JP4867884B2 - 液化アンモニアの充填方法、および、窒化物結晶の製造方法 - Google Patents

液化アンモニアの充填方法、および、窒化物結晶の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は液化アンモニアの充填方法、並びに、これを利用した窒化物結晶の製造方法、特に窒化ガリウムに代表される周期表第13族元素(以下「第13族元素」という)窒化物の高品質な塊状結晶の製造方法に関する。
窒化ガリウム(GaN)は、発光ダイオードおよびレーザーダイオード等の電子素子に適用される物質として有用である。この窒化ガリウム結晶の製造方法としては、現在サファイアまたは炭化ケイ素等のような基板上にMOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)法による気相エピタキシャル成長を行う方法が最も一般的である。しかし、この方法ではGaNの格子定数と熱膨張係数が異なる基板上にGaN結晶をヘテロエピタキシャル成長させるため、得られるGaN結晶に転位や格子欠陥が発生しやすく、青色レーザー等で応用可能な品質を得ることが困難であるという問題があった。
そこで、近年、前記方法に代わる、ホモエピタキシャル基板用の高品質な窒化ガリウムの塊状単結晶の新しい製造技術の確立が強く望まれている。かかる新しい窒化ガリウム結晶の製造方法の一つとして、アンモニアを溶媒とした窒化物の溶液成長方法(いわゆる、アモノサーマル法)が提案されている。R. Dwilinskiらは、100〜500MPaの高圧下、超臨界状態のアンモニアを溶媒とし、結晶化のための鉱化剤としてKNH2を用い、窒化ガリウム結晶を得ている(非特許文献1参照)。また、Kolisらは、240MPaの高圧下、超臨界状態のアンモニアを溶媒とし結晶化のための鉱化剤としてKNH2およびKIを用い、窒化ガリウム結晶を得ている(非特許文献2参照)。また、Chenらは、Ptでライニングした反応容器を用いて、約200MPaの高圧下、超臨界状態のアンモニアを溶媒とし、結晶化のための鉱化剤としてNH4Clを用い、窒化ガリウム結晶を得ている(非特許文献3参照)。
これら窒化ガリウム結晶の製造方法においては、耐圧性の反応容器(例えばオートクレーブ等)をまず冷却し、冷却後にアンモニアを充填することが行われている。反応容器へのアンモニアの充填方法としては、例えば、反応容器を外部から液体窒素、ドライアイス入りメタノール等の冷媒によって冷却し、ガスアンモニアを凝縮しながら充填する方法がある(例えば、特許文献1および2参照)。しかし、これらの冷却方法は、充填精度が低いという問題があり、また、大型の反応容器へ適用しようとすると、熱容量の大きな圧力容器全体を容器外部から冷却するため、冷却設備や移動型の設備等に対するコストの点で不利となる。
また、液化アンモニアを直接容器に充填する方法が知られている(例えば、非特許文献4参照)。この方法によれば、充填の際に液化アンモニアが気化する際の潜熱により、容器を冷却することができる。このため、容器を予め冷却する必要がなく、室温でアンモニアの充填も可能である。しかし、液体のアンモニアを直接充填すると、アンモニア中に存在する不純物のため、アンモニアの純度が悪くなってしまう。
また、プランジャーポンプによってアンモニアを充填する方法も知られている。しかし、高圧設備が必要となり、充填精度を高めることが難しい。さらに、ポンプや配管から不純物がアンモニア中に混入する可能性が高く、充填したアンモニアの純度を高めることが困難である。
特開2005−289797号公報 特開平9−273837号公報 R. Dwilinski etal., ACTA PHYSICA POLONICA A Vol.88(1995) 833頁 Kolis etal., J. Crystal Growth 222 (2001) 431頁 Chen etal., J. Crystal Growth 209 (2000) 208頁 下光太郎著、「液安有機化学」技報堂(1957年)
上述のように、従来のアンモニアの充填方法は、大型の反応容器に適用した際にエネルギーや費用面で改善点が多くあった。特に、アモノサーマル法を用いた窒化物結晶の製造方法においては、大型炉にも容易に適用することができ、充填精度が高いことが求められる。
アモノサーマル法を用いた窒化物結晶の製造方法においては、例えば、内容積が110リットルで12tを超えるような大型の炉が用いられることがある。大型炉の場合には、圧力容器となる炉の移動が困難であり、冷却槽による冷却にも向いていない。また、大型炉の場合には、炉自体の熱容量が大きくなり、冷却には大きなエネルギーが必要となる。このような大型炉を用いた場合にも、安全に、高純度のアンモニアを精度よく充填する方法が求められている。
また、窒化物結晶の製造方法においては、反応容器へのアンモニアの充填精度が特に重要となる。これは、窒化物結晶の結晶育成圧力が、アンモニアの充填率と温度とで決定されるためであり、例えば、充填率が1%変わると、結晶の育成圧力は約4.5MPaも変化してしまう。このため、アンモニアを精度良く充填できなければ反応容器内の到達圧力を予測することが難しくなり、運転条件の適正化などが困難になる。
これらの諸問題を解決すべく、本発明は、冷却設備を用いることなく容器を冷却し、高純度のアンモニアを高い精度で該容器に充填することができる液化アンモニアの充填方法、および、これを利用した窒化物結晶の製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題は、以下の本発明により達成される。
(1) 凝縮器と容器とそれらを結ぶ配管を少なくとも備えるアンモニア充填装置を用いて液化アンモニアを容器に充填する方法であって、
前記凝縮器にガスアンモニアを供給する供給工程と、
前記凝縮器において前記ガスアンモニアを液化アンモニアにする液化工程と、
前記凝縮器において生じた液化アンモニアを前記容器に供給して、前記容器内に液化アンモニアを充填する充填工程と、
前記容器への液化アンモニアの出入りを停止した状態で、前記アンモニア充填装置内に存在する総アンモニア量M1と前記容器以外の前記アンモニア充填装置内に存在するアンモニア量M2を求める計測工程と、
前記計測工程において求めたM1とM2の差(M1−M2)と、容器内への液化アンモニア予定充填量(MC)との差(M1−M2−MC)に相当する量の液化アンモニアを前記容器から排出する充填量調整工程と、
を含むことを特徴とする液化アンモニアの充填方法。
(2) 前記アンモニア充填装置内に存在する総アンモニア量M1を、前記アンモニア充填装置に供給した総アンモニア量(Min)と、前記アンモニア充填装置から排出された総アンモニア量(Mout)とを計測し、それらの差(Min−Mout)を計算することにより求めることを特徴とする(1)に記載の液化アンモニアの充填方法。
(3) 前記容器以外の前記アンモニア充填装置内に存在するアンモニア量M2を、前記アンモニア充填装置の前記容器以外の領域に存在するアンモニアを前記アンモニア充填装置外に排出しながら計測することを特徴とする(1)または(2)に記載の液化アンモニアの充填方法。
(4) 前記アンモニア充填装置が装置内へのガスアンモニア導入量を計測するための第1質量流量計を備えていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の液化アンモニアの充填方法。
(5) 前記第1質量流量計によって、前記アンモニア充填装置に供給した総アンモニア量(Min)を計測することを特徴とする(4)に記載の液化アンモニアの充填方法。
(6) 前記アンモニア充填装置が装置外へのガスアンモニア排出量を計測するための第2質量流量計を備えていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の液化アンモニアの充填方法。
(7) 前記第2質量流量計によって、前記アンモニア充填装置から排出した総アンモニア量(Mout)を計測することを特徴とする(6)に記載の液化アンモニアの充填方法。
(8) 前記第2質量流量計によって、前記充填量調整工程において前記容器から排出したアンモニア量を計測することを特徴とする(6)または(7)に記載の液化アンモニアの充填方法。
(9) 前記充填工程において、前記凝縮器において生じた液化アンモニアを前記容器に供給しながら前記液化アンモニアの気化による潜熱によって前記容器の冷却も行うことを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の液化アンモニアの充填方法。
(10) 前記気化により生じたガスアンモニアを前記アンモニア充填装置外に排出することを特徴とする(9)に記載の液化アンモニアの充填方法。
(11) 前記気化により生じたガスアンモニアを前記凝縮器に循環させることを特徴とする(9)に記載の液化アンモニアの充填方法。
(12) 前記循環を行っている間は前記アンモニア充填装置内にガスアンモニアを新たに供給しないことを特徴とする(11)に記載の液化アンモニアの充填方法。
(13) 前記容器は、前記液化アンモニアが供給される供給口と、前記ガスアンモニアを容器外に排出する排出口とを有することを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の液化アンモニアの充填方法。
(14) 前記容器は、前記液化アンモニアを供給し且つ前記ガスアンモニアを容器外に排出するための送通口を1つ有することを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の液化アンモニアの充填方法。
(15) 原料を備えた容器に(1)〜(14)のいずれかに記載の液化アンモニアの充填方法によって液化アンモニアを充填するアンモニア充填工程と、
前記アンモニア充填工程において液化アンモニアを充填した前記容器を昇温し、窒化物結晶を生成する結晶化工程と、
を含むことを特徴とする窒化物結晶の製造方法。
(16) 前記結晶化工程において少なくとも前記容器内を20〜500MPaに保持することを特徴とする(15)に記載の窒化物結晶の製造方法。
(17) 前記結晶化工程において少なくとも前記容器内を150〜800℃に昇温することを特徴とする(15)または(16)に記載の窒化物結晶の製造方法。
(18) 前記容器内に少なくとも1種類の添加物を添加する工程を含むことを特徴とする(15)〜(17)のいずれかに記載の窒化物結晶の製造方法。
