JP4870025B2 - マトリックスコンバータ制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、マトリックスコンバータの制御技術に関するもので、特に入力電流および入力電圧のリップル抑制に関する。
従来のマトリックスコンバータとその制御器の構成図を図2に示す。マトリックスコンバータは入力LCフィルタ2を介して三相電源1を入力し、三相電源電圧を9つの双方向スイッチを用いて三角波比較によるPWM制御をすることにより、負荷3に任意の振幅および任意の周波数の三相交流電圧を供給し、同時に入力電流を正弦波化した上に入力力率を制御するものである。
双方向スイッチは例えば図3のように二つのIGBTと2つのダイオードにより構成する場合もあるし、図4のように逆阻止IGBTをふたつ用いて構成する場合もある。
入力LCフィルタ2は例えば図5のような構成である。ここで、入力LCフィルタ2では電源線間電圧振幅Ersと電源線間電圧振幅Etsを検出するものとする。Ers、Etsは発明のキャリア信号生成器511と入出力指令生成器53へ入力される。入出力指令生成器53はさらに該マトリックスコンバータ出力電流の検出値Iu、Iv、Iwが入力される。
入出力指令生成器53では、入力されたErs、Etsから電源電圧の位相と電源電圧の位相θを求める。ここで、電源相電圧の最大のものを、Emax、中間の大きさのものをEmid、最小のものをEminと定義する。また、EmaxとEmidの差をemax、EmaxとEminの差をemidとおく。emaxは例えば図6のようになる。ここで、出力電圧指令値をVus,Vvs,Vwsと仮定する。そして、入出力指令生成器53は、三角波キャリアの振幅に規格化された出力電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcを
Vuc=Vus・A/emax (1)
Vvc=Vvs・A/emax (2)
Vwc=Vws・A/emax (3)
のように求める。ただしAは、従来のキャリア信号生成器512が出力する三角波キャリアの振れ幅である。
さらにマトリックスコンバータ2は負荷3へ任意の電圧指令Vus,Vvs,Vws通りの電圧が印加できていると仮定した場合、入出力指令生成器53は前記マトリックスコンバータ出力電力Poを
Po=Vus・Iu+Vvs・Iv+Vws・Iw (4)
の演算で求める。出力電力Poを用いて、三相電源1の内で中間の電圧を出力している相(以下中間相)に流すべき電流Icを求める。Icが三相正弦波電流の一部になるように制御されるならば、すべての三相電源電流は正弦波状に制御される。また、電源電流の位相が電源電圧と同相に制御されるのならば、三相電源1の力率は1となる。電流Icは例えば図7のような波形となる。(非特許文献1参照)
次に中間相電流Icと負荷電流Iu,Iv,Iwにより、各出力相を電源中間相に接続する時間比率(以下、中間相接続率)Ku’,Kv’,Kw’を求める。IxがIcと同符号の場合はKx’=Ic/Isumであり、異符号の場合はKx’=0とする。ここでxはu,v,wで表される出力相を意味し、IsumはIu,Iv,Iwの内でIcと同符号のものの総和である。例えばIc>0,Iu>0,Iv<0,Iw<0ならば、Ku’=Ic/Iu,Kv’=Kw’=0となる。またIc<0,Iu>0,Iv<0,Iw<0ならば、Ku’=0,Kv’=Kw’=Ic/(Iv+Iw)となる。このように、Icと同符号の出力相が2つある場合は、それらの相の中間相接続率は等しい値となる。
以上の演算結果から入出力指令生成器53は、三角波キャリアと比較されるべき入出力指令値
VxH=Vxc+A・Kx’ ・G (5)
VxL=VxH−A・Kx’ (6)
を求めて出力する。VxHおよびVxLは、それぞれ比較器52に入力される。
ここでxはu,v,wで表される出力相を意味し、
G=1−emid/emax (7)
である。Gは例えば図8のようになる。
従来のキャリア信号生成器512は、振れ幅Aの三角波キャリアCを出力し、比較器52はその三角波キャリアCと入出力指令信号生成器53の出力とを比較した結果としてFxを出力する。C<VxLならばFx=0、VxL<C<VxHならばFx=1、VxH<CならばFx=2となり、Fx=0は、出力のx相を三相電源1の最大相に接続することを意味し、Fx=1は、出力のx相を三相電源1の中間相に接続することを意味し、Fx=2は、出力のx相を三相電源1の最小相に接続することを意味する。
