JP5454830B2 - 超臨界溶媒を用いた結晶製造方法および結晶製造装置 - Google Patents

超臨界溶媒を用いた結晶製造方法および結晶製造装置 Download PDF

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Description

本発明はソルボサーマル法による結晶製造方法および結晶製造装置に関し、詳細には、特に固体状の鉱化剤を用い、アンモニアなどの窒素含有溶媒を用いて窒化ガリウム(以下、窒化ガリウムの化学式「GaN」をもって同義の用語として使用する)に代表される周期表第13族元素(以下「第13族元素」という)窒化物などの結晶成長を行うアモノサーマル法等による結晶性に優れた結晶を製造することのできる結晶製造方法および結晶製造装置に関する。
ソルボサーマル法は超臨界状態および/または亜臨界状態の溶媒を用いた結晶製造方法の総称であり、使用する溶媒の種類によりハイドロサーマル法(水熱合成法)やアモノサーマル法などと称される。
前記ソルボサーマル法は、原料、溶媒、種結晶および鉱化剤等を含んだ高温高圧の系に温度差を設け、この温度差により溶媒への原料の結晶溶解度の差を利用して結晶成長を行うものである。ソルボサーマル法で結晶性の良い単結晶成長を行うためには、結晶の適切な成長速度を維持する必要がある。結晶の適切な成長速度を維持するためには、原料が十分に溶媒に溶解されることが重要となる。
従来、ソルボサーマル法のうち、ハイドロサーマル法を用いた水晶の結晶成長では粉体原料ではなく、「ラスカ」と呼ばれる水晶をある一定の大きさに破砕したものを原料として用いている。水晶の場合には、塊状の原料を使用した場合でも十分な原料の溶解速度が得られ大型の結晶成長が可能である。
しかし、GaNを成長させるアモノサーマル法では、塊状の原料が得られにくく、粉体原料を用いることが一般的である。例えば、第一段階として、原料に相当するGaN微結晶原料を合成した後に、第二段階として、これを原料としてGaN単結晶成長を実現している(例えば、特許文献1参照)。このGaN微結晶原料としては、好ましい範囲が平均粒径1〜5μm程度の粉体を使用している。また、原料と溶媒との接触面積を増加させて、原料の溶解速度を大きくする観点からも、表面積の大きい粉体原料を用いることが多い。
しかし、粉体原料を用いた場合、溶媒の熱対流が大きいと、粉体原料が舞い上がり、種結晶に付着して結晶欠陥を発生するなどの問題がある。このため、粉体原料の舞い上がり防止のために原料を固める(造粒)の研究開発が一般に進められている。しかし、原料を固める適当なバインダーは未だ開発されておらず、あらたな粉体原料の舞い上がりを防止する手段の開発が望まれている。
特開2003−277182号公報 段落番号[0009]〜[0010]
本願発明は、以上のような従来技術における課題である、溶媒の熱対流による原料の舞い上がりを防止し、粉体の原料を用いた場合であっても高品質な結晶を製造でき且つ原料効率の高い結晶製造方法および結晶製造装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、原料充填部としてるつぼを用い、且つ、るつぼの原料充填量を調整、或いは、るつぼに開口部を有する蓋を用いることで、溶媒の熱対流による原料の舞い上がりを防止することができることを見出し本発明に到達した。本発明の要旨は下記の通りである。
(1) 反応容器中で、(1)超臨界状態および/または亜臨界状態の溶媒、並びに、(2)原料を用い、結晶を成長させる結晶製造方法であって、
前記反応容器は前記原料を充填する原料充填部としてるつぼを備え、且つ、前記るつぼへの原料の充填量が下記式(1)を満たすことを特徴とする結晶製造方法。
h≧D/2 式(1)
(式(1)中、hは、るつぼの上端から充填した原料上面までの距離を示し、Dは、るつぼの内直径を示す。)
(2) 前記るつぼが一つ以上の開口部を有する蓋を有することを特徴とする前記(1)に記載の結晶製造方法。
(3) 反応容器中で、(1)超臨界状態および/または亜臨界状態の溶媒、並びに、(2)原料を用い、結晶を成長させる結晶製造方法であって、
前記反応容器は前記原料を充填する原料充填部としてるつぼを備え、且つ、前記るつぼが一つ以上の開口部を有する蓋を有することを特徴とする結晶製造方法。
(4) 前記るつぼへの原料の充填量が下記式(1)を満たすことを特徴とする前記(3)に記載の結晶製造方法。
h≧D/2 式(1)
(式(1)中、hは、るつぼの上端から充填した原料上面までの距離を示し、Dは、るつぼの内直径を示す。)
(5) 前記原料充填部は、複数のるつぼを備えることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の結晶製造方法。
(6) 前記るつぼが有する蓋の開口率が下記式(2)を満たすことを特徴とする前記(2)〜(5)のいずれかに記載の結晶製造方法。
5≦(Sn/S0)×100≦80 式(2)
(式(2)中、Snは、るつぼが有する蓋の開口面積を示し、S0は、るつぼの内部水平断面積を示す。)
(7) 前記原料の粒径が10nm〜10mmであることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の結晶製造方法。
(8) 得られる結晶が単結晶であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の結晶製造方法。
(9) 得られる結晶が周期表第13族元素窒化物であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の結晶製造方法。
(10) 前記溶媒が窒素含有溶媒であることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の結晶製造方法。
(11) 前記反応容器がオートクレーブであることを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれかに記載の結晶製造方法。
