JPWO2003083008A1 - 紫外線遮蔽粉体、その粉体を含有する分散物、紫外線遮蔽フィルム及び紫外線遮蔽容器 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、紫外線遮蔽粉体、その粉体を含有する分散物、紫外線遮蔽フィルム及び紫外線遮蔽容器に関し、特に包装材料に適用する。
背景技術
従来、光遮蔽剤は無機超微粒子、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄などが代表的であったが、これらは固有の極大吸収又は吸収域を単に紫外線領域に有していることが特徴であり、光触媒作用を同時に伴うことがよく知られている。
これらの微粒子は凝集しやすく、理論上考えられるレイリー散乱を効率的になすことは非常に困難であることが、発明者らの高分解能透過電子顕微鏡(以下「TEM」)による研究でわかっている。
無機系の紫外線遮蔽材料としては一般的には酸化チタンが最もよく用いられるが、これは可視光線領域の透明性に問題が有る。すなわち可視光線領域では従来、顔料級酸化チタン(粒子径0.1〜0.4μm)が光遮蔽剤として使われていたが、どんなにうまく分散しても不透明か半透明の分散体又は成膜材料しか得られない。しかも、純粋な酸化チタン(以下「酸化チタン、TiO2」)は、UV−A領域に吸収を持っていないという欠点を持つ。
また、酸化チタン自体が半導体であり光触媒活性を持つため、微粒子化した場合に光触媒活性が非常に強くなり、これを紫外線防止のために使用すると、粒子付近の分散母材等に悪影響を生じやすい。
一方酸化亜鉛は、紫外線を遮蔽する機能をもち、酸化チタンと比較すると、特に320nm以上のUVA領域に吸収帯があり、可視領域での透明性に優れている。
しかし、酸化亜鉛自体がn型半導体であり光触媒活性を持つため、微粒子化した場合に光触媒活性が非常に強くなり、これを紫外線防止のために使用すると、粒子付近の分散母材等に悪影響を生じやすい。
さらに酸化亜鉛を紫外線遮蔽剤として効率良く使用するには、粒子径を小さくすることが好ましいが、光触媒活性が増大すると共に、空気中の水分、分散母材中の各種溶媒等に侵されやすくなるという問題が生ずる。特に後者の問題は粒子の凝集を引き起こして二次粒子の形成につながる。二次粒子の生成は、酸化亜鉛粒子を微小化させても、酸化亜鉛が有する可視領域での透明性に優れるという特性を打ち消す。酸化亜鉛粒子において、光触媒活性を抑制しつつ優れた紫外線遮蔽効果を有し且つ分散時に透明性も同時に併せ持たせることは困難であった。
分散性を付与し且つ光触媒作用を抑制するため、いわゆるゾルゲル法又はこの改良法を用いてシリカなどの酸化物薄膜を形成する方法が数社から提供されている。しかし、ほとんどが反応触媒や溶剤を用いるため、粒子の凝集を抑えることは不可能であり、一次粒子径の30〜数百倍の大きさからなるフロックや凝結体を生成せしめてしまう。したがって、分散性の付与と光触媒作用の抑制を同時に満たした粉体は提供されていない。
その他の着色顔料の多くは、有機材料や無機材料にかかわらず固有の色を有しており、透明性を求めるためには、これら素材を少なくとも粒子径が100nm以下、好ましくは数10nmに平均粒子径ピークを持ち、且つ二次粒子を生成させないことが必要であるが、長期安定性のある分散体は実現されていなかった。
なお、有機系光吸収剤は本発明で使用しようとする樹脂の成形加工段階で、ブリージング現象(吸収剤のしみ出し現象)を起こし、成形体であるフィルム、容器、積層体、紙器コーティング膜から遊離する。これらの化合物は、モル吸収率(ε:イプンロン)が大きく、光吸収してより長い波長の光を発生すると同時に電子を発生し、さらに分子鎖の一部が切断されラジカルが発生するため、米国を中心に発ガン性が指摘されている。したがって、包装材料としてはそぐわないものである。
発明の開示
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、各種母材に分散させたときに酸化チタン粒子の二次粒子を形成しないように良好に分散させ、透明性を維持すると共に光を散乱反射させる機能を高めることで、可視光域での透明性と優れた紫外線遮蔽性を同時に併せ持った紫外線遮蔽粉体を提供することを目的とする。そして酸化チタン粒子を良好に分散させることで粒子配合量の低減につなげる。また、この酸化チタン粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体は、上記光学的特性を満たすと同時に光触媒活性を抑制することで活性酸素の発生を抑え、また活性酸素が発生しても分散粒子に活性種が衝突することによって活性を消失させて、安全衛生性を確保することも目的とする。
すなわち、粒子表面のゼータ電位を結晶粒子表面に対抗電位を発生せしめるように整えることで、単体分離をさせ二次粒子の生成を完全に抑制すること、同時に酸化チタン粒子が紫外線を吸収しても光活性触媒作用が分散母材へ作用しないようにすること、活性酸素を発生せしめないようにすること、紫外線遮蔽効果を増大させ且つ分散母材中で酸化チタン粒子が沈降しない程度に充分に小さい粒径の酸化チタン粒子であること並びに酸化チタン粒子の光散乱効率を高めるため粒子を球状(アナターゼ若しくはルチル)又は板状(ブルッカイト)にすること、を実現することが課題となる。同時に、各種溶媒や有機化合物、樹脂への分散を高め、非凝集系の透明性の高い複合体を提供し、包装材料へ使用可能であって非常に安全性の高い紫外線遮蔽粉体を提供することを目的としている。
散乱反射率を高めるため、若しくは光触媒作用が強い酸化チタン粒子であるときにはその光触媒作用を抑制するために、粒子表面に核体をなす結晶の光屈折率より低い屈折率を持つ超薄膜層を形成することを課題としている。
また、本発明では上記機能を有する酸化チタン微粒子のドーピングイオン種を2種類提案し、さらに2種類の金属ドーピング酸化チタン微粒子を同時に使用する場合を提案するものである。
さらに本発明は、各種母材に分散させたときに、可視光域での透明性、光触媒活性の抑制及び優れた紫外線遮蔽性を同時に併せ持ち、且つ安全衛生性を有する酸化亜鉛粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体を提供することを目的とする。すなわち、酸化亜鉛粒子の溶剤等に対する化学的耐久性を付与し且つ粒子表面のゼータ電位を整えることで二次粒子の生成を完全に抑制すること、同時に粒子が紫外線を吸収しても光活性触媒作用が分散母材へ作用しないようにすること、活性酸素を発生せしめないようにすること、紫外線遮蔽効果を増大させ且つ分散母材中で粒子が沈降しない程度に充分に小さい粒径の酸化亜鉛粒子であること並びに光遮蔽効率を高めるために粒子を分散状態で、球状或いは板状(ヘキサゴナル結晶)にすること、を実現することが課題となる。
また、本発明の目的は、酸化亜鉛粒子を主体とした前記紫外線遮蔽粉体において、370nm以下の紫外線をシャープカットさせることを目的とする。すなわち、可視領域での透過率の低下を抑制しつつ、紫外線遮蔽効果を付与することである。
さらに本発明の目的は、特定の酸化チタン粒子と酸化亜鉛粒子とを混合粉体とすることで、上記の特徴を保持しつつ370nm〜390nm付近の近紫外線を遮蔽する紫外線遮蔽粉体を提供することである。
また本発明の目的は、酸化チタン粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体若しくは酸化亜鉛粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体を水系塗料、有機系塗料に均一分散せしめた分散体を提供することであり、これを塗料感覚で、紫外線遮蔽フィルム、紫外線遮蔽容器等の包装資材の形成に適用可能とすることである。また、印刷用顔料とともに分散させることで、包装資材に印刷することで同時に紫外線遮蔽効果を付与させることを可能とする分散体を提供することを目的とする。
さらに、酸化チタン粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体若しくは酸化亜鉛粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体を用いて、母材分散型或いは表面処理型の形態の紫外線遮蔽フィルム及び紫外線遮蔽容器を提供することである。
上記の課題を解決するために本発明者らは下記の紫外線遮蔽粒子を提供する。すなわち、本発明に係る紫外線遮蔽粉体は、アナターゼ型の単結晶粒子、ルチル型の単結晶粒子、ブルッカイト型の単結晶粒子又はこれらの混合粒子を主体とする高温酸化型酸化チタン粉体であって、前記粒子はアルミニウムイオンを酸化チタンに対して0.5〜8.0重量%ドーピングしたアルミニウムイオンドーピング酸化チタン粒子で且つ一次粒子径が5〜1000nmで二次粒子を形成しないことを特徴とする。
また本発明に係る紫外線遮蔽粉体は、アナターゼ型の単結晶粒子、ルチル型の単結晶粒子、ブルッカイト型の単結晶粒子又はこれらの混合粒子を主体とする酸化チタン粉体であって、前記粒子は該粒子表面に酸化珪素膜を1〜40nmの膜厚で被覆形成し且つ鉄イオンを酸化チタンに対して0.05〜5.5重量%ドーピングした鉄イオンドーピング酸化チタン粒子であり、一次粒子径が5〜1000nmで二次粒子を形成しないことを特徴とする。
すなわち、本発明に係る紫外線遮蔽粉体は、結晶格子中に捕獲された金属イオンによる酸素吸収性を持ち、さらに紫外線波長域において▲1▼280〜310nm▲2▼320〜350nm、及び▲3▼360〜390nmにバックグラウンドの高い極大吸収を有し、さらに可視光線領域に高い吸収能を同時に有するワイドバンドギャップ酸化チタン超微粒子であって、二次粒子を形成しない高分散可能な超微粒子を主体とする粉体である。
本発明に係る紫外線遮蔽粉体では、前記アルミニウムイオン及び前記鉄イオンは、不飽和状態で低次の酸化数状態であることが好ましい。この紫外線遮蔽粉体は、ワイドバンドギャップ酸化チタン超微粒子を主体とする粉体である。ワイドバンドギャップ酸化チタン超微粒子は結晶格子中に捕獲された2価又は3価の金属イオンの群から選択される少なくとも1種が不飽和状態で低次酸化され、さらに広い光学的ワイドバンドギャップを付与せられ、280〜1000nmまでの光線を同時に遮蔽できるように調整された粒子である。
本発明に係る酸化チタン粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体では、アルミニウムイオンをドーピングした酸化チタン粒子、鉄イオンをドーピングした酸化チタン粒子又はこれらを低次酸化した酸化チタン粒子からなる紫外線遮蔽粉体のうち2種以上を混合した混合粉体であることが好ましい。
また、本発明に係る紫外線遮蔽粉体は、ZnO構造型の酸化亜鉛単結晶粒子、NaCl構造型の酸化亜鉛単結晶粒子又はこれらの混合粒子の表面に酸化珪素膜を1〜20nmの膜厚で完全に被覆した酸化亜鉛粒子を主体とする粉体で、一次粒子径が5〜200nmで二次粒子を形成しないことを特徴とする。