スイッチ制御器54は、比較器47の出力と位相θに応じたスイッチング信号をマトリックスコンバータに出力する。例えばFu=0,0<θ<60ならば、u相は電源の最大相であるR相に接続することになるので、SuR=ON,SuS=SuT=OFFとなる。
この様な構成とすることで、負荷3に印加される電圧は、電圧指令Vus,Vvs,Vws通りとなり、電源電流波形も例えば正弦波とすることができ、電源力率も例えば1とすることができるようになる。
中小路元、小林広介、佐藤之彦 他著:「マトリックスコンバータの入出力電流を正弦波化するPWM制御方式の提案」、電気学会半導体電力変換研究会論文No.SPC−03−36、61〜66頁
従来の構成では、出力電流Iu、Iv、Iwの瞬時値の大小関係が変化する位相付近でマトリックスコンバータ入力電圧Vrs、Vtsのリップルが大きくなるという問題があった。図9によってその原理について説明する。出力電流Iu、Iv、Iwの瞬時値の大小関係が変化する瞬間は、出力電流は
2・Ix=2・Iy=−Iz (8)
−2・Ix=−2・Iy=Iz (9)
という関係となる。ここで、x、y、zは出力相のu、v、wのうちのどれかを表す。
例えば、図9はEr>Es>Et、2・Iu=2・Iw≒−Ivと仮定した場合のR相電流波形の例を表している。ここでは、Ku≠0、Kv=Kw=0であったと仮定している。入出力指令信号VuH、VuL、VvH、VvL、VwH、VwLと比較されるべき三角波キャリア信号の瞬時値をCとすると、VuL>C、VvL>C>VwLの区間は、R相にはU相とV相が接続され、(Iu−Iv)<0の電流が流れる。この場合、R相電流はキャリア1周期内で負から正方向に急峻な電流が流れるので、高調波成分を多く含む。
もし、出力電流Iu、Iv、Iwの瞬時値の大小関係がIu=−Iw、Iv=0であったならば、R相の電流はキャリア周期内で正方向にしか流れない。つまり、出力電流の大小関係が(8)式、(9)式に近づくほど入力電流がキャリア1周期内で入力電流に高調波成分を含むということがいえる。このように、従来の構成では出力電流の大小関係が切り替わる時間付近で、高調波を含んだ出力電流Iu、Iv、Iwは入力LCフィルタ2のCに流れ込み、マトリックスコンバータ入力電圧Vrs、Vtsのリップル増加を招くという問題があった。
請求項1の発明によれば、三相交流電源に接続されるLCフィルタと、9つの双方向スイッチから構成され任意の振幅および周波数の三相交流電圧を負荷に供給するマトリックスコンバータ主回路と、前記マトリックスコンバータ主回路の出力に接続された負荷に流れる三相交流の電流と前記LCフィルタより検出された前記マトリックスコンバータ主回路の入力電圧とを入力して6つの入出力指令信号を生成する入出力指令信号生成器と、前記マトリックスコンバータ主回路への入力電圧から三角波状のキャリア信号を生成するキャリア信号生成器と、前記入出力指令信号と前記キャリア信号を入力して比較する比較器と、前記比較器の出力と前記マトリクスコンバータに接続された負荷の電流とを入力して9つの双方向スイッチを制御する制御信号を生成するスイッチ制御器から成るマトリックスコンバータ装置において、 前記負荷に流れる各々の相の電流の瞬時値の大小関係が切りかわる位相付近では前記位相付近以外の位相時における前記キャリア信号の周波数と比較して、高い周波数のキャリア信号を生成するように構成した制御装置を具備することを特徴とする。
マトリックスコンバータの出力電流の位相が60度変化する付近で生じる入力電圧、入力電流のリップルを抑えることが出来る。これにより、例えば入力電流および入力電圧のリップルを効率よく抑制することができる。
マトリックスコンバータの入力電圧と入力電流リップルを抑制する目的を、電源特性の性能低下を招くことなく、部品を追加することなく、三角波キャリアの周波数を可変するだけで実現した。
図1によって実施例1を示す。本発明の主体は発明のキャリア信号生成器511なので、従来と同じ技術については説明を省略する。従来技術において、従来のキャリア信号生成器512は常に一定周波数のキャリアを生成する。
これに対して、例えば、Iu、Iv、Iwの大小関係が切り替わる時点の±5度の区間においては発明のキャリア信号生成器511は、従来のキャリア信号生成器512が出力するキャリアの2倍の周波数のキャリアを出力する。キャリア周波数を上げると一回のスイッチングによって生じる電圧リップルの大きさが小さくなるので、以上のような構成によりマトリックスコンバータの入力電流および入力電流リップルが最大になる区間だけを重点的にリップル抑制を行うことが出来る。