(12) 反応容器を備え、前記反応容器中で、(1)超臨界状態および/または亜臨界状態の溶媒、並びに、(2)原料を用い、結晶を成長させる結晶製造装置であって、
前記反応容器は前記原料を充填する原料充填部としてるつぼを備え、且つ、前記るつぼへの原料の充填量が下記式(1)を満たすことを特徴とする結晶製造装置。
h≧D/2 式(1)
(式(1)中、hは、るつぼの上端から充填した原料上面までの距離を示し、Dは、るつぼの内直径を示す。
(13) 前記るつぼが一つ以上の開口部を有する蓋を有することを特徴とする前記(12)に記載の結晶製造装置。
(14) 反応容器を備え、前記反応容器中で、(1)超臨界状態および/または亜臨界状態の溶媒、並びに、(2)原料を用い、結晶を成長させる結晶製造装置であって、
前記反応容器は前記原料を充填する原料充填部としてるつぼを備え、且つ、前記るつぼが一つ以上の開口部を有する蓋を有することを特徴とする結晶製造装置。
(15) 前記るつぼへの原料の充填量が下記式(1)を満たすことを特徴とする前記(14)に記載の結晶製造装置。
h≧D/2 式(1)
(式(1)中、hは、るつぼの上端から充填した原料上面までの距離を示し、Dは、るつぼの内直径を示す。
(16) 前記原料充填部は、複数のるつぼを備えることを特徴とする前記(12)〜(15)のいずれかに記載の結晶製造装置。
(17) 前記るつぼが有する蓋の開口率が下記式(2)を満たすことを特徴とする前記(13)〜(16)のいずれかに記載の結晶製造装置。
5≦(Sn/S0)×100≦80 式(2)
(式(2)中、Snは、るつぼが有する蓋の開口面積を示し、S0は、るつぼの内部水平断面積を示す。)
(18) 前記原料の粒径が10nm〜10mmであることを特徴とする前記(12)〜(17)のいずれかに記載の結晶製造装置。
(19) 前記溶媒が窒素含有溶媒であることを特徴とする前記(12)〜(18)のいずれかに記載の結晶製造装置。
(20) 前記反応容器がオートクレーブであることを特徴とする前記(12)〜(19)のいずれかに記載の結晶製造装置。
本発明の結晶製造方法および結晶製造装置により、溶媒の熱対流による原料の舞い上がりを防止することができる。これにより、粉体の原料を用いた場合であっても、結晶の品質を向上させ且つ原料の使用効率を高めることができる。
以下において、本発明の結晶製造方法および結晶製造装置について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
第1の本発明は、反応容器中で、(1)超臨界状態および/または亜臨界状態の溶媒、並びに、(2)原料を用い、結晶を成長させる結晶製造方法であって、前記反応容器は前記原料を充填する原料充填部としてるつぼを備え、且つ、前記るつぼへの原料の充填量が下記式(1)を満たすことを特徴とする。
h≧D/2 式(1)
(式(1)中、hは、るつぼの上端から充填した原料上面までの距離を示し、Dは、るつぼの内直径を示す。)
また、第2の本発明は、反応容器中で、(1)超臨界状態および/または亜臨界状態の溶媒、並びに、(2)原料を用い、結晶を成長させる結晶製造方法であって、前記反応容器は前記原料を充填する原料充填部としてるつぼを備え、且つ、前記るつぼが一つ以上の開口部を有する蓋を有することを特徴とする。
前記第1及び第2の本発明(以下、単に「本発明」称した場合には、第1の本発明及び第2の本発明を含むものとする)の結晶製造方法およびこれに用いられる結晶製造装置は、上記式(1)を満たするつぼを原料充填部として用いる、或いは、一つ以上の開口部を有する蓋を有するるつぼを原料充填部として用いることで、溶媒の熱対流による原料の舞い上がりを防止することができる。このため、粉体の原料を用いた場合であっても、種結晶に粉体原料が付着して結晶欠陥等が生じるのを防止できるため、品質が高い結晶を製造することができると共に、原料の使用効率を向上させることができる。また、本発明によれば、原料と溶媒との接触をある程度制御できることから、原料の溶解速度の調節をすることもできる。
本発明は、ソルボサーマル法の中でも、塊状の原料が得られにくい等の理由により原料の形状に制限があり、粉体の原料を用いる方法に好適であり、特にGaNを成長させるアモノサーマル法に好適に使用することができる。また、本発明における反応容器は、超臨界状態および/または亜臨界状態の溶媒(以下、「超臨界溶媒」と称する)を用いた結晶成長に適用できるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、オートクレーブであることが好ましい。
まず、本発明の結晶製造装置および本発明の製造方法に用いられる装置としてオートクレーブを用いた場合を例に図1〜図3を用いて説明する。但し、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
図1は、複数のるつぼを用いた本発明の結晶製造装置を示す概略図である。図1において、結晶製造装置1は、アモノサーマル法に使用されるオートクレーブを有するものであり、反応容器(オートクレーブ)2と、導管3とから構成される。反応容器2は、結晶成長領域4と、原料充填領域5とを有し、その境界にはバッフル板6が設けられている。反応容器2の内部には、結晶充填領域5に粉状の原料が充填されたるつぼ7を一段に3つずつ有する5段の梯子状支持具8が備えられており、さらに、原料の溶解速度を向上させる鉱化剤10が複数のるつぼ7の間を埋めるように充填されている。複数のるつぼ7は同一の形状および容積である。また、反応容器2の結晶成長領域4には、複数の種結晶9が備えられている。尚、図1〜図3において、反応容器2、るつぼ7は円柱状であるものとする。また、以降の図において紙面上方から下方が重力方向となる。
反応容器2の外側には、高温高圧の系に温度差を設けるために、その近傍に複数のヒーター11、および、熱電対12が備えられている。オートクレーブ1は、ヒーター11および熱電対12によって反応容器2を複数のゾーンに分けて温度制御可能なように構成されており(図1では、紙面に対し上下2つのゾーンに分かれている)、ゾーン毎に出力を変更することができる。この温度差は、溶解度曲線が正の傾きを持つ(温度を高くすると溶解度が大きくなる)場合には、オートクレーブ1の上部に行くに従って、より低温になるように設定される。
