以下、本発明に係る縫製データ作成装置1の一実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施の形態の縫製データ作成装置1は、縫製領域と指定された領域内に刺繍ミシン3でスティップリングステッチを施すための縫製データを作成するものである。本発明の縫製データ作成装置1では、スティップリングステッチに図61に示すような飾り模様913を施す。まず、刺繍ミシン3について説明する。図1は、刺繍ミシン3の外観図である。
図1に示すように、刺繍ミシン3は、縫い針34を装着する針棒35を上下駆動する針棒機構(図示外)、天秤機構(図示外)及び釜機構(図示外)を備えている。また、ミシンベッド30上に配置され、縫製する加工布(図示外)を保持する刺繍枠31を、キャリッジカバー32内に収容され刺繍ミシン3の前後方向(紙面の前後方向)に移送するY方向駆動機構(図示外)と、本体ケース33内に収容されY方向駆動機構を刺繍ミシン3の左右方向(紙面の左右方向)に移送するX方向駆動機構(図示外)とを備えている。このY方向駆動機構とX方向駆動機構とによって刺繍枠31を移動させながら、針棒機構、天秤機構及び釜機構の協働による縫製動作を行うことにより、その加工布に所定の図柄のステッチを施すようになっている。前記針棒機構、天秤機構、及び釜機構を駆動するミシンモータ(図示外)と、前記Y方向駆動機構及びX方向駆動機構を駆動する夫々のモータ(図示外)は、刺繍ミシン3に内蔵されたマイクロコンピュータ等から構成される制御装置により駆動が制御される。また、刺繍ミシン3の脚柱部36の側面にはメモリカードスロット37が搭載されており、縫製データが記憶されたメモリカード115をメモリカードスロット37に装着することにより、縫製データ作成装置1で作成された縫製データが供給される。また、この刺繍ミシン3と縫製データ作成装置1とをケーブルで接続可能に構成し、メモリカード等の記憶媒体を介さずに、直接縫製データが供給されるようにしてもよい。
次に、図2乃至図4を参照して縫製データ作成装置1について説明する。図2は、縫製データ作成装置1の物理的構成を示す全体構成図であり、図3は、縫製データ作成装置1の電気的構成を示すブロック図であり、図4は、RAM12の構成を示す模式図である。
図2に示すように、この縫製データ作成装置1は、所謂パーソナルコンピュータである装置本体10と、この装置本体10に接続されるマウス21、キーボード22、メモリカードコネクタ23、ディスプレイ24及びイメージスキャナ装置25から構成されている。なお、装置本体10、マウス21、キーボード22、メモリカードコネクタ23、ディスプレイ24、イメージスキャナ装置25の形状は図2に示すものに限らない。例えば、装置本体10はタワー型のものに限らず、横置きのものであってもよく、装置本体10とディスプレイ24とキーボード22とが一体化したノート型であってもよい。また、装置本体10は所謂パーソナルコンピュータでなく、専用機であってもよいことはいうまでもない。また、イメージスキャナ装置25を使用しない場合には、イメージスキャナ装置25を縫製データ作成装置1に接続していなくともよい。
次に、図3のブロック図を参照して、縫製データ作成装置1の電気的構成について説明する。図3に示すように、縫製データ作成装置1には、縫製データ作成装置1の制御を司るコントローラとしてのCPU11が設けられ、CPU11には、各種のデータを一時的に記憶するRAM12と、BIOS等を記憶したROM13と、データの受け渡しの仲介を行うI/Oインタフェイス14とが接続されている。I/Oインタフェイス14には、ハードディスク装置120が接続され、当該ハードディスク装置120には、縫製データ記憶エリア121と、単位模様記憶エリア122と、プログラム記憶エリア123と、その他の情報記憶エリア124とが少なくとも設けられている。
そして、縫製データ記憶エリア121には、縫製データ作成プログラムにより作成され、刺繍ミシン3に読み込まれる縫製データが記憶される。単位模様記憶エリア122には、スティップリングに飾り模様として付けられる模様(単位模様)の形状が記憶されている。そして、プログラム記憶エリア123にはCPU11で実行される縫製データ作成プログラムが記憶されている。その他の情報記憶エリア124には、縫製データ作成装置1で使用されるその他の情報が記憶されている。なお、縫製データ作成装置1がハードディスク装置120を備えていない専用機の場合は、ROMにプログラムが記憶される。
また、I/Oインタフェイス14には、マウス21と、ビデオコントローラ16と、キーコントローラ17と、CD−ROMドライブ18と、メモリカードコネクタ23と、イメージスキャナ装置25とが接続されている。ビデオコントローラ16にはディスプレイ24が接続され、キーコントローラ17にはキーボード22が接続されている。なお、CD−ROMドライブ18に挿入されるCD−ROM114には、縫製データ作成装置1の制御プログラムである縫製データ作成プログラムが記憶されており、導入時には、制御プログラムは、CD−ROM114から、ハードディスク装置120にセットアップされてプログラム記憶エリア123に記憶される。また、メモリカードコネクタ23では、メモリカード115の読み取りや書き込みが可能となっている。
次に、図4を参照して、RAM12に設けられている本発明に関連する記憶エリアについて説明する。図4に示すように、RAM12には、基準距離記憶エリア1201,ピッチ情報記憶エリア1202,縫製領域記憶エリア1203,輪郭線網記憶エリア1204,開始点記憶エリア1205,終了点記憶エリア1206,縫目経路記憶エリア1207,曲線記憶エリア1208,ステッチ情報記憶エリア1209,適用カウンタ記憶エリア1210,モード記憶エリア1211,注目点記憶エリア1212,選択単位模様記憶エリア1213,配置間隔記憶エリア1214,模様情報記憶エリア1215,配置予定位置記憶エリア1216,間隔合計記憶エリア1217等が設けられている。なお、RAM12には、これらの他にも種々の記憶エリアが設けられている。
基準距離記憶エリア1201には、単位領域のサイズ(図12参照)を決定する等に使用される基準距離が記憶される。ピッチ情報記憶エリア1202には、縫製を行う際の縫い目の長さ(ピッチ)が記憶される。輪郭線網記憶エリア1204には、縫製領域に単位領域を配置して、その輪郭線を繋げた輪郭線網(図12参照)を示す点の座標情報や点と点との接続情報が記憶される。そして、開始点記憶エリア1205及び終了点記憶エリア1206には、縫製領域に対してユーザが指定した縫製の開始点及び終了点を示す座標がそれぞれ記憶される。縫目経路記憶エリア1207には、輪郭線網上に設定される縫目経路を示す情報として、縫目経路上の分岐点の座標が始点から終点まで順に記憶される。曲線記憶エリア1208には、縫目経路を曲線化した曲線を示す情報として、曲線を形成する複数の点の座標が記憶される。ステッチ情報記憶エリア1209には、縫目経路から曲線化された経路曲線上に配置されるステッチ(縫目)を示す情報として、ステッチの針落ち点の座標が記憶される。そして、適用カウンタ記憶エリア1210には、縫目経路を作成する際に使用される適用カウンタの値が記憶され、モード記憶エリア1211には、縫目経路を作成する際に使用されるモードを示す値が記憶される。注目点記憶エリア1212には、縫目経路を移動させる際に注目する分岐点を示す値が記憶される。
そして、選択単位模様記憶エリア1213には、ユーザにより飾り模様(図62参照)として付けたいとして選択された単位模様を示す情報が記憶され、配置間隔記憶エリア1214には、単位模様を配置する間隔が記憶される。そして、模様情報記憶エリア1215には、単位模様を配置する位置を示す情報が記憶され、配置予定位置記憶エリア1216には、単位模様を配置する予定とされる位置を示す情報が記憶され、間隔合計記憶エリア1217には最後に単位模様が配置された位置からの距離が記憶される。
次に、図5乃至図22を参照して、縫製領域内に縫目経路410を配置し、縫目経路から実際にステッチを配置する経路曲線610を作成するまでの縫製データ作成装置1の動作について説明する。図5は、縫製データ作成装置のメイン処理の動作を示すフローチャートであり、図6は、メイン処理の中で実施される移動処理のフローチャートである。そして、図7は、メイン処理の中で実施される単位模様配置処理のフローチャートであり、図8は単位模様配置処理の中で実施される予定配置点移動処理のフローチャートである。そして、図9は、刺繍を施したい領域である全体縫製領域110を示す模式図100であり、図10は、全体縫製領域110に開始点SP及び終了点EPを示した模式図101であり、図11は、実際の全体縫製領域110から単位模様のサイズ分のオフセットを取った縫製領域119を示す模式図102である。
そして、図12は、縫製領域119に輪郭線網を配置する過程を示す模式図109であり、図13は、縫製領域119作成された輪郭線網210、縫目経路始点P1及び縫目経路終点P99を示した模式図200である。そして、図14は、輪郭線網210上に作成された初期縫目経路310を示した模式図300であり、図15は、輪郭線網210上に作成された初期縫目経路310を移動させて作成された縫目経路410を示した模式図400であり、図16は、縫目経路410を変形させた変形縫目経路510を示した模式図500であり、図17は、変形縫目経路510をベジェ曲線化した経路曲線610を示した模式図600である。そして、図18は、経路曲線610上に単位模様の配置位置620を示した模式図601であり、図19は、経路曲線610上に単位模様630が配置された状態を示した模式図602である。図20は、単位模様580を示した模式図であり、図21は、基準距離にオフセットを与えずに生成された縫目経路591に対して単位模様580を配置した状態を示す模式図51であり、図22は、基準距離にオフセットを与えて生成された縫目経路592に対して単位模様580を配置した状態を示す模式図52である。
ここでは、図9の説明図100に示すような、ハート型の内側が円形に刳り抜かれた形状をした全体縫製領域110を例に説明する。全体縫製領域110のハート型の外周の輪郭線を外輪郭線111とし、くりぬいている円形の輪郭線を内輪郭線112とする。
図5のフローチャートに示すように、まず、開始点及び終了点の指定が行われる(S1)。これは、ディスプレイ24に縫製領域を示す画面が表示され、開始点の入力を促すメッセージが表示され、そのメッセージに従い、縫製領域の輪郭線上の任意の点をユーザがマウスクリックすることにより、開始点が指定され、そして、マウスクリックされた位置を示す座標情報が開始点記憶エリア1205に記憶される。終了点についても同様に、終了点の入力を促すメッセージに従い、縫製領域の輪郭線上の任意の点をユーザがマウスクリックすることにより、終了点が指定される。そして、マウスクリックされた位置を示す座標情報が終了点記憶エリア1206に記憶される。ここでは、図10に示す位置に開始点SP及び終了点EPが指定されたものとする。なお、本実施の形態では、図9乃至図28、図31乃至図52、図43乃至図59における横方向をx軸、縦方向をy軸とし、x軸は左から右へ増加し、y軸は上から下へ増加する座標系が与えられているものとする。
次いで、飾り模様として付けられる単位模様の選択、及び単位模様の配置間隔の入力が行われる(S2)。ここでは、単位模様記憶エリア122に記憶されている単位模様の一覧を示す画面がディスプレイ24に表示される。そして、ユーザが飾り模様として付けたい単位模様をマウス21又はキーボード22の操作により入力するのを待ち、入力を受け付け、RAM22の選択単位模様記憶エリア1213に記憶される。引き続き、単位模様を配置する間隔を入力する画面がディスプレイ24に表示され、ユーザによる配置間隔の入力を待機し、入力を受け付け、配置間隔記憶エリア1214に記憶される。
次いで、ピッチの入力が受け付けられる(S3)。ここでは、ピッチの入力画面が表示され、ユーザにより入力欄へ入力された値が受け付けられ、ピッチがピッチ情報記憶エリア1202に記憶される。次いで、基準距離の入力が受け付けられる(S4)。ここでは、基準距離の入力画面が表示され、ユーザにより入力欄へ入力された値が受け付けられ、基準距離が基準距離記憶エリア1201に記憶される。この基準距離は単位領域である正六角形の一辺のサイズを決定するのに用いられる。
そして、基準距離のオフセット処理が行われる(S5)。本実施の形態では、スティップリングステッチに飾り模様を付ける場合に、飾り模様が重ならないようにするために、単位模様のサイズ分だけ基準距離を大きくする。単位模様記憶エリア122には、単位模様の形状だけでなく、その形状の単位模様を配置する際の基準となる点(配置基準点)、その単位模様を配置した際に経路曲線からどれだけの高さが突出するかを示した値(高さ)が記憶されている。そこで、選択単位模様記憶エリア1213に記憶されている単位模様の高さが、S4で入力され基準距離記憶エリア1201に記憶されている値に加算される。
ここで、図20乃至図22を参照して、オフセットを与える理由を説明する。後に詳述するが、本実施の形態では、縫製領域上に配置された正六角形の輪郭線上に縫目経路(図15参照)を作成し、この縫目経路を変形させた変形縫目経路(図16参照)をベジェ曲線化した経路曲線(図17参照)に対して、単位模様を配置する(図19参照)。つまり、単位模様を配置する経路曲線を決定する大本は正六角形の輪郭線である。そこで、ここでは、基準距離と正六角形のサイズとの関係を明確にするために、経路曲線でなく縫目経路に対して単位模様を配置して説明する。図20に示す単位模様580を考える。図20に示すように、単位模様580は左右対称に2つの楕円が並べられた図形である。左右の楕円の接点が配置基準点589とされている。この配置基準点589が単位模様を配置する位置に重ねられることとなる。そして、この単位模様580は、配置される縫目経路の接線に垂直な方向に2つの楕円が配置される向きで配置される。このような向きで配置される場合には、単位模様の高さは図20のhで示す長さとなる。
