JP4110833B2 - 複合酸化物およびその製造方法と用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一次粒子の凝集度が低く、粉砕工程を経ることなく或いは軽度の粉砕により、非水系溶媒や水系溶媒、あるいは樹脂などをはじめとする有機重合体組成物に容易に分散、懸濁または混練させることができる酸化亜鉛を主成分とする複合酸化物粒子、その製造方法、及びその用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酸化亜鉛は、亜鉛華と呼ばれるように古くから白色顔料として知られている。このような酸化亜鉛、異種元素をドープした酸化亜鉛、及び被覆等の表面処理をした酸化亜鉛(以下、これらを「酸化亜鉛類」と記載することがある)は、粒子径が可視光波長の1/2程度まで微細化すると酸化亜鉛粒子の散乱効果が極端に小さくなり、可視光は透過するが、酸化亜鉛の持つ、優れた紫外線吸収効果より、紫外線を選択的に吸収するという光学的特性を持つ。
【0003】
従来より、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サルチレート系、置換アクリロニトリル系等の有機系紫外線吸収剤が知られているが、安全に使用するため化粧料や医薬製剤への配合には制限があり、また、熱可塑性樹脂等に添加する場合には、耐熱性に劣ることから成型時に分解したり、ブリードアウトするという問題があった。
【0004】
こうした理由から、安全性に優れ耐熱性の高い酸化亜鉛は、紫外線吸収剤として注目され、化粧料や医薬製剤への配合成分として、また、樹脂フィルムなどのフィラーや有機重合体組成物の充填材として用いられている。
【0005】
化粧料には、油脂・ワックス、有機系紫外線遮蔽剤などをはじめとする有機物、着色顔料や体色顔料などの無機粉体に加え、紫外線遮蔽能を持つ酸化亜鉛類が配合されることが多い。こうした酸化亜鉛類は、紫外線遮蔽効果が高いとともに、肌を白浮きさせず、透明性を保つ可視光透過性に優れている必要がある。また使用感、つまり滑らか感やすべり感、他の材料と配合する際の分散性なども同時に優れている必要がある。
【0006】
また、酸化亜鉛類を、樹脂フィルムなどのフィラーや有機重合体組成物の充填材として用いる場合、特に、食品包装・鮮度保持用、商品展示用、農業用フィルムなどの用途では、媒体の透明感を損なわないようにする必要がある。
【0007】
これらの要件を満たす酸化亜鉛類は、微粒子であることと、媒体への分散性が良いことが必要であり、これまでさまざまな工夫がなされてきた。
【0008】
特公昭60−5529号公報には、気体状の亜鉛(以下、「亜鉛蒸気」と記載することがある)を酸化燃焼後、ただちに480℃/秒以上の速度で冷却し、0.2〜1μm程度の酸化亜鉛微粒子を得る方法が開示されている。酸化亜鉛は、350℃以上になると粒子が成長し、比表面積が低下するため、このような速い速度で冷却し、粒子成長を抑制している。しかし、冷却が速いと、亜鉛の酸化が不完全になり、灰色に着色した酸化亜鉛になってしまう。このような酸化亜鉛では、化粧料などに使用した場合、十分な透明感が得れられない。白色酸化亜鉛類を得るためには、酸化を完全に行う必要があるので、酸化時間は十分に取らざるを得ず、酸化亜鉛類の微粒化には限界があった。
【0009】
一方で、酸化亜鉛は紫外線によって電子が励起され、発生した正孔とともにさまざまな酸化・還元反応を引き起こす光触媒能を持つ。この作用により酸化亜鉛は接触している有機物を分解する。光触媒能が抑制されていない酸化亜鉛を用いると、化粧料等では安定性を欠き、充填物やフィルムではその有機物が劣化してしまい耐候性に劣るものとなる。
【0010】
化粧料や樹脂などに用いる場合には、表面処理等により酸化亜鉛の表面活性を抑制する必要がある。
【0011】
表面処理方法として、たとえば、特開平3−183620号公報には、珪酸ナトリウム水溶液中に酸化亜鉛微粒子を添加・攪拌した後、pH調整を行い、酸化亜鉛表面にSi酸化物を形成する方法が開示されている。この方法は、液相中での反応であり、固液分離・粉体乾燥プロセスが必要となる。このため、得られる粉体は、凝集が避けられず、分散性に劣るものとなる。固液分離せずにスラリーのまま濃縮して用いれば、分散性は、粉体とするより改善されるが、配合の自由度が大きく制約されることになる。
【0012】
特開平2001−58821号公報でも、珪酸亜鉛からなる被覆層により光触媒能を抑制する方法が開示されているが、同様に液相中の反応である為、得られる酸化亜鉛類の粉体の凝集は避けられない。
【0013】
また、特開平5−319808号公報には、有機金属塩を加熱・気化し熱分解によって金属酸化物核を形成した後に、別種の有機金属塩を前記核上で熱分解させることにより被覆層を形成する方法が開示されている。この方法は、核生成反応と被覆層形成プロセスに分けることが必要であり、それぞれの工程において条件が異なる為、プロセス上の制御が難しいうえ、生産性に乏しく、製造コストが高くなってしまう。
【0014】
類似の技術として導電性酸化亜鉛を得る方法を開示した特開平6−144834号公報および特開平6−144833号公報がある。これらはドーパント量が少なすぎ、酸化亜鉛類の光触媒能を抑制するには至っていない。
【0015】
酸化亜鉛を含んでいながら表面処理をせず、樹脂添加剤、化粧料などに使用している例もある。
たとえば、特開平7−89710号公報では、珪酸ナトリウム水溶液と酸化亜鉛の混合物を、界面活性剤と有機溶媒の混合液に添加し、塩化カルシウム水溶液を加えた後、pH調整して、酸化亜鉛と無水珪酸が均一に存在する組成物を製造する方法を開示している。しかし、この方法で得られる組成物は、酸化亜鉛の含有量が低く、凝集度の高い粉体であり、紫外線遮蔽性および可視光透過性に劣ったものとなる。
【0016】
特開平7−118133号公報では、酸化亜鉛微粒子を用いることで、透明性に優れ、皮脂中に存在する遊離脂肪酸との反応性がよいために化粧持ちが良く、紫外線遮蔽能の高い化粧料が得られるとの記述があるが、表面活性のある酸化亜鉛が有機物と共に存在する以上、その有機物の分解は不可避であり、結果として安定性に劣るものになる。
