JP4870267B2 - 修正液及びこれを用いた修正具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗膜密着性に優れ、PPCコピー、感熱記録紙及び感圧記録紙に使用可能な修正液及びその修正液を備えた修正具に関する。
【0002】
【従来の技術】
修正液は、誤字等の修正するために用いられているが、隠蔽材、造膜樹脂としての樹脂及びその樹脂を溶解させる有機溶剤を含んでなるものである。現在、修正液の種類として、水性インキの筆跡等や油性インキの筆跡等の修正に用いることが可能である両用修正液があるが、多くの両用修正液にはメチルシクロヘキサンが樹脂溶解性、乾燥性等に優れているために主溶剤として使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、メチルシクロヘキサンを主溶剤として用いた修正液は、滲み等の問題があり、特にペンタイプの修正具に用いた場合にはPPCコピーされた紙を修正する際においてペン先で修正液をこすりつけるためにトナーが溶け出して黒ずむという欠点があり、また、感熱記録紙、感圧記録紙を修正する場合においても黒ずむという欠点があった。
【0004】
この問題に鑑み、特開平3−137177及び特開平4−85372において、主溶剤に脂肪族炭化水素系溶剤を用い、樹脂に飽和エラストマーを使用する修正液が提案されている。しかし、これらは、脂肪族炭化水素系溶剤の使用により黒ずみの問題が解決され、飽和エラストマーの使用により分散安定性、塗膜平滑性に優れるものの、塗膜の密着性については十分ではなく、問題が残されているために実用に至ってない。
【0005】
すなわち、塗膜密着性に優れ、PPCコピーの修正に使用可能な修正液はいまだ存在しなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、非水エマルション樹脂を造膜樹脂に用いることにより、メチルシクロヘキサンを主溶剤として用いることなしに樹脂凝集を防ぐと共に良好な乾燥性を確保し、上記問題を解決することを見出し、本発明に至ったものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の修正液における非水エマルションは、造膜樹脂として用いられるものであり、有機溶剤中で樹脂粒子を形成するものであって、常温で造膜性を有するものであればよい。前記非水エマルションの樹脂成分としては、液層である有機溶媒に分散されるものであれば特に限定されるものではないが、塗膜密着性のためアクリル系樹脂が好ましい。
【0008】
前記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の他、アクリル−ウレタン共重合樹脂、アクリル−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂等のように、モノマー成分の一部に(メタ)アクリル酸エステルが使用された樹脂をいうものである。
【0009】
前記非水エマルションは、樹脂分散粒子の分散媒体としては特に限定されるものではないが、脂肪族系炭化水素を主とする溶媒が用いられることがPPCコピー等の下地を溶かしにくいために好ましい。また、造膜樹脂としての成分を樹脂分散粒子として安定に分散するために、n−ブチル(メタ)アクリレート等の長鎖ビニル単量体に必要に応じて他の重合性単量体を共重合してなる溶解ポリマーを液相中に含むものであることが好ましい。
【0010】
前記非水エマルションにおける樹脂成分の樹脂分散粒子は、沈降法による平均粒子径が0.1〜2.0μmであることが好ましく、平均粒子径が0.1μmより小さい場合にはレベリング性の低下や高粘度化が生じやすく、平均粒子径が2.0μmより大きい場合には貯蔵中に粒子の沈降が生じやすいために好ましくない。また、前記非水エマルションは、造膜樹脂成分が粒子状となっているためにインキ粘度を高くすることなく溶液型樹脂に比べて高分子量の樹脂を用いることができるので、塗膜柔軟性を向上させ、なお且つ他の塗膜物性を維持乃至向上することが可能である。
【0011】
