本発明は電動モータを有する電動シャッター駆動装置、及び、電動シャッター駆動装置によりシャッターを開閉させる電動シャッター開閉装置に関し、殊に、停電時、故障時、災害時といった非常時等においてシャッターを迅速に開閉できる電動シャッター駆動装置及び電動シャッター開閉装置に関する。
特許文献1は、電動シャッター開閉装置に組み込まれる電動シャッター駆動装置を開示している。この電動シャッター駆動装置は、電動モータと、シャッターを巻取可能なシャッター巻取体に直接又は間接的に接続されシャッター巻取体を回転させることによりシャッターを開閉する出力軸と、電動モータと出力軸との間に設けられた動力伝達機構とを備えている。上記した電動シャッター駆動装置によれば、電動モータと出力部との間にブレーキ機構が設けられている。ブレーキ機構は、電動モータが駆動して出力軸が回転されるときにブレーキを解除するブレーキ解除形態と、侵入者等により回転入力が出力軸に与えられるときにブレーキをかけて出力軸の回転を抑制するブレーキ作用形態とに設定可能とされている。
通常の使用形態では、操作スイッチの操作により電動モータが回転駆動し、その駆動力は動力伝達機構を介して出力軸に伝達され、シャッター巻取体が回転する。同様のことが、スリットを開閉するタイプのシャッターについても想起される。すなわち、スリットを閉じたシャッターを全閉とした場合、スラット負荷とバランススプリングとの間のアンバランス(バランススプリングのトルクのみがスラットに作用する)ので、上記したようなシャッター開放操作が抑えられる。そしてシャッターがシャッター巻取体に巻き取られてシャッターが開放したり、あるいは、シャッターがシャッター巻取体から巻き外されてシャッターが閉鎖したりする。このような通常の使用形態では、ブレーキ機構はブレーキ解除形態となるため、出力軸は円滑に回転できる。
これに対して、侵入者などが外方からシャッターを強制的に開放させようとするときには、侵入者等により回転入力が出力軸に与えられる。このときブレーキ機構はブレーキ作用形態となるため、シャッターを開放させる荷重が過大となり、シャッター巻取体の回転が抑えられ、シャッターの開放操作は抑えられる。
特開2002−256785号公報
ところで、停電時、故障時、災害時といった非常時等においては、シャッターを手動で迅速に開放させることが要請される。そこで上記した特許文献1によれば、ブレーキ機構のブレーキ作用を解除させるための操作部材が設けられている。そして停電時、故障時、災害時等の非常時等において操作部材を操作すれば、ブレーキ機構がブレーキ作用形態からブレーキ解除形態に切り替わり、シャッターを手動により小さな荷重で迅速に開放させることができる。
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、停電時、故障時、災害時といった非常時等において、シャッターを更に小さな荷重で開放させるのに有利な電動シャッター駆動装置、及び、電動シャッター開閉装置を提供することを課題とする。
(1)第1発明に係る電動シャッター駆動装置は、電動モータと、シャッターを巻取可能なシャッター巻取体を回転させることによりシャッターを開閉する出力部と、電動モータと出力部との間に設けられ、電動モータの駆動力を出力部に伝達する動力伝達機構と、電動モータと出力部との間に設けられ、電動モータが駆動して出力部が回転されるときにブレーキを解除又は軽減するブレーキ解除形態と、回転入力が出力部に与えられるとき出力部の回転を抑制するブレーキ作用形態とに設定可能なブレーキ機構と、電動モータ、動力伝達機構、ブレーキ機構を有する基体とを具備する電動シャッター駆動装置において、
出力部から動力伝達機構を介して電動モータに向かう回転入力が出力部に与えられるとき、ブレーキ機構によるブレーキを解除又は軽減すると共に動力伝達機構を介しての動力伝達を遮断するブレーキ解除機構が、電動モータと出力部との間に設けられており、
ブレーキ機構は、回転可能及び回転止め可能に設けられたブレーキ筒体と、回転止めされたブレーキ筒体に摩擦摺動可能なブレーキ部材とを備えており、
