JP2013221066A - 希土類添加複合酸化物蛍光体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】大気中の水分との反応を防止して安定性を改善し、赤色に有効に発光することができる希土類添加複合酸化物蛍光体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】賦活剤としてEuが添加された複合酸化物蛍光体であって、組成式が下記一般式(1)で表されることを特徴とする希土類添加複合酸化物蛍光体。
[(Sr、Eu)O・AmSiOm+2・bSiO2] (1)
(但し、上記一般式(1)中、Aはアルカリ土類金属元素であり、且つ、0≦b<1.5、1.0≦m<3.0を満たす。)
【選択図】図4
【解決手段】賦活剤としてEuが添加された複合酸化物蛍光体であって、組成式が下記一般式(1)で表されることを特徴とする希土類添加複合酸化物蛍光体。
[(Sr、Eu)O・AmSiOm+2・bSiO2] (1)
(但し、上記一般式(1)中、Aはアルカリ土類金属元素であり、且つ、0≦b<1.5、1.0≦m<3.0を満たす。)
【選択図】図4
Description
本発明は、希土類添加複合酸化物蛍光体及びその製造方法に関し、より詳しくは、照明やディスプレイ等に用いられる近紫外から青色の光で高輝度の蛍光を発する蛍光体に好適な希土類添加複合酸化物蛍光体及びその製造方法に関する。
近年、青色LEDや近紫外LEDの開発に伴い、これらのLEDと蛍光体を組み合わせて白色を得る白色発光素子の開発が進んでいる。青色LEDを用いて白色発光素子を作成する場合は、例えば特許文献1、2、及び3に記載されているように、青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせて白色発光素子を得るようにする技術が開発されている。
しかしながら、青色とその補色とから構成された白色は、色再現性が悪く、演色性が低い。そのため、3波長型と称される白色発光素子が開発されている。
3波長型の白色発光素子としては、青色を発光する発光素子と、その発光素子による青色の発光を受けて緑色を発光する蛍光体と、赤色を発光する蛍光体とを用いた白色発光素子が提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。
青色の光で励起可能な赤色蛍光体としては、例えば、CaAlSiN:Eu、(Sr,a)AlSiN、Ca2Si5N8、Sr2Si5N8等の窒化物蛍光体(例えば、特許文献5及び6、非特許文献1を参照。)や、CaS:Eu、SrS:Eu、(Ca,Sr)S:Eu等の硫化物蛍光体(例えば、特許文献7を参照。)が知られている。
窒化物蛍光体は、高性能ではあるが、1700℃〜2000℃の高温と数気圧の窒素圧でアニール処理するという特殊な製造工程が必要となる。また、硫化物蛍光体は、近年簡便な製造方法が提案されているが、独特の臭気を有することと大気中の水分と反応して腐食性ガスを発生することがあり、取り扱いに注意が必要となる。
一方で、賦活剤として希土類のユーロピウム(Eu)を添加したSrOやCaOは、簡便な製造方法により製造することができ、また可視光での励起が可能であり赤色の発光を示すことは古くから知られている(例えば、非特許文献2を参照。)。
しかしながら、それらは非常に活性であり、大気中の水分で炭酸塩等に変化して発光を示さなくなる。すなわち、Euを賦活したSrOは可視光で励起可能であって赤色の発光を示すものの、大気中の水分で炭酸塩等に変化して発光を示さなくなるという蛍光体としては致命的な問題があった。
Hiromu Watanabe and Naoto Kijima Journal of Alloys and Compounds 475 (2009) 434-439
P.M. Jaffe, E. Banks, Oxidation states of europium in the alkaline earth oxide and sulfide phosphors, J. Electrochem. Soc. 102,(1955)518-523
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、賦活剤として希土類であるEuを添加した蛍光体において、大気中の水分との反応を抑制して安定性を改善し、橙〜赤色に有効に発光することができる希土類添加複合酸化物蛍光体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本件発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、アルカリ土類金属シリケートの焼成においてSrOが生成する現象を利用し、所定の組成とすることによって、Euを賦活したSrOをシリケート相又はSiO2相で被覆して複合酸化物化することができ、大気中の水分との反応を抑制して大気中での安定性を改善し、効果的に橙〜赤色に発光することが可能な希土類添加複合酸化物蛍光体になることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る希土類添加複合酸化物蛍光体は、賦活剤としてEuが添加された複合酸化物蛍光体であって、組成式が下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
[(Sr、Eu)O・AmSiOm+2・bSiO2] (1)
(但し、上記一般式(1)中、Aはアルカリ土類金属元素であり、且つ、0≦b<1.5、1.0≦m<3.0を満たす。)
[(Sr、Eu)O・AmSiOm+2・bSiO2] (1)
(但し、上記一般式(1)中、Aはアルカリ土類金属元素であり、且つ、0≦b<1.5、1.0≦m<3.0を満たす。)
