JP4864220B2 - 吸着剤、空気浄化フィルタ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばクリーンルーム、クリーンベンチやクリーン保管庫などといった高度清浄雰囲気を要する設備や装置において、雰囲気中のガス状塩基性不純物を除去するために使用される吸着剤、及びこの吸着剤を有する空気浄化フィルタとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造工程のうち露光工程では、使用される光増幅型レジストが雰囲気中の微量アンモニアガス成分で特性劣化を起こすことが知られている。露光工程における雰囲気中のアンモニア濃度は、SEMATECHが1995年5月31日に発表したTechnology Transfer #95052812A-TR「Forecast of Airborne Molecular Contamination Limits for the 0.25 Micron High Performance Logic Process」によれば、1ppb以下にしなければならないとされている。
【0003】
露光工程雰囲気のアンモニア濃度を低減させるための手段としては、例えば特開平11−333226号公報に記載されているように、けいそう土、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナの混合物、ケイ酸アルミニウム、活性アルミナ、多孔質ガラス、活性白土、活性ベントナイト及び合成ゼオライトから選ばれる少なくとも一種の無機系粉末に硫酸アルミニウム等の無機酸塩を添着した吸着剤を含む空気浄化フィルタが知られている。また例えば特開昭61−103518号公報に記載されているように、活性炭の粉末にポリリン酸二水素アルミニウム等の難水溶性固体酸を添着した吸着剤を含む空気浄化フィルタが知られている。
【0004】
これらの空気浄化フィルタを通過する雰囲気中のアンモニアは、無機酸塩又は固体酸と中和反応を起こして固定化され、雰囲気中から除去される。一方でこれらの空気浄化フィルタは、使用に伴い微量の塩化水素を発生することが知られている。
【0005】
ここで前述したアンモニア除去用の空気浄化フィルタから塩化水素が発生するメカニズムについて説明する。なおここでは前述した特開平11−333226号公報に記載の空気浄化フィルタを例に説明する。
【0006】
前述した無機系粉末には塩化ナトリウム(NaCl)や塩化マグネシウム(MgCl2)等の塩化物が不純物として含まれている。さらに前述した無機酸塩にも塩化物イオンが塩化アルミニウムの形態で不純物として含まれている。
【0007】
硫酸アルミニウムや硝酸アルミニウム等の無機酸塩を無機系粉末に担持させる工程としては浸漬工程と乾燥工程とが一般に知られている。不純物としてNaClやMgCl2を含む無機系粉末を無機酸塩の水溶液に浸漬すると、無機系粉末中のNaClやMgCl2は溶解し、Cl-となる。浸漬後の無機系粉末を乾燥する乾燥工程では粉末由来のCl-が塩化アルミニウムとなって析出する。
6NaCl + Al2(SO4)3 → 3Na2SO4 + 2AlCl3 (1)
3NaCl + Al(NO3)3 → 3NaNO3 + AlCl3 (2)
3MgCl2 + Al2(SO4)3 → 3MgSO4 + 2AlCl3 (3)
3MgCl2 + 2Al(NO3)3 → 3Mg(NO3)2 + 2AlCl3 (4)
【0008】
また硫酸アルミニウム溶液や硝酸アルミニウム溶液に元々不純物として含まれていた塩化アルミニウムも、浸漬後の乾燥工程で析出する。
【0009】
塩化アルミニウムが析出した前記吸着剤を用いた空気浄化フィルタにクリーンルーム雰囲気を通気すると、析出物である塩化アルミニウムが通気空気中の水分により加水分解して塩化水素を発生する。
AlCl3 + 3H2O → Al(OH)3 + 3HCl (5)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前記SEMATECH #95052812A-TRによれば、フッ酸、硫黄酸化物、窒素酸化物、塩化水素等の酸性ガスは、露光工程では10ppb以下にすれば良いとされている。すなわち露光工程では、アンモニア除去用の空気浄化フィルタが吸着剤等のフィルタ構成素材に不純物として元々含んでいた塩素化合物由来の塩化水素を数ppb放出してもなんら問題を生じない。
【0011】
しかし半導体製造工程におけるシリサイド工程や配線工程では前記酸性ガスが製品の特性劣化を起こすことが知られている。前記SEMATECH #95052812A-TRによれば、シリサイド工程における雰囲気中の酸性ガス濃度は180ppt以下、配線工程における雰囲気中の酸性ガス濃度は5ppt以下と厳しい制御が要求されている。
【0012】
したがって露光工程、シリサイド工程、配線工程などの複数のプロセスが大きな一つのクリーンルーム内で行われる場合に前述したアンモニア除去用の空気浄化フィルタを用いると、露光工程では全く問題を生じなくても、空気浄化フィルタから発生した数ppb程度の塩化水素がシリサイド工程や配線工程に拡散し、酸性ガスに敏感なこれらの工程で製品の品質低下を招くことがある。このような場合に用いられる空気浄化フィルタには、アンモニアの除去能力が優れていることのみならず、空気浄化フィルタ自身から塩化水素を発生しないことが要求される。