ブレーキ機構のブレーキ筒体は、遊星ギヤ機構を構成するインターナルギヤ、キャリア及び太陽ギヤのうちのいずれか一つと連動するように設定されており、
ブレーキ解除機構は、ブレーキ筒体、インターナルギヤ、キャリア及び太陽ギヤのうちのいずれか一つに連動するように接続または一体成形された連動回転体と、連動回転体に係合可能に係合する係合部とを備えており、
係合部と連動回転体との係合によってブレーキ筒体、インターナルギヤ、キャリア及び太陽ギヤのうちのいずれか一つを回転止めし、且つ、
係合部と連動回転体との係合解除によって、回転止めを解除することにより、ブレーキ機構によるブレーキを解除又は軽減すると共に動力伝達機構を介しての動力伝達を遮断することを特徴とするものである。
(2)第2発明に係る電動シャッター駆動装置は、電動モータと、シャッターを巻取可能なシャッター巻取体を回転させることによりシャッターを開閉する出力部と、電動モータと出力部との間に設けられ、電動モータの駆動力を出力部に伝達する動力伝達機構と、電動モータと出力部との間に設けられ、電動モータが駆動して出力部が回転されるときにブレーキを解除又は軽減するブレーキ解除形態と、回転入力が出力部に与えられるとき出力部の回転を抑制するブレーキ作用形態とに設定可能なブレーキ機構と、電動モータ、動力伝達機構、ブレーキ機構を有する基体とを具備する電動シャッター駆動装置において、出力部から動力伝達機構を介して電動モータに向かう回転入力が出力部に与えられるとき、ブレーキ機構によるブレーキを解除又は軽減すると共に動力伝達機構を介しての動力伝達を遮断するブレーキ解除機構が、電動モータと出力部との間に設けられており、
電動モータから出力部に向かう動力伝達経路において、電動モータにより作動される第1遊星ギヤ機構と、第1遊星ギヤ機構により作動される第2遊星ギヤ機構と、ブレーキ機構と、第2遊星ギヤ機構の回転を出力部に減速して伝達する減速ギヤ機構と、出力部とが順に配置されており、
第1遊星ギヤ機構は電動モータのモータ軸で回転される第1太陽ギヤ、第1プラネタリギヤ、第1インターナルギヤとを備えており、第2遊星ギヤ機構は第2太陽ギヤ、第2プラネタリギヤ、第2インターナルギヤとを備えており、
ブレーキ機構は、ブレーキ筒体と、ブレーキ筒体の内周面または外周面に摩擦摺動するブレーキ部材とをもち、第1インターナルギヤおよび第2インターナルギヤは軸長方向に直列に配置されていると共に一体的に連結または一体的に成形されており、且つ、ブレーキ筒体に一体的に連結または一体的に成形されていることを特徴とするものである。
(3)本発明に係る電動シャッター開閉装置は、シャッターと、シャッターを巻取可能なシャッター巻取体と、シャッター巻取体を巻取方向及び巻き外し方向に回転させる電動シャッター駆動装置とを具備する電動シャッター開閉装置において、電動シャッター駆動装置は、各請求項のうちのいずれか一項に記載の電動シャッター駆動装置であることを特徴とするものである。
(4)出力部は、シャッターを巻取可能なシャッター巻取体に直接又は間接的に接続される。通常の使用形態では、電動モータが回転駆動し、その駆動力は動力伝達機構を介して出力部に伝達され、シャッター巻取体が回転し、シャッターがシャッター巻取体に巻き取られてシャッターが開放したり、あるいは、シャッターがシャッター巻取体から巻き外されてシャッターが閉鎖したりする。
ところで、動力伝達機構が電動モータと出力部とを接続していると、停電時、故障時、災害時といった非常時等において、シャッターを手動で開放させるとき、次の作用が生じる。即ち、シャッターを開放させようとする動きにより、出力部に回転入力が与えられ、動力伝達機構を介して電動モータに動力が伝達され、電動モータが空転してしまう。この場合、電動モータのコキングトルク等の影響により、シャッターを開閉させる荷重が増加する。コキングトルクとは、電動モータに通電していないときにおいて、電動モータのモータ軸が空転するときに生じる抵抗力を意味する。この抵抗力は、一般的には電動モータの回転子と固定子との間の磁気力に起因すると言われている。