図21に示すように、一辺のサイズがn1であるような六角形で作成された縫目経路591にその高さが「h=n1×1/2」である単位模様を配置することを考える。なお、正六角形の一辺の長さは「n1=基準距離×2/3」で与えられる。この場合、縫目経路591の間隔が最も狭い位置に2つの単位模様581,582が配置されてしまうと、図21に示すように、単位模様581,582が接してしまう。実際には、この縫目経路591を変形させ、曲線化させるので、さらに経路間の距離が短くなることが考えられる。さらに経路間の距離が短くなった場合には単位模様581,582が接するだけでなく、重なってしまう。そこで、図22に示すように、正六角形の一辺の長さを長くする。具体的には、基準距離に単位模様の高さhを加算する。よって、正六角形の長さは「n3=(ユーザ指定の基準距離+n1)×2/3」、すなわち「ユーザ指定の基準距離×8/9」となる。このように正六角形の一辺の長さは長くなり、経路間の距離の最も短い位置に単位模様を配置しても重ならなくなる。
基準距離のオフセット処理が行われると(S5)、全体縫製領域110へのオフセット処理が行われる(S6)。このオフセット処理は、単位模様が全体縫製領域110からはみ出さないようにするための処理である。経路曲線が全体縫製領域110の輪郭線111,112(図10参照)に接する位置や、輪郭線111,112までの距離が単位模様の高さよりも小さい位置を通る場合には、その位置に単位模様が配置されると、単位模様の一部が全体縫製領域110からはみ出してしまい、美しい形状の模様のステッチを形成する縫製データが得られない。そこで、図9に示した例では、図11に示すように全体縫製領域110から一回り小さい縫製領域119が作成される。全体縫製領域110の外輪郭線111を成すハート型の重心点に向かって、外輪郭線111上の点を「単位模様の高さ/2」だけ移動させた点を繋いだ線が縫製領域119の外輪郭線113であり、内輪郭線112を円形の重心点から外に向かって、内輪郭線112上の点を「単位模様の高さ/2」だけ移動させた点を繋いだ線が縫製領域119の内輪郭線114である。
次いで、輪郭線網210が作成される(S7)。ここでは、まず、基準距離記憶エリア1201に記憶されている基準距離に基づいて単位領域のサイズが決定される。本実施の形態では、本実施の形態では、単位領域を正六角形としており、正六角形の一辺のサイズを「基準距離×3/2」とする。そして、図12に示すように、縫製領域119を示している座標系に、決定されたサイズの単位領域が配置される。
本実施の形態では、図12における横方向にX座標が与えられ、座標軸の右へ進むほど値が大きくなり、縦方向にY座標が与えられ、座標軸の下へ進むほど値が大きくなる。具体的には、座標系の所定の座標、例えば原点(0,0)に1つ目の単位領域の所定の点が配置される。図12に示す例では、原点(0,0)に正六角形の1つの頂点が配置される。そして、本実施の形態では、配置された正六角形に連続させ、正六角形を隙間なく配置する。なお、隣り合った単位領域(正六角形)において、接している辺を示す輪郭線は1本の輪郭線として扱われる。そして、縫製領域119内に存在する輪郭線のみが切り出され、図13に示すような輪郭線網210とされる。なお、単位領域である正六角形の輪郭線の一辺を辺線分と呼ぶこととする。そして、正六角形の頂点であり、3つの正六角形の頂点が重なり、3本の辺線分の端点が重なる点を分岐点と呼ぶこととする。そして、分岐点において端点の重なっている3本の辺線分を、この分岐点の「周囲の辺線分」と呼び、分岐点を頂点とする3つの正六角形を、この分岐点の「周囲の正六角形」と呼び、3本の周囲の辺線分のこの分岐点でない側の端点3つを「周囲の分岐点」と呼ぶこととする。この輪郭線網210の情報は、すべての分岐点の座標がRAM12の輪郭線網記憶エリア1204に記憶される。この輪郭線網210の情報は、縫製領域119内に配置された正六角形を識別する情報、及び各正六角形の各頂点の座標が記憶されている。
また、この輪郭線網210の作成において、作成された輪郭線網210に正六角形が1つもない場合には、縫目経路を作成することができない。そこで、基準距離記憶エリア1201に記憶されている値が所定数(例えば0.5mm)減算され、改めて輪郭線網210が作成される。この処理を行うCPU11が「第一基準距離調整手段」に相当する。なお、基準距離記憶エリア1201に記憶されている値が所定の閾値(例えば、2mm)より小さくなった場合には、バランスのよい縫目経路を生成したとしても、刺繍ミシン3で実際に縫製することが困難となるので、この縫製領域にスティップリングステッチを施すことはできないとして、エラーメッセージを表示して、処理を終了させる。
そして、輪郭線網210上に縫目経路始点P1及び縫目経路終点P99が決定される(S8)。具体的には、開始点記憶エリア1205に記憶されている、ユーザが指定した開始点に最も近い分岐点が縫目経路始点とされ、縫目経路記憶エリア1207に記憶される。同様に、終了点記憶エリア1206に記憶されている、ユーザが指定した終了点に最も近い分岐点が縫目経路終点とされ、縫目経路記憶エリア1207において縫目経路始点の次の点として記憶される。
次いで、輪郭線網210上に初期縫目経路310が作成される(S9)。縫目経路始点P1を始点として、第一の所定方向(本実施の形態では縫製領域の外周を時計回りに回る方向)の辺線分が初期縫目経路310とされる。そして、作成中の初期縫目経路の最後の分岐点に注目して、その分岐点から第二の所定方向(本実施の形態では、作成中の初期縫目経路の最後の分岐点の属する正六角形の輪郭線を時計回りに回る方向)に辺線分を辿りながら、初期縫目経路上の分岐点が決定され、初期縫目経路上の分岐点を順につないだ辺線分が初期縫目経路310とされる。そして、初期縫目経路の最後の分岐点が縫目経路終点P99となった時点で、初期縫目経路310の作成は終了する(この処理を行うCPU11が「終了手段」に相当する)。したがって、初期縫目経路310は縫製領域119の外周を時計回りに、縫製領域119の外周により近い辺線分を辿ることとなる。
そして、図13に示す縫製領域119に配置された輪郭線網210、縫目経路始点P1、縫目経路終点P99では、図14に示すような初期縫目経路310が作成される。具体的な初期縫目経路310の作成については、図23乃至図32を参照して後に詳述する。なお、初期縫目経路310を表す情報は縫目経路記憶エリア1207に記憶されている。具体的には、縫目経路始点P1から縫目経路終点P99までに辿られている分岐点の座標が順に記憶されている。
なお、この初期縫目経路310上の点とされている分岐点の数が6個(六角形の頂点の数)より少ない場合には、バランスのよい縫目経路を作成することができない。そこで、基準距離記憶エリア1201に記憶されている値が所定数(例えば、0.5mm)小さくされ、改めに輪郭線網210の作成(S7)、縫目経路始点及び縫目経路終点が決定(S8)、初期縫目経路310の作成(S9)が行われる。この処理を行うCPU11が「第二基準距離調整手段」に相当する。なお、基準距離記憶エリア1201に記憶されている値が所定の閾値(例えば、2mm)より小さくなった場合には、バランスのよい縫目経路を生成したとしても、刺繍ミシン3で実際に縫製することが困難となるので、この縫製領域にスティップリングステッチを施すことはできないとして、エラーメッセージを表示して、処理を終了させる。
そして、初期縫目経路310が作成されると(S9)、移動処理が行われる(S10、図9参照)。この移動処理では、縫製領域119内に満遍なく縫目経路が配置されるように、初期縫目経路310を輪郭線網210上を移動させる。この移動処理の詳細については、図9、図33乃至図39を参照して後に詳述する。図14に示した初期縫目経路310に移動処理を施し、縫製領域119に満遍なく配置された縫目経路が、図15に示す縫目経路410である。
移動処理により縫目経路410が縫製領域119に満遍なく配置されたら(S10)、特殊処理が行われる(S11)。これは、縫製領域119において尖った部分があったり、先端が細くなっていたりするような部分がある場合に、縫目経路を移動させる特殊な処理である。これについては、図40乃至図42を参照して、後に詳述する。
特殊処理が行われたら、縫目経路410が変形される変形処理が行われる(S12)。この変形処理では、図16に示すように、縫目経路410を形成する分岐点の座標が移動されることにより、変形縫目経路510が作成される。この変形処理により、分岐点を移動させることにより、縫目経路を曲線化した際の膨らみ具合が均一でなくなるため、画一的な経路とならず、見た目のバランスがよくなる。図16に示す点線の経路が変形縫目経路510である。この分岐点の座標の移動方法については、図43乃至図45を参照して、後に詳述する。
次いで、変形縫目経路510がベジェ曲線化され、図17に示す経路曲線610が作成され、曲線記憶エリア1208に記憶される(S13)。この経路曲線610は、図51に示すように、曲線上に密に配置された多数の点で示されており、曲線記憶エリア1208にはこの点の座標が縫目経路始点P1から順に縫目経路終点P99まで記憶されている。
そして、本発明の要部である模様配置処理が行われる(S14)。この模様配置処理では、S2で選択された単位模様が、S2で入力された間隔で曲線系路上に配置される。図17に示した曲線経路610の例では、単位模様を配置する位置を示す配置点620が図18に示すように配置される。この模様配置処理の詳細については、図46乃至図50を参照して、後に詳述する。
そして、ステッチ生成処理が行われる(S10)。このステッチ生成処理では、経路曲線610上にピッチ情報記憶エリア1202に記憶されているピッチ長で、針落ち点が生成され、ステッチ情報記憶エリア1209に記憶される。なお、本発明の縫製データ作成装置では、ステッチの間隔、即ち針落ち点と針落ち点との距離が均一となるように、針落ち点の座標が決定される。この針落ち点の座標の決定については、図51及び図52を参照して、後に詳述する。さらに、模様配置処理で配置された単位模様を縫製する際の針落ち点も引き続きステッチ情報記憶エリア1209に記憶される。
図18に示した例では、図19に示すように、飾り模様が配置点に配置されている。なお、曲線経路610は、外輪郭線111及び内輪郭線112で囲まれた領域である全体縫製領域110から、単位模様の高さの半分がオフセットとして縮小された外輪郭線113及び内輪郭線112で囲まれた領域である縫製領域119に対して配置されているので、曲線経路610が外輪郭線113の近傍に配置されており、単位模様を配置することにより外輪郭線113からはみ出したとしても、本来の縫製領域である全体輪郭線110からははみ出ることがない。なお、図19に示す例では、分かり易くするためにオフセットの量を単位模様の高さよりも長く誇張して示してある。
そして、ステッチ情報記憶エリア1209に記憶されている針落ち点の情報に基づいて、刺繍ミシン3で使用可能なデータである縫製データが作成され(S11)、本処理は終了する。
このようにして、縫製領域119に配置された輪郭線網210上に、初期縫目経路310が作成され(S9)、移動処理により縫目経路が縫製領域119内に満遍なく配置されるように、初期縫目経路310が移動されて、縫目経路410が作成され(S10)、さらに縫目経路410が変形されて変形縫目経路510が作成され(S12)、変形縫目経路510がベジェ曲線化されて経路曲線610が作成されて(S13)、スティップリングステッチの経路が決定される。そして、決定された経路曲線610に単位模様が配置されて、単位模様付きのステッチが生成され(S15)、最終的に刺繍ミシン3で縫製可能な縫製データが作成される(S16)。このように作成された縫製データに基づいて、刺繍ミシン3が駆動され、刺繍枠31に保持された加工布にスティップリングステッチと飾り模様としての単位模様とが縫製される。
次に、図23乃至図28を参照して、初期縫目経路310の生成について、詳述する。図23は、縫目経路始点P1に続く分岐点を決定する際の説明図301であり、図24は、縫目経路始点P1に続く分岐点が決定され1つの辺線分が縫目経路に決定された状態を示す説明図302であり、図25は、説明図302の状態から、次に続く分岐点を決定する際の説明図303であり、図26は、説明図302の状態から、次に続く分岐点が決定された状態を示す説明図304であり、図27は、説明図304の状態から、次に継ぐ分岐点を決定する際の説明図305であり、図28は、説明図304の状態から、次に続く分岐点が決定された状態を示す説明図306である。そして、図29は、次に続く分岐点の最初の候補となる点を選択する際の場合分けを示す説明図800である。
図23に示すように、縫目経路始点P1において、この分岐点P1を端点とする、分岐点P1の周囲の辺線分である辺線分seg1,seg2,seg3が初期縫目経路310となる候補とされる。辺線分seg1,seg2,seg3は、図23では点線で示されている。辺線分seg1の分岐点P1でない側の端点は分岐点P2、辺線分seg2の分岐点P1でない側の端点は分岐点P3,辺線分seg3の分岐点P1でない側の端点は分岐点P4である。これらの分岐点P2,P3,P4は分岐点P1の周囲の分岐点である。
