しきれない気体および経時的に侵入する気体を吸着除去できるため、信頼性に優れた、高性能な断熱体を提供できるものである。
また、本発明は、銅イオンが、カルボキシラトを含む化合物から生じたものであること特徴とするものである。
ここでのカルボキシラトを含む化合物とは、酢酸銅およびプロピオン酸銅、蟻酸銅などであり、これらが加熱やマイクロ波、超音波などの刺激により、有機−銅化合物イオン複合体を形成に効果的に作用し、これらを含むイオン交換溶液にてイオン交換することにより、イオン交換率が130%以上となり、その結果、吸着量の増大および低圧領域での吸着活性の増大が得られるものである。
また、これらは、熱処理時の銅1価への還元を促進する作用を有するため、銅1価サイトの割合を増大し、その結果、気体吸着量、特に化学吸着量の増大が得られるものである。
その結果、既存の気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を、より強固に吸着、固定化でき、断熱体中の工業的排気プロセスで除去しきれない気体および経時的に侵入する気体を吸着除去できるため、信頼性に優れた、高性能な断熱体を提供できるものである。
また、本発明は、カルボキシラトを含む化合物が、酢酸銅であることを特徴とするものである。
本構成によって、酢酸銅は、カルボキシラトを含む化合物の中でも、そのイオンサイズが適当であることにより、イオン交換が容易であるため、交換回数に対する交換効率が優れ、生産プロセスが容易となるものである。また、工業的にも安価で生産性にも優れている。
また、本発明は、有機−銅化合物が、イオン交換溶液を加熱することにより形成されたことを特徴とするものである。
本願の発明者らは、イオン交換溶液が、中でもカルボキシラトを含むイオン交換溶液が、加熱されることにより、有機−銅化合物イオン複合体を生成しやすく、これがイオン交換されることにより、吸着活性が増大することを見出した。
ここでの有機−銅化合物イオン複合体とは、加熱により不安定になり、分解あるいは半分解した有機物と、銅イオンとが、複雑に結合した有機物および銅化合物の重合物やオリゴマーのイオンを指し、1つの陽イオン中に銅が1つであっても、複数含まれていてもよい。
その結果、1つのイオン交換サイトに、1つの銅を持つ陽イオンだけではなく、複数の銅を有する陽イオンが交換されるため、見かけ上、イオン交換率が増大し、200%を越えるものもできるのである。
また、加熱は、イオン交換前の溶液を予め加熱しても良いが、加熱しながらイオン交換する方が、イオン交換効率向上に優れる。
本発明による加熱によるイオン交換率の増大により、吸着活性サイトが増大し、その結果、吸着量の増大および低圧領域での吸着活性の増大が得られるものである。
その結果、既存の気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を、より強固に吸着、固定化でき、断熱体中の工業的排気プロセスで除去しきれない気体および経時的に侵入する気体を吸着除去できるため、信頼性に優れた、高性能な断熱体を提供できるものである。
また、本発明は、加熱温度が、50℃以上90℃以下の範囲であることを特徴とするものである。
加熱によるイオン交換率の増大は、50℃以上が顕著である。また、加熱が過ぎると、有機−銅化合物イオン複合体が分解し、銅水酸化物あるいは銅酸化物に変質し、イオン交換率の増大に寄与しない場合もあるため、90℃以下が好ましい。より好ましくは80℃以下である。
本構成によって、既存の気体吸着材よりも、一層大容量の気体を、より強固に吸着、固定化でき、断熱体中の工業的排気プロセスで除去しきれない気体および経時的に侵入する気体を吸着除去できるため、信頼性に優れた、高性能な断熱体を提供できるものである。
本発明の請求項8に記載の断熱体の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の気体吸着材が、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトに加え、少なくとも水分吸着性物質を含むことを特徴とするものである。
本構成により、気体吸着材は、多湿環境下においても、水分吸着性物質が、銅イオン交換型ゼオライト中のCuが水分接触によりCu−OHを形成し気体吸着不活性となることを抑制することができ、短時間であれば、大気にさらしても失活することはない。
また、芯材に付着した水分の悪影響も水分吸着性物質が除去するため、気体吸着活性は維持される。より確実にCu−OH形成を抑制するためには、本発明における銅イオン交換されたゼオライトの周囲を水分吸着性物質にて覆うことが望ましい。
本構成における、気体吸着材の作製方法の一例について述べる。