【0013】
本発明は前記事項に鑑みなされたものであり、空気中のアンモニアを除去し、かつ空気中に塩化水素を発生しない吸着剤、この吸着剤を有する空気浄化フィルタ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段として本発明は、アンモニアを固定化するアンモニア固定化剤と、アンモニア固定化剤を担持する担体とを有する吸着剤において、銀イオンを含む水系媒体中でアンモニア固定化剤を担体に担持させたことを特徴とする吸着剤を提供する。
【0015】
この吸着剤によれば、アンモニア固定化剤を有することから空気中のアンモニアを除去することが可能であり、かつアンモニア固定化剤及び担体に不純物として含まれる塩化物を塩化銀という加水分解しない塩とすることから吸着剤からの塩化水素の発生を防止することが可能である。
【0016】
また本発明において前記水系媒体には硫酸銀及び硝酸銀の少なくともいずれかを含むことが好ましい。これらの銀化合物を用いることにより、前述の塩化銀生成における余剰分が担体に担持されることから、気相中の塩化水素の除去にも効果が期待される。
2AlCl3 + 3Ag2SO4 → Al2(SO4)3 + 6AgCl↓ (6)
AlCl3 + 3AgNO3 → Al(NO3)3 + 3AgCl↓ (7)
【0017】
また本発明において前記アンモニア固定化剤は無機酸塩であることが好ましく、さらに硫酸アルミニウム及び硝酸アルミニウムの少なくともいずれかを含むことがより好ましい。
【0018】
また本発明において前記担体は、けいそう土、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナの混合物、ケイ酸アルミニウム、活性アルミナ、多孔質ガラス、活性白土、活性ベントナイト、合成ゼオライト、及び活性炭の中から選ばれる少なくとも一種を含む粉体であることが好ましい。
【0019】
すなわち本発明の吸着剤は、けいそう土、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナの混合物、ケイ酸アルミニウム、活性アルミナ、多孔質ガラス、活性白土、活性ベントナイト、合成ゼオライト、及び活性炭の中から選ばれる少なくとも一種からなる担体に、硫酸アルミニウム及び硝酸アルミニウムの少なくともいずれか一方又は両方と、硫酸銀及び硝酸銀の少なくともいずれか一方又は両方とを添着させた吸着剤であることが好ましい。
【0020】
また本発明は、前記課題を解決するための手段として、通気路中に吸着剤を支持するための支持体の表面に本発明の吸着剤を有する空気浄化フィルタを提供する。
【0021】
本発明において前記支持体はハニカム構造体であることが好ましい。
【0022】
本発明の空気浄化フィルタは公知のごとく支持体に吸着剤を固着させることで製造することができるが、本発明では前記課題を解決するための手段として、塩化水素の発生を防止する上でより好適な製造方法を提供する。
【0023】
すなわち本発明は、アンモニアを固定化するアンモニア固定化剤と、このアンモニア固定化剤を担持する担体と、この担体を表面に有する支持体とから構成される空気浄化フィルタを製造する方法において、銀イオンを含む水系媒体中でアンモニア固定化剤と担体と支持体の材料とを混合し、この混合物を所定の形状に成形することを特徴とする空気浄化フィルタの製造方法を提供する。
【0024】
また本発明は、アンモニアを固定化するアンモニア固定化剤と、このアンモニア固定化剤を担持する担体と、この担体を表面に有する支持体とから構成される空気浄化フィルタを製造する方法において、銀イオンを含む水系媒体中でアンモニア固定化剤と担体とを混合し、この水系媒体中に支持体を浸漬し、水系媒体から支持体を取り出して乾燥させることを特徴とする空気浄化フィルタの製造方法を提供する。
【0025】
また本発明は、アンモニアを固定化するアンモニア固定化剤と、このアンモニア固定化剤を担持する担体と、この担体を表面に有する支持体とから構成される空気浄化フィルタを製造する方法において、アンモニア固定化剤と銀イオンとを含む水系媒体に担体を表面に固着させた支持体を浸漬し、水系媒体から支持体を取り出して乾燥させることを特徴とする空気浄化フィルタの製造方法を提供する。
【0026】
前述したこれらの製造方法によれば、空気浄化フィルタの各構成要素に不純物として含まれる塩素化合物を塩化銀として固定化することことから、塩化水素の発生防止の観点からより優れた製造方法を提供することが可能である。
【0027】
【発明の実施の形態】
<吸着剤>
本発明の吸着剤は、アンモニアを固定化するアンモニア固定化剤と、アンモニア固定化剤を担持する担体とを有する吸着剤において、銀イオンを含む水系媒体中でアンモニア固定化剤を担体に担持させたことを特徴とする。
【0028】
前記アンモニア固定化剤は、アンモニアを固定化できるものであれば特に限定されず、このようなアンモニア固定化剤には例えば、強塩基性の四級アンモニウム基及びより低級のアミンなどの弱塩基性基をビニロン系繊維等に導入した塩基性陰イオン交換樹脂、ポリリン酸二水素アルミニウムなどの固体酸、及び無機酸塩等を例示することができる。これらの中でも本発明に用いられるアンモニア固定化剤としては、有機系ガス状汚染物質や酸性ガスの発生防止及び耐熱性や耐久性の向上、製造工程の簡略化等の観点から、無機酸塩を用いることが好ましい。
