JP4873790B2 - 紫外線遮蔽フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化亜鉛微粒子を配合し、透明性、紫外線遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、紫外線により、食品、医薬品、化粧品等の変質や劣化、並びに色彩を帯びた衣服、精密機器、書籍、文房具等の退色が促進されることが知られており、それを防ぐために種々の方法が取られてきた。最も簡単な方法は、これらの物品をアルミニウム等の金属箔や金属薄膜等で遮光することであるが、その場合は、紫外線は遮蔽されるものの可視光線も遮蔽されるため、金属箔等をとおして外部から内容物を確認することが困難となり、また内容物である商品の陳列性に問題があった。
【0003】
従って、包装材料等としては、透明な基材フィルムに紫外線吸収剤を添加し、紫外光は遮蔽するが可視光は通し、内容物が確認できる透明な樹脂フィルムとしたものが好ましく使用されている。紫外線吸収剤としては、従来、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の有機系紫外線吸収剤が知られており、当該有機系の紫外線吸収剤を添加配合したフィルムは、容易に透明なフィルムとなしうるが、当該添加した紫外線吸収剤が時間経過と共にフィルム表面にブリードアウトし、紫外線吸収能が低下するという問題があった。また、有機系の紫外線吸収剤がフィルム表面にブリードアウトすると、安全性に問題が生じ、特に食品包装用には使用しにくいという問題があった。
【0004】
これに対し、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子等の無機系紫外線吸収剤は、ブリードアウトの問題はなく、安全性等の観点からは、極めて好ましいものである。しかしながら、酸化亜鉛粒子等の無機粒子は、基材フィルムを構成する熱可塑性樹脂等との相溶性がないため、透明性が低下するという大きな問題があり、これを防ぐために、粒子径が可視光線の波長より短い、例えば0.1μm程度以下に微細化した無機粒子を用いる多くの提案がなされている。
【0005】
例えば、特開昭62−16356号には、紫外線遮蔽材として酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等の紫外線吸収剤を用いた透明な合成樹脂フィルムが開示されている。しかしながら、使用する粒子については、近年開発された平均粒径0.1μm以下の酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、炭酸カルシウムを用いることが、紫外線遮蔽性、透明性、安全性において好ましい、としているのみで、微粒子状の酸化亜鉛については具体的に開示されていない。
【0006】
また特開平2−75683号には、0.01〜1μmの白色または淡色系の金属酸化物微粒子を高分子材料含有溶媒中に分散せしめたガラス用紫外線及び赤外線吸収剤を、ガラス表面に塗布する技術が開示されている。これらはいずれも、紫外線、赤外線吸収剤と高分子物質を分散媒中に分散したものをガラス表面に塗布・乾燥することによってガラス表面に金属酸化物微粒子を含有するフィルム層を形成するものであるが、透明な熱可塑性樹脂に直接練り込んで、これをフィルムに成形することは記載されていない。
【0007】
特開平5−97156号には、主として平均粒径が0.2μm以下の酸化亜鉛微粒子を、密度0.04〜0.8g/(m2 ・μm)の割合で均一に分散させたウレタン系接着剤層を有する包装材について詳細に開示されているが、ポリオレフィンや塩化ビニル等の熱可塑性樹脂フィルムに練り込むことについての具体的な開示はされていない。
【0008】
特開平6−238829号には、プラスチックフィルムの原料樹脂中に粒径約0.01〜0.5μmの酸化亜鉛や酸化チタンを含む無機質微粉末を混入することにより、波長200〜380nmの紫外線の透過率が5%以下で、波長400〜700nmの可視光線の透過率が20%以上であるような光線透過特性を付与したプラスチックフィルム、及びその片面に粘着剤層を設けてなる表面保護フィルムが提案されている。しかしながら、この酸化チタンを添加・使用したフィルムの可視光線の透過率は、具体的な実施例によると25〜35%程度であり、透明性フィルムと称するに不十分な透過率であった。
【0009】
特開平7−173303号には、ポリテトラフルオロエチレン層中に粒径0.005〜0.015μm程度の酸化亜鉛微粒子を分散した厚み3〜15μm程度の紫外線遮断フィルム等が提案されている。しかしながらこのフィルムは、基材フィルムとしてポリテトラフルオロエチレンを用いているため、その具体的な実施例によれば、厚さが8μmと薄いにも拘わらず、元々のフィルムの平行光線透過率が88%と低く、これに酸化亜鉛を添加すると、さらに75%まで下がってしまうという透明性に欠けるフィルムであった。またポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系フィルムは製造コストが高く、包装用フィルムとしては汎用的には用いられにくいという問題もある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
