以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図1ないし図4を参照して説明する。なお、図1は同ヘッドの流路構成を説明する模式的平面説明図、図2は図1のY1−Y1線に沿う断面説明図、図3は図1のY2−Y2線に沿う断面説明図、図4は共通液室形成部材の模式的要部平面説明図である。
この液体吐出ヘッドに流路構成は、ノズル、液室などを含む液室ユニット101が複数個並んで配置され、それぞれが連通部(連通口)103を介して共通液室102に接続されている。共通液室102は、共通液室形成部材としてのフレーム部材105に形成されている。
なお、液室ユニット101は、液滴を吐出するノズル、ノズルが連通する液室(加圧液室)、圧力発生手段等により構成される。ここで、圧力発生手段は、電歪素子に電圧を印加して電歪素子を変形させることで液滴を吐出させる圧電型アクチュエータ、電気熱変換素子に電流を流すことで発熱により液体を発泡させることで液滴を吐出させるサーマル型アクチュエータ、振動板と電極間の静電力と振動板の機械的変位を用いる静電型アクチュエータなどで構成することができる。また、液室ユニット101は流路からノズル(吐出口)にかけての形状が直線的であるエッジシュータ方式であっても良いし、流路の向きとノズル(吐出口)の向きが異なるサイドシュータ方式であっても良い(図1はサイドシュータ方式)。
そして、この液体吐出ヘッドにおいては、複数の液室(液室ユニット101)が並ぶ方向に延びた共通液室102の壁面の少なくとも一つの壁面は、他の壁面よりも剛性が低く、振動によって圧力を吸収する圧力吸収体面104とし、液室が並ぶ方向をx方向、圧力吸収体面104に垂直な方向をz方向とし、x方向及びz方向に垂直な方向をy方向としたとき、圧力吸収体面104のy方向の幅として、寸法の異なる少なくとも2種類の幅(幅A、幅B、A<B)の領域104A、104Bが存在し、これら複数種の幅A、Bの領域104A、104Bが、x方向に繰り返し形成されている。
ここで、幅Bの領域104Bは2箇所のみ図示しているが、この幅Bの領域104Bの数は共通液室102のx方向長によって決定される。領域104Bの数をあまり多くすると、領域104Bによる圧力吸収効果が減少するため、3〜10箇所程度とするのが良い。但し、ライン型ヘッドなど、特にx方向長が長い場合、これ以上の数とすることもできる。
また、ここでは、圧力吸収体面104の一部に図2に示すように厚肉部114を形成することで圧力吸収体として機能しないようにすることで、y方向の幅が異なる領域104A、104Bを形成している。この場合、共通液室102の圧力吸収体面104に対応する領域は図4に示すように一定の幅としている。
このように構成することで、圧力吸収体面104の共振周波数の低下及び共振時の大きな振動を抑えることができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図5ないし図8を参照して説明する。なお、図5は同ヘッドの流路構成を説明する模式的平面説明図、図6は図5のY3−Y3線に沿う断面説明図、図7は図5のY4−Y4線に沿う断面説明図、図8は共通液室形成部材の模式的要部平面説明図である。
この液体吐出ヘッドに流路構成は、ノズル、液室などを含む液室ユニット101が複数個並んで配置され、それぞれが連通部(連通口)103を介して共通液室102に接続されている。共通液室102は、共通液室形成部材としてのフレーム部材105に形成されている。なお、液室ユニット101は、液滴を吐出するノズル、ノズルが連通する液室(加圧液室)、圧力発生手段等により構成される。
そして、この液体吐出ヘッドにおいては、複数の液室(液室ユニット101)が並ぶ方向に延びた共通液室102の壁面の少なくとも一つの壁面は、他の壁面よりも剛性が低く、振動によって圧力を吸収する圧力吸収体面104とし、液室が並ぶ方向をx方向、圧力吸収体面104に垂直な方向をz方向とし、x方向及びz方向に垂直な方向をy方向としたとき、圧力吸収体面104のy方向の幅として、寸法の異なる少なくとも2種類の幅(幅A、幅B、A<B)の領域104A、104Bが存在し、これら複数種の幅A、Bの領域104A、104Bが、x方向に繰り返し形成されている。
ここで、幅Bの領域104Bは2箇所のみ図示しているが、この幅Bの領域104Bの数は共通液室102のx方向長によって決定される。領域104Bの数をあまり多くすると、領域104Bによる圧力吸収効果が減少するため、3〜10箇所程度とするのが良い。但し、ライン型ヘッドなど、特にx方向長が長い場合、これ以上の数とすることもできる。