【0017】
特開平7−25614号公報でも、可視光透過性、紫外線遮蔽能に優れている酸化亜鉛が開示されているが、酸化亜鉛の光触媒能抑制が不十分である点では、特開平7−118133号公報と同様である。
【0018】
以上のように、これまでの技術では、紫外線遮蔽能のある酸化亜鉛微粒子が得られたとしても凝集している為に媒体に分散しにくく、十分な可視光透過率を得られず、すなわち透明性の低いものになっていた。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、紫外線遮蔽能、可視光透過性、分散性に富み、光触媒能が十分に低く抑えられた粒子、該粒子を含み可視光での透明性及び紫外線の遮蔽性に優れた組成物、及びそれらの製造方法を提供するものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記に鑑み、鋭意研究の結果なされたものである。本発明者らは、結晶性酸化亜鉛の微結晶と結晶性シリカの微結晶とが均一に各粒子中に存在している複合酸化物粒子、およびその製造方法を見出した。
【0021】
また、この複合酸化物粒子は、酸化亜鉛を主成分としながらも従来の酸化亜鉛では見られない、350℃以上の高温環境下でも粒成長の起きにくいものであった。さらにその粉体は紫外線遮蔽能に優れ、テトラポッド状及び/または針状の異方性粒子と等方性粒子を含む分散性に優れた粉体であり、可視光透過性が高く、光触媒能も抑制されているなどきわめて有用な特徴を持つ物質であった。これらのことが見出され、本発明は完成された。
【0022】
すなわち、本発明は以下の発明からなる。
(1)BET比表面積が10〜200m2/gであり、酸化亜鉛を主成分とする複合酸化物において、酸化亜鉛とシリカの各結晶系構造を含み、X線結晶学的に結晶性酸化亜鉛の回折ピークを示す格子面(100)、(002)、(101)と、結晶性シリカ回折ピークを示す格子面(101)に回折ピークを有することを特徴とする複合酸化物。
(2)酸化亜鉛とシリカの各結晶系構造が、複合酸化物の1次粒子に含まれた前項1に記載の複合酸化物。
(3)5個数%〜95個数%の1次粒子が、テトラポッド状及び/または針状の粒子であることを特徴とする前項1または2に記載の複合酸化物。
(4)800℃、1時間放置した複合酸化物のBET比表面積が、放置前に比べ、70%以上であることを特徴とする前項1乃至3に記載の複合酸化物。
【0023】
(5)気体状の亜鉛を酸素と水蒸気の存在下で酸化させる気相反応において、不活性ガス中に気体状の亜鉛を含むZn原料ガスと、酸素と水蒸気を含む酸化性ガスを、反応器にそれぞれ導入し、反応器内で亜鉛の酸化反応をさせ、その反応帯に珪素含有組成物を導入し酸化することを特徴とする前項1乃至前項4のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
(6)珪素含有組成物が、亜鉛の酸化反応開始点より下流方向に1mまでの範囲内に導入される前項5記載の複合酸化物の製造方法。
(7)珪素含有組成物が、オルガノシランまたはシリコンハライドを含む組成物である前項5または前項6に記載の複合酸化物の製造方法。
(8)Zn原料ガスが、1モル%以上70モル%以下の亜鉛を含むガスである前項5乃至前項7のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
(9)Zn原料ガスが、900〜1800℃で反応器に導入される前項5乃至前項8のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
(10)Zn原料ガスが、10〜250m/秒の速度で反応器に導入される前項5乃至前項9のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
(11)酸化性ガスが、900〜1800℃の温度で反応器に導入される前項5乃至前項10のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
(12)酸化性ガスが、10〜250m/秒の速度で反応器に導入される前項5乃至前項11のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
(13)珪素含有組成物が、50〜1200℃の温度で反応器に導入される前項5乃至前項12のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
(14)珪素含有組成物が、Zn原料ガスの反応器への導入速度の30%〜300%の速度で反応器に導入される前項5乃至前項13のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
(15)酸化性ガスが、酸素を5体積%以上100体積%以下含み、かつ、酸素と水蒸気を合計して5体積%以上100体積%以下含むガスである前項5乃至前項14のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
(16)酸化性ガスが、複数のノズルで反応器へ導入される前項5乃至前項15のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
(17)珪素含有組成物が、複数のノズルで反応器へ導入される前項5乃至前項16のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
(18)Zn原料ガスが、複数のノズルで反応器へ導入される前項5乃至前項17のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
(19)前項5乃至前項18のいずれか1項に記載の製造方法で製造された複合酸化物。
【0024】
(20)前項1乃至前項4、及び前項19のいずれか1項に記載の複合酸化物を、組成物全質量中0.01%〜80質量%含むことを特徴とする有機重合体組成物。