この点について第1,第2発明に係る電動シャッター駆動装置によれば、停電時、故障時、災害時といった非常時等において、ブレーキ解除機構は、出力部から動力伝達機構を介して電動モータに向かう回転入力が出力部に与えられるとき、ブレーキ機構によるブレーキの解除と、動力伝達機構を介しての動力伝達の遮断との双方を行う。このようにブレーキ機構がブレーキ解除形態に切り替えられるため、特許文献1と同様に、シャッターを開閉させる荷重を小さくすることができる。更に、停電時、故障時、災害時といった非常時等において、シャッターを手動で開閉させるとき、出力部から動力伝達機構を介して電動モータに向かう動力伝達が遮断されるため、電動モータの空転は防止される、従って、電動モータのコキングトルクの発生を抑えることができる。故にシャッターを開閉させる荷重を一層小さくすることができる。
第1発明によれば、ブレーキ解除機構は、ブレーキ筒体、インターナルギヤ、キャリア及び太陽ギヤのうちのいずれか一つに連動するように接続(連結も含む)または一体成形された連動回転体と、連動回転体に係合可能に係合する係合部とを備えており、係合部と連動回転体との係合によって、ブレーキ筒体、インターナルギヤ、キャリア及び太陽ギヤのうちのいずれか一つを回転止めすることができる。この場合、係合部と連動回転体との係合を解除すれば、前記した回転止めを解除でき、これによりブレーキ解除を行うと共に、動力伝達機構を介しての動力伝達の遮断を行うことができる。ここで、連動回転体はブレーキ筒体と一体的に成形されているか、あるいは、ブレーキ筒体に対して別体として形成されつつブレーキ筒体と一体回転可能である形態が例示される。
また第2発明によれば、電動モータから出力部に向かう動力伝達経路において、電動モータにより作動される第1遊星ギヤ機構と、第1遊星ギヤ機構により作動される第2遊星ギヤ機構と、ブレーキ機構と、減速ギヤ機構と、出力部とが順に配置されている。この場合、第1遊星ギヤ機構は電動モータのモータ軸で回転される第1太陽ギヤ、第1プラネタリギヤ、第1インターナルギヤとを備えている。第2遊星ギヤ機構は第2太陽ギヤ、第2プラネタリギヤ、第2インターナルギヤとを備えている。ブレーキ機構は、ブレーキ筒体と、ブレーキ筒体の内周面または外周面に摩擦摺動するブレーキ部材とをもつ。この場合、第1インターナルギヤおよび第2インターナルギヤは軸長方向に直列に配置されていると共に一体的に連結または一体的に成形されており、且つ、ブレーキ筒体に一体的に連結または一体的に成形されている。この構成であれば、遊星ギヤ機構の数も少なく、部品点数の削減を図り得る。
本発明によれば、前述したように、非常時等おいて、出力部から動力伝達機構を介して電動モータに向かう回転入力が出力部に与えられるとき、ブレーキ解除機構によりブレーキが解除されるため、シャッターを開閉させる荷重を小さくすることができる。更に、出力部から動力伝達機構を介して電動モータに向かう動力伝達が遮断されるため、電動モータの空転は防止される、従って、電動モータのコキングトルク等の発生を抑えることができる。故に停電時、故障時、災害時といった非常時等おいて、シャッターを開閉させる荷重を一層小さくすることができ、シャッターを手動で迅速に開閉させることができる。
本発明に係る電動シャッター駆動装置は、電動モータと、シャッター巻取体を回転させることによりシャッターを開閉する出力部と、電動モータと出力部との間に設けられた動力伝達機構と、電動モータと出力部との間に設けられたブレーキ機構とを備えている。出力部は、シャッターを巻取可能なシャッター巻取体に直接又は間接的に接続される。動力伝達機構は、電動モータの駆動力を出力部に伝達するものであり、減速ギヤ機構を含むことができる。代表的な減速ギヤ機構としては遊星ギヤ機構が挙げられる。
本発明に係る遊星ギヤ機構は、電動モータにより作動される太陽ギヤと、太陽ギヤの外周側に配置されたインターナルギヤと、太陽ギヤとインターナルギヤとの間に介在するプラネタリギヤと、プラネタリギヤに係合するキャリアとを備えている。太陽ギヤは一般的には遊星ギヤ機構の中央域に配置されるギヤを意味する。インターナルギヤは一般的にはプラネタリギヤと噛み合う内歯をもつギヤを意味する。キャリアは一般的にはプラネタリギヤに係合する。遊星ギヤ機構によれば、太陽ギヤ、インターナルギヤ、キャリアのうちのいずれか一方を固定して回転止めすれば、所定の減速比により動力伝達が行われる。また、当該一方の回転止めを解除すれば、遊星ギヤ機構を介しての動力伝達は遮断される。