ここで、上記アルカリ土類金属元素は、Ba、Sr、Caから選ばれる1種類以上であることが好ましい。
また、本発明に係る希土類添加複合酸化物蛍光体の製造方法は、一般式[(Sr、Eu)O・AmSiOm+2・bSiO2](式中のAはアルカリ土類金属)で表される希土類添加複合酸化物蛍光体の製造方法であって、上記一般式において、0≦b<1.5、1.0≦m<3.0となるように、アルカリ土類金属炭酸塩及びEu化合物を秤量して有機酸で溶解して水溶液とし、該水溶液に水溶性ケイ素化合物を加えてゲル化させゲル体を得るゲル体生成工程と、上記ゲル体を400℃〜600℃で大気雰囲気中で熱処理し、該ゲル体に含まれる有機物を分解する熱処理工程と、上記熱処理工程後の熱処理粉末を粉砕し、600℃〜900℃で大気雰囲気中で仮焼成して前駆体を作製する仮焼成工程と、上記仮焼成工程で得られた前駆体を、還元雰囲気中において1000℃〜1400℃で還元焼成する焼成工程とを有することを特徴とする。
ここで、上記焼成工程では、1100℃以上1300℃未満の温度条件で還元焼成することが好ましい。
本発明に係る希土類添加複合酸化物蛍光体によれば、大気中の水分との反応を抑制することができ、安定的に橙〜赤色の波長の光を高輝度に発光することができる。このような希土類添加複合酸化物蛍光体によれば、例えば照明やディスプレイ等に利用される白色LEDを構成する赤色蛍光体として好適に用いることができ、その工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
<希土類添加複合酸化物蛍光体>
本実施の形態に係る希土類添加複合酸化物蛍光体は、賦活剤として希土類のユーロピウム(Eu)が添加された複合酸化物であって、組成式が下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
[(Sr、Eu)O・AmSiOm+2・bSiO2] (1)
ここで、上記一般式(1)中、Aはアルカリ土類金属元素であり、且つ、0≦b<1.5、1.0≦m<3.0を満たすものである。
本実施の形態に係る希土類添加複合酸化物蛍光体は、賦活剤として希土類のユーロピウム(Eu)が添加された複合酸化物であって、組成式が下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
[(Sr、Eu)O・AmSiOm+2・bSiO2] (1)
ここで、上記一般式(1)中、Aはアルカリ土類金属元素であり、且つ、0≦b<1.5、1.0≦m<3.0を満たすものである。
この蛍光体は、上記一般式(1)に示すように、Euを賦活したSrOを含んでなる。これにより、可視光で励起可能であって橙〜赤色に発光することができる。また、そのSrO相は、非常に活性であって大気中の水分と反応し易い性質を有するものであるが、上記一般式(1)の組成からなる蛍光体は、そのSrOが周囲のアルカリ土類金属シリケート相及び/又はSiO2相で被覆されて複合酸化物となっている。具体的には、シリケート相やSiO2相が部分的に熔解してSrOの周囲を被覆し、いわゆるバリア層のようになっている。このことから、活性なSrO相が大気中の水分と反応して炭酸塩に変化・変質することを防止して大気中での安定性を改善することができ、安定的に橙〜赤色の波長の光を発光することができる。
本実施の形態に係る希土類添加複合酸化物蛍光体において、上記一般式(1)中のAで表されるアルカリ土類金属元素としては、Ba、Sr、Caから選ばれる1種類以上であることが好ましい。
希土類添加複合酸化物蛍光体において、SrOを被覆するSiO2相は、上記一般式(1)中の「b」で表される含有割合として、0≦b<1.5とする。この希土類添加複合酸化物蛍光体において、さらに任意にSiO2相を形成させることによって、上述したアルカリ土類金属シリケートと共にSrO相を被覆させるようにすることができ、SrO相の大気中での安定性をより効果的に改善して、安定的に橙〜赤色の発光を示すことが可能となる。なお、SiO2相の割合が1.5以上(1.5≦b)になると、SrO相の割合が相対的に少なくなり、橙〜赤色での発光波長のピーク強度が弱くなる。
また、希土類添加複合酸化物蛍光体において、アルカリ土類金属の混合割合は、その原子数で表される上記一般式(1)中の「m」として、1.0≦m<3.0を満たすものである。アルカリ土類金属の割合が1.0未満(m<1.0)の場合には、AmSiOm+2からアルカリ土類金属シリケート:珪素:酸素の原子比が1:1:3の結晶相を生成するためにSrO相からSrを取るため、目的とするSrO:Eu相の生成が阻害される。一方で、アルカリ土類金属の割合が3.0以上(3.0≦m)の場合には、AmSiOm+2からアルカリ土類金属シリケート:珪素:酸素の原子比が3:1:5の結晶相とアルカリ土類金属酸化物が生成し、目的とするSrO:Eu相以外のアルカリ土類金属酸化物にもEuが固溶するため好ましくない。
このように、上述した組成を有する希土類添加複合酸化物蛍光体は、可視光領域での励起により橙〜赤色の発光を示すSrOを有するとともに、そのSrO相をアルカリ土類金属シリケート相及び/又はSiO2相で被覆するように構成されている。これにより、活性なSrOの大気中での安定性を高めることができ、大気中の水分との反応を抑制して炭酸塩化することを防止して、橙〜赤色の波長領域での色純度の良好な発光を示すことができる。このような希土類添加複合酸化物蛍光体によれば、橙系の赤色蛍光体として好適に用いることができる。
<希土類添加複合酸化物蛍光体の製造方法>
次に、上述した一般式(1)で表される希土類添加複合酸化物蛍光体の製造方法について説明する。
次に、上述した一般式(1)で表される希土類添加複合酸化物蛍光体の製造方法について説明する。
