JP4859084B2 - 1,2−ジクロロエタンを製造する際に生じる反応熱を利用する方法および装置 - Google Patents

1,2−ジクロロエタンを製造する際に生じる反応熱を利用する方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、1,2−ジクロロエタンを製造する方法および装置に関し、これ以後モノマーの塩化ビニルの製造に中間生成物として主に使用されるものをEDCと呼び、ポリ塩化ビニル(PVC)の製造に使用されるものをVCMと呼ぶ。EDCからVCMへの反応の際に塩化水素(HCl)が得られ、従ってEDCは有利にはエテンCおよび塩素Clから、反応の際に形成される塩化水素HClおよび消費される塩化水素HClに関して以下の反応式に相当して均衡のとれたバランスが達成されるように製造する。
【0002】
Cl+C → CCl(純粋EDC)+180kJ/モル (1)
Cl(分解EDC)→CCl(VCM)+HCl−71kJ/モル(2)
+2HCl+1/2O→CCl(粗製EDC)+HO+238kJ/モル(3)
均衡のとれたHClバランスを有するVCMの製造方法を以下に均衡のとれたVCM法と呼び、以下の工程を有する。
【0003】
・必要なEDCの一部をエテンCおよび塩素Clから製造し、いわゆる純粋EDCとして排出する直接塩素化。この直接塩素化で発生する反応熱の利用は本発明の主な目的である。
【0004】
・EDCの残りの部分をエテンC、塩化水素HClおよび酸素Oから製造し、いわゆる粗製EDCとして排出するオキシ塩素化。
【0005】
・EDC熱分解で使用するために適したいわゆる供給EDCを得るために、オキシ塩素化およびEDC熱分解で形成される副生成物を、粗製EDCおよびVCM精留から返送される再生EDCから除去する分別EDC精製。EDC精製の直接塩素化で発生する反応熱の利用は本発明の主な目的である。
【0006】
・純粋EDCを供給EDCと合流し、引き続き前記混合物から分解EDCを熱分解するEDC熱分解。得られた分解ガスはVCM、塩化水素HClおよび未反応EDCおよび副生成物を含有する。
【0007】
・生成物として必要な純粋VCMを分解ガスから分離し、分解ガスに含まれる他の基本的な物質、すなわち塩化水素HClおよび未反応EDCを価値生成物として別々に回収し、再使用可能な出発物質として均衡のとれたVCM法に再生HClもしくは再生EDCとして返送するVCM分別。
【0008】
EDC熱分解中に分解ガス中に形成される随伴物質はVCMの生成物の純度を低下する。従って随伴物質の除去によるVCM精製は費用のかかる方法である。従って均衡のとれたVCM法を使用する場合に分別でのVCM精製と結びつく費用を減少する努力が是非とも必要である。1つの構想はEDC熱分解中の好ましくない随伴物質の形成を種類および量に関して制限することに向けられる。この方法で不純物を十分に分離した分解EDCをEDC熱分解に使用する要求が生じる。分解EDC中の不純物は一部は純粋EDCの製造の際に形成され、他の部分は混合した再生EDCと共に取り込まれる。若干の不純物は分解ガス中の付加的な随伴物質を形成するEDC熱分解の際の前駆物質である。従って分解EDCと共にできるだけ少ない前駆物質をEDC熱分解に供給することが必要である。
【0009】
従って均衡のとれたVCM法の出現以来、相当する不利な副生成物および/または随伴物質を回避するかまたは場合により精製するような多くの提案が公知となっている。公知のように、EDC熱分解に必要なEDCの一部を直接塩素化法によりエテンCおよび塩素Clの液体のEDCへの反応により製造する。反応は発熱性であり、反応温度を維持するためにかなりの冷却能力が必要である。直接塩素化反応はルイス酸(多くは塩化鉄(III))および抑制剤(多くは酸素)の存在で反応生成物EDCの循環する流れで行われる。公知の反応系はこの循環流の発生の形式により異なり、すなわち自然循環を有する系および強制的循環を有する系を使用する。
