JP4861722B2 - 青色発光蛍光体粉末及びその製造方法 - Google Patents

青色発光蛍光体粉末及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ユウロピウムを付活剤として含有するディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子からなる蛍光体粉末、及びその製造方法に関する。
紫外線又は真空紫外線により励起されると青色の発光を示す青色発光蛍光体粉末は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)や希ガスランプの青色発光材料として利用されている。この青色発光蛍光体粉末としては、BaMgAl1017:Eu2+(以下、BAM:Eu2+という)が広く利用されている。しかしながら、BAM:Eu2+青色発光蛍光体粉末は、結晶構造が不安定であるため、発光強度の経時的な低下が起こり易いという問題がある。この理由から、結晶構造が比較的安定なディオプサイド(CaMgSi26)のカルシウムの一部をユウロピウムで置換したCaMgSi26:Eu2+(以下、CMS:Eu2+ともいう)で表される青色発光蛍光体粉末を青色発光材料として利用することが検討されている。しかしながら、CMS:Eu2+青色発光蛍光体粉末は、BAM:Eu2+青色発光蛍光体粉末と比べて発光強度が低いことが既に知られている。このため、CMS:Eu2+青色発光蛍光体粉末の発光強度を向上させるための研究が進められている。
非特許文献1には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化珪素、フッ化ユウロピウムの混合粉末を還元性雰囲気下にて焼成して製造したCMS:Eu2+青色発光蛍光体粉末を、さらに大気中600℃で1時間再焼成すると発光強度が高くなることが報告されている。
特許文献1には、公知の方法で製造したCMS:Eu2+青色発光蛍光体粉末を酸化雰囲気で焼成して、二価のユウロピウム濃度を40〜95%で、三価のユウロピウム濃度を5〜60%とすることが開示されている。この特許文献1によれば、CMS:Eu2+青色発光蛍光体粉末を酸化雰囲気で焼成して酸素欠陥をなくすことにより、蛍光体粒子表面への水や炭素水素の吸着などによる発光強度の低下が抑えられるとされている。
特許文献2には、CMS:Eu2+青色発光蛍光体粉末を酸溶液と接触させる酸処理を行なって、CMS:Eu2+青色発光蛍光体粉末の発光強度を向上させる方法が開示されている。
吉松良、本田晋吾、國本崇、大観光徳、田中省作、小林洋志,「真空紫外線励起用蛍光体CaMgSi2O6:Eu2+の発光特性」,信学技報,社団法人電子情報通信学会発行,2001年7月,p.37−42 特開2003−238954号公報 特開2004−285233号公報
本発明の目的は、発光強度が向上したCMS:Eu2+青色発光蛍光体粉末を提供することにある。
本発明は、基本組成式がCaMgSi26:Eu2+で表されるディオプサイド結晶相と、その結晶相の表面を覆う厚さ3〜8nmのアモルファス相とからなり、結晶相のアモルファス相に接する表面の内側に、全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率が85%以上となる厚さが5〜50nmの表面層を有することを特徴とする青色発光蛍光体粒子からなる粉末にある。
本発明の蛍光体粉末の好ましい態様は、次の通りである。
Ca2MgSi27で表されるオケルマナイトを含むことのない。
本発明の蛍光体粉末は、例えば次の製造方法により有利に製造することができる。
カルシウム源粉末、ユウロピウム源粉末、マグネシウム源粉末、及び珪素源粉末を、基本組成式がCaMgSi26:Eu2+で表されるディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粉末を生成する比率にて含む粉末混合物を還元性雰囲気下にて加熱焼成して、焼成物粉末を得る工程、そして得られた焼成物粉末について、酸素の存在下にて500〜1500℃の温度で焼成する再焼成処理と酸溶液に接触させる酸処理とを行なう工程を含む方法。なお、カルシウム源粉末、ユウロピウム源粉末、マグネシウム源粉末、及び珪素源粉末を、基本組成式がCaMgSi 2 6 :Eu 2+ で表されるディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粉末を生成する比率にて含む粉末混合物を還元性雰囲気下にて加熱焼成して、焼成物粉末を得る工程、そして得られた焼成物粉末について、酸素の存在下にて500〜1500℃の温度で焼成する再焼成処理と酸溶液に接触させる酸処理とを行なう工程を含む方法により、基本組成式がCaMgSi 2 6 :Eu 2+ で表されるディオプサイド結晶相と、その結晶相の表面を覆う厚さ3〜8nmのアモルファス相とからなり、結晶相のアモルファス相に接する表面の内側に、全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率が70%以上となる厚さが5〜50nmの表面層を有する青色発光蛍光体粒子からなる粉末を製造することができる。