本実施の形態では、初期縫目経路310は、縫目経路始点P1を始点として、縫製領域119の外輪郭線113により近い辺線分を左の方向に縫目経路終点P99まで辿る。つまり、時計回りに、縫製領域119の外輪郭線113により近い辺線分を辿る。そこで、縫目経路始点P1の周囲の分岐点のうち、時計回りの方向に位置する分岐点が選択される。具体的には、縫目経路始点P1の周囲の辺線分seg1,seg2,seg3のうち、縫製領域110の輪郭線111で切断されている線分が探索される。図23に示す例では、辺線分seg1である。そして、辺線分seg1と辺線分seg2、辺線分seg1と辺線分seg3との角度が算出される。この角度は辺線分seg1からみて時計回りの方向の角度が算出される。そして、この角度の小さい方の辺線分が「時計回りの方向に位置する」と判断され、この辺線分の縫目経路始点P1でない側の分岐点が「時計回りの方向に位置する分岐点」とされる。図23に示す例では、辺線分seg3が時計回りの方向に位置すると判断され、分岐点P4が時計回りの方向に位置する辺線分として選択される。よって、分岐点P4の座標が縫目経路記憶エリア1207の縫目経路始点P1と縫目経路終点P2との間に挿入されて、記憶されることとなる。これにより、初期縫目経路310は、分岐点P1から分岐点P3まで伸びる。図24の説明図302において、太線で示した辺線分seg3がこの段階での初期縫目経路310である。この処理を行うCPU11が「開始手段」に相当する。
次に、図25を参照して、分岐点P4において、どの方向に初期縫目経路を延ばしていくかについて説明する。分岐点P4の周囲の点は分岐点P1,P5,P6である。この3点のうち、分岐点P1は分岐点P4を初期縫目経路上の点とする際の起点となった分岐点であるので、新たな初期縫目経路上の点とする候補からは外される。そして、この分岐点P1から分岐点P4を見た際に左にある分岐点が、まず新たな初期縫目経路上の点とされる候補とされる。つまり、分岐点P1から分岐点P4を見た際に左に分岐している辺線分seg4が縫目経路の候補とされる。なお、この処理を行うCPU11が「分岐手段」に相当する。分岐点P1から分岐点P4を見た際に左方向にある分岐点の選択は、分岐点P1と分岐点P4との座標を比較することにより判断することができる。
図29は、左方向にある分岐点を決定する際の場合訳を示した説明図800である。図29に示す、模式図欄の太線矢印は既に初期縫目経路とされている辺線分であり、点線矢印が新たに初期縫目経路とされる辺線分である。なお、模式図は、図29における右方向にx軸、下方向にy軸がとられているものとする。例えば、説明図800の左上の模式図の場合、既に初期縫目経路とされている辺線分seg801は、初期縫目経路の始点から終点へ向かう方向において、x座標が大きくなり、y座標が小さくなっている。このような場合には、x座標は注目されている分岐点のx座標と同じ座標であり、y座標は注目されている分岐点P801のy座標より小さい座標である分岐点P802が新たな初期縫目経路上の点の候補とされる。
そこで、図25に示す例では、図29に示す説明図800の右下の模式図が該当し、分岐点P4の左方向の分岐点はP5と判断される。そして、分岐点P5の座標が算出され、その座標が縫目経路記憶エリア1207に記憶されているか否かの判断が行われる。つまり、分岐点P4とP5を結ぶ線分seg4が既に縫目経路とされているか否かの判断が行われる。しかし、分岐点P5の座標は縫目経路記憶エリア1207に記憶されていない。そこで、次に、その座標が輪郭線網記憶エリア1204に記憶されているか否かが判断される。しかし、図25に示すように、分岐点P5は縫製領域119の外部に位置している。そこで、分岐点P5は初期縫目経路上の点となる候補から外される。なお、この処理を行うCPU11が「行き止まり手段」に相当する。
次いで、右側の分岐点P6の座標がされ、その座標が縫目経路記憶エリア1207に記憶されているか否かの判断が行われる。分岐点P6の座標は縫目経路記憶エリア1207に記憶されていないので、その座標が輪郭線網記憶エリア1204に記憶されているか否かが判断される。分岐点P5の座標は輪郭線網記憶エリア1204に記憶されているので、この分岐点P6と分岐点P4を結ぶ辺線分seg5が初期縫目経路上の点に決定され、座標が縫目経路記憶エリア1207の分岐点P4と縫目経路終点P99との間に挿入されて、記憶されることとなる。つまり、図26に示すように、初期縫目経路は、分岐点P1−P4−P6と辿られることとなる。
次には、図27に示すように、分岐点P6に注目し、分岐点P6の周囲の3点、分岐点P7,P8,P4から次の初期縫目経路上の点とされる分岐点が決定される。分岐点P7,P8,P4のうち、分岐点P4は起点となった点であるので候補から除外される。そして、辺線分seg5は右上がりであり、分岐点P4と分岐点P6とを比較すると、x座標が増えており、y座標は減っている。よって、図29の説明図800を参照すると、選択される辺線分はx座標もy座標も減っているものである。よって、分岐点P7が分岐点P4から分岐点P6を見た際に、左側にある分岐点であるとされ、初期縫目経路上の点が最初の候補となり、次の初期縫目経路上の点としてよいかが判断される。そして、分岐点P7は、既に初期縫目経路上の点にされてはいないので、縫目経路記憶エリア1207には記憶されておらず、縫製領域119内の点であり輪郭線網記憶エリア1204には記憶されている。よって、この分岐点P7が初期縫目経路上の点に決定され、分岐点P7と分岐点P6を結ぶ辺線分seg5が初期縫目経路とされる。そこで、分岐点P7の座標が縫目経路記憶エリア1207の分岐点P6と縫目経路終点P99との間に挿入されて、記憶されることとなる。つまり、図28に示すように、初期縫目経路は、分岐点P1−P4−P6−P7と辿られることとなる。
このようにして、新たに初期縫目経路とされた分岐点から次に続く分岐点を順に決定してゆき、図14に示す説明図300の初期縫目経路310が作成される。
ここで、図30乃至図32を参照して、初期縫目経路310を生成する際における特殊処理について説明する。この特殊処理は、図30に示すような部分的に細いくびれのある輪郭線711内の領域である縫製領域710における初期縫目経路の生成での処理である。なお、このくびれとは、向かい合った輪郭線と輪郭線との間が単位領域の幅よりも狭く、向かい合った輪郭線と輪郭線との間に輪郭線網の辺線分が1本以下しか存在しないような部分を言う。
図30は、くびれの手前まで初期縫目経路720が生成された状態を示す説明図701であり、図31は、くびれ部分に初期縫目経路720を生成した後の状態を示す説明図702であり、図32は、縫製領域710に初期縫目経路720の全てが生成された状態を示す模式図903である。
図30に示すように、縫目経路始点P201から分岐点P211まで初期縫目経路720が時計回りに縫製領域710の外輪郭線113に沿って生成されている。ここで、分岐点P211の次に初期縫目経路720とされる分岐点を決定する際に問題が生じる。分岐点P211の周囲の分岐点は、分岐点P212,P210分岐点P213である。ここでは、分岐点P210はP211を初期縫目経路上の点とした起点となっている分岐点であるので、除外され、最初に分岐点P213が初期縫目経路上の点とされる候補とされる。しかし、分岐点P213は縫製領域710の外部に存在しており、輪郭線網記憶エリア1204には記憶されていない。さらに、分岐点P212は、既に初期縫目経路720上の点となっており、縫目経路記憶エリア1207に記憶されている。すなわち、分岐点P211の周囲の3点は全て新たな初期縫目経路720上の点とする条件を満たさない点である。
そこで、分岐点P211を端点とする辺線分seg201,seg202,seg203のうち、既に初期縫目経路720とされている辺線分を除いた2本の辺線分の成す正六角形に注目する。すなわち、辺線分seg201を除いた辺線分seg202,seg203の成す正六角形hex1に注目する。正六角形hex1の6つの頂点は、分岐点P211から時計回りにP213,P215,P214,P214,P212である。そして、図31に示すように、分岐点P211に向かい合う頂点であるP215と、分岐点P211とを繋いだ辺線分S204が生成される。そして、辺線分seg204と縫製領域710の輪郭線711とが交わるか否かの判断が行われる。図31に示すように、辺線分seg204と輪郭線711とが交わらなければ、分岐点P215が初期縫目経路上の点に決定される。そこで、分岐点P215の座標が縫目経路記憶エリア1207の分岐点P211と縫目経路終点P209との間に挿入されて、記憶されることとなる。その後は、通常の処理で、図32に示すような経路で、縫目経路終点P209まで初期縫目経路720が生成される。
なお、辺線分seg204と輪郭線711とが交わった場合には、分岐点P215と分岐点P211とを繋いだ辺線分S204は縫製領域710の外を通ってしまうこととなるので、分岐点P215と分岐点P211とを繋いではならない。よって、これ以上初期縫目経路720を延ばすことはできず、縫目経路終点P209まで到達することができない。このように、周囲の3点とも新たな初期縫目経路720上の点とする条件を満たさない分岐点であり、さらに、この分岐点の周囲の3本の辺線分のうち既に初期縫目経路720となっていない2本の辺線分のなす正六角形における、向かい合った頂点と結んだ辺線分が縫製領域の輪郭線と交わるような場合には、ユーザに縫目経路を生成できない旨のメッセージを表示して、処理が終了される。そこで、ユーザは、くびれの右側の領域と左側の領域とに縫製領域を分割するなど、縫製領域を変更して、再度メイン処理を実施すればよい。
次に、図6のフローチャート、図33乃至図36を参照して、初期縫目経路310を移動させて、縫製領域119内に満遍なく配置された縫目経路410を作成する動作について詳述する。図5に示すメイン処理のS6に示す移動処理では、注目する正六角形において、縫目経路とされている辺線分の本数が縫目経路とされていない辺線分の本数よりも少ない場合に、縫目経路とされている辺線分を縫目経路から解除し、縫目経路とされていない辺線分を縫目経路としている。つまり、注目する正六角形における縫目経路の始点と終点とは変更せず、より距離の長い方の輪郭線上に縫目経路を移動させている。
具体的には、初期縫目経路310を初期状態として、縫目経路を形成する各分岐点を縫目経路始点P1から順に縫目経路終点P99まで辿ってゆき、縫目経路を移動させるパターン(移動パターン)に該当するか否かの判断が行われる。そして、縫目経路を移動させるパターンに該当する場合には縫目経路が移動される。なお、本実施の形態では、縫目経路始点P1から縫目経路終点P99までの分岐点の走査において、モード分けをし、モードに応じて移動パターンに該当した分岐点に対して実際に縫目経路を移動させる確率を定めている。これにより、ランダムに縫目経路の移動が行われることとなり、バランスよく縫製領域119に配置される縫目経路が作成されることとなる。
ここで、まず、図33乃至図36を参照して移動パターンについて説明し、次にモードについて説明する。本実施の形態では移動パターンAと移動パターンBの2つの移動パターンが設けられている。移動パターンAは、注目する正六角形において、縫目経路とされている辺線分が2本、縫目経路とされていない辺線分が4本であるパターンである。移動パターンBは、注目する正六角形において、縫目経路とされている辺線分が1本、縫目経路とされていない辺線分が5本であるパターンである。図33は、移動パターンAに該当する分岐点を示した説明図307であり、完成した初期縫目経路310を示した説明図300(図14参照)を拡大したものである。図34は、説明図307の状態の初期縫目経路310の一部を移動させた縫目経路311を示す説明図308である。そして、図35は、移動パターンBに該当する分岐点を示した説明図309であり、図36は、説明図308の状態の縫目経路312の一部を移動させた縫目経路313を示した説明図310である。
まず、移動パターンAについて説明する。ここでは、1つの分岐点に注目し、その分岐点を含む正六角形の頂点となっている分岐点を反時計回りに辿る。そして、これらの分岐点について、縫目経路記憶エリア1207に座標が記憶されており、既に縫目経路上の点となっているか否かの判断が行われ、1,2,3番目の頂点が縫目経路上の点とされておらず、4番目の頂点が縫目経路上の点となっている場合に移動パターンAに該当するとされる。つまり、注目した正六角形において、注目点と5番目の頂点,5番目の頂点と4番目の頂点を結んだ2本の辺線分が既に縫目経路とされている状態である。
この移動パターンAに該当した場合には、注目点と5番目の頂点とを結んだ辺線分、5番目の頂点と4番目の頂点とを結んだ辺線分の2本の辺線分が縫目経路とされている。正六角形は6本の辺線分により形成されるので、残りの4本の辺線分は縫目経路とされていない。そこで、2本の辺線分より4本の辺線分の方が距離が長いので、縫目経路を4本の辺線分に移動させる。つまり、注目点と1番目の頂点とを結んだ辺線分、1番目の頂点と2番目の頂点とを結んだ辺線分、2番目の頂点と3番目の頂点とを結んだ辺線分、3番目の頂点と4番目の頂点とを結んだ辺線分に変更する。
図33に示す例では、縫目経路始点P1が注目点とされており、分岐点P3,P10,P11,P6,P4を頂点とする正六角形hex2に注目し、正六角形hex2において、分岐点P3−P10−P11−P6−P4の順に辿ることとなる。正六角形hex2では、頂点P1と頂点P4とを結んだ辺線分seg3,頂点P4と頂点P6とを結んだ辺線分seg9の2本の辺線分が初期縫目経路310とされている。具体的に、縫目経路記憶エリア1207では、縫目経路上の点として分岐点P1,P4,P6,P7,・・・の順で情報が記憶されている。よって、1,2,3番目の頂点(P3,P10,P11)が縫目経路上の点とされておらず、4番目の頂点(P6)が初期縫目経路310上の点となっているので、移動パターンAに該当するとされる。