(19) 前記添加物が少なくとも1種類のハロゲン原子を含むことを特徴とする(18)に記載の窒化物結晶の製造方法。
(20) 前記原料中の酸素含有量が5質量%以下であることを特徴とする(15)〜(19)のいずれかに記載の窒化物結晶の製造方法。
(21) 前記原料中に窒化ガリウムを含有することを特徴とする(15)〜(20)のいずれかに記載の窒化物結晶の製造方法。
(22) 前記容器内に少なくとも1種類の種結晶を設置し、前記結晶化工程においてアンモニアに溶解した前記原料が前記種結晶上に析出することを特徴とする(15)〜(21)のいずれかに記載の窒化物結晶の製造方法。
本発明によれば、高純度のアンモニアを高い精度で充填することができる液化アンモニアの充填方法、および、これを利用した窒化物結晶の製造方法を提供することができる。また、本発明の液化アンモニアの充填方法は、冷却設備を用いる従来法に比べて設備や稼働のコストを抑えることができる。
以下において、本発明の窒化物結晶の製造方法と製造装置について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(本発明の特徴と応用)
本発明の液化アンモニアの充填方法は、凝縮器と容器とそれらを結ぶ配管を少なくとも備えるアンモニア充填装置を用いて液化アンモニアを容器に充填する方法である。本発明の液化アンモニアの充填方法は、凝縮器にガスアンモニアを供給する供給工程と、前記凝縮器において前記ガスアンモニアを液化アンモニアにする液化工程と、前記凝縮器において生じた液化アンモニアを前記容器に供給して、前記容器内に液化アンモニアを充填する充填工程と、前記容器への液化アンモニアの出入りを停止した状態で、前記アンモニア充填装置内に存在する総アンモニア量M1と前記容器以外の前記アンモニア充填装置内に存在するアンモニア量M2を求める計測工程と、前記計測工程において求めたM1とM2の差(M1−M2)と、容器内への液化アンモニア予定充填量(MC)との差(M1−M2−MC)に相当する量の液化アンモニアを前記容器から排出する充填量調整工程とを含む。
本発明の液化アンモニアの充填方法では、まず、凝縮器にガスアンモニアを供給して液化アンモニアを生成し、これを容器に供給する。容器に充填されるアンモニアは、元々凝縮器に気体として供給されていることから、液化アンモニアを直接容器に充填する場合に比して、H2O、CO、金属などの不純物が少ない。このため、本発明の液化アンモニアの充填方法によれば、高純度のアンモニアを充填することができる。
本発明の液化アンモニアの充填方法では、計測工程において、アンモニア充填装置内に存在する総アンモニア量M1と前記容器以外の前記アンモニア充填装置内に存在するアンモニア量M2を求める。この計測は、凝縮器に供給するガスアンモニア量(アンモニア充填装置に供給するガスアンモニア)を制御・計測することができる第1質量流量計と、アンモニア充填装置から装置外へ排出するガスアンモニア量を制御・計測することができる第2質量流量計とを用いて、好ましく実施することができる。質量流量計を用いれば、ガスアンモニアの圧力や温度に影響を受けることなく、アンモニア量を計測することができる。
アンモニア充填装置内に存在する総アンモニア量M1は、アンモニア充填装置に供給した総アンモニア量(Min)と、アンモニア充填装置から排出された総アンモニア量(Mout)とを各質量流量計で計測し、それらの差(Min−Mout)を計算することにより求めることができる。また、容器以外のアンモニア充填装置内に存在するアンモニア量M2は、容器へガスアンモニアを充填した後に容器のバルブを閉めて、アンモニア充填装置の容器以外の領域(すなわち、配管内や凝集器内)に残存しているアンモニアをガスアンモニアとしてすべて吸引排気しながら第2質量流量計により好ましく計測することができる。
本発明の液化アンモニアの充填方法は、計測工程の後に、M1とM2の差(M1−M2)と、容器内への液化アンモニア予定充填量(MC)との差(M1−M2−MC)に相当する量の液化アンモニアを前記容器から排出する充填量調整工程を実施することを特徴とする。この工程は、容器から第2質量流量計を経由してアンモニア充填装置外へ排出されるガスアンモニア量が(M1−M2−MC)になるように、あらかじめ第2質量流量計を設定しておくことにより好ましく実施することができる。このようにして、本発明の液化アンモニアの充填方法により、容器に精度良くガスアンモニアを充填することができる。
本発明の液化アンモニアの充填方法は、窒化物結晶の製造方法に好適に用いることができる。具体的には、耐圧性の容器(オートクレーブ)を用い、アモノサーマル法を利用した窒化物結晶の製造方法に好適に利用することができる。本発明の液化アンモニアの充填方法を利用した本発明の窒化物結晶の製造方法は、原料を備えた容器に本発明の液化アンモニアの充填方法によって液化アンモニアを充填するアンモニア充填工程と、前記アンモニア充填工程において液化アンモニアを充填した前記容器を昇温し、窒化物結晶を生成する結晶化工程と、を含む。本発明の窒化物結晶の製造方法によれば、本発明の液化アンモニアの充填方法を利用することで、高純度のアンモニアを高い精度で充填することができることから、窒化物結晶を生成する際の、結晶育成圧力を精度よく制御することができる。これにより、容器内の到達圧力を制御することもでき、運転条件の適正化や装置および工程の安全性を向上させることができる。
(液化アンモニアの充填方法の実施態様)
以下、図を用いて、本発明の液化アンモニアの充填方法を用いた窒化物結晶の製造方法について説明する。尚、本発明はこの形態に限定されるものでない。図1は、本発明に用いられる液化アンモニア充填装置を示す概略図である。図1に示すように、液化アンモニア充填装置は、アンモニアボンベ1と、コンデンサー(凝縮器)2と、耐圧性を有するオートクレーブ(反応容器)3と、を備えて構成される。オートクレーブ3には、アンモニア供給口4と、アンモニア排出口5と、オートクレーブ内の温度および/または圧力を測定するためのセンサ6と、が設けられている。更に、図1に示される液化アンモニア充填装置には、アンモニアを系外に排出するためのアンモニア除去塔7が設けられている。
アンモニアボンベ1には、液化アンモニアが充填されている。アンモニアボンベ1からは、ガスアンモニアが系内へ供給される。図1に示すように、アンモニアボンベ1と、コンデンサー2との間には、マスフローコントローラ(質量流量計)MFC1が備えられている。マスフローコントローラは、温度および圧力を考慮した質量測定装置であり、熱拡散作用を利用することにより、ガスアンモニアの温度および圧力の変動にかかわらず、ガスアンモニアの流量を測定したり積算したりすることができる。また、マスフローコントローラMFC1の開度を調整することにより、ガスアンモニアの流量調整を行うこともできる。このため、マスフローコントローラMFC1を、必要とされるガスアンモニア量を供給した時点で閉状態にするように予め設定しておくことができる。マスフローコントローラとしては、流量精度が高いものを用いるのが好ましく、例えば、流量精度が±1%のものを用いることが好ましい。このようなマスフローコントローラとしては、例えば、コフロック社製のMODEL 3200を用いることができる。
アンモニアボンベ1と、コンデンサー2との間には、オンオフ弁であるバルブV1が設けられており、バルブを開状態にすることによりコンデンサー2にガスアンモニアを供給することができる。
コンデンサー2は、マスフローコントローラMFC1およびバルブV1を介して、アンモニアボンベ1から供給される気体状のガスアンモニアを凝縮し、液化アンモニアとする装置である。通常、アンモニアボンベ1等のボンベには、水分、油分、金属などのアンモニアよりも揮発度の低い不純物が含まれている。このため、一旦気化してガスアンモニアとすることで、系内に持ち込まれるアンモニアの純度を高めることができる。
コンデンサー2としては一般に気体を凝縮して液化するために用いられる凝縮器を用いることができる。コンデンサー2では、例えば熱交換器により気体を冷却し凝縮して液化することができる。このとき、圧力を高くすれば液化が容易になる。
また、コンデンサー2とオートクレーブ3との間にはコントロール弁であるバルブV2が備えられており、バルブ開閉の程度を制御することにより、アンモニア供給口4からオートクレーブ3に供給される液化アンモニア量を調整することができる。
オートクレーブ3には、原料が備えられており、本発明の液化アンモニアの充填方法によって、冷却された後、液化アンモニアが充填される。更に、液化アンモニアを充填した後、昇温され、その内部において窒化物結晶が生成される。尚、オートクレーブ3およびこれに備えられる原料等の詳細については、後述する。本発明では、原料が備えられていない容器にガスアンモニアを充填してもよい。
オートクレーブ3には、コンデンサー2により液化アンモニアが供給されるアンモニア供給口4と、オートクレーブ3内で生成したガスアンモニアを排出するためのアンモニア排出口5と、2つの開口部を有している。また、オートクレーブ3には、オートクレーブ3内の温度および/または圧力をモニタリングすることができるセンサ6が備えられている。
図1に示すように、オートクレーブ3のアンモニア排出口5に接続されている管は途中、コンデンサー2に繋がる管と、ガスアンモニアを系外に排出するためのアンモニア除去塔7とに繋がる管とに分かれている。オートクレーブ3とアンモニア除去塔7との間には、バルブV3、バルブV4およびマスフローコントローラMFC2とが備えられており、コンデンサー2に繋がる管にはバルブV5が備えられている。アンモニア除去塔7としては、公知のアンモニア除去塔を適宜適用することができる。
バルブV3はコントロール弁であり、その開閉の程度を制御することによりオートクレーブ3から排出されるガスアンモニアの流量を調整することができる。それによって、バルブV3から先の系内の圧力を制御することができる。圧力を制御する必要がないとき等は、全開状態にしておくこともできる。また、バルブV4はオンオフ弁であり、開状態にすることによってマスフローコントローラMFC2を通して系外へガスアンモニアを排出することができる。更に、マスフローコントローラMFC2は、バルブV4を通過し、アンモニア除去塔7へと排出されるガスアンモニアの流量を調整したり、測定・積算したりすることができる。このため、マスフローコントローラMFC2を、所定量のガスアンモニアが排出された時点で閉状態にするように予め設定しておくことができる。マスフローコントローラMFC2としては、上述のマスフローコントローラMFC1と同様の装置を用いることができる。