紫外線は、基本的に、波長290〜320nmのB紫外線(以下、UV−Bと称する。)と、320〜400nmのA紫外線(以下、UV−Aと称する。)とに大別される。従来は、これらの紫外線の内、主として有害なUV−Bのみを遮蔽すればよいとされていたが、近年、皮膚の弾力性を弱め老化皮膚を呈する等UV−Aの有害性が認識されるようになると共に、UV−Aをも遮蔽することが強く望まれるようになった。しかして、従来から用いられている酸化チタンでは、このUV−Aの遮蔽には十分対応できないことから、UV−A遮蔽能の高い酸化亜鉛が注目され、特にこれを添加・含有した透明フィルムが望まれている。
【0011】
本発明は、かくして、紫外線の有害性を防ぐためにUV−A遮蔽能の高い酸化亜鉛微粒子を練り込んだ、安価で内容物の確認が容易な透明熱可塑性樹脂フィルムを提供することを目的としている。
【0012】
かかる酸化亜鉛を含有する透明な熱可塑性樹脂フィルムに関しては、上記したように従来技術において、すでに述べたいくつかの提案がなされている。
【0013】
これら従来の酸化亜鉛等を用いたフィルムにおいては、添加する当該酸化亜鉛粒子の粒径を出来るだけ小さくすることにより、可視光透過率が高い透明なフィルムが得られるとしている。しかしながら、本発明者らが詳細に検討したところによれば、このように単に可視光線透過率を高くしようとするだけでは、実用的なフィルムの特性を評価する指標としては全く不十分なのであり、さらに、ヘーズ値すなわち曇度の評価を考慮に入れることがきわめて重要であることを見いだした。
【0014】
ここでヘーズとは、フィルムの透明性を表す尺度であって、例えばJIS K7136(プラスチック−透明材料のヘーズの求め方)に規定されているように、試験片を通過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から0.044rad以上それた透過光の百分率として定義されものである。
【0015】
光線透過率が高いフィルムであっても、このヘーズ値が大きいフィルムは、入射した光のかなりの部分が光の散乱により拡散してしまうことを意味し、要するに曇りガラスのように、光は通すものの曇っているフィルムであって、内容物が確認しにくく、実用上真に透明なフィルムとは言い難いのである。上記した従来の紫外線遮蔽用のプラスチックフィルムにおいては、単に可視光線領域の透過率を高くすることについてのみ検討されており、この透明性についての重要な指標であるヘーズ値については全く認識・検討されていない。当然のことながら、本発明者らの検討によれば、従来のものは、きわめて不十分なフィルムでしかなかった。
【0016】
このように、従来の紫外線遮蔽用プラスチックフィルムは、光の透過率は高いものの、実際は曇りガラスのように曇ってしまっているため、内容物を明瞭に見ることはできないフィルムであった。例えば、食品等を当該紫外線遮蔽フィルムで包装した場合、消費者は、基本的に内容物の良し悪し、食品の新鮮さ、光沢等を自らの目で確認し購買の可否を決定する。そのため、透明な(曇っていない)包装フィルムであることを強く望んでいる。にもかかわらず、従来は、その希望に十分応えられるような、実用的にヘーズ値が低い曇りのないフィルムは実質的に存在してはいなかったのである。
【0017】
酸化亜鉛は、UV−A遮蔽能が高く紫外線遮蔽剤としては極めて好ましいものであるが、本発明者らの検討によれば、酸化亜鉛はもともと凝集力が強く、しかも可視光線透過率を高くするため、従来技術におけるように、十分微粒子にした場合は、その比表面積が極めて大きいことから、当該凝集力もより大きなものとなってしまう。従って、このような微粒子状の酸化亜鉛をフィルム等に練り込む場合には、当該微粒子状の酸化亜鉛がポリマーに十分に分散せず、可視光線透過率は一応高く、光は透過するものの、本来の望ましい特性である粒子径の小ささによる(曇りのない)透明性を出すことは、困難であった。すなわち、単に酸化亜鉛の粒径(1次粒径)を小さくするだけでは、曇りのない透明なフィルムを得ることは困難であったのである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の粒径、嵩密度を有する酸化亜鉛微粒子をシリコン油で処理した粒子を使用することにより、ヘーズが十分低く、可視光に透明な紫外線遮蔽透明熱可塑性樹脂フィルムが得られることを見いだし本発明を完成した。
【0019】
すなわち本発明に従えば、以下の発明が提供される。
(1) 実質的に酸化亜鉛からなる微粒子を透明熱可塑性樹脂フィルムに添加配合した紫外線遮蔽樹脂フィルムにおいて、当該実質的に酸化亜鉛からなる微粒子を膜厚30μmのフィルムに2質量%添加したときのヘーズ値の上昇が、当該粒子を添加する前に比較して15以下であることを特徴とするヘーズが低く可視光に透明な紫外線遮蔽透明熱可塑性樹脂フィルム。
【0020】
(2) 実質的に酸化亜鉛からなる微粒子は、その透過型電子顕微鏡で測定された平均1次粒子径が0.03μm以下、嵩密度が0.3g/ml以下であり、かつ、シリコン油により表面処理されたものである(1)に記載の紫外線遮蔽透明熱可塑性樹脂フィルム。
【0021】
(3) 熱可塑性樹脂フィルムに用いられる樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン及びポリ酢酸ビニルからなる群より選択される(1)又(2)に記載の紫外線遮蔽熱可塑性樹脂フィルム。
【0022】
