JP4883855B2 - 電磁波吸収体の製造方法および電磁波吸収体 - Google Patents

電磁波吸収体の製造方法および電磁波吸収体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波回路用パッケージの内部に装着される電磁波吸収体の製造方法および電磁波吸収体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、高周波回路用パッケージでは、直方体状に形成された金属またはセラミックス等からなる蓋体をパッケージベースに取り付けることにより気密封止が行われている。従って、前記高周波回路用パッケージの内部には直方体状の空洞が形成されることから、高周波回路用パッケージ自体は空洞の寸法によって定まる遮断周波数より高い周波数帯域で空洞共振を生じる。前記遮断周波数より低い周波数帯域で動作する高周波半導体素子やその他の回路素子(以下、高周波半導体素子やその他の回路素子を単に素子という。)を高周波回路用パッケージに実装する場合には、前記空洞の寸法を小さくすることで、遮断周波数を前記素子が動作する周波数帯域よりも十分に高くし、空洞共振が発生する周波数帯域を狭めている。しかしながら、素子の動作周波数が高周波化するに伴い、空洞の寸法を小さくすることには限界があり、前記素子が動作する周波数帯域より空洞共振が生じる周波数の方が低くなるという問題を解決することができなかった。この問題を解決するために、近年、電磁波吸収体を高周波回路用パッケージの内部に装着して、空洞共振時の電界エネルギーや磁界エネルギーを吸収することにより、空洞共振を抑制する方法が提案されるようになっている。
【0003】
例えば、高周波回路用パッケージの内部に装着される電磁波吸収体としては、図4に示す高周波回路用パッケージ40のように、高周波回路用パッケージ40内に合成樹脂と磁性体粒子とからなる電磁波吸収体41を装着したものが提案されている(特願2001−197530号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図4に示す電磁波吸収体41は、合成樹脂と磁性体粒子とから形成されているため、電磁波吸収体41を150℃まで加熱する過程で合成樹脂より腐食性の脱離ガスが発生し、高周波回路用パッケージ40の内部に実装される半導体素子や伝送線路等に悪影響を及ぼすという課題があった。
【0005】
また、高周波回路用パッケージ40のダウンサイジングに伴い、電磁波吸収体41の厚みも薄くなり、そのため強度を高くすることが要求されるようになりつつあるが、合成樹脂の存在により、強度を高くすることができないという課題もあった。
【0006】
本発明の目的は、電磁波吸収体としての本来の特性、即ち電磁波吸収特性を向上させるとともに、150℃まで加熱する過程で脱離ガスを発生せず、しかも高い強度が得られる電磁波吸収体の製造方法および電磁波吸収体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題に対して検討を重ねた結果、本発明に係る高周波回路用パッケージの内部に装着される電磁波吸収体の製造方法は、炭素化合物と金属磁性体粒子とを含有してなる成形体を、大気雰囲気中で、かつ前記炭素化合物の熱分解温度よりも高い温度で加熱処理する工程を具備することを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の電磁波吸収体の製造方法により作製された電磁波吸収体は、炭素化合物と、表面の少なくとも一部が酸化した領域を有する金属磁性体粒子とからなるとともに、炭素化合物の含有量が1質量%以下であることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態として、高周波回路用パッケージの内部に装着される電磁波吸収体について説明する。
【0013】
本発明の電磁波吸収体は、例えば図1に示すように炭素化合物(図示せず)と、金属磁性体粒子11から形成され、この金属磁性体粒子11は、表面の少なくとも一部が酸化した領域を有するとともに、電磁波吸収体10に含まれる炭素化合物の含有量が1質量%以下であることが重要である。
【0014】
本発明の電磁波吸収体10を形成する金属磁性体粒子11としては、例えば、カーボニル鉄、パーマロイ、フェロシリコン、センダスト、アモルファス合金、電磁ステンレス鋼等があり、本発明においてはこれらのうち1種類以上を混合して用いることができる。