気体吸着活性を有する銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、窒素や水、酸素に触れることなく、高真空下あるいはArなどの不活性ガス雰囲気下で水分吸着性物質と混合あるいは水分吸着性物質により周囲を覆うなどして、ペレット化、あるいは取り扱い容易な形状に成形する。さらに不活性ガスを充填した気体不透過性容器にてこれを封止し、断熱体への適用時まで保管することが望ましい。
その結果、水分吸着材は、水による銅イオン交換型ゼオライトの気体吸着能の低下を予め抑制し、かつ、断熱体中の水分を吸着除去することができるため、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトは、断熱体中の工業的排気プロセスで除去しきれない気体および経時的に侵入する気体を吸着除去できる。
既存の気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を、より強固に吸着、固定化でき、断熱体中の工業的排気プロセスで除去しきれない気体および経時的に侵入する気体を吸着除去できるため、信頼性に優れた、高性能な断熱体を提供できるものである。
本発明における水分吸着性物質は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物および水酸化物などの水分吸着材や、ゼオライト、シリカゲルなどの物理的水分吸着材などが使用できるが、特に規定するものではない。可逆性のない化学的に水分を固定化できる水分吸着材の方がより望ましい。
本発明の請求項9に記載の断熱体の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の発明において、少なくとも、真空ポンプによって外被材の内部を減圧される物理的排気工程と、前記気体吸着材によって気体が除去される吸着排気工程とを経て、作製されることを特徴とするものである。
本構成により、効率的に高真空を実現することが可能となると共に、到達真空度がより小さくなることにより、製造効率のよい高断熱性能を備えた断熱体が得られるものである。
すなわち、真空ポンプにより数分間の真空排気を行い、断熱体の内圧を10torr程度とし、その後は気体吸着材により空気成分を吸着除去するものである。
本発明の請求項10に記載の断熱体の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載の気体吸着材が、窒素を吸着したことにより、前記吸着材のFT−IRスペクトルに銅1価イオンに吸着した窒素分子の3重結合伸縮振動に帰属できる2295cm−1付近のピークが現れることを特徴とするものである。
本構成によって、大容量の気体、中でも空気中に最も多く含まれる窒素を吸着、固定化が可能となった銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを確認できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図2は、本発明の実施の形態1における断熱体の気体吸着材に用いる銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの製造方法を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態における、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる気体吸着材の製造は、銅イオンと、有機−銅化合物とを含むイオン交換溶液を用いたイオン交換工程(STEP1)と、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを洗浄する洗浄工程(STEP2)と、乾燥工程(STEP3)と、銅イオンを還元するための熱処理工程(STEP4)とからなるものである。
銅イオンを交換する前の原料であるZSM−5型ゼオライトは、市販の材料を使用することができるが、シリカ対アルミナ比は、2.6以上50以下であることが望ましい。この範囲を望ましいとしたのは、シリカ対アルミナ比が50を超えると、銅イオン交換量が少なく、すなわち気体吸着活性が減少するからであり、シリカ対アルミナ比が2.6未満のZSM−5型ゼオライトは理論的に合成が不可能であるという理由からである。
イオン交換工程(STEP1)では、銅イオンを含む溶液として、従来既存の化合物の水溶液が利用可能であるが、気体吸着量、特に化学吸着量の増大を実現するためには、銅イオンがカルボキシラトを含む化合物から生じたものであることが好ましく、酢酸イオン、プロピオン酸イオンなどを生じる酢酸銅、プロピオン酸銅などが好ましい。
また、STEP1においては、有機−銅化合物イオン複合体の形態でのイオン交換を行うために、イオン交換溶液の適切な加熱や、マイクロ波照射、超音波照射などが必要である。最も工業的に容易なのは加熱によるプロセスである。