本発明の蛍光体粉末は、BAM:Eu2+青色発光蛍光体粉末と同等もしくはそれ以上の発光強度を示すため、PDPや希ガスランプの青色発光材料として有利に使用することができる。また、本発明の製造方法を利用することによって、BAM:Eu2+青色発光蛍光体粉末と同等もしくはそれ以上の発光強度を示すCMS:Eu2+青色発光蛍光体粉末を工業的に有利に製造することができる。
図1は、本発明の蛍光体粉末を構成する蛍光体粒子の断面構造を概念的に示す断面図である。なお、図1において、蛍光体粒子の断面は円形状となっているが、粒子の断面形状には特に制限なく、三角以上の多角形あるいは楕円形であってもよい。
図1に示すように、本発明の蛍光体粉末を構成する蛍光体粒子は、ユウロピウムを付活剤として含有する、基本組成式がCaMgSi26:Eu2+で表されるディオプサイドの結晶相1と、その結晶相の表面を覆う厚さ3〜8nmのアモルファス相2とからなる。結晶相1とアモルファス相2とが存在することの確認及びアモルファス相の厚さの測定には、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いることができる。結晶相がディオプサイドからなることは、蛍光体粉末のX線回折パターンにより確認することができる。
結晶相1は、紫外線又は真空紫外線により励起されると青色の発光を示す。結晶相1のアモルファス相2に接する表面層3における、全ユウロピウムに対する二価のユウロピウム(すなわち、ディオプサイドの結晶相中に付活剤として作用するユウロピウム)の含有率は85%以上、特に好ましくは90%以上である。表面層3における、全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率は、X線光電子分光法(ESCA)を用いて測定することができる。表面層3は、厚さが少なくとも5nmであることが好ましく、5〜50nmの範囲にあることがより好ましい。
アモルファス相2は、水などの付着による発光強度の低下や、二価のユウロピウムの酸化による発光強度の低下を防止する保護層として作用する。このため、本発明の蛍光体粉末は、長期間にわたって発光強度が安定する。
本発明の蛍光体粉末は、レーザ散乱回折法による平均粒子径が、2〜15μmの範囲にあることが好ましく、特に5〜15μmの範囲にあることが好ましい。
本発明の蛍光体粉末は、カルシウム源粉末、ユウロピウム源粉末、マグネシウム源粉末、及び珪素源粉末を、CMS:Eu2+青色発光蛍光体粉末を生成する比率にて含む粉末混合物を還元性雰囲気下にて加熱焼成して、焼成物粉末を得る工程、そして得られた焼成物粉末について、酸素の存在下にて500〜1500℃の温度で焼成する再焼成処理と酸溶液に接触させる酸処理とを行なう工程を含む方法により有利に製造することができる。CMS:Eu2+青色発光蛍光体粉末を生成する比率とは、一般に、カルシウム源粉末、ユウロピウム源粉末、マグネシウム源粉末、そして珪素源粉末を、カルシウム(Ca)、ユウロピウム(Eu)、マグネシウム(Mg)及び珪素(Si)のモル比が0.90〜0.985:0.10〜0.015:1:1.90〜2.10(Ca:Eu:Mg:Si)となる量であって、かつカルシウムとユウロピウムとの総モル数に対するユウロピウムのモル比[Eu/(Ca+Eu)]が0.015〜0.10となる量にて含む比率である。
カルシウム源粉末としては、酸化カルシウム粉末及び還元性雰囲気下での加熱により酸化カルシウムを生成するカルシウム化合物の粉末を用いることができる。カルシウム化合物の例としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、硝酸カルシウムが挙げられる。カルシウム源粉末には、炭酸カルシウム粉末を用いることが特に好ましい。炭酸カルシウム粉末は、純度が99質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上であることが特に好ましい。炭酸カルシウム粉末は、レーザ散乱回折法による平均粒子径が0.1〜5.0μmの範囲にあることが好ましい。
ユウロピウム源粉末としては、フッ化ユウロピウム粉末、酸化ユウロピウム粉末及びこれらの混合物を用いることができる。フッ化ユウロピウム粉末及び酸化ユウロピウム粉末は、純度が99質量%以上であることが好ましく、99.5質量%以上であることが特に好ましい。フッ化ユウロピウム粉末及び酸化ユウロピウム粉末は、レーザ散乱回折法による平均粒子径が0.1〜5.0μmの範囲にあることが好ましい。