また、ここでは、圧力吸収体面104の厚さを一定とし、図6ないし図8に示すように、圧力吸収体面104を形成する部材を接合する共通液室形成部材(フレーム部材)105に、平面で見て凹凸形状(凸部105a、凹部105bとする。)を形成することで圧力吸収体面104の変形可能領域を規定することにより、y方向の幅が異なる領域104A、104Bを共通液室長手方向に繰り返し形成している。
このように構成することで、圧力吸収体面104の共振周波数の低下及び共振時の大きな振動を抑えることができる。また、この実施形態では圧力吸収体面104を形成する部材を一層構造とすることもでき、工法がより単純になる。
次に、上記各実施形態のおける作用効果を比較例との関係において説明する。
先ず、比較例の第1例に係る流路構成について、図9及び図10を参照して説明すると、前述したノズル、液室などを含む液室ユニット101が複数個並んで配置され、それぞれが連通部103を介して共通液室102に接続されている。共通液室102は、フレーム部材105に形成され、その一面は矩形状の圧力吸収体面104となっている。また、図11及び図12に示す第2例では、液室ユニット101、連通部103、共通液室102が直線状に並ぶ例(エッジシュータの例)である。
そこで、以下の4種の形状にて、前記第1実施形態の構成(実施例)、及び、図9及び図10に示す比較例の第1例の構成(比較例A、B、C)における、実際の圧力吸収効果の確認を行った。また、以下の4種の形状にて、共通液室102の圧力共振解析を行った。これは、駆動周波数を0〜10kHzに変えて駆動したときの、共通液室102の圧力値を評価するものである。なお、比較例A、B、Cにおいて、圧力吸収体面104は矩形状であるため幅A、幅Bという区別はないが、対比するために分けて示している。
比較例A 幅A 1600μm 幅B 1600μm
比較例B 幅A 2100μm 幅B 2100μm
従来例C 幅A 2600μm 幅B 2600μm
実施例 幅A 1600μm 幅B 2600μm
(実施例の圧力吸収面104の面積は比較例Bと同じになる。)
この結果を図13に示している。この結果から、まず、幅の最も狭い比較例Aでは、共振点は少ないものの、共振時の値は非常に大きくなっている(7kHz付近)。特に半値幅が大きいため、駆動周波数にかかる可能性が高くなっている。一方、幅の最も広い比較例Cでは、共振時の値は比較例Aよりも小さいが、共振点自体が増えている。これは圧力吸収体面104の共振点が、比較例A、Bに比べ、より低周波数領域で発生していることによる。
これに対し、実施例では、共振点は非常に少なく、特に、この例のヘッド自体の共振周波数(2.4kHz)付近以外では、大きな共振点がほとんど無い。特に、圧力吸収体面104の面積がより広い比較例Cよりも特性が良くなっている。このことから、本発明を適用することで、より少ない圧力吸収体面の面積で、より効果的な圧力吸収を行うことができ、効率的な圧力吸収効果が得られる。また、圧力吸収体面の面積を減らせば、前述したピンホール等の工程不良問題の発生頻度も減らすことができ、生産性の向上につながる。
次に、本発明の第3実施形態について図14及び図15を参照して説明する。
この実施形態は、個別液室の列(ノズル列と同じ)が複数列ある例である。ここでは、液室ユニット101の列101aと101bとを有し、各液室ユニット列101a、101bの間に、液室ユニット101aにインクを供給する共通液室102aと、液室ユニット列101bにインクを供給する共通液室102bが配置されている。そして、隣接する共通液室102a、102bの圧力吸収体面104a、104bがxy面上にて勘合状に入り込んで配置されている。
つまり、一方の共通液室102aの凸部(圧力吸収体面104aの幅Bの領域104Bとなる部分)を、隣接する他方の共通液室102bの凹部(圧力吸収体104bの幅Aの領域104Aとなる部分)に食い込むように配置されている。この場合の共通液室102a、102bの構造は、図15に示すように、フレーム部材105に隔壁部106を形成することで、各圧力吸収体面104a、104bに幅Aの領域104A及び幅Bの領域104Bが形成される構成としている。
このように構成することで、紙面左右方向、即ちy方向の距離を短くすることができ、ヘッドを小型化することができる。なお、フレーム部材105は各液室ユニット列101a,101bに対応して別のフレーム部材とすることもでき、この場合には2つのフレーム部材の平面形状を図15に示す共通液室102a、102bの形状と同じく凹凸状とすればよい。
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドの第4実施形態について図16ないし図18を参照して説明する。なお、図16は同液体吐出ヘッドの液室長手方向(液室の並び方向と直交する方向)に沿う断面説明図、図17は同じく液室短手方向(液室の並び方向)に沿う断面説明図、図18は共通液室部分の平面説明図である。