そこで、縫目経路記憶エリア1207では、分岐点P4(注目点から反時計回りに5番目)の情報が削除され、その位置に分岐点P3(注目点から反時計回りに1番目),P10(注目点から反時計回りに2番目),P11(注目点から反時計回りに3番目)の情報が記憶され、分岐点P1,P3,P10,P11,P6,P7,・・・の順で情報が記憶されることとなる。
そして、図34に示すように、注目点P1と1番目の頂点P3とを結んだ辺線分seg2、1番目の頂点P3と2番目の頂点P10とを結んだ辺線分seg6、2番目の頂点P10と3番目の頂点P11とを結んだ辺線分seg7、3番目の頂点P11と4番目の頂点P6とを結んだ辺線分seg8が移動後の縫目経路311となる。なお、4番目の頂点P6が次の注目点とされる。
次に、移動パターンBについて説明する。ここでも、1つの分岐点に注目し、その分岐点を含む正六角形の頂点となっている分岐点を反時計回りに辿る。そして、これらの分岐点について、縫目経路記憶エリア1207に座標が記憶されており、既に縫目経路上の点となっているか否かの判断が行われ、1,2,3,4番目の頂点が縫目経路上の点とされておらず、5番目の頂点が縫目経路上の点となっている場合に移動パターンBに該当するとされる。つまり、注目した正六角形において、注目点と5番目を結んだ辺線分の1本のみが既に縫目経路とされている状態である。
この移動パターンBに該当した場合には、注目点と5番目の頂点とを結んだ辺線分のみの1本の辺線分が縫目経路とされている。正六角形は6本の辺線分により形成されるので、残りの5本の辺線分は縫目経路とされていないということとなる。1本の辺線分より5本の辺線分の方が距離が長いので、縫目経路を5本の辺線分に移動させる。つまり、注目点と1番目の頂点とを結んだ辺線分、1番目の頂点と2番目の頂点とを結んだ辺線分、2番目の頂点と3番目の頂点とを結んだ辺線分、3番目の頂点と4番目の頂点とを結んだ辺線分、4番目の頂点と5番目の頂点とを結んだ辺線分に変更する。
図35に示す例では、分岐点P31が注目点とされており、分岐点P31,P32,P33,P34,P35,P36を頂点とする正六角形hex3に注目し、正六角形hex3において、分岐点P32−P33−34−P35−P36の順に辿ることとなる。正六角形hex3では、頂点P31とP36とを繋いだ辺線分seg36のみが縫目経路312とされている。具体的に、縫目経路記憶エリア1207では、縫目経路上の点として分岐点P30,P31,P36,P37,・・・の順で情報が記憶されている。よって、1,2,3,4番目の頂点(P32,P33,P34,P35)が縫目経路上の点とされておらず、5番目の頂点(P36)が縫目経路312上の点となっているので、移動パターンBに該当するとされる。
そこで、縫目経路記憶エリア1207では、分岐点P31(注目点)とP36(注目点から反時計回りに5番目)との間に分岐点P32,P33,P34,P35の情報が記憶され、分岐点P30,P31,P36,P37,・・・の順で情報が記憶されることとなる。
そして、図36に示すように、注目点P31と1番目の頂点P32とを結んだ辺線分seg31、1番目の頂点P32と2番目の頂点P33とを結んだ辺線分seg32、2番目の頂点P33と3番目の頂点P34とを結んだ辺線分seg33、3番目の頂点P34と4番目の頂点P35とを結んだ辺線分seg34、4番目の頂点P35と5番目の頂点P36とを結んだ辺線分seg35が移動後の縫目経路313となる。なお、5番目の頂点P36が次の頂点とされる。
ここで、注目点に対して周囲の3つの正六角形のうち、どの正六角形を注目する正六角形とするかの判断について説明する。注目点が縫目経路始点P1である場合には、周囲の3つの辺線分に対して、縫製領域119の輪郭線111に切断されているか否かの判断が行われる。開始点SPは縫製領域119の輪郭線111上に設定され、その開始点SPに最も近い分岐点が縫目経路始点P1とされるので1本の辺線分は必ず輪郭線111に切断されている。そこで、1本しか切断されていない場合には、残りの切断されていない2本を輪郭線とする正六角形が注目する正六角形とされる。2本の辺線分が切断されている場合には、注目する正六角形は存在しないので移動パターンA、移動パターンBに該当するか否かの判断は行われない。そして、縫目経路始点P1の次に縫目経路上の点とされている分岐点が注目点とされる。
また、縫目経路始点P1以外の縫目経路上の点である場合には、既に移動の判断が終了した側の縫目経路である辺線分を除く2つの辺線分に注目し、この2つの辺線分輪郭線とする正六角形が注目する正六角形とされる。図35に示す例では、既に移動の判断が終了した側の縫目経路である辺線分が辺線分seg30であり、辺線分seg30を除く2つの辺線分は辺線分seg31、seg36である。
次に、図37乃至図39を参照して、移動パターンA又はBに該当した場合に実際に縫目経路を移動させる確率を定めたモードについて説明する。図37は、移動パターンBが該当する際の第一の場合分けに該当する状態を示す説明図491であり、図38は、モード1において移動パターンBが該当する際の第二の場合分けにおけるさらなる場合分けを説明するための説明図492であり、図39は、モード1において移動パターンBが該当する際の第二の場合分けにおけるさらなる場合分けを説明するための説明図493である。
本実施の形態では「モード1」,「モード2」,「モード3」の3つのモードを設け、「モード1」,「モード2」,「モード3」の順で実施される。「モード1」では、移動パターンAに該当する場合には、注目点が初期縫目経路310上の点であるか否かにより2つの場合分けが行われる。注目点が初期縫目経路310上の点である場合の実際に縫目経路を移動させる確率は「1/4」である。また、注目点が初期縫目経路310上の点でない場合、すなわち縫目経路の移動により縫目経路上の点とされた点である場合に実際に縫目経路を移動させる確率は「1/12」である。
また、移動パターンBに該当する場合には、注目点がどのような点であるかにより2つの場合に分けられる。第一には、注目点の時計回りで左隣となる分岐点が、移動パターンBに該当して変形された際に縫目経路上の点とされた点であり、かつ、現在の注目点が、縫目経路を移動させた際の注目点に対して正六角形の対向した頂点である場合である。図37に示す説明図491において、注目点を分岐点B1とする。この分岐点B1は、分岐点b1が注目点であった際に、正六角形hexbにおいて縫目経路が分岐点b1−b6−b5と辿る経路から、分岐点b1−b2−b3−b4−b5と辿る経路に移動された際に縫目経路上の点とされたものとする。この場合、正六角形hexBにおいて注目点B1の時計回りで左隣となる点は分岐点B6である。この分岐点B6は、分岐点b1が注目点である場合に、正六角形hexbにおいて注目点b1に対向する位置にある分岐点である。このような場合が、移動パターンBに該当する場合の第一の場合分けに該当する。この第一の場合分けに該当する場合の、実際に縫目経路を移動させる確率は「0」である。
この第一の場合分けに該当する場合に縫目経路を移動させることを考える。図37に示す例では、分岐点B1と分岐点B6とを結んだ辺線分が縫目経路となっているものが、分岐点B1,B2,B3,B4,B5,B6を結んだ5本の辺線分が縫目経路とされる。この状態で、分岐点B3が注目点となり縫目経路を移動させると判断されると、図38における右上の方向に縫目経路が伸びてゆく形状となり、美しい形状ではなくなってしまう可能性が高くなる。そこで、モード1の段階では、このような場合には縫目経路を移動させないようにするために確率を「0」としている。
また、注目点が、図37に示したような第一の場合分けに該当しない場合を第二の場合分けとする。この第二の場合分けにおいては、縫目経路が移動された後に縫目経路がどのような形状となるかにより、さらに3つの場合に分けられる。図38の説明図492に示すように、注目点B1を考える。このように、分岐点B1と分岐点B6とを結んだ辺線分のみが縫目経路418とされている場合に、この縫目経路418が移動されると、図39に示すように、分岐点B1,B2,B3,B4,B5,B6を結んだ5本の辺線分が縫目経路419とされる。この移動後の縫目経路419において、分岐点B2と分岐点B3とを結んだ辺線分segB2が移動パターンBに該当するか否か、及び分岐点B4と分岐点B5とを結んだ辺線分segB4が移動パターンBに該当するか否かにより場合分けが行われる。
辺線分segB2,辺線分segB4共に移動パターンBが適用可能な場合には、実際に縫目経路を移動させる確率は「1/3」である。また、辺線分segB2,辺線分segB4のいずれか一方のみに移動パターンBが適用可能な場合には、実際に縫目経路を移動させる確率は「1/15」とされる。さらに、辺線分segB2,辺線分segB4共に移動パターンBが適用できない場合には、実際に縫目経路を移動させる確率は「0」とされる。辺線分segB2及び辺線分segB4に移動パターンBが適用可能でないということは、移動後さらに縫目経路を移動させて複雑な形状に発展する可能性がないということである。そして、辺線分segB2と辺線分segB4とのいずれか移動パターンBが適用可能であるということは、移動後さらに縫目経路を移動させて複雑な形状にできる可能性があるということであり、辺線分segB2と辺線分segB4との両方に移動パターンBが適用可能であるということは、移動後さらに縫目経路を移動させて複雑な形状にできる可能性がよりあるということである。そこで、移動後にさらに縫目経路を移動させて複雑な形状にできる可能性の高い場合に、より高い確率を与えている。
次に、「モード2」について説明する。このモード2では、移動パターンAに該当した場合には、実際に縫目経路を移動させる確率を「1/4」とする。そして、移動パターンBに該当する場合には、モード1の場合と同様に注目点がどのような点であるかにより2つの場合に分けられる。第一の場合分けに該当する場合、つまり、注目点の時計回りで左隣となる分岐点が、移動パターンBに該当して変形された際に縫目経路上の点とされた点であり、かつ、現在の注目点が、縫目経路を移動させた際の注目点に対して正六角形の対向した頂点である場合には、実際に縫目経路を移動させる確率を「0」とし、それ以外の場合には「1」とする。
次に、「モード3」について説明する。このモード3では、移動パターンAに該当する場合も、移動パターンBに該当する場合も、実際に縫目経路を移動させる確率を「1」とする。つまり、移動パターンに該当すれば、すべて縫目経路を移動させる。
このように、モード1,2,3の順に実際に縫目経路を移動させる確率は上昇し、モード3では、移動パターンに該当すれば、すべて縫目経路を移動させるので、モード3で繰り返し縫目経路上の分岐点に対する処理を行えば、移動パターンA,Bに該当する分岐点はなくなる。
ここで、図6のフローチャートを参照して、移動処理について詳述する。まず、モード記憶エリア1211に「モード1」を示す値(例えば、「1」)が記憶される(S20)。そして、実際に縫目経路の移動された回数をカウントするための移動カウンタに初期値の「0」が記憶される(S21)。そして、縫目経路始点P1を示す値が注目点として、注目点記憶エリア1212に記憶される(S22)。縫目経路記憶エリア1207には、縫目経路を形成する順に分岐点の座標が記憶されているので、縫目経路記憶エリア1207に縫目経路始点P1が記憶されている順序、つまり「1」が注目点記憶エリア1212に記憶される。
そして、すべての分岐点について処理が行われたか否かの判断が行われる(S23)。具体的には、注目点が縫目経路終点P99とされているか否かにより判断される。注目点記憶エリア1212に記憶されている値が、縫目経路記憶エリア1207に記憶されている分岐点の座標の個数に等しければ注目点が縫目経路終点P99とされていると判断される。
すべての分岐点について処理が終了しないうちは(S23:NO)、まず、移動パターンAに該当するか否かの判断が行われる(S24)。この判断は、上述した移動パターンAに該当するか否か、つまり、反時計回りに注目点の属する正六角形の頂点を辿り、1,2,3番目の頂点が縫目経路上の点とされておらず、4番目の頂点が縫目経路上の点となっているか否かの判断が行われる。
ここで、移動パターンAに該当すると判断された場合には(S24:YES)、実際に縫目経路を移動させるか否かの判断が定められている確率に基づいて判断される(S26)。具体的には、モードに合わせて定められている確率が用いられる。現在は「モード1」であるので、注目点が縫目経路上の点である場合の実際に縫目経路を移動させる確率は「1/4」である。また、注目点が縫目経路上の点でない場合、すなわち縫目経路の移動により縫目経路上の点とされた点である場合に実際に縫目経路を移動させる確率は「1/12」である。
この確率に基づく判断には乱数が用いられる。乱数の取得には周知の乱数発生プログラムが用いられる。乱数発生プログラムは、所定の値を引数として乱数発生プログラムに与えると、所定の数字が乱数として引き渡される。本実施の形態では、注目点の縫目経路上における順番を引数として乱数発生プログラムに与えて、乱数を得る。そして、実際に縫目経路を移動させるか否かの判断には、定められている確率に基づいて「移動させる」と判断する値が定められており、この定められた値であるか否かにより移動させるか否かの判断が行われる。乱数発生プログラムにより生成される乱数の個数は、乱数発生プログラムにより定められており、例えば、確率が「1/4」である場合には乱数発生プログラムにより生成される乱数の個数のうちの1/4の個数の値が「移動させる」と判断される値とされている。これらの値は、ハードディスク装置120のその他の情報記憶エリア124に記憶されている。