オートクレーブ1は、図1に示す状態から真空脱気後に導管3を介してNH3等の超臨界溶媒を反応容器2内に充填させ、高圧下で結晶成長領域4および原料充填領域の間に温度差をつけながら昇温させる。更に、反応容器2の温度が所定の温度に達した後、一定時間保持することで、種結晶状に所望の単結晶を析出させることができる。
第1の本発明においては、複数のるつぼ7への原料の充填量(チャージ量)が下記式(1)を満たす。
h≧D/2 式(1)
(式(1)中、hは、るつぼの上端から充填した原料上面までの距離を示し、Dは、るつぼの内直径を示す。)
図2を用いて第1の本発明におけるるつぼへの充填量について説明する。図2は、るつぼのへの原料の充填量を説明するための断面図である。図2に示すように、るつぼ7には粉体の原料13が充填されている。前記式(1)に示すように図2中の矢印hで表される距離は、るつぼの上端からるつぼに充填された原料上面までの距離を示す。また、式(1)に示すように図2中の矢印Dは、るつぼの内直径を示す。第1の本発明において、上記式(1)で表されるD/2がhよりも大きくなると、溶媒の熱対流が直接るつぼ内の原料表面に対し45度以下の角度で達するため、原料を押し付ける下方への力の成分が水平方向に原料を押し動かす成分より弱くなり、粉体原料の舞い上がりを防止することができない。上記式(1)としては、h≧D/2を満たせよいが、h≧Dとなることが好ましい。
図1及び図2において用いられるるつぼのように断面形状が正円の場合には、開口部の内径がそのまま式(1)におけるDとなるが、例えば、るつぼ7の断面形状が多角形の場合には、各頂点を結んだ長さの最も長い距離が式(1)におけるDとなる。また、るつぼ7の断面形状が楕円の場合には、楕円の長径が式(1)におけるDとなる。第1の本発明におけるるつぼの断面形状としては、溶媒の熱対流の対称性により正円であることが好ましい。
また、第2の本発明においては、図1におけるるつぼ7として蓋付のるつぼが用いられる。図3を用いて第2の本発明について説明する。図3は、第2の本発明における蓋付きるつぼを説明するための概略図である。図3Aに示すように、第2の本発明においてはるつぼ7に蓋14が用いられる。蓋14には複数の開口部15が設けられており、開口部15を有する蓋14がひさしの役割を果たし舞い上がった原料13がるつぼ7外に放出されるのを防止することができる。蓋14は少なくとも1つの開口部15を有していればよく、その数、サイズ、形状は特に限定されないが、下記式(2)を満たすことが好ましい。
5≦(Sn/S0)×100≦80 式(2)
(式(2)中、Snは、るつぼが有する蓋の開口面積を示し、S0は、るつぼの内部水平断面積を示す。)
式(2)中、Snはるつぼが有する蓋の開口面積を示すが、一つのるつぼの蓋に複数の開口部が設けられている場合にはそれらの合計が式(2)における開口面積となる。また、第2の本発明において複数のるつぼを用いる場合には、各るつぼが有する蓋の開口面積の合計がSnとなり、各るつぼの内部水平断面積の合計がS0となる。但し、図1におけるように同一形状の蓋付きるつぼが複数用いられる場合には、上記式(2)で求められる全るつぼを考慮した開口率と各るつぼの開口率とが同じ数値となるため、いずれかひとつの開口率を求めればよい。尚、るつぼ7の内部水平断面積とは、るつぼ7の開口部位における内部水平断面積を示す。
具体的に説明すると、るつぼ7が有する蓋の複数の開口面積の合計は、図3Bに示すSnとなり、S0が、るつぼ7の内径を直径とする、るつぼ7の内部水平断面積となる。また、第2の本発明は、5≦Sn/S0×100≦80を満たすことが好ましいが、更に好ましくは、Sn/S0×100の下限が8%以上、より好ましくは10%以上であり、上限が好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下である。このように、開口率を調節することにより、溶解した原料が溶媒の対流により原料充填部から種結晶まで輸送される速度が調節され、適切な結晶成長速度を保つことができる。その他、蓋付きるつぼの開口部については、原料の粒径にあわせて開口部を変更できる。また異なる粒径の原料を組み合わせて使用することもできる。
第2の本発明においては、るつぼの断面積の形状は特に規定されず、多角形でもよいし、正円、楕円形状でもよい。蓋の開口形状により、溶媒の対流も制御されるため、開口部を有する蓋がある場合には、特に形状には制限がない。
また、原料の充填量についても第1の本発明における蓋無しるつぼとは異なり、第2の本発明における蓋付きるつぼは原料のチャージ量を問わない。但し、チャージ量は坩堝内に空間をある程度確保すると溶媒との接触面積が大きく取れてより有効であることから上記式(1)の条件を満たすことが好ましい。このように、第1の本発明及び第2の本発明の両者の要件を満たす結晶製造方法および結晶製造装置も好適である。
以下、本発明について、アンモニア等の窒素含有溶媒を用いて第13族窒化物結晶を成長するアモノサーマル法を例に適宜図面を参照しながら説明する。
[結晶製造装置]
(反応容器)
本発明の結晶製造装置は、少なくとも本発明における反応容器を有する。前記反応容器としてはオートクレーブが好適である。
オートクレーブ(本発明における反応容器)の構造について説明する。オートクレーブは、通常、蓋体と容体のように分離されており、ガスケット等を用いて封止されている。また、熱電対等を挿入するための凹部を有していてもよい。尚、図1に示すように、本発明における反応容器には、導管を有するオートクレーブも含まれる。