【0029】
アンモニア固定化剤としての無機酸塩としては、アンモニア吸着(固定化)能力を有するものであれば特に限定されず、例えば炭酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、及びリン酸塩等を例示することができる。これらの中でも本発明に用いられる無機酸塩としては、アンモニアの吸着能力やアンモニア吸着に伴う副生ガス状物質の発生防止、及び無機酸塩の物性等の観点から強酸と弱塩基との塩であることが好ましく、硫酸アルミニウムや硝酸アルミニウムを用いることがより好ましい。なおアンモニア固定化剤には市販品を用いることができ、アンモニア固定化剤として無機酸塩を用いる場合では、市販品や対応する酸及び塩基の中和反応によって生成したものを用いることができ、一種又は二種以上を用いても良い。
【0030】
前記担体は、アンモニア固定化剤を担持することのできるものであれば特に限定されず、気相中の対象物質を吸着する際に用いられる公知の担体を本発明では用いることができる。このような担体としては例えば粉末状の担体を好ましくは例示することができ、粉末状の担体の中でもけいそう土、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナの混合物、ケイ酸アルミニウム、活性アルミナ、多孔質ガラス、活性白土、活性ベントナイト、合成ゼオライト、及び活性炭等を用いることが、アンモニア以外のガス状汚染物質も含めたガス状汚染物質を吸着(固定化)する上でより好ましい。
【0031】
これらの粉末は市販品を用いても良いし、原料粉末から公知の手法によって生成しても良い。一例を挙げるならば、けいそう土やケイ酸アルミニウムとしては例えば市販されている天然物が使用される。シリカとしては例えばシリカゲルが使用される。アルミナとしては例えばアルミナゲルが使用される。シリカとアルミナの混合物としては例えばシリカゲルとアルミナゲルの混合物が使用される。活性アルミナとしては例えば水酸化アルミニウムを加熱脱水(450℃)したものが使用される。多孔質ガラスとしては例えばホウケイ酸塩ガラスの分相を利用して作られたものが使用される。活性白土としては例えば酸性白土を硫酸処理したものが使用される。活性ベントナイトとしては例えばCa型ベントナイトや酸性白土を熱硫酸で処理しモンモリナイトのアルミニウムやマグネシウムを溶出させて細孔の多い表面を有する過剰ケイ酸としたものが使用される。合成ゼオライトとしては例えばケイ酸ナトリウム溶液とアルミン酸ナトリウム溶液とを混合し生じたゲルを乾燥、粉砕したものが使用される。活性炭としては例えば原料炭化物を水蒸気や薬品により賦活化したものが使用される。
【0032】
これらの粉末は酸に侵されにくい性質を有することが耐久性等の観点から好ましい。またこれらの粉末は細孔を有しており比表面積が大きいことから、アンモニア固定化剤によるアンモニアの固定化や後述する水系媒体の浸透等においてより一層の効果が得られる。さらに例示したような粉末の中でも無機系の粉末を用いると、アンモニア固定化剤を担持した後に高温でのベーキングが可能となり、空気浄化時に問題となる不純物ガスを予め除去する観点から好ましい。
【0033】
前述した粉末の担体を用いる場合では、粉末のまま用いても良いし、所定の形状に加工して用いても良い。加工としては造粒を例示することができる。このような加工によれば、粉末状よりもさらに扱いやすい剤型で粉末と同等の性状を有する担体を形成することができる。
【0034】
前述した加工においては、粉末同士の固着を補助するためにバインダを用いても良い。このようなバインダとしては、粉末の加工(例えば造粒等)で用いられる公知のバインダを用いることができるが、耐熱性や耐久性、さらにはガス状汚染物質の発生防止等の観点から、有機系バインダよりも無機系バインダを用いることが好ましい。このような無機系バインダとしては、例えばタルク、カオリン鉱物、ベントナイト、けいそう土、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナの混合物、ケイ酸アルミニウム、活性アルミナ、多孔質ガラス、リボン状構造の含水ケイ酸マグネシウム、及び合成ゼオライト等を例示することができる。バインダには市販品を用いることができ、必要に応じて一種又は二種以上が用いられる。
【0035】
前記水系媒体は銀イオンを含むものであれば特に限定されない。なお本発明における水系媒体とは水を主成分とする媒体であって、銀イオンを含むことのできるものをいう。例えば水系媒体としては、金属の銀を溶解できる酸や、銀を含む塩を溶解できる水系媒体も用いることができる。水系媒体には銀イオンの含有を妨げない範囲において、分散剤等の種々の添加物を添加しても良い。
【0036】
前記銀イオンは、その供給源となる物質を水系媒体の物性に応じて水系媒体に投入することで発生する。銀イオンの供給源となる物質としては、例えば銀イオンの供給源となる銀そのものや、水系媒体中で溶解して銀イオンを放出する銀化合物等を挙げることができる。銀化合物としては、例えば硫酸銀や硝酸銀等を好ましい銀化合物として挙げることができる。また銀化合物は一種又は二種以上を用いても良い。