この液体吐出ヘッドは、流路部材(液室基板)1と、この流路部材1の下面に接合した振動板部材2と、流路部材1の上面に接合したノズル板3とを有し、これらによって液滴(液体の滴)を吐出するノズル4が連通する個別流路(以下「加圧液室」ともいう。)6を形成し、各加圧液室6に振動板部材2に設けた連通部9及び流路部材1に形成した連通路10、流体抵抗部7を介してインクを供給する共通液室8は後述するフレーム部材17に形成している。
ここで、流路部材1は、結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで各加圧液室6や流体抵抗部7、連通路10などの開口、溝を形成している。なお、流路部材1は、SUS基板を、酸性エッチング液を用いてエッチング、あるいは打ち抜きなどの機械加工することで、各加圧液室6などを形成することもできるし、また、流路部材1とノズル板3或いは振動板部材2とを電鋳で一体形成することもできる。その他感光性樹脂などを用いることもできる。
振動板部材2は、加圧液室6側から第1層2a、第2層2b、第3層2cの3層構造のニッケルプレートで形成したもので、例えば電鋳によって作製している。なお、この振動板部材2は、例えば、ポリイミドなどの樹脂部材とSUS基板などの金属プレートとの積層部材、或いは、樹脂部材から形成したものなどを用いることもできる。
ノズル板3は、各加圧液室6に対応して多数のノズル4を形成し、流路部材1に接着剤接合している。このノズル板3としては、ステンレス、ニッケルなどの金属、ポリイミド樹脂フィルムなどの樹脂、シリコン、及びそれらの組み合わせからなるものを用いることができる。また、ノズル4の内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。)に形成し、このノズル4の穴径はインク滴出口側の直径で約20〜35μmとしている。
また、ノズル板3のノズル面(吐出方向の表面:吐出面)には、図示しない撥水性の表面処理を施した撥水処理層を設けている。撥水処理層としては、例えば、PTFE−Ni共析メッキやフッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えばフッ化ピッチなど)を蒸着コートしたもの、シリコン系樹脂・フッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等、記録液物性に応じて選定した撥水処理膜を設けて、記録液の滴形状、飛翔特性を安定化し、高品位の画像品質を得られるようにしている。
そして、振動板部材2には、各加圧液室6に対応して第1層2aで形成した変形可能な領域であるダイアフラム部(振動領域)2Aの中央部に第2層2b及び第3層2cの積層構造からなる凸部2Bを形成し、この凸部2Bに圧力発生手段(アクチュエータ手段)を構成する積層型の圧電素子12Aをそれぞれ接合している。
複数の圧電素子12Aは、1つの圧電素子部材12にハーフカットの溝加工(スリット加工)によって分断することなくことなく櫛歯状に形成したものであり、圧電素子部材12は複数個の圧電素子12Aの並び方向に沿ってベース部材13上に固定配置している。この場合、1列に並ぶ複数の圧電素子は、交互に駆動する圧電素子12Aと単なる支柱部となる駆動されない圧電素子12Bとなる。支柱部となる圧電素子12Bは液室間隔壁部6Aに対応する部分に接合している。
圧電素子部材12は、例えば厚さ10〜50μm/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層と、厚さ数μm/1層の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極層とを交互に積層したものであり、内部電極を交互に端面の端面電極(外部電極)である個別電極及び共通電極にそれぞれ電気的に接続したものである。この圧電定数がd33(d33は内部電極面に垂直(厚み方向)の伸び縮みを指す。)である圧電素子12Aの伸縮により振動領域2Aを変位させて液室6を収縮、膨張させるようになっている。圧電素子12Aに駆動信号が印加され充電が行われると伸長し、また圧電素子12Aに充電された電荷が放電すると反対方向に収縮する。
なお、圧電素子部材12の圧電方向としてd33方向の変位を用いて加圧液室6内インクを加圧する構成とすることも、圧電素子部材12の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室6内インクを加圧する構成とすることもできる。本実施形態ではd33方向の変位を用いた構成をとっている。
ベース部材13は金属材料で形成することが好ましい。ベース部材13の材質(材料)が金属であれば、圧電素子部材12の自己発熱による蓄熱を防止することができる。