オートクレーブは昇温反応中に超臨界溶媒(例えば、超臨界アンモニア)の超高圧に相当する圧力に耐え得るものであることが好ましい。オートクレーブを形成する材料としては、耐圧性を有し、耐浸食性を有するものであれば特に制限はなく用いることができる。特に、高温高圧に耐え、かつ、アンモニアに対する高い耐浸食性を示すNi系の合金、ステライト(デロロ・ステライト・カンパニー・インコーポレーテッドの登録商標)等のCo系合金を用いることが好ましく、Ni系の合金を用いることが特に好ましい。具体的な材料としては、Inconel625(Inconelはハンティントン アロイズ カナダ リミテッドの登録商標。以下同じ)、Nimonic90(Nimonicはスペシャル メタルズ ウィギン リミテッドの登録商標。以下同じ)、RENE41等が挙げられる。
これらの合金の組成比率は、系内の溶媒の温度・圧力の条件および系内に含まれる前記各種の鉱化剤およびそれらの反応物との反応性および/または酸化力・還元力、pHの条件に従い、適宜選択すればよい。これらをオートクレーブの内面を構成する材料として用いる方法としては、オートクレーブ自体をこれらの合金を用いて製造する方法や、内筒として薄膜を形成してオートクレーブ内に設置する方法でもよく、任意のオートクレーブの材料の内面にメッキ処理を施す方法でもよい。
オートクレーブの耐浸食性をより向上させるため、貴金属の優れた耐浸食性を利用して、貴金属をオートクレーブの内表面にライニングまたはコーティングしてもよい。また、オートクレーブの材質自体を貴金属とすることもできる。前記貴金属としてはPt、Au、Ir、Ru、Rh、Pd、Ag、Osならびにこれらの貴金属を主成分とする合金が挙げられ、中でも優れた耐浸食性を有するPtを用いることが好ましい。
オートクレーブの内表面を貴金属でライニングまたはコーティングする場合、内表面全てをライニングまたはコーティングすることが困難である場合には、オートクレーブの上部の一部および/または下部の一部にライニングまたはコーティングすることができない部分が存してもよい。
オートクレーブは、所要に応じて、内部にバッフル板(図1におけるバッフル板6)を設置して、GaN多結晶窒化物等からなる原料を充填した原料充填領域とGaN等の種結晶を配置する結晶成長領域とに区画される。尚、以下、原料として、GaN多結晶窒化物を、種結晶としてGaNを用いた場合を例に本発明について説明されることがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
(原料充填部)
本発明においては、反応容器内部に原料を充填する原料充填部としてるつぼが用いられる。また、るつぼの数は特に限定されず、目的に応じて1または複数のるつぼを用いることができるが複数のるつぼを用いることが好ましい。また、るつぼの材質としては、超臨界アンモニア等の超臨界溶媒に対して耐触性を有するものであれば特に限定されず、例えば、pBN(Pyrolitic Boron Nitride)、白金、イリジウムなどが挙げられる。るつぼの形状は特に限定されないが、円筒状であることが好ましい。更に、るつぼの断面形状は、多角形でも円形でもよいが、正円であることが好ましい。但し、第2の本発明におけるるつぼのように蓋付きのるつぼを用いる場合には、るつぼの断面形状は特に限定されない。これは、蓋付きのるつぼを用いる場合には、蓋の開口形状によって溶媒の対流が制御されるためである。これに対し、蓋を用いない場合には、溶媒の対流の対称性より断面形状が正円であることが好ましい。
るつぼの深さについても特に限定されるものではないが、第1の本発明においては上記式(1)を満足するるつぼである必要がある。
更に、るつぼは、原料の粒径よりも小さい孔を有するバスケット(かご状)のものであってもよいが、好ましくは、上面にのみ開口部を一つ有する箱状のものが好ましい。
原料の充填量については、第1の本発明においては上記式(1)の条件を満たすようにるつぼ中に原料が充填される必要がある。これに対し、第2の本発明における蓋付きのるつぼを用いる場合には原料の充填量に特に限定はないが、原料の溶媒との接触面積を大きくとれることから、るつぼ内にある程度の空間を確保することが好ましい。
(バッフル板)
本発明の結晶製造装置は、結晶成長領域と原料充填領域とを区画するために少なくとも1枚のバッフル板を備えていてもよい。前記バッフル板としては、その開孔率が2〜20%のものが好ましい。バッフル板の開孔率を制御することにより、超臨界溶媒の対流を制御し、成長条件下における結晶成長領域でのGaNの過飽和度を適正に制御することが容易になる。
ここで、「過飽和」とは、溶解量が飽和状態より以上に増加した状態をいい、「過飽和度」とは、下記式(3)に表されるように、過飽和状態の溶解量と飽和状態の溶解量との比をいう。溶液成長法においては、原料充填領域からの対流によるGaNの輸送により過飽和状態になっている結晶成長領域のGaNの溶解量と、結晶成長領域の飽和状態でのGaNの溶解量との比をいう。
Figure 0005454830
なお、本発明において、過飽和度は、原料窒化物の充填量、バッフル板の開孔率、原料充填領域と結晶成長領域との温度差等を適宜変更・選定することにより制御できる。
前記バッフル板は、前記オートクレーブと同様の材質で構成されていてもよいが、さらに耐浸食性をもたせ、結晶を高純度化するためにバッフル板の表面を、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)ニオブ(Nb)またはpBNで構成することが好ましい。より好ましくはイリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)等の貴金属であり、最も好ましくは白金(Pt)である。
[結晶製造]
アモノサーマル法の場合、製造する対象となる結晶は第13族窒化物結晶であり、原料中の第13族元素に依存する。製造の対象となる結晶は、主としてB、Al、Ga、In等の第13族元素の単独金属の窒化物の結晶または合金の窒化物(例えば、GaInN、GaAlN)の結晶であることが好ましく、窒化ガリウム結晶および窒化アルミニウム結晶であることがさらに好ましい。
また、製造される結晶は単結晶である。アモノサーマル法で得られる単結晶の大きさは、オートクレーブのサイズや種結晶のサイズ等の条件により異なるが、内径100mmのオートクレーブの場合φ3インチの大きさのものを得ることが可能である。