なお、同一の縫製領域119において、開始点SP及び終了点EPが同一の点であれば、初期縫目経路310は同一の経路となる。よって、移動処理を行う際に注目点とされる分岐点も同一の点となり、乱数発生プログラムに与えられる引数も同一の値となる。よって、同一の縫製領域119に対して、開始点SP及び終了点EPを同一の点とすれば、何度、本処理を行っても同一の注目点で縫目経路が移動され、結果として得られる縫目経路410も同一のものとなる。なお、開始点SP及び終了点EPは同一の点でなくとも、開始点SPに基づいて決定される縫目経路始点P1及び終了点EPに基づいて決定される縫目経路終点P99が同一の分岐点とされれば、同一の縫目経路が作成される。
そして、「移動させる」と判断されると(S26:YES)、図33及び図34を参照して上述したように移動パターンAで縫目経路が移動される(S27)。そして、移動カウンタに「1」が加算される(S28)。そして、現在の注目点から反時計回りに4番目の頂点が次の注目点が決定されて、注目点記憶エリア1212に記憶される(S29)。図34に示す例では、縫目経路の4番目の分岐点である分岐点P6が次の注目点とされる。そして、S23へ戻る。
また、「移動させる」と判断されなかった場合には(S26:NO)、縫目経路において、現在注目点とされている分岐点の次の順番の分岐点が次の注目点とされ(S30)、S23へ戻る。具体的には、注目点記憶エリア1212に「1」が加算される。
一方、移動パターンAに該当しなかった場合には(S24:NO)、移動パターンBに該当するか否かの判断が行われる(S25)。この判断は、上述した移動パターンBに該当するか否か、つまり、反時計回りに注目点の属する正六角形の頂点を辿り、1,2,3,4番目の頂点が縫目経路上の点とされておらず、5番目の頂点が縫目経路上の点となっているか否かの判断が行われる。
ここで、移動パターンBに該当すると判断された場合には(S25:YES)、実際に縫目経路を移動させるか否かの判断が定められている確率に基づいて判断される(S31)。具体的には、モードに合わせて定められている確率が用いられる。現在は「モード1」であるので、上述した第一の場合、つまり、注目点の時計回りで左隣となる分岐点が、移動パターンBに該当して変形された際に縫目経路上の点とされた点であり、かつ、現在の注目点が、縫目経路を移動させた際の注目点に対して正六角形の対向した頂点である場合には、実際に縫目経路を移動させる確率は「0」である。よって、この第一の場合に該当する場合には、移動させると判断されない(S31:NO)。
また、第一の場合に該当せず第二の場合に該当する場合には、図38及び図39を参照して上述したように、縫目経路が移動された後に縫目経路がどのような形状となるかにより確率が決定される。図39に示すように、移動後の縫目経路において辺線分segB2,辺線分segB4共に移動パターンBが適用可能な場合には、実際に縫目経路を移動させる確率は「1/3」である。また、辺線分segB2,辺線分segB4のいずれか一方のみに移動パターンBが適用可能な場合には、実際に縫目経路を移動させる確率は「1/15」とされる。さらに、辺線分segB2,辺線分segB4共に移動パターンBが適用できない場合には、実際に縫目経路を移動させる確率は「0」とされる。
この確率に基づく判断にも、移動パターンAの場合と同様に乱数発生プログラムにより生成された乱数が用いられる。
そして、「移動させる」と判断されると(S231:YES)、図35及び図36を参照して上述したように移動パターンBで縫目経路が移動される(S32)。そして、移動カウンタに「1」が加算される(S33)。そして、現在の注目点から反時計回りに5番目の頂点が次の注目点が決定されて、注目点記憶エリア1212に記憶される(S34)。図36に示す例では、縫目経路の4番目の分岐点である分岐点P36が次の注目点とされる。そして、S23へ戻る。
また、「移動させる」と判断されなかった場合には(S31:NO)、縫目経路において、現在注目点とされている分岐点の次の順番の分岐点が次の注目点とされ(S35)、S23へ戻る。具体的には、注目点記憶エリア1212に「1」が加算される。
さらに、移動パターンBにも該当しなかった場合には(S25:NO)、縫目経路において、現在注目点とされている分岐点の次の順番の分岐点が次の注目点とされ(S36)、S23へ戻る。具体的には、注目点記憶エリア1212に「1」が加算される。
そして、S23〜S36の処理が繰り返し実施され、移動パターンA,Bに該当し、実際に縫目経路を移動させると判断された場合に、縫目経路が移動されるという処理が行われる。そして、注目点が縫目経路終点P99となり、すべての分岐点についての処理が終了したら、S41へ進む。
S41では、縫目経路が移動されたか否かの判断が行われる(S41)。この判断は移動カウンタの値が「1」以上であるか否かにより行われる。縫目経路が移動された場合には(S41:YES)、まだ「モード1」にて縫目経路を移動できる可能性があるので、S21へ戻り、移動カウンタが「0」に初期化され(S21)、縫目経路始点P1が注目点とされる(S22)。そして、S23〜S36の処理が繰り返し実施され、移動パターンA,Bに該当し、実際に縫目経路を移動させると判断された場合に、縫目経路が移動されるという処理が行われる。そして、注目点が縫目経路終点P99となり、すべての分岐点についての処理が終了したら、S41へ進む。
そして、S21〜S41の処理が繰り返し実施され、「モード1」においては縫目経路が移動されなくなったら(S41:NO)、「モード3」であるか否かの判断が行われる(S2S)。「モード1」であり「モード3」でないので(S42:NO)、モード記憶エリア1211に「1」が加算されて、「モード2」とされる(S43)。そして、S21へ戻る。
そして、「モード2」でS21〜S36の処理が行われる。ここでは、S26及びS31で行われる、実際に縫目経路を移動させるか否かの判断に用いられる確率が「モード2」の確率が用いられることとなる。具体的には、移動パターンAに該当した場合には(S24:YES)、「1/4」の確率で実際に縫目経路を移動させると判断される。また、移動パターンBに該当した場合には(S25:NO)、第一の場合分けに該当する場合は、実際に縫目経路を移動させる確率は「0」であり、必ず移動させると判断されない(S31:NO)。そして、第一の場合分けに該当しない場合の確率は「1」であり、必ず移動させると判断される(S31:YES)。
そして、「モード2」でS21〜S36の処理が繰り返し行われ、移動パターンA,Bに該当し、実際に縫目経路を移動させると判断された場合に、縫目経路が移動されるという処理が行われる。そして、注目点が縫目経路終点P99となり、すべての分岐点についての処理が終了したら、S41へ進む。
S41では、縫目経路が移動されたか否かの判断が行われる(S41)。この判断は移動カウンタの値が「1」以上であるか否かにより行われる。縫目経路が移動された場合には(S41:YES)、まだ「モード2」にて縫目経路を移動できる可能性があるので、S21へ戻り、移動カウンタが「0」に初期化され(S21)、縫目経路始点P1が注目点とされる(S22)。そして、S23〜S36の処理が繰り返し実施され、移動パターンA,Bに該当し、実際に縫目経路を移動させると判断された場合に、縫目経路が移動されるという処理が行われる。そして、注目点が縫目経路終点P99となり、すべての分岐点についての処理が終了したら、S41へ進む。
そして、S21〜S41の処理が繰り返し実施され、「モード2」においては縫目経路が移動されなくなったら(S41:NO)、「モード3」であるか否かの判断が行われ(S2S)、「モード2」であり「モード3」でないので(S42:NO)、モード記憶エリア1211に「1」が加算されて、「モード3」とされる(S43)。そして、S21へ戻る。
そして、「モード3」でS21〜S36の処理が行われる。ここでは、S26及びS31で行われる、実際に縫目経路を移動させるか否かの判断に用いられる確率が「モード3」の確率が用いられることとなる。具体的には、移動パターンA,Bのいずれの場合であっても確率は「1」であり、移動パターンAに該当した場合(S24:YES)、移動パターンBに該当した場合(S25:NO)、共に実際に縫目経路を移動させると判断される(S26:YES、S31:YES)。
そして、「モード3」でS21〜S36の処理が繰り返し行われ、移動パターンA,Bに該当し、実際に縫目経路を移動させると判断された場合に、縫目経路が移動されるという処理が行われる。そして、注目点が縫目経路終点P99となり、すべての分岐点についての処理が終了したら、S41へ進む。
S41では、縫目経路が移動されたか否かの判断が行われる(S41)。この判断は移動カウンタの値が「1」以上であるか否かにより行われる。縫目経路が移動された場合には(S41:YES)、まだ「モード3」にて縫目経路を移動できる可能性があるので、S21へ戻り、移動カウンタが「0」に初期化され(S21)、縫目経路始点P1が注目点とされる(S22)。そして、S23〜S36の処理が繰り返し実施され、移動パターンA,Bに該当し、実際に縫目経路を移動させると判断された場合に、縫目経路が移動されるという処理が行われる。そして、注目点が縫目経路終点P99となり、すべての分岐点についての処理が終了したら、S41へ進む。
そして、S21〜S41の処理が繰り返し実施され、「モード3」においては縫目経路が移動されなくなったら(S41:NO)、「モード3」であるか否かの判断が行われ(S2S)、「モード3」であるので(S42:YES)、本移動処理は終了し、メイン処理へ戻る。
このようにして、移動処理が実施されることにより初期縫目経路310(図14参照)の縫目経路が移動され縫目経路410が作成される(図15参照)。注目する正六角形において、縫目経路とされている辺線分の本数が縫目経路とされていない辺線分の本数よりも少ない場合に、縫目経路を移動させている。しかしながら、移動パターンA又は移動パターンBに該当する場合に必ず縫目経路を移動させていると、縫目経路始点P1に近い側の分岐点における縫目経路の移動が先行して行われ、縫目経路始点P1に近い側の縫目経路が縫目経路終点P99に近い側の縫目経路よりもより広がる(移動する)こととなり、バランスの悪い見苦しい形状の模様のステッチを形成する縫製データとなってしまう恐れがある。そこで、必ずしも縫目経路を移動させるのではなく、モードごとに定められた確率に基づいて縫目経路を移動させるか否かの判断が行われ、縫目経路を移動させたり、させなかったりしているので、縫目経路始点P1に近い縫目経路がより広がってゆくことがないので、バランスのよい美しい形状の模様のステッチを形成する縫製データを得ることができる。
次に、図40乃至図42を参照して、縫目経路410の作成後に行われる特殊処理について説明する。図40は、縫目経路410の作成後に行われる特殊処理の対象となる縫目経路860を示す説明図851であり、図41は、特殊処理の対象となる縫目経路860について説明するための説明図852であり、図42は、縫目経路860に対して特殊処理を行った後の縫目経路861を示す説明図853である。
図40に示す分岐点P100及び分岐点P101に注目する。前述した移動処理(図5,S6、図6参照)において、この分岐点P100を注目点とした場合、注目する正六角形hex100における反時計回りに2つ目の頂点P110は縫製領域870の外部に存在している。したがって、移動パターンA,Bに該当することはなく、縫目経路860である分岐点P100とP101とを結ぶ辺線分seg100は移動されない。同様に、分岐点P102に注目した場合も、注目する正六角形hex101における反時計回りに3つ目の頂点P111は縫製領域870の外部に存在し、縫目経路である分岐点P101と分岐点P102とを結ぶ辺線分seg101は移動されない。
しかしながら、図41に示す、分岐点P101において、周囲の3本の辺線分のうち、縫目経路860とされていない辺線分seg105に注目する。この辺線分seg105は、縫製領域870の輪郭線871で切断されてはいない。さらに、辺線分seg105の分岐点P101でない側の端点である分岐点P105において分岐する先の辺線分seg106,107も輪郭線871で切断されていない。つまり、正六角形としてはこれ以上広がりがないが、辺線分のみではさらに広がる余裕がある。
そこで、図42に示すように、分岐点P101を端点とする辺線分seg100における分岐点P101でない側の端点である分岐点P100と、辺線分seg100を輪郭線とする正六角形hex100において分岐点P100に対向する頂点である分岐点P106とを結び、新たな辺線分seg112を作成する。そして、分岐点P101を端点とする辺線分seg101における分岐点P101でない側の端点である分岐点P102と、辺線分seg102を輪郭線とする正六角形hex101において分岐点P102に対向する頂点である分岐点P107とを結び、新たな辺線分seg113を作成する。そして、分岐点P106と分岐点P107とを結び、新たな辺線分seg111を作成する。そして、縫目経路とされていた辺線分seg100、seg101を縫目経路から解除し、新たに作成された辺線分seg112,seg111,seg113を縫目経路とする。このようにして、新しい縫目経路861が作成される。
具体的には、縫目経路記憶エリア1207において、分岐点P100,P101,P102の順で情報が記憶されているものを、分岐点P101の情報が削除され、分岐点P106,P107の情報が追加されて、分岐点P100,P106,p107,p102という順で情報が記憶される。