本発明に係る酸化亜鉛粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体では、前記粉体は、370nm以下の紫外線をシャープカットするために一次粒子径が5〜50nmで二次粒子を形成しないことが好ましい。
また本発明に係る酸化亜鉛粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体は、前記酸化亜鉛粒子と高温酸化型二酸化チタン粒子との混合物を主体として一次粒子径が5〜200nmで二次粒子を形成しない混合粉体であって、前記高温酸化型二酸化チタン粒子は、アナターゼ型の単結晶粒子、ルチル型の単結晶粒子、ブルッカイト型の単結晶粒子又はこれらの混合粒子で構成し、且つアルミニウムイオンを二酸化チタンに対して0.5〜8.0重量%ドーピングしたアルミニウムイオンドーピング二酸化チタン粒子とするか或いは鉄イオンを二酸化チタンに対して0.5〜5.5重量%ドーピングしてさらに粒子表面に酸化珪素膜を1〜20nmの膜厚で完全に被覆した鉄イオンドーピング二酸化チタン粒子とするか或いは該アルミニウムイオンドーピング二酸化チタン粒子と該鉄イオンドーピング二酸化チタン粒子との混合粒子とすることが好ましい。
本発明に係る酸化チタン粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体若しくは酸化亜鉛粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体を含有する分散物は、該紫外線遮蔽粉体を水溶性塗料、エマルジョン樹脂系塗料又は溶剤系塗料にコロイド分散させたことを特徴とする。この紫外線遮蔽粉体を含有する分散物は、前記紫外線遮蔽粉体が、水溶性ポリマー、アルカリ膨潤性ポリマー、エチルシリケート及び/又はその変成体、エマルジョン系コーティング剤、光硬化性樹脂、CMC、にかわ、うるし、エラストマーの群より選択される少なくとも1種の接着剤又は粘着剤中に中に均一分散されてなり、レイリー散乱及び/又はミー散乱を発現せしめたワイドバンドギャップ酸化チタン超微粒子等を配合した成膜材料である。
また本発明に係る分散物において、シュリンク包装フィルム又はプラスチック容器の印刷用顔料を含有することが好ましい。
本発明に係る紫外線遮蔽フィルムは、前記紫外線遮蔽粉体をプラスチックフィルム中に均一分散させるか或いは複数の樹脂層からなるプラスチック積層フィルムのいずれかの樹脂層に前記紫外線遮蔽粉体を均一分散させたことを特徴とする。
また本発明に係る紫外線遮蔽フィルムは、前記分散物をプラスチックフィルムの片面又は両面に塗布して、固化後の膜厚が0.1〜5μmの紫外線遮蔽層を形成したことを特徴とする。
本発明に係る紫外線遮蔽容器は、前記紫外線遮蔽粉体を均一分散させた樹脂を成形材料として成形したプラスチック容器であるか或いは複数の樹脂層からなる積層型プラスチック容器のいずれかの樹脂層に前記紫外線遮蔽粉体を均一分散させたプラスチック容器であることを特徴とする。
本発明に係る紫外線遮蔽容器は、前記分散物をプラスチック容器の外表面、内表面又は外表面と内表面の両面に塗布して固化後の膜厚が0.1〜5μmの紫外線遮蔽層を形成したことを特徴とする。
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。球状超微粒子酸化チタン結晶格子中に、鉄やアルミニウムの不純物準位の比較的高いイオンをドーピングすることにより、従来280nm〜320nmに1つしかなかった紫外線最大吸収を▲1▼280nm〜310nm、▲2▼320nm〜350nm、▲3▼360nm〜390nmにそれぞれ最大吸収をもち、光バンドギャップ、エレクトロンギャップなど、本来の純粋鉱物結晶が持ちえなかったワイドバンドギャップ特性が発揮できるようにした。同時に等電位点を酸性側にシフトさせ、二次粒子を形成することなく、極めて高い分散性を付与できる。この結果、本発明の紫外線遮蔽粉体は各種母材に分散させたときに、可視光域での透明性、光触媒活性の抑制及び優れた紫外線遮蔽性を同時に併せ持ち、且つ安全衛生性を有する。
同時に、光の散乱を高め、数10nmの球状超微粒子で起きるレイリー散乱とさらに広い粒子範囲で起きるミー散乱が得られるため、ラジカル反応が危険視される活性酸素の抑制ができる。
また、ドーパントの活性力によって、たとえ活性酸素が発生しても即座に吸着固定できるため、容器内にそれらのラジカルが侵入し、内容物を変質することを防ぐことができる。
さらに、上記超微粒子を短時間低温で加熱することによってドーパントの状態を低次酸化状態にさせると、粒子の成長なしに紫外線から赤外線域まで光遮蔽域を広げることができる。この場合、可視域において、遮蔽性が高まる変わりに若干濁りを生ずることがある。しかし、内容物が牛乳等の色物の飲食品であれば問題とならない。また、異種の素材を併用して、粒子の凝集を引き起こすことを低減することができる。
また、鉄イオンドーピング酸化チタン粒子の表面に1〜数nmのアモルファスシリカなどの超薄膜を少なくとも1層形成することによって、粒子表面に反射層を付与できるため、分散性を大幅に高めるとともに、高い反射率を得ることができる。
さらに、有機顔料やアルミレーキ顔料、無機酸化物などに同様に1〜数nmのアモルファスシリカを形成することによって、等電位点がpH≦4のワイドバンドギャップ超微粒子と容易に凝集体を形成することなく分散できるので、特定波長を極めて高い効率で遮蔽することができる。
本発明に係る酸化亜鉛粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体は各種母材に分散させたときに、可視光域での透明性、光触媒活性の抑制及び優れた紫外線遮蔽性を同時に併せ持ち、且つ安全衛生性を有する。すなわち、紫外線遮蔽粉体に対して、溶剤等に対する化学的耐久性を付与し且つ粒子表面のゼータ電位を調整して二次粒子の生成を完全に抑制した。同時に粒子が紫外線を吸収しても光活性触媒作用が分散母材へ作用せず、活性酸素を発生しない。分散状態の粒子径を充分に小さくしたので、紫外線遮蔽効果を増大させ且つ分散母材中で粒子が沈降しない。さらに粒子の光遮蔽効率が高められている。
また、本発明の酸化亜鉛粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体は、370nm以下の紫外線をシャープカットさせることが可能であった。
さらに本発明の酸化亜鉛粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体は、特定の酸化チタン粒子と酸化亜鉛粒子との混合粉体とすることで、上記の特徴を保持しつつさらに370nm〜390nm付近の近紫外線を遮蔽することができる。
本発明に係る酸化チタン粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体若しくは酸化亜鉛粒子を主体とした紫外線遮蔽粉体を含有する分散物は、水系塗料、有機系塗料に均一分散せしめることで、これを塗料感覚で、紫外線遮蔽フィルム、紫外線遮蔽容器等の包装資材の形成に適用することが可能であった。また印刷用顔料とともに分散させて、これを包装資材に印刷することで同時に紫外線遮蔽効果を付与させることが可能であった。さらに本発明の粒子群は、純水以外に、エタノール、イソプロピルアルコールなどに分散剤を使用せずに単分散できる。また、溶剤一溶剤型エマルションを凝集無しに形成できるので、溶剤型ポリマー中にも単分散可能である。したがって、容器リサイクルに必要な剥離性を保持できるポリマーを配合する成膜材料を提供できた。
さらに、本発明の紫外線遮蔽粉体を用いて、母材分散型或いは表面処理型の形態の紫外線遮蔽フィルム及び紫外線遮蔽容器を提供することができた。
これらの成膜材料は、容器が接着性の悪いポリオレフィンであっても、その表面を大気圧プラズマ、2660Pa(20torr)程度の低圧プラズマ、真空プラズマで短時間処理することによって容易に所望の接着強度を得ることができる。
また、本発明の成膜材料によって、飲料、アルコール飲料、牛乳、ビタミン類、色素(有機系、天然系含む)、薬品、化粧品添加剤、カロチンなど幅広く、従来保存が困難であった物質をその変質、酸化、色素変化から守ることができる。また、従来ドリンク剤に高配合されていたホルモン撹乱を誘発するとされているポリオキシ安息香酸エステルの低減ができる。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施形態と実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。
(酸化チタン粒子)
本発明に係る紫外線遮断粉体は、酸化チタン単結晶粒子を主体とする高温酸化型酸化チタン粉体であって、前記粒子はアルミニウムイオンを酸化チタンに対して0.5〜8.0重量%ドーピングしたアルミニウムイオンドーピング酸化チタン粒子で且つ一次粒子径が5〜1000nmで二次粒子を形成しないことを特徴とする(以下アルミニウムイオンドーピング型という)。ここで、酸化チタン単結晶粒子は、アナターゼ型の単結晶粒子、ルチル型の単結晶粒子、ブルッカイト型の単結晶粒子又はこれらの混合粒子である。アルミニウムドーピング型は高温酸化型酸化チタンとする。高温酸化型の酸化チタン粒子とは、プラズマ酸化等の製法により2000〜3000℃という超高温で形成された酸化チタン粒子である。この酸化チタン粒子の特徴は、表面が未処理状態であっても、pHが4程度で表面のゼータ電位が等電位点となり、pHが6程度でゼータ電位が−25〜−50mVとすることができることである。また、光触媒活性が低下させられている。後述する鉄イオンドーピング型のように酸化珪素膜を被膜する必要はない。
また、本発明に係る紫外線遮断粉体は、酸化チタン単結晶粒子を主体とする酸化チタン粉体であって、前記粒子は該粒子表面に酸化珪素膜を1〜40nmの膜厚で被覆形成し且つ鉄イオンを酸化チタンに対して0.05〜5.5重量%ドーピングした鉄イオンドーピング酸化チタン粒子であり、一次粒子径が5〜1000nmで二次粒子を形成しないものであっても良い(以下鉄イオンドーピング型という)。
ここで鉄イオンドーピング型の酸化チタン粒子は、光触媒効果を発揮し、しかも鉄イオンドーピング型でルチル型の酸化チタン粒子はゼータ電位に基づく負の反発効果が弱く水に対して凝集体を形成する。したがって、酸化珪素膜で粒子表面を被覆することが光触媒効果を抑止するために必要であり、またゼータ電位に基づく負の反発効果を有する酸化珪素膜は、凝集体の形成を防止する。さらに、酸化珪素膜で粒子を被覆するため、粒子自体は、前記高温酸化型酸化チタンやゾルゲル法で製造した酸化チタンを含め、広く適用することが可能である。しかし、高温酸化型酸化チタンのように、残留炭素やOH基等の残留官能基を完全に除去しきれていない通常グレードの酸化チタン粒子では、鉄イオンがドーピングされうるサイトが限られるため、鉄イオンをいろいろなサイトにドーピングして各種機能を発現させるためには酸化チタンは高温酸化型であることが好ましい。