【0015】
この金属磁性体粒子11は、表面の少なくとも一部酸化した領域を有することで、酸化した領域を有さない場合より電磁波吸収体10の体積固有抵抗率を大きくすることができる。その結果、電磁波吸収体10に入射した電磁波は反射しにくくなるため、電磁波吸収特性が向上する。
【0016】
さらに、この金属磁性体粒子11は、表面に存在する酸化した領域が金属磁性体粒子11を覆う膜として形成される場合には、隣接する膜同士で強固に結合するため、強度も向上する。
【0017】
ここで、金属磁性体粒子11の表面に存在する酸化した領域を構成する酸化物は、例えば、NiO、NiFe24、Ni2Mo38、CaO、SiO2、ZnO等である。
【0018】
また、前記炭素化合物の含有量を1量%以下としたのは1量%を超えると、例えば光パッケージ内部に電磁波吸収体10を配設する場合、光パッケージを加熱する過程で、電磁波吸収体10より発生する脱離ガスが光パッケージ内のレンズ等に付着し光を吸収するためである。上記炭素化合物の含有量の好ましい範囲は0.5量%以下、より好ましい範囲は0.05量%以下である。
【0019】
ここで言う炭素化合物とは、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール等の合成樹脂、炭素、炭化水素系化合物、アセトアルデヒド、ベンゼン、トルエン、遊離フェノール、DOP等である。
【0020】
なお、上記金属磁性体粒子11の中でも、減衰量が大きいという点からNi、Fe、またはその合金の一種であるパーマロイが好ましく、パーマロイの中でも減衰量の大きいMoパーマロイが一層好適である。
【0021】
ここで、上記減衰量とは、高周波伝送線路の伝送特性、すなわち、4端子回路をインピーダンスが較正された高周波電源に接続したときの電力反射係数(S11)と透過係数(S21)より、以下の数式を用いて算出したものである。
【0022】
減衰量(dB)=20log|S21/1−S11
さらに、金属磁性体粒子11の平均粒径は50μm以下であることが好ましい。金属磁性体粒子11の平均粒径が50μm以上を超えると、100MHz以上の高周波帯域における電磁波吸収特性が低下するからである。
【0023】
なお、金属磁性体粒子11の平均粒径は1GHz以上の高周波帯域では15μm以下であることが好ましく、さらに、10GHz以上の高周波帯域では5μm以下であることが好ましく、金属磁性体粒子11の製造コストを考慮すると1μm以上であることが好ましい。
【0024】
また、金属磁性体粒子11の最大粒径は500μm以下とすることが好ましい。最大粒径を500μmより大きくすると、例えば、合成樹脂を使って造粒する場合、金属磁性体粒子11の分散性が悪いため、強度を十分に確保することができず、後述する粉末加圧成形後の離型時に欠けが発生し易くなるからである。
【0025】
なお、金属磁性体粒子11の平均粒径とは、金属磁性体粒子11を100〜200個抜き取り、その断面の左右、上下の寸法を各々測定した値の平均値をいい、最大粒径とは、その断面の左右、上下の寸法を測定した値のうちの最大長をいう。上記金属磁性体粒子11の平均粒径や最大粒径を求める場合、便宜的に電磁波吸収体10の任意の断面を画像解析装置によって測定すればよい。
【0026】
また、本発明に係る電磁波吸収体10は、150℃まで加熱する過程に発生する脱離ガス成分中に腐食性を有する化合物および炭化水素系化合物が含まれないことが重要である。ここで、腐食性の脱離ガスとは、F、Cl、Br元素等を含むハロゲン系ガスやS元素を含むガスをいう。
【0027】
例えば、図2に示すように電磁波吸収体10は、パッケージ蓋体21に装着されることから、電磁波吸収体10から脱離ガスが発生すると、パッケージベース22に形成された伝送線路23、パッケージベース22上に実装された半導体素子24、ワイヤー25等が腐食され、伝送特性の劣化の原因となる。
【0028】
また、例えば光パッケージ内部に電磁波吸収体10を配設する場合、光パッケージを加熱する過程で、電磁波吸収体10より発生する脱離ガスが光パッケージ内のレンズ等に付着し光を吸収し、感度低下の原因となる。
【0029】
これに対して、本発明の電磁波吸収体10は150℃まで加熱する過程で発生するガス中に腐食性を有する化合物および炭化水素系化合物が含まれないため、上記の伝送特性の劣化、感度低下を防止することができる。なお、このようにガス中に腐食性を有する化合物および炭化水素系化合物が含まれないようにするには、例えば、上述したように電磁波吸収体10の炭素化合物の含有量を1量%以下とすれば良い。