バルブV5は、他のバルブV1、V4と連動し、その開閉により、オートクレーブ3を冷却するためにアンモニアが系内を循環させるようにすることができる。ここで、図2に示すように、各バルブV1、V4、V5、マスフローコントローラMFC1、MFC2およびセンサ6は、それぞれ制御部8と電気的に接続されている。図2は、バルブV1、V4、V5、マスフローコントローラMFC1、MFC2およびセンサ6の電気的な構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御部8には、バルブV1、V4、V5が接続されており、制御部8から発信される信号に従って各バルブの開閉が調整できるように構成されている。また、制御部8には、マスフローコントローラMFC1、MFC2およびセンサ6(特に圧力センサ)が接続されており、各装置において測定された測定値を取り込むことができるとともに、これらの測定値に応じて、各バルブの開閉を制御できるように構成されている。例えば、センサ6の圧力値がある規定値を超えた場合にバルブV4とマスフローコントローラMFC2を開状態にして系内の圧力が高くなり過ぎないように制御している。
制御部8に接続されていないバルブV2とV3は手動弁(例えばニードル弁)とし、容器内への液化アンモニアの滴下や容器からのガスアンモニアの排出の制御が急激にならないように手動制御している。ただし、制御部8に、バルブV1〜V5のすべてを接続させたり、センサ6の温度センサとしての測定値を利用して制御したりすることも可能である。これらの改変は、当業者に自明の範囲内で適宜行うことができる。
本発明の液化アンモニアの充填方法は、まず、ガスアンモニアを凝縮器2に供給する供給工程と、凝縮器2においてガスアンモニアを液化する液化工程と、凝縮器2において生じた液化アンモニアをオートクレーブ3に供給してオートクレーブ3内に液化アンモニアを充填する充填工程と、オートクレーブ3への液化アンモニアの出入りを停止した状態で、アンモニア充填装置内に存在する総アンモニア量M1とオートクレーブ3以外のアンモニア充填装置内に存在するアンモニア量M2を求める計測工程と、計測工程において求めたM1とM2の差(M1−M2)と、オートクレーブ3内への液化アンモニア予定充填量(MC)との差(M1−M2−MC)に相当する量の液化アンモニアをオートクレーブ3から排出する充填量調整工程と、から構成される。
以下、各工程について図を用いて説明する。本発明の充填方法は、以下に記載する循環法やフロー法などにより実施することができる。循環法は、アンモニア供給量を抑えて、効率よく充填を行う方法であり、本発明者らにより新たに開発された方法である。フロー法は、操作を簡易化した充填方法である。本発明ではいずれの方法を採用してもよいが、より高い精度で効率よく液化アンモニアを充填できることから循環法を採用することがより好ましい。
なお、本発明の充填方法を実施する前に、アンモニア充填装置内を真空にして、水分や空気を除去しておくことが好ましい。すなわち、図1におけるアンモニア充填装置において、バルブV1とマスフローコントローラMFC1を閉状態とし、バルブV2〜V5とマスフローコントローラMFC2を開状態として、マスフローコントローラMFC2排出側から真空ポンプにて吸引し、アンモニア充填装置内を真空状態にする。その後、バルブV2〜V5とマスフローコントローラMFC2を閉じて、本発明の充填方法の供給工程を始める。
循環法
図3を用いて、供給工程におけるアンモニアの流通経路について説明する。図3は、供給工程時におけるバルブの開閉状態を示す概略図である。図3に示すように供給工程においては、少なくともバルブV2とバルブV4とが閉められている状態となっている。供給工程においては、始め閉じられていたバルブV1とマスフローコントローラMFC1を開くことにより、アンモニアボンベ1から排出されたガスアンモニアが、図3中のAで示される流れに従ってコンデンサー2に供給される。また、ガスアンモニアは図3中のA’で示される流れに従ってバルブV5およびバルブV3を通してオートクレーブ3内にも導かれる。系内が定常状態になった後は、図3中のAで示される流れがガスアンモニアの主たる流路となる。供給工程におけるガスアンモニアの供給量は、予めマスフローコントローラMFC1に設定しておき、所定の供給量を供給した時点で閉状態となるようにしておくことができる。なお、供給工程におけるガスアンモニアの流速は、コンデンサー2の液化能力以下に抑えることが好ましい。ガスアンモニアの流速も、マスフローコントローラMFC1により調整することができる。
コンデンサー2に供給されたガスアンモニアは、コンデンサー2中で凝縮され、液化アンモニアとなり、バルブV2とコンデンサー2との間(図3におけるB)に蓄積される。液化アンモニアの蓄積は、マスフローコントローラMFC1によって計測している流量が、予め定められた値に達するまで続けられる。この際、蓄積される液化アンモニア量は、結晶の育成に必要な量の他、充填調整量および配管残存量を考慮して定めることができる。
次に、図4に示すバルブの開閉状態にして、液化アンモニアをオートクレーブ3内に供給してその気化潜熱によってオートクレーブ3を冷却するとともに、オートクレーブ3内で発生したガスアンモニアを再び液化するためにコンデンサー2へ循環させる(循環冷却工程)。制御部8により、供給工程を終了し循環冷却工程へ移行すると判断された場合には、バルブV1とバルブV4とが閉状態とされ、バルブV3およびV5が開状態とされる。また、バルブV2は、循環冷却工程の開始前には閉じられている。循環冷却工程においては、まず、バルブV2を徐々に開き、アンモニア供給口4から液化アンモニアをオートクレーブ3内に供給する。この際、系内の圧力が0.2MPaG以下になるようにバルブV2の開閉状態を制御するのが好ましい。
オートクレーブ3に供給された液化アンモニアは、すぐに気化し、その潜熱よってオートクレーブ3が徐々に冷却される。このように、本発明の液化アンモニアの充填方法によれば、オートクレーブ3を内側から冷却することで、効率的にオートクレーブ3を冷却することができる。
オートクレーブ3において、液化アンモニアの気化によって生じたガスアンモニアは、アンモニア排出口5より排出され、図4においてCで示される流れに従って、バルブV5を通過しながらコンデンサー2に供給される。コンデンサー2に供給されたガスアンモニアは再び液化され、再びオートクレーブ3に供給される。このように、コンデンサー2側からオートクレーブ3への液化アンモニアの供給と、オートクレーブ3側からコンデンサー2へのガスアンモニアの供給とがバランスよく繰り返される。このアンモニアの循環により、オートクレーブ3が冷却される。
オートクレーブ3が、充填圧力におけるアンモニアの沸点にまで冷却されると、オートクレーブ3内に液化アンモニアが充填されはじめる。アンモニアの沸点は、具体的には、オートクレーブ3内の圧力が0.1MPaGの場合には約−19℃であり、0.2MPaGの場合には、約−9℃となる。オートクレーブ3の温度が−10℃程度にまで冷却されると、アンモニアの蒸気圧が下がり、液化工程において蓄積されたアンモニアの大部分がオートクレーブ3に充填される。このため、オートクレーブ3内の充填圧力を0.2MPaと設定したときには、オートクレーブ3の温度が−10℃となったことを確認し、バルブV2およびV3を閉状態として、アンモニアの充填を完了することができる。
充填工程における液化アンモニアの充填量は、オートクレーブ3内へ充填することを予定している予定充填量(MC)よりも多くなるようにする。充填工程終了時点では、実際にオートクレーブ3内に充填された液化アンモニア量が予定充填量(MC)よりもどの程度多いのかを正確に把握することはできないため、実際の充填工程における充填量は、マスフローコントローラMFC1で計測されるガスアンモニア供給量やオートクレーブ3の温度などを勘案して決めることができる。
本発明の液化アンモニアの充填方法では、アンモニアの充填精度を高めるために、充填工程の後に計測工程と充填量調整工程を実施する。
計測工程では、図5に示すように、バルブV1、V2、V3とマスフローコントローラMFC1を閉状態とし、バルブV4、V5とマスフローコントローラMFC2を開状態として、Dの流れにしたがってガスアンモニアを排出する。ガスアンモニアの排出を完全に行うために、マスフローコントローラMFC2排出側から真空ポンプにより吸引する。吸引はマスフローコントローラMFC2の流量が下がってから行ってもよい。ガスアンモニアの排出量はマスフローコントローラMFC2で計測し、コンデンサー2および配管に残っていたアンモニア量(すなわち、オートクレーブ3以外のアンモニア充填装置内に存在するアンモニア量M2)とする。オートクレーブ3以外のアンモニア充填装置内に存在するアンモニア量M2は、アンモニア充填装置の温度やチラー温度などの影響を受けやすく変動しやすいものであるため、充填工程における液化アンモニアの充填量は、この変動分を勘案した量に設定することが好ましい。なお、充填工程までにアンモニア充填装置内に供給した総アンモニア量は、マスフローコントローラMFC1の通過ガスアンモニア量を確認することにより知ることができ、これをアンモニア充填装置内に存在する総アンモニア量M1とすることができる。
次に、充填量調整工程では、計測工程で得られたM1とM2の値を用いて、M1−M2を計算することによりオートクレーブ3内に充填されている液化アンモニア量を得る。その量と予定充填量(MC)との差(M1−M2−MC)がオートクレーブ3内に過剰に充填されている液化アンモニア量となるため、充填量調整工程において(M1−M2−MC)に相当する液化アンモニアをオートクレーブ3から排出する。厳密には、マスフローコントローラMFC1とバルブV1との間に存在するガスアンモニア量をM1−M2−MCからさらに差し引いた量をオートクレーブ3から排出すべきであるが、マスフローコントローラMFC1とバルブV1との間に存在するガスアンモニア量は、マスフローコントローラMFC1とバルブV1との間の距離を短くすることにより実質的に無視することができる。あるいは、マスフローコントローラMFC1とバルブV1との間に存在するガスアンモニア量をあらかじめ見積もっておき、M1−M2−MCからその量をさらに差し引いた量をオートクレーブ3から排出するようにしてもよい。このような改変も本発明の範囲内に含まれる。