【0037】
銀イオンを含む水系媒体は、市販品の銀化合物を水系媒体に添加することでも調製することができ、酸に銀を添加することでも調製することができる。銀イオンを含む水系媒体の調製については、銀イオンの供給源となる物質の種類や、アンモニア固定化剤や担体等、本発明で用いられる材料中に不純物として含まれる塩素化合物の総量によって異なるが、前記材料中の塩素化合物の総量に応じて適当量の銀イオンが含まれるように前記水系媒体を調製することが好ましい。
【0038】
アンモニア固定化剤を担体に担持させる際の水系媒体は、アンモニア固定化剤及び前述した銀化合物を水に添加したものでも良いし、アンモニア固定化剤として無機酸塩を用いる場合では、酸に銀を投入し、無機酸塩に対応する塩基を余剰の酸と中和させたものでも良い。
【0039】
アンモニア固定化剤は、アンモニア固定化剤に対する担体の担持能力やアンモニア固定化剤の物性及びアンモニア固定化能力等に応じて必要量を水系媒体に添加すれば良い。また銀イオンについては、アンモニア固定化剤及び担体に不純物として含まれる塩化物イオンの量に応じて、この塩化物イオンに対して等量以上の銀イオンが水系媒体中に生じるように銀イオンの供給源を水系媒体に添加すれば良い。また必要に応じて水系媒体を加熱しても良い。なお担体は予め脱水処理して乾燥させておくことが好ましい。
【0040】
また担体を造粒してペレット等に加工する場合では、加工前の担体にアンモニア固定化剤を銀イオン存在下の水系媒体中で担持させ、その後に担体の加工を行っても良いし、加工済みの担体にアンモニア固定化剤を銀イオン存在下の水系媒体中で担持させても良いが、前述したバインダを用いる場合などではバインダ中に不純物として含まれる塩化物に由来する塩化水素の発生を防止する観点から、加工後の担体にアンモニア固定化剤を銀イオン存在下の水系媒体中で担持させることが好ましい。
【0041】
以下に本発明の吸着剤における製造方法の一例を紹介する。
イオン交換樹脂を用いケイ酸ソーダからナトリウムを除去し、残ったシリカを分散剤やpH調整剤などの安定化剤によって粒子化する。このシリカゾルにアンモニア固定化剤及び銀化合物を混合、溶解する。アンモニア固定化剤や銀化合物の溶解度が小さい場合では混合液を加熱しても良い。この混合懸濁液から水分を留去させると、アンモニア固定化剤と銀化合物とを担体上に添着させた本発明の吸着剤が得られる。
【0042】
なお担体を別途用意しておき、担体を水系媒体に投入する場合では、担体を脱水処理して乾燥させた状態で水系媒体に大気圧下の雰囲気で浸漬すると、両薬剤が担体の細孔内部まで容易に浸透することから好ましい。
【0043】
<空気浄化フィルタ>
本発明の空気浄化フィルタは、通気路内に吸着剤を支持するための支持体の表面に前述した吸着剤を有する。
【0044】
前記支持体には従来より知られている種々の支持体を用いることができる。このような支持体としては例えばセラミックペーパ素材のハニカム構造体、ロックウール素材の三次元網目構造体、ウレタン樹脂素材の海綿状構造体等を例示することができるが、ハニカム構造体であることが浄化対象となる空気と吸着剤との接触面積を大きくし、浄化対象空気の流量や浄化対象空気と吸着剤との接触面積を制御し、かつ通気に際して圧力損失を少なくする上で好ましい。なお吸着剤は支持体の断面平面方向のみならず支持体の奥行き方向にも固着させることが好ましい。
【0045】
なお本発明においてハニカム構造体とは、いわゆる蜂の巣構造の他、断面が格子状、波形状などの単位形状の繰り返し構造を有し、この繰り返し構造によって構成されるセルを空気が通過しうる構造の全てを含む。
【0046】
また支持体としては前述したように種々の構成が適用できるが、無機材料で構成されていると耐熱性や耐久性等の観点から好ましく、吸着剤を固着する前に支持体を加熱処理することが、汚染物質となりうるガス状物質の除去等の観点からより好ましい。
【0047】
また支持体は、銀イオンの存在下で処理されていることが塩化水素の発生を防止する上で好ましく、銀イオン存在下での処理としては例えば前述した水系媒体への浸漬及び乾燥を挙げることができる。
【0048】
また本発明の空気浄化フィルタは、前記した吸着剤及び支持体以外の構成を有していても良く、このような構成要素としては、例えば浄化対象の空気の通気路を形成し、通気路内に支持体を固定するケーシング等を例示することができる。ケーシングの素材としてはアルミニウムのようにガス状有機物を発生せず、かつ可燃物を含まない素材であることが好ましい。
【0049】
次に前述した空気浄化フィルタの製造例を説明する。
まずセラミック繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、及びアルミナ繊維等の無機繊維と、パルプ及び溶融ビニロン等の有機材料と、ケイ酸カルシウムの三つの材料を1:1:1の等重量で配合し、湿式抄紙法により約0.3mmの厚みに抄造する。なおケイ酸カルシウムの代わりにケイ酸マグネシウムを主成分とするセピオライトやパリゴルスカイト等の繊維状結晶の粘土鉱物を使用しても良い。
【0050】