ブレーキ機構は、電動モータが駆動して出力部が回転されるときにブレーキを解除又は軽減するブレーキ解除形態と、侵入者等により回転入力が出力部に与えられるとき出力部の回転を抑制するブレーキ作用形態とに設定可能とされている。ブレーキ機構は、回転可能となる形態と回転止めされる形態とに設定可能に設けられたブレーキ筒体と、ブレーキ筒体に摩擦摺動可能なブレーキ部材とを備えている。この場合、ブレーキ筒体が回転可能であれば、ブレーキを解除できる。ブレーキ筒体が回転止めされていれば、ブレーキが作用する。即ち、ブレーキ機構は、回転止めされたブレーキ筒体に摩擦摺動することによりブレーキをかけるブレーキ作用形態と、ブレーキ筒体への摩擦摺動が抑えられたブレーキ解除形態とに設定可能とされている。ブレーキ材としてはコイルバネ、捻りコイルバネ、摩擦材(ライニング材、シューを含む)などを例示できる。
停電時、故障時、災害時といった非常時等において、出力部から動力伝達機構を介して電動モータに向かう回転入力が出力部に与えられることがある。この場合、ブレーキ解除機構は、ブレーキ機構によるブレーキを解除又は軽減すると共に、動力伝達機構を介しての動力伝達を遮断する。これによりシャッターを低い荷重で開閉させることができる。ブレーキ解除機構は、ブレーキ解除と動力伝達の遮断を時間的に同時に行うことが好まし。
本発明によれば、上記した非常時等において、ブレーキ解除機構は、出力部から動力伝達機構を介して電動モータに向かう回転入力が出力部に与えられるとき、ブレーキ機構を構成する部品と動力伝達機構を構成する部品とを連動させることにより、ブレーキを解除又は軽減すると共に、動力伝達機構を介しての動力伝達を遮断する形態を例示できる。ここで、『ブレーキ機構を構成する部品と動力伝達機構を構成する部品とを連動させる』とは、ブレーキ機構を構成する部品と動力伝達機構を構成する部品とを機械的結合により連動させる形態でも良いし、あるいは、ブレーキ機構を構成する部品と動力伝達機構を構成する部品とを一体成形している形態でも良い。
また本発明によれば、操作部が設けられている形態を例示できる。操作部は、ブレーキを解除又は軽減すると共に動力伝達機構を介しての動力伝達を遮断する形態(非常時等に対応する形態)と、動力伝達機構を介しての動力伝達を遮断しない形態(通常使用形態)とに切り替える。この場合、通常使用形態では、操作部により、動力伝達機構を介しての動力伝達を遮断しない形態に設定できるため、ブレーキ機構をブレーキ作用形態に設定できる。この場合、侵入者等が外方からシャッターを強制的に開放させようとしても、ブレーキ機構のブレーキが作用するため、シャッターを開放させる荷重が過大となり、侵入者等によるシャッターの強制開放が抑えられる。
更に本発明によれば、以下の形態を例示できる。即ち、本発明によれば、ブレーキ解除機構のブレーキ解除を行う操作部が設けられている形態を例示できる。この場合、操作部は、揺動中心の回りを揺動可能な作動レバーと、係合部に繋がる一端部と作動レバーの長さ方向の中間位置に繋がる他端部とをもつ可撓性をもつ中間索状部材と、作動レバーにおいて中間位置よりも作動レバーの揺動中心から離れた位置に繋がる操作索状部材とを備えている。使用者が操作索状部材を引っ張れば、作動レバーを介して中間索状部材が引っ張られ、係合部が連動回転体から離脱する。故に、連動回転体およびブレーキ筒体の回転止めは解除され、連動回転体およびブレーキ筒体はフリーとなる。この場合、操作索状部材が作動レバーにおいてこれの長さ方向の中間位置よりも作動レバーの揺動中心から離れた位置に繋がるため、てこの作用により、係合部を連動回転体から離脱させる操作力を低減させることができる。