次に、図43乃至図45を参照して、縫製領域119に満遍なく配置された縫目経路410の分岐点を移動させることにより変形させて、変形縫目経路510を作成する動作について詳述する。図43は、縫目経路410の部分拡大図であり、縫目経路410上の分岐点P52を一段階目に移動させる先の点P61を示した説明図501であり、図44は、分岐点P52を二段階目に移動させる先の点P62を示した説明図502であり、図45は、分岐点P52の座標を点P62の座標に移動させた後の縫目経路を示す説明図503である。
本実施の形態では、縫目経路410上の点とされるすべての分岐点について、第一の移動及び第二の移動を行う。まず、図43に示す分岐点P52を例に第一の移動を説明する。分岐点P52の周囲の3本の辺線分において、縫目経路とされていない辺線分seg60に注目する。この辺線分seg60をt:1−tの比に内分する点P61(分岐点P60と分岐点P61を結ぶ線分:分岐点P61と分岐点P52とを結ぶ線分=t:1−t)が、分岐点P52の第一の移動による移動先の点である。tの値は周知の乱数発生プログラムにより生成され、乱数発生プログラムには引数として、分岐点P52の縫目経路における順序を示す数値が与えられる。なお、この乱数発生プログラムは、移動処理で使用される乱数発生プログラムと同じものであっても別のものであってもよい。ここで、縫目経路記憶エリア1207における分岐点P52の座標が点P61の座標に変更される。
次いで、第二の移動が行われる。図44に示すように第二の移動では、第一の移動により移動されたP51から、点P61を中心とし、半径をrとした円C1の内部の任意の点にP62に移動される。この半径rは、基準距離記憶エリア1201に記憶されている基準距離に基づいた値とされる。本実施の形態では、「半径r=基準距離/5.0」とする。なお、円C1内の任意の点は、次の方法で決定される。まず、乱数発生プログラムにより2つの値、数値A,Bが生成される。なお、それぞれの値の取る範囲は、「0≦数値A≦円C1の半径r」、「0≦数値B≦360」である。そして、任意の点P62のx座標は「中心点P61のx座標+数値A×cos数値B」、y座標は「中心点P61のx座標+数値A×sin数値B」とされる。そして、縫目経路記憶エリア1207における分岐点P52の座標はP62の座標に変更される。
このようにして、第一の移動及び第二の移動が行われ、分岐点P52の座標がP62の座標となることにより、分岐点P51と分岐点P52とを結んだ辺線分seg51は、図45に示す辺線分seg61となり、分岐点P52と分岐点P53とを結んだ辺線分seg52は、図45に示す辺線分seg62となり、正六角形hex50は正六角形でなく、辺線分seg51,seg52の成す角が120度よりも小さい角度である六角形となる。
移動処理(S10)及び特殊処理(S11)により、縫製領域119に満遍なく配置された縫目経路410上の点とされるすべての分岐点について、上述したような第一の移動及び第二の移動が行われ、変形縫目経路510が作成される。
次に、図7及び図8のフローチャート、図46乃至図50を参照して、単位模様配置処理について説明する。以下、単位模様を配置する配置位置とされた点のことを「配置点」ということとし、配置位置とすることを検討する位置である配置予定位置とされた点のことを「配置予定点」ということとする。図46は、単位模様の配置予定点MP1の近傍に配置点がない状態を示す説明図750であり、図47は、単位模様の配置予定点MP2の近傍に配置点DP2が存在する状態を示す説明図751であり、図48は、最初に配置予定点MP2を移動させる配置予定点MP3を示す説明図752であり、図49は、2番目に配置予定点MP2を移動させる配置予定点MP4を示す説明図753であり、図50は、最後に単位模様が配置されている位置とは逆の方向に配置予定点MP10を移動させた状態を説明する説明図754である。
図7のフローチャートに示すように、まず、曲線記憶エリア1208に記憶されている経路曲線を形成する点列のうち、1つ目の点、つまり、経路曲線の始点を単位模様の配置点として、その座標が模様情報記憶エリア1215に記憶される(S51)。そして、経路曲線を形成する点列をカウントするための変数であるmに初期値の「1」が記憶される(S52)。なお、この変数mを記憶するエリアは、RAM12に設けられている。
次いで、RAM12の間隔合計記憶エリア1217に初期値の「0」が記憶される(S53)。そして、変数mに「1」が加算され「2」とされる(S54)。ここで、変数mの値が、曲線記憶エリア1208に情報が記憶されている点列の数より大きくなり、すべての点についての処理が終了したか否かの判断が行われる(S55)。まだ、m=2であり、すべての点についての処理は終了していないので(S55:NO)、m番目、すなわち2番目の点の座標が配置予定位置とされ、配置予定位置記憶エリア1216に記憶される(S56)。そして、m−1番目の点からm番目の点までの経路曲線上の距離が間隔合計記憶エリア1217に加算される(S57)。ここでは、1番目の点つまり始点から2番目の点までの経路曲線上の距離が加算される。
そして、間隔合計記憶エリア1217に記憶されている値と、配置間隔記憶エリア1214に記憶されている値とが比較され、最後の配置点から所定の間隔が空いたか否かの判断が行われる(S58)。間隔合計記憶エリア1217は配置点が決定されて、模様情報記憶エリア1215にその座標が記憶されると(S51,S60,S61)、初期値の「0」にクリアされるので(S53)、間隔合計記憶エリア1217に記憶されている値が、最後の配置点から現在の配置予定位置まで距離を示していることとなる。
まだ、配置間隔だけの距離が最後の配置点から空いていなければ(S58:NO)、S54へ進み、変数mに「1」が加算される(S54)。つまり、曲線記憶エリア1208に記憶されている点列の次の点に注目されることとなる。そして、すべての点についての処理が終了してなければ(S56:NO)、m−1番目の点からm番目の点までの距離が間隔合計記憶エリア1217に加算される(S57)。ここでは、2番目の点から3番目の点までの距離が加算される。そして、最後の配置点から所定の間隔が空いていなければ(S58:NO)、再びS54へ戻り、最後の配置点から所定の間隔が空くまで、繰り返しS54〜S58の処理が繰り返し行われる。
そして、最後の配置点から所定の間隔が空けば(S58:YES)、所定領域内に配置点が存在するか否かの判断が行われる(S59)。本実施の形態では、所定領域は配置予定点を中心とし、半径を配置間隔記憶エリア1214に記憶されている単位模様の配置間隔の半分とした円とする。図46に示す例では、曲線経路760上の点DP1,DP2,DP3,DP4が配置位置とされている。そして、点MP1が配置予定位置とされている。そこで、点MP1を中心とし、半径が「配置間隔/2」である円C2が「所定領域」として配置される。しかし、円C2内に既に配置点DP1,DP2,DP3,DP4は存在していない。よって、このような点が配置予定点とされた場合には、所定領域内に配置点が存在しないと判断される(S59:NO)。そこで、配置予定点が配置点に決定される(S61)。具体的には、配置予定位置記憶エリア1216に記憶されている配置予定点の座標が模様情報記憶エリア1215に記憶される。
そして、S53へ戻り、次の配置位置を決定するために間隔合計に「0」が記憶され(S53)、S54〜S58の処理が繰り返し実施され、配置間隔が空いたら(S58:YES)、その時点の配置予定位置において、所定領域(配置予定点を中心とし、半径を配置間隔の半分とした円)内に配置点があるか否かの判断が行われ(S59)、配置点が存在しなければ(S59:NO)、配置予定点が配置点に決定され(S61)、S53へ戻る。
一方、所定領域内に配置点がある場合には(S59:YES)、配置予定位置移動処理が行われる(S60、図8参照)。図47に示す例では、曲線経路760上の点DP1,DP2,DP3,DP4,DP5が配置位置とされており、点MP2が配置予定位置とされているが、この点PM2を中心とし、半径が「配置間隔/2」である円C3内に、既に配置点DP2が存在している。このような場合に、所定領域内に配置点が存在すると判断される(S59:YES)。
そこで、配置予定位置移動処理では、既に曲線経路において配置位置が決められている方向へ配置予定位置を所定量移動させ、その移動先を配置位置としてよいか否かの判断が行われる。なお、既に曲線経路において配置位置が決められている方向を「後退方向」ということとする。この第一の方向が請求項にいう「第一の所定方向」に該当する。配置予定位置移動処理では、図8のフローチャートに示すように、まず、変数iに初期値の「0」が記憶される(S71)。この変数iはRAM12に記憶するエリアが設けられており、最初の配置予定位置から後退方向へ移動させた回数をカウントする変数である。
そして、変数iに「1」が加算されて「1」とされる(S72)。そして、変数iの値が「5」より大きいか否かの判断が行われる(S72)。ここで、「5」と比較するのは、後退方向へ5回まで移動を試みるためである。まだ変数iの値は「1」であり、「5」より大きくないので(S72:NO)、配置予定点を移動させる(S74)。具体的には、配置予定点と、最後の配置点との間の曲線経路が10等分され、「i:1−i」で内分する内分点が配置予定点とされる。ここでは、変数i=「1」であるので、「1:9」で内分される点が配置予定点とされる。つまり、配置予定点と最後の配置点との間の曲線経路上の距離の1/10の距離だけ、配置予定点が経路曲線上を後退方向に移動され、その点の座標が配置予定位置記憶エリア1216に記憶される。図48に示す例では、図47に示した点MP2である配置予定位置は、点MP2−点DP5間の1/10の距離、つまり配置間隔の1/10の距離だけ点DP5の方向へ移動された点である点MP3へ移動される。
そして、点MP3を中心、「配置間隔/2」を半径とする円C4内に配置点があるか否かの判断が行われる(S75)。図48に示す例では、円C4内に配置点DP2が存在しているので(S75:NO)、この点を配置点としてはならない。そこで、S72へ戻り、変数iに「1」が加算されて「2」とされる(S72)。まだ変数iは「5」より大きくないので(S73:NO)、配置予定点が移動される(S74)。具体的には、「2:8」で内分される点が配置予定位置とされる。つまり、図49に示すように、配置予定点MP3からさらに1/10の距離だけ、配置予定位置が経路曲線上を後退方向に移動され、その点の座標が配置予定位置記憶エリア1216に記憶される。
そして、点MP4を中心、「配置間隔/2」を半径とする円C5内に配置点があるか否かの判断が行われる(S75)。図49に示す例では、円C5内に配置点はないので(S75:NO)、点MP4に配置予定点を移動させ、配置点としてよいということになるので、点MP4は配置点とされ、点MP4の座標が模様情報記憶エリア1215に記憶される(S91)。そして、模様配置処理へ戻る。
しかしながら、変数i=「2」の段階でも所定領域内に既に配置点が存在した場合には、さらにS72〜S75の処理が行われる。そして、繰り返しS72〜S75の処理が実施され、変数iの値が「5」より大きくなったら(S73:YES)、これ以上後退方向に移動させると最後の配置位置の点に近づきすぎてしまうので、後退方向への移動は中止する。そして、後退方向と反対の方向、つまり、経路曲線において、まだ配置位置の決定されていない方向(「進行方向」とする)へ、配置予定位置を移動させる。この「進行方向」が「第二の所定方向」に該当する。そこで、変数jに初期値の「0」が記憶される(S81)。この変数jはRAM12に記憶するエリアが設けられており、最初の配置予定点から進行方向へ移動させた回数をカウントする変数である。
そして、変数jに「1」が加算されて「1」とされる(S82)。そして、変数jの値が「5」より大きいか否かの判断が行われる(S82)。ここで、「5」と比較するのは、進行方向へ5回まで移動を試みるためである。まだ変数jの値は「1」であり、「5」より大きくないので(S82:NO)、配置予定点を移動させる(S84)。具体的には、配置予定位置とされている点と、配置予定点と最後の配置点との間の曲線経路上の距離の1/10の距離だけ、配置予定点が経路曲線上が進行方向に移動され、その点の座標が配置予定位置記憶エリア1216に記憶される。図50に示す例は、図47に示した点MP2である配置予定点を進行方向に移動させた点MP10を示したものである。図47に示した配置予定点MP1の例では、図48に示した点MP4が配置位置とされるので、進行方向への移動は検討されないが、ここでは、進行方向への移動の説明のために図47に示した配置予定点MP1の例を引用した。
そして、点MP10を中心、「配置間隔/2」を半径とする円C10内に配置点があるか否かの判断が行われる(S85)。図48に示す例では、円C10内に配置点DP2が存在しているので(S85:NO)、この点MP10は配置点としてはならない。そこで、S82へ戻り、変数jに「1」が加算されて「2」とされる(S82)。まだ変数jは「5」より大きくないので(S83:NO)、配置予定点が移動される(S84)。具体的には、配置予定点MP10からさらに1/10の距離だけ、経路曲線上を進行方向に移動され、その点の座標が配置予定位置記憶エリア1216に記憶される。