(原料)
目的物が第13族窒素化合物結晶の場合、その原料としては、通常、第13族窒化物結晶の多結晶原料が用いられる。前記原料としては、窒化ガリウムを含有する原料が好ましい。多結晶原料は、完全な窒化物である必要はなく、条件によっては、第13族元素がメタルの状態(すなわちゼロ価)である金属成分を含有してもよく、例えば、結晶が窒化ガリウムである場合には、窒化ガリウムと金属ガリウムの混合物が挙げられる。
原料となる多結晶原料の製造方法は特に制限されず、例えば、アンモニアガスを流通させた反応容器内で、金属またはその酸化物もしくは水酸化物をアンモニアと反応させることにより生成した窒化物多結晶を用いることができる。また、より反応性の高い金属化合物原料として、ハロゲン化物、アミド化合物、イミド化合物、ガラザンなどの共有結合性M−N結合を有する化合物などを用いることができる。さらに、Gaなどの金属を高温高圧で窒素と反応させて作製した窒化物多結晶(例えばGaN)を用いることもできる。
前記多結晶原料は、これを結晶成長させて高品質の結晶を得るために、できるだけ水や酸素の混入を回避すべきである。そのために、多結晶原料中の酸素含有量は、通常5質量%以下、好ましくは2質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。多結晶原料への酸素の混入しやすさは、水分との反応性または吸収能との関連がある。多結晶原料の結晶性が悪いほど表面等にNH基などの活性基が多く存在し、それが水と反応して一部酸化物や水酸化物が生成する可能性があるためである。このため、多結晶原料としては、通常、できるだけ結晶性が高いものを使用することが望ましく、該結晶性は粉末X線回折の半値幅で見積もることができる。好ましい多結晶原料は、(100)の回折線(ヘキサゴナル型窒化ガリウムでは2θ=約32.5°)の半値幅が、通常0.25°以下、好ましくは0.20°以下、さらに好ましくは0.17°以下である。
原料は後述する鉱化剤と別に配置してもよいし、鉱化剤と原料がまざっていてもよい。また、原料充填部に原料を設置した後、上から原料を押すなどして圧縮して原料間の空気を抜くこともできる。また、各るつぼに対する原料の充填量は、第2の本発明の場合には特に限定はないが、第1の本発明の場合には、上記式(1)の要件を満たすようにるつぼの容量に応じて適宜決定される。
また、原料の粒径としては、粒径の最大値が10mm以下であることが好ましく、1mm以下であることが更に好ましい。また、粒径の最小値は通常10nmであることが好ましく、1μm以上であることが更に好ましい。
ここで、「粒径」とは、該当するメッシュのふるいで分けたものを意味する。更に、粉体原料の含有質量%については、ふるいで分けて各々の質量を測定すれば算出することができる。
(溶媒)
結晶成長がアモノサーマル法による窒化物結晶の成長の場合、溶媒は窒素含有溶媒(例えば、ヒドラジンN24、アンモニアNH3、アミン類、メラミンからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物)または窒化物III−Vと混和できるすべての溶媒を充填することができるが、アンモニアNH3を溶媒に用いることが好ましい。
また、オートクレーブ内に窒素含有溶媒を入れる前に、オートクレーブ内を脱気することや、窒素などの不活性ガスを流通させながら、窒素含有溶媒を入れることも好適に用いられる。その際、反応容器を窒素含有溶媒の沸点以下に冷却してもよい。さらに、これらの溶媒が含む水や酸素の濃度は低いほうが好ましく、これらの濃度は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下であり、さらに好ましくは10ppm以下である。なお溶媒は1種を用いても2種以上を混合して用いてもよい。
アンモニアを溶媒に使用する場合の純度は通常99.9%以上、好ましくは99.99%以上、さらに好ましくは99.999%以上、特に好ましくは99.9999%以上である。アンモニアは、一般に水との親和性が高いため、アンモニアをオートクレーブに充填する場合、水に由来する酸素をオートクレーブに持ち込みやすく、それが原因で生成する結晶の混入酸素量が多くなり、得られる窒素化合物結晶の結晶性が悪化するおそれがある。そのような観点からも、アンモニア溶媒に含まれる水や酸素の量はできるだけ少なくすることが望ましく、好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下であり、特に好ましくは10ppm以下である。
これらの溶媒は、結晶製造中に、亜臨界状態および/または超臨界状態で用いられる。超臨界状態は、その臨界温度以上で維持される濃ガスを意味し、臨界温度とは圧力によってそのガスが液化させられ得ない温度である。超臨界状態では一般的には、粘度が低く、液体よりも容易に拡散されるが、液体と同様の溶媒和力を有する。亜臨界状態とは、臨界温度近傍で臨界密度とほぼ等しい密度を有する液体の状態を言う。例えば、原料充填領域では、超臨界状態として原料を溶解し、結晶成長領域は亜臨界状態となるように温度を変化させて超臨界状態と亜臨界状態の原料の溶解度差を利用した結晶成長も可能である。
(鉱化剤)
本発明においては、結晶成長に際して結晶成長速度を上げるために、鉱化剤を用いることができる。鉱化剤(または溶解剤とも称される)は溶媒における原料の溶解度を高めて結晶成長領域へ結晶原料を移送するための物質であり当該分野において周知である。本明細書中の溶解には、物理溶解と化学溶解のどちらの場合をも含む。