本発明によれば、第1インターナルギヤおよび第2インターナルギヤは、一体的に成形された内歯付き筒状部材で形成されている形態を例示できる。部品点数が削減される。この場合、内歯付き筒状部材のうち軸長方向の一端部は、凹部および凸部のうちの一方を備え、ブレーキ筒体のうち筒状部材に対面する端部は、凹部および凸部のうちの他方を備えている。そして、当該一方と当該他方とが嵌合されることにより、内歯付き筒状部材およびブレーキ筒体は一体的に連結されている形態を例示できる。この場合、内歯付き筒状部材(第1インターナルギヤおよび第2インターナルギヤ)およびブレーキ筒体を同時に回転止めしたり、あるいは、回転止めを同時に解除してフリーにできる。
上記した内歯付き筒状部材のうち軸長方向の一端部の当該一方は、周方向において間隔を隔てて形成された複数の凸部である形態を例示できる。凸部は例えば爪にできる。この場合、基体は、内歯付き筒状部材の凸部に嵌合する凹部を有する形態を例示できる。内歯付き筒状部材の軸長方向の一端部および他端部を逆の配置にし、内歯付き筒状部材の凸部を基体の凹部に嵌合することができる。この場合、内歯付き筒状部材の回転止めを図り得る。更にブレーキ部材を廃止すれば、ブレーキレスタイプにも適用できる。ブレーキ解除機構は、回転入力が出力部に与えられたとき出力部の回転に連動して回転すると共に出力部よりも増速されて回転すると共に被係合部を有する連動回転体と、連動回転体の被係合部に係脱可能に係合することにより連動回転体を回り止めしてブレーキ機構をブレーキ作用形態とすると共に、連動回転体の被係合部から離脱されてブレーキ機構をブレーキ解除形態とする係合部とを具備する形態を例示できる。
本発明によれば、電動モータから出力部に向かう動力伝達経路において、出力部の手前に減速手段が設けられており、減速手段は、電動モータから出力部へ向けて動力伝達するときに減速させると共に、出力部から電動モータへ向けて動力伝達するときに連動回転体を増速させる形態を例示できる。この場合、連動回転体を増速させることは、連動回転体のトルクを小さくすることに相当する。このため、出力部から電動モータへ向けて動力伝達するとき、連動回転体の被係合部と係合部との摩擦力を低減できる。故に、連動回転体の被係合部から係合部を離脱させる力を小さくできる。
本発明に係る電動シャッター開閉装置は、シャッターと、シャッターを巻取可能なシャッター巻取体と、シャッター巻取体を巻取方向及び巻き外し方向に回転させる電動シャッター駆動装置とを具備する。電動シャッター駆動装置は、上記した請求項のうちのいずれか一項に記載の電動シャッター駆動装置である。シャッター巻取体はシャッターを巻取可能であれば構造を問わない。シャッターは開口を開閉させる遮蔽部材を意味し、スラットが一般的であるが、場合によっては、カーテン、幕でも良い。本発明によれば、電動シャッター駆動装置が巻き取り軸の外方に配置されている外付けタイプでもよいし、あるいは、電動シャッター駆動装置が巻き取り軸の内部に配置されている巻き取り軸内蔵タイプでも良い。
以下、本発明の実施例1について図1〜図7を参照して説明する。図1は電動シャッター開閉装置の全体の概念を示す。本実施例は構造物の出入り用の開口を開閉する電動シャッター開閉装置に適用したものである。図1は電動シャッター開閉装置を模式的に示す。図1に示すように、電動シャッター開閉装置1は家屋、ビル、工場、車両(乗用車、トレーラー、トラック、列車を含む)、船体等の構造物に設けられており、人又は車両などが出入りする開口10を開閉するものである。電動シャッター開閉装置1は、開口10に設けられた縦方向にのびる平行に並走された2本のガイドレール11と、ガイドレール11に沿って昇降され昇降に伴い開口を開閉させると共にストッパ12aをもつ遮蔽部材としてのシャッター12と、ガイドレール11の上部側に設けられた横軸固定形の非回転の巻き取り軸13(支軸)と、巻き取り軸13に回転可能に支持され図略の連結部材を介して互いに連結された複数の回転可能なシャッター巻取体として機能する従動輪14(14a、14b、14c、14d)と、従動輪14aに対して離間して配置された回転可能な駆動輪15(スプロケット)と、駆動輪15と従動輪14aとの間に架設されたエンドレス状をなす伝達部材16(チェーン)と、駆動輪15を回転させる電動シャッター駆動装置2とを備えている。図1に示すように、従動輪14aはスプロケット状をなしており、従動輪14b、14c、14dは円盤状をなしている。シャッター12はスリット12cを有する。なお図1に示すように、ケース1c内には、巻き取り軸13、従動輪14、駆動輪15、伝達部材16、電動シャッター駆動装置2が内蔵されている。