本発明に係る紫外線遮断粉体は、(1)アルミニウムイオンドーピング型を主体とする粉体(2)鉄イオンドーピング型を主体とする粉体又は(3)アルミニウムイオンドーピング型と鉄イオンドーピング型との混合粉体でも良い。
酸化チタン単結晶粒子とするのは、一次粒子の粒子形状を均一化させ、且つ球形若しくは板状に近づけるためである。ここでルチル若しくはアナターゼは球形となり、ブルッカイトは板状ないし球状となる。一次粒子径を5〜1000nmと制御することで、単結晶粒子の自形結晶成長を適度にとどめて球状又は板状に近いものとすることができ、粒子のアスペクト比を小さくすることができる。これにより、遮蔽効率を高め且つ分散時の乱反射を抑えて分散体の白濁の発生を抑え、透明性を向上させることができる。本発明でいう透明性とは、粒子に起因する乱反射が少なく、分散体を介して先方が見える状態をいい、いわゆるスリガラスのような透光性のみを有する場合は除かれる。一次粒子径が5nm未満の場合には、粉体のハンドリングが難しくなり、また粒子での酸化チタン/酸化珪素の体積比が小さくなることから必ずしも酸化チタン本来の特性を引き出すことにつながらない。一方、一次粒子径が1000nmを超えると紫外線遮蔽効果が薄れ、分散時にコロイド化せずに沈降するため好ましくない。
本発明では、一次粒子径を5〜1000nmと制御した上で、少なくとも20〜50nm、100〜300nm及び300nmを超える粒度範囲に正規分布を持たせることが好ましい。このような粒度分布を持たせる理由は、最小粒径範囲でレイリー散乱、それ以上の範囲で紫外線から可視光線をミー散乱させるようにしたものである。
本発明では、酸化チタンの出発原料としての金属チタン粉末と共に鉄粉末又はアルミニウム粉末を熱プラズマ中で蒸発気体化させて、酸化チタンの結晶格子中に所定量の鉄イオン又はアルミニウムイオンをドーピングする。結晶格子中に大きな不純物準位を生じさせ、光バンドギャップ及びエレクトロンギャップを発現させ、紫外線全域に3ヵ所、特に▲1▼280〜310nm、▲2▼320〜350nm及び▲3▼360〜390nmの各領域に極大吸収を持ち、同時にドーピングされた金属イオンが酸素を吸収して肉眼で識別できる程度の変色性(フォトクロミック性)を持たせたものである。特に▲2▼340〜350nm及び▲3▼360〜380nmの各領域の極大吸収は、顔料級酸化チタンが持ち合わせていないものである。
アルミニウムイオンを酸化チタンに対して0.5〜8.0重量%ドーピングすることで、遮蔽域の拡大が調整できる。なお、アルミニウムイオンは酸化チタンの結晶格子中に固溶した形でドーピングされる。ドーピング量が0.5重量%未満であると遮蔽域の拡大幅が小さく、8.0重量%を超えると固溶域を超えることとがある。
また、鉄イオンを酸化チタンに対して0.05〜5.5重量%ドーピングすることで、遮蔽域の拡大が調整できる。なお、鉄イオンも酸化チタンの結晶格子中に固溶した形でドーピングされる。ドーピング量が0.05重量%未満であると遮蔽域の拡大幅が小さく、5.5重量%を超えると固溶域を超えることがある。
酸化チタン粒子にドーピングされたアルミニウムイオン及び鉄イオンは、低次の酸化数状態であることが好ましい。低次の酸化数状態とすることで、400nm以上の吸収が増大し、遮蔽域を拡大することができるからである。
また、凝集による二次粒子の生成のみならず、溶媒との関係で溶媒中に分散させた時の紫外線遮蔽粉体の凝集をも考慮しなければならない。本発明では、上記バンドギャップによって、粒子表面を操作し、粒子の等電位点又は中性付近のゼータ電位を大きくマイナスサイドにシフトさせ、溶媒に対して分散性を一挙に高めたものである。本発明では、さらに鉄イオンドーピング酸化チタン表面に、酸化チタンよりも光屈折率の低い酸化珪素膜を1〜40nmの膜厚で成膜することで、さらに光の反射効率を高めると同時に、シラノール基を1ケ1ケの粒子に結合させ、全てマイナスに帯電させることにより粒子を単体分離させたものである。ここで、酸化珪素膜はアモルファスシリカ膜である。さらにこの酸化珪素膜はゾルゲル法で成膜した場合に残存するOH基やアルキル基等の残留官能基を持たない酸化珪素膜である。残留官能基を有さない酸化珪素膜は、表面電位を粒子表面全面にわたって均一化することができ、良好な分散状態を実現し且つその分散状態を安定化させることができる。したがって、この酸化珪素膜は鉄イオンドーピング酸化鉄粒子表面を完全に被覆することが好ましい。酸化珪素膜をほどこす理由は、光触媒作用の抑止およびゼータ電位を負に整えるのみならず、酸化珪素が酸化チタンよりも屈折率が小さいために酸化珪素膜がどんなに薄くとも光を散乱反射するため、酸化チタン粒子単体以上に光の反射効率を高めることができるからである。したがって、酸化チタンが本来もっている吸収ゾーンを広げる。
酸化珪素膜を1〜40nmの膜厚とする理由は次の通りである。40nmを超えると粒子における酸化チタン粒子の体積割合を小さくせざるを得ず、酸化チタンが本来有する特性を発揮しえなくなるからである。一方、酸化珪素膜の膜厚の下限は、酸化珪素の4面体の1ユニット層が成膜されたときの膜厚である0.3nmである。しかし、酸化チタン粒子の表面全てを完全に酸化珪素で被覆するためには、0.3nmの酸化珪素膜で被覆すると被覆不良箇所の発生のおそれがあり、また膜厚分析法の確立が難しい。そこで、被覆不良箇所の発生抑止と分析手段の観点から、1nm以上の膜厚とすることが好ましい。
本発明において「二次粒子を形成しない」とは、一次粒子同士の凝集や凝結の発生がないことをいう。二次粒子が生成すると、一次粒子径を小さくしても実質の粒径が増大して、溶媒に分散したときに沈降を起こしてしまう。本発明では、鉄イオンドーピング酸化チタン粒子の表面を酸化珪素膜で完全に被覆することで表面電位の調整を行ない、二次粒子の生成の抑制及び溶媒中での凝集防止による高分散化を図る。またアルミニウムドーピング酸化チタン粒子は、高温酸化型酸化チタンとすることで、酸化珪素膜を被膜することなしに表面電位をマイナスにすることができ、二次粒子の生成の抑制及び溶媒中での凝集防止による高分散化を図る。したがって、何れの粒子も、溶媒中に粉体を分散させた場合に、分散液や分散体の透明性を確保しつつ、高度の紫外線遮蔽効果を得ることができるわけである。
(酸化亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子と酸化チタンとの混合粒子)
本発明に係る紫外線遮断粉体は、酸化亜鉛単結晶粒子の表面に酸化珪素膜を1〜20nmの膜厚で完全に被覆した微粒子を主体とし、一次粒子径が5〜200nmで二次粒子を形成しないことを特徴とする。ここで、酸化亜鉛単結晶粒子は、ZnO構造型の酸化亜鉛単結晶粒子、NaCl構造型の酸化亜鉛単結晶粒子又はこれらの混合粒子である。
酸化亜鉛粒子とした理由は、酸化チタンと比較して近紫外域で紫外線遮断効果が高いためである。酸化珪素膜で酸化亜鉛粒子の表面を被覆する理由は、酸化亜鉛の化学的耐久性が劣り、溶媒や母材により侵食を受けた箇所を結合点とする二次粒子の生成が起こるので、化学的耐久性の付与と二次粒子生成の抑制を実現するためである。併せて、酸化亜鉛の光触媒作用を封じるためである。本発明は、酸化珪素膜で酸化亜鉛粒子の表面を完全に被覆することを特徴とする。ここで、酸化珪素膜は、OH基やアルキル基等の残留した官能基が無いことが好ましい。これらの官能基により粒子の表面電位が不安定となるからである。従来技術では被覆しても完全でないため、光触媒作用の抑制は可能であっても、長期にわたって安定した化学的耐久性の付与と二次粒子の生成の抑制はできなかった。本発明の紫外線遮断粉体は、化学的耐久性の付与、二次粒子生成の抑制及び光触媒作用の抑制を同時に実現できる。なお、酸化珪素膜はアモルファスシリカ膜である。
また、凝集による二次粒子の生成のみならず、溶媒との関係で溶媒中に分散させた時の紫外線遮蔽粉体の凝集をも考慮しなければならない。本発明では酸化珪素膜を酸化亜鉛粒子の表面に完全に被覆することで、粒子の等電位点を酸性にシフトさせ、言い換えると中性付近のゼータ電位を大きくマイナスサイドにシフトさせ、媒質に対して分散性を一挙に高めたものである。酸化珪素膜の膜厚は均一であることが好ましい。
酸化珪素膜を1〜20nmの膜厚とする理由は次の通りである。20nmを超えると粒子における酸化亜鉛粒子の体積割合を小さくせざるを得ず、酸化亜鉛が本来有する特性を発揮しえなくなるからである。一方、酸化珪素膜の膜厚の下限は、酸化珪素の一結晶格子が成膜されたときの膜厚である0.3nmである。しかし、酸化亜鉛粒子の表面全てを完全に酸化珪素で被覆するためには、0.3nmの酸化珪素膜で被覆すると被覆不良箇所の発生のおそれがあり、また膜厚分析法の確立が難しい。そこで、被覆不良箇所の発生抑止と分析手段の観点から、1nm以上の膜厚とすることが好ましい。
酸化亜鉛単結晶粒子とするのは、一次粒子の粒子形状を均一化させ、且つ球状或いは板状に近づけるためである。一次粒子径を5〜200nmと制御することで、単結晶粒子の自形結晶成長を球状或いは板状に調整し、酸化亜鉛独自のひげ結晶の成長をできなくすることができ、粒子のアスペクト比を小さくすることができる。これにより、分散時の乱反射を抑えて分散体の白濁の発生を抑え、透明性を向上させることができる。本発明でいう透明性とは、前述したように粒子に起因する乱反射が少なく、分散体を介して先方が見える状態をいい、いわゆるスリガラスのような透光性のみを有する場合は除かれる。一次粒子径が5nm未満の場合には、粉体のハンドリングが難しくなり、また粒子での酸化亜鉛/酸化珪素の体積比が小さくなることから必ずしも酸化亜鉛本来の特性を引き出すことにつながらない。一方、一次粒子径が200nmを超えると紫外線遮蔽効果が薄れ、分散時にコロイド化せずに沈降するため好ましくない。本発明の酸化珪素膜を被膜した酸化亜鉛粒子は、一次粒子径を特に5〜50nmとすることが好ましい。一次粒子径をこの範囲にすることで、370nm以下の紫外線をシャープカットするという新たな効果が生ずるからである。
本発明では、酸化珪素膜で酸化亜鉛を完全に被覆すると共に酸化珪素に基づく表面電位の調整を行ない、二次粒子の生成の抑制及び溶媒中での凝集防止による高分散化を図る。したがって、溶媒中に粉体を分散させた場合に、分散液や分散体の透明性を確保しつつ、高度の紫外線遮蔽効果を得ることができるわけである。
本発明において、紫外線遮蔽粉体は、前記した酸化珪素被覆酸化亜鉛粒子と所定の酸化チタン粒子との混合粉体であっても良い。ここで、酸化珪素被覆酸化亜鉛粒子と所定の酸化チタン粒子との混合比は、5/95〜95/5が好ましい。