(21)有機重合体組成物の有機重合体が、合成熱可塑性樹脂、合成熱硬化性樹脂、及び天然樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である前項20に記載の有機重合体組成物。
(22)有機重合体組成物が、コンパウンドである前項20または前項21に記載の有機重合体組成物。
(23)有機重合体組成物が、マスターバッチである前項20または前項21に記載の有機重合体組成物。
(24)前項20乃至前項23のいずれか1項に記載の有機重合体組成物を成型してなることを特徴とする成型体。
(25)前項1乃至前項4、及び前項19のいずれか1項に記載の複合酸化物を含む粉体。
(26)前項1乃至前項4、及び前項19のいずれか1項に記載の複合酸化物を含むスラリー。
(27)前項1乃至前項4、及び前項19のいずれか1項に記載の複合酸化物を含む塗工剤。
(28)前項1乃至前項4、及び前項19のいずれか1項に記載の複合酸化物を含む塗料。
(29)前項1乃至前項4、及び前項19のいずれか1項に記載の複合酸化物を表面に具備した構造体。
(30)前項1乃至前項4、及び前項19のいずれか1項に記載の複合酸化物を含む化粧料。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の複合酸化物は、例えば、次のように製造することができる。
【0026】
亜鉛蒸気を酸素と水蒸気の存在する雰囲気中で酸化させる反応において、亜鉛蒸気を含む不活性ガス(以下、「Zn原料ガス」と記載することがある)と、酸素と水蒸気を含むガス(以下、「酸化性ガス」と記載することがある)を、反応器にそれぞれ導入して亜鉛を酸化する。その反応場に、例えば、オルガノシラン、シリコンハライドなどを含む珪素含有組成物(以下、「Si原料」と記載することがある)を、液状で噴霧し導入、好ましくはガス状で導入し、Si原料を酸化し、本発明の複合酸化物を得る。このとき、Si原料はキャリアーガスとして不活性ガスを含んでもよい。
【0027】
酸化性ガスは、プロパン、水素などの可燃性ガスを酸素又は空気の過剰の支燃性ガスで燃焼させて得られたものであっても良く、酸化性ガスを導入するノズルとZn原料ガスを導入するノズル、およびはSi原料を導入するノズルはいずれも複数あっても良い。
【0028】
このようにして得られた酸化物は、結晶性シリカが結晶性酸化亜鉛粒子内に均一に分散した、可視光透過性・紫外線遮蔽能に優れ、光触媒能が抑制された分散性の良い酸化亜鉛を主成分とする複合酸化物となる。なお、主成分とは、構成成分中最も多い成分であり、50質量%より多い成分は主成分である。
【0029】
この複合酸化物は、X線結晶学的に結晶性酸化亜鉛の回折ピークを示す格子面(100)、(002)、(101)に強い回折ピークを有し、かつ非常に高温となる酸化亜鉛の合成反応場でシリカが形成されるようにしているため、X線結晶学的に結晶性シリカの回折ピークを示す格子面(101)にも強い回折ピークを有する粒子とすることができる。
【0030】
また、この複合酸化物は、局所成分分析(EDX)により、酸化亜鉛微結晶にシリカ微結晶が均一に分散した複合酸化物となっていることが確認できる。
従来の複合酸化物は、核となる物質を合成した後に第二成分を添加するため、第二成分が第一成分の周りを取り囲むCore−Shell構造となるか、あるいは第一成分粒子と第二成分粒子がそれぞれ単独に存在する単なる混合粉体となっていた。
【0031】
本発明の複合酸化物ように、個々の粒子内において、結晶性の第一成分中(酸化亜鉛)に結晶性の第二成分(シリカ)が、粒子表面・内部を問わず均一に分散しており、X線結晶学的にシリカと酸化亜鉛の双方の回折ピークを持つような複合酸化物は従来知られていなかった。
【0032】
また本発明の複合酸化物粒子は、通常、透過型電子顕微鏡(TEM)による一次粒子形状の観察で、テトラポッド状粒子及び針状粒子を合わせて5個数%から95個数%、残部が等方性である粒子から構成されている。テトラポッド状とは、共通の基部から異なる4軸方向に伸びた針状の形状を言う。
等方性粒子と針状・テトラポッド状粒子との存在割合は反応に供する亜鉛量に対する珪素含有組成物量で調整可能である。珪素含有組成物の添加割合が多ければ等方性粒子の割合は多くなり、その添加割合が少なければ等方性粒子の割合は少なくなる。これらの粒子は形状によらず、Si成分がZn成分中に均一に存在していることが局所成分分析(EDX)によって確認されている。
【0033】
本発明の複合酸化物の粉体、すなわち、形状が等方性である粒子と、テトラポッド状及び/または針状粒子との混合粉体は、水系溶媒、非水系溶媒、有機重合体などのいずれへ分散させた場合にも、粒子状のみ、あるいはテトラポッド状や針状のみの酸化亜鉛に比べ、分散性が優れている。
【0034】
この理由は定かでないが、形状が等方性である粒子と、テトラポッド状または針状粒子が適度に混在することで立体障害効果が生じるため、粒子間の距離を適当に保つことができ、媒体に分散しやすかったものと推察される。
【0035】
また水系溶媒、非水系溶媒のいずれでも分散性に優れていることは、本発明の複合酸化物の粒子表面が酸化亜鉛とシリカの双方の特徴を持っている為と考えられる。
【0036】
本発明の複合酸化物粒子は、シリカで酸化亜鉛粒子表面を完全に被覆したものではないが、有機系組成物への適用において、実用上問題のないレベルにまで光触媒能が抑制されている。このようなことは、粒子表面に存在する、すなわち粒子表面に出ているシリカ部分と有機系組成物との相互作用が比較的強く、酸化亜鉛表面に他の有機物分子を近づけない障壁となっているためであると考えられる。
【0037】
本発明の複合酸化物の製造方法は、このように光触媒能が抑制されている粒子を一工程で得ることができる。そのため、粒子生成後の工程で、被覆等の光触媒能を抑制する工程が不要であり、本発明の複合酸化物の製造方法はコスト的にも優位である。
【0038】
