JP5103756B2 - 修正液及びその製造方法 - Google Patents
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この、両用修正液にて使用されている、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステルなどのアクリル樹脂は、他の樹脂と比較して造膜性が良好であり、塗膜表面に筆記する必要がある修正液に適した樹脂としてよく用いられる。
しかしながら、アクリル樹脂を用いた修正液の塗膜自体は疎水性を呈している為、水性インキ使用の万年筆、サインペン等により再筆記した場合、水性インキが弾かれてしまい塗膜内部にインキが浸透し難く再筆記文字の乾燥性が遅いとう問題を有していた。
本発明は、水性インキ使用の万年筆、サインペン等により修正塗膜上に再筆記しても、インキが弾かれることなく良好に再筆記ができて色沈み性も見られず、油性ボールペン等による再筆記時に修正塗膜にクラックが生じることのない修正液を提供することを目的とする。
修正液の塗膜表面や塗膜内部には微細な空隙や細孔が存在しており、その空隙や細孔は酸化チタン粒子を表面が親水性を呈することとなったアクリル樹脂で結合されて形成されている。従って、修正液の塗膜表面、空隙や細孔は親水性を呈し、水性インキ使用の筆記具でも弾くことなく良好に再筆記ができ、色沈み性も見られないものとなる。また、水酸基を有する水素化石油樹脂は用紙に対する接着性を有しているためにアクリル樹脂の用紙に対する接着性を低下させず、油性ボールペン等による再筆記時に修正塗膜にクラックが発生したり、修正塗膜が用紙から剥離することが無いものとなる。
更に、アクリル樹脂を重合する際に、その重合系内に水酸基を有する水素化石油樹脂を存在させることによって、アクリル樹脂においては、単に添加した場合に比べて水酸基を含有する水素化石油樹脂がアクリル樹脂の分子間に均一に存在することにより、アクリル樹脂の表面は一段と均一に親水性を呈するようになり、水酸基を含有する水素化石油樹脂の効果が顕著に現れるものと推考される。
顔料は、筆跡、印字、複写像を隠蔽するために使用するものであって、その全部又は少なくとも主成分が酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンとしては、ルチル型、アナターゼ型何れの酸化チタンも使用できる。市販のものとしてはタイトーンSR−1、同R−650、同R−3L、同A−110、同A−150、同R−5N(以上、堺化学工業(株)製)、タイペークR−580、同R−550、同R−930、同A−100、同A−220、同CR−58(以上、石原産業(株)製)、クロノスKR−310、同KR−380、同KR−480、同KA−10、同KA−20、同KA−30(以上、チタン工業(株)製)、タイピュアR−900、同R−931(以上、デュポン・ジャパン・リミテッド社製)などが挙げられる。その使用量は修正液全体に対して30〜80重量%が好ましく、顔料容積濃度(P.V.C)が50%以上となることが望ましい。
本発明の修正液に使用し得る有機溶剤の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、n−へキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等のナフテン系炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤等が上げられる。
特に、安全性に優れ、万年筆、水性サインペンなどの水性インキによる筆跡、油性ボールペン、油性マーカーなどの油性インキによる筆跡、タイプライター、ワープロによる印字、乾式複写機による複写像などを隠蔽修正するための所謂万能タイプ修正液としては、水性及び油性の筆跡、文字、複写像などを溶解し難いナフテン系炭化水素溶剤を用いるのが好適である。
水酸基を有する水素化石油樹脂は、第VIII族金属、銅、クロム、金およびレニウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を有する水素化触媒、ならびに一般式(数2)にて示される化合物の存在下に、アルコール変性ジシクロペンタジエン樹脂、アルコール変性C9−ジシクロペンタジエン樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン樹脂、フェノール変性C9石油樹脂などの水酸基含有石油樹脂を水素化したものである。
市販されている具体例としてはクイントン1700(日本ゼオン(株)製)、ネオレジンNB−90(日本石油化学(株)製)、KR−1840(荒川化学工業(株)製)のような市販品が挙げられる。
水酸基を有する水素化石油樹脂の使用量は、アクリル樹脂100重量部に対し2〜30重量部程度が望ましい。2重量部に満たない場合には得られるアクリル系樹脂に十分な親水性が付与できず、従って水性インキでの再筆記文字が弾かれやすくなってしまう。又、30重量部を超える場合にはアクリル系樹脂が固くなることで修正塗膜も硬くなり、油性ボールペン等による再筆記時に修正塗膜にクラックが発生してしまうことが有るからである。