本実施の形態に係る希土類添加複合酸化物蛍光体の製造方法は、所定の組成となるように秤量したアルカリ土類金属炭酸塩及びEu化合物を有機酸で溶解した水溶液に水溶性ケイ素化合物を加えてゲル体を得るゲル体生成工程と、ゲル体に含まれる有機物を分解する熱処理工程と、熱処理工程後の熱処理粉末を粉砕して仮焼成して前駆体を作製する仮焼成工程と、得られた前駆体を還元焼成する焼成工程とを有する。以下、工程毎に詳述する。
(ゲル体生成工程)
ゲル体生成工程では、所定の割合で秤量した原料金属塩であるアルカリ土類金属炭酸塩と賦活剤としてのEu化合物とを有機酸で溶解して水溶液とし、得られた水溶液に所定量の水溶性ケイ素化合物を加えてゲル体を生成する。このように、原料金属塩を水溶液とし水溶性ケイ素化合物を混合させてゲル体を生成させることによって、原料を均一に分散させることができる。
ゲル体生成工程では、所定の割合で秤量した原料金属塩であるアルカリ土類金属炭酸塩と賦活剤としてのEu化合物とを有機酸で溶解して水溶液とし、得られた水溶液に所定量の水溶性ケイ素化合物を加えてゲル体を生成する。このように、原料金属塩を水溶液とし水溶性ケイ素化合物を混合させてゲル体を生成させることによって、原料を均一に分散させることができる。
より具体的に、ゲル体生成工程では、先ず、所望とする組成となるように所定の割合で秤量したアルカリ土類金属炭酸塩と賦活剤として添加するEu化合物とを混合して水溶液を作製する。
原料となるアルカリ土類金属炭酸塩としては、Ba、Sr、Caから選択される1種以上の炭酸塩を用いる。また、賦活剤として添加するEuの化合物としては、酸化物、硝酸塩、酢酸塩等を用いることができ、またEu単独で用いることもできる。
上述したアルカリ土類金属炭酸塩とEu化合物は、先ず、アルカリ土類金属炭酸塩と賦活剤であるEu化合物とを水に加え、次いで、これらの金属元素の総モル数の3倍〜6倍に相当する量の有機酸を添加して攪拌する。このように、アルカリ土類金属炭酸塩とEu化合物とを有機酸を用いて溶解することによって水溶液とする。
アルカリ土類金属炭酸塩とEu化合物の溶解に際して用いる有機酸としては、特に限定されないが、例えばクエン酸等を用いることができる。また、有機酸による溶解に際しては、80℃〜120℃の温度条件で攪拌して全量を完全に溶解させて水溶液とする。
一方で、ゲル体生成工程では、上述のようにアルカリ土類金属炭酸塩とEu化合物とを溶解させた水溶液を準備するとともに、水溶性ケイ素化合物(WSS)を作製して準備する。水溶性ケイ素化合物は、例えば以下に示す方法により作製することができる。すなわち、原料としてテトラエトキシシラン(TEOS)と2価アルコールとを、モル比で1:3以上となるようにそれぞれ加えて80℃で1時間混合し、この混合液に触媒としての酸を少量(混合液の0.2%程度)加えて1時間攪拌することによって作製する。
このようにして作製された水溶性ケイ素化合物を用いることによって、簡便にアルカリ土類金属炭酸塩とEu化合物とを溶解させた水溶液と混合させることができる。そして、後述のように、このような水溶液を用いた湿式合成により前駆体を形成することによって、原料を均一に分散させた前駆体を得ることができ、特に賦活剤であるEuを均一に添加させることができるので、高輝度な蛍光体を効果的に作製することができる。
2価アルコールとしては、例えばプロピレングリコールを用いることができ、また触媒として用いる酸としては、塩酸又は乳酸を用いることができる。
また、水溶性ケイ素化合物(WSS)においては、TEOSとプロピレングリコールとのモル比を1:3以上とすることによって水溶性になるが、モル比1:4未満ではゲル化し易くなるので長期保存を行う場合には、TEOSとプロピレングリコールとをモル比1:4以上となるように混合させることが好ましい。
ゲル体生成工程では、上述のようにそれぞれ作製した原料金属の水溶液と水溶性ケイ素化合物とを、所望とする組成比となるように混合し、ゲル体を作製する。
本実施の形態においては、作製する希土類添加複合酸化物蛍光体が、組成式として[(Sr、Eu)O・AmSiOm+2・bSiO2]で表され、式中のAが原料として用いたアルカリ土類金属炭酸塩に由来するアルカリ土類金属元素であり、且つ、0≦b<1.5、1.0≦m<3.0を満たす。したがって、ゲル体生成工程においては、この所望とする組成式となるように、アルカリ土類金属炭酸塩及びEu化合物を秤量して混合するとともに、水溶性ケイ素化合物を添加してゲル体を作製する。供給する原料中の原子比と得られる蛍光体の原子組成比とは略一致することから、所望とする組成比となるように原料をそれぞれ秤量して混合することによって、それぞれの原子を上述した範囲とすることができる。
ゲル体の生成においては、アルカリ土類金属炭酸塩とEu化合物とを溶解させた水溶液に水溶性ケイ素化合物を添加して混合し、その混合液を放置することによって次第にゲル化する。ゲル化に要する時間は、アルカリ土類金属元素の種類や水溶液の水分量によって変化する。また、ゲル化をより効率的に進行させるために、2価アルコールであるプロピレングリコールを金属元素の総モル数の6倍〜12倍に相当する量添加してもよい。
また、ゲル化温度としては、10℃〜100℃とすることが好ましく、20℃〜80℃とすることがより好ましい。温度が10℃未満ではゲル化時間が長くなり、100℃を超えると水が沸騰して均一なゲル化が難しくなる。
(熱処理工程)
熱処理工程では、ゲル体生成工程にて得られたゲル体に対して熱処理し、そのゲル体に含まれる有機物を分解する。得られたゲル体には、アルカリ土類金属炭酸塩や水溶性ケイ素化合物に由来する有機物が含まれている。そのため、ゲル体を熱処理することによって有機物の分解を行う。この熱処理工程における有機物の分解により、得られる蛍光体の蛍光強度を高めることができ、高輝度な蛍光体を作製することができる。また、その熱処理により、原料成分をより均一に分散させることができる。