この抄造シートをコルゲータによって波形加工し波形シートを製造し、一方では抄造シートを薄板形状に抄造して薄板シートを製造し、波形シートを薄板シートに接着剤で接着することによりハニカム構造体を得る。
【0051】
このハニカム構造体を電気炉に入れて約400℃で一時間程度の熱処理を行い、有機質成分を構造体から除去する。有機質成分が除去されたハニカム構造体の表面には無数のミクロンサイズの陥没穴が残り、多孔性のハニカム構造体が得られる。このハニカム構造体を、前述した本発明の吸着剤を含む懸濁混合液に浸漬し、約200℃で一時間程度の熱処理を行い乾燥させることにより本発明の空気浄化フィルタを製造することができる。
【0052】
なお前記懸濁液には、支持体への吸着剤の固着を補助する固着補助剤を必要に応じて添加しても良い。このような固着補助剤も無機物であることが好ましく、例えばケイ酸ソーダ、シリカ、及びアルミナ等を例示することができる。
【0053】
本発明では、接着剤を塗布した支持体に前述した本発明の吸着剤を気流により吹き付けることによっても本発明の空気浄化フィルタを製造することができるが、このような接着剤から加水分解によって塩化水素が発生するおそれもあり、塩化水素の発生をより確実に防止する観点から、より優れた製造方法を本発明の製造方法として以下に示す。
【0054】
<空気浄化フィルタの製造方法>
本発明における空気浄化フィルタの製造方法は、吸着剤や空気浄化フィルタの材料を、銀イオンを含む水系媒体中で混合、分散させ、この混合物を必要に応じて所定の形状に成形し、乾燥することで、塩化水素の発生を防止する空気浄化フィルタを製造する。
【0055】
前記空気浄化フィルタの製造方法は、吸着剤の製造と支持体の成形とを行う方法であっても良く、具体的には銀イオンを含む水系媒体中でアンモニア固定化剤と担体と支持体の材料とを混合し、この混合物を所定の形状に成形する方法であると、銀イオンによる塩素の固定化がなされた成形品が得られ、支持体を材料から製造する場合に空気浄化フィルタの製造工程をより簡略化する上で好ましい。
【0056】
前記混合物の成形は、前述した空気浄化フィルタにおける支持体と同様に行うことができる。例えばセラミック繊維、パルプ、ケイ酸カルシウムを1:1:1の割合で混合したものに硫酸銀、無機酸塩(アンモニア固定化剤)及びけいそう土を加え、さらに水を添加して混練し、スラリー状の混合物を得る。このスラリー状の混合物を波形板や平板等の型板に敷き延べ、この状態で焼成炉に入れて適温(例えば150〜400℃)で焼成し、得られた波形焼成品と平板焼成品又は波形焼成品同士を接着剤で接着する。接着に際しては波形焼成品の断面における頂部に接着剤を塗布して接着する。波形焼成品同士を接着する場合では前記頂部同士を接着しても良い。また接着剤に有機物が含まれる場合では、接着して得られたフィルタを上記温度でさらにベーキングし、有機成分を除去することが好ましい。
【0057】
また前記空気浄化フィルタの製造方法は、吸着剤の製造と吸着剤の支持体への固着とを行う方法であっても良く、具体的には銀イオンを含む水系媒体中でアンモニア固定化剤と担体とを混合し、この水系媒体中に支持体を浸漬し、水系媒体から支持体を取り出して乾燥させる方法であると、支持体として成形品を用いる場合に空気浄化フィルタの製造工程をより簡略化する上で好ましい。
【0058】
また前記空気浄化フィルタの製造方法は、空気浄化フィルタの構成要素に吸着剤成分を添着させる方法であっても良く、具体的にはアンモニア固定化剤と銀イオンとを含む水系媒体に担体を表面に固着させた支持体を浸漬し、水系媒体から支持体を取り出して乾燥させる方法であると、空気浄化フィルタ表面において塩素を固定化することができ好ましい。支持体上への担体の固着は、接着剤を塗布した支持体への担体の吹き付けであっても良いし、担体を含む懸濁液への支持体の浸漬及び乾燥であっても良い。また担体の固着には、必要に応じて支持体へ担体を固着させるために前述したバインダや固着補助剤等を用いても良い。なお上記の製造方法によれば使用された空気浄化フィルタを再生することも可能である。
【0059】
前述した本発明の製造方法によれば、空気浄化フィルタの製造工程においていかなる工程からでも、塩化水素の発生を防止する空気浄化フィルタを製造することができる。なお本製造方法で用いられる空気浄化フィルタ等の構成要素については、前述した吸着剤及び空気浄化フィルタと同様である。
【0060】
【実施例】
<実施例1>
けいそう土、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナの混合物、ケイ酸アルミニウム、活性アルミナ、多孔質ガラス、活性白土、活性ベントナイト、合成ゼオライト、及び活性炭の各素材について、重量基準の平均粒子径が10μmの粉末を準備した。これらの粉末をそれぞれ硫酸アルミニウム及び硫酸銀を含む水溶液に浸漬し、粉末を水溶液から取り出して乾燥することにより吸着剤を生成した。なお粉末1kgに対して硫酸アルミニウムは1kgを用い、硫酸銀は硫酸アルミニウムに対して重量で0.0〜0.2%を用いた。
【0061】
一方で内部断面積10cm2、厚み5mmの円筒状ガラスの開口部を通気性のある濾紙製の粒子除去フィルタで塞ぎ、充填層を作製した。充填層にはそれぞれの吸着剤を充填し、吸着剤充填層を作製した。
【0062】