(4) 実質的に酸化亜鉛からなる微粒子をポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はポリ塩化ビニリデンフィルムに添加配合した紫外線遮蔽透明フィルムにおいて、当該実質的に酸化亜鉛からなる微粒子を膜厚30μmのフィルムに2質量%添加したときのヘーズ値が20以下であることを特徴とする可視光に透明な紫外線遮蔽透明フィルム。
【0023】
(5) 実質的に酸化亜鉛からなる微粒子であって、その透過型電子顕微鏡で測定された平均1次粒子径が0.03μm以下、嵩密度が0.3g/ml以下であり、かつ、シリコン油により表面処理されたものであることを特徴とする紫外線遮蔽透明熱可塑性樹脂フィルム配合用酸化亜鉛微粒子。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0025】
本発明における実質的に酸化亜鉛からなる微粒子とは、X線回折による主たるピークが酸化亜鉛であることを示すものであればよく、酸化亜鉛の他に、合成時に混入した不純物、原料に含まれる不純物、未反応原料等を含んでいてもよいことを意味する。更に、酸化亜鉛の分散性や導電性を向上させる機能を有する物質、例えばAl あるいはSiの酸化物もしくは水酸化物の内、1種ないしは2種を、酸化亜鉛に対し質量比で0.1〜20%程度有していても、その粉末がX線回折によるピークが酸化亜鉛であることを示すものであればよい。以下、かかる実質的に酸化亜鉛からなる微粒子を、単に酸化亜鉛または酸化亜鉛微粒子と称することがある。
【0026】
本発明において使用するに好ましい実質的に酸化亜鉛からなる微粒子は、その透過型電子顕微鏡で測定された平均1次粒子径が0.03μm以下、嵩密度が0.3g/ml以下であり、かつ、シリコン油により表面処理されたものである。なお、透過型電子顕微鏡で酸化亜鉛粒子の平均1次粒子径を測定する場合は、100〜10000個程度の粒子の粒径を直接観察するか、又は写真撮影して、その各粒子の粒径をスケールで測定してこれを平均して算出する。
【0027】
まず本発明における酸化亜鉛微粒子は、その透過型電子顕微鏡で測定された平均1次粒子径が0.03μm以下、好ましくは0.025μm以下、0.005μm以上に微粒子化されているものである。
【0028】
当該粒子の平均1次粒子径が0.03μmを越えた場合は、基本的に可視光線の透明性が阻害され好ましくない。
【0029】
また使用する酸化亜鉛微粒子は、嵩密度が0.3g/ml以下、好ましくは0.25g/ml以下、0.05g/ml以上のものである。
【0030】
ここで酸化亜鉛微粒子の嵩密度とは、シリコン油で表面処理された後の当該微粒子を、JIS K5101に基づき測定した値であるが、この値が0.3g/ml以下と、きわめて低い値であることは、酸化亜鉛の真密度が5.6g/mlであることを考慮すると、その空間占有率がわずか5%以下と非常に小さいことを意味する。すなわち、本発明における酸化亜鉛微粒子は、ミクロのレベルで考察すると、空間を極めて疎な状態で占拠していることを意味し、いわば空間中にバラバラの状態で存在していると言えるのである。このため、本発明における酸化亜鉛粒子は、きわめて分散し易い状態であることにより特徴づけられるのである。なお、上記した嵩密度に対応するシリコン油で表面処理する前の酸化亜鉛微粒子の嵩密度は、嵩密度が0.25g/ml以下、好ましくは0.15g/ml以下のものである。
【0031】
本発明において、上記の如き実質的に酸化亜鉛からなる微粒子は、さらにその表面がシリコン油で表面処理されているものである。
【0032】
ここで表面処理に使用するシリコン油とは、比較的低重合度の鎖状オルガノポリシロキサンを主体とするものが好ましい。例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、パーフルオロシリコン、ポリエーテル変性シリコン、ポリエーテル変性シリコン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、フェニルハイドロジェンポリシロキサン、アルキルポリシロキサン、末端水酸基含有ジメチルポリシロキサン、末端水酸基含有メチルフェニルポリシロキサン等のシリコン油が好ましいものとして例示される。
【0033】
本発明は、上記のごとき実質的に酸化亜鉛からなる微粒子を、透明熱可塑性樹脂フィルムに添加配合した紫外線遮蔽樹脂フィルムであって、この実質的に酸化亜鉛からなる微粒子を膜厚30μmのフィルムに2質量%添加したときのヘーズ値の上昇(ΔH(=H−H0)、ここでH0は添加前のヘーズ値、Hは酸化亜鉛添加後のヘーズ値を示す。)が、当該粒子を添加する前に比較して15以下である可視光に透明な紫外線遮蔽透明熱可塑性フィルムである。
【0034】
酸化亜鉛からなる微粒子を膜厚30μmのフィルムに2質量%添加したときのヘーズ値の上昇が、当該粒子を添加する前に比較して15以下であるとは、後述の方法で実質的に酸化亜鉛である微粒子を2質量%練り込んだ、厚さ30μmのフィルムを作成し、このフィルムのヘーズをJIS K7136に基づき、濁度形(例えば日本電色工業社製濁度計NDH2000型)で測定したときの値の増加が、酸化亜鉛を添加せずに製造した場合のフィルムヘーズ値に比べ15以下であることを意味する。
【0035】
なお、フィルム厚さが30μm以外の厚みの場合は、ヘーズ値はフィルム厚みに一次に比例するとして30μmに換算する。
【0036】