図6は、充填量調整工程時におけるバルブの開閉状態を示す概略図である。充填量調整工程へ移行する際には、バルブV1、V2、V5とマスフローコントローラMFC1を閉状態とし、バルブV3、V4とマスフローコントローラMFC2を開状態とする。すると、オートクレーブ3中のガスアンモニアが、図6に示すEの流れに従って、アンモニア除去塔7に排出し、水に吸収され回収される。制御部8は、マスフローコントローラMFC2によって系外に排出されるガスアンモニア量を計測し、予め設定した過剰量のアンモニア(M1−M2−MC)を排出したと制御部8が判断した際には、バルブV3およびV4を閉じて調整工程を終了する。
本発明の液化アンモニアの充填方法の流れの一例について図7を用いて説明する。図7は、本発明の液化アンモニアの充填方法を説明するための流れ図である。まず、制御部8は、供給工程および液化工程において液化アンモニアを蓄積するために、各バルブを供給工程の配置(少なくともバルブV2およびV4が閉状態)に調整する。制御部8は、各バルブの調整後、バルブV1の開閉により、徐々にコンデンサー2にガスアンモニアを供給する(ステップS100)。
次いで、制御部8は、マスフローコントローラMFC1により測定したガスアンモニアの供給量が設定値に達しているか否かを判断する(ステップS101)。制御部8が、未だガスアンモニアの供給量が設定値に達していないと判断した場合には(ステップS101否定)、ステップS100の処理を繰り返し、コンデンサー2にガスアンモニアを供給し続ける。一方、制御部8が、ガスアンモニアの供給量が設定値に達したと判断した場合には(ステップS101肯定)、ステップS102へと移行し、各バルブを循環冷却工程の配置(バルブV1およびV4が閉状態、バルブV2、V3、V5が開状態)に切り替える(ステップS102)。尚、バルブV2は、循環冷却工程の開始前には閉じられている。
循環冷却工程においては、アンモニアを循環させ、液化アンモニアの気化潜熱を利用してオートクレーブ3を冷却する(ステップS103)。次いで、オートクレーブ3がアンモニアの沸点にまで冷却されると、アンモニアの気化が収まり、オートクレーブ3中に液化アンモニアが充填される(ステップS104)。このとき、オートクレーブ3の冷却と液化アンモニアの充填が同時に進行してもよい。制御部8は、所望の充填量に達した後(例えば、オートクレーブ3の温度が−10℃になったと判断した場合)、バルブV2およびバルブ3を閉じて、充填工程を終了する。充填工程完了後、バルブV1〜V3を閉状態として、マスフローコントローラMFC2排出側から真空ポンプで吸引し、配管内やコンデンサー内に残存しているアンモニア量を計測する。その計測量と、マスフローコントローラMFC1およびMFC2の計測量に基づいて、オートクレーブ3から排出すべきアンモニア量が計算され、その量がマスフローコントローラMFC2に設定される。各バルブを制御して充填量調整工程の配置(バルブV1、V2およびV5が閉状態、バルブV3およびV4が開状態)とし、オートクレーブ3内の余剰のアンモニアをアンモニア除去塔7より排出する(ステップS105)。
フロー法
次に、フロー法について説明する。フロー法では、充填工程のバルブ開閉状態が循環工程と異なるが、供給工程、液化工程、計測工程および充填量調整工程は循環法と同じである。
図8は、フロー法の充填工程におけるバルブ開閉状態を示す図である。フロー法の充填工程では、液化アンモニアをオートクレーブ3内に供給してその気化潜熱によってオートクレーブ3を冷却し、液化アンモニアを充填するとともに、オートクレーブ3内で発生したガスアンモニアをアンモニア充填装置外へ排出させる。すなわち、充填工程では、バルブV3およびV4、マスフローコントローラMFC2を開状態にして排出ラインを確保してから、バルブV2を徐々に開いて、アンモニア供給口4から液化アンモニアをオートクレーブ3内に供給する。
オートクレーブ3に供給された液化アンモニアは、すぐに気化し、その潜熱よってオートクレーブ3が徐々に冷却される。オートクレーブ3において、液化アンモニアの気化によって生じたガスアンモニアは、アンモニア排出口5より排出され、図8に示される流れに従って、バルブV4、マスフローコントローラMFC2を通過してアンモニア除去塔7に導かれる。マスフローコントローラMFC1とバルブV1およびV2は、供給工程と液化工程であらかじめ開状態になっているため、これらを経由してアンモニア供給口4から液化アンモニアが連続的にオートクレーブ3内に供給される。このとき、マスフローコントローラMFC1とマスフローコントローラMFC2を同じ流速に保っておき、バルブV2とコンデンサー2との間に蓄積される液化アンモニア量を常に一定量に維持しておくことが好ましい。オートクレーブ3は、充填圧力におけるアンモニアの沸点にまで冷却されると、オートクレーブ3内に液化アンモニアが充填されはじめる。予定充填量(MC)よい多い量が充填されたところで、バルブV2およびV3を閉状態として、アンモニアの充填を完了する。
充填後は、循環法と同様にして計測工程および充填量調整工程を行う。ただし、アンモニア充填装置内に存在する総アンモニア量M1は、マスフローコントローラMFC1で計測されるアンモニア充填量からマスフローコントローラMFC2で計測されるアンモニア排出量を差し引くことにより得られる。
このように、本発明によれば高純度のアンモニアを高い精度で充填することができる。また、本発明の液化アンモニアの充填方法によれば、内側より容器を冷却するため、冷却効率に優れている。本発明の液化アンモニアの充填方法においては、低圧でアンモニアの充填を行うことができることから、オートクレーブが設備耐圧程度の耐圧性を有する程度であっても実施可能であり、安全面においてもメリットを有する。さらに、循環法によれば、少ないアンモニア量で容器(オートクレーブ3)を冷却することができて効率がよい。また、フロー法によれば、簡易な操作により容易に充填することができる。
(窒化物結晶の製造方法)
次に、本発明の窒化物結晶の製造方法で用いられる原料、溶媒、容器および本発明で得られる窒化物結晶について適宜図面を参照しながら説明する。
図9は、本発明の窒化物結晶の製造方法で用いられるオートクレーブの概略図である。図9に示されるオートクレーブは、図1等に用いられているオートクレーブ3と同様のものを表し、同様の部材については同様の符号を付し、その説明を省略する。図9に示すように、オートクレーブ3は、結晶育成部3Aと、原料充填部3Bとを備え、図1等では省略されていが、電気炉9によって周りを囲われている。本発明の液化アンモニアの充填方法に用いられるオートクレーブ(窒化物結晶成長用反応容器)3は、耐圧性を有する密閉可能な容器あって、更に、バルブを有する少なくとも1つの送通手段(送通口)を有する。好ましいのは、送通手段(送通口)が1つまたは2つである場合である。1つの送通手段を有するオートクレーブを用いる場合は、オートクレーブ内に還流状態を形成することにより、液化アンモニアの充填とガスアンモニアの排出を良好に行うことができる。還流状態を形成するためには、送通口の内径が大きいことが好ましい。また、2つの送通手段(アンモニア供給口4およびアンモニア排出口5)を有するオートクレーブを用いる場合は、オートクレーブ内に還流状態が形成されていなくても、液化アンモニアの充填とガスアンモニアの排出を同時に行うことができる。特に送通口の内径が小さい場合は、2つの送通手段を有するオートクレーブを用いることが好ましい。
オートクレーブ3の構造について説明する。オートクレーブは、通常、蓋体と容体のように分離されており、ガスケット等を用いて封止されている。また、熱電対等を挿入するための凹部を有していてもよい。
オートクレーブ3は昇温反応中に超臨界溶媒(例えば、超臨界アンモニア)の超高圧に相当する圧力に耐え得るものであることが好ましい。オートクレーブを形成する材料としては、耐圧性を有し、耐浸食性を有するものであれば特に制限はなく用いることができる。特に、高温高圧に耐え、かつ、アンモニアに対する高い耐浸食性を示すNi系の合金、ステライト(デロロ・ステライト・カンパニー・インコーポレーテッドの登録商標)等のCo系合金を用いることが好ましく、Ni系の合金を用いることが特に好ましい。具体的な材料としては、Inconel625(Inconelはハンティントン アロイズ カナダ リミテッドの登録商標。以下同じ)、Nimonic90(Nimonicはスペシャル メタルズ ウィギン リミテッドの登録商標。以下同じ)、RENE41等が挙げられる。
これらの合金の組成比率は、オートクレーブ内の溶媒の温度・圧力の条件およびオートクレーブ内に含まれる前記各種の鉱化剤およびそれらの反応物との反応性および/または酸化力・還元力、pHの条件に従い、適宜選択すればよい。これらをオートクレーブの内面を構成する材料として用いる方法としては、オートクレーブ自体をこれらの合金を用いて製造する方法や、内筒として薄膜を形成してオートクレーブ内に設置する方法でもよく、任意のオートクレーブ3の材料の内面にメッキ処理を施す方法でもよい。
オートクレーブ3の耐浸食性をより向上させるため、貴金属の優れた耐浸食性を利用して、貴金属をオートクレーブ3の内表面にライニングまたはコーティングしてもよい。また、オートクレーブの材質自体を貴金属とすることもできる。前記貴金属としてはPt、Au、Ir、Ru、Rh、Pd、Ag、Osならびにこれらの貴金属を主成分とする合金が挙げられ、中でも優れた耐浸食性を有するPtを用いることが好ましい。
オートクレーブの内表面を貴金属でライニングまたはコーティングする場合、内表面全てをライニングまたはコーティングすることが困難である場合には、オートクレーブの上部の一部および/または下部の一部にライニングまたはコーティングすることができない部分が存してもよい。
オートクレーブは、所要に応じて、内部にバッフル板を設置され、GaN多結晶窒化物等からなる原料を充填した原料充填部3BとGaN等の種結晶を配置する結晶成長部3Aとに区画される。尚、本発明におけるオートクレーブとしては、特開2005−289797号公報に記載されるような、貴金属によって形成された容器を耐熱性の容器に収納した形態のオートクレーブを用いてもよい。