【0010】
この自然循環を有する装置は、例えばドイツ特許第2427045号に記載されている。この場合に反応物質を自然循環−管形反応器の吸い上げ管の下方の端部に供給する。反応器内容物質が吸い上げ管の上方部分で沸騰を開始し、蒸気状反応生成物を直接分別カラムの底部に直接加熱のために供給する。
【0011】
反応媒体EDCを強制的循環に供給することもできる。この種の装置は、例えばドイツ特許出願公開第4029314号に記載されている。インジェクターとして形成される液体噴射ガス圧縮機により塩素を吸入し、部分的に反応媒体に溶解する。引き続き流れを下ってエテンを従来のガス分配機によりまず大きな気泡の形で混合する。その後溶解およびこれに連結した反応を容易にするために、全部の流れが静的混合機を通過し、混合機内で大きな気泡が分散する。この種の装置では本来の反応器の内容物は沸騰しない。EDC生成物はEDC反応媒体の部分流の減圧蒸発によりガス状で排出する。この装置では熱の回収は、例えば欧州特許第0075742号に記載されるように、EDC反応媒体の感知可能な熱を使用して行われる。この場合に液体のEDC循環流が底部加熱器として用いられる1個以上の自然循環蒸発器を貫流し、その際感知可能な熱がカラム底部の沸騰する内容物の所で排出する。
【0012】
ドイツ特許出願公開第4029314号には、管形反応器中でNaFeCl触媒を用いて製造されるEDC中の全部の塩素化した副生成物の形成が500ppmの値より低い、直接塩素化の方法が記載されている。このEDCの純度は一般に、他の中間接続した精製を使用せずにEDC熱分解に供給できるほど十分に高い。この種の高い純度は一方では熱分解管の汚染を生じる副反応を抑制し、他方ではVCMのなお高い純度を達成するために、大きな価値を有する。従ってすべての場合にEDC熱分解で反応しないEDC、いわゆる再生EDCおよびオキシ塩素化からのEDC、いわゆる粗製EDCをエネルギーのかかる蒸留EDC分別で精製し、EDC熱分解に供給する。500ppmより少ない不純物含量が必要な場合は、直接塩素化からの純粋EDCを付加的な蒸留の精製工程で更に精製することが必要である。
【0013】
すべてのEDC流の精製は一般に蒸留により、従っていわゆるEDC蒸留で行われる。EDC精製のためにオキシ塩素化からの粗製EDCおよびEDC熱分解からの未反応EDCをエネルギーのかかるEDC蒸留で精製する。必要な場合は直接塩素化で製造される純粋EDCを粗製EDCおよび再生EDCと共にEDC精製で蒸留法で精製することができる。精製すべきEDC流を、まず以下に低沸点物カラムと呼ぶ、水および低沸点物を分離する分別カラムに供給し、その後なお高沸点物を含有する部分的に精製したEDCを底部流出物として低沸点物カラムから排出し、以下に高沸点物カラムと呼ぶ、高沸点物を分離する分別カラムに供給する。低沸点物カラムの代わりに連続する分離したカラムを使用することもできる。
【0014】
EDC熱分解から生じる未反応の再生EDCは同様に高沸点物を含有し、同様に高沸点物カラムに供給される。高沸点物カラムで、供給される物質流を一緒に蒸留する。精製した、十分に高沸点物を分離したEDC蒸気の第1の部分量を高沸点物カラムの頭部で排出し、熱交換機で凝縮し、純粋EDCとして液状で取得する。高沸点物カラムの底部に高沸点物が蓄積する。底部流出物を真空カラムと呼ばれる第2の高沸点物カラムに供給することにより、高沸点物カラムの底部流出物の強化した精製が可能である。精製した、十分に高沸点物を分離したEDC蒸気の第2の部分量を真空カラムの頭部で排出し、熱交換機で凝縮し、純粋EDCとして液状で得る。2つの部分量は合流後に分解EDCを形成する。真空カラムの底部排出流は主に高沸点物および少ない分量のEDCからなり、廃棄処理されなければならない。
【0015】