熱可塑性樹脂フィルムは、元々若干ヘーズがかっているものであるため、基本的には、ヘーズ値は低い方がよいが、目的により必要度が異なる。すなわち、フィルムの使用目的により、原料である熱可塑性樹脂の種類、グレード、フィルム厚み等が異なるので、これに伴い、酸化亜鉛を添加する前の元々のフィルムのヘーズも異なりうる。しかして本発明においては、いずれのフィルムを用いた場合にも、元の熱可塑性樹脂のヘーズと比較して、酸化亜鉛添加後の変化が15以下と、非常に少ないことを意味している。ヘーズ値の上昇は、少なくとも15以下、好ましくは10以下である。この範囲内であれば、元の熱可塑性樹脂と殆ど遜色無いレベルと判断され、ヘーズ値の上昇がこの値を超えると、かなり曇っていると判断されるので好ましくない。
【0037】
本発明において使用する平均1次粒子径が0.03μm以下、嵩密度が0.25g/ml以下の酸化亜鉛(シリコン油で表面処理する前もの)は、例えば以下のごとくして製造される。
【0038】
すなわち、基本的に、原料酸化亜鉛を含む水スラリーに二酸化炭素ガスを吹込み、まず塩基性炭酸亜鉛を合成し、得られた当該塩基性炭酸亜鉛スラリーを、造粒乾燥もしくは噴霧乾燥した後、加熱分解することにより酸化亜鉛を製造する方法が好適に用いられる。
【0039】
原料として用いられる酸化亜鉛としては、所謂酸化亜鉛であればどのようなものであってもよく、例えば、亜鉛を溶融・蒸発させ気相で酸化するフランス法、亜鉛鉱石を仮焼・コークス還元・酸化するアメリカ法、亜鉛塩溶液にソーダ灰を加えて塩基性炭酸亜鉛を沈殿させ、乾燥・焼成する湿式法(加熱分解法)等のいずれで製造したものでもよいが、高純度の酸化亜鉛微粒子を得るためには純度の高い酸化亜鉛を用いることが好ましい。
【0040】
塩基性炭酸亜鉛を原料酸化亜鉛と二酸化炭素ガスから合成する際に、酸化亜鉛粒子の分散性の向上や導電性を付与するための物質である例えば水分散性のアルミニウム水酸化物もしくは酸化物又は水分散性のケイ素水酸化物もしくは酸化物等を添加し、Al あるいはSi等の酸化物もしくは水酸化物の1種ないしは2種を、酸化亜鉛に対し質量比で0.1〜20%含有させてかまわない。
【0041】
塩基性炭酸亜鉛を合成する際のスラリー濃度は限定されず、20〜30質量%の濃厚スラリーで反応させ、その反応スラリーを直接乾燥させてもよいが、好ましくは、0.1〜10質量%程度の希薄スラリーで反応させ、その反応スラリーをそのまま、または好ましくは濃縮して乾燥させることができる。なお、原料酸化亜鉛の水スラリーを調製する場合、当該酸化亜鉛を直接蒸留水やイオン交換水等の水に分散させてもよいが、特に濃厚スラリーの場合、初期分散を十分に行うために、先ず少量の水で十分に混合し、所謂ママコを除いた上で濃度調整する方法が好ましい。またこの方法は希薄スラリーの場合に用いてもかまわない。また、希薄スラリーで反応させた場合、次の噴霧乾燥等により乾燥する場合、反応後の希薄スラリーを機械的手段により濃縮し当該スプレードライヤー等に供給することが好ましいが、この濾過、沈降濃縮等により分離された濾液を、循環再利用し、これで酸化亜鉛の水スラリーを形成することもできる。なお、反応はバッチ反応で行っても連続反応で行ってもかまわない。
【0042】
二酸化炭素ガスの導入方法としては、スラリーとガスが効果的に接触しうるものであれば、特に限定するものではないが、例えば反応槽底部に散気管等を設置し、この散気管を通じて二酸化炭素ガスを液中に吹き込み、さらに好ましくは撹拌機の撹拌羽根によりこれを細分化して導入する方法等が好ましい。
【0043】
塩基性炭酸亜鉛生成反応は、種々の方式によって実施することができ、例えば、反応槽にまず酸化亜鉛スラリーを仕込んでおき、これに二酸化炭素ガスを連続的に供給して塩基性炭酸亜鉛スラリーを生成させる半連続法(半回分法)、酸化亜鉛スラリーと二酸化炭素ガスの両者を連続的に反応槽に供給して塩基性炭酸亜鉛スラリーを生成させ、当該生成した塩基性炭酸亜鉛スラリーを連続的に反応槽から連続的に抜き出す連続法等の方法が好ましく採用される。
【0044】
連続法の場合は、反応槽は一槽でもよいが、二槽以上の反応槽を直列に結合することにより、塩基性炭酸亜鉛の生成収率を向上させることができる。
【0045】
反応温度としては、特に限定するものではないが、10〜80℃、好ましくは20〜60℃である。 また、反応時間(連続法の場合は、反応槽における平均滞留時間)は、反応温度等により変わりうるが、通常10分〜10時間、好ましくは30分〜5時間程度である。なお、温度保持のため、反応器は、加熱手段や保温手段及び温度制御手段を備えることも好ましい。
【0046】
以上のごとくして得られた塩基性炭酸亜鉛を含むスラリーは、これを濾過・乾燥してもよいが、より嵩密度の小さな酸化亜鉛微粒子をうるためには、そのまま流動層乾燥、媒体流動層乾燥、気流乾燥及又は噴霧乾燥し、水分を除去して乾燥粉末とすることも好ましい。
【0047】
得られた塩基性炭酸亜鉛スラリーを造粒乾燥もしくは噴霧乾燥するに当たっては、気流乾燥器、噴霧乾燥機、流動層乾燥器、媒体流動層乾燥器のように、短時間のうちに乾燥と同時に粉末や顆粒と出来る装置であれば、いかなる種類の乾燥装置を用いることも可能である。
【0048】
供給されたスラリーは、乾燥装置内で、微細粒子を含む液滴となり、乾燥用の熱風により流動層を形成し、浮遊しながら乾燥されるか(流動層乾燥、媒体流動層乾燥)、又は熱風により搬送されながら極めて短時間で乾燥され(気流乾燥及又は噴霧乾燥)、塩基性炭酸亜鉛の乾燥粉末が得られる。