マグネシウム源としては、酸化マグネシウム粉末及び還元性雰囲気下での加熱により酸化マグネシウムを生成するマグネシウム化合物の粉末を用いることができる。マグネシウム化合物の例としては、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、硝酸マグネシウムが挙げられる。
焼成物粉末の製造に際して、マグネシウム源粉末に酸化マグネシウム粉末を用いることによって、Ca2MgSi27で表されるオケルマナイトを含まない焼成物粉末(CMS:Eu2+青色発光蛍光体粉末)を容易に得ることができる。ここで、オケルマナイトを含まないとは、オケルマナイトの(211)面に相当するX線回折ピークの高さが、ディオプサイドの(−221)面に相当するX線回折ピークの高さの1/50以下であることを意味する。
マグネシウム源として用いる酸化マグネシウム粉末は、純度が99質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上であることが特に好ましい。酸化マグネシウム粉末は、レーザ散乱回折法による平均粒子径が0.1〜3.0μmの範囲にあり、BET比表面積から換算された平均粒子径が0.01〜3.0μmの範囲にあることが好ましい。酸化マグネシウム粉末としては、金属マグネシウム蒸気と酸素とを接触させる方法(気相酸化反応法)により得られたものを好ましく用いることができる。
珪素源粉末としては二酸化珪素粉末を用いることができる。二酸化珪素粉末は、純度が99質量%以上であることが好ましく、99.5質量%以上であることが特に好ましい。二酸化珪素粉末は、レーザ散乱回折法による平均粒子径が0.01〜50μmの範囲にあることが好ましく、特に1〜50μmの範囲にあることが好ましい。
上記のカルシウム源粉末、ユウロピウム源粉末、マグネシウム源粉末及び珪素源粉末の混合には、ボールミルなどの公知の混合機を用いることができる。原料粉末の混合は、メタノール、エタノール、アセトンなどの有機溶媒中にて行なうことが好ましい。
粉末混合物の焼成温度は、1000〜1500℃の温度の範囲にあることが好ましい。粉末混合物の焼成を行なう際の還元性雰囲気は、水素ガスを1〜10体積%の範囲にて含むアルゴンガスあるいは窒素ガス雰囲気であることが好ましい。焼成時間は、一般に1〜100時間の範囲である。
上記のようにして得られた焼成物粉末を構成する粒子は、ユウロピウムを付活剤として含有するディオプサイドの結晶相を有するが、その結晶相の表面には、発光に寄与しないアモルファス相が通常は10〜30nmの厚さで形成されており、三価のユウロピウムを含むカルシウムユウロピウムシリケート(Ca2Eu8(SiO462)が混入している。このため、アモルファス相中の全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率が通常は70%未満、特に40〜60%の範囲にある。そこで、本発明では、アモルファス相の薄層化と二価のユウロピウムの含有率の増加のために、焼成物粉末について再焼成処理と酸処理とを行なう。なお、再焼成処理と酸処理とを行なう前に、焼成物粉末を粉砕、分級してもよい。
再焼成処理は、焼成物粉末を構成する蛍光体粒子のディオプサイドの結晶相を成長させる。すなわち蛍光体粒子のアモルファス相の厚さを薄くする効果がある。再焼成処理は、大気中で行なうことができる。焼成温度は500〜1500℃、好ましくは550〜1000℃である。焼成時間は、10分〜10時間の範囲であることが好ましい。再焼成処理は酸処理よりも前に行なう方が好ましい。
酸処理は、焼成物粉末を構成する蛍光体粒子に混入したカルシウムユウロピウムシリケート(Ca2Eu8(SiO462)を溶解除去する効果があり、これにより結晶相のアモルファス相に接する表面層における、全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率が高くなる。酸処理に用いる酸溶液の例としては塩酸水溶液、硝酸水溶液及び硫酸水溶液が挙げられる。特に塩酸水溶液が好ましい。酸溶液の濃度は0.1〜10モル/Lの範囲にあることが好ましく、0.5〜5モル/Lの範囲にあることが特に好ましい。酸溶液の液温は、20〜80℃の範囲にあることが好ましく、特に30〜60℃の範囲にあることが好ましい。焼成物粉末と酸溶液との接触は、攪拌下に行なうことが好ましい。焼成物粉末と酸溶液との接触時間は、10分〜10時間の範囲であることが好ましい。
CMS:Eu2+青色発光蛍光体は、BAM:Eu2+青色発光蛍光体と比べて経時的な劣化が起こりにくいことが知られている。そして、本発明のCMS:Eu2+青色発光蛍光体粉末は、BAM:Eu2+青色発光蛍光体粉末の発光強度と同等もしくはそれに近い発光強度を示す。従って、本発明のCMS:Eu2+青色発光蛍光体粉末は、PDPや希ガスランプの青色発光蛍光材料として長期間にわたって用いることができる。