作製した吸着剤充填層を図1に示す測定装置に設置した。この測定装置は図1に示すようにクリーンルームエアの供給源と、この供給源から二つに分岐し再び合流する通気路と、分岐前の通気路にアンモニアを供給するアンモニア発生器と、合流後の通気路に設けられた真空ポンプとを有しており、各分岐通路には充填層を設置することができ、充填層よりも下流側の分岐通路には塩化水素濃度計とアンモニア濃度計と流量計とが設けられている。
【0063】
この測定装置によるアンモニア濃度及び塩化水素濃度の測定に際しては、クリーンルームエアにアンモニア発生器からアンモニアを供給、混合する。クリーンルームエアの供給量は6リットル/minとし、アンモニアの供給はバルブの開閉によりアンモニア濃度が10ppbとなるように調整した。また各分岐通路にはアンモニア濃度が10ppbのクリーンルームエアが各3リットル/minずつ流れるように調整した。なおクリーンルームエアの実験系への導入は真空ポンプにより行った。
【0064】
一方の分岐通路には前述した吸着剤充填層を配置し、もう一方の通気路には空の充填層を配置し、それぞれの充填層を通過した空気中のアンモニア濃度と塩化水素濃度をそれぞれのアンモニア濃度計及び塩化水素濃度計で測定した。
【0065】
アンモニアについては、吸着剤充填層の上流側及び下流側のアンモニア濃度を測定し、アンモニア濃度の測定値からアンモニア除去率を下記式から算出した。なお測定に際しては空の充填層を通過した空気中のアンモニア濃度を、吸着剤充填層の上流側における空気中のアンモニア濃度とした。
【数1】
【0066】
また塩化水素については、吸着剤充填層の下流側における塩化水素濃度を測定した。なお本測定において、吸着剤充填層上流側における塩化水素濃度は10ppt以下であった。本測定によるアンモニア除去率及び塩化水素濃度を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1から明らかなように、硫酸銀を用いなかった場合、すなわち粉末1kgに対して硫酸アルミニウムを1kg用いただけの場合では、素材B、E、Hを用いた吸着剤は塩化水素濃度(塩素脱離量)が0.7ppbであり、それ以外の素材A、C、D、F、G、I、J、Kを用いて同様に作製した吸着剤よりも塩素脱離量が多い。しかし、それでも硫酸銀を硫酸アルミニウム1kgに対してせいぜい0.8gを添加すれば全ての塩化物イオンCl-を塩化銀という加水分解しない塩として固定化することができ、下流側への塩化水素の脱離を完全に防止することができた。
【0069】
なお硫酸銀0.8gは0.0026モルに相当する。硫酸銀を用いることにより、化学式(6)より硫酸銀のモル数の2倍、すなわち0.0052モルの塩化物イオンを塩化銀という加水分解しない塩として固定化することができる。
【0070】
<実施例2>
本実施例ではアンモニア固定化剤として硫酸アルミニウム及び硝酸アルミニウムを、また銀化合物として硫酸銀及び硝酸銀を使用して実施例1と同様に吸着剤を作製し、アンモニア除去率及び塩化水素濃度を測定した。本実施例では硫酸アルミニウムと硝酸銀、硝酸アルミニウムと硫酸銀、硝酸アルミニウムと硝酸銀の三通りの組み合わせについて測定を行った。
【0071】
その結果、硫酸アルミニウムの代わりに硝酸アルミニウムを用いた場合、つまり各素材A〜Kのそれぞれの1kgに硝酸アルミニウム1kgを添着させた吸着剤のアンモニア除去率は83〜97%の範囲に分布し、硫酸アルミニウムと硝酸アルミニウムとではアンモニアを除去する能力においてほとんど変わりはなかった。
【0072】
さらに硫酸銀と硝酸銀のいずれも加えない場合では0.5〜0.7ppbの塩化水素が吸着剤充填層の下流側で検出されたが、硫酸銀を0.8g(0.0026モル)以上、又は硝酸銀を0.9g(0.0051モル)以上加えれば、充填層よりも下流側への塩化水素の脱離は完全に防止することができた。なお銀イオンAg+と塩化物イオンCl-は等量で反応するから、各素材1kgに対して硝酸アルミニウム1kgを用いた吸着剤に含まれるCl-はせいぜい0.0051モルであることがわかる。
【0073】
<実施例3>
本実施例では本発明の吸着剤を用いて空気浄化フィルタを製造した。本実施例の空気浄化フィルタは図2に示すように、本発明の吸着剤を表面に有しコルゲートハニカム構造のセラミックペーパで形成した支持体12と、この支持体12の周囲に設けられ通気路を形成する外枠(ケーシング)とを有している。
【0074】
支持体12は浄化対象となる空気の通気路に沿って波形を単位形状とする断面が連続して形成されるように、波形シート10と薄板シート11とを積層することにより構成されている。外枠は外枠板15a〜15dを波形断面が連続する奥行き方向に沿って支持体12の周囲にそれぞれ接着することにより構成されている。接着剤には塩化物イオンが含まれていないもの(例えばエポキシ樹脂系接着剤)を用いる。
【0075】
吸着剤は、担体としてのシリカ粉末にシリカゾルやアルミナゾルなどの無機系バインダで粒径0.3〜0.8mm程度に固めたペレット21に硫酸アルミニウム及び硫酸銀を担持したものである。
【0076】
吸着剤は図3に示すように、支持体12の表面に隙間なく担持されている。またこの空気浄化フィルタは、図3に示すように支持体12が形成する筒部(セル)17に浄化対象となる空気が流れる構成とされている。