イオン交換回数や銅イオン溶液の濃度、イオン交換時間などは、特に限定するものではないが、イオン交換回数は、従来既存のプロセスより低減し、同等以上の気体吸着量が得られるものである。例えば、1回〜5回程度のイオン交換で、従来既存のプロセスで10〜30回のイオン交換で得られる吸着能力を発現できる。
銅イオン溶液の濃度は0.005M〜0.05Mの範囲が望ましく、より好ましくは0.01M〜0.03Mである。
イオン交換時間は、1回あたり10〜60分程度である。
イオン交換温度は、50℃〜90℃が好ましい。より好ましくは50℃以上、80℃以下である。
洗浄工程(STEP2)では、蒸留水を用いて洗浄することが望ましい。
乾燥工程(STEP3)では、100℃未満の条件で乾燥することが望ましく、室温での減圧乾燥でも良い。
また、熱処理工程(STEP4)では、減圧下、望ましくは10−5Pa未満の条件下で、500℃以上800℃以下の温度で熱処理することが望ましい。熱処理時間は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの量によるが、銅イオンを2価から1価へ還元可能な十分な時間が必要である。
なお、500℃以上800℃以下の温度での熱処理が望ましいとしたのは、500℃未満では、1価への還元が不十分になる恐れがあり、800℃を超えると、ゼオライトの構造が破壊される恐れがあるという理由からである。
このようにして製造した銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、イオン交換率が、130%以上、250%以下の範囲となり、イオン交換率の増大により、吸着活性サイトが増大し、従来既存吸着材よりも、吸着量の増大および低圧領域での吸着活性の増大が得られるため、一層大容量の気体種を吸着、固定化できるものである。また、より強固な気体吸着を可能とするものである。
その結果、既存の気体吸着材よりも、断熱体中に存在する気体種、より強固に吸着、固定化でき、信頼性に優れた、高性能な断熱体を提供できるものである。
本実施の形態による、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる気体吸着材において、イオン交換溶液の種類および濃度、イオン交換時の温度、イオン交換回数を変えてイオン交換率や気体吸着特性を評価した結果を、実施例1から実施例6に示す。気体吸着特性は、気体吸着容量を測定可能なオートソーブ1−C(カンタクロム社製)にて、窒素の吸着量を測定した。
なお、使用したZSM−5型ゼオライトのシリカアルミナ比は14である。熱処理は600℃にて行い、4時間保持とした。比較対象は、従来の既存プロセスを経て作製された比較例1から2とした。
(実施例1)
イオン交換溶液は、0.01Mの酢酸銅水溶液を用いた。50℃で、1時間のイオン交換を5回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。
実施例1の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換率は、135%であった。
この銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは12.7cc/g、10Paでは5.5cc/gであった。
比較例1と比較すると、イオン交換回数は1/6に低減しているにもかかわらず、窒素吸着量は、13200Paでは1.9cc/g、10Paでは1.9cc/gの増大が認められた。
これは、実施例1では加熱により有機−銅化合物イオン複合体の形態でのイオン交換を行うために、イオン交換率および吸着活性が高まったためと考えられる。一方、比較例1は25℃でのイオン交換であるために、銅2価としてのみのイオン交換である。
(実施例2)
イオン交換溶液は、0.03Mの酢酸銅水溶液を用いた。50℃で、1時間のイオン交換を5回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。
実施例2の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換率は、178%であった。
この銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは18.6cc/g、10Paでは7.8cc/gであった。
実施例1と比較すると、イオン交換率の増大とともに飛躍的に窒素吸着量が増大していることがわかる。これは、酢酸銅濃度の増大により、一層有機−銅化合物イオン複合体の形態でのイオン交換が促進されたものと考えられる。
比較例1と比較しても、より一層の窒素吸着量の増大が確認できる。
(実施例3)
イオン交換溶液は、0.03Mの酢酸銅水溶液を用いた。70℃で、1時間のイオン交換を5回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。