発明のキャリア信号生成器511が出力するキャリア周波数を上げる区間は、Iu、Iv、Iwの大小関係が切り替わる時点の±5度よりも広くしてもかまわない。その場合、入力電流および入力電圧のリップルを抑制する時間が増え、電源位相1周期における出力電圧のリップルの割合は減少する。
ただし、電源位相1周期すべての期間で発明のキャリア信号生成器511が出力するキャリア周波数を上げると、従来技術を用いたときよりもスイッチング損が上昇するので行わない。
実地例1のような構成にすることで、入力電流および入力電圧のリップルを効率よく抑制し、入力LCフィルタ2が小型化することが出来たり、入力LCフィルタ2に起因する電圧共振現象によるマトリックスコンバータの過電圧破壊を起こりにくくしたりすることができる。
実施例2を示す。構成は図1と同じであるが発明の運用の仕方が異なる。発明のキャリア信号生成器511以外の構成は従来のマトリックスコンバータの構成と同じである。従来技術において、従来のキャリア信号生成器512は常に一定周波数のキャリアを生成する。
これに対して、例えば、Iu、Iv、Iwの大小関係が切り替わる時点の±5度の区間においては発明のキャリア信号生成器511は、従来のキャリア信号生成器512が出力するキャリアの1/2倍の周波数のキャリアを出力する。電源位相1周期すべての期間で発明のキャリア信号生成器511が出力するキャリア周波数をさげると、さらにマトリックスコンバータの平均のスイッチング損を減らすことが出来るが、電源位相1周期すべての区間における入出力電圧のリップルが、従来技術における入出力電圧リップルより大きくなってしまうため行わない。
このような構成にすることで、マトリックスコンバータの出力電流の位相が60度変化する付近で生じる入力電圧、入力電流のリップルが従来と同等レベルまま、マトリックスコンバータの平均のスイッチング損を下げることが出来る。
本発明は従来のマトリックスコンバータと比較して、スイッチング損の上昇を最小減に抑えつつ歪みの少ない出力を得られるものであり、昇降機、エレベータ、エスカレータ、遠心分離機、ビルおよび研究所の電源設備に応用が可能である。
図1は本発明のマトリックスコンバータ制御装置を示す図である。 図2は従来のマトリックスコンバータ制御装置を示す図である。 図3はIGBT2個とダイオード2個を用いて構成した双方向スイッチを説明するための図である。 図4は逆阻止IGBTを2個用いて構成した双方向スイッチを説明するための図である。 図5は入力LCフィルタを説明するための図である 図6は入力電源電圧と位相の関係を説明するための図である。 図7は入力力率1での中間相電流指令値と位相の関係を説明するための図である。 図8は変数Gと位相の関係を説明するための図である。 図9は最大相電流に正、負両方向の電流が流れる場合の一例を示した図である。
符号の説明
1 三相電源
2 入力LCフィルタ
3 負荷
4 マトリックスコンバータ主回路
5 マトリックスコンバータ制御装置
511 発明のキャリア信号生成器
512 従来のキャリア信号生成器
52 比較器
53 入出力指令信号生成器
54 スイッチ制御器
6 電流検出器

Claims (1)

  1. 三相交流電源に接続されるLCフィルタと、9つの双方向スイッチから構成され任意の振幅および周波数の三相交流電圧を負荷に供給するマトリックスコンバータ主回路と、該マトリックスコンバータ主回路の出力に接続された負荷に流れる三相交流の電流と該LCフィルタより検出された前記マトリックスコンバータ主回路の入力電圧とを入力して6つの入出力指令信号を生成する入出力指令信号生成器と、前記マトリックスコンバータ主回路への入力電圧から三角波状のキャリア信号を生成するキャリア信号生成器と、該入出力指令信号と該前記キャリア信号を入力して比較する比較器と、該比較器の出力と前記マトリクスコンバータ主回路に接続された負荷の電流とを入力して9つの双方向スイッチを制御する制御信号を生成するスイッチ制御器から成るマトリックスコンバータ装置において、
    前記負荷に流れる各々の相電流瞬時値の大小関係が切りかわる位相付近では、該位相付近以外において該キャリア信号生成器が出力するキャリア信号の周波数よりも高い周波数のキャリア信号を生成するように構成したキャリア信号生成器を具備することを特徴とするマトリックスコンバータ装置。
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