【0049】
乾燥装置としては、最も分散された乾燥微粒子が得られる点で噴霧乾燥器(スプレードライヤー)が特に好ましい。この場合、乾燥用熱風温度は、入口で200〜300℃、出口で100〜150℃程度にすることが好ましい。
【0050】
かくして上記の乾燥方法によって得られた塩基性炭酸亜鉛粒子は、次に加熱炉内において加熱分解され、酸化亜鉛が生成する。加熱温度は、当該塩基性炭酸亜鉛を分散性のよい酸化亜鉛微粒子に分解する温度で、200〜500℃の範囲、さらに好ましくは250〜350℃の温度が望ましい。温度がこれより低いと分解が不十分になり、また高すぎると、凝集、焼結を引き起こし何れも分散性が悪くなるので好ましくない。加熱分解時間は、処理量、加熱温度、加熱炉の型等によっても異なりうるが、通常30分〜20時間、好ましくは1〜10時間程度である。
【0051】
この加熱分解に用いられる加熱炉としては、特に機種を限定するものではなく、所定の温度に均一に当該塩基性炭酸亜鉛を加熱し、酸化亜鉛に分解できるものであればいかなるもの用いられる。例えば好適には、ボックス炉やバッチ式や連続式のロータリーキルン、ベルトキルン等が用いられる。
【0052】
加熱分解後の酸化亜鉛微粒子は、そのままの形で使用してもよいが、場合によっては、確実に本発明で規定する所望の粒径のものとするため、更に微粉砕機で粉砕処理して使用してもよい。粉砕に当たっては、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の粉砕機を用いればよいがジェットミルが好適に用いられる。
【0053】
かくして得られた、平均1次粒子径が0.03μm以下、嵩密度が0.25g/ml以下の酸化亜鉛微粒子は、シリコン油により表面処理することにより、嵩密度が0.3g/ml以下の酸化亜鉛微粒子が得られる。
【0054】
ここでシリコン油により表面処理するとは、当該酸化亜鉛微粒子に、すでに述べたジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサ等のシリコン油を添加し、両者を機械的手段により十分混合・分散・接触させ、当該酸化亜鉛微粒子の表面にシリコン油を被着させる操作である。このようにシリコン油により酸化亜鉛微粒子を表面処理することにより、微細な酸化亜鉛粒子の強い活性が弱められ、互いに凝集しにくくなり、分散性が向上するものと考えられる。
【0055】
表面処理において、最も好ましくは、各酸化亜鉛粒子の表面をシリコン油の薄膜が被覆した状態となることであるが、粒子の表面の一部に離散的にシリコン油が被着した状態であっても、十分に本発明の目的を達成することができる。酸化亜鉛粒子に対して使用するシリコン油の量は、酸化亜鉛粒子100質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜10質量部、さらに好ましくは3〜5質量部である。
【0056】
酸化亜鉛粒子をシリコン油で処理するための装置としては、通常の粉体混合機がいずれも好ましく用いられる。例えば、V型混合機のような容器回転型混合機、リボン型混合機、パドル型混合機のような回転軸が水平な容器固定型混合機、円錐型スクリュー混合機、高速回転羽根混合機のような回転軸が垂直な容器固定型混合機、気流混合機などの混合機が好ましく使用される。かかる混合機に粉末状の酸化亜鉛微粒子とシリコン油を所定量装入し、両者を十分混合して表面処理を行えばよい。なお、上記の混合機のうち、高速回転羽根混合機が短時間に効率的に処理できるので特に好ましく用いられる。
【0057】
表面処理するためのシリコン油は、そのまま用いてもよく、又適当な溶剤に希釈して処理を行い、その後シリコン油処理された酸化亜鉛を適当な温度で乾燥して、溶剤を揮散させ、シリコン油の被膜等を形成させてもよい。酸化亜鉛表面に、より均一にシリコン油を被着させるためには、溶剤に希釈して粘度の低いシリコン油の溶液とし、これにより酸化亜鉛微粒子表面を処理する方法が好ましい。
【0058】
また、シリコン油で処理した後に、被着したシリコン油の均一性を高めるために、シリコン処理酸化亜鉛を加熱処理したり、ジェット粉砕機などでさらに分散化処理することも可能である。この場合、加熱又は乾燥温度は、100〜200℃、乾燥等の時間は2〜30時間程度である。
【0059】
このようにして得られた平均1次粒子径が0.03μm以下、嵩密度が0.3g/ml以下であり、かつ、シリコン油により表面処理された酸化亜鉛微粒子は、透明熱可塑性樹脂フィルム配合用としてきわめて好ましいものであって、本発明においては、これを透明熱可塑性樹脂に配合・混練して、フィルムに成形することにより、酸化亜鉛を膜厚30μmのフィルムに2質量%添加したときのヘーズ値の上昇が、当該粒子を添加する前に比較して15以下である低ヘーズ値の紫外線遮蔽透明熱可塑性樹脂フィルムが得られるのである。
【0060】
本発明のフィルムに用いる熱可塑性樹脂としては、それ自体透明なフィルムを形成しうるものであれば特に限定するものではないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、四フッ化エチレン−エチレン共重合体、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、透明ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が好ましいものとして挙げられ、用途、価格等を考慮して適当なものを選択することができる。