熱処理工程では、ゲル体生成工程にて得られたゲル体に対して熱処理し、そのゲル体に含まれる有機物を分解する。得られたゲル体には、アルカリ土類金属炭酸塩や水溶性ケイ素化合物に由来する有機物が含まれている。そのため、ゲル体を熱処理することによって有機物の分解を行う。この熱処理工程における有機物の分解により、得られる蛍光体の蛍光強度を高めることができ、高輝度な蛍光体を作製することができる。また、その熱処理により、原料成分をより均一に分散させることができる。
熱処理温度、すなわち有機物の熱分解温度としては、400℃〜600℃とすることが好ましい。また、熱処理時間としては、1時間〜20時間とすることが好ましく、4時間〜12時間とすることがより好ましい。
また、熱処理は、大気雰囲気中で行うことが好ましい。これにより、ゲル体に含まれる有機物の分解をより効果的に進行させることができる。一方で、例えば不活性雰囲気にて熱処理を行った場合には、温度条件等によって表面に炭素が残留する可能性があり、結果として輝度の低下をもたらす可能性があるため好ましくない。
(仮焼成工程)
仮焼成工程では、熱処理工程にて得られた熱処理粉末を粉砕して所定の焼成条件で仮焼成する。この仮焼成工程では、熱処理工程における熱処理温度よりも高温の条件で、含有する有機物の分解をさらに進めるとともに、仮焼成することによって炭酸塩の前駆体を作製する。
仮焼成工程では、熱処理工程にて得られた熱処理粉末を粉砕して所定の焼成条件で仮焼成する。この仮焼成工程では、熱処理工程における熱処理温度よりも高温の条件で、含有する有機物の分解をさらに進めるとともに、仮焼成することによって炭酸塩の前駆体を作製する。
具体的に、上述した熱処理工程による熱分解後においては、熱処理されたゲル体は灰色の炭状の粉末となっている。そのため、仮焼成工程では、熱分解物に含まれる炭素を除去するために、その熱処理粉末を粉砕して、さらに高温で仮焼成することによって炭素を除去し炭酸塩の前駆体を得る。
熱処理粉末の粉砕方法としては、特に限定されるものではなく、例えば粉末を乳鉢に入れて軽く粉砕する方法を用いることができる。
また、粉砕後の仮焼成の温度条件としては、600℃〜900℃とすることが好ましい。仮焼成の温度が600℃未満では、熱処理粉末に含まれる炭素を十分に除去することができず、一方で900℃を超えると、前駆体が完全に焼結したり副生成物が生成したりするとともに、坩堝等の仮焼成材料の選定が難しくなるため好ましくない。
また、仮焼成工程における仮焼成も、大気雰囲気中で行うことが好ましい。これにより、有機物や炭素の分解除去を効果的に進行させることができる。
仮焼成工程では、上述した仮焼成処理によって炭酸塩の前駆体を得ることができる。ここで、本実施の形態に係る製造方法においては、上述のように水溶性ケイ素化合物を用いて合成して前駆体としているため、分子レベルで混合させることができ、構成成分のSr、Si、Euが均一に存在するとともに各金属原子間の距離が短くなる。そのため、化合物形成に必要な金属元素の拡散距離が短くなり、低温での条件で化合物を形成することができるという効果が得られる。このように、本実施の形態に係る製造方法によれば、従来の蛍光体の製造方法に比べて、より低温条件で簡易に所望とする組成からなる蛍光体を製造することができる。
(焼成工程)
焼成工程では、仮焼成工程にて得られた炭酸塩の前駆体を焼成する。この焼成工程では、炭酸塩の前駆体を分解することによって酸化物にするとともに、賦活剤であるEuを3価から2価にするため、還元雰囲気で焼成する。
焼成工程では、仮焼成工程にて得られた炭酸塩の前駆体を焼成する。この焼成工程では、炭酸塩の前駆体を分解することによって酸化物にするとともに、賦活剤であるEuを3価から2価にするため、還元雰囲気で焼成する。
還元雰囲気としては、水素やアンモニア等の気体(ガス)又はそれらガスと窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスとの混合ガスを用いることが好ましい。
または、例えば図1に示すように、アルミナ等からなる坩堝を二重に用いた二重坩堝11,12を使用して、二酸化炭素の還元雰囲気としてもよい。具体的には、坩堝11,12のそれぞれに活性炭13等を投入し、内側の坩堝11内に焼成対象となる前駆体14を載置する。そして、それぞれの坩堝11,12に蓋11a,12aをし、炭素を加熱することによって生じる二酸化炭素の還元雰囲気として、前駆体14を還元焼成する。
還元焼成の温度条件としては、1000℃〜1400℃とする。焼成温度が1000℃未満であると、炭酸塩の分解が進まず、還元焼成が効果的に進行しない。一方で、焼成温度が1400℃を超えると、アルカリ土類金属シリケートの生成割合が多くなり、上述した所望の組成からなる蛍光体が得られず、SrO相の割合が相対的に減少して橙〜赤色領域での発光ピーク強度が弱くなる。また、還元焼成温度が1400℃を超えると、粒子径が粗大化してLED等の蛍光体として利用し難くなり、また高温相が不純物相として生成したり、部分的な溶融が起ったりするため好ましくない。
また、この還元焼成温度としては、1100℃以上1300℃未満とすることがより好ましい。焼成温度を1100℃以上1300℃未満とすることによって、橙〜赤色領域での発光ピーク強度がより強い蛍光体とすることができる。
還元焼成時間としては、0.5時間〜12時間とすることが好ましく、1時間〜6時間とすることがより好ましい。
ここで、この焼成工程において1000℃〜1400℃の温度条件で還元焼成することで、炭酸塩の前駆体の分解によりアルカリ土類金属シリケートの合成が始まる。このとき、本実施の形態に係る製造方法では、上述した組成となるように原料を調整していることにより、生成するSrO相が周囲に存在するアルカリ土類金属シリケート相又はSiO相によって被覆されるようになる。