本発明の複合酸化物粒子の前記特徴は、その粒子の優れた耐熱性に起因している。通常、分散性の良い微粒子が得られないのは、液相法であれば粒子生成場の粒子密度が高いために粒子が衝突・合体を繰り返し凝集粒となってしまうからであり、気相法であれば生成場が高温であり、粒子が成長し粗粒化してしまうからである。
【0039】
本発明の複合酸化物は、BET一点法で測定される比表面積が10〜200m2/gと微粒子でありながら、800℃の電気炉内に1時間静置する熱処理をしても、処理前に比べ、処理後の比表面積が70%以上である。この値は、同様な比表面積を持つ酸化亜鉛の場合、50%以下である。
【0040】
すなわち、本発明の複合酸化物粒子は、従来の酸化亜鉛に比べ、高温環境下でも容易に粒成長せず、粒子生成場の粒子密度が比較的低いため凝集も抑えられ、結果的に分散しやすい微粒子となっている。
【0041】
シリカ成分の存在形態は、例えば、珪素含有組成物の反応器への導入位置によって変えることが可能である。つまり、亜鉛の酸化反応開始点に対するSi原料の供給位置を変えることにより、亜鉛の酸化帯、珪素含有組成物の酸化帯の相互の位置関係が変わってくる。
【0042】
亜鉛の酸化反応開始点より珪素含有組成物の供給位置がより下流になるように導入することで、粒子中心部よりも表面付近により多くシリカがドープされるようになり、表面に存在するシリカの割合を高めることができる。珪素含有組成物の供給位置は、通常、亜鉛の酸化反応開始点より下流方向に1mまでの範囲内が好ましい。供給地点がそれより下流だと、生成酸化物中の成分分布が不均一となりやすい。
【0043】
また、Si原料を気体として供給する場合、本発明の複合酸化物中におけるシリカ成分の存在形態は反応器に導入するそれぞれのガス流速を制御することで変えることが可能である。例えば、Si原料、Zn原料ガス、酸化性ガスを同軸並行ノズルで供給し、それぞれの相対流速を変えることにより、亜鉛の酸化帯、珪素含有組成物の酸化帯の相互の位置関係が変わってくる。
【0044】
亜鉛の酸化帯より珪素含有組成物の酸化帯が下流になるような導入流速とすることで、粒子中心部よりも表面付近により多くシリカがドープされるようになり、表面に存在するシリカの割合を高めることができる。
【0045】
以下、本発明を代表的な製造フローに基づいて説明する。
亜鉛気化器に供給する亜鉛の形態は粉末状、線状いずれでも良い。原料の金属亜鉛と同時に不活性ガスを亜鉛気化器に供給することも可能である。不活性ガスとしては窒素、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0046】
亜鉛気化器に導入する不活性ガスの供給量は、Zn原料ガス中の亜鉛濃度が1モル%以上70モル%以下の範囲になるような供給量が好ましい。この濃度は複合酸化物粒子の大きさにも影響を及ぼす。この濃度を低くすると高比表面積の粉体を得ることができ、高くすることによって低比表面積の粉体を得ることができる。
【0047】
ついでZn原料ガスは亜鉛気化器からZn原料ガス加熱器を経て反応器に導入される。Zn原料ガスを反応器に導入する温度は、900〜1800℃、好ましくは950〜1300℃である。Zn原料ガスを反応器に導入する速度は、10〜250m/秒、好ましくは50〜150m/秒である。
【0048】
酸化性ガスを反応器に導入する温度は、900〜1800℃、好ましくは950〜1300℃である。酸化性ガスの酸素濃度は、5体積%以上100体積%以下、好ましくは50体積%以上100体積%以下である。この酸化性ガスの酸素濃度と水蒸気濃度の合計は、5体積%以上100体積%以下である。酸化性ガスを反応器に導入する速度は10〜250m/秒であることが望ましい。
【0049】
珪素含有組成物はキャリアーガスとしての不活性ガスと共に気化され反応器に導入される。珪素含有組成物としては、例えば、SiCl4、Si2Cl6、Si3Cl8、Si4Cl10、Si5Cl12、Si10Cl12、SiBr4、Si2Br6、Si3Br8、Si4Br10、SiI4、Si2I6、SiCl2I2、SiClI3、SiBr3I、SiHI3、SiCl3I、SiH3Br、SiH2Br2、SiHBr3、SiCl3Br、SiCl2Br2、SiClBr3
などのシリコンハライドを使用することができる他、エトキシ基、メトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などがSiに結合したSi(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(O−i−C3H7)4、Si(O−n−C3H7)4、Si(O−i−C4H9)4、Si(O−n−C4H9)4、Si(O−sec−C4H9)4、Si(O−t−C4H9)4、これらの混合物などに代表されるオルガノシラン、及びこれにCl等のハロゲンが結合したC2H5SiHCl2、C2H5SiCl3などの有機ケイ素化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む組成物を使用することができる。Si原料は、好ましくは、オルガノシランまたはシリコンハライドを含む組成物である。
【0050】
Si原料を反応器に導入する温度は50℃以上1200℃以下、好ましくは、珪素含有組成物の沸点以上、分解温度以下である。例えば、テトラエトキシシランを使用するなら、テトラエトキシシランが分解せずにガス状である170℃以上400℃以下の導入温度が好ましい。
【0051】
また不活性ガスの導入は、その分圧に相当するSi原料を反応系に導入する目的で使用される。これにより反応系に導入するSi原料を、その沸点以下の温度で相対的に増やすことが可能になる。
【0052】
Si原料の供給量は、得られる複合酸化物中のSi含量がシリカ換算で、好ましくは5質量%以上、50質量%未満、特に好ましくは5質量%以上、35質量%未満となるような供給量とする。
【0053】