そして、所定領域内に既に配置点が存在しなければ(S86:NO)、配置予定位置の点を配置位置としてよいということになるので、その点の座標が模様情報記憶エリア1215に記憶される(S91)。そして、模様配置処理へ戻る。一方、所定領域内に既に配置予定点が存在すれば(S86:YES)、S83へ戻り、繰り返しS83〜S86の処理が実施される。そして、所定領域内に既に配置点が存在しなくなれば(S86:NO)、その点の座標が模様情報記憶エリア1215に記憶される(S91)。なお、変数jの値が「5」より大きくなってしまった場合には(S84:YES)、後退方向に移動させても、進行方向に移動させても、既に配置点が近傍に存在し、単位模様が重なったり、近づきすぎたりして美しい形状の模様のステッチを形成する縫製データが得られないということなので、エラー処理を行い、処理を終了させる。これにより、ユーザは基準距離をより長く設定したり、もっと高さの低い単位模様を選択したりして、再度縫製データ作成の処理を実行することにより、美しい形状の模様のステッチを形成する縫製データを作成することができる。
以上のようにして、曲線経路上にユーザが選択した単位模様が、ユーザの指定した配置間隔で配置される。さらに単位模様が重なったり、近づきすぎたりしないように、配置しようとする配置予定点の近傍(所定領域内)に既に配置点がある場合には、配置予定点を少しずつ移動させて配置している。よって、単位模様が重なってしまったり、近づきすぎて全体のバランスを崩してしまったりすることがなく、美しい形状の模様のステッチを形成する縫製データを得ることができる。
次に、図51及び図52を参照して、ステッチ生成処理で行われる経路曲線610からの針落ち点の座標の決定について説明する。図51は、経路曲線650を示す説明図800であり、図52は、図51に示した経路曲線650から生成された針落ち点を示す説明図801である。変形処理(S12)の第一の移動及び第二の移動により作成された変形縫目経路は、ベジェ曲線化処理(S13)により、ベジェ曲線化され、経路曲線が作成される。ここでは、簡単のために、図51に示す縫目経路始点P601、縫目経路終点P602の経路曲線650を例に説明する。図51に示すように、経路曲線650は、曲線上に密に配置された多数の点として示されている。曲線記憶エリア1208にはこの点の座標が縫目経路始点P601から順に縫目経路終点P602まで記憶されている。
まず、経路曲線650を形成する点を縫目経路始点P601の次の点から順に、その点を頂点としてなす角が120度未満であるか否かの判断が行われる。n番目の点であれば、n−1番目の点とn番目の点とを結ぶ線分と、n番目の点とn+1番目の点とを結ぶ線分とで成す角の角度が120度と比較される。そして、120度未満であった点は特徴点とされる。図51に示す例では、点P600が特徴点とされる。そして、経路曲線650が特徴点で分割される。図51に示す例では、縫目経路始点P601から特徴点P600までである分割曲線651と、特徴点P600から縫目経路終点P602までである分割曲線652の2つの曲線に分割される。なお、特徴点がm個あれば、m+1個の曲線に分割され、特徴点がなければ、経路曲線は分割されずに、1本の曲線として以下の処理が行われる。
まず、各分割曲線上に配置される針落ち点の個数が算出される。そのために、分割曲線の長さが算出される。これは、それぞれの分割曲線をなす点において隣り合った点同士の距離を算出して合計すればよい。そして、分割曲線の長さをピッチ情報記憶エリア1202に記憶されているピッチの長さで割られ、商が求められる。そして、この商の小数点以下の値が四捨五入され、「1」が加算された値が、分割線分上に配置する針落ち点の個数とされる。
次いで、この分割曲線における針落ち点間の距離が算出される。具体的には、「針落ち点間の距離=分割曲線の長さ/針落ち点の個数+1」とされる。そして、図52に示すように、その分割曲線の一端に針落ち点が配置され、そこから針落ち点間の距離だけ分割曲線上を進んだ点が次の針落ち点とされ、さらにそこから針落ち点間の距離だけ分割曲線上を進んだ点が次の針落ち点とされ、分割曲線の他端が針落ち点とされる。ここで、針落ち点とされた点の座標がステッチ情報記憶エリア1209に記憶される。
図52に示す例では、分割曲線651は、縫目経路始点P601に針落ち点P701が配置され、特徴点P600に針落ち点P700が配置され、針落ち点P701と針落ち点P700との間に6個の針落ち点が等間隔に配置されている。そして、縫目経路終点P602に針落ち点P702が配置され、針落ち点P700から針落ち点P702の間に等間隔に6個の針落ち点が配置されている。
このようにして、経路曲線を特徴点で分割し、分割曲線においてピッチ情報記憶エリア1202に記憶されている値に基づいて、針落ち点の間隔を算出することにより、特徴点と特徴点との間、特徴点と縫目経路始点又は終点との間では、針落ち点間隔が均一になるので、美しい形状の模様のステッチを形成する縫製データを得ることができる。
さらに、経路曲線には単位模様が配置されている。曲線経路に配置されている単位模様についての針落ち点の情報は、配置基準点589(図20参照)を始点及び終点として、単位模様記憶エリア122に記憶されている。そこで、単位模様の配置点ごとに、ピッチ情報記憶エリア1202に記憶されている針落ち点ののうち、最も配置点に近い針落ち点が探索され、その最も近い針落ち点の次の針落ち点が配置点とされる。そして、その点を配置基準点として、単位模様を形成するための他の針落ち点の座標が決定される。
具体的には、ピッチ情報記憶エリア1202の最も近いとされた針落ち点を示す座標の次に、配置点の座標が挿入される。そして、配置点における経路曲線の接線の傾きが算出される。そして、配置基準点を軸点に接線の傾きに併せて単位模様を形成するためのその他の針落ち点の座標を回転させる。そして、配置基準点を配置点として、回転後の他の針落ち点の座標が算出される。そして、ピッチ情報記憶エリア1202の基準点の座標の後に他の針落ち点の座標群が挿入される。最後に、最も近いとされた針落ち点を示す座標がピッチ情報記憶エリア1202に記憶される。このようにして、曲線経路を形成するステッチを生成する針落ち点の情報に、単位模様を形成するステッチを生成する針落ち点の情報が追加される。
なお、上記実施の形態において、図5に示すメイン処理のS7で輪郭線網を作成する処理を行うCPU11が「輪郭線網作成手段」に相当し、S8で縫目経路始点及び縫目経路終点を決定する処理を行うCPU11が「縫目経路始点終点決定手段」に相当し、S9で初期縫目経路を作成する処理を行うCPU11が「縫目経路作成手段」に相当する。そして、図6の移動処理のS24で移動パターンAに該当するか否かの判断処理を行うCPU11、S25で移動パターンBに該当するか否かの判断処理を行うCPU11が「移動判断手段」に相当し、図6の移動処理のS27で縫目経路を移動させる処理を行うCPU11、S32で縫目経路を移動させる処理を行うCPU11が「縫目経路移動処理」に相当する。そして、図6に示す移動処理を行うCPU11が「縫目経路調整手段」に相当し、図5に示すメイン処理のS11で縫製データを作成する処理を行うCPU11が「縫製データ作成手段」に相当する。
そして、図5に示すメイン処理のS12で変形縫目経路を作成する処理を行うCPU11が「縫目経路変形手段」に相当し、S13で縫目経路を曲線化する処理を行うCPU11が「曲線化手段」に相当する。そして、S4の処理で基準距離の入力を受け付ける処理を行うCPU11が「基準距離指定手段」に相当する。
図5に示すメイン処理のS6において全体縫製領域110からオフセットを与えた縫製領域119を決定する縫製領域のオフセット処理を行うCPU11が「縫製領域決定手段」に相当する。そして、図7に示す単位模様配置処理のS59,図8に示す配置予定位置移動処理のS74,S85の処理において、所定領域内に配置点が存在するか否かの判断を行うCPU11が「配置判断手段」に相当し、図8に示す配置予定位置移動処理のS71〜S74で配置予定点を後退方向へ移動させる処理を行うCPU11が「第一予定位置移動手段」に相当し、S75,S91で所定領域内に移動点がない場合に配置予定点を配置点とする処理を行うCPU11が「配置確定手段」に相当する。そして、S74,S75で配置予定点を移動させた後に、所定領域内に配置点が存在するか否かの判断を行うCPU11が「繰り返し判断制御手段」に相当し、S71〜S75,S84で後退方向に所定回数移動させても所定領域内に配置点が存在した場合に、進行方向へ配置予定点を移動させる処理を行うCPU11が「第二予定位置移動手段」に相当する。そして、S5で基準距離に単位模様の高さを加算して基準距離のオフセット処理を行うCPU11が「基準距離調整手段」に相当する。
なお、本発明の縫製データ作成装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。上記実施の形態では正六角形を単位領域としているが、正六角形に限らず、線対称な六角形であってもよい。六角形では角度が180度を超える頂点のない六角形が望ましい。正三角形、長方形、ひし形、平行四辺形、五角形等の多角形であってもよい。これらの多角形においても、また、配置する際の単位領域の向きは一定の方向である必要はない。また、上記実施の形態では、縫製領域に隙間なく正六角形を配置しているが、単位領域同士が接していれば、隙間があってもよい。
また、上記実施の形態では、縫製領域119内に満遍なく配置された縫目経路410を変形処理(S12)により変形させ、ベジェ曲線化処理(S13)により曲線化した後に、曲線上に針落ち点を配置してステッチ情報を作成した。しかしながら、S10の移動処理が終了した後の縫目経路上に針落ち点を配置してステッチ情報を作成したり、S11の特殊処理が終了した後の縫目経路上に針落ち点を配置してステッチ情報を作成したり、S12の変形処理が終了した後の変形縫目経路上に、単位模様を配置した後にステッチ情報を作成したりしてもよい。
また、上記実施の形態では、図5に示すメイン処理のS6において全体縫製領域110からオフセットを与えた縫製領域119に対して縫目経路を作成しているが、オフセットを与えずに、全体縫製領域110に対して縫目経路を作成してもよい。この場合には、図5に示すメイン処理のS6の処理を行わずに、全体縫製領域110に対してS7の輪郭線網の作成処理を行えばよい。
また、上記実施の形態では、縫製データ作成のメイン処理にて曲線経路の情報を作成していた。しかしながら、単位模様を配置する際に曲線経路を必ずしも作成する必要はない。曲線経路を作成せずに、既に作成されてハードディスク装置120に記憶されている曲線経路を用いたり、他の装置で作成された曲線経路をメモリカード115やCD−ROM114から読み込んで用いたりしてもよい。また、縫製データ作成装置1がネットワークに接続されていれば、ネットワークに接続している他の装置に記憶されている曲線経路を用いてもよい。また、ここで用いる曲線経路は、スティップリングステッチのために作成された曲線経路に限らず、1本の曲線を示す情報であればよい。例えば、作図ソフトで描画された曲線や、数式をグラフ化した曲線などであってもよく、複数の点の集合で曲線を表している情報であれば、曲線経路として用いることができる。
図53は、このように既に作成されている曲線経路に単位模様を配置して、縫製データを作成する場合のフローチャートである。図53に示すように、図5に示したフローチャートと同様に、まず、開始点及び終了点の指定が行われ(S101)、飾り模様として付けられる単位模様の選択、及び単位模様の配置間隔の入力が行われ(S102)、ピッチの入力が受け付けられる(S103)。次いで、基準距離の入力が受け付けられる(S104)。そして、基準距離のオフセット処理が行われる(S105)。そして、曲線経路の入力が行われる(S106)。ここでは、縫製データ作成装置1においてデータファイルを参照することのできる記憶媒体から、曲線経路を記したデータファイルをユーザに選択させ、選択されたデータファイルのデータを読み込み、RAM12に記憶されることにより、曲線経路の入力が行われる。なお、縫製データ作成装置1においてデータファイルを参照することのできる記憶媒体とは、縫製データ作成装置1のハードディスク装置1、CD−ROM114又はメモリカード115が装着されている場合には装着されているCD−ROM114又はメモリカード115、ネットワークに接続しており接続している端末の記憶媒体にアクセスできる場合には、接続している端末に備えられネットワークに開放されている記憶媒体である。
そして、上記実施の形態と同様に模様配置処理が行われ(S107)、ステッチ生成処理が行われ(S108)、ステッチ情報記憶エリア1209に記憶されている針落ち点の情報に基づいて、刺繍ミシン3で縫製可能なデータである縫製データが作成され(S109)、本処理は終了する。このように作成された縫製データに基づいて、刺繍ミシン3が駆動され、刺繍枠31に保持された加工布にスティップリングステッチと飾り模様としての単位模様とが縫製される。
また、上記実施の形態では、単位模様記憶エリア122に記憶されている単位模様を、曲線経路上に配置する際の向きを、曲線経路の進行方向としていたが、これをユーザに指定させるようにしてもよい。例えば、「曲線経路の進行方向」だけでなく、「経路曲線の後退方向」「経路曲線の進行方向に対して右の方向」、「経路曲線の進行方向に対して左の方向」、「縫製領域119の下方向(y座標の大きい方向)」、「縫製領域119の上向(y座標の小さい方向)」、「縫製領域119の右方向(x座標の大きい方向)」、「縫製領域119の左方向(x座標の小さい方向)」などである。これらの種々の方向を選択可能に表示した画面をディスプレイ24に表示し、マウス21やキーボード22の操作によりユーザに選択させることにより、単位模様の向きを入力させればよい。このように、単位模様の向きを選択可能に表示させ、それに対する選択の入力を受け付ける処理を行うCPU11が「向き指定手段」に相当する。