[実施例1]
炭酸カルシウム粉末(純度:99.99質量%、レーザ散乱回折法による平均粒子径:3.87μm)、フッ化ユウロピウム粉末(純度:99.9質量%、レーザ散乱回折法による平均粒子径:2.71μm)、酸化マグネシウム粉末(気相酸化反応法により製造したもの、純度:99.99質量%、レーザ散乱回折法による平均粒子径:0.66μm、BET比表面積換算平均粒子径:0.05μm)、そして二酸化珪素粉末(純度:99.9質量%、レーザ散乱回折法による平均粒子径:49.8μm)をCa:Eu:Mg:Siのモル比が0.98:0.02:1:2.00となるようにそれぞれ秤量し、エタノール溶媒中にてボールミルを用いて24時間湿式混合した。得られた混合粉末を乾燥して、エタノールを蒸発させた。得られた粉末混合物をアルミナ坩堝に入れ、2体積%水素−98体積%アルゴンの混合ガス雰囲気中にて、1150℃の温度で3時間焼成した。
得られた焼成物粉末のレーザ散乱回折法による平均粒子径は10μmであった。得られた焼成物粉末のX線回折パターンを測定したところ、ディオプサイド(CaMgSiO6:Eu2+)とカルシウムユウロピウムシリケート(Ca2Eu8(SiO462)のX線回折パターンが確認され、オケルマナイト(Ca2MgSi27)のX線回折ピークは検出されなかった。また、焼成物粉末を構成する粒子の表面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察したところ、焼成物粒子の表面には、厚さ約20nmのアモルファス相が形成されていることが確認された。さらに、焼成物粒子の粒子表面から8.3nmの深さにおける全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率を、ESCA(1600S型X線光電子分光装置、PHI社製)を用いて測定したところ59.3%であった。また、得られた焼成物粉末の発光スペクトルを励起波長254nmとした分光蛍光光度計により測定した。その結果を、処理前として図2に示す。比較のため、市販のBAM:Eu2+青色発光蛍光体粉末の発光スペクトルを同じ条件で測定した結果を、BAM:Euとして図2に示す。焼成物粉末の発光スペクトルの最大発光強度は、市販のBAM:Eu2+青色発光蛍光体粉末の最大発光強度を100とすると56であった。
上記の焼成物粉末をアルミナ坩堝に入れ、大気中にて700℃の温度で1時間焼成して再焼成処理を行なった。放冷後、焼成物粉末2gを濃度1モル/L、液温40℃の塩酸水溶液300mLに浸漬させ、塩酸水溶液の液温を40℃に保持しながら3時間攪拌して酸処理を行なった。攪拌終了後、焼成物粉末を塩酸水溶液から取り出して、水洗した後、乾燥した。
再焼成処理と酸処理とを行なった後の焼成物粉末のX線回折パターンを測定したところ、カルシウムシリケートのX線回折パターンは検出されなかった。また、焼成物粉末を構成する粒子の表面を、透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、粒子表面のアモルファス相の厚さは約5nmであることが確認された。さらに、その粒子表面から8.3nmの深さにおける全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率を、ESCAを用いて測定したところ90.6%であった。この再焼成処理と酸処理とを行なった後の焼成物粉末の発光スペクトルを上記と同様にして測定した。その結果を、処理後として図2に示す。発光スペクトルの最大発光強度は、市販のBAM:Eu2+青色発光蛍光体の最大発光強度を100とすると109であった。
[比較例1]
焼成物粉末について、再焼成処理を行ない、酸処理を行なわなかった以外は、実施例1と同様にした。この再焼成処理後の焼成物粉末について、X線回折パターン、アモルファス相の厚さ、粒子表面から8.3nmの深さにおける全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率及び励起波長254nmとした発光スペクトルを実施例1と同様に測定した。その結果、X線回折パターンからカルシウムユウロピウムシリケートのX線回折パターンが確認された。アモルファス相の厚さは約7nmであり、全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率は66.4%であった。発光スペクトルの最大発光強度は、市販のBAM:Eu2+青色発光蛍光体の最大発光強度を100とすると82であり、実施例1で得られた処理後の焼成物粉末よりも低い値であった。
[比較例2]