【0061】
これらは、単独で、または2種以上を混合(ブレンド)して使用することができる。また、上記の樹脂の2種以上の原料モノマからなる共重合体であってもよい。なかでも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン及びポリ酢酸ビニルが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルが最も好ましい。なお、ポリエチレンの場合は、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)(メタロセン触媒により製造されるものであってもよい。)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)のいずれであってもよい。また、プロピレン等を含む共重合体の場合は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0062】
上記の樹脂は、それ自体公知の熱可塑性樹脂のフィルム成形法によりフィルム化することができる。例えば、溶融押出法であるインフレーション法(円形ダイ法)やTダイ法を採用することができる。その他、キャスト法、カレンダー法等によってもよい。また、得られたフィルムは、さらに一軸又は二軸延伸を行ってもよい。なお、本発明におけるフィルムは、必ずしも単層フィルムでなくてもよく、上記した樹脂からなるフィルムを2種以上積層した積層フィルム(複層フィルム)であってもよい。その場合は、酸化亜鉛微粒子は、その少なくとも一層中に添加配合することになる。また、フィルムの厚みは特に限定するものではないが、通常5〜200μm、好ましくは10〜60μm、さらに好ましくは20〜40μm程度である。
【0063】
本発明においては、原料である熱可塑性樹脂に酸化亜鉛微粒子を添加して練り込んで樹脂コンパウンドとし、これを上記した方法によりフィルム成形する。ここで亜鉛微粒子を練り込む方法は、特に限定するものではなく、それ自身公知の方法を用いればよい。すなわち、酸化亜鉛微粒子と原料熱可塑性樹脂粉末を、直接混合機で混合した後溶融押出してフィルム化してもよいし、まず、酸化亜鉛微粒子を含むマスターバッチを作り、当該マスターバッチを原料樹脂ペレットと混合して同様にフィルム化してもよい。
【0064】
また、熱可塑性樹脂に添加する酸化亜鉛量にも制限はなく、製造方法、要求品質に応じて適量を用いればよいが、通常熱可塑性樹脂100質量部あたり0.1〜10質量、好ましくは1〜5質量部である。
【0065】
更に、本発明の目的を阻害しない限り、酸化亜鉛以外の可塑剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、難燃化剤、耐熱安定剤、抗菌剤等の通常使用される添加剤を当該フィルムに添加することができる。
【0066】
また、本発明の酸化亜鉛微粒子をポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル又はポリ塩化ビニリデンフィルムに添加配合した紫外線遮蔽透明フィルムは、当該酸化亜鉛微粒子を膜厚30μmのフィルムに2質量%添加したときのヘーズ値が少なくとも20以下、好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である可視光に透明な紫外線遮蔽透明フィルムである。
【0067】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし、これらは単なる実施の態様であり、本発明の技術的範囲がこれらの実施例により限定されるものではない。
【0068】
以下の実施例、比較例において、得られた紫外線遮蔽熱可塑性樹脂フィルムの特性について、ヘーズは日本電色工業社製濁度計NDH2000型により、また、透過率については分光器(日本分光社製分光光度形V−570 ST型)内の積分球の入射光が入る部分に試験片を貼り付け測定した。また、以下に部とあるのは、特に断り無き限り質量部を示す。
【0069】
(実施例1)
(1)フランス法によって得たJIS K1410 1種酸化亜鉛と、イオン交換水を用いて10g/Lの酸化亜鉛スラリーを調製した。このスラリーを内容積120Lの、撹拌機と、及び底部に散気管を装備し、保温機構のついた反応容器に100L仕込み、温度を30℃に保ち撹拌下10L/分で二酸化炭素ガスを吹込んだ。2時間後に吹き込みを終了し生成物をXRD分析して塩基性炭酸亜鉛が生成していることを確認した。
【0070】
(2)このスラリーを2時間静置した後、上澄液を捨て、スラリー濃度20%の塩基性炭酸亜鉛スラリーを得た。このスラリーを入口ガス温度250℃、出口ガス温度130℃に調整されたスプレードライヤーにフィードして噴霧乾燥し、塩基性炭酸亜鉛粒子を得た。この粒子の粒子径は約100μmであった。
【0071】
(3)この粒子を250℃に加熱した箱型炉に装入し5時間加熱分解し、酸化亜鉛微粒子を得た。得られた酸化亜鉛をさらにジェットミルを用いて粉砕し、BET法による比表面積 50cm2/gの微粉末を得た。透過型電子顕微鏡により測定された平均粒子径は0.02μmである。
【0072】