鉱化剤は、通常、ハロゲン原子またはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属を含む化合物である。中でも生成する結晶が酸素を含まないようにする観点からは、アンモニウムイオンやアミドなどの形で窒素原子を含むものを鉱化剤として使用することが好ましい。これらの鉱化剤は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。窒化物結晶への不純物の混入を防ぐため、必要な場合は鉱化剤を精製、乾燥することが行われる。鉱化剤の純度は、通常95%以上、好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、特に好ましくは99.5%以上である。鉱化剤が含む水や酸素はできるだけ少なくすることが望ましく、これらの濃度は、好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下である。
鉱化剤は酸性鉱化剤、塩基性鉱化剤に分けられる。前記塩基性鉱化剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属と窒素原子を含む化合物で、アルカリ土類金属アミド、希土類アミド、窒化アルカリ金属、窒化アルカリ土類金属、アジド化合物、その他ヒドラジン類の塩が挙げられる。好ましくは、アルカリ金属アミドで、具体例としてはナトリウムアミド(NaNH2)、カリウムアミド(KNH2)、リチウムアミド(LiNH2)が挙げられる。また、前記酸性鉱化剤としては、ハロゲン原子を含む化合物で、ハロゲン化アンモニウム等が挙げられる、例えば塩化アンモニウム(NH4Cl)、ヨウ化アンモニウム(NH4I)、臭化アンモニウム(NH4Br)で、このうち、好ましくは塩化アンモニウム(NH4Cl)である。
アンモニアを溶媒に用いたアモノサーマル法の場合には、酸性鉱化剤は超臨界状態のアンモニア溶媒への溶解性が高く、またアンモニア中において窒化能を有し、かつPt等の貴金属に対する反応性が小さいので酸性鉱化剤がより好ましい。
鉱化剤と原料の使用割合は、鉱化剤/13族金属元素(モル比)が通常0.001〜100である。例えば、GaNの場合では、鉱化剤/Gaモル比として、通常0.001〜20の範囲が好ましく、原料、鉱化剤等の添加物の種類および目的とする結晶の大きさなどを考慮して適宜選択できる。
また、鉱化剤はバッフル板より上(結晶成長領域)に存在しなければ、原料と別に配置してもよいし、鉱化剤と原料がまざっていてもよい。さらに、原料充填領域に鉱化剤を設置した後、上から鉱化剤を押加などして圧縮し、鉱化剤間の空隙を無くすことができる。
本発明において鉱化剤は、粉体状や成形されたもの固体状のものであってもよく特に限定されない。ここで、成形されるとは「ペレタイズ」など、圧縮成形等を含み、また、圧縮成形後に焼結等を行ったものでもよい。この際、成形された鉱化剤のサイズおよび形状は目的に応じて適宜選択することができる。
(種結晶)
本発明では、所定の位置に結晶を成長させるため、種結晶を使用することが好ましい。種結晶を用いると種結晶上への単結晶の生成を促進させ、より大きな単結晶を得ることができる。種結晶の装填は通常、原料、鉱化剤等の添加物を充填すると同時または充填した後に行われ、オートクレーブ内表面を構成する貴金属と同様の貴金属製の治具に種結晶が固定される。必要な場合には、オートクレーブに装填した後、加熱脱気することも有効に用いられる。
アモノサーマル法により、窒化物の単結晶を結晶成長させる場合には、目的とする窒化物の単結晶を用いることが望ましいが、必ずしも目的と同一の窒化物でなくてもよい。但し、その場合には、目的の窒化物と一致する、もしくは適合する格子定数および/または結晶格子を有する種結晶であるか、またはヘテロエピタキシー(すなわち若干の原子の結晶学的位置の一致)を保証するよう配位した単結晶材料片もしくは多結晶材料片から構成されている種結晶を用いることが好ましい。種結晶の具体例としては、例えば窒化ガリウム(GaN)の場合、GaNの単結晶の他、AlN等の窒化物単結晶、炭化ケイ素(SiC)の単結晶等が挙げられる。
種結晶は、アンモニア溶媒への溶解度および鉱化剤との反応性を考慮して決定することができる。例えば、GaNの種結晶としては、MOCVD法やHVPE法(ハイドライド気相エピタキシ(Hydride Vapor Phase Epitaxy))でサファイア等の異種基板上にエピタキシャル成長させた後に剥離させて得た単結晶、金属GaからNaやLi、Biをフラックスとして結晶成長させて得た単結晶、LPE法を用いて得たホモ/ヘテロエピタキシャル成長させた単結晶、本発明法を含む溶液成長法に基づき作製された単結晶およびそれらを切断した結晶などを用いることができる。
[製造条件]
次に、本発明における結晶成長の各条件について説明する。本発明においては、超臨界状態および/または亜臨界状態で結晶製造を行うため、一般に溶媒の臨界点よりも高い温度に保持する。アンモニアを溶媒として用いる場合、臨界点は臨界温度132℃、臨界圧力11.35MPaであるが、オートクレーブに対する充填率が高ければ、臨界温度以下の温度でも圧力は臨界圧力をはるかに越える。本発明において超臨界状態とはこのような臨界圧力を越えた状態を含む。反応混合物は一定容積(容器容積)内に封入されているので、温度上昇は、流体の圧力を増大する。一般に、温度TはT>Tc(Tc:溶媒の臨界温度)および圧力P>Pc(Pc:溶媒の臨界圧力)であれば、超臨界状態にある。前記条件において、GaNの微結晶の生成が認められる。実際に、溶媒中に導入された多結晶原料の溶解度は、亜臨界条件と超臨界条件との間で極めて異なるので、超臨界条件では、GaN単結晶の十分な成長速度が得られる。反応時間は、特に、鉱化剤の反応性および熱力学的パラメータ、即ち、温度および圧力の数値に依存する。
アンモニア溶媒の場合、少なくともオートクレーブ内の温度範囲を、下限としては、通常150℃以上であり、好ましくは200℃以上であり、特に好ましくは300℃以上である。また、その上限としては通常800℃以下であり、好ましくは700℃以下であり、特に好ましくは650℃以下の範囲とすることが望ましい。
オートクレーブは、重畳する2つのゾーン、即ち、バッフル板によって分離された下部の原料充填領域および上部の結晶成長領域に分割されている。これら2つのゾーン間の温度勾配△Tは、10〜100℃である。勾配の方向は、特に、温度の関数としての原料の溶解度に依存する。