【0030】
次に、本発明の電磁波吸収体10の製造方法について説明する。
【0031】
例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール等の合成樹脂から選ばれる少なくとも1種の合成樹脂と金属磁性体粒子とを所定の比率、合成樹脂2.5〜7.5量%、金属磁性体粒子92.5〜97.5量%になるようにミキサー等を用いて混合する。ここで、合成樹脂を金属磁性体粒子と混合させたのは、後述の混練をしやすくするためである。
【0032】
さらに、上記添加剤以外にも本発明の要旨を逸脱しない限り、公知の硬化剤、硬化助剤、滑材、可塑剤、分散剤、離型剤、着色剤、増量剤(無機材)を添加しても何ら差し支えない。
【0033】
次に、混合した合成樹脂及び金属磁性体粒子を混練機で混練するか、加熱ロールで溶融混練した後、ミル等で粉砕する。ここで、粉砕を一層容易にするためにCaO、ZnO、SiO2等の粉体を少なくともいずれか1種添加してもよい。また、必要に応じて所定の粒度となるように乾燥噴霧機等で造粒してもよい。また、金属磁性体粒子の流れ性、成形性が良好で有れば、合成樹脂を用いなくても何ら差し支えない。
【0034】
その後、粉末加圧成形法により成形圧0.1〜10ton/cm2で成形し、大気雰囲気中500℃以上の温度で加熱処理する。
【0035】
ここで、大気雰囲気中500℃以上で加熱処理したのは、合成樹脂を焼失させ、炭素化合物の含有量を1量%以下とするためであり、かつ金属磁性体粒子の表面の少なくとも一部に酸化した領域を存在させるためである。保持時間は0時間でも良いが、合成樹脂を十分に焼失させる点から1時間以上が好ましい。
【0036】
また、一般的に合成樹脂の熱分解温度は300〜500℃であるため、500℃未満の温度で加熱処理すると、合成樹脂が焼失せずに1量%を超える炭素化合物として残留し、腐食性ガス、炭化水素系化合物を含むガスの発生原因となる。加えて金属磁性体粒子の表面酸化した領域を十分に有していないため必要な強度が得られない。
【0037】
上記のようにして得られた電磁波吸収体10の形状は、直方体に限らず、三角柱、三角錐、円柱あるいはそれらの組み合わせでも良い。また、電磁波吸収体10を装着する位置は高周波回路用パッケージ20の特性に影響が無く、且つ空洞共振、発振等を抑制できれば、高周波回路用パッケージ20内のどこでも良い。
【0038】
このような電磁波吸収体10は、空洞共振や半導体素子24より発生する不要輻射波、発振、結合等を抑制することができ、また、電磁波吸収体10から腐食性の脱離ガスの発生がないことから、信頼性の高い高周波回路用パッケージ20を得ることができる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
先ず、表1に示す金属磁性体粒子及び合成樹脂をミキサーで混合し、混練機で混練、粉砕した後、粉末加圧成形法にて成形し、得られた成形体を表1に示す加熱処理温度の条件に従い、所定形状の電磁波吸収体を得た。
【0041】
次に、上記電磁波吸収体に含有される金属磁性体粒子表面の酸化した領域の有無、電磁波吸収体に含まれる炭素量の重量及び電磁波吸収体の体積固有抵抗率を測定した。
【0042】
金属磁性体粒子表面の酸化した領域の有無については、X線回折法を用い、電磁波吸収体に含まれる炭素化合物量の測定については、炭素分析装置(堀場製作所(製)EMIA―511型)を用いた。
【0043】
また、電磁波吸収体の体積固有抵抗率については、上記電磁波吸収体の作製条件と同一条件で作製した外径50mm、厚み2mmの円盤状の試料を用い、JIS C 2141−1992に準拠して測定した。
【0044】
また、減衰量の測定については、図3に示すように電磁波吸収体10を外径7mm×4mm、高さ0.7mmの直方体に加工した後、伝送線路32が印刷されたセラミックス基板31上に載せた。また、電力反射係数(S11)及び入力信号に対する透過係数(S21)の測定については、ネットワークアナライザーを用いて100MHzから40.1GHzの帯域で測定した後、減衰量を算出した。
【0045】
また、室温から150℃まで加熱する過程に発生する脱離ガス中の腐食性ガスあるいは炭化水素系化合物を含むガスの有無については、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC−MS:Gas Chromatograph―Mass Spectrometer)により、コールドラップ法にて測定した。