本発明で用いられる窒化物結晶の製造原料は、通常、窒化物の多結晶粉末原料(以下「多結晶原料」という)であり、好ましくは窒化ガリウムを含有する原料である。多結晶原料は、完全な窒化物である必要はなく、条件によっては、メタル状態(すなわちゼロ価)の金属成分を含有することもできる。メタル状金属成分を含有可能な理由は定かではないが、反応系に微量の酸素が混入した場合に、メタル状金属成分が、窒素含有溶媒中で酸素が拡散するのを防止する酸素トラップ剤のような役割を果たしていると推測される。また、メタル状金属成分の含有量は特に制限はないが、多すぎると窒化物結晶成長時のメタル成分の酸化に伴うアンモニアからの水素の発生が無視できなくなることを考慮して含有量を決定することが好ましい。
原料となる多結晶原料の製造方法は特に制限されない。例えば、アンモニアガスを流通させた容器内で、金属またはその酸化物もしくは水酸化物をアンモニアと反応させることにより生成した窒化物多結晶を用いることができる。また、より反応性の高い金属化合物原料として、ハロゲン化物、アミド化合物、イミド化合物、ガラザンなどの共有結合性M−N結合を有する化合物などを用いることができる。さらに、Gaなどの金属を高温高圧で窒素と反応させて作製した窒化物多結晶(例えばGaN)を用いることもできる。
前記多結晶原料は、これを結晶成長させて高品質な結晶を得るために、できるだけ水や酸素の混入を回避すべきである。そのために、多結晶原料中の酸素含有量は、通常5質量%以下、好ましくは2質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。多結晶原料への酸素の混入しやすさは、水分との反応性または吸収能との関連がある。多結晶原料の結晶性が悪いほど表面等にNH基などの活性基が多く存在し、それが水と反応して一部酸化物や水酸化物が生成する可能性があるためである。このため、多結晶原料としては、通常、できるだけ結晶性が高いものを使用することが望ましく、該結晶性は粉末X線回折の半値幅で見積もることができる。好ましい多結晶原料は、(100)の回折線(ヘキサゴナル型窒化ガリウムでは2θ=約32.5°)の半値幅が、通常0.25°以下、好ましくは0.20°以下、さらに好ましくは0.17°以下である。
多結晶原料の1次粒子の粒径は、平均粒径1〜100μmの範囲であることが好ましい。粒径が小さいものほど比表面積が大きくなり、溶媒への溶解速度が大きくなるので好ましいが、粒径が小さすぎると、粒子が熱対流より反応器の結晶育成部に輸送され、種結晶を用いた場合は種結晶上に付着するおそれがある。
また、平均粒径の異なる2種の多結晶原料を用いることにより、小さい粒径の多結晶原料による速い溶解速度と、大きい粒径の遅い溶解速度のものがオートクレーブ内に混在することによりGa(含有)イオンなどの結晶育成部への供給切れを抑止し、その結果、特に種結晶を用いた場合に、種結晶の溶出という塊状単結晶の育成上の不利益を抑止することもできる。
多結晶原料の形状は、特に限定されるものではないが、溶媒への溶解均一性を考慮した場合、通常、2次粒子の形状として球状であることが好ましい。また、充填量を稼ぐため、または熱対流による粒子の移動を防ぐために、多結晶原料の形状をペレット状やブロック状にすることもできる。
多結晶原料は、通常、鉱化剤と呼ばれる添加物と混合した後で溶液成長に基づく結晶化工程に供される。鉱化剤は、多結晶原料の溶媒への溶解性を高めることができる添加物である。鉱化剤は、1種類を用いるほか、必要に応じて共鉱化剤としてもう1種類を共存させたり、2種類以上を混合して用いたりすること可能である。多結晶原料と鉱化剤の添加量の比は、例えば、GaNの場合、鉱化剤/Gaモル比として、通常0.001〜10の範囲で、原料、鉱化剤等の添加物の種類および目的とする結晶の大きさなどを考慮して適宜選択できる。
鉱化剤は、通常、ハロゲン原子またはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属を含む化合物である。中でも、鉱化剤はアンモニウムイオンやアミドなどの形で窒素原子を含むものが好ましい。ハロゲン原子を含む鉱化剤の例としては、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化水素、アンモニウムヘキサハロシリケート、およびヒドロカルビルアンモニウムフルオリドや、ハロゲン化テトラメチルアンモニウム、ハロゲン化テトラエチルアンモニウム、ハロゲン化ベンジルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化ジプロピルアンモニウム、およびハロゲン化イソプロピルアンモニウムなどのアルキルアンモニウム塩、フッ化アルキルナトリウムのようなハロゲン化アルキル金属等が例示される。
また、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属を含む鉱化剤としては、アルカリ金属メタル、アルカリ土類金属メタル、ハロゲン化アルカリ、アルカリ土類、希土類のハロゲン化物などが挙げられる。アルカリ、アルカリ土類、希土類の炭酸塩のようなオキソ酸塩も使用可能であるが、生成する結晶が酸素を含まないようにする観点からは、アンモニウムイオンやアミドなどの形で窒素原子を含むものを鉱化剤として使用することが好ましい。窒化物結晶への不純物の混入を防ぐため、必要な場合は鉱化剤を精製、乾燥することが行われる。鉱化剤の純度は、通常95%以上、好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、得に好ましくは99.5%以上である。鉱化剤が含む水や酸素はできるだけ少なくすることが望ましく、好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下である。
アルカリ金属等と窒素原子を含む鉱化剤の具体例としては、ナトリウムアミド(NaNH2)、カリウムアミド(KNH2)、リチウムアミド(LiNH2)、リチウムジエチルアミド((C252NLi)等のアルカリ金属アミドや、Mg(NH22などのアルカリ土類金属アミド、La(NH23などの希土類アミド、Li3N、Mg32、Ca32、Na3N等の窒化アルカリ金属または窒化アルカリ土類金属、NaN3等のアジド化合物、窒化亜鉛(Zn32)等が挙げられる。その他、NH2NH3Clのようなヒドラジン類の塩、炭酸アンモニウム((NH42CO3)、カルバミン酸アンモニウム(NH2COONH4)が挙げられる。
このうち、好ましくはハロゲン原子を含む添加物(鉱化剤)であるハロゲン化アルカリ、アルカリ土類のハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化水素であり、さらに好ましくはハロゲン化アルカリ、ハロゲン化アンモニウムであり、特に好ましくはハロゲン化アンモニウムである。これらの添加物は、超臨界状態のアンモニア溶媒への溶解性が高く、またアンモニア中において窒化能を有し、かつPt等の貴金属に対する反応性が小さい。これらの添加物は、1種類を用いてもよいし、2種類以上の化合物を組み合わせて用いてもかまわない。これらの添加物を用いることによって原料の溶解が促進され、反応条件の適切なコントロールにより、短期間に高品質なサイズの大きい窒化物の塊状結晶が得られる。
本発明では、前記のように混合された多結晶原料と鉱化剤等の添加物は、オートクレーブ3内に充填されるが、特に必要でなければ、多結晶原料と1種類以上の鉱化剤等の添加物を別々にオートクレーブ3内に充填してもかまわない。原料や鉱化剤等の添加物の種類によっては、オートクレーブ3を密閉した後に、アンモニア供給口4等から気体、液体や溶媒に溶かした状態でオートクレーブ3内に充填することもできる。
多結晶原料や鉱化剤等の添加物が吸湿しやすい等の理由がある場合、多結晶原料および鉱化剤は、充填する前に加熱脱気するなどして十分乾燥することが望ましい。さらに、分解性の高い鉱化剤と多結晶原料を混合充填する場合には、酸素や水分を極力排除した雰囲気下で速やかに行うことが望ましい。例えば、不活性ガスを満たした容器または部屋内において、容器の内部を不活性ガスで十分置換した後に、分解性の高い鉱化剤と多結晶原料を充填することができる。
多結晶原料と鉱化剤等の添加物を混合してオートクレーブ3内に充填した後、または別々にオートクレーブ3に充填した後、オートクレーブ3を密閉する。その後、オートクレーブ3を加熱脱気することも好適に用いられる。また、オートクレーブ3中に酸素や水分を選択的に吸収するスキャベンジャーの役割を果たす物質(例えば、チタンなどの金属片)を混合しておくことも好適に用いられる。
原料、鉱化剤等の添加物は、通常、図9に示すように、オートクレーブ3の下部に設けられた原料充填部3Bに収まるように充填される。オートクレーブ3の下部とオートクレーブ3の上部との間に温度差を与えることにより、溶解した結晶をオートクレーブ3の上部の結晶育成部3Aに析出させることができるためである。このように、原料の溶解析出過程を経て結晶を得ることにより、純度の高い高品質で結晶性の高い塊状結晶を得ることが可能となる。
本発明では、さらにオートクレーブ3上部の結晶育成部3Aに種結晶を設置することにより、単結晶の生成を促進させ、より大きな単結晶を得ることができる。種結晶の装填は通常、原料、鉱化剤等の添加物を充填すると同時または充填した後に行われ、通常、オートクレーブ3の内側の表面を構成する貴金属と同様の貴金属製の治具に種結晶が固定される。必要な場合には、オートクレーブ3に装填した後、加熱脱気することも有効に用いられる。
種結晶は、目的とする窒化物の単結晶を用いることが望ましいが、必ずしも目的と同一の窒化物でなくてもよく、場合によっては酸化物単結晶を用いてもよい。但し、その場合には、目的の窒化物と一致し、もしくは適合した格子定数、結晶格子のサイズパラメータを有する種結晶であるか、またはヘテロエピタキシー(すなわち若干の原子の結晶学的位置の一致)を保証するよう配位した単結晶材料片もしくは多結晶材料片から構成されている種結晶を用いる必要がある。種結晶の具体例としては、例えば窒化ガリウム(GaN)の場合、GaNの単結晶の他、AlN等の窒化物単結晶、酸化亜鉛(ZnO)の単結晶、炭化ケイ素(SiC)の単結晶、ガリウム酸リチウム(LiGaO2)、二ホウ化ジルコニウム(ZrB2)等が挙げられる。
種結晶は、アンモニア溶媒への溶解度および鉱化剤との反応性を考慮して決定することができる。例えば、GaNの種結晶としては、MOCVD法やHVPE法でサファイア等の異種基板上にエピタキシャル成長させた後に剥離させて得た単結晶、金属GaからNaやLi、Biをフラックスとして結晶成長させて得た単結晶、LPE法を用いて得たホモ/ヘテロエピタキシャル成長させた単結晶、本発明法を含む溶液成長法に基づき作製された単結晶およびそれらを切断した結晶などを用いることができる。