結晶成長中には、オートクレーブは、約15MPa〜600MPaの範囲の圧力に保持することが好ましい。溶媒がアンモニアである場合には、オートクレーブ内の圧力範囲は、下限として通常20MPa以上、好ましくは30MPa以上、特に好ましくは50MPa以上、上限として通常500MPa以下、好ましくは400MPa以下、特に好ましくは200MPa以下に保持することが望ましい。
オートクレーブ内の前記の温度範囲、圧力範囲を達成するためのアンモニア溶媒の注入の割合、すなわち充填率は、オートクレーブのフリー容積、すなわち、オートクレーブに原料、および種結晶を用いる場合には、種結晶とそれを設置する構造物の体積をオートクレーブの全容積から差し引いて残存する容積、またバッフル板を設置する場合には、さらにそのバッフル板の体積を差し引いて残存する容積のアンモニアの標準状態での液体密度(標準状態で気体の場合は沸点における液体密度)を基準として、通常20〜95%、好ましくは30〜85%、さらに好ましくは40〜75%とするのが望ましい。
所定の温度に達した後の反応時間については、窒化物結晶の種類、用いる原料、鉱化剤の種類、製造する結晶の大きさや量によっても異なるが、通常、数時間から数ヶ月とすることができる。反応中、反応温度は一定にしてもよいし、徐々に昇温または降温させることもできる。所望の結晶を生成させるための反応時間を経た後、降温させる。降温方法は特に限定されないが、ヒーターの加熱を停止してそのまま炉内にオートクレーブを設置したまま放冷してもかまわないし、オートクレーブを電気炉から取り外して空冷してもかまわない。必要であれば、冷媒を用いて急冷することも好適に用いられる。
導管から溶媒を排出後、さらに必要に応じて、真空状態にするなどしてオートクレーブ内の溶媒を十分に除去した後、乾燥し、オートクレーブを開けて結晶成長した窒素化合物結晶および未反応の原料や鉱化剤等の添加物を取り出すことができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
白金を内張りした内寸が直径20mm、長さ350mmのInconel625製のオートクレーブ(約110ml)を用い、内径12mm、深さ30mmのpBN製るつぼに原料として(セラック(CERAC)社製の99.99%のGaNの粉体結晶(型番G−1030、粒径:100mesh(100meshはJIS規格だと150μm以下))をるつぼ上端から12mmの深さまで4.8gを入れ、このるつぼを5個、GaNの総重量として24.0gを上下方向に10mmの間隔を空け白金製の梯子状支持具に5段にしてオートクレーブ内にセットした。ここで、各るつぼにおける原料の充填量はh=12mm、D/2=6mmであり、式(1)を満たす。
さらに鉱化剤として十分に乾燥した純度99.999%のNH4Cl 8.0gをオートクレーブに入れた後、バッフル板および種結晶(10mm×10mm×300μm)の結晶成長部を設置し、素早く、バルブが装着されたオートクレーブの蓋を閉じオートクレーブの計量を行った。次いで、オートクレーブに付属したバルブを介して導管を真空ポンプに通じるように操作し、バルブを開けて真空脱気した後、真空状態を維持しながらオートクレーブをドライアイスメタノール溶媒によって冷却し、一旦バルブを閉じた。
次いで、導管がNH3ボンベに通じるように操作した後、再びバルブを開け連続して外気に触れることなくNH3をオートクレーブに充填した。その後、流量制御に基づき、NH3をオートクレーブの空洞部の約65%に相当する液体として充填(−33℃のNH3密度で換算)し、再びバルブを閉じた。更に、オートクレーブの温度を室温に戻し、外表面を十分に乾燥させ充填したNH3の増加分の計量を行った。
続いて、オートクレーブを上下に2分割されたヒーターで構成された電気炉内に収納した。オートクレーブの下部外面の温度が490℃に、上部外面の温度が410℃になるように温度差をつけながら12時間かけて昇温し、オートクレーブの下部外面の温度が490℃に、上部外面の温度が410℃に達した後、その温度でさらに240時間保持した。オートクレーブの圧力は約130MPaであった。また保持中の温度幅は±5℃以下であった。
その後、オートクレーブの下部外面の温度が150℃になるまでおよそ8時間をかけ降温したのちヒーターによる加熱を止め、電気炉内で自然放冷した。オートクレーブの下部外面の温度がほぼ室温まで降下したことを確認した後、まずオートクレーブに付属したバルブを開放し、オートクレーブ内のNH3を取り除いた。その後オートクレーブを計量しNH3の排出を確認し、一旦バルブを閉じ、真空ポンプに通ずるように操作し。次いで、バルブを再び開放し、オートクレーブのNH3をほぼ完全に除去した。その後、オートクレーブの蓋を開け、内部を確認したところ、10mm角の種結晶全面に厚み285μmの窒化ガリウム結晶が析出していた。また、各るつぼの中には、原料の溶け残りは見られず、原料は十分溶解されていた。得られた窒化ガリウム結晶を取り出してX線回折測定した結果、結晶形はヘキサゴナル型であり、種結晶と同じ方位でC軸配向していた。
[実施例2]
白金を内張りした内寸が直径30mm、長さ700mmのInconel625製のオートクレーブ(約500ml)を用い、内径22mm、深さ30mmの白金製るつぼに原料として実施例1と同じGaNの粉体結晶20gを入れ、このるつぼにφ3mmの穴を対称に5つ開けた蓋を取り付け、白金製の梯子状支持具に各段上下方向に10mmの間隔を空け5段セットした。従ってる、つぼは計5個でGaNの総重量は100gであった。原料の充填量は、上端から7.7mmの深さまで原料が充填されるので、h=7.7mm、D/2=11mmとなり、式(1)を満たさないが、蓋の開口率は、約9%であり、上記式(2)を満たしていた。