前記非水エマルションは、樹脂成分が非水エマルション中に固形分として40〜70重量%含まれることが好ましく、40重量%より小さい場合には配合上隠蔽材濃度を高めることが難しく、60重量%より大きい場合には高粘度であるため製造性が低下するので好ましくない。また、前記非水エマルションは、修正液中に固形分として4〜42重量%配合されていることが好ましく、8〜30重量%の範囲で配合されていることがより好ましい。修正液中での前記非水エマルションの配合量が、固形分として4重量%より小さい場合には塗布面への定着性及び密着性が低下するので好ましくなく、固形分として42重量%より大きい場合にはインキ粘度が高くなり塗布することが容易でないため好ましくなくない。
【0012】
前記非水エマルションとしては、具体的には、アクリディックYL−431(アクリル系樹脂、固形分50%)、TL−696(アクリル系樹脂、固形分約50%)、A−1300(アクリル系樹脂、固形分60%)、A−1370(アクリル系樹脂、固形分53%)(以上、大日本インキ社製)、ニッセツU−4315B(アクリル−酢酸ビニル共重合樹脂、固形分50〜52%)、U−3700A(アクリル−スチレン共重合樹脂、固形分47〜49%)(以上、日本カーバイド工業社製)が例示的に挙げられる。
【0013】
本発明の修正液における前記有機溶剤は、特に限定されるものではないが、非水エマルションの樹脂粒子を破壊しない溶剤であることが好ましく、特に修正液としての性能を考慮した場合、PPCコピーのトナーを溶かさないためには脂肪族炭化水素系溶媒が好ましい。また、乾燥性を考慮し、沸点が230℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。
【0014】
前記脂肪族炭化水素系溶剤としては、具体的には、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン、2,4−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、3−メチルヘキサン、n−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、2,2,5−トリメチルヘキサン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン及びn−ドデカンからなる群から1種以上選ばれた溶剤が好ましく、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、2,4−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、3−メチルヘキサン、2,2,5−トリメチルヘキサン、2,3,4−トリメチルペンタン及び2,2,4−トリメチルペンタンからなる群より1種以上選ばれた溶剤であることがより好ましい。
【0015】
前記有機溶剤は、非水エマルションの濃度に応じて適宜調整することが可能であり、修正液中に20〜70重量%の割合で配合されることが好ましく、30〜60重量%であることがより好ましい。有機溶剤の配合量が70重量%より多い場合には修正液中の顔料濃度が低くなるために隠蔽性が低下するので好ましくなく、有機溶剤の配合量が20重量%より少ない場合にはインキ粘度が高くなるために塗布できないので好ましくない。
【0016】
本発明の修正液において、修正液中の有機溶剤組成は、修正液に直接配合される有機溶剤及び非水エマルションの分散媒体としての有機溶剤により構成されるが、修正液全体としてPPCコピー等に適用された場合において黒ずみを生じないものであれば良く、修正液中にメチルシクロヘキサノンを全く排除するものではない。
【0017】
本発明の修正液における隠蔽材は、本発明の修正液が膜形成した後に筆跡などを隠蔽することのできる高隠蔽性顔料であればよい。顔料の種類としてルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、酸化亜鉛に代表される無機顔料、アルキレンビスメラミンに代表される有機白色顔料を用いることができるが、単独でも2種以上適宜混合して使用しても良い。前記隠蔽材は、高隠蔽顔料として、特に、ルチル型顔料を用いることが隠蔽性が高いために好ましい。ルチル型酸化チタンとしては、市販のものとして、タイペークR−930、タイペークR−550、タイペークR−670、タイペークR−830(以上、石原産業社製)、クロノスKR−380、KR−270、KR−460(以上、チタン工業社製)が挙げられる。