【0077】
本実施例の空気浄化フィルタは、まずペレット21を作製し、接着剤を付着させた支持体12に高速気流を利用してペレット21を吹き付け、ペレット21を付着した支持体12を硫酸アルミニウム(又は硝酸アルミニウム)と硫酸銀(又は硝酸銀)の混合溶液に浸漬した後、支持体12を取り出して乾燥し、外枠板をセットすることにより製造される。なおペレット21はバインダで固めてあることから、溶液への浸漬によって崩れることはない。また硫酸銀(又は硝酸銀)は、銀イオンの当量がペレット付き支持体及び硫酸アルミニウム(又は硝酸アルミニウム)の全てに含まれる塩化物イオンの総当量を越えるように含まれている。
【0078】
<実施例4>
本発明における空気浄化フィルタの製造方法の一実施例を図4に示す。なお図4においては紙面に対して左側に本実施例の製造方法を示し、紙面に対して右側に従来の製造方法を示す。まずセラミックペーパを成形加工して作製したコルゲートハニカム構造体を焼成する。この時点ではハニカム構造体にはNaCl等の形態で塩化物イオンが含まれている。
【0079】
イオン交換水に担体としてのシリカゲル粉末と無機系バインダとしてのシリカゾルを混ぜた懸濁液中に焼成後のコルゲートハニカム構造体を浸漬し、これを取り出して乾燥する。この段階のハニカム構造体にはNaCl等の形態で塩化物イオンが含まれている。
【0080】
上記のハニカム構造体を硫酸アルミニウムと硫酸銀の混合懸濁液に浸漬し、これを取り出して乾燥する。この段階のハニカム構造体には塩化物イオンが銀イオンと反応して塩化銀という加水分解しない塩として固定化されて含まれる。
【0081】
このハニカム構造体をケーシング内に収納して空気浄化フィルタとする。この空気浄化フィルタにクリーンルーム雰囲気を通気すれば雰囲気中のアンモニアを除去することができ、かつ下流側への塩化水素の脱離を防止することができる。
【0082】
一方で比較のため、従来の空気浄化フィルタの製造方法を図4右側に示す。シリカゲルとシリカゾルの懸濁液にハニカム構造体を浸漬して乾燥するまでは本実施例と従来法とは同じように行われている。
【0083】
従来の空気浄化フィルタでは、上記のハニカム構造体を硫酸アルミニウムの溶液に浸漬し、これを取り出して乾燥する。従来の空気浄化フィルタにおいてはこの段階で塩化物イオンとアルミニウムイオンが反応し、塩化アルミニウムという加水分解する塩が生成し、ハニカム構造体にはこの塩化アルミニウムが含まれている。
【0084】
したがって従来の空気浄化フィルタでは、クリーンルーム雰囲気を通気すると雰囲気中のアンモニアは除去されるが、塩化アルミニウムが化学式(5)に基づいて加水分解し、空気浄化フィルタ下流側に塩化水素が脱離する。
【0085】
なお、本実施例における空気浄化フィルタに塩化水素を含まないクリーンルームエアを通気し、空気浄化フィルタ下流側でのクリーンルームエア中の塩化水素濃度を測定した測定結果を図5に示す。また従来の空気浄化フィルタについても同様に塩化水素濃度を測定し、その測定結果も合わせて図5に示す。
【0086】
なお塩化水素の検出下限は10pptである。両フィルタのハニカムの目粗さは約3mm、フィルタの厚みは50mm、通気風速は0.3m/s、温湿度は23℃/40%RHであった。またハニカム1リットル当たりの素材ごとの重量割合は、セラミックペーパが100g、シリカゲル粉末は103g、硫酸アルミニウムが130g、硫酸銀が0.26g(硫酸銀は本実施例品のみ)であった。
【0087】
図5に示されるように、本実施例の空気浄化フィルタでは通気24時間後以降における塩化水素濃度は10ppt以下であるが、従来の空気浄化フィルタでは通気300時間経過後においても200pptを越える塩化水素濃度が検出された。
【0088】
本実施例の空気浄化フィルタにおいて通気当初に15pptの塩化水素が放出された理由としては、測定までの間に雰囲気中の塩化水素を吸着し、それが通気当初に脱離したものと考えられる。
【0089】
なお従来の空気浄化フィルタを超純水中に浸漬し、従来の空気浄化フィルタから溶出する塩素(Cl-)量を測定したところ、この測定値から算出した従来の空気浄化フィルタにおけるハニカム1リットル当たりの塩化物イオンは1400μmolであった。
【0090】
【発明の効果】
本発明の吸着剤によれば、アンモニアを固定化するアンモニア固定化剤と、アンモニア固定化剤を担持する担体とを有する吸着剤において、銀イオンを含む水系媒体中でアンモニア固定化剤を担体に担持させたことから、空気中のアンモニアを除去し、かつ空気中に塩化水素を発生しない吸着剤を提供することができる。
【0091】
また本発明の空気浄化フィルタによれば、通気路内に吸着剤を支持するための支持体の表面に本発明の吸着剤を有することから、空気中のアンモニアを除去し、かつ空気中に塩化水素を発生しない空気浄化フィルタを提供することができる。
【0092】
また本発明の空気浄化フィルタの製造方法によれば、空気浄化フィルタの製造工程におけるいずれかの工程において、空気浄化フィルタの材料が銀イオンを含む水系媒体中で処理されることから、材料中に不純物として含まれる塩素化合物を固定化することができ、空気中のアンモニアを除去し、かつ空気中に塩化水素を発生しない空気浄化フィルタの製造方法を提供することができる。