本発明の液化アンモニアの充填方法によって充填されるアンモニアの純度は通常99.9%以上、好ましくは99.99%以上、さらに好ましくは99.999%以上、特に好ましくは99.9999%以上である。アンモニアは、一般に水との親和性が高いため、アンモニア溶媒をオートクレーブ3内に充填する場合、水に由来する酸素をオートクレーブ3内に持ち込みやすく、それが原因となって生成する結晶の混入酸素量が多くなり、ひいては窒化物の結晶性が悪化するおそれがある。そのような観点から、アンモニア溶媒に含まれる水や酸素の量はできるだけ少なくすることが望ましく、好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下であり、特に好ましくは10ppm以下である。
(窒化物結晶の製造方法の実施態様)
次に、本発明の窒化物結晶の製造方法における手順について説明する。
本発明では、原料、鉱化剤等の添加物(必要に応じて種結晶)等をオートクレーブ3内に充填した後、本発明のアンモニアの充填方法によりアンモニアを充填する(アンモニア充填工程)。
アンモニア溶媒をオートクレーブ3内に充填した後、バルブV2およびV3を閉じてオートクレーブ3を密閉した後、アンモニア充填設備の配管を取り外す。オートクレーブ3を密閉することは、空気中からの水や酸素の混入を防ぐために重要である。特にアンモニア溶媒をオートクレーブ3内に充填した後にオートクレーブ3が開放された状態にあると、アンモニアの放出により充填率が変化してしまい、アンモニア溶媒の大きい潜熱によりオートクレーブ3が冷却されて空気中の水が凝縮しやすいうえ、安全上の問題もある。
以上のような操作で、オートクレーブ3内に原料、鉱化剤等の添加物とアンモニアを充填した後、図9に示す熱電対10を有する電気炉9などを用いてオートクレーブ3を加熱昇温する(結晶化工程)。
ここで、オートクレーブ3内のアンモニア溶媒は、窒化物結晶合成中や育成中に亜臨界状態、さらには超臨界状態にすること好ましい。超臨界流体は、その臨界温度以上で維持される濃ガスを意味し、臨界温度とは圧力によってそのガスが液化させられ得ない温度である。超臨界流体は一般的には、粘度が低く、液体よりも容易に拡散されるが、液体と同様の溶媒和力を有する。アンモニア溶媒の物性は、水熱合成(育成)法において溶媒として使われる水とは異なり、明らかにされているとはいえないため、亜臨界状態または超臨界状態で原料等の溶解や窒化物結晶の生成、溶解析出が促進される理由は確定できないが、水において知られているイオン積の概念を窒素含有溶媒に当てはめれば、温度上昇に伴ってイオン積が増大し、水における加水分解に相当する加安分解のような作用が増大することが寄与していると考えられる。
超臨界状態で溶媒を用いる場合、反応混合物は、一般に溶媒の臨界点よりも高い温度に保持する。アンモニア溶媒の場合、臨界点は臨界温度132℃、臨界圧力11.35MPaである。反応混合物は、一定の容積の容器内に封入されているので、温度上昇は流体の圧力を増大させる。一般に、T>Tc(1つの溶媒の臨界温度)およびP>Pc(1つの溶媒の臨界圧力)であれば、流体は超臨界状態にある。
実際、溶媒中の窒化物多結晶原料の溶解度は、亜臨界状態と超臨界状態との間で極めて異なるので、超臨界条件では、窒化物結晶の十分な成長速度が得られる。反応時間は、特に鉱化剤または共鉱化剤の反応性および熱力学的パラメータ、すなわち温度および圧力の数値に依存する。窒化物結晶合成中あるいは育成中、耐圧性容器3内は5MPa〜2GPa程度の圧力範囲で保持され、オートクレーブ3内も耐圧性容器3内と同等の圧力で保持される。圧力は、温度およびオートクレーブ3の容積に対する溶媒体積の充填率によって適宜決定される。本来、オートクレーブ3内の圧力は、温度と充填率によって一義的に決まるものではあるが、実際には、原料、鉱化剤などの添加物、オートクレーブ3内の温度の不均一性、および死容積の存在によって多少異なる。
アンモニア溶媒の場合、高温ではその解離平衡が窒素と水素に大きく傾いているため、高温ではそれによる圧力の変化が無視できなくなるおそれがある。一般にその解離反応は、金属成分によって触媒されるものであり、原料や鉱化剤等の添加物の種類によっては平衡に到達する可能性もある。本発明では、オートクレーブ3内の温度範囲を、下限として通常150℃以上、好ましくは200℃以上、特に好ましくは300℃以上、上限として通常800℃以下、好ましくは700℃以下、特に好ましくは650℃以下の範囲とすることが望ましい。またオートクレーブ3内の圧力範囲(すなわちオートクレーブ3内の圧力範囲)は、下限として通常20MPa以上、好ましくは30MPa以上、特に好ましくは50MPa以上、上限として通常500MPa以下、好ましくは400MPa以下、特に好ましくは200MPa以下に保持することが望ましい。
前記のオートクレーブ3の温度範囲、圧力範囲を達成するためのオートクレーブ3へのアンモニア溶媒の注入の割合、すなわち充填率は、オートクレーブ3のフリー容積、すなわち、オートクレーブ3に多結晶原料、および種結晶を用いる場合には、種結晶とそれを設置する構造物の体積をオートクレーブ3の容積から差し引いて残存する容積、また水熱育成法によるバルク単結晶製品の製造に関する業者に公知のバッフル板を設置する場合には、さらにそのバッフル板の体積をオートクレーブ3の容積から差し引いて残存する容積のアンモニアの標準状態での液体密度(標準状態で気体の場合は沸点における液体密度)を基準として、通常20〜95%、好ましくは30〜90%、さらに好ましくは40〜85%とする。
以上の説明したようなオートクレーブ3内での窒化物結晶の溶液成長反応は、熱電対10を有する電気炉9などを用いてオートクレーブ3を加熱昇温することにより、オートクレーブ3内をアンモニアの亜臨界状態または超臨界状態に保持することにより行われる。加熱の方法、所定の反応温度への昇温速度に付いては特に限定されないが、通常、数時間から数日かけて行われる。必要に応じて、多段の昇温を行ったり、温度域において昇温スピードを変えたりすることもできる。
オートクレーブ3の内部方向への温度勾配は、オートクレーブ3の形状や納める電気炉9の形状およびその位置関係に代表される加熱、保温状況により異なる。反応温度は、熱電対10用にオートクレーブ3内部方向への温度勾配を推測し、あるいは外挿してオートクレーブ3内部の温度から推定できる。同様に、オートクレーブ3の上下方向の温度も、オートクレーブ3の形状や納める電気炉9の形状、およびその位置関係に代表される加熱、保温状況により異なる。よって、オートクレーブ3の外面の上下で温度を数点測定し、かつ各位置でのオートクレーブ3内部の温度を推定した上で温度制御を行うことが望ましい。
所定の温度に達した後の反応時間については、窒化物結晶の種類、用いる原料、鉱化剤の種類、製造する結晶の大きさや量によっても異なるが、通常、数時間から数百日とすることができる。反応中、反応温度は一定にしてもよいし、徐々に昇温または降温させることもできる。所望の結晶を生成させるための反応時間を経た後、降温させる。降温方法は特に限定されないが、ヒーターの加熱を停止してそのまま炉内にオートクレーブ3を設置したまま放冷してもかまわないし、オートクレーブ3を電気炉9から取り外して空冷してもかまわない。必要であれば、冷媒を用いて急冷することも好適に用いられる。また、降温時の結晶の偏析出や特定の鉱化剤等の添加物によっては、その偏析出を防ぐために、オートクレーブ3を、部分的に温度差をつけて冷却したり、部分的に微加熱しながら冷却したりすることもできる。
オートクレーブ3外面の温度、あるいはオートクレーブ3内部の温度が所定温度以下になった後、オートクレーブ3を開栓する。このときの所定温度は特に限定はなく、通常、−80℃〜200℃、好ましくは−33℃〜100℃である。
オートクレーブ3内温度が十分高い場合は、アンモニア溶媒はガスとして移動し、水などに吸収される。このとき移動時間を短くするためにオートクレーブ3を再度加熱することも好ましい。また、移動させる側の容器内を水などで満たすことなく冷却することも好ましい。水などの溶媒に吸収させる方法を用いなかった場合には、回収したアンモニア溶媒を再使用することが容易となる。
さらに必要に応じて、真空状態にするなどしてオートクレーブ3内のアンモニア溶媒を十分に除去した後、乾燥し、オートクレーブ3の蓋等を開けて生成した窒化物結晶および未反応の原料や鉱化剤等の添加物を取り出すことができる。
以上、本発明の製造方法については、窒化物多結晶を原料にした場合を例に説明したが、原理的には窒化物多結晶を原料としなくても、それに類した化合物または準じた化合物、ならびにそれらに転化し得る前駆体を原料にして前記方法を実施することは可能である。そのような化合物または前駆体としては、すでに製造原料で列挙したガラザンなどの共有結合性M−N結合を有する化合物、Ga(NH23などの金属アミド、KGa(NH24などのアルカリ金属アミド、金属イミド、GaCl3などのハロゲン塩、ハロゲン化物アンモニア付加物、アンモニウムハロガレートなどハロ金属塩などが挙げられる。また、酸素不純物の混入を避ける意味においては、積極的に用いるべきではないが、水酸化物や酸化物、オキソ酸塩などを使用することもできる。
前記窒化物多結晶そのものではない原料を用いて、塊状窒化物結晶を得ようとする場合には、窒化物合成と窒化物の窒素含有溶媒への溶解析出を同時に行うことが必要になるため、より厳密な反応条件のコントロールが求められる。それが非常に難しく、またより大きな塊状結晶を得たいとする場合は、多段に分けた製造方法を好適に用いることができる。すなわち、本発明によって上述したような窒化物多結晶原料に類したまたは準じた化合物、ならびにそれらに転化し得る前駆体を原料にして、最初にある反応条件によって多結晶窒化物を製造し、その後、多結晶窒化物を原料として、同様に本発明製造方法によって塊状窒化物結晶を育成する。このような原料を用いる場合は、この多段に分けた方法によって塊状窒化物結晶の製造は容易になる。この時、多段に分けた反応は同一の容器でアンモニアなど除去せずにそのまま行ってもよいし、同一または別のアンモニアや鉱化剤に入れ替えて行ってもよい。合成された窒化物多結晶原料を一度取り出して、洗浄などの処理などを施した後、同じ容器または別の容器に充填し窒化物結晶を育成してもかまわない。その際、先述したように種結晶を設置することも好適に用いることができる。