具体的に、Sr3SiO5で表される蛍光体を例に挙げて説明する。Sr3SiO5で表される蛍光体では、この組成となるように原料を秤量して得られた前駆体を1000℃〜1400℃の温度条件で焼成処理することで、Sr2SiO4相とSrO相が形成されるようになると想定される。しかしながら、図2のX線回折(XRD)パターンに示されるように、Sr3SiO5の蛍光体では、SrO相に相当する回折ピークは確認できるものの、Sr2SiO4相に相当する回折ピークは確認できない。
このことは、前駆体の作製においては900℃以下という低い温度で作製しているのでSr2SiO4相が形成されないとともに、還元雰囲気での焼成ではその前駆体からSrOが多量に形成されるようになるため、Sr2SiO4相が形成される前にSrOが分離析出され、Srが不足してSr2SiO4相が形成されずに、SiO2のガラス体やSrSiO3が形成されるためと考えられる。このとき、形成されたSiO2のガラス体やSrSiO3の固溶体は、1000℃〜1400℃の焼成温度条件で熔解し、分離析出したSrO相の周囲を被覆するようになる。
このように、1000℃〜1400℃の温度条件での還元焼成によりSr3SiO5で表される蛍光体を作製すると、生成するSrO相が周囲に存在するアルカリ土類金属シリケート相又はSiO2相によって被覆され、これがバリア層の作用を果たして、SrOの耐湿性を向上させ、大気中の水分との反応を抑制するようになる。
また、上述のように、還元雰囲気での焼成処理によって賦活剤であるEuが還元されて2価となってドープされるが、このときSrO相に固溶して発光中心となる。したがって、SrO相を形成させるとともに耐湿性を向上させて炭酸塩等への変化・変質を抑制することによって、発光中心となるEuが確実に保持され、蛍光強度の大きい蛍光体となる。
また次に、Sr1.46Ba0.5Eu0.04SiO4で表される蛍光体を例に挙げて説明すると、BaはSrよりも還元されにくく、還元雰囲気で熱処理してもBaOの分離析出は起りにくい。そのため、SrOと(Ba、Sr)2SiO4が析出することになる。図2に示すXRDパターンにおいても、SrO相と(Ba、Sr)2SiO4相と思われる結晶ピークが存在していることが分かる。また、(Ba、Sr)2SiO4相は固溶体であるため、Srが入ることで格子が縮んでX線反射ピークがBa2SiO4相よりも高角側に動いていることが分かる。
このSr1.46Ba0.5Eu0.04SiO4で表される蛍光体では、BaシリケートとSrシリケートの固溶体の融点が低下してシリケートの形成温度も低下する。そのため、1000℃〜1400℃の焼成温度条件でより効率的にシリケートが熔解し、SrO周囲に部分的に融けたシリケート相が形成されてSrO相の周囲を効果的に被覆するようになる。ここで図3に、この蛍光体の粒子形状についてのSEM像を示す。図3のSEM像から分かるように、粒が丸みを帯びて部分的に熔解していることが分かる。
このように、Sr1.46Ba0.5Eu0.04SiO4で表される蛍光体では、Euが添加されたSrO相がシリケートによって効果的に被覆されているので、耐湿性がより一層に向上して大気中の水分との反応が抑制され、より輝度の高い発光を示す蛍光体となる。
一方で、例えば、Srを増やしてSr:Siのモル比を4:1の割合としたSr4SiO6で表される蛍光体の場合では、図2のXRD測定結果に示されるように、SrO相とSr2SiO4相が形成されていることが分かる。このことは、モル量に応じてSrO量が多く生成するために、形成されるシリケート相等で完全には被覆することができなくなり、その結果として一部がSr2SiO4相となると考えられる。そして、このようにSrO相を完全に被覆できないことにより、SrO相の耐湿性が不十分となって、大気中の水分との反応を抑制することができずに変質をもたらす。
以上詳述した製造方法により、一般式[(Sr、Eu)O・AmSiOm+2・bSiO2](Aはアルカリ土類金属元素)で表され、0≦b<1.5、1.0≦m<3.0を満たす希土類添加複合酸化物蛍光体を製造することができる。そして、このようにして製造された希土類添加複合酸化物蛍光体では、大気中の水分との反応を抑制して、安定的に橙〜赤色の波長領域の光を発光することができ、赤色蛍光体として好適に用いることができる。
以下に、本発明について実施例を用いてより詳しく説明する。本実施例では、各実施例及び比較例にて作製した蛍光体の蛍光測定を行い、その輝度を比較した。蛍光測定の結果は、従来の黄色蛍光体であるY3Al5O12:Ce3+(YAG:Ce,化成オプトニクス株式会社製P46)の最高輝度を1として規格化することによって評価した。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<蛍光体の作製>
実施例1では、以下の製造方法により、上記一般式(1)において、A:Sr、m=2.0、b=0である、組成式[Sr2.9Eu0.1SiO5]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体の作製>
実施例1では、以下の製造方法により、上記一般式(1)において、A:Sr、m=2.0、b=0である、組成式[Sr2.9Eu0.1SiO5]で表される蛍光体を作製した。
先ず、水溶性ケイ素化合物(WSS)を次のように作製し準備した。テトラエトキシシラン(TEOS)(関東化学株式会社製)とプロピレングリコール(99%、関東化学株式会社製)を22.4ml秤量し、80℃で48時間混合した。さらに、その混合液に塩酸を100μl加えて室温で1時間攪拌した。この攪拌液に蒸留水を加えて100mlに定溶して1M/Lの水溶性ケイ素化合物を作製した。
次に、炭酸ストロンチウム(関東化学株式会社製 3N)と、酸化ユーロピウム(高純度化学製 2N)とを、Sr:Euのモル比が2.9:0.1の割合となるようにそれぞれ所定量秤量し、クエン酸を総金属(Sr+Eu)モル数の6倍になるように加え、金属塩が水に完全に溶解するまで設定温度60℃のホットプレート上で攪拌混合した。