所定の酸化チタン粒子とは、高温酸化型二酸化チタン粒子で、一次粒子径が5〜200nmである。しかも、高温酸化型二酸化チタン粒子は、アナターゼ型の単結晶粒子、ルチル型の単結晶粒子、ブルッカイト型の単結晶粒子又はこれらの混合粒子で構成する。さらにこの高温酸化型二酸化チタン粒子は、アルミニウムイオンを二酸化チタンに対して0.5〜8.0重量%ドーピングしたアルミニウムイオンドーピング二酸化チタン粒子とするか或いは鉄イオンを二酸化チタンに対して0.5〜5.5重量%ドーピングしてさらに粒子表面に酸化珪素膜を1〜20nmの膜厚で完全に被覆した鉄イオンドーピング二酸化チタン粒子とするか或いは該アルミニウムイオンドーピング二酸化チタン粒子と該鉄イオンドーピング二酸化チタン粒子との混合粒子とする。
高温酸化型の二酸化チタン粒子とは、酸化チタン粒子の欄で述べたようにプラズマ酸化等の製法により2000〜3000℃という超高温で形成された粒子である。この粒子の特徴は、表面が未処理状態であっても、pHが4程度で表面のゼータ電位が等電位点となり、pHが6程度でゼータ電位が−25〜−50mVとすることができることである。したがって、酸化珪素膜を被膜した場合と同様に、媒質に対して分散性を一挙に高めることができる。
単結晶粒子とする理由は、酸化珪素膜を被覆した酸化亜鉛粒子の場合と同様で、一次粒子の粒子形状を均一化させ、且つ球状或いは板状に近づけるためである。
一次粒子径を5〜200nmとする理由は、酸化珪素膜を被覆した酸化亜鉛粒子の場合と同様で、分散時にコロイド化させるためである。その際、粒子の成長を抑えて球状或いは板状に近づけ、光遮蔽効率を高めて、さらに透明性を向上させるためである。
アルミニウムイオンドーピング二酸化チタン粒子とする理由は、遮蔽する紫外線波長を可視光域に近づけるためである。アルミニウムイオンを二酸化チタンに対して0.5〜8.0重量%ドーピングすることで、遮蔽域の拡大が調整できる。なお、アルミニウムイオンは二酸化チタンの結晶格子中に固溶した形でドーピングされる。ドーピング量が0.5重量%未満であると遮蔽域の拡大幅が小さく、8.0重量%を超えると固溶域を超えることとなる。なお、アルミニウムイオンドーピング二酸化チタンは、表面電位がマイナスとなっており、酸化珪素膜をほどこす必要はない。
また、鉄イオンドーピング二酸化チタン粒子とする理由は、アルミニウムの場合と同様に遮蔽する紫外線波長を可視光域に近づけるためである。鉄イオンを二酸化チタンに対して0.5〜5.5重量%ドーピングすることで、遮蔽域の拡大が調整できる。なお、鉄イオンも二酸化チタンの結晶格子中に固溶した形でドーピングされる。ドーピング量が0.5重量%未満であると遮蔽域の拡大幅が小さく、5.5重量%を超えると固溶域を超えることとなる。さらに粒子表面に酸化珪素膜を1〜20nmの膜厚で完全に被覆する理由は、鉄イオンのドーピングにより表面電位が変化し、分散時に凝集が発生しやすくなるため、酸化亜鉛粒子の場合と同様に凝集を予防するためである。なお、ここで、酸化珪素膜は、OH基やアルキル基等の残留した官能基が無いことが好ましい。これらの官能基により粒子の表面電位が不安定となるからである。
アルミニウムイオンドーピング二酸化チタン粒子と鉄イオンドーピング二酸化チタン粒子とは、紫外線遮蔽域の拡大という機能が同じであることから、混合粒子として使用することができる。
酸化珪素被覆酸化亜鉛粒子と所定の酸化チタン粒子との混合粉体は、二次粒子を形成しないことが必要である。酸化亜鉛粒子単体の場合と同様、溶媒中に粉体を分散させた場合に、分散液や分散体の透明性を確保しつつ、高度の紫外線遮蔽効果を得るためである。
(紫外線遮蔽粉体を含有する分散物)
次に本発明に係る紫外線遮蔽粉体を含有する分散物について説明する。本分散物は、紫外線遮蔽粉体を水溶性塗料、エマルジョン樹脂系塗料又は溶剤系塗料にコロイド分散させたことを特徴とする。塗料に対する紫外線遮蔽粉体の配合割合は、分散物の使用法によって適宜調整する。
本発明で水溶性塗料とは、水性アルキド(ポリエステル)樹脂系塗料、水性アクリル樹脂系塗料、水性エポキシ樹脂系塗料又は水性ウレタン樹脂系塗料のことをいう。
また、エマルジョン樹脂系塗料とは、エポキシエマルジョン、ウレタンエマルジョン、アルキドエマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン又はアクリル系エマルジョンのことをいう。
水溶性塗料とエマルジョン樹脂系塗料とは、塗料の助要素の主成分が水である塗料であり、水系塗料と総称される。したがって溶媒は水となる。
また溶剤系塗料とは、アルキド(ポリエステル)樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料又はウレタン樹脂系塗料のことを言う。有機溶剤が溶媒となり、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、セロソルブ(エチルグリコール)、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット又は石油系混合溶剤が例示できる。
なお、本分散物は、塗布後、自然乾燥又は焼付により硬化させる。
分散物中の紫外線遮蔽粉体の濃度は、塗料の種類によって適宜調整し、且つコロイド分散する濃度範囲内とする。成膜後の固形分比として、紫外線遮蔽粉体の濃度は、5〜0.2重量%(塗料の濃度は95〜99.8重量%)であることが好ましい。
さらに上記分散物は、シュリンク包装フィルム又はプラスチック容器の印刷用顔料を含有することもできる。この分散物を塗料として使用することで、インクによる色づけと紫外線遮蔽効果を一塗布処理で達成することが可能となる。もちろん印字用顔料と混合することも出来る。印刷用顔料は、一般的な有機顔料又は無機顔料等の顔料であり、好ましくは溶媒に分散しているほうが良い。シュリンク包装フィルム又はプラスチック容器の印刷用顔料は、分散状態を安定化させるために1〜40nm、好ましくは1〜20nmの酸化珪素薄膜が顔料粒子表面に均一に形成されてなる有機色素又は/及び無機顔料であることがさらに好ましい。上記酸化チタン以外に可視部に極大吸収を持つ色素表面に、上記酸化珪素膜を形成したのち分散させた分散体を加えて、上記酸化チタンのもつ可視光線領域における高い光遮蔽効果をさらに広げるとともに、濃い色をつけさせないような塗膜形成剤を構成したものである。これにより可視部において、所望の波長部での極大吸収を有してなる包装材料を提供することが可能となる。また、印刷用顔料は紫外線遮蔽粉体に対して固体重量比で0.001重量%以上15重量%未満混合されることが好ましい。なお、印刷用顔料に酸化珪素膜を形成する方法は、後述する鉄イオンドーピング酸化チタン粒子表面に酸化珪素超薄膜を形成する方法(TEOSを用いる方法)と同様である。
(紫外線遮蔽フィルム)
次に本発明に係る紫外線遮蔽フィルムについて説明する。本発明に係る紫外線遮蔽フィルムは、紫外線遮蔽粉体をプラスチックフィルム中に均一分散させ、可視光域で透明性を有すること特徴とするプラスチックフィルムである。また、複数の樹脂層からなるプラスチック積層フィルムのいずれかの樹脂層に紫外線遮蔽粉体を均一分散させ、可視光域で透明性を有することを特徴とするプラスチックフィルムであっても良い。
プラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンテレフタレート系コポリエステル樹脂(PETG)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂を例示することができる。
なお、紫外線遮蔽粉体とプラスチックとの分散性を向上させるために各種表面処理剤、例えばシラン系カップリング剤を粒子表面に被覆しても良い。
本発明では、プラスチックフィルムの概念は、プラスチックシートを含むものとし、おおよそ数ミリ以下の厚さのフィルム状或いはシート状の成形体である。
また、複数の樹脂層からなるプラスチック積層フィルムは、同一樹脂を複層化したものでも良いし、異なる樹脂を複層化したものでも良い。また、樹脂層のいずれか一に紫外線遮蔽粉体を均一分散させても良いし、二以上の樹脂層に分散させても良い。
本発明の紫外線遮蔽フィルムは、プラスチック樹脂中に紫外線遮蔽粉体が二次粒子を形成せずに均一に分散させるため、透明性が高く、しかも紫外線遮蔽効果を併せ持つものである。
本発明に係る紫外線遮蔽フィルムは、前記分散物をプラスチックフィルムの片面又は両面に塗布して、固化後の膜厚が0.1〜5μmの紫外線遮蔽層を形成し、可視光域で透明性を有するプラスチックフィルムとしても良い。紫外線遮蔽層はプラスチックフィルムの全面に形成することがより好ましい。膜厚が0.1μm未満であると紫外線遮蔽粉体の塗布量が少なくなるため、紫外線遮蔽効果が薄くなる。一方、膜厚が5μmを超えると、プラスチックフィルムとの接着不良が生ずる場合もあり、また紫外線遮蔽効果を考慮すると上記膜厚で充分である。
(紫外線遮蔽容器)
次に本発明に係る紫外線遮蔽容器について説明する。本発明に係る紫外線遮蔽容器は、紫外線遮蔽粉体を均一分散させた樹脂を成形材料として成形し、可視光域で透明性を有すること特徴とするプラスチック容器である。また、複数の樹脂層からなる積層型プラスチック容器のいずれかの樹脂層に紫外線遮蔽粉体を均一分散させ、可視光域で透明性を有することを特徴とするプラスチック容器であっても良い。
プラスチックの種類、表面処理剤の使用については、フィルムの場合と同様である。
また、複数の樹脂層からなるプラスチック積層容器は、同一樹脂を複層化したものでも良いし、異なる樹脂を複層化したものでも良い。また、樹脂層のいずれか一に紫外線遮蔽粉体を均一分散させても良いし、二以上の樹脂層に分散させても良い。
本発明の紫外線遮蔽容器は、プラスチック樹脂中に紫外線遮蔽粉体が二次粒子を形成せずに均一に分散させるため、透明性が高く、しかも紫外線遮蔽効果を併せ持つものである。
本発明に係る紫外線遮蔽容器は、前記分散物をプラスチック容器の外表面、内表面又は外表面と内表面の両面に塗布して、固化後の膜厚が0.1〜5μmの紫外線遮蔽層を形成し、可視光域で透明性を有するプラスチック容器としても良い。紫外線遮蔽層はプラスチック容器の壁面全面に形成することがより好ましい。紫外線遮蔽層の膜厚は、紫外線遮蔽フィルムの場合と同じ理由により、0.1〜5μmとする。
本発明における容器は、飲料用容器等のボトル型やトレー型等の各種形状をとることが可能である。また、栓の有無に限定されない。
本発明の包装材料は、上記粒子群を高分散状態で薄膜形成させ、球状若しくは板状の粒子形状による光散乱性を高め、透明性を維持したシート、フィルム及び容器などの包装材料となしえたものである。
さらに、上記包装材料表面の本発明の酸化チタン粒子等を含む紫外線遮蔽層は、リサイクル工程において容易にアルカリ洗浄工程で膨潤、溶解脱落するようにしたものである。
次に本発明に係る紫外線遮蔽粉体の製造方法について説明する。
(酸化チタン粒子の製造方法)