アクリル樹脂としては、上記一般式(化1)で示されるモノマー部分を有するアクリル樹脂が好ましく使用できる。上記一般式(化1)で示されるモノマー部分を有することで、該モノマーの第3アミノ基により酸化チタンに対する吸着性が良好となり、従って修正液中の酸化チタンの分散安定性が良好となるからである。
一般式(化1)で示される、カチオン性モノマーとしては、例えばN,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジイソブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−ターシャリブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジシクロヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
一般式(化1)で示されるモノマーは、アクリル樹脂中2〜20重量%含有することが好ましい。2重量%より少量では、酸化チタンに対する吸着が弱いため顔料の分散性が低下し、20重量%より多量では共重合するメタクリル酸エステルの種類によっては、ナフテン系炭化水素溶剤に対するアクリル樹脂の溶解性が低下する傾向があるからである。
更に、修正塗膜の性能を向上させるために、水酸基を有する水素化石油樹脂を重合系内に存在させて、一般式(化1)で示されるモノマーと他のメタクリル酸エステルモノマーを重合して得られるアクリル樹脂を使用することが好適である。
水酸基を有する水素化石油樹脂は、アクリル樹脂の重合時に反応系内に存在していればよく、その添加方法は特に限定されない。例えば、前記水酸基を有する水素化石油樹脂を、メタクリル酸エステルモノマー及び一般式(化1)で示されるモノマー等のモノマーに溶解する方法、また、溶液重合溶剤型アクリル系重合体を重合する際には重合に用いられる溶剤に溶解する方法等が挙げられる。
他のメタクリル酸エステルモノマーとしてはプロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ターシャリーブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、オレイルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどが挙げられる。
メタクリル酸エステルは、アクリル樹脂中60〜98重量%含有することが好ましい。60重量%より少量ではナフテン系炭化水素溶剤に対するアクリル樹脂の溶解性が低下する傾向に有るからである。
一般式(化1)で示されるモノマーとメタクリル酸エステルモノマーの重合方法としては、修正液の溶剤として使用するナフテン系炭化水素を溶剤とする溶液重合が、樹脂溶液としてそのまま修正液の配合に使用できる点から望ましい。また、重合の開始方法も過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、アゾビスイソブチロニトリル過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の熱重合開始剤によるもの、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノンといった光重合開始剤と紫外線照射によるもの、また電子線照射による方法、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩と三級アミン、チオ尿素などとの組み合わせによるレドックス開始系等任意に選択することができる。尚、一般式(化1)で示されるモノマーとメタクリル酸エステルモノマー以外に両者と共重合可能なビニルモノマーを含有することもできる。このモノマーとしては、カルボキシル基などの官能基を有するアクリル酸系及びメタクリル酸系のモノマーや、アクリル酸エステルや、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。これらのモノマーの使用量は、アクリル樹脂のナフテン系炭化水素に対する溶解性、修正塗膜の特性を考慮すると0〜20重量%が好ましい。
上述のアクリル樹脂の使用量は、修正液全量に対してアクリル樹脂の固形分量で3〜15重量%が好ましい。3重量%より少ないと修正液塗膜の用紙への接着性が不十分となり剥離を起こし、15重量%を超えると修正液塗膜に空隙や細孔が形成できず水性インキの塗膜中への浸透が困難となり、水性インキの再筆記文字の乾燥性が著しく遅くなってしまうからでる。
<アクリル樹脂溶液の製造例1>
実施例1用のアクリル樹脂
撹拌機、チツ素ガス導入口、滴下ロート、温度計、還流コンデンサーを備えた500mlの反応容器にメチルシクロヘキサン100重量部、エチルシクロヘキサン40重量部を仕込んだ後、チツ素ガス気流下にて系内温度が約90℃となるまで昇温した。次いで、プロピルメタクリレート42重量部、ブチルメタクリレート36重量部、ステアリルメタクリレート10重量部、メチルメタクリレート7重量部、ブチルアクリレート5重量部を混合して仕込んだ滴下ロートと、重合開始剤のアゾビスイソブチルニトリル0.3重量部をエチルシクロヘキサン10重量部に溶解させた溶液を仕込んだ滴下ロートから約2時間を要して系内に滴下し、更に6時間同温度に維持して重合反応を行った。無色透明で粘稠性を有するアクリル樹脂成分40重量%含有のメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンの混合溶剤の溶液を得た。