Si原料の導入流速は、複合酸化物粒子内でのシリカ分布を決める上で非常に重要である。同軸並行流ノズルを用いる場合、気体状のSi原料としての導入流速を、Zn原料ガス流速の30%〜300%、好ましくは80%〜150%の範囲に調整することで、本発明の複合酸化物粒子中にシリカを均一に分散させることができる。
【0054】
また、この導入流速をZn原料ガス流速の150%を超える流速にすることで、粒子中心部よりも表面付近にシリカをより多く偏在させることが可能である。用いるノズルが同軸ノズルでない場合には、導入する方向を下流側に向け、Si原料の反応帯が亜鉛の反応帯よりも下流側になるようにすれば、同様の効果を得ることができる。
【0055】
粒子形状については、導入する珪素含有組成物量を少なくすることにより、テトラポッド状及び針状の粒子の割合を多くすることができる。テトラポッド状及び針状の粒子の割合は、複合酸化物の媒体への分散性に影響し、5〜95個数%が好ましく、40〜90個数%が特に好ましい。
【0056】
Zn原料ガスと酸化性ガス、およびSi原料がそれぞれ前記の条件域にあれば、同軸並行流、直交流、斜交流など、いかなる導入形態でも迅速に酸化反応が進む。
【0057】
これらの酸化反応は高温の反応器内で進行する。粒子成長をより完全に抑制するため、特定の位置で急冷する等の方法で高温滞留時間を制御してもよい。
こうして得られた複合酸化物粒子はバッグフィルターなどで捕集される。
【0058】
次に、同軸平行ノズルを備えた装置で製造する場合の一例を示す。
図1は同軸平行ノズルを備えた製造装置の一例の概略模式図である。
金属亜鉛2は、亜鉛供給機により亜鉛気化器3に供給される。同時に、不活性ガス1も、亜鉛気化器3に供給される。亜鉛気化器3から出たZn原料ガスは、引き続きZn原料ガス加熱器11に導入される。なお、亜鉛気化器3とZn原料ガス加熱器11は一体化していてもかまわないし、別々に設けても良い。Zn原料ガス加熱器11から出たZn原料ガスは反応器7に導入される。酸化性ガス4は、加熱器5によって加熱され反応器7に導入される。珪素含有組成物6は、Si原料加熱器で加熱され反応器7に導入される。複合酸化物は、反応器7でZn原料ガスとSi原料とが酸化性ガスによって酸化し、生成する。生成した複合酸化物は、冷却器8に導入される。複合酸化物の粒子は、バッグフィルターなどの捕集器9で捕集され、粉末状の複合酸化物10が得られる。
【0059】
本発明の複合酸化物は、例えば、樹脂製品、ゴム製品、紙、化粧料、医薬製剤、塗料、印刷インキ、セラミック製品、電子部品等、従来の酸化亜鉛と同様な用途に用いることができ、特に、光触媒能が好まれず、媒体への分散性を要求される用途に好ましく用いることができる。
本発明の複合酸化物粒子は、例えば、有機重合体に添加して組成物として使用できる。有機重合体としては、例えば、合成熱可塑性樹脂、合成熱硬化性樹脂、天然樹脂等が挙げられる。このような有機重合体の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフイン、ナイロン6、ナイロン66、アラミドなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステルなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルアセタール樹脂、ポリアセテート、ABS樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロースおよびレーヨンその他のセルロース誘導体、ポリウレタン、ポリカーボネート、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂、セルロイド、キチン、澱粉シート、アクリル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。
【0060】
本発明の複合酸化物粒子を含むこれら有機重合体組成物は、例えば、塗料(コーティング組成物)、コンパウンド(例えば、該粉体含有樹脂組成物)、及び複合酸化物粒子を高濃度に含む成型体用のマスターバッチ等の形態で使用できる。有機重合体組成物には、酸化防止剤、耐電防止剤、金属脂肪酸塩等の添加剤を添加しても良い。
【0061】
有機重合体組成物中の本発明の複合酸化物粒子の濃度は、該組成物全質量に対して、0.01〜80質量%、が好ましく、1〜50質量%が特に好ましい。
このような重合体組成物を成型することによって、紫外線遮蔽能を有する成型体が得られる。このような成型体として、例えば、繊維、フィルム、プラスチック成型体等が挙げられる。
【0062】
また、本発明の複合酸化物粒子は、水や有機溶剤に分散させた後、バインダーを任意に添加して塗工剤にする事もできる。バインダー材料については、特に制限はなく、有機系バインダーであっても無機系バインダーであっても良い。
この様なバインダーとして、例えば、ポリビニルアルコール、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、セルロイド、キチン、澱粉シート、ポリアクリルアミド、アクリルアミド、不飽和ポリエステルなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、シリコン樹脂、ビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂等が挙げられる。さらに、無機バインダーとして、例えば、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、プロピオン酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物、アルコキシシラン、珪酸塩等の珪素化合物、或いはアルミニウムやチタンの金属アルコキシド等が挙げられる。
【0063】
また、具体的に塗工剤中のバインダーの添加量は、0.01質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%の範囲が特に好ましい。