酸化チタン粒子について説明する。まず、アルミニウムイオンドーピング酸化チタン粒子の製造方法を以下に示す。4塩化チタンに対して、ドーピング量に応じた所定量の塩化アルミニウムを添加して混合物を得る。ここで所定量とは、アルミニウムイオンが酸化チタンに対して0.5〜8.0重量%ドーピングされる塩化アルミニウム量である。そして、該混合物を酸化燃焼させるか或いはプラズマ酸化させて、結晶格子中にアルミニウムイオンをドーピングせしめた単結晶の酸化チタン粒子を得る。なお、ゾルゲル法により結晶格子中にアルミニウムイオンをドーピングせしめた単結晶の酸化チタン粒子を得てもよい。ここで、酸化燃焼とは、酸素雰囲気下で高温燃焼させて金属酸化物超微粒子を得ることであり、プラズマ酸化とは、原料、ここでは4塩化チタンを酸素含有雰囲気下で噴射し、これにマイクロ波又は高周波を供給して原料をプラズマ化させて、2000〜3000℃相当の高温で酸化させて、金属酸化物超微粒子を得ることをいう。このアルミニウムイオンドーピング酸化チタン粒子を脱塩素化する。その後、分級により、一次粒子径が5〜1000nmであって二次粒子を形成しないアルミニウムイオンドーピング酸化チタン粒子を取り出す。なお、アルミニウムイオンドーピング酸化チタン粒子は、4塩化チタンの酸化燃焼若しくはプラズマ酸化の条件により、得られる結晶形を制御することができるが、本発明では結晶形ごとに分けて利用する必要はない。
次に、鉄イオンドーピング酸化チタン粒子の製造方法を以下に示す。4塩化チタンに対して、ドーピング量に応じた所定量の塩化鉄を添加して混合物を得る。ここで所定量とは、鉄イオンが酸化チタンに対して0.05〜5.5重量%、好ましくは0.5〜5.5重量%ドーピングされる塩化鉄量である。そして、該混合物を酸化燃焼させるか或いはプラズマ酸化させて、結晶格子中に鉄イオンをドーピングせしめた単結晶の酸化チタン粒子を得る。この鉄イオンドーピング酸化チタン粒子を脱塩素化する。次に半導体製造用級純度の超純水に高純度テトラエトキシシランを均一分散したエマルジョン溶液中に、前記鉄イオンドーピング酸化チタン粒子を混合・分散させる。次に加水分解反応により前記鉄イオンドーピング酸化チタン粒子の表面に酸化珪素被膜を1〜40nm、好ましくは1〜20nmの膜厚で被覆する。ここで粒子表面を完全に被覆することが好ましい。また、前記エマルジョン溶液を前記鉄イオンドーピング酸化チタン粒子に噴霧して吸着させた後、40℃以上での熱重合反応若しくはプラズマ重合反応若しくは大気中で放置することにより該鉄イオンドーピング酸化チタン粒子の表面に酸化珪素被膜を1〜40nm、好ましくは1〜20nmの膜厚で被覆しても良い。その後、分級により、一次粒子径が5〜1000nm、好ましくは5〜200nmであって二次粒子を形成しない鉄イオンドーピング酸化チタン粒子を取り出す。なお、鉄イオンドーピング酸化チタン粒子は、アルミニウムイオンドーピング酸化チタン粒子の場合と同様、4塩化チタンの酸化燃焼若しくはプラズマ酸化の条件により、得られる結晶形を制御することができるが、本発明では結晶形ごとに分けて利用する必要はない。
なお、4塩化チタン原料中には、鉄イオンが200ppm程度、不純物として含有されている。
上記に説明した、アルミニウムイオンドーピング酸化チタン粒子及び鉄イオンドーピング酸化チタン粒子の製造方法は、原料としてそれぞれ金属塩化物を使用した場合であるが、金属アルコキシド、すなわちチタンイソプロポキシド、チタンテトラエトキシド等のチタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド及び鉄アルコキシドを原料として用いても良い。金属アルコキシドを原料とする場合には、全ての金属源の原料を金属アルコキシドとすることが好ましい。
この場合、各酸化チタン粒子の製造方法は、使用原料以外は金属塩化物を用いた場合と同様であるが、金属アルコキシドは塩素が含有されないので脱塩素工程は不要となる。
さらに金属チタン、金属アルミニウム又は金属鉄の粉末を原料として用いても良い。金属粉末を原料とする場合には、全ての金属源の原料を金属粉末とすることが好ましい。この場合、アルミニウムイオンドーピング酸化チタン粒子又は鉄イオンドーピング酸化チタン粒子の製造方法は、使用原料以外は金属塩化物を用いた場合と同様であるが、これらの金属には塩素が含有されないので脱塩素工程は不要となる。
アルミニウムイオンドーピング二酸化チタン粒子についても、次の別製造方法がある。アルミニウムイオンドーピング二酸化チタン粒子の製造方法は、酸素を含有した不活性ガス雰囲気に調整したチャンバ内において、金属チタン粉末に対して、ドーピング量に応じた所定量のアルミニウム粉末を添加して混合物を得、該混合物を酸化燃焼させるか或いはプラズマ酸化させて、結晶格子中にアルミニウムイオンをドーピングせしめた単結晶の二酸化チタン粒子を得ることを特徴とする。その後、分級により、一次粒子径が5〜1000nm、好ましくは5〜200nmであって二次粒子を形成しないアルミニウムイオンドーピング二酸化チタン粒子を取り出す。
一方、鉄イオンドーピング二酸化チタン粒子についても、次の別製造方法がある。酸化珪素膜で被覆した鉄イオンドーピング二酸化チタン粒子の製造方法は、酸素を含有した不活性ガス雰囲気に調整したチャンバ内において、金属チタン粉末に対して、ドーピング量に応じた所定量の鉄粉末を添加して混合物を得、該混合物を酸化燃焼させるか或いはプラズマ酸化させて、結晶格子中に鉄イオンをドーピングせしめた単結晶の二酸化チタン粒子を得、該二酸化チタン粒子が前記チャンバ内に浮遊しているときに、一酸化珪素をさらにプラズマ酸化させて、該二酸化チタン粒子の表面に二酸化珪素膜を1〜40nm、好ましくは1〜20nmの膜厚で被覆することを特徴とする。ここで酸化珪素膜を同時に成膜する上記成膜方法によることで、OH基やアルキル基等の残留した官能基をなくすことができる。その後、分級により、一次粒子径が5〜1000nm、好ましくは5〜200nmであって二次粒子を形成しない鉄イオンドーピング二酸化チタン粒子を取り出す。この製造方法においても、酸化珪素被覆工程を一チャンバ内で短時間に製造できることが可能となる。
鉄イオンドーピング型及びアルミニウムドーピング型の酸化チタン粒子は単独若しくは混合して紫外線遮断粉体とする。
(酸化亜鉛粒子の製造方法)
酸化亜鉛粒子の場合について述べる。塩化亜鉛を酸化燃焼させるか或いはプラズマ酸化させて、粒子径が0.5μm以下の単結晶粒子を得る。ここで、酸化燃焼とは、酸素雰囲気下で高温燃焼させて金属酸化物超微粒子を得ることであり、プラズマ酸化とは、原料、ここでは塩化亜鉛を酸素含有雰囲気下で噴射し、これにマイクロ波等を供給して原料をプラズマ化させて、2000〜3000℃相当の高温で酸化させて、金属酸化物超微粒子を得ることをいう。次に酸化亜鉛単結晶粒子を脱塩素化する。次に無水エタノールに高純度テトラエトキシシランを均一分散したエマルジョン溶液中に、前記酸化亜鉛単結晶粒子を混合・分散させる。次に加水分解反応により酸化亜鉛単結晶粒子の表面に二酸化珪素被膜を1〜20nmの膜厚で完全に被覆する。また、前記エマルジョン溶液を前記酸化亜鉛単結晶粒子に噴霧して吸着させた後、40℃以上での熱重合反応若しくはプラズマ重合反応若しくは大気中で放置することにより該酸化亜鉛単結晶粒子の表面に二酸化珪素被膜を1〜20nmの膜厚で完全に被覆しても良い。ここで酸化珪素膜を上記成膜方法によることで、OH基やアルキル基等の残留した官能基をなくすことができる。その後、分級により、一次粒子径が5〜200nmであって二次粒子を形成しない酸化亜鉛粒子を取り出す。なお、酸化亜鉛は、塩化亜鉛の酸化燃焼若しくはプラズマ酸化の条件により、得られる結晶形を制御することができるが、本発明では結晶形ごとに分けて利用する必要はない。
紫外線をシャープカットするためには、一次粒子径が5〜50nmの粒子を分級した粉体とする。
鉄イオンドーピング二酸化チタン粒子とアルミニウムイオンドーピング二酸化チタンは、それぞれ個別に酸化ケイ素を被覆した酸化亜鉛と混合して用いても良いし、これら3種の粒子を混合して用いて良い。
上記に説明した、酸化亜鉛粒子の製造方法は、原料としてそれぞれ金属塩化物を使用した場合であるが、金属アルコキシド、すなわち亜鉛アルコキシドを原料として用いても良い。この場合、各粒子の製造方法は、金属塩化物を用いた場合と同様であるが、金属アルコキシドは塩素が含有されないので脱塩素工程は不要となる。
さらに金属、すなわち金属亜鉛の粉末を原料として用いても良い。この場合、各粒子の製造方法は、金属塩化物を用いた場合と同様であるが、これらの金属には塩素が含有されないので脱塩素工程は不要となる。
酸化珪素を被覆した酸化亜鉛粒子には、次の別製造方法がある。酸化珪素膜で被覆した酸化亜鉛粒子の製造方法は、酸素を含有した不活性ガス雰囲気に調整したチャンバ内において、金属亜鉛粉末を酸化燃焼させるか或いはプラズマ酸化させて単結晶の酸化亜鉛粒子を得、該酸化亜鉛粒子が前記チャンバ内に浮遊しているときに一酸化珪素をさらにプラズマ酸化させて、該酸化亜鉛粒子の表面に二酸化珪素被膜を1〜20nmの膜厚で完全に被覆することを特徴とする。ここで酸化珪素膜を同時に成膜する上記成膜方法によることで、OH基やアルキル基等の残留した官能基をなくすことができる。その後、分級により、一次粒子径が5〜200nmであって二次粒子を形成しない酸化亜鉛粒子を取り出す。この製造方法では、酸化珪素被覆工程を一チャンバ内で短時間に製造できることが可能となる。
酸化珪素膜を被覆した酸化亜鉛、若しくは酸化珪素膜を被覆した酸化亜鉛と上記二酸化チタン粒子との混合物を紫外線遮断粉体とする。
(紫外線遮蔽粉体の分散物、紫外線遮蔽フィルム、紫外線遮蔽容器の製造方法)
上記の通りに製造した紫外線遮蔽粉体を水溶性塗料、エマルジョン樹脂系塗料又は溶剤系塗料にコロイド分散させて、紫外線遮蔽粉体を含有する分散物を製造する。製造した紫外線遮蔽粉体は、粒子径及び表面電位が調整されているので、水溶性塗料、エマルジョン樹脂系塗料又は溶剤系塗料に所定量、例えば1〜40重量%の濃度となるように、製造した紫外線遮蔽粉体を添加、混合することでコロイド分散した分散物が得られる。
この分散物に、シュリンク包装フィルム又はプラスチック容器の印刷用顔料をさらに添加、混合して、印刷用顔料と紫外線遮蔽粉体とを含有する分散物を製造する。
上記の通りに製造した紫外線遮蔽粉体をプラスチックペレットと混練して、さらに、紫外線遮蔽粉体含有プラスチックペレットを製造する。このペレットを原料として、プラスチックフィルムを成形することで、プラスチックフィルム中に紫外線遮蔽粉体を均一分散させた可視光域で透明性な紫外線遮蔽フィルムを製造することが出来る。さらに、複数の樹脂層からなるプラスチック積層フィルムを成形する際に、いずれかの樹脂層の原料として上記の紫外線遮蔽粉体含有プラスチックペレットを使用することで、紫外線遮蔽粉体を均一分散させたプラスチックフィルムを製造することも出来る。
さらに上記の紫外線遮蔽粉体含有プラスチックペレットを成形材料として、プラスチック容器を成形すれば、可視光域で透明性を有する紫外線遮蔽容器を製造することが出来る。容器の成形方法はブロー成形法等の公知公用の成形方法を使用できる。また、複数の樹脂層からなる積層型プラスチック容器のいずれかの樹脂層の成形材料として紫外線遮蔽粉体含有プラスチックペレットを使用すれば、可視光域で透明性を有する紫外線遮蔽容器を製造することも出来る。