そして、その金属塩をクエン酸で溶解した水溶液にWSSを、Si:Sr:Euのモル比が1:2.9:0.1の割合になるように加え、2時間攪拌してゲル体を作製した。
次に、得られたゲル体をマントルヒータに装入し、200℃1時間、450℃2時間の熱処理を行って焼成してゲル体に含まれる有機物を燃焼分解し、熱処理物を得た。
続いて、得られた熱処理物をメノウの乳鉢で軽く粉砕し、その後アルミナ坩堝に入れて、ボックス炉を用いて、大気中で800℃2時間の熱処理を行って、有機物をさらに分解するとともに仮焼成して前駆体を作製した。
得られた前駆体を、図1に示したような活性炭が入ったアルミナ二重坩堝に入れ、ボックス炉を用いて、1250℃2時間の条件で還元焼成(炭素還元)し、組成式[Sr2.9Eu0.1SiO5]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体についての評価>
図4及び図5に、実施例1にて作製した蛍光体の蛍光強度測定の結果を示す。なお、図4は発光スペクトルを示すものであり、図5は励起スペクトルと示すものである。また、下記表1に、ピーク波長とその蛍光強度を示す。さらに、図2に、X線回折(XRD)の測定結果を示す。
図4及び図5に、実施例1にて作製した蛍光体の蛍光強度測定の結果を示す。なお、図4は発光スペクトルを示すものであり、図5は励起スペクトルと示すものである。また、下記表1に、ピーク波長とその蛍光強度を示す。さらに、図2に、X線回折(XRD)の測定結果を示す。
図4及び表1に示されるように、この蛍光体は611nm(橙色)に発光のピーク波長を有しており、その蛍光強度もYAG比で0.83と強い発光を示した。また、図5に示されるように、この蛍光体では、250nmから600nmの可視光で励起可能であることが分かる。
また、図2のXRDパターンの結果から、SrOに対応する回折ピークが得られたことが分かる。このことから、活性なSrO相が大気中の水分と反応して炭酸塩となることが防止され、安定的に維持されたことが分かる。
[実施例2]
<蛍光体の作製>
実施例2では、焼成時における焼成温度を1300℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、組成式[Sr2.9Eu0.1SiO5]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体の作製>
実施例2では、焼成時における焼成温度を1300℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、組成式[Sr2.9Eu0.1SiO5]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体についての評価>
図4に、実施例2にて作製した蛍光体の蛍光強度測定の結果を示す。また、下記表1に、ピーク波長とその蛍光強度を示す。
図4に、実施例2にて作製した蛍光体の蛍光強度測定の結果を示す。また、下記表1に、ピーク波長とその蛍光強度を示す。
図4及び表1に示されるように、実施例1に比してその蛍光強度は低下したものの、611nm(橙色)に発光のピーク波長を有していることが分かる。
[実施例3]
<蛍光体の作製>
実施例3では、以下の製造方法により、上記一般式(1)において、A:Sr及びBa、m=1.0、b=0である、組成式[Sr1.46Ba0.50Eu0.04SiO4]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体の作製>
実施例3では、以下の製造方法により、上記一般式(1)において、A:Sr及びBa、m=1.0、b=0である、組成式[Sr1.46Ba0.50Eu0.04SiO4]で表される蛍光体を作製した。
先ず、炭酸ストロンチウム(関東化学株式会社製 3N)と、炭酸バリウム(関東化学株式会社製 3N)と、酸化ユーロピウム(高純度化学製 2N)とを、Sr:Ba:Euのモル比が1.46:0.50:0.04の割合となるようにそれぞれ所定量秤量し、実施例1と同様にしてゲル体を作製した。また、実施例1と同様にして、得られたゲル体に含まれる有機物を燃焼分解した後、仮焼成して前駆体を作製した。
次に、得られた前駆体を黒鉛容器に入れて、管状炉を用いて、窒素90%・水素10%の混合ガス流通下で1250℃4時間の条件で還元焼成(水素還元)し、組成式[Sr1.46Ba0.50Eu0.04SiO4]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体についての評価>
図6に、実施例3にて作製した蛍光体の蛍光強度測定の結果を示す。なお、図6は、励起波長460nmにおける発光スペクトル図である。また、下記表1に、ピーク波長とその蛍光強度を示す。さらに、図2に、X線回折(XRD)の測定結果を示す。
図6に、実施例3にて作製した蛍光体の蛍光強度測定の結果を示す。なお、図6は、励起波長460nmにおける発光スペクトル図である。また、下記表1に、ピーク波長とその蛍光強度を示す。さらに、図2に、X線回折(XRD)の測定結果を示す。
この蛍光体は、250nmから470nmの光で励起可能であり、460nmで励起して、図6及び表1に示されるように611nm(橙色)に発光のピーク波長を有し、その蛍光強度もYAG比で1.08と非常に強い発光を示した。また、この蛍光体を多雨期中で1ヶ月保管したが、発光輝度の変化は殆どなかった。
また、図2のXRDパターンの結果から、SrOに対応する回折ピークが得られたことが分かる。このことから、活性なSrO相が大気中の水分と反応して炭酸塩となることが防止され、安定的に維持されたことが分かる。
[実施例4]
<蛍光体の作製>