実施例3の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換率は、217%であった。
この銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは31.4cc/g、10Paでは9.9cc/gであった。
実施例2と比較すると、イオン交換率の増大とともに飛躍的に窒素吸着量が増大していることがわかる。これは、加熱温度の増大により、一層、有機−銅化合物イオン複合体の形態でのイオン交換が促進されたものと考えられる。特に13200Paでの吸着量の増大が著しく、有機−銅化合物を含むことによる比表面積の増大も寄与しているものと考えられる。
比較例1と比較しても、より一層の窒素吸着量の増大が確認できる。
(実施例4)
イオン交換溶液は、0.03Mの酢酸銅水溶液を用いた。70℃で、1時間のイオン交換を3回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。
実施例4の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換率は、204%であった。
この銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは21.7cc/g、10Paでは7.9cc/gであった。
実施例3と比較すると、イオン交換率および窒素吸着量が低減しているが、これはイオン交換回数が少ないためである。
しかしながら、比較例1と比較すると、イオン交換回数は1/10で、窒素吸着量は2倍以上の性能を有することが確認できる。
(実施例5)
イオン交換溶液は、0.03Mの酢酸銅水溶液を用いた。90℃で、1時間のイオン交換を5回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。
実施例5の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換率は、231%であった。
この銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは17.9cc/g、10Paでは5.5cc/gであった。
実施例3と比較すると、イオン交換率は増大しているが、窒素吸着量が低減している。これは、有機−銅化合物イオン複合体の一部が熱のために分解し、銅水酸化物あるいは銅酸化物に変質したためと考えられる。
しかしながら、比較例1と比較すると、イオン交換回数は1/6で、窒素吸着量に優れ、本発明の効果は確認できる。
(実施例6)
イオン交換溶液は、0.03Mのプロピオン酸銅水溶液を用いた。70℃で、1時間のイオン交換を5回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。
実施例6の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換率は、200%であった。
この銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは19.8cc/g、10Paでは7.2cc/gであった。
しかしながら、比較例1と比較すると、イオン交換回数は1/6で、窒素吸着量に優れ、本発明の効果が確認できる。
また、実施例1から実施例6の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトにおいて、窒素以外にも、酸素及び水素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素と酸素との混合気体などの気体吸着が確認できた。
また、加熱以外の手段において、マイクロ波及び超音波を用いて、イオン交換溶液中に有機−銅化合物イオン複合体を生成するプロセスにおいても、同様の吸着量増大効果が確認できた。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における断熱体の作製フローチャートを示すものである。
本発明の実施の形態における断熱体の製造は、外被材へ芯材および気体吸着材を挿入し、真空チャンバー内で真空排気する物理的排気工程(STEP1)と、外被材内部を減圧条件で封止する封止工程(STEP2)と、その後、断熱体を放置しておくことにより、気体吸着材によって内部気体が吸着除去される吸着排気工程(STEP3)とからなるものである。
本構成により、気体吸着材が、出荷までに外被材中に残存する気体を固定化除去するため、高断熱が実現されるものである。
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3における断熱体に用いる銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトと水分吸着性物質とを含む気体吸着材の断面図および拡大図を示すものである。