図54乃至図58を参照して、単位模様の向きを様々に指定した場合について説明する。図54は、単位模様450を示す模式図であり、図55は、配置点DP41〜DP45を有する経路曲線470を示す説明図460である。そして、図56は、単位模様450が曲線経路の後退方向に経路曲線470の配置点DP41〜DP45に配置された状態を示す説明図461である。図57は、単位模様450が経路曲線の進行方向に対して右の方向に経路曲線470の配置点DP41〜DP45に配置された状態を示す説明図462である。図58は、単位模様450が縫製領域の下方向に経路曲線470の配置点DP41〜DP45に配置された状態を示す説明図463である。
図55乃至図58において、曲線経路480の進行方向は紙面右から左とする。つまり、配置点DP41,DP42,DP43,DP44,DP45の順で始点側から終点側へ向かっている。そして、図55乃至図58において、紙面横方向をx軸、縦方向をy軸とし、x軸は左から右へ増加し、y軸は上から下へ増加する座標系が与えられているものとする。また、図54においても、紙面横方向をx軸、縦方向をy軸とし、x軸は左から右へ増加し、y軸は上から下へ増加する座標系が与えられており、単位基準点451を始点終点とした針落ち点の座標が単位模様記憶エリア122に記憶されているとする。
図56は「曲線経路の後退方向」に配置した状態を示す模式図461である。図56に示すように、経路曲線470の接線ベクトル471に沿って、単位模様の上方向を向けて配置されている。この場合には、ステッチ生成処理(図5、S15)において、単位模様を形成する針落ち点の座標を、単位基準点451を中心として回転させる。接線の傾きがx軸に対して180度(x座標の負の方向(図56における左)を向いている)であれば、−90度回転させる。そして、回転後の座標を単位模様の針落ち点をステッチ情報記憶エリア1209に記憶する。
図57は、「経路曲線の進行方向に対して右の方向」に配置した状態を示す模式図462である。図57に示すように、経路曲線470の接線ベクトル471の垂線ベクトル472に沿って、単位模様の上方向を向けて配置されている。この場合には、ステッチ生成処理(図5、S15)において、単位模様を形成する針落ち点の座標を、単位基準点451を中心として回転させる。垂線ベクトル472の傾きがx軸に対して90度(y軸の負の方向(図55における上)を向いている)であれば、0度回転させる。回転後の座標を単位模様の針落ち点をステッチ情報記憶エリア1209に記憶する。
図58は、「縫製領域119の下方向(y座標の大きい方向)」に配置した状態を示す463である。図58に示すように、単位模様はすべて下方向(y座標の大きい方向)を向いている。この場合には、ステッチ生成処理(図5、S15)において、単位模様を形成する針落ち点の座標を、単位基準点451を中心として180度回転させる。そして、回転後の座標を単位模様の針落ち点をステッチ情報記憶エリア1209に記憶する。
なお、単位模様の向きはこれらに限らない。また、単位模様の向きは1つに限らず、複数の方向を順に用いてもよい。
また、上記実施の形態では、1種類の単位模様を選択しているが、複数の単位模様がセットで単位模様記憶エリア122に記憶されていてもよい。この場合には、複数の単位模様が順に配置されることとなる。図59は、図54に示した単位模様450と花型の単位模様481の2つの単位模様がセットで単位模様記憶エリア122に記憶されている場合の縫製された状態を模式的に示す説明図480である。このように複数の単位模様がセットとされている場合には、図59に示すように、2種類の単位模様のセットが順に配置され、交互に単位模様450,481が配置されることとなる。
なお、複数の単位模様の数は図59に示したように2種類である必要はなく、3種類、4種類、100種類など2以上の数であってもよいことはいうまでもない。また、図59では、単位模様450,481を共に曲線経路の進行方向に向けて配置しているが、それぞれの単位模様ごとに異なる向きであってもよい。さらに、単位模様ごとにユーザが向きを指定するようにしてもよい。また、複数の単位模様をセットで記憶しているのではなく、複数の単位模様を単独で単位模様記憶エリア122に記憶し、ユーザが配置したい単位模様を選択するようにしてもよい。この際に、単位模様の向きをそれぞれ選択させたり、すべての単位模様の向きを一括で選択させたりしてもよい。
また、単位模様の配置間隔は1種類ではなく、単位模様ごとに設定してもよい。例えば、図59に示す例では、単位模様450の後に設けられる間隔は10mm、単位模様481の後に設けられる間隔は15mmというように異なる値を設定してもよい。この場合には、配置位置の決定には小さい値を用いればよい。また、上記実施の形態では、配置間隔をユーザにより入力させているが、予め定められた値を用いるようにしてもよい。例えば、単位模様ごとに配置間隔を決めたり、縫製領域の面積やサイズ、単位模様のサイズに基づいて決めたりしてもよい。
また、上記実施の形態では、単位模様記憶エリア122において、単位模様ごとにその大きさが決まっていた。しかしながら、基本となる図形の情報のみを記憶させておき、ユーザに単位模様のサイズを指定させてもよい。
また、上記実施の形態では、曲線経路のステッチを生成するための針落ち点に単位模様のステッチを生成するためのステッチを挿入して、ピッチ情報を作成した。つまり、スティップリングのラインを縫製しながら、飾り模様も縫製するという縫製データである。しかしながら、スティップリングのラインと飾り模様を別々に縫製するような縫製データでもよい。例えば、スティップリングの糸色と飾り模様の糸色とを異なるものとする場合には、ラインのピッチ情報と飾り模様のピッチ情報とを別々に作成する必要がある。また、飾り模様に複数の色を用いる場合には、色ごとにピッチ情報を作成すればよい。このような場合には、ラインのピッチ情報は上述したように飾り模様の針落ち点を挿入せずに、曲線経路のピッチ情報を作成しなければよい。一方、飾り模様のピッチ情報は、上記実施の形態で曲線経路から作成されたピッチ情報に挿入した針落ち点のみでピッチ情報を作成すればよい。そして、このように作成された縫製データに基づいて、本発明の実施形態の刺繍ミシン3ではなく、複数の針棒を備える所謂多針の刺繍ミシンを用いて縫製するように構成してもよい。このときは、予め所望の糸色の糸駒を夫々の針棒にセットしておけば、糸色を変更するために、その都度糸駒を交換する煩雑な作業をしなくてもよい。
また、上記実施の形態では、単位領域のサイズを決定する際に単位模様のサイズをオフセットとして加算したが、加算する値は単位模様の高さそのものでなくてもよく、所定の値(例えば、0.9,1.1,1.2など)を掛けた値であってもよい。また、縫製領域のオフセット量も、単位模様の高さ×1/2としたがこの値に限らない。単位模様の高さに掛ける値は1/2でなく所定の値(例えば、0.55,0.6など)であってもよい。また、上記実施の形態では、配置点を決定する際に、最後の配置点からの距離(配置間隔)の1/10ずつ5回まで移動させたが、移動量、移動回数はこれに限らない。移動量は最後の配置点からの距離の1/9,1/11などの他の所定の値であってもよく、また、0.2mmなど最後の配置点からの距離の距離に基づかない値であってもよい。また、移動回数も、5回まで、つまり、最後の配置点と配置予定点との真ん中まで移動させた状態で終了させているが、これより多く移動させたり、これより少なく移動させたりするだけであってもよい。なお、この回数は移動量により異なることはいうまでもない。
また、上記実施の形態では、基準距離を1つ設定し、単位領域のサイズと、分岐点を移動させて変形縫目経路を作成する際の円の半径とに利用している。しかし、単位領域のサイズ用の基準距離と、円の半径用の基準距離との2つの基準距離を別々に入力させるようにしてもよい。また、基準距離をユーザにより入力させるのではなく、予め定められた値を用いるようにしてもよい。また、縫製領域の面積やサイズに基づいて決定するようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、また、縫目経路始点を開始点に最も近い分岐点としているが、分岐点でなく、開始点に最も近い辺線分上の点であってもよい。縫目経路終点でも同様である。また、開始点及び終了点を縫製領域119の輪郭線111上の点としているが、縫製領域119内の点としてもよい。また、開始点及び終了点をユーザが指定するのではなく、任意の点をプログラムで設定してもよい。
また、上記実施の形態では、初期縫目経路310を作成する際に、縫製領域119の輪郭線近くを時計回りに辿るようにしたが、反時計回りに辿るようにしてもよいことはいうまでもない。
また、移動処理において、乱数発生プログラムを用いる際に、再現性を得るために、分岐点の縫目経路における順番を引数としたが、それ以外の値、例えば分岐点の座標を用いてもよい。また、引数に与える値を配列として記憶し、配列の1番目の値から順に用いるようにしてもよい。また、必ずしも再現性を得る必要はなく、引数をその都度異なる値としてもよい。例えば、時刻を引数に用いればよい。乱数発生プログラムを用いるのではなく、確率判断に用いる値を記憶した配列を記憶しておき、その配列から順に値を読み出して用いるようにしてもよい。また、移動経路を実際に移動させるか否かの判断を確率により行うのではなく、移動パターンに該当した場合に、所定回数おきに実際に移動させるようにしてもよい。また、縫目経路を実際に移動させるか否かの判断を行わずに、移動パターンに該当した場合にはすべて縫目経路を移動させるようにしてもよい。
また、上記実施の形態では1つの単位領域(正六角形)上の頂点(輪郭線上の分岐点)を走査して、縫目経路を移動させることができるか否かの判断を行ったが、1つの単位領域の輪郭線上の分岐点を走査するのではなく、複数の単位領域の外周上の分岐点を走査して、縫目経路を移動させることができるか否かの判断を行ってもよい。
また、上記実施の形態では、縫目経路410上のすべての分岐点を移動させて、変形縫目経路510を作成したが、すべての分岐点を移動させるのではなく、一部の分岐点のみを移動させてもよい。例えば、偶数番目の分岐点のみ移動させたり、3の倍数の順序の分岐点のみ移動させたり、分岐点ごとに乱数により所定の確率で移動させるか否かの判断を行ってもよい。また、第一の移動のみ行ってもよく、第二の移動のみ行ってもよい。また、ある点では第一の移動のみ、別の点では第二の移動のみ、また別の点では第一の移動及び第二の移動を行うようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、移動処理(図5,S10、図6)において、移動パターンA又は移動パターンBに該当した場合に縫目経路を移動させるか否かの判断を行っており、「移動させる」と判断される確率を「モード1」,「モード2」,「モード3」で異なるものとしている。そして、「モード1」,「モード2」,「モード3」の順でモードは適用され、「モード1」,「モード2」,「モード3」の順で「移動させる」と判断される確率は高くなるように設定されている。つまり、移動パターンA又は移動パターンBに該当した場合には、「縫目経路を移動させるか否かの判断」を設定された確率に基づいて行っており、さらに、段階的に確率が高くなるようなモード設定が行われている。これにより、よりバランスのよい形状の模様のステッチを形成する縫製データを作成可能としている。この各モードの確率設定において、各モードで用いられる確率は上記実施の形態に示した確率に限らないことはいうまでもない。また、さらに多くの段階のモードが設けられていたり、より少ない段階のモードが設けられていたりしてもよい。この場合においても、後に適用されるモードの方が確率が高くなるように設定されている方が、移動可能な縫目経路がなくなるまでの処理時間が短くなるので、望ましい。また、段階的なモードを設けなくともよい。
さらに、「モード1」においては、移動パターンAに該当する場合に、注目点が初期縫目経路310上の点であるか否かにより2つの場合に分けられており、移動パターンBに該当する場合には、注目点の時計回りで左隣となる分岐点が、移動パターンBに該当して変形された際に縫目経路上の点とされた点であり、かつ、現在の注目点が、縫目経路を移動させた際の注目点に対して正六角形の対向した頂点であるかにより2つの場合に分けられており、それぞれの場合に異なる確率が用いられている。しかしながら、注目点がどのような点に該当するか否かの場合分けの条件は上記に示すものに限らないことはいうまでもなく、より多くの場合分けが行われていてもよい。
また、移動パターンA又は移動パターンBに該当した場合に縫目経路を移動させるか否かの判断を行わずに、移動パターンA又は移動パターンBに該当した場合には必ず縫目経路を移動させるようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、モード3における確率を移動パターンA,Bともに「1」としているので、移動パターンA又は移動パターンBに該当する縫目経路(移動可能な縫目経路)がなくなるまで、縫目経路を移動させる処理が繰り返して実施されている。しかしながら、移動可能な縫目経路がなくなるまで処理を繰り返さずに、移動可能な縫目経路が残っている状態で移動処理を終了させてもよい。
また、本発明は、以上説明したように、刺繍ミシン3を用いて、刺繍枠31に保持された加工布にスティップリングステッチと飾り模様とを縫製するという実施の形態に限定されるものではなく、スティップリングステッチと飾り模様との縫製データに基づいて、針棒35を左右方向に針振りさせる針振り機構(図示外)と、送り歯(図示外)を前後方向又は前後左右方向に駆動する送り機構(図示外)とを夫々駆動制御する、又は針振り機構は駆動せずに送り機構だけを駆動制御することによって、加工布を移動させてスティップリングステッチと飾り模様とを縫製するようにしてもよい。