焼成物粉末について、酸処理を行ない、再焼成処理を行なわなかった以外は、実施例1と同様にした。この酸処理後の焼成物粉末について、X線回折パターン、アモルファス相の厚さ、粒子表面から8.3nmの深さにおける全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率及び励起波長254nmとした発光スペクトルを実施例1と同様に測定した。その結果、X線回折パターンからカルシウムユウロピウムシリケートのX線回折パターンは検出されなかった。アモルファス相の厚さは約13nmであり、全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率は79.8%であった。発光スペクトルの最大発光強度は、市販のBAM:Eu2+青色発光蛍光体の最大発光強度を100とすると96であり、実施例1で得られた処理後の焼成物粉末よりも低い値であった。
[比較例3]
酸化マグネシウム粉末を塩基性炭酸マグネシウム粉末(純度:酸化マグネシウム分として42.0質量%、レーザ散乱回折法による平均粒子径:15.3μm)に変える以外は、実施例1と同じ操作を行なって、焼成物粉末を製造した。
得られた焼成物粉末について、X線回折パターン、アモルファス相の厚さ、粒子表面から8.3nmの深さにおける全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率及び励起波長254nmとした発光スペクトルを実施例1と同様に測定した。その結果、X線回折パターンからディオプサイド、カルシウムユウロピウムシリケート及びオケルマナイトのX線回折パターンが確認された。オケルマナイトの(211)面に相当するX線回折ピークの高さはディオプサイドの(−221)面に相当するX線回折ピークの高さの15/100であった。アモルファス相の厚さは約20nmであり、全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率は46.0%であった。発光スペクトルの最大発光強度は、市販のBAM:Eu2+青色発光蛍光体の最大発光強度を100とすると53であり、実施例1で得られた処理前の焼成物粉末と比べて低い値であった。
[実施例2]
但し、実施例2は、本発明の参考例である。
フッ化カルシウム(CaF2)粉末(純度:99.9質量%、レーザ散乱回折法による平均粒子径:2.70μm)、炭酸カルシウム(CaCO3)粉末(純度:99.99質量%、レーザ散乱回折法による平均粒子径:3.87μm)、酸化ユウロピウム(Eu23)粉末(純度:99.9質量%、レーザ散乱回折法による平均粒子径:2.70μm)、酸化マグネシウム(MgO)粉末(気相酸化反応法により製造したもの、純度:99.99質量%、レーザ散乱回折法による平均粒子径:0.66μm、BET比表面積換算平均粒子径:0.05μm)、そして二酸化珪素(SiO2)粉末(純度:99.9質量%、レーザ散乱回折法による平均粒子径:49.8μm)を、モル比が0.015:0.965:0.01:1:2.00(CaF2:CaCO3:Eu23:MgO:SiO2)となるようにそれぞれ秤量し、エタノール溶媒中にてボールミルを用いて24時間湿式混合した後、エタノールを蒸発させた。得られた粉末混合物のカルシウム量、ユウロピウム量、マグネシウム量及び珪素量は、モル比で0.98:0.02:1:2.00(Ca:Eu:Mg:Si)であり、フッ素のモル量は、生成するCMS:Eu2+青色発光蛍光体1モルに対して0.030モルである。
得られた粉末混合物をアルミナ坩堝に入れ、2体積%水素−98体積%アルゴンの混合ガス雰囲気中にて、1150℃の温度で3時間焼成した。
得られた焼成物粉末について、焼成物粉末をアルミナ坩堝に入れ、大気中にて700℃の温度で1時間焼成して再焼成処理を行なった。この再焼成処理後の焼成物粉末について、X線回折パターン、アモルファス相の厚さ、粒子表面から8.3nmの深さにおける全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率及び励起波長254nmとした発光スペクトルを実施例1と同様に測定した。その結果、X線回折パターンからディオプサイドのX線回折パターンが確認され、カルシウムユウロピウムシリケート及びオケルマナイトのX線回折パターンは検出されなかった。アモルファス相の厚さは約7nmであり、全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率は80.0%であった。発光スペクトルの最大発光強度は、市販のBAM:Eu2+青色発光蛍光体粉末の最大発光強度を100とすると108であった。
[比較例4]