さらに、振動板部材2の周囲にはフレーム部材17を接着剤で接合している。そして、このフレーム部材17には各液室6に液体を供給する共通液室8を形成している。この共通液室8から振動板部材2に形成した連通部9を介して液室6にインクが供給される。なお、フレーム部材17には共通液室8に外部からインクを供給するためのインク供給口も形成される。
この共通液室8は、加圧液室6の並び方向(ノズル並び方向:これを「共通液室長手方向」とする)に平面形状で長方形状に形成している。そして、この共通液室8を形成する壁面の中で、少なくとも一つの壁面は、振動板部材2の第1層2aで形成することにより、フレーム部材17で形成される他の壁面よりも剛性が低い圧力吸収体面20としている。
この圧力吸収体面20は、振動板部材2の第1層2aで形成されている。そして、図17に示すように、振動板部材2の第1層2a〜第3層cで形成された厚さが相対的に厚い厚肉部22を前記第1実施形態と同様に共通液室18の長手方向(ノズル並び方向)に間隔を置いて設けることで、圧力吸収体面20にはy方向の幅が相対的に狭い幅Aの領域20Aと相対的に広い幅Bの領域20Bとが、共通液室18の長手方向に繰り返し形成されている。
なお、厚肉部22を2層構造とし、圧力吸収体面20を1層構造とし、あるいは、厚肉部22を3層構造とし、圧力吸収体面20を2層構造としても良い。
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子12に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子12が収縮し、振動板2が下降して加圧液室6の容積が膨張することで、加圧液室6内にインクが流入し、その後圧電素子12に印加する電圧を上げて圧電素子12を積層方向に伸長させ、振動板2をノズル4方向に変形させて加圧液室6の容積/体積を収縮させることにより、加圧液室6内の記録液が加圧され、ノズル4から記録液の滴が吐出(噴射)される。
そして、圧電素子12に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板2が初期位置に復元し、加圧液室6が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室8から加圧液室6内に記録液が充填される。そこで、ノズル4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。引き打ちとは、基準電位から電位を下げて圧電素子を収縮させて加圧液室の内容積を増加し後電位を基準電位まで戻すことによって振動板を初期位置に復帰させて液滴を吐出させる打ち方、押し打ちとは基準電位から電位を上げて振動板を加圧液室側に押し込むことで液滴を吐出させる打ち方である。
このようにしてノズル4から液滴を吐出させるために加圧液室6内に圧力変動が生じさせると、加圧液室6内の圧力変動が流体抵抗部7、連通路10、連通部9を通じて共通液室8に伝播される。これにより、共通液室8に圧力変動が生じるが、圧力吸収体面20が振動することで、伝播した圧力変動を減衰させるので、液滴を吐出させる加圧液室6の圧力を変動させて所要の滴体積、滴速度で液滴を吐出できなくなったり、液滴を吐出させない加圧液室6の圧力を変動させてノズルメニスカスを崩して、インクが漏洩したり、液滴が吐出されたりすることが防止され、安定して滴吐出を行うことができる。
そして、この実施形態においても、圧力吸収体面20の共振周波数の低下及び共振時の大きな振動を抑えることができ、少ない面積で大きな圧力吸収効果を得ることができる。
次に、本発明の第5実施形形態に係る液体吐出ヘッドについて図19及び図20を参照して説明する。なお、図19は同液体吐出ヘッドの液室長手方向(液室の並び方向と直交する方向)に沿う断面説明図、図20は共通液室部分の平面説明図である。
この実施形態は、圧力吸収体面20を振動板部材2の第1層2aで形成し、前記第2実施形態と同様に共通液室8を形成するフレーム部材17の形状によって圧力吸収体面20にy方向の幅が相対的に狭い幅Aの領域20Aと相対的に広い幅Bの領域20Bとが、共通液室18の長手方向に繰り返し形成されている構成としたものである。その他の構成及び作用は前記第4実施形態と同様である。
なお、これらの第4、第5実施形態のように、圧力吸収体面をNiよって形成することで、振動板部材と共通化することができ、また、加工が容易で、大面積の圧力吸収体面の形成にも適し、比較的低コストのプロセスで形成することができる。
次に、上記第4実施形態の具体例について説明する。
流路部材1として高さ500μmのSiを用い、これに高さ100μm、長手方向の長さ1000μm、短手方向の幅170μmの加圧液室6を形成する。Ni電鋳により厚さ20μmのノズル板3を形成する。振動板部材2は、Ni電鋳による3層構造とし、液室6側より、3μm(第1層2a)、11.5μm(第2層2b)、11.5μm(第3層2c)の厚さとする。振動板部材2の第1層2aで圧力吸収体面20を形成している。