実施例4では、Si:Sr:Euのモル比が1:2.9:0.1の割合となるように原料を混合させたこと以外は、実施例3と同様の方法により、上記一般式(1)において、A:Sr、m=2.0、b=0である、組成式[Sr2.9Eu0.1SiO5]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体の作製>
実施例4では、Si:Sr:Euのモル比が1:2.9:0.1の割合となるように原料を混合させたこと以外は、実施例3と同様の方法により、上記一般式(1)において、A:Sr、m=2.0、b=0である、組成式[Sr2.9Eu0.1SiO5]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体についての評価>
下記表1に、ピーク波長とその蛍光強度を示す。この蛍光体は、250nmから470nmの光で励起可能であり、460nmで励起して、表1に示されるように611nm(橙色)に発光のピーク波長を有し、その蛍光強度もYAG比で0.97と強い発光を示した。また、この蛍光体を多雨期中で1ヶ月保管したが、発光輝度の変化は殆どなかった。さらに、XRD測定を行ったところ、SrO相に対応する回折ピークが得られた。
下記表1に、ピーク波長とその蛍光強度を示す。この蛍光体は、250nmから470nmの光で励起可能であり、460nmで励起して、表1に示されるように611nm(橙色)に発光のピーク波長を有し、その蛍光強度もYAG比で0.97と強い発光を示した。また、この蛍光体を多雨期中で1ヶ月保管したが、発光輝度の変化は殆どなかった。さらに、XRD測定を行ったところ、SrO相に対応する回折ピークが得られた。
[実施例5]
<蛍光体の作製>
実施例5では、Si:Sr:Euのモル比が1:3.1:0.1の割合となるように原料を混合させたこと以外は、実施例3と同様の方法により、上記一般式(1)において、A:Sr、m=2.2、b=0である、組成式[Sr3.1Eu0.1SiO5.2]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体の作製>
実施例5では、Si:Sr:Euのモル比が1:3.1:0.1の割合となるように原料を混合させたこと以外は、実施例3と同様の方法により、上記一般式(1)において、A:Sr、m=2.2、b=0である、組成式[Sr3.1Eu0.1SiO5.2]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体についての評価>
下記表1に、ピーク波長とその蛍光強度を示す。この蛍光体は、250nmから470nmの光で励起可能であり、460nmで励起して、表1に示されるように611nm(橙色)に発光のピーク波長を有し、その蛍光強度もYAG比で0.97と強い発光を示した。また、この蛍光体を多雨期中で1ヶ月保管したが、発光輝度の変化は殆どなかった。さらに、XRD測定を行ったところ、SrO相に対応する回折ピークが得られた。
下記表1に、ピーク波長とその蛍光強度を示す。この蛍光体は、250nmから470nmの光で励起可能であり、460nmで励起して、表1に示されるように611nm(橙色)に発光のピーク波長を有し、その蛍光強度もYAG比で0.97と強い発光を示した。また、この蛍光体を多雨期中で1ヶ月保管したが、発光輝度の変化は殆どなかった。さらに、XRD測定を行ったところ、SrO相に対応する回折ピークが得られた。
[実施例6]
<蛍光体の作製>
実施例6では、Si:Sr:Euのモル比が1.1:2.9:0.1の割合となるように原料を混合させたこと以外は、実施例3と同様の方法により、上記一般式(1)において、A:Sr、m=2.0、b=0.1である、組成式[Sr2.9Eu0.1Si1.1O4]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体の作製>
実施例6では、Si:Sr:Euのモル比が1.1:2.9:0.1の割合となるように原料を混合させたこと以外は、実施例3と同様の方法により、上記一般式(1)において、A:Sr、m=2.0、b=0.1である、組成式[Sr2.9Eu0.1Si1.1O4]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体についての評価>
下記表1に、ピーク波長とその蛍光強度を示す。この蛍光体は、250nmから470nmの光で励起可能であり、460nmで励起して、表1に示されるように611nm(橙色)に発光のピーク波長を有し、その蛍光強度もYAG比で0.91と強い発光を示した。また、この蛍光体を多雨期中で1ヶ月保管したが、発光輝度の変化は殆どなかった。さらに、XRD測定を行ったところ、SrO相に対応する回折ピークが得られた。
下記表1に、ピーク波長とその蛍光強度を示す。この蛍光体は、250nmから470nmの光で励起可能であり、460nmで励起して、表1に示されるように611nm(橙色)に発光のピーク波長を有し、その蛍光強度もYAG比で0.91と強い発光を示した。また、この蛍光体を多雨期中で1ヶ月保管したが、発光輝度の変化は殆どなかった。さらに、XRD測定を行ったところ、SrO相に対応する回折ピークが得られた。
[比較例1]
<蛍光体の作製>
比較例1では、Si:Sr:Euのモル比が0:0.95:0.05の割合となるように原料を混合させたこと以外は、実施例1と同様の方法により、組成式[Sr0.95Eu0.05O]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体の作製>
比較例1では、Si:Sr:Euのモル比が0:0.95:0.05の割合となるように原料を混合させたこと以外は、実施例1と同様の方法により、組成式[Sr0.95Eu0.05O]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体についての評価>