気体吸着材1は、イオン交換率が130%以上250%以下の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2と、水分吸着性物質3と、酸素吸着材4と、水素吸着材5とを含み、これらの材料をアルゴンなどの不活性気体中で混合し、ペレット化を施したものである。
以上のように構成された気体吸着材1では、工業的真空排気プロセスで除去しきれない水分及び内部発生水分を水分吸着性物質3が吸着除去し、水分が吸着除去されたことにより、気体吸着活性を発現する銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2が工業的真空排気プロセスで除去しきれない気体および経時的に侵入する気体を吸着固定化する。
また、酸素吸着材4と、水素吸着材5がそれぞれ酸素及び水素を吸着除去し、工業的真空排気プロセスで除去しきれない窒素等の気体、および経時的に侵入する気体を吸着固定化する。
その結果、外被材の内部空間の到達圧力が、真空ポンプのみを使用した際より低減し、断熱体の断熱性能の向上を図ることができる。
(実施の形態4)
図5は、本発明の実施の形態4における断熱体に用いる銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトと水分吸着性物質とを含む気体吸着材の概略断面図を示すものである。
気体吸着材1は、イオン交換率が130%以上250%以下の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2を中心に、その周囲を酸素吸着材4と、水素吸着材5と、水分吸着性物質3とが覆うような構造で、不活性ガス雰囲気中で成型を施したものである。
以上のように構成された気体吸着材1では、工業的真空排気プロセスで除去しきれない水分及び内部発生水分を水分吸着性物質3が吸着除去し、水分が吸着除去されたことにより、気体吸着活性を発現する銅イオン交換ZSM−5型ゼオライト2が工業的真空排気プロセスで除去しきれない気体および経時的に侵入する気体を吸着固定化する。また、酸素吸着材4と、水素吸着材5がそれぞれ酸素及び水素を吸着除去し、その結果、断熱体の断熱性能の向上を図ることができる。
また、気体吸着活性である銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2が水分吸着性物質3に周囲を覆われているため、水分による気体吸着活性サイトの低減がより一層抑制される。
断熱体への適用効果を、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトとして実施例1の材料を、水分吸着性物質3には酸化カルシウムを、酸素吸着材4には金属酸化物を、水素吸着材5には、水素吸着活性でもある銅イオン交換ZSM−5型ゼオライト2を用いて、評価した結果を実施例7に示す。
評価は、気体吸着材を封止した平板状パネルの熱伝導率にて、次のように行った。
外被材内に気体吸着材のみを封止し、真空ポンプによる物理的排気によって初期内圧を1300Paとし、24時間経過後、すなわち気体吸着材によって吸着排気が生じた後の内圧と熱伝導率を測定した。
また、比較対象は、比較例3および4とした。
(実施例7)
有効吸着成分のうち、水分吸着性物質3を75wt%と、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2を10wt%と、酸素吸着材4を15%とを含む、気体吸着材1を作製し、その24時間経過後の内圧と熱伝導率を測定した。
24時間経過後の内圧は、13Paであり、熱伝導率は、0.067W/mKであった。
比較例3に対し、内圧は同等レベルであったが、熱伝導率は48%の改善が見られた。これは、本実施例における気体吸着材の気体吸着容量が大きく、また、合金材料と比較して、固体熱伝導率が低いことによるものである。
また比較例4に対し、内圧は1/10まで下がっており、熱伝導率は30%の改善が見られた。これは、本実施例の気体吸着材の気体吸着容量が大きく、また、より強固に気体を吸着する化学吸着容量も大きいため、到達最低圧力が非常に小さいため、気体熱伝導率が低減したものと考える。
(実施の形態5)
図6は、本発明の実施の形態5における断熱体の概略断面図を示すものである。
本発明の実施の形態5の断熱体6は、芯材7と、ガスバリア性を有する外被材8と、気体吸着材1とを備え、芯材7と気体吸着材1とを外被材8で覆い外被材8の内部を減圧してなる。
気体吸着材1は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと水分吸着性物質とを含む。なお、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換率は、130%以上、250%以下の範囲である。