【0046】
上記酸化物の有無、炭素量及び体積固有抵抗率の測定結果を表1に示す。表1の測定結果より、金属磁性体粒子の表面に酸化した領域がないもの、すなわち試料No.13、14については、金属磁性体粒子間の接触により体積固有抵抗率が低下し、十分な減衰量が得られないため使用できない。また、本発明の製造方法以外の製造方法にて作製された試料No.15〜17については、炭素化合物が金属磁性体粒子間の接触を防いでいることから十分な減衰量が得られているが、強度が非常に低く使用できない。さらに脱離ガスの発生があるため使用できない。
【0047】
一方、本発明の範囲内の試料、すなわち試料No.1〜12については、金属磁性体粒子表面酸化した領域を有しており、かつ炭素化合物の含有量が1量%以下であることから、十分な強度、減衰量が得られ、脱離ガスの発生もないため、好適に使用できる。
【0048】
また、表1の結果から明らかなように、試料No.15〜17は加熱処理温度が500℃以下であることから、合成樹脂を十分に焼失することが出来ないため、脱ガスの発生があり使用することができない。一方、試料No.1〜12については加熱処理温度が500℃以上であることから、合成樹脂を十分に焼失することができるため脱離ガスの発生が無く、また金属磁性体粒子表面は酸化した領域を有しているため十分な強度が得られ、好適に使用することができる。
【0049】
さらに表1の結果から明らかなように、金属磁性体粒子がNi、Feまたはその合金のいずれかであるもの(No.1〜12)は良好な減衰特性が得られている。
【0050】
また、表1の結果から明らかなように、試料No.4〜6は平均粒径が小さくなるに従い減衰特性が良好になり、特に平均粒径50μm以下の試料No.1〜5、試料No.7〜12は、良好な減衰特性が得られている。
【0051】
【表1】
Figure 0004883855
【0052】
【発明の効果】
以上詳述した通り、炭素化合物と金属磁性体粒子とを含有してなる成形体を、大気雰囲気中で、かつ炭素化合物の熱分解温度よりも高い温度で加熱処理する工程を具備する製造方法により作製された高周波回路用パッケージの内部に装着される電磁波吸収体炭素化合物と、表面の少なくとも一部が酸化した領域を有する金属磁性体粒子とからなるとともに、炭素化合物の含有量1質量%以下であることにより、十分な強度を有する電磁波吸収体を得ることができる。
【0055】
た、本発明の電磁波吸収体の製造方法よれば、炭素化合物と金属磁性体粒子とを含有してなる成形体を、大気雰囲気中で、かつ炭素化合物の熱分解温度よりも高い温度で加熱処理することにより、炭素化合物の含有量を1質量%以下とすることができ、かつ金属磁性体粒子の表面の少なくとも一部に酸化した領域を存在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電磁波吸収体の断面図である。
【図2】本発明の電磁波吸収体を用いた高周波回路用パッケージの断面図である。
【図3】本発明の電磁波吸収体の減衰量を測定するための装置の断面図である。
【図4】従来の電磁波吸収体を用いた高周波回路用パッケージの断面図である。
【符号の説明】
10・・・電磁波吸収体
11・・・磁性体粒子
20・・・高周波回路用パッケージ
21・・・パッケージ蓋体
22・・・パッケージベース
23・・・伝送線路
24・・・半導体素子
25・・・ワイヤー
30・・・減衰量測定装置
31・・・セラミック基板
32・・・伝送線路
40・・・高周波回路用パッケージ
41・・・フェライトと合成樹脂とからなる電磁波吸収体

Claims (2)

  1. 高周波回路用パッケージの内部に装着される電磁波吸収体の製造方法であって、炭素化合物と金属磁性体粒子とを含有してなる成形体を、大気雰囲気中で、かつ前記炭素化合物の熱分解温度よりも高い温度で加熱処理する工程を具備することを特徴とする電磁波吸収体の製造方法
  2. 請求項1に記載の製造方法により作製された高周波回路用パッケージの内部に装着される電磁波吸収体であって、該電磁波吸収体が、炭素化合物と、表面の少なくとも一部が酸化した領域を有する金属磁性体粒子とからなるとともに、炭素化合物の含有量が1質量%以下であることを特徴とする電磁波吸収体。
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