本発明の窒化物結晶の製造方法により、製造される窒化物結晶の遷移金属不純物の混入は酸化物換算で通常0.1質量%以下に抑制できる。本発明により得られた塊状窒化物結晶は、必要な場合、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)等で洗浄することができる。また、生成した結晶および未反応の原料や鉱化剤等の添加物を取り除いた後の容器も、必要な場合も同様に洗浄することができる。
洗浄された窒化物結晶はさらにその方位によって、特定の結晶面に対して垂直にスライスし、さらに必要な場合には、エッチングや研磨を施し、窒化物自立単結晶基板として製品化することができる。得られた窒化物単結晶基板は不純物が少なく、結晶性も高いために格子欠陥や転位密度が低くなると共に不純物準位の形成もなく、VPEやMOCVD等で各種デバイスを製造するにあたり、特にホモエピタキシャル成長用基板として優れている。特に、窒化ガリウムの場合、ホモエピタキシャル成長用の高品質な単結晶基板の工業的な製造は知られていない。サファイア上にバッファー層等を介してVPE等の方法でエピタキシャル成長させた後に、サファイアやバッファー層を除去しても窒化ガリウム単結晶の自立基板は製造可能だが、窒化ガリウムと格子定数、熱膨張係数が異なる基板上での、いわゆるヘテロエピタキシャル成長であるために、得られる窒化ガリウムに格子欠陥が発生しやすく、その点において本発明により製造された窒化ガリウム結晶は、格子欠陥や転位密度等の関点からも優れている。
さらに、本発明により製造された窒化物結晶やそれを切断、スライス、エッチング、研磨したものは、アンモニア溶媒を用いる溶液成長法も含めた各種の溶液成長法や昇華法、メルト成長法に用いる種結晶としても不純物が少なく結晶性が高いために優れている。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順、処理装置等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1)
図1に示す液化アンモニア充填装置を用いて実施例1を行った。バルブV1、V4、V5は電磁弁(オンオフ弁)であり、図2に示す制御部8により自動制御した。バルブV2、V3はニードル弁であり、手動制御した。オートクレーブ3は、内径が100mmで5.61kgの液化アンモニアを充填することができる内容積を有している。オートクレーブには白金が内張りされているが、中には原料は入れなかった。
まず、系内の空気を取り除くため、バルブV1、マスフローコントローラMFC1を閉止し、バルブV2〜V5およびマスフローコントローラMFC2を開状態とし、MFC2排出側から真空ポンプにより吸引して系内全体を真空状態にした。アンモニア仕込み量は、充填率50%(2.805kg)になるアンモニア量と充填率調整用のアンモニア量(0.695kg)とを合計した3.500kgとした。マスフローコントローラMFC1を仕込み量3.500kg、仕込み流速50NL/minに設定し、バルブV2とバルブV4を閉め、バルブV1とマスフローコントローラMFC1を開くことにより、アンモニアボンベ1から排出されたガスアンモニアを図3中のAで示される流れに従ってコンデンサー2に供給した。同時に、ガスアンモニアを、図3中のA’で示される流れに従ってバルブV5およびバルブV3を通してオートクレーブ3内に導いた。このとき、実際にマスフローコントローラMFC1を経由して供給したガスアンモニア量は3.4998kgであった。コンデンサー2に供給したガスアンモニアは、コンデンサー2中で凝縮されて液化アンモニアとなり、バルブV2とコンデンサー2との間(図3におけるB)に蓄積された。
次いで、バルブV1とバルブV4を閉状態、バルブV3とV5を開状態にしたうえで、バルブV2を徐々に開き、アンモニア供給口4から液化アンモニアをオートクレーブ3内に供給した。このとき、系内の圧力は0.2MPa以下になるように調整した。オートクレーブ3に供給した液化アンモニアは、すぐに気化し、その潜熱よってオートクレーブ3が徐々に冷却された。オートクレーブ3において、液化アンモニアの気化によって生じたガスアンモニアを、アンモニア排出口5より排出し、図4においてCで示される流れに従って、バルブV5を通過しながらコンデンサー2に供給した。コンデンサー2に供給したガスアンモニアは再び液化され、蓄積された。蓄積された液化アンモニアを再びオートクレーブ3に供給することによりアンモニアを循環させた。
オートクレーブ3の内容積の50%(2.805kg)を若干超える量に相当する液化アンモニアが充填されたころを見計らって、バルブV2とV3を閉じた。充填率調整の前工程として、コンデンサー2および配管に残存したアンモニア量を測定するため、バルブV1とV2とV3およびマスフローコントローラMFC1を閉状態、バルブV4とV5とマスフローコントローラMFC2を開状態とし、図5のDの流れに従ってアンモニア除去塔7に排出し水に吸収させた。この時、系外に排出したガスアンモニア量をマスフローコントローラMFC2により計量したところ0.5111kgであった。マスフローコントローラMFC1を経由して供給した実際の供給量(3.4998kg)から充填率50%分(2.805kg)とコンデンサーおよび配管内の残存分(0.5111kg)を差し引き、充填率調整に必要なアンモニア量を算出(0.1837kg)し、マスフローコントローラMFC2に設定した。次に、バルブV1、V2、V5およびマスフローコントローラMFC1を閉状態、V3、V4およびマスフローコントローラMFC2を開状態にして、設定値のアンモニア量をアンモニア除去塔7に排出した。最後にバルブV1とV2とV3を閉状態、バルブV4とバルブV5とMFC2を開状態にして、マスフローコントローラMFC2排出側から吸引して図6のEの流れに従って配管内のアンモニアをガスアンモニアとして除去した。ここまでにマスフローコントローラMFC2を通過したガスアンモニアの流量は0.6952kgであった。
オートクレーブ3内に充填された液化アンモニアは、(マスフローコントローラMFC1を通過したガスアンモニアの流量)−(マスフローコントローラMFC2を通過したガスアンモニアの流量)で計算される。マスフローコントローラMFC1とマスフローコントローラMFC2で測定された流量値から求められる充填量は2.8046kgで、充填率49.99%であり、充填率の誤差は0.01%であった。なお、マスフローコントローラの計測値はそれぞれ±1%の誤差を含んでいるため、下記式によりオートクレーブ3内に充填された液化アンモニア量は厳密には2.8046kg±0.042kgと計算される。
(3.4998±0.035)−(0.6952±0.007)=2.8046±0.042
(実施例2)
アンモニアボンベ1から系内に供給するガスアンモニア供給量とオートクレーブ3内の液化アンモニア充填率を表1に示す通りに変更して、実施例1と同じ方法にしたがってオートクレーブ3内に液化アンモニアを目標充填率20%で充填した。誤差は、表1に示す通りであった。
(実施例3)
実施例1と同じ液化アンモニア充填装置を用いて、いわゆるフロー法により目標充填率50%で液化アンモニアをオートクレーブ3内に充填した。
まず、系内の空気を取り除くため、バルブV1、マスフローコントローラMFC1を閉止し、バルブV2〜V5およびマスフローコントローラMFC2を開状態とし、MFC2排出側から真空ポンプにより吸引して系内全体を真空状態にした。アンモニア仕込み量は、充填率50%(2.805kg)になるアンモニア量と充填率調整用のアンモニア量(0.695kg)とを合計した3.500kgとした。マスフローコントローラMFC1を仕込み量3.500kg、仕込み流速50NL/minに設定し、バルブV2とバルブV4を閉め、バルブV1とマスフローコントローラMFC1を開くことにより、アンモニアボンベ1から排出されたガスアンモニアを図3中のAで示される流れに従ってコンデンサー2に供給した。同時に、ガスアンモニアを、図3中のA’で示される流れに従ってバルブV5およびバルブV3を通してオートクレーブ3内に導いた。コンデンサー2に供給したガスアンモニアは、コンデンサー2中で凝縮されて液化アンモニアとなり、バルブV2とコンデンサー2との間(図3におけるB)に蓄積された。
次に、MF1およびMF2の流速を50NL/minに設定しアンモニア充填を開始した。バルブV1、V2、V3、V4とMF1、MF2を開状態、バルブV5を閉状態にして、図8で示される流れに従ってアンモニアを流通させた。すなわち、まずアンモニアボンベ1から排出されたガスアンモニアをコンデンサー2に供給した。コンデンサー2に供給したガスアンモニアは、コンデンサー2中で凝縮されて液化アンモニアとなり、バルブV2とコンデンサー2との間(図3におけるB)に蓄積された。蓄積された液化アンモニアを、開状態になっているバルブV2を通してアンモニア供給口4からオートクレーブ3内に供給した。このとき、系内の圧力は0.2MPa以下になるように調整した。オートクレーブ3に供給した液化アンモニアは、すぐに気化し、その潜熱によってオートクレーブ3が徐々に冷却された。オートクレーブ3において、液化アンモニアの気化によって生じたガスアンモニアは、アンモニア排出口5より排出し、アンモニア除去塔7に排出し水に吸収させた。
オートクレーブ3の内容積の50%(2.805kg)を若干超える量に相当する液化アンモニアが充填されたころを見計らって、バルブV2とバルブV3を閉じた。この時のマスフローコントローラMFC1およびマスフローコントローラMFC2の積算値は、それぞれ13.2200kgおよび9.7199kgであったため、この時点で系内には3.5000kgのアンモニアが残っている。充填率調整の前工程として、コンデンサーおよび配管に残存したアンモニア量を測定するため、バルブV1とV2とV3およびマスフローコントローラMF1を閉状態、バルブV4とV5とマスフローコントローラMF2を開放状態とし、図5のDの流れに従ってアンモニア除去塔に排出し水に吸収させた。この時、系外に排出したアンモニア量をマスフローコントローラMFC2により計量(0.3499kg)した。系内残存量(3.5000kg)から充填率50%分(2.805kg)とコンデンサーおよび配管内の残存分(0.3499kg)を差し引き、充填率調整に必要なアンモニア量を算出(0.3450kg)し、マスフローコントローラMFC2に設定した。次に、バルブV1、V2、V5およびMF1を閉状態、V3、V4およびマスフローコントローラMFC2を開状態にして、設定値のアンモニア量をアンモニア除去塔7に排出した。最後にバルブV1とV2とV3を閉状態、バルブV4とV5とマスフローコントローラMFC2を開状態にして、MFC2排出側から吸引して配管内のアンモニアをガスアンモニアとして除去した。このときマスフローコントローラMFC2を通過したガスアンモニアの流量は0.3499kgであった。