この作業を5回行い、得られた嵩密度の低い酸化亜鉛3kgを、容量30Lの高速回転羽根混合機にいれ、混合しながらシリコン油(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、SH200)120gを添加混合した。混合後の粉末を乾燥機に入れ130℃で1晩加熱し、シリコン油で表面処理した酸化亜鉛を得た。当該酸化亜鉛微粉末のJIS K5101に基づいて測定した嵩密度は低く、0.25g/mlであった。
【0073】
(4)得られた表面処理酸化亜鉛20部、低密度ポリエチレン(メルトインデックス4)80部を用いてマスターバッチを製造した。そのマスターバッチ10部及び低密度ポリエチレン(メルトインデックス4)90部を用いインフレーション法により厚さ30μmのフィルムを作成した。得られたフィルムの増加ヘーズ値(ΔH)及び紫外線と可視光線透過率を表1に示す。また、フィルムのヘーズ値は9であった。ヘーズが低く透明性に優れることがわかる。
【0074】
(比較例1)
(1)フランス法によって得たJIS K1410 1種酸化亜鉛と、イオン交換水を用いて150g/Lの酸化亜鉛スラリーを準備した。このスラリーを内容積10Lの撹拌機と、底部に散気管を装備した反応容器に7L仕込み、撹拌下5L/分で炭酸ガスを吹込んだ。3時間後に吹き込みを止め、生成物をXRD分析して塩基性炭酸亜鉛が生成していることを確認した。
【0075】
(2)このスラリーをヌッチェを用いて濾過し、塩基性炭酸亜鉛濾過ケーキを得た。当該ケーキを箱型乾燥機に入れ、110℃で一晩乾燥した。乾燥品はハンマーミルを用いて粉砕し、塩基性炭酸亜鉛粒子を得た。この粒子の粒子径は約130μmであった。
【0076】
(3)この粒子を250℃に加熱した箱型炉に装入し5時間加熱分解し、酸化亜鉛微粒子を得た。得られた酸化亜鉛を再度ハンマーミルで粉砕した後、比表面積をBET法によって測定し47m2/gの値を得た。透過型電子顕微鏡で測定された平均粒子径は0.02μmである。JIS K5101に基づいて測定した嵩密度は、0.35g/mlと高いものであった。
【0077】
この作業を5回行い、得られた嵩密度の高い酸化亜鉛20部、低密度ポリエチレン(メルトインデックス4)80部を用いてマスターバッチを製造した。実施例1と同様にして当該マスターバッチ10部及び低密度ポリエチレン(メルトインデックス4)90部を用いインフレーション法により厚さ30μmのフィルムを作成した。得られたフィルムのヘーズ及び紫外線と可視光線透過率を表1に示す。しかしながら、この場合は、ヘーズが高く透明性に欠けることがわかる。
【0078】
(比較例2)
比較例1で得られた嵩密度の高い酸化亜鉛3kgを容量30Lの高速回転羽根混合機にいれ、混合しながらシリコン油(前記したSH200)120gを添加混合した。混合後の粉末を乾燥機に入れ130℃で1晩加熱し、シリコン油により表面処理した酸化亜鉛を得た。この酸化亜鉛の嵩密度は0.37g/mlであった。
【0079】
得られた表面処理酸化亜鉛20部、低密度ポリエチレン(メルトインデックス4)80部を用いてマスターバッチを製造した。そのマスターバッチ10部及び低密度ポリエチレン(メルトインデックス4)90部を用いインフレーション法により厚さ30μmのフィルムを作成した。得られたフィルムのヘーズ及び紫外線や可視光線透過率を表1示す。比較例1よりは改善されているものの、やはり実施例1に比べヘーズが高く透明性に欠けることがわかる。
【0080】
(実施例2)
(1)フランス法によって得たJIS K1410 1種酸化亜鉛と、イオン交換水を用いて10g/Lの酸化亜鉛スラリーを調製した。このスラリーを、内容積120Lの、底部に散気管を装備し、撹拌機、コロイダルシリカ溶液の供給手段及び保温機構のついた反応容器に100L仕込み、温度を40℃に保ち撹拌下に、10L/分で二酸化炭素ガスを吹込んだ。二酸化炭素ガスを吹込む間、コロイダルシリカ溶液(濃度12.5g-SiO2/L)4Lを2時間かけて連続して滴下供給した。2時間後に吹き込みを終了し、生成物をXRD分析して塩基性炭酸亜鉛が生成していることを確認した。
【0081】
(2)このスラリーを4時間静置した後、上澄液を捨て、スラリー濃度20%の塩基性炭酸亜鉛スラリーを得た。上澄液を分析してシリカ分のないことを確認した。すなわち供給したシリカ分は、すべて塩基性炭酸亜鉛中に導入されたことが確認された。このスラリーを入口ガス温度250℃、出口ガス温度130℃に調整されたスプレードライヤーにフィードし、噴霧乾燥して塩基性炭酸亜鉛粒子を得た。この粒子の粒子径は約100μmであった。
【0082】
(3)この粒子を250℃に加熱した箱型炉に装入し5時間加熱分解し、酸化亜鉛微粒子を得た。
【0083】
得られた酸化亜鉛をさらにジェットミルを用いて粉砕して得られた微細粒子の比表面積をBET法によって測定したところ、60m2/であり、透過型電子顕微鏡で測定されたる平均粒子径は0.02μmであった。また当該酸化亜鉛中のシリカ分を分析し4.8%のシリカ分を含むことを確認した。
【0084】
得られた酸化亜鉛を実施例1と同様にしてシリコン油で処理し、表面処理した酸化亜鉛を得た。当該酸化亜鉛微粉末のJIS K5101に基づいて測定した嵩密度は低く、0.2g/mlであった。
【0085】
(4)得られた表面処理酸化亜鉛20部、低密度ポリエチレン(メルトインデックス4)80部を用いてマスターバッチを製造した。そのマスターバッチ10部及び低密度ポリエチレン(メルトインデックス4)90部を用いインフレーション法により厚さ30μmのフィルムを作成した。得られたフィルムの増加ヘーズ値(ΔH)及び紫外線と可視光線透過率を表1に示す。またフィルムのヘーズ値は14であった。このフィルムはヘーズが低く透明性に優れることがわかる。