フッ化カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末、酸化ユウロピウム粉末、酸化マグネシウム粉末、そして二酸化珪素粉末を、モル比が0.005:0.975:0.01:1:2.00(CaF2:CaCO3:Eu23:MgO:SiO2)として、粉末混合物中のフッ素のモル量を、生成するCMS:Eu2+青色発光蛍光体1モルに対して0.010モルとした以外は、実施例2と同様にして焼成物粉末を製造し、得られた焼成物粉末について再焼成処理を行なった。
得られた再焼成処理後の焼成物粉末について、X線回折パターン、アモルファス相の厚さ、粒子表面から8.3nmの深さにおける全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率及び励起波長254nmとした発光スペクトルを実施例1と同様に測定した。その結果、X線回折パターンからディオプサイドとカルシウムユウロピウムシリケートのX線回折パターンが確認され、オケルマナイトのX線回折パターンは検出されなかった。アモルファス相の厚さは約7nmであり、全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率は58.5%であった。発光スペクトルの最大発光強度は、市販のBAM:Eu2+青色発光蛍光体の最大発光強度を100とすると83であった。
[比較例5]
フッ化カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末、酸化ユウロピウム粉末、酸化マグネシウム粉末、そして二酸化珪素粉末を、モル比が0.02:0.96:0.01:1:2.00(CaF2:CaCO3:Eu23:MgO:SiO2)として、粉末混合物中のフッ素のモル量を、生成するCMS:Eu2+青色発光蛍光体1モルに対して0.040モルとした以外は、実施例2と同様にして焼成物粉末を製造し、得られた焼成物粉末について再焼成処理を行なった。
得られた再焼成処理後の焼成物粉末について、X線回折パターン、アモルファス相の厚さ、粒子表面から8.3nmの深さにおける全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率及び励起波長254nmとした発光スペクトルを実施例1と同様に測定した。その結果、X線回折パターンからディオプサイドとカルシウムユウロピウムシリケートのX線回折パターンが確認され、オケルマナイトのX線回折パターンは検出されなかった。アモルファス相の厚さは約7nmであり、全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率は66.2%であった。発光スペクトルの最大発光強度は、市販のBAM:Eu2+青色発光蛍光体の最大発光強度を100とすると94であった。
本発明の蛍光体粉末を構成する蛍光体粒子の断面構造を概念的に示す断面図である。 実施例1にて製造した焼成物粉末について再焼成処理と酸処理とを行なう前後の発光スペクトル、並びにBAM:Eu粒子の発光スペクトルを示す図である。
符号の説明
1 結晶相
2 アモルファス相
3 表面層

Claims (4)

  1. 基本組成式がCaMgSi26:Eu2+で表されるディオプサイド結晶相と、その結晶相の表面を覆う厚さ3〜8nmのアモルファス相とからなり、結晶相のアモルファス相に接する表面の内側に、全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率が85%以上となる厚さが5〜50nmの表面層を有することを特徴とする青色発光蛍光体粒子からなる粉末。
  2. Ca 2 MgSi 2 7 で表されるオケルマナイトを含むことのない請求項1に記載の粉末。
  3. カルシウム源粉末、ユウロピウム源粉末、マグネシウム源粉末、及び珪素源粉末を、基本組成式がCaMgSi 2 6 :Eu 2+ で表されるディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粉末を生成する比率にて含む粉末混合物を還元性雰囲気下にて加熱焼成して、焼成物粉末を得る工程、そして得られた焼成物粉末について、酸素の存在下にて500〜1500℃の温度で焼成する再焼成処理と酸溶液に接触させる酸処理とを行なう工程を含む、基本組成式がCaMgSi 2 6 :Eu 2+ で表されるディオプサイド結晶相と、その結晶相の表面を覆う厚さ3〜8nmのアモルファス相とからなり、結晶相のアモルファス相に接する表面の内側に、全ユウロピウムに対する二価のユウロピウムの含有率が70%以上となる厚さが5〜50nmの表面層を有する青色発光蛍光体粒子からなる粉末の製造方法。
  4. マグネシウム源粉末が酸化マグネシウム粉末である請求項3に記載の製造方法。
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