圧力発生手段として圧電素子12Aを用い、これをベース部材13に固定し、連結部2Bを介して加圧液室6を加圧する。なお、圧電素子12Aは、銀・パラジュームによる電極を上下に挟んだ16層積層配置構造とする。
共通液室8はエポキシ樹脂によって形成されたフレーム部材17に形成され、深さ3000μm、短手方向長さ(図16にて紙面左右方向長さ)2600μm、長手方向長さ(図1にて紙面垂直方向長さ)54000μmとなっている。
圧力吸収体面20は、部分的に厚肉部22が形成され、この厚肉部22は、フレーム部材17の共通液室8の壁面端部から800μmせり出すように形成されている。この厚肉部22形成領域を含め、圧力吸収体面20の最大幅(紙面左右方向の幅)は1600μmとなっている。
また、厚肉部22は、紙面垂直方向にて、存在する箇所と存在しない箇所があり、これによって幅A(800μm)の領域と幅B(1600μm)の領域の二種類の圧力吸収面の幅が存在し、共通液室8の長手方向に繰り返し形成されている。凸部の長さ(図18におい、幅Bとなる領域20Bのx方向長さ)は、一箇所当たり8000μmであり、x方向に合計3箇所存在している。
比較例として、同一構成で厚肉部22を除去したヘッドを作製した。
これらの第4実施形態に係るヘッドと比較例に係るヘッドをプリンタに搭載し、印字試験を行った。その結果、比較例のヘッドを搭載したプリンタでは、一部のチャートで白スジ発生といった不良画質が発生したが、上記実施形態のヘッドを搭載したプリンタでは不良画質を発生することのない、良好な結果が得られた。
次に、上記第5実施形態の具体例について説明する。
流路部材1として高さ500μmのSiを用い、これに高さ100μm、長手方向の長さ1000μm、短手方向の幅170μmの加圧液室6を形成する。Ni電鋳により厚さ20μmのノズル板3を形成する。振動板部材2は、Ni電鋳による3層構造とし、液室6側より、3μm(第1層2a)、11.5μm(第2層2b)、11.5μm(第3層2c)の厚さとする。振動板部材2の第1層2aで圧力吸収体面20を形成している。
圧力発生手段として圧電素子12Aを用い、これをベース部材13に固定し、連結部2Bを介して加圧液室6を加圧する。なお、圧電素子12Aは、銀・パラジュームによる電極を上下に挟んだ16層積層配置構造とする。
共通液室8はエポキシ樹脂によって形成されたフレーム部材17に形成され、深さ3000μm、短手方向の最大長さ(図19にて紙面左右方向長さ)2600μm、長手方向長さ(図19にて紙面垂直方向長さ)54000μmとなっている。共通液室8には、短手方向の長さが2600μmの領域と1800μmの領域が存在している。2600μmとなる領域は、共通液室長手方向(x方向)に4箇所あり、一箇所当たりのx方向長さは6000μmである。
この共通液室8の短手方向長さに対応し、圧力吸収体面20の幅(紙面左右方向の幅)は1600μm及び800μmの各領域が繰り返し形成されている。但し、圧力吸収体面20を構成する振動板部材2の第1層2a自体はxy平面で見たときに長方形形状をしており、共通液室8の構造により2種類の幅の領域が形成されている。
比較例として、同一構成で圧力吸収体面20を全て第1層2aの厚さ3μmの矩形状としたヘッドも作製した。
これらの第5実施形態に係るヘッドと比較例に係るヘッドをプリンタに搭載し、印字試験を行った。その結果、比較例のヘッドを搭載したプリンタでは、一部のチャートで白スジ発生といった不良画質が発生したが、上記実施形態のヘッドを搭載したプリンタでは不良画質を発生することのない、良好な結果が得られた。
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを備える本発明に係る液体吐出装置を含む画像形成装置の一例について図21及び図22を参照して説明する。なお、図21は同装置の機構部の全体構成を説明する概略構成図、図22は同機構部の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板201A、201Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド234a、234b(区別しないときは「記録ヘッド234」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