断熱体6は、芯材7として無機繊維集合体を、外被材8として表面保護層、ガスバリア層、および熱溶着層によって構成されるラミネートフィルムを、気体吸着材1として実施の形態4の気体吸着材1を用いたものである。
以上のように構成された気体吸着材1では、工業的真空排気プロセスで除去しきれない水分及び内部発生水分を水分吸着性物質3が吸着除去し、水分が吸着除去されたことにより、気体吸着活性を発現する銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2が工業的真空排気プロセスで除去しきれない気体および経時的に侵入する気体を吸着固定化する。その結果、断熱体6の断熱性能の向上を図ることができる。また、気体吸着材1による熱伝導率の増大を抑制することができるものである。
実施例7の気体吸着材1を適用した断熱体6における窒素吸着の評価結果を実施例8に示す。評価は、いずれも初期の内圧を1300Paとし、1ヶ月経過後の内圧を比較例3及び4の気体吸着材を適用した比較例5および6の断熱体と比較して行った。なお、気体吸着材1つあたりの重量は約2g、断熱体の芯材の占める空間体積は約400cmである。
(実施例8)
実施例7の気体吸着材を適用した断熱体にて、経時1ヶ月後の内圧は13Paであり、経時的な劣化は比較例5および6より小さく、外部より侵入した気体および内部発生ガスを気体吸着材がより効果的に吸着除去していると考える。
(実施の形態6)
図7は、本発明の実施の形態6における断熱体の断面図を示すものである。
本発明の実施の形態6の断熱体9は、芯材7と、ガスバリア性を有する外被材8と、気体吸着材1とを備え、芯材7と気体吸着材1とを外被材8で覆い外被材8の内部を減圧してなる。
気体吸着材1は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと水分吸着性物質とを含む。なお、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換率は、130%以上、250%以下の範囲である。
断熱体9は、芯材7として無機繊維集合体を、ガスバリア性を有する外被材8としてステンレス鋼からなる筐体を、気体吸着材1として銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2と水分吸着性物質3とを含むものを用いたものである。
以上のように構成された気体吸着材1は、工業的真空排気プロセスで除去しきれない水分及び内部発生水分を水分吸着性物質3が吸着除去し、水分が吸着除去されたことにより、気体吸着活性を発現する銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト2が工業的真空排気プロセスで除去しきれない気体および経時的に侵入する気体を吸着固定化する。その結果、断熱体9の断熱性能の向上を図ることができる。また、気体吸着材による熱伝導率の増大を抑制することができるものである。
以上のように本実施の形態における気体吸着材は、少なくとも、気体吸着材として銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと、前記銅イオン交換型ゼオライトの気体吸着活性を制御するための水分吸着性物質とを含むことにより、水分吸着性物質が、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト中のCuが水分接触によりCu−OHを形成し気体吸着不活性となることを抑制することができるため、前記銅イオン交換型ゼオライトが効果的に工業的真空排気プロセスで除去しきれない気体を吸着し、その結果、断熱体の断熱性能の向上を図ることができる。
また、気体吸着材による熱伝導率の増大を抑制することができるものである。
その結果、優れた断熱性能を有する高性能な断熱体を提供することができるものである。
次に本実施の形態における気体吸着材および断熱体に対する比較例を示す。評価方法は実施例に準じるものとする。また、いかなる吸着材をも適用しなかった断熱体の結果は比較例7に示す。
(比較例1)
従来既存の特許文献4のプロセスにてイオン交換するために、イオン交換溶液として酢酸銅水溶液を用いた。酢酸銅水溶液の濃度は、0.01Mとし、常温(25℃)にてイオン交換を30回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。熱処理は、実施例と同等とした。
熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは10.8cc/g、10Paでは4.6cc/gであった。
本比較例における、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換率は、121%であった。
(比較例2)