実際の経験により、直接塩素化反応器が冷却媒体および高沸点物カラムの多くの消費者に配属し、真空カラムが均衡のとれたVCM法により運転されるEDC/VCM装置内部の加熱エネルギーの多くの消費者に配属することが示された。従ってエネルギーの消費を減少するために、経済的な考察から多くの方法が提案され、その際これらの提案はカラムの加熱と関係している。これらの提案では直接塩素化の反応熱を直接または間接加熱によるEDC蒸留の加熱に利用するかまたは蒸留EDC精製の際の蒸気の圧縮を有する精留の原理を使用することによるかなり低い値の熱エネルギーのみを節約する。しかし提案された方法は以下に述べる欠点を有する。
【0016】
直接加熱する際に、例えばドイツ特許第2935884号およびドイツ特許第2427045号に記載されるように、直接塩素反応器中に形成される生成物蒸気を直接高沸点物カラムの底部に導入する。発熱沸騰反応の際に他の冷却を使用せずに直接塩素化で新たに形成されるEDCに関して多くの量のEDCを蒸発し、他のEDC流のほかに更に高沸点物カラムで精留しなければならないので、高沸点物カラムの直径および還流凝縮器の面積はきわめて大きい。同時に高沸点物カラムの底部から液体のEDC、同様に直接塩素化反応器中で新たに形成される多くの量のEDCを反応器に返送しなければならないので、必然的に反応器に高い水準の高沸点副生成物が生じ、これは一方では触媒の有効性に不利に作用し、他方では副生成物の形成を促進し、これは最終的に収率の損失を生じる。
【0017】
前記の関係にもとづき直接塩素化の反応熱はEDC精製で真空カラムの直接加熱に利用できない、それというのもこの場合に90%の底部生成物中の高沸点物の濃度が高沸点物カラム中の高沸点物の濃度よりなお高いからである。
【0018】
間接加熱の場合に熱媒体として液体のEDCと蒸気状EDCの間で選択することができる。ドイツ特許第19641562号、ドイツ特許第4133810号、ドイツ特許第4039960号、ドイツ特許第3604968号および欧州特許第0075742号に記載されるように以下の結果が生じる。
【0019】
・存在する物質系において結合するカラムに自然循環蒸発器を装入する場合は、申し分のない加熱には約20〜25℃の運転する温度差が必要である。反応器の反応温度は、自然循環蒸発器に間接的に反応熱を伝送できるために、EDC精製の結合したカラムの底部温度に比べて明らかに高くなければならない。温度の上昇の必然性はEDC収率の劣化および多くの副生成物形成を生じ、従って蒸留で分離すべき物質の量が多くなり、蒸留に使用すべき熱量が多くなる。
【0020】
・反応器の反応熱は、作業圧力水準が一般に気圧下に低下する場合に、結合したEDC精製カラムの底部加熱器でかなり低い反応温度で排出することができる。これは高沸点物カラムにおいて直径および還流凝縮器の寸法がきわめて大きくなければならないという結果を生じ、これは方法の経済性に不利に作用する。
【0021】
・欧州特許第0075742号およびドイツ特許第4133810号は本発明と同様に直接塩素化反応器からの液体のEDCの利用を考慮しているが、蒸気状EDCのエンタルピーの利用が不可能である。
【0022】
・ドイツ特許第19641562号およびドイツ特許第3604968号は本発明と同様に蒸気状EDCの利用を考慮しているが、液体のEDCの利用が考慮されていない。
【0023】
従って、本発明の課題は、熱として遊離する反応エンタルピーを最適なやり方で均衡のとれたVCM法の枠内で利用することである。
【0024】
前記課題は、本発明により、冒頭に記載された形式の方法を使用して、反応室内で塩素とエテンの反応から放出される反応熱および形成される1、2−ジクロロエタンに含まれる反応熱を少なくとも一部の蒸気状1、2−ジクロロエタン(潜熱)および少なくとも一部の他の液体の1、2−ジクロロエタン(感知可能な熱)を用いて反応室から取り出し、1、2−ジクロロエタンより高い沸点の不純物から1、2−ジクロロエタンを精製する2つの分別カラムを加熱するために利用することにより解決される。