【0086】
(実施例3)
実施例1の操作で得られた嵩密度の低い表面処理した酸化亜鉛20部、ポリプロピレン(メルトインデックス8)80部を用いてマスターバッチを製造した。そのマスターバッチ10部及びポリプロピレン(メルトインデックス8)90部を用いインフレーション法により厚さ30μmのフィルムを作成した。得られたフィルムの増加ヘーズ値(ΔH)及び紫外線と可視光線透過率を表1に示す。このフィルムのヘーズは8であった。ヘーズが低く透明性に優れるフィルムであることがわかる。
【0087】
(実施例4)
実施例2の操作で得られた嵩密度の低い表面処理した酸化亜鉛20部、エチレンを含むプロピレンランダムコポリマー(メルトインデックス8)80部を用いてマスターバッチを製造した。そのマスターバッチ10部及びエチレンを含むプロピレンランダムコポリマー(メルトインデックス8)90部を用いインフレーション法により厚さ30μmのフィルムを作成した。得られたフィルムの増加ヘーズ値(ΔH)及び紫外線と可視光線透過率を表1に示す。また、フィルムのヘーズは10であった。ヘーズが低く透明性に優れるフィルムであることがわかる。
【0088】
(実施例5)
ポリ塩化ビニル(重合度1300)100部、可塑剤であるDOP50部、Ba−Zn系安定剤1.0部、実施例1の操作で得られた嵩密度の低い表面処理した酸化亜鉛2部を混合してポリ塩化ビニル樹脂組成物を得た。
【0089】
この組成物を用い、常法に従ってポリ塩化ビニル樹脂フィルム(厚さ30μm)を得た。得られたフィルムの増加ヘーズ値(ΔH)及び紫外線と可視光線透過率を表1に示す。またフィルムのヘーズは15であった。ヘーズが低く透明性に優れるフィルムであることがわかる。
【0090】
【表1】
【0091】
【発明の効果】
上記実施例に示したように、本発明によれば、酸化亜鉛微粒子を透明熱可塑性樹脂フィルムに添加配合した紫外線遮蔽樹脂フィルムにおいて、酸化亜鉛微粒子を膜厚30μmのフィルムに2質量%添加したときのヘーズ値の上昇(ΔH)が、当該粒子を添加する前に比較して15以下、好ましくは、10以下、さらに好ましくは、5以下であるヘーズが低く可視光に透明な紫外線遮蔽透明熱可塑性樹脂フィルムが得られることがわかる。
【0092】
また、本発明によれば、酸化亜鉛微粒子をポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はポリ塩化ビニリデンフィルムに添加配合した紫外線遮蔽透明フィルムにおいて、酸化亜鉛微粒子を膜厚30μmのフィルムに2質量%添加したときのヘーズ値(H)が、20以下、好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である可視光に透明な紫外線遮蔽透明フィルムが得られることがわかる。
Claims (4)
- 実質的に酸化亜鉛からなる微粒子を透明熱可塑性樹脂フィルムに添加配合した紫外線遮蔽樹脂フィルムにおいて、当該実質的に酸化亜鉛からなる微粒子は、その透過型電子顕微鏡で測定された平均1次粒子径が0.03μm以下であり、かつ、当該微粒子は、シリコン油により表面処理されたものであり、そのシリコン油で処理された後の当該微粒子は、JISK5101に基き測定した嵩密度が0.3g/ml以下であり、当該実質的に酸化亜鉛からなる微粒子を膜厚30μmのフィルムに2質量%添加したときのJIS K7136に基づき測定したヘーズ値の上昇(ΔH(=H−H 0 ),ここでH 0 は、当該粒子添加前のヘーズ値、Hは添加後のヘーズ値である。)が、当該粒子を添加する前のヘーズ値H 0 に比較して15以下であることを特徴とするヘーズが低く可視光に透明な紫外線遮蔽透明熱可塑性樹脂フィルム。
- 熱可塑性樹脂フィルムに用いられる樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン及びポリ酢酸ビニルからなる群より選択される請求項1に記載の紫外線遮蔽熱可塑性樹脂フィルム。
- 実質的に酸化亜鉛からなる微粒子をポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はポリ塩化ビニリデンフィルムに添加配合した紫外線遮蔽透明フィルムにおいて、当該実質的に酸化亜鉛からなる微粒子は、その透過型電子顕微鏡で測定された平均1次粒子径が0.03μm以下であり、かつ、当該微粒子は、シリコン油により表面処理されたものであり、そのシリコン油で処理された後の当該微粒子はJISK5101に基き測定した嵩密度が0.3g/ml以下であり、当該実質的に酸化亜鉛からなる微粒子を膜厚30μmのフィルムに2質量%添加したときのJIS K7136に基づき測定したヘーズ値Hが20以下であることを特徴とする可視光に透明な紫外線遮蔽透明フィルム。
- 実質的に酸化亜鉛からなる微粒子であって、その透過型電子顕微鏡で測定された平均1次粒子径が0.03μm以下であり、かつ、当該微粒子は、シリコン油により表面処理されたものであり、そのシリコン油で処理された後の当該微粒子はJIS 5101に基き測定した嵩密度が0.3g/ml以下であることを特徴とする紫外線遮蔽透明熱可塑性樹脂フィルム配合用酸化亜鉛微粒子。
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