さらに鉱化剤として十分に乾燥した純度99.999%のNH4Cl 40gをオートクレーブに入れた後、バッフル板および種結晶(15mm×15mm×300μm)の結晶成長部を設置し、素早く、バルブが装着されたオートクレーブの蓋を閉じオートクレーブの計量を行った。次いで、オートクレーブに付属したバルブを介して導管を真空ポンプに通じるように操作し、バルブを開けて真空脱気した後、真空状態を維持しながらオートクレーブをドライアイスメタノール溶媒によって冷却し、一旦バルブを閉じた。更に、NH3ボンベに通じるように操作した後、再びバルブを開け連続して外気に触れることなくNH3をオートクレーブに充填した。流量制御に基づき、NH3をオートクレーブの空洞部の約50%に相当する液体として充填(−33℃のNH3密度で換算)した後、再びバルブを閉じた。次いで、オートクレーブの温度を室温に戻し、外表面を十分に乾燥させ充填したNH3の増加分の計量を行った。
続いて、オートクレーブを上下に2分割されたヒーターで構成された電気炉内に収納した。オートクレーブの下部外面の温度が480℃に、上部外面の温度が430℃になるように温度差をつけながら18時間かけて昇温し、オートクレーブの下部外面の温度が480℃に、上部外面の温度が430℃に達した後、その温度でさらに360時間保持した。オートクレーブの圧力は約115MPaであった。また保持中の温度幅は±5℃以下であった。
その後、オートクレーブの下部外面の温度が150℃になるまでおよそ7時間を掛け降温したのちヒーターによる加熱を止め、電気炉内で自然放冷した。オートクレーブの下部外面の温度がほぼ室温まで降下したことを確認し、まずオートクレーブに付属したバルブを開放し、オートクレーブ内のNH3を取り除いた。次いで、オートクレー ブを計量しNH3の排出を確認し、一旦バルブを閉じ、真空ポンプに通ずるように操作した後、バルブを再び開放し、オートクレーブのNH3をほぼ完全に除去した。その後、オートクレーブの蓋を開け、内部を確認したところ、15mm角の種結晶全面に厚み410μmの窒化ガリウム結晶が析出していた。
また、原料を入れていたるつぼを開けたところそれぞれ3〜5gの原料の溶け残りが確認されたが、原料は十分溶解されていたといえる。
[比較例1]
実施例2と同じオートクレーブを用いて、内径27mm、長さ20mmの白金製るつぼに原料として実施例1と同じGaNの粉体結晶25gを入れた。るつぼ上端から1.5mmの深さまで原料がチャージされた。蓋をせずにそのまま白金製の梯子状支持具に各段上下方向に15mmの間隔を空け4段セットした。従ってるつぼは計4個でGaNの総重量は100gである。ここで、原料の充填量はh=1.5mm、D/2=13.5mmであり、式(1)を満たさなかった。
さらに鉱化剤として十分に乾燥した純度99.999%のNH4Cl 40gをオートクレーブに入れた後、バッフル板および種結晶等の結晶成長部を設置し、、実施例2と同一の手順で同じ成長を行った。
室温まで冷却しNH3を排出した後、オートクレーブの蓋を開け、内部を確認したところ、白金るつぼ内には原料の溶け残りは見られず種結晶には窒化ガリウム結晶が成長していたが面内に種結晶の結晶方位と異なる針状の成長が多く見られた。これは粉体原料の舞い上がりによる未溶解状態での結晶成長領域への移動による種結晶への付着、および粉体状態での原料充填領域内での溶けすぎにより過飽和度が上がり多核核発生成長が起きていたものと思われる。
以上の結果から、実施例1および2では溶媒の熱対流による原料の舞い上がりは防止されているが、比較例1では、過飽和による結晶成長部への過剰な原料供給とともに、超臨界流体による激しい対流のため粉体原料の舞い上がりが発生しているものと考えられる。
本発明の結晶製造方法および結晶製造装置で得られた窒素化合物結晶は、結晶性がよいため、VPEやMOCVD等で各種デバイスを製造するにあたり、エピタキシャル成長用基板として利用することができる。
複数のるつぼを用いた本発明の結晶製造装置を示す概略図である。 るつぼのへの原料の充填量を説明するための断面図である。 第2の本発明における蓋付きるつぼを説明するための概略図である。
符号の説明
1 結晶製造装置
2 反応容器(オートクレーブ)
3 導管
4 結晶成長領域
5 原料充填領域
6 バッフル板
7 るつぼ
8 梯子状支持具
9 種結晶
10 鉱化剤
11 ヒーター
12 熱電対
13 原料
14 蓋
15 開口部

Claims (6)

  1. 反応容器中で、(1)超臨界状態および/または亜臨界状態の窒素含有溶媒、種結晶、並びに、(2)粉体の原料を用い、第13族窒素化合物の単結晶を成長させる結晶製造方法であって、
    前記原料は粒径1mm以下の原料を含み、
    前記反応容器は前記原料を充填する原料充填部としてるつぼを備え、且つ、
    前記るつぼへの原料の充填量が下記式(1)を満たすように原料をるつぼに充填し、超臨界状態および/または亜臨界状態の窒素含有溶媒中に溶解させた前記原料から第13族窒素化合物の単結晶を前記種結晶上に成長させる結晶製造方法。
    h≧D/2 式(1)
    (式(1)中、hは、るつぼの上端から充填した原料上面までの距離を示し、Dは、るつぼの内直径を示す。)
  2. 前記るつぼが一つ以上の開口部を有する蓋を有することを特徴とする請求項1に記載の結晶製造方法。
  3. 前記原料充填部は、複数のるつぼを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の結晶製造方法。
  4. 前記るつぼが有する蓋の開口率が下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項2または3に記載の結晶製造方法。
    5≦(Sn/S0)×100≦80式(2)
    (式(2)中、Snは、るつぼが有する蓋の開口面積を示し、S0は、るつぼの内部水平断面積を示す。)
  5. 前記原料は粒径10nm以上の原料を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶製造方法。
  6. 前記反応容器がオートクレーブであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の結晶製造方法。
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