紫外線遮蔽粉体とを含有する分散物若しくは印刷用顔料と紫外線遮蔽粉体とを含有する分散物をプラスチックフィルムの片面又は両面に塗布して、乾燥により固化させることで、固化後の膜厚が0.1〜5μmの紫外線遮蔽層を形成して、可視光域で透明性を有する紫外線遮蔽フィルムを製造することが出来る。
紫外線遮蔽粉体とを含有する分散物若しくは印刷用顔料と紫外線遮蔽粉体とを含有する分散物をプラスチック容器の外表面、内表面又は外表面と内表面の両面に塗布して、乾燥により固化させることで、固化後の膜厚が0.1〜5μmの紫外線遮蔽層を形成して、可視光域で透明性を有する紫外線遮蔽容器を製造することが出来る。
上記紫外線遮蔽フィルムは、たとえばシュリンク可能なPET樹脂をベース材料とすれば、PETボトルの表面を覆うようにシュリンクすることで、紫外線遮蔽プラスチック容器と同等の効果を得ることが出来る。
印刷用顔料と紫外線遮蔽粉体とを含有する分散物をプラスチック容器若しくはプラスチックシートの印刷層の一層として採用すれば被印刷物に対して、紫外線遮蔽効果を付与することが出来る。このとき印刷工程としてなんら追加工程を付加することなく、紫外線遮蔽効果という新たな効果を付与することが出来る。
プラスチック容器若しくはプラスチックシートの印刷の際に、紫外線遮蔽粉体を含有する分散物の印刷工程を追加して印刷層に加えれば、被印刷物に対して紫外線遮蔽効果を付与することが出来る。
(実施例−酸化チタン粒子)
(実施例1)
通常の酸化チタンの製造または精製工程においては、鉄やアルミニウムイオンが多量に残留することはない。酸化チタン結晶格子中に存在するホールには通常微量の金属や塩素イオンが含まれることがありこれらのイオン類によって、酸化チタンの特性が決まることが多い。実施例1においては、酸化チタン超微粒子は、熱プラズマ中において各40μm以下の金属チタン粉末97重量%と金属アルミニウム粉末3重量%の混合物を、2500℃以上のアルゴン・酸素プラズマ中で瞬時に蒸発させつつ反応させて酸化チタン球状超微粒子を得た。このときアルミニウムイオンは結晶格子に歪みを与えないで、酸化チタン結晶の格子空間に捕獲ドーピングされたものと考えられる。図1に得られたアルミニウムドーピング酸化チタン粒子の透過型電子顕微鏡による微構造写真を示す。拡大倍率は約10万倍である。球状の粒子はアナターゼ単結晶型粒子又はルチル型単結晶粒子である。また、半透明に見える板状の粒子はブルッカイト型単結晶粒子である。アルミニウムイオンの存在とその濃度により、本来酸化チタン超微粒子が有する固有の紫外線遮蔽域(主として280nm〜320nm)を大幅に広域遮蔽した。図2に実施例1の波長による透過度の依存性を示した。また、図2に比較例1として、一次粒子径35〜50nmで500nm以上の二次粒子を形成した市販酸化チタンの波長による透過度の依存性を示した。実施例1は、極大吸収域が▲1▼280〜310nm域においては、305〜310nmに少なくとも1個、▲2▼320〜350nm域においては、335〜348nmに少なくとも1個、さらに、▲3▼360〜380nm域においては、360〜380nmに少なくとも1個、それぞれピークを有していた。また、これらピークのバックグラウンドは高く極大吸収位置以外においても全面的に紫外線遮蔽能が高く、さらに短波長可視光線領域においても高い吸収能を同時に有していることがUV−可視スペクトロメーターによって判明した。
実施例1で得たワイドバンドギャップ酸化チタン球状超微粒子の粒度分布は、20〜40nmに個体数分布最大ピークを有し、100〜300nmに重量分布最大ピークを有している。しかし、表面特性が通常の酸化チタンと異なり等電位点がおおよそpH≒4付近に存在し、純水(pH≒6)におけるゼータ電位が−25〜−50mVときわめて大きいため、瞬時に完全に分散し光散乱機能(レイリー散乱およびミー散乱)が著しく高まり、透明感が高いものであった。
同時に、上記実施例1の酸化チタンは、純水以外にも、イソプロピルアルコール、エタノールにもよく分散することが判明した。また、一旦、それらの溶剤に均一分散したのち、酢酸エチルのようなインクベースに使用される溶剤中に混合しても凝集しないことが判明した。
さらに、上記実施例1の酸化チタン粒子についてX線回折を行ったところ、アナターゼを主体とし、2〜3割のルチルが通常含まれ、少量のブルッカイトが共存していた。アルミニウムのドーピング率を増加し、8%程度にするとアナターゼが減少し、ルチルが圧倒的に増える。同時に、比抵抗値が低下し、帯電防止特性が増大することが判明した。
一方、イオンドーピングされたイオンは、初期的にはほとんど酸化されていないものと考えられ、粉体の色は白である。これを大気中に暴露したときには10日から1ヵ月で淡黄色気味の白色に色調変化し、同時にフォトクロミック性が発現した。さらに、強制的に200〜300℃で30〜60分加熱すると、色は黄色味が強くなり、フォトクロミック性が得られた。この酸化チタン粒子のUV−可視スペクトルを測定したところ、前記の光遮蔽特性がより長波長側において吸収能が明らかに高まっていることが判明した。加熱温度をさらに高め短時間加熱すると、赤外線領域まで吸収能のバックグラウンドが上昇した。これは、ドーパントが初期的には非酸化状態で結晶中に取り込まれ、低次酸化されるにつれて、バンドギャップがさらに変化し、自己酸化の程度による酸素吸収性が認められるものと考えられる。
(実施例2)
酸化チタン微粒子は、熱プラズマ中において各40ミクロン以下の金属チタン粉末97重量%と金属鉄粉末0.05〜5.5重量%の混合物を、2500℃以上のアルゴン・酸素プラズマ中で瞬時に蒸発させつつ反応させて肌色または黄土色酸化チタン球状超微粒子を得た。このとき鉄イオンは結晶格子に歪みを与えないで、酸化チタン結品の空間に捕獲ドーピングされたものと考えられる。得られた鉄イオンドーピング酸化チタンは、鉄イオンが酸化触媒として働くことが理論的に判明していたので、これに、数nmの厚さの酸化珪素膜(アモルファスシリカ薄膜)を1個体ずつの球状粒子に被覆した。すなわち、テトラエトキシシラン(TEOS)を半導体級超純水に希釈(半導体級超純水が30%)し、対象の粉体に均一吸着させた。これを30〜40℃でコンテナ中にて反応させ(放置して)、TEOS同士が対抗電位(カウンターチャージ)を持ち始め、次第に、個々の粒子が強いマイナス電位チャージに取り囲まれて解こう(単分散)される。次に50〜55℃で乾燥させる。この結果、TEOS膜が単一粒子に完全に付着される。次に0.01〜1atm、ヘリウム中でプラズマをかける。このときTEOSのエチル基が切断され酸化ケイ素骨格がアモルファス状に形成される。その後分級により、一次粒子径が5〜1000nmの粒子を取り出した。プラズマ処理したシリカコート超微粒子は、pH=6におけるゼータ電位が−35〜−50mVとさらに高まった他、光散乱特性が増加した。表面特性は+(プラス)から−(マイナス)に変化した。これにより溶媒に分散させれば凝集せず、二次粒子を形成しない。この方法は無触媒なので凝集しない。コーティングされた酸化珪素の膜厚を透過型電子顕微鏡(TEM)で実測した結果、粒子径30〜100nmの微粒子の表面を完全に被覆し、その膜厚は2〜8nmの範囲であった。この粒子の写真を図3に示した。この酸化チタン粒子は単結晶であることが確認された。なお、熱プラズマによる粒子形成方法ではなく酸化燃焼により粒子を形成させた場合には、球状ブルッカイト型単結晶粒子も観察された。酸化珪素膜を粒子表面に被覆した球状ブルッカイト型単結晶粒子の透過型電子顕微鏡による微構造写真を図4に示す。また、比較例2としてゾルゲル法により酸化チタン粒子を形成し、さらに酸化珪素膜を粒子表面に被膜した場合の透過型電子顕微鏡による微構造写真を図5に示す。粒子が完全に凝集ないし凝結していることが分かる。また、凝集ないし凝結により酸化珪素膜を完全に粒子表面に被覆できない。さらに比較例3として、10nm程度の酸化チタン超微粒子の表面に触媒を使用したゾルゲル法により酸化珪素膜を形成したときの透過型電子顕微鏡による微構造写真を図6に示す。粗大な凝集体が常に形成されている。鉄イオンの存在とその濃度により、本来酸化チタン超微粒子が有する固有の紫外線遮蔽域(主として280nm〜320nm)を大幅に広域遮蔽した。図2に実施例2の粒子の波長による透過度の依存性を示した。また、図7に実施例2と比較例1の波長による透過度の依存性を示した。すなわち、極大吸収域が▲1▼280〜310nm域においては、305〜310nmに少なくとも1個、▲2▼320〜350nm域においては、335〜348nmに少なくとも1個、さらに、▲3▼360〜390nm域においては、360〜390nmに少なくとも1個、それぞれピークを有していた。特に実施例1と比較すると360nm以上のスペクトル域における吸収が強くなっている。また、これらピークのバックグラウンドは高く極大吸収位置以外においても全面的に紫外線遮蔽能が高く、さらに短波長可視光線領域においても高い吸収能を同時に有していることがUV−可視スペクトロメーターによって判明した。
本発明の実施例2で得たワイドバンドギャップ酸化チタン球状超微粒子の粒度分布は、20〜40nmに個体数分布最大ピークを有し、100〜300nmに重量分布最大ピークを有している。しかし、表面特性が通常の酸化チタンと異なり、等電位点がpH≒4付近に存在し、純水(pH≒6)におけるゼータ電位が−20〜−35mVときわめて大きいため、瞬時に完全に分散して光散乱機能(レイリー散乱およびミー散乱)が著しく高まり、分散後に粗粒部を除去すると透明感が高くなった。
同時に、実施例2の酸化チタンは、実施例1のアルミニウムイオンドーピング酸化チタンと同様、純水以外にもイソプロピルアルコール、エタノールにもよく分散することが判明した。また、一旦、それらの溶剤に均一分散したのち、酢酸エチルのようなインクベースに使用される溶剤中に混合しても凝集しないことが判明した。
さらに、実施例2の酸化チタンのX線回折を行ったところ、アナターゼとルチルが共存することが判明した。鉄イオンのドーピング率を増加し、5%程度にするとアナターゼは消滅し、ルチルが圧倒的に増えた。しかし、比抵抗値は変化なく帯電防止特性は鉄イオンのドーピングでは得られない。
一方、イオンドーピングされたイオンは、初期的にはほとんど酸化されていないものと考えられ、粉体の色は肌色(Fe≦2%)である。これを大気中に暴露したときには10日から1ヵ月で淡茶色に色調変化し、同時にフォトクロミック性が発現した。さらに、強制的に200〜300℃で30〜60分加熱すると、色が濃くなり、明瞭なフォトクロミック性が得られた。この結果を図8に示した。図8において実施例2の粒子の加熱処理前後における紫外線遮蔽特性と比較例1の紫外線遮蔽特性とを比較した。図4に実施例2の粒子の加熱処理前後における吸収スペクトルを併せて示した。この加熱処理後の粉末からなる粉体のUV−可視スペクトルを測定したところ、前記の光遮蔽特性がより長波長側において吸収能が明らかに高まっていることが判明した。加熱温度をさらに高め短時間加熱すると、赤外線領域まで吸収能のバックグラウンドが上昇した。これは、ドーパントが初期的には非酸化状態で結晶中に取り込まれ、低次酸化されるにつれて、バンドギャップがさらに変化し、自己酸化の程度による酸素吸収性が認められるものと考えられる。