【0093】
本発明の空気浄化フィルタの製造方法では、銀イオンを含む水系媒体中でアンモニア固定化剤と担体と支持体の材料とを混合し、この混合物を所定の形状に成形する製造方法であると、支持体の製造から空気浄化フィルタを製造する場合に空気浄化フィルタの製造工程をより簡略化することができる。
【0094】
また銀イオンを含む水系媒体中でアンモニア固定化剤と担体とを混合し、この水系媒体中に支持体を浸漬し、水系媒体から支持体を取り出して乾燥させる製造方法であると、支持体として成形品を用いる場合に空気浄化フィルタの製造工程をより簡略化することができる。
【0095】
またアンモニア固定化剤と銀イオンとを含む水系媒体に担体を表面に固着させた支持体を浸漬し、水系媒体から支持体を取り出して乾燥させる製造方法であると、浄化対象空気との接触部分において塩素を固定化することができ、安価でかつより一層簡略化された空気浄化フィルタの製造方法を提供することができる。
【0096】
また本発明では、水系媒体には硫酸銀及び硝酸銀の少なくともいずれかを含むと、塩化物を固定化する上でより効果的である。
【0097】
また本発明ではアンモニア固定化剤は無機酸塩であり、さらに無機酸塩は硫酸アルミニウム及び硝酸アルミニウムの少なくともいずれかを含むと、アンモニアを固定化するに当たり有機系ガス等のガス状汚染物質の発生を防止するなどの観点からより一層効果的である。
【0098】
また本発明では、担体はけいそう土、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナの混合物、ケイ酸アルミニウム、活性アルミナ、多孔質ガラス、活性白土、活性ベントナイト、合成ゼオライト、及び活性炭の中から選ばれる少なくとも一種を含む粉末であると、クリーンルーム等の清浄空間においてガス状汚染物質とされる各種物質に対して担体が吸着能を有することから、対象空気から汚染物質を除去する上でより一層効果的である。
【0099】
また本発明では支持体はハニカム構造体であると、空気浄化フィルタへの吸着剤の固着量及び空気浄化フィルタの通気量を制御し、かつ浄化対象空気と吸着剤との接触性の向上させる上でより一層効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の吸着剤におけるアンモニア除去能力及び塩化水素発生防止能力を測定する測定装置の概略構成図である。
【図2】本発明の空気浄化フィルタにおける一例を示す斜視図である。
【図3】図2に示す空気浄化フィルタの要部拡大断面図である。
【図4】本発明の空気浄化フィルタの製造方法における一例及び従来の空気浄化フィルタの製造方法における一例を示す図である。
【図5】実施例4の空気浄化フィルタ及び従来の空気浄化フィルタにおけるフィルタ下流側での塩化水素濃度を示すグラフである。
【符号の説明】
1 空気浄化フィルタ
10 波形シート
11 薄板シート
12 支持体
15a〜15d 外枠板
17 筒部
21 ペレット
Claims (7)
- アンモニアを固定化するアンモニア固定化剤と、アンモニア固定化剤を担持する担体とを有する吸着剤において、
前記アンモニア固定化剤は硫酸アルミニウム及び硝酸アルミニウムの少なくともいずれかを含み、
前記担体はけいそう土、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナの混合物、ケイ酸アルミニウム、活性アルミナ、多孔質ガラス、活性白土、活性ベントナイト、合成ゼオライト、及び活性炭の中から選ばれる少なくとも一種であり、
銀イオンを含む水系媒体中でアンモニア固定化剤を担体に担持させたことを特徴とする、クリーンルーム、クリーンベンチ、クリーン保管庫、半導体製造工程の環境、雰囲気中のアンモニア濃度が1ppb以下の環境、のうち少なくとも何れか一つの高度清浄雰囲気用の吸着剤。 - 前記水系媒体には硫酸銀及び硝酸銀の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1記載の吸着剤。
- 通気路内に吸着剤を支持するための支持体の表面に請求項1又は2に記載の吸着剤を有する、高度清浄雰囲気用の空気浄化フィルタ。
- 前記支持体はハニカム構造体であることを特徴とする請求項3記載の空気浄化フィルタ。
- 請求項3又は4に記載の空気浄化フィルタを製造する方法において、
銀イオンを含む水系媒体中で前記アンモニア固定化剤と前記担体と前記支持体の材料とを混合し、この混合物を所定の形状に成形することを特徴とする空気浄化フィルタの製造方法。 - 請求項3又は4に記載の空気浄化フィルタを製造する方法において、
銀イオンを含む水系媒体中で前記アンモニア固定化剤と前記担体とを混合し、この水系媒体中に前記支持体を浸漬し、水系媒体から支持体を取り出して乾燥させることを特徴とする空気浄化フィルタの製造方法。 - 請求項3又は4に記載の空気浄化フィルタを製造する方法において、
前記アンモニア固定化剤と銀イオンとを含む水系媒体に前記担体を表面に固着させた支持体を浸漬し、水系媒体から支持体を取り出して乾燥させることを特徴とする空気浄化フィルタの製造方法。
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