バインダーの含有量が0.01質量%以下では、塗工後に十分な接着性を得られず、また20質量%を越えると増粘等の問題が生じ、また、経済的にも不利となる。
【0064】
さらに、本発明の複合酸化物を、構造体の表面に具備してもよい。このような構造体は、特に限定されるものではなく、例えば、金属、コンクリート、ガラス、陶器等の無機物から構成されるものでも良く、紙、プラスチック、木材、皮等の有機物から構成されるものでも良く、あるいは、それらを組み合わせたものであっても良い。これらの例としては、例えば、建材、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、工具、食器、風呂用品、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、スポーツ用品、蒲団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材、自動車用品、テントなどのアウトドア用品、ストッキング、靴下、手袋、マスク等が挙げられる。
【0065】
これらの、表面に具備する方法としては、特に限定するものではなく、例えば、前述の有機重合体組成物や塗工剤を、構造体に直接塗布しても良いし、あるいは、表面にすでに塗膜のある構造体の上に塗布しても良い。さらに、これらの上に他の塗膜を形成しても良い。
【0066】
【実施例】
本発明を実施例および比較例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
実施例1:
金属亜鉛3.8kg/時と900℃に加熱した窒素ガス25Nm3/時(Nは標準状態を示す。以下、同じ)とを亜鉛気化器に供給し、Zn原料ガスを得た。これを、Zn原料ガス加熱器で1000℃まで加熱した。
一方、水蒸気3体積%、酸素97体積%の組成を持つ酸化性ガス25Nm3/時を酸化性ガス加熱器で加熱した。加熱されたガスの温度は反応器への導入口において1030℃であった。
またテトラエトキシシラン700g/時を窒素と共に300℃まで加熱した。
これらを、内側からZn原料ガス、酸化性ガス、テトラエトキシシランを含む窒素ガスとした同軸並行ノズルで反応器に導入した。
流速はZn原料ガスが100m/秒、酸化性ガスが90m/秒、テトラエトキシランを含む窒素ガスが40m/秒であった。反応させた後、バッグフィルターにおいて粉体を捕集した。
【0068】
得られた粉体は、白色で、QUANTACHROME社製のモノソーブ型装置を用いてBET一点法にて比表面積を測定したところ42m2/gであり、株式会社リガク製の蛍光X線分析装置X−ray Spectrometer Simultix 10を用いて分析したところシリカ成分を4質量%含んでいた。
【0069】
この粉体を株式会社リガク製の回折X線装置2000/PC型を使用し、30kV、30mAの条件で、CuKα線を用いて2θ=10°〜80°の範囲を2°/分の速度でスキャンし、結晶形を調べた。その結果、結晶性酸化亜鉛の回折ピークを示す格子面(100)、(002)、(101)に相当する2θ=31.8°、34.5°、36.3°にピークを持ち、かつ結晶性シリカの回折ピークを示す格子面(101)に相当する2θ=22°付近にもピークをもつ図2のXRDチャートを示す粉体であった。
【0070】
さらに耐熱性を調べる為、サンプルを磁製坩堝に分取し、800℃の電気炉に入れ、1時間保持した後、ただちに取り出し室温にまで放冷した。この粉体の比表面積を再び前述のBET1点法で測定した。加熱前後の比表面積比、すなわち、(熱処理後の比表面積/熱処理前の比表面積)を算出したところ、79%となった。
【0071】
さらに粒子形状の評価を行う為、複数枚の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を撮影した。これによると観察された一次粒子は異方性のテトラポッド状及び針状の粒子と等方性粒子に分別され、300個を目処にし、写真に写っている全部の粒子を数えた。その結果、全個数に占めるテトラポッド状及び針状の粒子の割合は83%であった。
また、テトラポッド状粒子、針状粒子および等方性粒子のそれぞれについてEDXにより測定スポット径5nmで元素分析をしたところ、各形状の粒子ともにZn、Siが存在していることが確認された。これを各形状の粒子それぞれについて、複数箇所実施したが、いずれもZn、Siが検出された。
【0072】
次に紫外線遮蔽能と可視光透過性の評価を以下の方法で実施した。
コスモール43(日清製油製)20gと105℃で恒量になるまで乾燥した試料(前記複合酸化物の粉体)200mgを、入江製作所製卓上ボールミルV−1M型によって、100rpmの条件で30分間懸濁させた。これを島津製作所製紫外可視分光光度計UV−160によって波長280〜700nmにおける光透過率を測定した。使用セルは0.1mm石英セルを用いた。尚、ブランクは、試料を加えずに同様に処理したものを用いた。
【0073】
波長370nm以下の光透過率は低い方が紫外線遮蔽能が高く、370nmより大きな波長帯の光透過率は大きい方が可視光透過率が高い、すなわち透明性が高いことを示している。
【0074】
図3にその評価結果を示した。波長が420nm未満の紫外部の光透過率は低く、420nm以上の可視部の光透過率は高かった。
【0075】
実施例2:
金属亜鉛6kg/時と900℃に加熱した窒素ガス25Nm3/時とを亜鉛気化器に供給し、Zn原料ガスを得た。これを、さらにZn原料ガス加熱器で1000℃まで加熱した。
一方、水蒸気3体積%、酸素97体積%の組成を持つ酸化性ガス25Nm3/時を酸化性ガス加熱器で加熱した。加熱されたガスの温度は反応器への導入口において1030℃であった。
またテトラエトキシシラン10kg/時を窒素と共に300℃まで加熱した。
これらを、内側からZn原料ガス、酸化性ガス、テトラエトキシシランを含む窒素ガスとした同軸並行ノズルで反応器に導入した。
流速は、Zn原料ガスが100m/秒、酸化性ガスが90m/秒、テトラエトキシランを含む窒素ガスが50m/秒であった。反応させた後、バッグフィルターにおいて粉体を捕集した。