【0025】
本発明の構成は直接塩素化の反応熱で加熱されたEDC精製の蒸留カラムの底部加熱器として流下フィルム型蒸発器の使用を用意する。流下フィルム型蒸発器は大きな温度差でおよび理論的に任意の小さな温度差で運転できることにより際立っている。流下フィルム型蒸発器において加熱すべき液体および蒸気が熱交換器の管の面に垂直に配置された管束中に並流で下に向かって流動し、その際管内壁で液体が流動フィルムとして下に向かって流出し、管内に形成される蒸気が管横断面の中心領域を下に向かって搬送する。フィルム液体での内部管加熱面の均一な、十分な湿潤が妨害のない運転の重要な役割を担う。予め決められた熱流で多くの割合の揮発しやすい成分が蒸気相に移行するように、少ない熱流密度で分離効率を改良することが示される。
【0026】
これは特に真空カラムの運転のためにきわめて重要な特徴である、それというのもこのようにしてそうでなければ失われる真空カラムの底部排出物中のEDCの割合が減少するからである。従って本発明の方法の他の構成は、分別カラムに生じる底部生成物、すなわち1、2−ジクロロエタンより高い沸点の1、2−ジクロロエタンの不純物を前濃縮および後濃縮するために熱を使用することである。この場合に直接塩素化反応器を穏和な反応の実施に関して沸騰反応器として約110℃の蒸発温度で運転することができ、これは一般的な高沸点物カラムおよび一般的な真空カラムの運転のために流下フィルム型蒸発器を使用する場合に可能である。
【0027】
本発明の特別な構成は、感知可能な熱および潜熱の利用により冷却したEDC部分流を反応室に返送し、その際反応室で流動を促進するために使用することにある。
【0028】
本発明の他の構成において、小さな冷却したEDC側流に直接塩素化に使用される塩素を溶解し、その際多くの塩素をEDCに溶解することができるかもしくは塩素の溶解に少ないEDCが必要であるように冷却する。この場合に本発明の利点は、このEDC側流に含まれる熱を大部分予めEDC精製カラム、有利には高沸点物を濃縮する真空カラムを運転するために利用できることであり、従って塩素を溶解する側流を冷却するための費用のかかる冷却剤の量が相当して減少する。
【0029】
本発明の他の利点は、多くの蒸気状部分流および液体の部分流の固定されない比率での分割がカラムの調節の自由度の数を増加し、従って装置の調節に制限が少なくなることにある。
【0030】
本発明の他の構成において、潜熱を利用後に凝縮物として生じる、なおガス状および蒸気状成分を含んでいてもよい流れを後凝縮器で更に凝縮することが用意されている。EDC蒸気の後濃縮の際に不活性ガス(反応式(1)の意味での不活性ガス)および過剰のエテンが凝縮されず、不活性ガスの一部は酸素からなり、この酸素は反応(1)の副反応を抑制するために直接塩素化に供給されるか、または使用される塩素とともに取り入れられ、ここから蒸気と一緒に排出する。その際残りの蒸気状EDCおよび過剰のエテンと一緒に爆発性混合物が形成されることがあり、それというのも凝縮工程中に不活性ガスの分圧の割合がEDCに対して連続的に増加するからである。従って本発明の他の構成は、排ガス中の酸素の含量の測定を備えている。この測定値は、爆発性混合物が形成されることがなく、同時にガス−EDC蒸気混合物から最大の潜熱を取り出すことができるようにEDCの後凝縮を調節するために利用される。
【0031】
本発明の課題を解決するために、本発明は、エテンおよび塩素からEDCを製造する際の反応熱を利用する装置が用意され、この装置は高沸点物カラムおよび後方に接続された真空カラムを特徴とし、これらにそれぞれ1つの流下フィルム型蒸発器が配属され、その際高沸点物カラムに配属された流下フィルム型蒸発器が直接塩素化反応器からのEDC蒸気で加熱され、真空カラムに配属された流下フィルム型蒸発器が直接塩素化反応器からの液体のEDCで加熱される。