巻き取り軸13には、ねじりコイルバネで形成された付勢部材17が装備されている。付勢部材17はシャッター12を上向きに常時付勢する付勢力を有する。付勢部材17の上向きの付勢力は、基本的には、シャッター12の重量による下向きの負荷力と釣り合うように設定されている。このためシャッター12を開放させるとき、付勢部材17の上向きの付勢力はアシスト力として機能するため、シャッター12を持ち上げて開放させる力としては小さくて済む。なお、図1に示すように、電動シャッター駆動装置2は巻き取り軸13に対して離間した位置に巻き取り軸13に沿って配置されている。故に電動シャッター駆動装置2は、巻き取り軸13の外方に配置されており、外付けタイプである。
従動輪14aの径は駆動輪15の径よりも大きく設定されていると共に、従動輪14aの歯数は駆動輪15の歯数よりも多く設定されている。このため、従動輪14a、駆動輪15及び伝達部材16により減速機構19が構成されており、シャッター12の昇降速度を減速することができる。
図2(複雑化を避けるためハッチングを一部省略)は、電動シャッター駆動装置2の内部を示す。電動シャッター駆動装置2は、基体20と、基体20の機械室21に設けられた電動モータ23と、基体20の機械室21に設けられた出力部として機能すると共に軸芯Pをもつ出力軸24と、基体20の機械室21に設けられた動力伝達機構3と、基体20の機械室21に設けられたブレーキ機構6とを備えている。電動モータ23→動力伝達機構3→ブレーキ機構6→出力軸24→回転体24x(出力部の一部)の順に直列的に配置されている。
電動モータ23(例えばDCモータ)はモータ軸23aを有する。出力軸24はシャッター12を巻取可能なシャッター巻取体(従動輪14a〜14d)に伝達部材16を介して間接的に接続されている。出力軸24が回転すると、シャッター巻取体(従動輪14a〜14d)が回転し、シャッター12の巻き取り又は巻き外しが行われる。図2に示すように、出力軸24は基体20の先端部の軸受20mに回転可能に設けられており、先端部に回転体24xを有する。動力伝達機構3は、電動モータ23のモータ軸23aにより回転される減速ギヤ機構4と、減速ギヤ機構4に繋がる減速用の遊星ギヤ機構5とを備えている。減速ギヤ機構4は、電動モータ23のモータ軸23aにより噛み合う第1平ギヤ41と、第1平ギヤ41に噛み合う第2平ギヤ42と、第2平ギヤ42に噛み合う第3平ギヤ43とを備えており、電動モータ23の回転を減速させる。
図2に示すように、遊星ギヤ機構5は、太陽ギヤ51と、太陽ギヤ51の外周側に配置されたリング形状をなすインターナルギヤ52(内歯付きリングギヤ)と、太陽ギヤ51とインターナルギヤ52との間に介在する複数個のプラネタリギヤ53と、プラネタリギヤ53に係合するキャリア54とを備えている。太陽ギヤ51は外歯51uをもつ。インターナルギヤ52は内歯52iをもつ。プラネタリギヤ53は外歯53uをもつ。
遊星ギヤ機構5によれば、太陽ギヤ51、インターナルギヤ52、プラネタリギヤ53、キャリア54のうちのいずれか一方を固定して回転止めすれば、所定の減速比により動力伝達が行われる。また当該一方の回転止めを解除してフリーとすれば、遊星ギヤ機構5による動力伝達は遮断される。
図2に示すように、太陽ギヤ51は減速ギヤ機構4の第3平ギヤ43に同軸的に繋がり、第3平ギヤ43により回転される。プラネタリギヤ53のシャフト55は連動できるようにキャリア54に係合している。本実施例によれば、図2に示すように、ブレーキ筒体60(ブレーキ機構6の部品)とインターナルギヤ52(動力伝達機構3の部品)とは一体的に成形されており、両者は連動するように設定されている。あるいは、ブレーキ筒体60(ブレーキ機構6の部品)とインターナルギヤ52(動力伝達機構3の部品)とを別部品として形成し、凹凸嵌合等の結合手段により、連動するように設定しても良い。