【0018】
前記隠蔽材は、修正液中に20〜70重量%の割合で配合されることが好ましく、30〜60重量%の割合で配合されることがより好ましい。前記隠蔽材の配合量が70重量%より多い場合にはインキ粘度が高くなり塗布することが困難となり、20重量%より少ない場合には顔料の濃度が低くなるため隠蔽性が得られないために好ましくない。
【0019】
本発明の修正液は、必要に応じて、シリカや炭酸カルシウムなどの体質顔料、隠蔽材を分散させるため各種分散用樹脂又は分散剤(界面活性剤)、その他の添加剤を添加することができる。
【0020】
本発明の修正液は、液性が擬塑性流動をしめす、いわゆるゲル状であっても良い。この場合、前記修正液はゲル化剤を含有し、前記ゲル化剤としてベントナイト、シリカなど分散型のゲル化剤や溶液中で分子間の会合により網目構造を形成する高分子のゲル化剤などの公知であるゲル化剤を使用することができるが、前記修正液のインキ粘度は、剪断速度が0.1(1/s)のとき700mPa・s以上であり、剪断速度が100(1/s)のとき500mPa・s以下であることが好ましい。前記修正液が油性ゲルであることにより、静置時における静的状態においてはゲル化剤等の三次元構造により隠蔽材の分散状態が安定化し、筆記時における動的状態においてはインキに剪断力が加わることにより三次元構造が破壊されて低粘度化して流動しレベリング性や筆記性を発揮することができるという利点があるためである。
【0021】
本発明は、修正具についてでもある。前記修正具は、上記の本発明の修正液が修正具における収容部に収容されてあるものであれば特に限定されるものでなく、修正液が刷毛塗り型修正ボトルに収められているものであっても良く、ペン型であって良い。前記修正具がペン型である場合には、ペン先のインキ流出部にボール、ローラー、棒状体の少なくともいずれかを保持してなる修正ペンであっても良く、インキ収容部内に撹拌子を内蔵するものであっても良いが、本発明の修正液がゲル状である場合にはペン先がボールであることが修正液の塗布に有利であるために好ましい。
【0022】
(実施例)
以下、本発明の実施例及び比較例を説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、本発明において「部」とはいずれも「重量部」を示している。
【0023】
実施例1
分散樹脂(商品名:ニッセツKP−1740A、アクリル樹脂、日本カーバイド社製)5部、酸化チタン(商品名:タイペークR−930、石原産業社製)50部及び有機溶剤(商品名:マルカゾール8、イソパラフィン、大日本インキ化学社製)30部を公知の分散機を用いて分散処理を行い、さらに非水エマルション(商品名:ニッセツU−4315B、アクリル系樹脂、日本カーバイド社製)15部を添加して公知の撹拌機により十分に撹拌して、実施例1の修正液を得た。
【0024】
実施例2
分散樹脂(商品名:アクリディックYL−430、アクリル樹脂、大日本インキ化学社製)4部、酸化チタン(商品名:クロノスKR−380、チタン工業社製)50部及び有機溶剤(商品名:マルカゾール8、イソパラフィン、大日本インキ化学社製)30部を公知の分散機を用いて分散処理を行い、さらに非水エマルション(商品名:アクリディックYL−431、アクリル−酢酸ビニル樹脂、大日本インキ化学社製)10部を添加して公知の撹拌機により十分に撹拌して、実施例2の修正液を得た。
【0025】
比較例1
溶剤溶解性樹脂(商品名:ダイヤナールBR−101、アクリル樹脂、固形分100%、三菱レイヨン社製)7部、酸化チタン(商品名:クロノスKR−380、チタン工業社製)50部及びメチルシクロヘキサノン43部を公知の分散機を用いて分散処理を行い、比較例1の修正液を得た。
【0026】
比較例2
溶剤溶解性樹脂としてエラストマー(KRATON G−1652、固形分100%、シェルジャパン社製)を用いた以外は比較例1と同様にして製造し、比較例2の修正液を得た。
【0027】
(評価方法)
実施例1及び2並びに比較例1及び2の修正液を乾燥性、再分散性、塗膜柔軟性、レベリング性、塗膜密着性、再筆記性及び対PPCコピー性について評価した。各評価項目の試験方及び評価基準は下記のとおりである。