【0032】
ガス状塩素を直接塩素化反応器に導入するために、ガス状塩素を吸入するインジェクターへの導管と連結した少なくとも1個のEDC部分流導管および塩素を負荷したEDC部分流を直接塩素化反応器の反応区間に導入する供給導管が備えられている。
【0033】
選択的にまたはこのための構成において、本発明は自然循環を促進するためにまたは強制循環を形成するために、直接塩素化反応器中の下り管に噴射ノズルを介して循環を促進するために、流下フィルム型蒸発器の導管からの冷却したEDC流を導入するEDC部分流導管を備えている。
【0034】
本発明の方法および本発明の装置の例示的構成を図面に示された流れ図により部材の機能とともに詳細に説明する。その際本発明の方法はこの実施例に限定されない。
【0035】
EDC精製においてオキシ塩素化からのEDCおよびEDC熱分解からの未反応EDCをエネルギーのかかるEDC蒸留で精製する。必要な場合は直接塩素化で製造される純粋EDCを蒸留により精製することができる。図面には示されていないオキシ塩素化からの粗製EDC1を低沸点物カラム2でまず水および低沸点物から分離し、低沸点物導管3を介して取り出す。その後低沸点物カラムの底部生成物として得られる、なお高沸点物を含有するEDCを導管4を介して高沸点物カラム5に供給する。EDC熱分解からの未反応EDCは同様に高沸点物を含有し、導管6を介して高沸点物カラム5に供給する。
【0036】
高沸点物カラム5で供給される物質流を分別する。精製したEDCを高沸点物カラム5の頭部で導管7を介して取り出し、純粋EDCとして取得する。高沸点物カラム5の底部で高沸点物が蓄積する。底部流を導管8を介して真空カラム9に供給することにより高沸点物カラム5の底部生成物の精製を強化する。精製したEDCを真空カラム9の頭部で導管10を介して取り出し、純粋EDCとして取得する。真空カラム9の底部排出流11は高沸点物および少量の残留部分のEDCからなる。
【0037】
その際カラム5および9の加熱は以下のように行う。導管12を介して直接塩素化反応器13からEDC液体流を取り出し、真空カラム9の流下フィルム型蒸発器14に熱媒として供給し、排出する。蒸気導管15を介して直接塩素化反応器13からのEDC蒸気流を高沸点物カラム5の流下フィルム型蒸発器16に熱媒として供給する。流下フィルム型蒸発器14および16中で加熱すべき液体が蒸発器の頭部から均一に分配された沸騰する液体のフィルムとして重力にもとづき熱管の内側に流動し、その際部分的に蒸発する。
【0038】
流下フィルム型蒸発器を使用して、通常のそのほかの使用される自然循環蒸発器より明らかに大きな、装置単位当たりの熱転移平面を実現することができる。これは、2つのカラム5および9の底部加熱をそれぞれ1つの流下フィルム型蒸発器ユニットで、大きな装置容量で実施できるが、一方自然循環蒸発器で多くのユニットが必要であることを意味する。
【0039】
反応区間17、蒸発容器18、下り管19、吸い上げ管20、エテン噴射位置21および液体EDCの複数の導入位置からなる、管形反応器として形成される直接塩素化反応器13での反応および反応熱の排出は以下のように行う。反応区間17に沿って液相中で溶解した塩素と溶解したエテンが反応し、EDCを形成し、EDCは部分的に蒸発容器18中で蒸発する。
【0040】
蒸気導管15により蒸気状EDCが、高沸点物カラム5の加熱に使用される流下フィルム型蒸発器16に供給される。この場合に大部分のEDC蒸気が凝縮する。流下フィルム型蒸発器16の排出流22を、装置の調節に使用する調節凝縮器23に供給する。この場合に凝縮中に酸素、残りのエテンおよびEDC蒸気の間で爆発性混合物が形成されないように配慮しなければならない。従って酸素測定装置24が酸素含量を測定し、これに連結した調節装置が相当して調節凝縮器23の冷却媒体の流動速度を調節し、なお他の調節装置を調節凝縮器23に接続することもできる。