【0076】
得られた白色粉体を実施例1と同様に分析した。
その結果、比表面積37m2/gであり、シリカ成分26質量%含んでいた。結晶形は、実施例1と同じ2θの位置にピークを持つ粉体であった。加熱前後の比表面積比は85%であった。さらに粒子形状の評価を行う為、複数枚のTEM写真をとった。TEM写真の一例を図4に示す。全個数に占めるテトラポッド状及び針状の粒子の割合は36%であった。また、各形状の粒子にZn、Siが存在していることが確認された。次に紫外線遮蔽能と可視光透過性の分析結果を図3に示した。
【0077】
実施例3:
実施例1で得られた複合酸化物粉末に純水を加え粉末換算で0.5%となる様にスラリーを調製した。このスラリーに、粉末に対してウレタン樹脂が70%となるように水分散系ウレタン樹脂(VONDIC1040NS、大日本インキ化学工業(株)製)を添加して複合酸化物とウレタン樹脂を含有した塗工剤を得た。
【0078】
次に、上記の塗工剤にポリエステル不織布(6デニール、高安(株)社製)を含浸させ、取り出した後、ローラーで絞り、80℃で2時間乾燥し、本発明の複合酸化物を坦持したポリエステル不織布を得た。
【0079】
このポリエステル不織布にフェードメータ(ATLAS製、SUNSET CPS+)で50mW/cm2の光をあて100時間後に繊維の着色を調べたが、着色は見られなかった。
【0080】
実施例4:
実施例3で得られた複合酸化物粉末とウレタン樹脂を含有した塗工剤を100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、ルミラーT)の片面に、25μmのアプリケーターで塗工し、80℃で2時間乾燥し、複合酸化物粉体を坦持したポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0081】
得られたポリエチレンテレフタレートフィルム600cm2を実施例3と同様の耐候性試験を行ったところ、着色は認められなかった。
【0082】
また、得られた複合酸化物粒子坦持ポリエチレンテレフタレートフィルムを分光光度計(島津(株)製、UV−2400PC)で透過率の測定を行った結果、360nmの透過率が0%、550nmの透過率が99%であった。
【0083】
実施例5:
実施例1で得られた複合酸化物20質量部と、ステアリン酸亜鉛(日本油脂(株)製、ジンクステアレートS)2質量部と、低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン(株)製、ジェイレクスJH607C)78質量部とを二軸押出機(池貝鉄工(株)製、PCM30型)を用いて170℃(滞留時間約3分)で溶融混練し、ペレット化を行った。直径2〜3mmφ、長さ3〜5mm、質量0.01〜0.02g、円柱状で、複合酸化物含量20%の低密度ポリエチレンのコンパウンド20kg得た。
【0084】
この低密度ポリエチレンコンパウンド2kgと低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン(株)製、ジェイレクスJH607C)18kgをV型ブレンダー(池本理化工業(株)製、RKI−40)で10分間混合し、混合ペレットを作製した。
次に、得られた混合ペレットを200mmのTダイを有する二軸混練押出機(KZW15−30MG、(株)テクノベル製)でダイス温度250℃で80μmのフィルムを作製した。
【0085】
得られた、低密度ポリエチレンフィルム600cm2を実施例3と同様の耐候性試験を行ったところ、着色は認められなかった。
実施例4と同様にフィルムの透過率を測定した結果、360nmの透過率が0%、550nmの透過率が90%であった。
【0086】
実施例6:
定法により下記処方のファンデーションを製造した。複合酸化物粉として実施例1で得られた複合酸化物を使用した。
ファンデーションの処方
複合酸化物粉30質量%
マイカ 15質量%
タルク 10質量%
酸化鉄(赤)1.5質量%
酸化鉄(黄)3.5質量%
グリセリン 10質量%
精製水 30質量%
香料 適 量
このファンデーションは、透明感があり、良好な使用感であった。
【0087】
比較例1:
金属亜鉛3.8kg/時と900℃に加熱した窒素ガス25Nm3/時とを亜鉛気化器に供給し、Zn原料ガスを得た。これを、Zn原料ガス加熱器で1000℃まで加熱した。
一方、水蒸気3体積%、酸素97体積%の組成を持つ酸化性ガス25Nm3/時を加熱器で加熱した。加熱されたガスの温度は反応器への導入口において1030℃であった。
以上のZn原料ガス、酸化性ガスを同軸二重ノズルにて反応器に導入した。流速はZn原料ガスが100m/秒、酸化性ガス90m/秒であった。反応させた後、バッグフィルターにおいて粉体を捕集した。
【0088】
得られた白色粉体を実施例1と同様に分析した。
その結果、この粉体は、比表面積35m2/gであり、図5の回折X線チャートに示すような結晶性酸化亜鉛の回折ピークを示す格子面(100)、(002)、(101)に相当する2θ=31.8°、34.5°、36.3°にピークを持つ粉体であった。加熱前後の比表面積比は11%であった。全個数に占める等方性粒子の割合は3%であった。紫外線遮蔽能と可視光透過性の評価を図3に示した。
【0089】
比較例2:
比較例1で得られた粉体を実施例3と同様の方法で、耐候性試験を行った結果、表面が白濁し、バインダーが劣化していることが観察された。
【0090】
比較例3:
複合酸化物粉の替わりに市販の亜鉛華を用いて実施例6と同様にファンデーションを製造した。得られたファンデーションは透明感が無く、実施例6のファンデーションに比べざらついた使用感であった。
【0091】
【発明の効果】
本発明の複合酸化物は、可視光透過性に優れ、同時に紫外線遮蔽能にも優れ、媒体に分散させやすい特長を持つので、特に、透明性・紫外線遮蔽を要求される組成物に好ましく用いることができる。また、本発明の複合酸化物は、表面活性が抑制されているので共存する有機組成物を分解することがなく、表面処理をせずにこれらの用途に用いることができる。