実施例1と同じ方法により充填率と誤差を計算した結果は、表1に示す通りであった。
(比較例1〜3)
実施例1〜3と同じ装置を用いて、実施例1〜3と同じ方法により、オートクレーブ3の内容積が目標充填率を若干超える量に相当する液化アンモニアが容器に充填されたころを見計らってバルブ2とバルブ3を閉じる工程まで行い、ここで容器への液化アンモニアの充填を終了した。
実施例1と同じ方法により充填率と誤差を計算した結果は、表1に示す通りであった。
Figure 0004867884
表1から明らかなように、本発明の充填方法にしたがって計測工程と充填量調整工程を行うことによって、高い精度で液化アンモニアをオートクレーブ内に充填することができた。また、冷却装置を必要としないため、液化アンモニアの充填費用も大幅に抑えることができた。
(実施例4)
本実施例において、窒化ガリウム単結晶を成長させた。
図9に示すオートクレーブ3内の原料充填部3Bに鉱化剤として十分に乾燥した粉体のNH4Cl(純度99.999%)を充填し、結晶育成部3Aのバッフル板上に窒化ガリウムの種結晶を入れて蓋を閉じた。次いで、図1の液化アンモニア充填装置を組み立て、上記各実施例と各比較例と同じ方法によりそれぞれ液化アンモニアをオートクレーブ3内に充填した。
続いて、オートクレーブ3を上下に2分割されたヒーターで構成された電気炉9内に収納する。オートクレーブの下部外面の温度が490℃に、上部外面の温度が450℃になるように温度差をつけながら24時間かけて昇温し、オートクレーブの下部外面の温度が490℃に、上部外面の温度が450℃に達した後、その温度でさらに240時間保持する。その後、ヒーターによる加熱を止め、オートクレーブ3の下部外面温度が室温になるまでおよそ3日間かけて電気炉9内で自然放冷する。その後、まずオートクレーブに付属したアンモニア排出口5に通じるバルブを開放し、オートクレーブ3内のNH3を取り除く。その後、一旦アンモニア排出口5に通じるバルブを閉じ、真空ポンプに通ずるように操作し、バルブを再び開放し、オートクレーブ3のNH3をほぼ完全に除去する。これによって、オートクレーブ3内に窒化ガリウム単結晶の成長が確認される。
各実施例の方法により液化アンモニアを充填した場合は、温度制御することにより到達した圧力を精度よく見積もることができるため、適正な運転条件で効率よく窒化ガリウム単結晶を成長させることができる。これに対して、各比較例の方法により液化アンモニアを充填した場合は、到達圧力の見積精度が悪いため、運転条件を適正化させることが困難で、効率よく窒化ガリウム単結晶を成長させることが容易ではない。
本発明の充填方法によれば、冷却装置を必要とすることなく、不純物が少ない液化アンモニアを高い精度で安価に容器に充填することができる。また、本発明により液化アンモニアを充填した容器を用いて窒化物結晶を成長させれば、温度制御により到達する圧力を精度よく見積もることができるため、適正な条件で効率よく結晶を成長させることができる。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高い。
本発明に用いられる液化アンモニア充填装置を示す概略図である。 バルブV1〜V5、マスフローコントローラMFC1、MFC2およびセンサ6の電気的な構成を示すブロック図である。 循環法の供給工程時におけるバルブの開閉状態を示す概略図である。 循環法の循環冷却工程時におけるバルブの開閉状態を示す概略図である。 調整工程の前におけるバルブの開閉状態を示す概略図である。 調整工程時におけるバルブの開閉状態を示す概略図である。 本発明の液化アンモニアの充填方法を説明するための流れ図である。 フロー法の供給工程時におけるバルブの開閉状態を示す概略図である。 本発明の窒化物結晶の製造方法で用いられるオートクレーブの概略図である。
符号の説明
1 アンモニアボンベ
2 コンデンサー
3 オートクレーブ
4 アンモニア供給口
5 アンモニア排出口
6 センサ
7 アンモニア除去塔
8 制御部
9 電気炉
10 熱電対
3A 結晶育成部
3B 原料充填部

Claims (22)

  1. 凝縮器と容器とそれらを結ぶ配管を少なくとも備えるアンモニア充填装置を用いて液化アンモニアを容器に充填する方法であって、
    前記凝縮器にガスアンモニアを供給する供給工程と、
    前記凝縮器において前記ガスアンモニアを液化アンモニアにする液化工程と、
    前記凝縮器において生じた液化アンモニアを前記容器に供給して、前記容器内に液化アンモニアを充填する充填工程と、
    前記容器への液化アンモニアの出入りを停止した状態で、前記アンモニア充填装置内に存在する総アンモニア量M1と前記容器以外の前記アンモニア充填装置内に存在するアンモニア量M2を求める計測工程と、
    前記計測工程において求めたM1とM2の差(M1−M2)と、容器内への液化アンモニア予定充填量(MC)との差(M1−M2−MC)に相当する量の液化アンモニアを前記容器から排出する充填量調整工程と、
    を含むことを特徴とする液化アンモニアの充填方法。
  2. 前記アンモニア充填装置内に存在する総アンモニア量M1を、前記アンモニア充填装置に供給した総アンモニア量(Min)と、前記アンモニア充填装置から排出された総アンモニア量(Mout)とを計測し、それらの差(Min−Mout)を計算することにより求めることを特徴とする請求項1に記載の液化アンモニアの充填方法。
  3. 前記容器以外の前記アンモニア充填装置内に存在するアンモニア量M2を、前記アンモニア充填装置の前記容器以外の領域に存在するアンモニアを前記アンモニア充填装置外に排出しながら計測することを特徴とする請求項1または2に記載の液化アンモニアの充填方法。
  4. 前記アンモニア充填装置が、装置内へのガスアンモニア導入量を計測するための第1質量流量計を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液化アンモニアの充填方法。
  5. 前記第1質量流量計によって、前記アンモニア充填装置に供給した総アンモニア量(Min)を計測することを特徴とする請求項4に記載の液化アンモニアの充填方法。
  6. 前記アンモニア充填装置が、装置外へのガスアンモニア排出量を計測するための第2質量流量計を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液化アンモニアの充填方法。
  7. 前記第2質量流量計によって、前記アンモニア充填装置から排出した総アンモニア量(Mout)を計測することを特徴とする請求項6に記載の液化アンモニアの充填方法。
  8. 前記第2質量流量計によって、前記充填量調整工程において前記容器から排出したアンモニア量を計測することを特徴とする請求項6または7に記載の液化アンモニアの充填方法。
  9. 前記充填工程において、前記凝縮器において生じた液化アンモニアを前記容器に供給しながら前記液化アンモニアの気化による潜熱によって前記容器の冷却も行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液化アンモニアの充填方法。
  10. 前記気化により生じたガスアンモニアを前記アンモニア充填装置外に排出することを特徴とする請求項9に記載の液化アンモニアの充填方法。
  11. 前記気化により生じたガスアンモニアを前記凝縮器に循環させることを特徴とする請求項9に記載の液化アンモニアの充填方法。
  12. 前記循環を行っている間は前記アンモニア充填装置内にガスアンモニアを新たに供給しないことを特徴とする請求項11に記載の液化アンモニアの充填方法。
  13. 前記容器は、前記液化アンモニアが供給される供給口と、前記ガスアンモニアを容器外に排出する排出口とを有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の液化アンモニアの充填方法。
  14. 前記容器は、前記液化アンモニアを供給し且つ前記ガスアンモニアを容器外に排出するための送通口を1つ有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の液化アンモニアの充填方法。
  15. 原料を備えた容器に請求項1〜14のいずれか1項に記載の液化アンモニアの充填方法によって液化アンモニアを充填するアンモニア充填工程と、
    前記アンモニア充填工程において液化アンモニアを充填した前記容器を昇温し、窒化物結晶を生成する結晶化工程と、
    を含むことを特徴とする窒化物結晶の製造方法。
  16. 前記結晶化工程において少なくとも前記容器内を20〜500MPaに保持することを特徴とする請求項15に記載の窒化物結晶の製造方法。
  17. 前記結晶化工程において少なくとも前記容器内を150〜800℃に昇温することを特徴とする請求項15または16に記載の窒化物結晶の製造方法。
  18. 前記容器内に少なくとも1種類の添加物を添加する工程を含むことを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項に記載の窒化物結晶の製造方法。
  19. 前記添加物が少なくとも1種類のハロゲン原子を含むことを特徴とする請求項18に記載の窒化物結晶の製造方法。
  20. 前記原料中の酸素含有量が5質量%以下であることを特徴とする請求項15〜19のいずれか1項に記載の窒化物結晶の製造方法。
  21. 前記原料中に窒化ガリウムを含有することを特徴とする請求項15〜20のいずれか1項に記載の窒化物結晶の製造方法。
  22. 前記容器内に少なくとも1種類の種結晶を設置し、前記結晶化工程においてアンモニアに溶解した前記原料が前記種結晶上に析出することを特徴とする請求項15〜21のいずれか1項に記載の窒化物結晶の製造方法。
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