【0028】
(乾燥性)
塗膜の乾燥性の評価は、各実施例及び各比較例の油性インキを、先端が1.0mm径のボールを保持したペン先を有する公知の修正ペンのインキ収容管内に入れ、普通紙において実際に筆記して、それぞれ官能評価した。
〔評価基準〕
○:指触乾燥時間が30秒以内で良好であった。
△:指触乾燥時間が30秒より遅く、1分以内であった。
×:指触乾燥時間が1分より遅く不良であった。
【0029】
(再分散性)
容量20mlの修正ペン容器内に公知の攪拌子及び各修正液8mlをそれぞれ入れ、50℃で1ヶ月間放置しその後下記の基準に従って再分散試験を行い評価した。
〔評価基準〕
○:1〜10回容器を振ることにより、撹拌子が動き再分散できる。
△:11〜15回容器を振ることにより、撹拌子が動き再分散できる。
×:16以上回容器を振ることにより、撹拌子が動き再分散できる。
【0030】
(塗膜柔軟性)
すき間0.3mmのアプリケーターを用いて、普通紙(PPC用)に各修正液を塗布した。塗膜乾燥後に、塗布部を内側にして筆記用紙を2つ折りにし、その折り目と直角方向に更に折り曲げて、塗膜が剥離するか否かにより評価した。
〔評価基準〕
○ :塗膜の剥離が無かった。
△ :折り目部分の一部に塗膜の剥離が有った。
× :折り目部分のほぼ全部に塗膜の剥離が有った。
【0031】
(レベリング性)
レベリング性、筆記性及び塗膜の乾燥性の評価は、各実施例及び各比較例の油性インキを、先端が1.0mm径のボールを保持したペン先を有する公知の修正ペンのインキ収容管内に入れ、普通紙において実際に筆記して、その塗膜上に再筆記した時の状態をそれぞれ官能評価した。
〔評価基準〕
○:引っかかり無く、スムーズに筆記できた。
△:引っかかりがあるが筆記できた。
×:引っかかりがあり、筆記できなかった。
【0032】
(塗膜密着性)
すき間0.3mmのアプリケーターにより各修正液を普通紙(PPC用)に塗布し、乾燥後セロテープ剥離を行った。
〔評価基準〕
○:テープ側に塗膜が全く移行しなかった。
△:テープ側に塗膜がやや移行した。
×:テープ側に塗膜が移行した。
【0033】
(再筆記性)
市販の黒色ボールペンで文字が書かれた普通紙に各修正液が収容されたそれぞれの修正具を用いて完全に隠蔽したものに、市販の黒色ボールペンを用いて300gの筆記荷重で直線を筆記して筆跡を観察した。
〔評価基準〕
○:良好な筆記跡が得られた。
△:部分的に筆記跡が薄くなった。
×:筆記跡が得られなかった。
【0034】
(対PPCコピー性)
各修正液を公知のペン型修正具の内部に備えられたインキ収容管に収容した修正具を用いて、PPCコピーされた原稿を修正し、目視で評価した。
〔評価基準〕
○:正常に修正が可能であった。
△:僅かに黒ずみが生じた。
×:変色又は色の滲みが認められた。
【0035】
(結果)
実施例1及び2並びに比較例1及び2について、各種評価項目の結果を表1に示す。本発明の修正液である実施例1及び2は、各評価項目について良好であったのに対し、比較例1の修正液は対PPCコピー性が不良であり、また比較例2の修正液は対PPCコピー性及び塗膜密着性が不良であった。
【0036】
【表1】
【0037】
【本発明の効果】
本発明の修正液を使用することにより、塗膜密着性に優れ、PPCコピー、感熱記録紙及び感圧記録紙の修正を容易に行うことができる。
Claims (5)
- 隠蔽材、有機溶剤及び非水エマルションを含んでなり、
前記非水エマルションは有機溶媒に樹脂成分の樹脂粒子が分散されており、
前記樹脂粒子がアクリル系樹脂を主成分とする樹脂粒子であり、
前記非水エマルションの有機溶媒が脂肪族系炭化水素である
ことを特徴とする修正液。 - 前記有機溶剤が脂肪族炭化水素系溶剤である請求項1記載の修正液。
- 前記非水エマルションは、修正液中に固形分として4〜42重量%含まれている請求項1又は2記載の修正液。
- 前記非水エマルションにおける樹脂粒子は、平均粒子径が0.1〜2.0μmである請求項1、2又は3記載の修正液。
- 請求項1記載の修正液をインキ収容部に収容していることを特徴とする修正具。
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