この比較例1では、赤い色の粉末が得られたが、蛍光は示さなかった。また、XRD測定を行ったところ、測定中に変色して白くなった。そして、そのXRDでは、SrO、SrCO3、Sr(OH)2が混ざったピークが得られた。これのことから、比較例1にて作製した蛍光体では、大気中の水分と反応してSrO相の大部分が炭酸塩に変化してしまったと考えられる。
この比較例1では、赤い色の粉末が得られたが、蛍光は示さなかった。また、XRD測定を行ったところ、測定中に変色して白くなった。そして、そのXRDでは、SrO、SrCO3、Sr(OH)2が混ざったピークが得られた。これのことから、比較例1にて作製した蛍光体では、大気中の水分と反応してSrO相の大部分が炭酸塩に変化してしまったと考えられる。
[比較例2]
<蛍光体の作製>
比較例2では、Si:Sr:Ba:Euのモル比が1:0.38:1.48:0.14の割合となるように原料を混合させたこと以外は、実施例3と同様の方法により、組成式[Sr0.38Ba1.48Eu0.14SiO4]で表される蛍光体を作製した。なお、この比較例2では、薄緑粉末が得られた。
<蛍光体の作製>
比較例2では、Si:Sr:Ba:Euのモル比が1:0.38:1.48:0.14の割合となるように原料を混合させたこと以外は、実施例3と同様の方法により、組成式[Sr0.38Ba1.48Eu0.14SiO4]で表される蛍光体を作製した。なお、この比較例2では、薄緑粉末が得られた。
<蛍光体についての評価>
図6に、比較例2にて作製した蛍光体の蛍光強度測定の結果を示す。また、下記表1に、ピーク波長とその蛍光強度を示す。
図6に、比較例2にて作製した蛍光体の蛍光強度測定の結果を示す。また、下記表1に、ピーク波長とその蛍光強度を示す。
図6及び表1に示されるように、この蛍光体のピーク波長は550nmであり、橙〜赤色の波長領域で蛍光を示さなかった。また、その蛍光強度もYAG比で0.07と極めて弱いものであった。また、この蛍光体についてXRD測定を行ったところ、SrO相に対応する回折ピークは得られなかった。
[比較例3]
<蛍光体の作製>
比較例3では、Si:Sr:Euのモル比が1:3.9:0.1の割合となるように原料を混合させたこと以外は、実施例2と同様の方法により、上記一般式(1)において、A:Sr、m=3.0、b=0である、組成式[Sr3.9Eu0.1SiO6]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体の作製>
比較例3では、Si:Sr:Euのモル比が1:3.9:0.1の割合となるように原料を混合させたこと以外は、実施例2と同様の方法により、上記一般式(1)において、A:Sr、m=3.0、b=0である、組成式[Sr3.9Eu0.1SiO6]で表される蛍光体を作製した。
<蛍光体についての評価>
この比較例3では、赤紫色の粉末が得られた。この蛍光体について、XRD測定を行ったところ、測定中に変色して白くなった。変色後の粉末は蛍光を示さなかった。そして、そのXRDでは、図2に示されるように、SrOとシリケート(Sr2SiO4)に関係する回折ピークが観察された。この蛍光体では、Sr量が多くなったためにシリケートによってSrO相を効果的に被覆することができず、その結果として耐湿性が十分でなく、SrO相の一部が変質してしまい蛍光を示さなかったと考えられる。
この比較例3では、赤紫色の粉末が得られた。この蛍光体について、XRD測定を行ったところ、測定中に変色して白くなった。変色後の粉末は蛍光を示さなかった。そして、そのXRDでは、図2に示されるように、SrOとシリケート(Sr2SiO4)に関係する回折ピークが観察された。この蛍光体では、Sr量が多くなったためにシリケートによってSrO相を効果的に被覆することができず、その結果として耐湿性が十分でなく、SrO相の一部が変質してしまい蛍光を示さなかったと考えられる。
なお、表1の「発光」の評価項目において、『◎』はその蛍光体が強い発光強度で発光したことを表し、『○』は発光は示したもののその発光強度がやや弱かったことを表し、『×』は発光を示さなかったことを表す。
Claims (4)
- 賦活剤としてEuが添加された複合酸化物蛍光体であって、
組成式が下記一般式(1)で表されることを特徴とする希土類添加複合酸化物蛍光体。
[(Sr、Eu)O・AmSiOm+2・bSiO2] (1)
(但し、上記一般式(1)中、Aはアルカリ土類金属元素であり、且つ、0≦b<1.5、1.0≦m<3.0を満たす。) - 上記アルカリ土類金属元素は、Ba、Sr、Caから選ばれる1種類以上であることを特徴とする請求項1に記載の希土類添加複合酸化物蛍光体。
- 一般式[(Sr、Eu)O・AmSiOm+2・bSiO2](式中のAはアルカリ土類金属)で表される希土類添加複合酸化物蛍光体の製造方法であって、
上記一般式において、0≦b<1.5、1.0≦m<3.0となるように、アルカリ土類金属炭酸塩及びEu化合物を秤量して有機酸で溶解して水溶液とし、該水溶液に水溶性ケイ素化合物を加えてゲル化させゲル体を得るゲル体生成工程と、
上記ゲル体を400℃〜600℃で大気雰囲気中で熱処理し、該ゲル体に含まれる有機物を分解する熱処理工程と、
上記熱処理工程後の熱処理粉末を粉砕し、600℃〜900℃で大気雰囲気中で仮焼成して前駆体を作製する仮焼成工程と、
上記仮焼成工程で得られた前駆体を、還元雰囲気中において1000℃〜1400℃で還元焼成する焼成工程と
を有することを特徴とする希土類添加複合酸化物蛍光体の製造方法。 - 上記焼成工程では、1100℃以上1300℃未満の温度条件で還元焼成することを特徴とする請求項3に記載の希土類添加複合酸化物蛍光体の製造方法。
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