【0041】
液体のEDCをこれに続いて受け器25で凝縮不可能の成分から分離し、この成分は排ガス導管26により他の処理に供給する。受け器25からEDC部分流28をポンプ27によりVCM製造の生成物流として、選択的に製品EDCとして取り出す。凝縮により容易に冷却される他のEDC部分流29はEDC部分流30および31に分割される。一方のEDC部分流30は直接塩素化反応器13の下り管19に返送され、ここでそのパルスによりノズル32からの自由噴射としておよび吸い上げ管20に比べて低い温度により自然循環を促進することができる。他方のEDC部分流31は塩素を溶解するために貯蔵される。
【0042】
蒸発容器18から循環ポンプ33によりEDC流を取り出し、真空カラム9の加熱のために流下フィルム型蒸発器14に供給する。感知可能な熱を排出後、冷却したEDC流34はEDC部分流35および36に分割される。一方のEDC部分流35は直接塩素化反応器13の下り管19に返送され、ここでそのパルスによりノズル32からの自由噴射としておよび吸い上げ管20に比べて低い温度により自然循環を促進することができる。
【0043】
他方のEDC部分流36は塩素を溶解するために貯蔵される。この場合に図面に示されるようにEDC部分流31および36をEDC流37として、EDC部分流30および35をEDC流38として一緒にすることも可能である。
【0044】
EDC部分流31および36はEDC流37として一緒にしてEDC冷却器39に供給され、ここでEDCの引き続く冷却が行われ、これに続いてインジェクター40中で容易に溶解するガス成分塩素41を吸入し、溶解する。塩素を負荷したEDC流42を引き続き反応区間17に供給する。
【0045】
具体的に説明するために、模擬試験の計算にもとづき以下の例を使用する。管形反応器として形成される直接塩素化反応器13中でエチレン4765kg/h(170キロモル/h)を等モル量の塩素と反応させる。蒸発容器18中の温度は110℃であり、圧力は2.1バール(絶対圧力)である。蒸気導管15を介して蒸気状EDC70465kg/hを流下フィルム型蒸発器16に供給し、この蒸発器は高沸点物カラム5で5094kWの熱を排出する。高沸点物カラム5の底部温度は100℃である。残りの量のEDCを調節凝縮器23中で冷却水で凝縮し、その際951kWの熱を排出する。
【0046】
102℃の温度を有する凝縮区間の排出流を受け器25に集める。ここで2848kg/hの、EDCを負荷した排ガス流26を分離する。ポンプ27は一方では14017kg/hのEDC部分流28を他の処理に供給する。他方でポンプ27は、この場合にEDC部分流30と同じである、53600kg/hのEDC部分流29を管形反応器の下り管19に返送する。
【0047】
蒸発容器18からポンプ33により250000kg/hのEDC流12を取り出し、真空カラム9の流下フィルム型蒸発器14に供給する。流下フィルム型蒸発器14は真空カラム9で1814kWの熱を排出し、カラムの底部温度は87℃である。流下フィルム型蒸発器14の出口の冷却したEDC流34は92℃の温度を有する。
【0048】
この流れの40%の部分をEDC部分流35として分岐し、同様に直接塩素化反応器13の下り管19に返送する。残りの60%(150000kg/h)を、この場合にEDC部分流36と同じであるEDC流37として、冷却器39に供給し、45℃に冷却し、インジェクター40で12100kg/hの量の塩素を吸入する。その際EDC流41の温度は塩素のかなりの溶解熱により再び75℃に加熱する。このEDC流41を反応区間17に供給し、その際有利に流れを促進するノズル装置を使用する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法を実施する装置の流れ図である。
【符号の説明】