【0092】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法を実施する反応装置の一例を模式的に示す概略図である。
【図2】本発明の代表的な複合酸化物を測定した回折X線チャートである。
【図3】本発明の複合酸化物と従来の酸化亜鉛の紫外線遮蔽性、可視光透過率を示す図である。
【図4】本発明の複合酸化物の代表的な透過電子顕微鏡写真である。
【図5】従来の酸化亜鉛を測定した回折X線チャートである。
【符号の説明】
1 不活性ガス
2 金属亜鉛
3 亜鉛気化器
4 酸化性ガス
5 酸化性ガス加熱器
6 珪素含有組成物
7 反応器
8 冷却器
9 捕集器
10 複合酸化物
11 Zn原料ガス加熱器
Claims (29)
- 酸化亜鉛を主成分とする複合酸化物において、BET比表面積が10〜200m2/gであり、酸化亜鉛とシリカの各結晶系構造を含み、X線結晶学的に結晶性酸化亜鉛の回折ピークを示す格子面(100)、(002)、(101)と、結晶性シリカの回折ピークを示す格子面(101)に回折ピークを有することを特徴とする複合酸化物。
- 酸化亜鉛とシリカの各結晶系構造が、複合酸化物の1次粒子に含まれた請求項1に記載の複合酸化物。
- 5個数%〜95個数%の1次粒子が、テトラポッド状及び/または針状の粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合酸化物。
- 800℃において1時間放置した複合酸化物のBET比表面積が、放置前に比べ、70%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合酸化物。
- 不活性ガス中に気体状の亜鉛を含むZn原料ガスと、酸素と水蒸気を含む酸化性ガスを、反応器にそれぞれ導入し、反応器内で亜鉛の酸化反応をさせ、その反応帯に珪素含有組成物を導入することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
- 珪素含有組成物が、亜鉛の酸化反応開始点より下流方向に1mまでの範囲内に導入される請求項5記載の複合酸化物の製造方法。
- 珪素含有組成物が、オルガノシランまたはシリコンハライドを含む組成物である請求項5または請求項6に記載の複合酸化物の製造方法。
- Zn原料ガスが、1モル%以上70モル%以下の亜鉛を含むガスである請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
- Zn原料ガスが、900〜1800℃で反応器に導入される請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
- Zn原料ガスが、10〜250m/秒の速度で反応器に導入される請求項5乃至請求項9のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
- 酸化性ガスが、900〜1800℃の温度で反応器に導入される請求項5乃至請求項10のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
- 酸化性ガスが、10〜250m/秒の速度で反応器に導入される請求項5乃至請求項11のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
- 珪素含有組成物が、50〜1200℃の温度で反応器に導入される請求項5乃至請求項12のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
- 珪素含有組成物が、Zn原料ガスの反応器への導入速度の30%〜300%の速度で反応器に導入される請求項5乃至請求項13のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
- 酸化性ガスが、複数のノズルで反応器へ導入される請求項5乃至請求項14のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
- 珪素含有組成物が、複数のノズルで反応器へ導入される請求項5乃至請求項15のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
- Zn原料ガスが、複数のノズルで反応器へ導入される請求項5乃至請求項16のいずれか1項に記載の複合酸化物の製造方法。
- 請求項5乃至請求項17のいずれか1項に記載の製造方法で製造された複合酸化物。
- 請求項1乃至請求項4、及び請求項18のいずれか1項に記載の複合酸化物を、組成物全質量中0.01%〜80質量%含むことを特徴とする有機重合体組成物。
- 有機重合体組成物の有機重合体が、合成熱可塑性樹脂、合成熱硬化性樹脂、及び天然樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である請求項19に記載の有機重合体組成物。
- 有機重合体組成物が、コンパウンドである請求項19または請求項20に記載の有機重合体組成物。
- 有機重合体組成物が、マスターバッチである請求項19または請求項20に記載の有機重合体組成物。
- 請求項19乃至請求項22のいずれか1項に記載の有機重合体組成物を成型してなることを特徴とする成型体。
- 請求項1乃至請求項4、及び請求項18のいずれか1項に記載の複合酸化物を含む粉体。
- 請求項1乃至請求項4、及び請求項18のいずれか1項に記載の複合酸化物を含むスラリー。
- 請求項1乃至請求項4、及び請求項18のいずれか1項に記載の複合酸化物を含む塗工剤。
- 請求項1乃至請求項4、及び請求項18のいずれか1項に記載の複合酸化物を含む塗料。
- 請求項1乃至請求項4、及び請求項18のいずれか1項に記載の複合酸化物を表面に具備した構造体。
- 請求項1乃至請求項4、及び請求項18のいずれか1項に記載の複合酸化物を含む化粧料。
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