実施例2、3用のアクリル樹脂
撹拌機、チツ素ガス導入口、滴下ロート、温度計、還流コンデンサーを備えた500mlの反応容器にメチルシクロヘキサン100重量部、エチルシクロヘキサン40重量部を仕込んだ後、チツ素ガス気流下にて系内温度が約90℃となるまで昇温した。次いで、プロピルメタクリレート42重量部、ブチルメタクリレート30重量部、ブチルアクリレート5重量部、N,N―ジエチルアミノエチルアクリレート3重量部、ステアリルメタクリレート13重量部、メチルメタクリレート7重量部を混合して仕込んだ滴下ロートと、重合開始剤のアゾビスイソブチルニトリル0.3重量部をエチルシクロヘキサン10重量部に溶解させた溶液を仕込んだ滴下ロートから約2時間を要して系内に滴下し、更に6時間同温度に維持して重合反応を行った。無色透明で粘稠性を有するアクリル樹脂成分40重量%含有のメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンの混合溶剤の溶液を得た。
実施例1
クロノスKR−480(チタン工業(株)製、ルチル型酸化チタン) 40重量部
メチルシクロヘキサン(丸善石油化学(株)製) 24重量部
エチルシクロヘキサン(丸善石油化学(株)製) 11重量部
製造例1のアクリル樹脂溶液 22重量部
ネオレジンNB−90(水酸基を有する水素化石油樹脂、日本石油化学(株)製)
2重量部
ミズカシルP−801(水沢化学工業(株)製) 1重量部
上記成分をボールミルにて24時間分散処理して修正液を得た。
クロノスKR−480(チタン工業(株)製、ルチル型酸化チタン) 40重量部
メチルシクロヘキサン(丸善石油化学(株)製) 26重量部
イソオクタン(丸善石油化学(株)製) 10重量部
製造例2のアクリル系樹脂溶液 22重量部
ネオレジンNB−90(水酸基を有する水素化石油樹脂、日本石油化学(株)製)
2重量部
上記成分をボールミルにて24時間分散処理して修正液を得た。
クロノスKR−480 40重量部
メチルシクロヘキサン 24重量部
エチルシクロヘキサン 12重量部
製造例2のアクリル系樹脂溶液 20重量部
KR−1840(水酸基を有する水素化石油樹脂、荒川化学工業(株)製) 1重量部
ミズカシルP−801 1重量部
シトロフレックスA−4(可塑剤、クエン酸アセチルトリブチル、森村商事(株)製)
2重量部
上記成分をボールミルにて24時間分散処理して修正液を得た。
実施例1において、ネオレジンNB−90を抜き、メチルシクロヘキサンの量を26重量部とした他は実施例1と同様に配合、分散処理して修正液を得た。
実施例2において、ネオレジンNB−90を抜き、イソオクタンを12重量部とした他は実施例2同様に配合、分散処理して修正液を得た。
実施例2において、ネオレジンNB−90を抜き、代わりにSILWET L−720(シリコーン・ブロック・コポリマー、日本ユニカー(株)製)を2重量部使用した他は実施例2と同様に配合、分散処理して修正液を得た。
実施例3において、KR−1840を抜き、エチルシクロヘキサンを10重量部とし、酸化カルシウム(アルカリ土類金属の酸化物)を3重量部加えた他は実施例3と同様に配合分散処理して修正液を得た。
再筆記性修正箇所の塗膜に水性インキ(ぺんてる(株)製、ボ−ルぺんてるB76)で筆記し、筆跡に弾きがないものを「○」、弾きがあるものを「×」とした。
下記の水性インキ使用の筆記具で、上記修正液を用いて修正を行なった箇所の修正塗膜及び紙面に面塗りし、その筆跡の乾燥後の濃度を測定し、濃度差を算出した。修正塗膜上の筆跡濃度(Y値)をY1とし、紙面上の筆跡濃度をY2としたとき、色沈み度=Y2−Y1とした。数値が小さい方が色沈みの少ないことを示す。
水性筆記具:水性ボールペン:ぺんてる(株)製、ボールぺんてるB100−A
筆跡濃度の測定:SMカラーコンピュータModelSM−4(スガ試験機(株)製)を用いて、Y値を測定した。
修正箇所の塗膜に上記水性インキで筆記し、筆跡を指で擦過し、インキが指に付着しなくなるまでの時間を測定した。数値が小さいほうが、再筆跡の乾燥が速いことを示す。
上質紙(JIS P3201筆記用紙A)に3ミルのアプリケーターで修正液を塗布、乾燥後、油性ボールペン(BK70黒、ぺんてる(株)製)を用いて筆記加重500gにて縦横1mm間隔の直線を11本引き、1mm角の升目100個を作成した。100個の升目のうち、修正塗膜にクラックが発生したり剥離が生じた升目を数えた。数値が大きい方が、塗膜が脆いことを示す。
修正液を密栓付瓶(30ml)に取り、3ヶ月間室温に放置後、ミクロスパーテルにて瓶底部を観察し、殆ど沈降生成物が認められなかったものを「○」、沈降生成物は認められたが撹拌により容易に再分散したものを「△」、沈降生成物が認められ撹拌しても再分散が困難であったものを「×」とした。
以上、詳細に説明したように、本発明の修正液は分散安定性に優れ、各種の筆跡、印字の修正が可能であり、修正箇所の水性インキによる再筆記と筆跡の乾燥性がを良好で、しかも油性ボールペン等による再筆記時に修正塗膜にクラックが生じることのない密着性に優れた修正塗膜が得られる修正液である。
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