(実施例3)
実施例1で得られたワイドバンドギャップ酸化チタン球状超微粒子を完全に分散した溶液を表1のとおり調製した。
【表1】
▲1▼と▲2▼を混合し、縦振幅が30μm以上の超音波分散装置で完全分散した。分散剤は硬化阻害を起こす恐れがあるので使用しない。粗粒部は除去し、固形分濃度を測定した。これを、▲3▼PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)ボトルのシェリンクフィルムとして用いられるのと同等の固形分濃度40%のポリウレタンエマルジョン(アルカリ膨潤性)250g中に25〜2g混合したのち、UV−可視光線測定用石英ガラスセルに同一サイズの塩化ビニル製ホルダーを作成し、光透過窓を設けその内部にPETボトル胴部小片が挿入できるようにした。このPETボトル胴部小片に上記混合物を4μm塗布して乾燥、重合させた。その結果、膜は透明で得られたが、10g(酸化チタン濃度=2重量%)においては、透明感は十分であるが白味が強かった。5g(酸化チタン濃度=1重量%)においては、透明感は十分で白味も薄かった。さらに酸化チタン濃度を減少させてゆくと透明になった。
このPETボトル胴部小片を上記のセルに装填して光吸収スペクトルを測定した。その結果を図9に示した。酸化チタン濃度が1%以上のとき、375nm以下を遮蔽した。なお、図9には、比較例3として未コートのPETボトル胴部小片並びに、比較例4として酸化チタンを添加しないポリウレタンコートをしたPETボトル胴部小片のデータも併せて示した。さらに、この膜を剥離させ透過型電子顕微鏡(TEM)でフィルム中の粒子の分散状態を確認した結果、二次粒子の形成も無く良好に分散していた。このときの微構造写真を図10に示した。この結果、20〜40nmの粒子に特有な紫外線のレイリー散乱と、可視光線または紫外線の波長に近い粒子サイズによるミー散乱が発現することが確認された。
(実施例4)
実施例2のワイドバンドギャップ酸化チタン球状超微粒子を250℃で30分間加熱処理したのち、完全に分散した溶液を表2のとおり調製した。
【表2】
▲1▼と▲2▼を混合し、縦振幅が30μm以上の超音波分散装置で完全分散した。分散剤は硬化阻害を起こす恐れがあるので使用しない。粗粒部は除去し、固形分濃度を測定した。これを10gとり、▲3▼酢酸エチル10gに溶解した(酸化チタン固形分15重量%)。ついでこれを固形分濃度40%のポリウレタンエマルジョン(アルカリ膨潤性)750gに混合したのち、UV−可視光線測定用石英ガラスセルに同一サイズの塩化ビニル製ホルダーを作成し、光透過窓を設けその内部にPETボトル胴部小片が挿入できるようにした。このPETボトル胴部小片に上記混合物を4μmの厚さで塗布して乾燥、重合させた。その結果、膜は透明で得られたが、10g(酸化チタン濃度=2重量%)においては、透明感は十分であるが自味が強かった。5g(酸化チタン濃度=1重量%)においては、透明感は十分で自味も薄かった。さらに酸化チタン濃度を減少させてゆくと透明になった。
このPETボトル胴部小片を上記のセルに装填して光吸収スペクトルを測定した。その結果を実施例4として図9に示した。酸化チタン濃度が1%以上のとき、380nm以下を完全に遮蔽した。さらに、この膜を剥離TEMでフィルム中の酸化チタン粒子の分散状態を確認した結果、実施例3(図10)と同様に二次粒子を形成せずに良好な分散状態が得られた。この結果、20〜40nmの粒子に特有な紫外線のレイリー散乱と、可視光線または紫外線の波長に近い粒子サイズによるミー散乱が発現することが確認された。
(実施例5)
次に、本発明の実施例3で得たコーティング剤を、成形後の無着色透明PETボトル(500ml)表面にスプレイし、加熱成膜した。このとき、加熱後の固形分重量が2gになるようにロボット塗装機(ワールド技研(株)製)で行った。また、その時の固形分中の酸化チタン濃度は1重量%とした。比較例5として、粒子径30nmの超微粒子酸化チタンと、顔料級200〜400nmの酸化チタン(アナターゼ)を等量混合した酸化チタンを使用して、同一条件で試験した。
その結果、本発明の実施例3で得たコーティング剤においては、透明な薄い白色系膜がボトル表面に形成された。一方、比較例5では分散体を製造するときにすでに凝集が強く発生し、ポリマー中ではフロックが成長した。したがって、透明な膜は得られず、班点状のコーティング膜となってしまった。本発明のコーティング膜の接着強度は、正確には測定していないが、リサイクル時に支障となるような強度はないことがわかった。また、253nm、365nm及び405nmの紫外線と、436nmの可視光線とを発生するランプによって強制劣化試験を行ったところ、実施例5においては、のべ5時間の照射(距離20cm)においても黄変などの異常は1ヵ月しても見られなかった。しかし、比較例5においては同様条件で、1週間で黄変が発生した。これは、酸化チタンが紫外線によって光分解して活性酸素が発生し、ポリマーをアタックした結果と考えられる。本発明のワイドバンドギャップ酸化チタンにおいては、フリーハンドをもつ金属イオンが、たとえ活性酸素が発生しても即座に吸着して安定化するため、ポリマーや内部に充填される飲料を光化学的に損傷することは強く抑制されるものと推定される。
(実施例6)
広口栓付きのポリプロピレン製牛乳ボトル表面を、大気圧プラズマ(ヘリウム/酸素)処理し、表面エッチングした。実施例2で得た酸化珪素膜を被覆した鉄イオンドーピング酸化チタンをエチルシリケート(シリカ固形分28%)に混合して得た分散物を上記ボトルの表面にディッピングした。さらにボトルに施したのと同様の大気圧プラズマ処理によって、エトキシ基を切断除去して酸化珪素膜(アモルファスシリカ超薄膜)を形成した。このとき、大気圧プラズマの温度は100℃以下で、処理時間はエッチング、薄膜形成とも5分間であった。鉄イオンドーピング酸化チタンのシリカコート方法は次のとおりである。原料粉末1kgに対して、エチルシリケート28(コルコート(株)製)72.9g(シリカとして20g)及び超純水3kgを添加して混合物を作成する。この系のなかでの固形分濃度はおよそ25.5%である。これを十分混合攪拌したのち密閉し、40℃で2日維持したのち、縦振幅が30μm以上の超音波分散装置によって粒子を完全に分散させる。この分散物から10gを分取して357gのエチルシリケート28に加えて撹件混合し、これに上記で述べたとおり大気圧プラズマ処理したポリプロピレン製容器に上記分散物を4μmの膜厚でコーティングする。これを60℃で2時間乾燥したのち、ヘリウム/アルゴンで励起こした大気圧プラズマに30秒間接触させ、膜中のエトキシ基を切断除去して二次粒子を形成させずに完全に分散させた酸化珪素膜を鉄イオンドープ酸化チタンの粒子表面に形成させた。最終的な膜厚は1μmであった。
上記容器と未処理容器に、牛由来の酸化防止剤無配合のプラセンター1%溶液(ニチレイ製)を充損して▲1▼暗室中に保存したもの、▲2▼太陽光線に暴露したもの及び▲3▼40Wの高純度石英箱型紫外線ランプ(共鳴線:253.7nm、二次線313nm、365nm、405nm、436nm、507nm、546nm)を室温に温度制御して容器側壁に照射したもの、の3種類について、プラセンター中のタンパク質の白濁現象を追跡した。プラセンターエキス中には酸化と光変質により、微量のタンパク質が白濁して異臭が発生する現象が特徴的である。この結果は表3のとおりであった。
【表3】
(実施例7)
実施例5で作製したPETボトル中に、70℃で抽出した緑茶を充損し、実施例6と同様の暴露試験を行ない、変色状態、味覚検査を実施した。その結果は表4のとおりであった。
【表4】
(実施例8)
実施例6で作製したコーティング剤を用いて、酸化珪素膜(シリカ超薄膜)を被覆したアルファ酸化鉄と酸化珪素膜を被覆したガンマ酸化鉄との混合物、及び酸化珪素膜を被覆した被覆した赤色226号有機顔料および酸化珪素膜を被覆した黄色4号アルミレーキとを茶色になるように色調整して混合、分散体を作製した。その固形分あたりの配合は表5のとおりであった。
【表5】
通常、上記の配合では各粒子の表面状態のバランスがそれぞれ異なるため、即座に凝集沈殿を発生する。しかし、本発明の分散体においては、すべての表面がシリカ超薄膜で完全にコーティングされているので、二次粒子の形成を起こさずに良好な分散状態を実現できたものである。なお、有機顔料は、通常、撥水性であるので分散剤を使用しない限り、水には分散できない。
実施例6と同一の方法でPETボトル表面に上記の分散体を膜形成した。その結果、透明でいわゆるビール瓶の色が発現できた。この容器の中にビールを充填して、▲1▼暗室中に保存したもの、▲2▼太陽光線に暴露したもの及び▲3▼蛍光灯下で暴露したもの、の3種類について味覚検査を行った。その結果は表6の通りであった。
【表6】
(実施例9)
実施例1で作製したアルミニウムイオンドーピング酸化チタンを、300℃で1時間酸化加熱して300nm〜1000nmまで光遮蔽できるワイドバンドギャップ超微粒子とした。この酸化チタンをイソプロピルアルコール中に30重量%混合し、強力な超音波で分散させて、粒子径400nm以下のサイズを抽出した。これを濃度調整して20重量%の分散体とした。さらに、これを5gとり、ウレタンアクリレート系光硬化性樹脂ワニス122.5g(固形分49g)に分散したのち、プラズマエッチングされたポリエチレン容器にディッピングしたのち、365nmUV線で1分間キュアーして硬化させた。
この容器にビタミンAを1%配合したスクワランオイルを充損したのち、▲1▼暗室中に保存したもの、▲2▼太陽光線に暴露したもの及び▲3▼先に示した40Wの高純度石英箱型紫外線ランプを室温に温度制御して容器側壁に照射したもの、の3種類について、未処理容器を比較例6として、ビタミンAの脱色現象を検証した。ビタミンAは、光で脱色される傾向が非常に強く、黄色から薄い黄色に変色するものである。この結果は表7のとおりであった。
【表7】
(実施例−酸化亜鉛粒子)
(実施例10)
酸化亜鉛超微粒子は、熱プラズマ中において40ミクロン以下の金属亜鉛粉末を、2500℃以上のアルゴン・酸素プラズマ中で瞬時に蒸発させつつ反応させて酸化亜鉛球状超微粒子を得た。テトラエトキシシラン(TEOS)をエタノールに希釈(エタノール液が30%)し、対象の粉体に均一吸着させた。これを30〜40℃でコンテナ中にて反応させ(放置して)、TEOS同士が対抗電位(カウンターチャージ)を持ち始め、次第に、個々の粒子が強いマイナス電位チャージに取り囲まれて解こう(単分散)される。次に脱脂(脱エタノール)し、50−55℃で乾燥させる。この結果、TEOS膜が単一粒子に完全に付着される。次に0.01〜1atmのヘリウム中でプラズマをかける。このときTEOSのエチル基が切断され酸化ケイ素骨格がアモルファス状に形成される。その後分級により、一次粒子径が5〜200nmの粒子を取り出した。プラズマ処理したシリカコート超微粒子はさらに表面がマイナスにチャージされ、溶媒に分散させれば凝集せず、二次粒子を形成しない。この方法は無触媒なので凝集しない。酸化珪素膜を表面に被膜した酸化亜鉛粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果、粒子径20〜25nmの酸化亜鉛微粒子の表面を酸化珪素膜が完全に被覆し、その膜厚は1〜3nmの範囲であった。この粒子の写真を図11に示した。なお、酸化亜鉛粒子は単結晶であることが確認された。