1 粗製EDC、 2 低沸点物カラム、 3 低沸点物導管、 4 導管、 5 高沸点物カラム、 6 導管、 7導管、 8 導管、 9 真空カラム、 10 導管、11 底部排出流、 12 導管、 13 直接塩素化反応器、 14 流下フィルム型蒸発器、 15 蒸気導管、 16 流下フィルム型蒸発器、 17 反応区間、 18 蒸発容器、 19 下り管、 20 吸い上げ管、 21 エテン注入位置、 22 排出流、 23 調節凝縮器、 24 酸素測定装置、 25 供給容器、 26 流出ガス導管、 27 ポンプ、 28 EDC部分流、 29 EDC部分流、 30 EDC部分流、 31 EDC部分流、 32 ノズル、 33 循環ポンプ、 34 EDC流、 35 EDC部分流、 36 EDC部分流、 37 EDC流、 38 EDC流、 39 EDC冷却器、 40 インジェクター、 41 塩素、 42 EDC流

Claims (7)

  1. エテンおよび塩素から1,2−ジクロロエタンを製造する際に生じる反応熱を利用する方法において、塩素とエテンとの反応により反応室内で放出される反応熱および形成される1,2−ジクロロエタンに含まれる反応熱を、少なくとも一部の蒸気状1,2−ジクロロエタン(潜熱)および少なくとも一部の液体の1,2−ジクロロエタン(感知可能な熱)を用いて反応室から取り出し、1,2−ジクロロエタンより高い沸点の不純物から1,2−ジクロロエタンを精製するために必要な2つの分別カラムを加熱するために利用し、潜熱を利用後に凝縮される少なくとも1つの1,2−ジクロロエタンの部分流を反応室に返送し、ここで反応室内部の流れを推進するために使用し、感知可能な熱を利用後に冷却される少なくとも1つの1,2−ジクロロエタンの部分流を反応室に返送し、ここで反応室内部の流れを推進するために使用することを特徴とするエテンおよび塩素から1,2−ジクロロエタンを製造する際に生じる反応熱を利用する方法。
  2. 1,2−ジクロロエタンより高い沸点の不純物から1,2−ジクロロエタンを精製するために使用される2つの分別カラムの加熱を流下フィルム型蒸発器を用いて実施する請求項1記載の方法。
  3. 1,2−ジクロロエタンより高い沸点の1,2−ジクロロエタンの不純物である、分別カラムに生じる底部生成物を前濃縮および後濃縮するために熱を使用する請求項1または2記載の方法。
  4. 潜熱または感知可能な熱を利用後に冷却される1,2−ジクロロエタンの1つの部分流を更に冷却し、その後塩素を部分流に溶解するために使用し、この溶液を引き続き反応室に供給する請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
  5. エテンおよび塩素から1,2−ジクロロエタンを製造する際に生じる反応熱を利用する装置において、高沸点物カラムおよび後方に接続された真空カラムがそれぞれ1個の流下フィルム型蒸発器を備えており、その際高沸点物カラムに配属される流下フィルム型蒸発器を直接塩素化反応器からの1,2−ジクロロエタン蒸気を用いて加熱し、真空カラムに配属される流下フィルム型蒸発器を直接塩素化反応器からの液体の1,2−ジクロロエタンを用いて加熱することを特徴とする、エテンおよび塩素から1,2−ジクロロエタンを製造する際に生じる反応熱を利用する装置。
  6. 気体の塩素を吸入するインジェクターへの導管に接続している少なくとも1個の1,2−ジクロロエタン部分流導管および直接塩素化反応器の反応区間に塩素を負荷した1,2−ジクロロエタン流を導入する導管が備えられている請求項5記載の装置。
  7. 前記直接塩素化反応器が下り管を有しており、直接塩素化反応器の下り管に配置されたノズルを用いて循環速度を増加するために、流下フィルム型蒸発器の導管から冷却した1,2−ジクロロエタン流を導入する1,2−ジクロロエタン部分流導管が配置されている請求項5または6記載の装置。
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