また、キャリッジ233には、記録ヘッド234のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク235a、235b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク235には各色の供給チューブ36を介して、各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド244を備え、この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド部材245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えるとともに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
また、装置本体1の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける液体回収容器であるインク回収ユニット(空吐出受け)288を配置し、このインク回収ユニット288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
このようなシリアル型画像形成装置において、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えることによって、安定した滴吐出を行うことができ、高速で高画質画像を形成することができる。
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置を含む画像形成装置の他の例について図23を参照して説明する。なお、図23は同画像形成装置の概略構成図である。
この画像形成装置はフルライン型ヘッドを備えたライン型画像形成装置であり、装置本体401の内部に画像形成部402及び用紙を搬送する搬送機構403等を有し、装置本体401の一方側に多数枚の用紙405を積載可能な給紙トレイ404を備え、この給紙トレイ404から給紙される用紙405を取り込み、副走査搬送機構403によって用紙405を搬送しながら画像形成部402によって所要の画像を記録した後、装置本体401の他方側に装着された排紙トレイ406に用紙405を排紙する。
画像形成部402は、インクを収容した液体タンクを一体にし、用紙の幅方向(搬送方向と直交する方向)の長さ相当分のノズル列を有する本発明に係る液体吐出ヘッドで構成したライン型ヘッド410y、410m、410c、410kを備えたものである。これらのライン型ヘッド410y、410m、410c、410kは図示しないヘッドホルダに取り付けている。
ライン型ヘッド410y、410m、410c、410kは、用紙搬送方向上流側からそれぞれ例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順に各色の液滴を吐出する。なお、ライン型ヘッドとしては、各色の液滴を吐出する複数のノズル列を所定間隔で配置した1つのヘッドを用いることもできるし、ヘッドと液体カートリッジを別体としたものを用いることもできる。
給紙トレイ404の用紙405は、給紙コロ421によって1枚ずつ分離され装置本体401内に給紙され、用紙供給ローラ422によって搬送機構403に送り込まれる。
この搬送機構403は、駆動ローラ423と従動ローラ424との間に掛け渡した搬送ベルト425と、この搬送ベルト425を帯電させるための帯電ローラ426と、搬送ベルト425を画像形成部2に対向する部分で案内するガイド部材(プラテンプレート)427と、搬送ベルト425に付着した記録液(インク)を除去するためのクリーニング手段である多孔質体などからなる記録液拭き取り部材(ここでは、クリーニングローラ)428と、用紙405を除電するための導電ゴムを主体とした除電ローラ429と、用紙405を搬送ベルト425側へ押える用紙押さえローラ430とを備えている。
また、搬送機構403の下流側には画像が記録された用紙405を排紙トレイ406に送り出すための排紙ローラ431を備えている。
このように構成したライン型画像形成装置においても、搬送ベルト425を帯電させて用紙405を送り込むことによって、静電力で用紙405が搬送ベルト425に吸着されて、搬送ベルト425の周回移動によって搬送され、画像形成部402によって画像が形成されて、排紙トレイ406に排紙される。
このようなライン型画像形成装置において、本発明に係る液体吐出ヘッドを含む本発明に係る液体吐出装置を備えることによって、安定した滴吐出を行うことができるので、高速で高画質画像を形成することができる。
なお、本発明に係る液体吐出装置、画像形成装置は、例えば、プリンタ/ファックス/コピアの単機能機やこれらの複合機などの画像形成装置に適用することができる。また、インク以外の液体である記録液や定着処理液などを用いる画像形成装置、その他の前述したような各種の液体を吐出する画像形成装置にも適用することができる。