上記の酸化珪索膜を被覆した酸化亜鉛粒子は、純水以外にも、イソプロピルアルコール、エタノールにもよく分散することが判明した。また、一旦、それらの溶剤に均一分散したのち、酢酸エチルのようなインクベースに使用される溶剤中に混合しても凝集しないことが判明した。
上記の酸化珪素膜を被覆した酸化亜鉛粒子のX線回折を行ったところ、ZnO構造型とNaCl構造型の酸化亜鉛粒子が共存していた。
(実施例11、比較例7,8)
実施例10の酸化珪素膜を被覆した酸化亜鉛粒子を平均粒径30nmに分級した。ポリウレタン水系塗料(大日精化工業株式会社製)に対して、分級後の超微粒子を10重量%添加し、さらに純水にて10倍希釈して、ポリウレタン水系塗料をベースとした分散物を得、これを実施例11とした。実施例11の分散物の透光率を図12に示す。なお、図12には、比較として純水(比較例7)、ポリウレタン水系塗料を10倍に希釈したもの(比較例8)の透光率を併せて示した。さらに、比較例8の透光曲線をベースラインとして実施例11の透光率曲線を補正した透光率曲線を示した。酸化亜鉛超微粒子を添加しないベースとなるポリウレタン水系塗料は、可視光域での透効率が40〜75%であるため、実施例11の透光率曲線は可視光域で、30〜50%の透光率を有する。しかし、実施例11の透光率曲線を補正した透光率曲線は、可視光域で透光率70%の有し、しかも、370nm程度以下の紫外線をシャープカットする。
実施例11では、塗料自体の透明性がやや劣り、白濁する場合を示したが、クリアー塗料をマトリックスとすれば、酸化亜鉛超微粒子自体の紫外線シャープカット性能等の透光特性を発揮することが可能となる。
(比較例9)
実施例10の酸化珪素膜を被覆した酸化亜鉛粒子を平均粒径250nmに分級した。ポリウレタン水系塗料(大日精化工業株式会社製)に対して、分級後の超微粒子を10重量%添加し、さらに純水にて10倍希釈して、ポリウレタン水系塗料をベースとした分散物を得、これを比較例9とした。比較例9の分散物の透光率を図13に示す。比較例9では370nm以下の紫外線を完全に遮蔽しておらず、白濁した。また、粒子が大きいため、コロイド分散が難しく、沈降する粒子もあった。
(実施例12、比較例10,11)
実施例10の酸化珪素膜を被覆した酸化亜鉛粒子を平均粒径30nmに分級した。ポリウレタン水系塗料(大日精化工業株式会社製)に対して、分級後の超微粒子を10重量%添加して、ポリウレタン水系塗料をベースとした分散物を得、これをドクターブレードしてPETボトルに塗布し、これを乾燥させて紫外線遮蔽層を形成した。紫外線遮断層の厚さは乾燥後で3μmであった。これを実施例12とした。実施例12の透光率を図14に示す。なお、図14には、比較として未コーティングのPETボトル(比較例10)の透光率、粒子を添加していないポリウレタン水系塗料をPETボトルに実施例12と同様の方法にて、コーティングしたPETボトル(比較例11)の透光率を併せて示した。実施例12の透光率曲線は、370nm以下の紫外線に対して吸収が見られ、可視光域での透明性が高かった。実施例12の透光率曲線をみると、370nm以下の紫外線を完全に遮蔽していないが、これは酸化亜鉛超微粒子の濃度を高くすることで、完全なる遮蔽を行なうことが可能となった。また、粒子径30nmの酸化亜鉛超微粒子を分散しているため、370nm以下の紫外線をシャープカットすることができた。
なお、実施例12と比較例11に使用したPETボトルは、飲料用PETボトルの形状のものを使用し、胴部の平坦な箇所で透光率の測定を行なった。また、PET樹脂は、図14に示す通り、320nm以下の紫外線を完全に遮断する。図12の実施例11の透光率曲線を参照すると、酸化亜鉛超微粒子は300nm以下の紫外線を透過させてしまう。実施例12では、酸化亜鉛超微粒子とPETボトルの吸収により、370nm以下の紫外線を完全に遮蔽することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1は、アルミニウムドーピング酸化チタン粒子の透過型電子顕微鏡による微構造写真である。
図2は、実施例1の粒子の波長による透過度の依存性を示す図である。
図3は、本発明に係る酸化チタン粒子の顕微鏡写真であって、(a)は酸化珪素膜で粒子表面に完全に被覆した鉄ドーピング酸化チタン粒子の透過型電子顕微鏡による微構造写真であり、(b)はその暗視野像である。(b)では粒子表面の光っている箇所が酸化珪素膜であり、粒子全面に被覆していることを示す。
図4は、酸化燃焼により粒子を形成させた場合に得られた球状ブルッカイト型単結晶粒子の透過型電子顕微鏡による微構造写真である。
図5は、ゾルゲル法により酸化チタン粒子を形成し、さらに酸化珪素膜を粒子表面に被膜した場合の透過型電子顕微鏡による微構造写真である。
図6は、10nm程度の酸化チタン超微粒子の表面に触媒を使用したゾルゲル法により酸化珪素膜を形成したときの透過型電子顕微鏡による微構造写真である。
図7は、実施例2の粒子の波長による透過度の依存性を示す図である。
図8は、実施例2の粒子の加熱処理前後における紫外線遮蔽特性と比較例1の紫外線遮蔽特性との比較を示す図である。
図9は、酸化チタン粒子をポリウレタンベースの塗料中に分散させ、これをPETボトルへ塗布、乾燥後におけるPETボトル胴部小片の透過スペクトルを示す図である。
図10は、アルミニウムイオンドーピング酸化チタン粒子をポリウレタンベースの塗料中に分散させ、これをPETボトルへ塗布、乾燥後におけるコーティング層中の分散状態を示す写真である。
図11は、本発明に係る酸化珪素膜で完全に被覆した酸化亜鉛超微粒子の透過型電子顕微鏡写真を示す。
図12は、本発明に係る酸化珪素膜で完全に被覆した酸化亜鉛超微粒子であって、平均粒径が30nmの粒子をポリウレタン水系塗料に分散させたときの透光率曲線を示す図である。
図13は、酸化珪素膜で完全に被覆した酸化亜鉛超微粒子であって、平均粒径が250nmの粒子をポリウレタン水系塗料に分散させたときの透光率曲線を示す図である。
図14は、本発明に係る酸化珪素膜で完全に被覆した酸化亜鉛超微粒子であって、平均粒径が30nmの粒子をポリウレタン水系塗料に分散させ、これをPETボトルにコーティングしたときの透光率曲線を示す図である。
Claims (13)
- アナターゼ型の単結晶粒子、ルチル型の単結晶粒子、ブルッカイト型の単結晶粒子又はこれらの混合粒子を主体とする高温酸化型酸化チタン粉体であって、前記粒子はアルミニウムイオンを酸化チタンに対して0.5〜8.0重量%ドーピングしたアルミニウムイオンドーピング酸化チタン粒子で且つ一次粒子径が5〜1000nmで二次粒子を形成しないことを特徴とする紫外線遮蔽粉体。
- アナターゼ型の単結晶粒子、ルチル型の単結晶粒子、ブルッカイト型の単結晶粒子又はこれらの混合粒子を主体とする酸化チタン粉体であって、前記粒子は該粒子表面に酸化珪素膜を1〜40nmの膜厚で被覆形成し且つ鉄イオンを酸化チタンに対して0.05〜5.5重量%ドーピングした鉄イオンドーピング酸化チタン粒子であり、一次粒子径が5〜1000nmで二次粒子を形成しないことを特徴とする紫外線遮蔽粉体。
- 前記アルミニウムイオン及び前記鉄イオンは、不飽和状態で低次の酸化数状態であることを特徴とする請求項1又は2記載の紫外線遮蔽粉体。
- 請求項1、2又は3記載の紫外線遮蔽粉体のうち2種以上を混合した混合粉体であることを特徴とする紫外線遮蔽粉体。
- ZnO構造型の酸化亜鉛単結晶粒子、NaCl構造型の酸化亜鉛単結晶粒子又はこれらの混合粒子の表面に酸化珪素膜を1〜20nmの膜厚で完全に被覆した酸化亜鉛粒子を主体とする粉体は、一次粒子径が5〜200nmで二次粒子を形成しないことを特徴とする紫外線遮蔽粉体。
- 前記粉体は、370nm以下の紫外線をシャープカットするために一次粒子径が5〜50nmで二次粒子を形成しないこと特徴とする請求項5記載の紫外線遮蔽粉体。
- 前記酸化亜鉛粒子と高温酸化型二酸化チタン粒子との混合物を主体として一次粒子径が5〜200nmで二次粒子を形成しない混合粉体であって、前記高温酸化型二酸化チタン粒子は、アナターゼ型の単結晶粒子、ルチル型の単結晶粒子、ブルッカイト型の単結晶粒子又はこれらの混合粒子で構成し、且つアルミニウムイオンを二酸化チタンに対して0.5〜8.0重量%ドーピングしたアルミニウムイオンドーピング二酸化チタン粒子とするか或いは鉄イオンを二酸化チタンに対して0.5〜5.5重量%ドーピングしてさらに粒子表面に酸化珪素膜を1〜20nmの膜厚で完全に被覆した鉄イオンドーピング二酸化チタン粒子とするか或いは該アルミニウムイオンドーピング二酸化チタン粒子と該鉄イオンドーピング二酸化チタン粒子との混合粒子としたことを特徴とする請求項5又は6記載の紫外線遮蔽粉体。
- 請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の紫外線遮蔽粉体を水溶性塗料、エマルジョン樹脂系塗料又は溶剤系塗料にコロイド分散させたことを特徴とする紫外線遮蔽粉体を含有する分散物。
- 請求項8記載の分散物は、シュリンク包装フィルム又はプラスチック容器の印刷用顔料を含有することを特徴とする紫外線遮蔽粉体を含有する分散物。
- 請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の紫外線遮蔽粉体をプラスチックフィルム中に均一分散させるか或いは複数の樹脂層からなるプラスチック積層フィルムのいずれかの樹脂層に前記紫外線遮蔽粉体を均一分散させたことを特徴とする紫外線遮蔽フィルム。
- 請求項8又は9記載の分散物をプラスチックフィルムの片面又は両面に塗布して、固化後の膜厚が0.1〜5μmの紫外線遮蔽層を形成したことを特徴とする紫外線遮蔽フィルム。
- 請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の紫外線遮蔽粉体を均一分散させた樹脂を成形材料として成形したプラスチック容器であるか或いは複数の樹脂層からなる積層型プラスチック容器のいずれかの樹脂層に前記紫外線遮蔽粉体を均一分散させたプラスチック容器であることを特徴とする紫外線遮蔽容器。
- 請求項8又は9記載の分散物をプラスチック容器の外表面、内表面又は外表面と内表面の両面に塗布して固化後の膜厚が0.1〜5μmの紫外線遮蔽層を形成したことを特徴とする紫外線遮蔽容器。
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