従来既存のプロセスにてイオン交換するために、イオン交換溶液として塩化銅水溶液を用いた。酢酸銅水溶液の濃度は、0.01Mとし、90℃にてイオン交換を20回行うことにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを調製した。熱処理は、実施例と同等とした。
熱処理後、25℃まで冷却し、窒素吸着特性を評価したところ、窒素吸着量は13200Paでは5.3cc/g、10Paでは2.0cc/gであった。
本比較例における、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換率は、111%であった。
(比較例3)
有効吸着成分のうち、酸化カルシウムを75wt%と、Ba−Li合金を5wt%と、コバルト酸化物を20wt%とを含むペレットを作製した。
24時間経過後の内圧は、13Paであり、熱伝導率は、0.130W/mkであった。
(比較例4)
有効吸着成分のうち、酸化カルシウムを75wt%と、比較例1の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを10wt%と、酸素吸着材4を15%とを含む、気体吸着材1を作製し、その24時間経過後の内圧と熱伝導率を測定した。
24時間経過後の内圧は、130Paであり、熱伝導率は、0.097W/mKであった。
(比較例5)
比較例3の気体吸着材を適用した断熱体にて、経時1ヶ月後の内圧は102Paであった。
(比較例6)
比較例4の気体吸着材を適用した断熱体にて、経時1ヶ月後の内圧は130Paであった。
(比較例7)
気体吸着材を適用しない断熱体にて、経時1ヶ月後の内圧は197Paであった。
以上の実施例1から実施例6と比較例1、比較例2の結果を(表1)に示す。
Figure 0005230919
(表1)から、本発明の実施例の銅交換されたZSM−5ゼオライトのイオン交換率が、比較例1および2と比べて、大きいことが分かる。それに伴い、窒素吸着量も増大している。
一方で、イオン交換回数は、比較例の1/10〜1/4に低減しており、イオン交換回数が低減するにもかかわらず、吸着量が増大しているとの結果が得られている。
本発明にかかる断熱体は、従来既存品よりも、より大容量の気体を吸着可能な気体吸着材を適用したために、本発明にかかる断熱体は、工業的真空排気プロセスで除去しきれない窒素およびその他気体を吸着し、その結果、断熱体の断熱性能の向上を図ることができる一方で、ゼオライト構造体は、気体吸着材による熱伝導率の増大を抑制することができるため、優れた断熱性能を発現可能なものである。
よって、冷凍冷蔵庫および冷凍機器をはじめとした温冷熱機器への効率的な利用が可能であり、省エネルギーに貢献できるあらゆる機器や、熱や寒さから保護したい物象などのあらゆる断熱用途に適用できる。
本発明による断熱体に用いる気体吸着材に含まれる有機−銅化合物におけるFT−IRスペクトルを示す特性図 本発明の実施の形態1による断熱体に用いる気体吸着材の製造方法を示すフローチャート 本発明の実施の形態2による断熱体の製造方法を示すフローチャート 本発明の実施の形態3による断熱体に用いる気体吸着材の概略断面図 本発明の実施の形態4による断熱体に用いる気体吸着材の概略断面図 本発明の実施の形態5による断熱体の断面図 本発明の実施の形態6による断熱体の断面図
符号の説明
1 気体吸着材
2 銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト
3 水分吸着性物質
6 断熱体
7 芯材
8 外被材
9 断熱体

Claims (2)

  1. 少なくとも、芯材と、ガスバリア性を有する外被材と、気体吸着材とを備え、前記芯材と前記気体吸着材とを前記外被材で覆い前記外被材の内部を減圧してなる断熱体であって、前記気体吸着材が、少なくとも、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなる気体吸着材であって、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換率が、178%以上、250%以下の範囲であり、かつ13200Paでの窒素吸着量が18.6cc/g以上であるとともに前記銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトに加え、イオン交換溶液を50℃から70℃に加熱することにより形成された有機−銅化合物を含むことを特徴とする断熱体。
  2. 前記気体吸着材が、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトに加え、少なくとも水分吸着性物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の断熱体。
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