図4に示すように、ブレーキ機構6は、回転可能及び回転止め可能に設けられたブレーキ筒体60と、ブレーキ筒体60の内部にほぼ同軸的に配設されブレーキ筒体60の内周面に摩擦摺動可能なブレーキ部材として機能するスプリング62とを備えている。ブレーキ筒体60は外歯60uを有する。図4に示すように、スプリング62は、外径が収縮可能なコイルスプリング部63と、コイルスプリング部63の先端に内向きに一体的に形成された突起64a、64bとを有する。突起64a、64bはキャリア54及び出力軸24に隙間65、66を介して対面する。即ち、突起64a、64bとキャリア54との間には、隙間65が形成されている。突起64a、64bと出力軸24との間には、隙間66が形成されている。
図4から理解できるように、電動モータ23が停止しており、出力軸24(カプラ出力軸に相当する)が駆動源となって軸芯Pの回りで矢印A1方向に回転すると、出力軸24の部位24aが突起64aを押圧しコイルスプリング部63がこれの拡径方向に動作する。このため、コイルスプリング部63がブレーキ筒体60の内周面60iを押圧する力が増加し、摩擦力が増加し、ブレーキ作用形態となる。また出力軸24の部位24aが軸芯Pの回りで矢印A2方向に回転すると、出力軸24が突起64bを押圧しコイルスプリング部63がこれの拡径方向に動作するため、コイルスプリング部63がブレーキ筒体60の内周面60iを押圧する力が増加し、摩擦力が増加し、ブレーキ作用形態となる。上記のように電動モータ23が停止しており、出力軸24(カプラ出力軸に相当する)が駆動源となって矢印A1方向又は矢印A2方向に回転するときには、ブレーキ機構6はブレーキ作用形態となる。
また図4から理解できるように、電動モータ23により駆動されるキャリア54(カプラ入力軸に相当する)が軸芯Pの回りで矢印A1方向に回転すると、キャリア54の部位54aが突起64bを押圧し、コイルスプリング部63がこれの縮径方向に動作する。このため、コイルスプリング部63がブレーキ筒体60の内周面60iを押圧する力が減少し、摩擦力が小さくなり、ブレーキ機構6によるブレーキは解除される。またキャリア54(カプラ入力軸に相当)がこれの軸芯Pの回りで矢印A2方向に回転すると、出力軸24(カプラ出力軸に相当)を同じ方向に回転させる。従って、キャリア54および出力軸24はカプラとして機能する。このとき、キャリア54の部位54aが突起64aを押圧してコイルスプリング部63がこれの縮径方向に動作するため、コイルスプリング部63がブレーキ筒体60の内周面60iを押圧する力が減少し、摩擦力が小さくなり、ブレーキ解除形態となる。
上記のように電動モータ23により駆動されるキャリア54が矢印A1方向又は矢印A2方向に回転して出力軸24を回転させるときには、ブレーキ機構6によるブレーキは解除される。電動モータ23によりシャッター12を開放させるとき、キャリア54が軸芯Pの回りで矢印A1方向に回転する。電動モータ23によりシャッター12を閉鎖させるとき、キャリア54が軸芯Pの回りで矢印A2方向に回転するが、これに限らず、逆の関係に設定しても良い。
次に、ブレーキ解除機構7について図5〜図7を参照して説明する。本実施例によれば、ブレーキ解除機構7は、図6に示すように、ブレーキ筒体60の平歯状の外歯60uに噛み合う平歯状の外歯71uをもつ中間部材としての中間ギヤ71と、中間ギヤ71に対して同軸的に設けられた連動回転体として機能する円盤状をなす回転盤72と、回転盤72の外周部に形成された被係合部として機能するU字形状をなす溝73に係脱可能に係合するピン状をなす係合部74とを備えている。更にブレーキ解除機構7は、図5に示すように、回転盤72の軸長方向と平行な方向に沿って移動して係合部74を溝73から離脱させる操作力を発揮する作動レバー75と、係合部74を溝73に係合させる付勢力を発揮する付勢要素として機能する付勢バネ76と、作動レバー作動時に係合部74が連動するためのストッパ77とを備えている。
作動レバー75はブレーキ解除機構7の操作部として機能するものであり、ワイヤ、ロッド等の長い連結部80の一端80aに繋がれている。連結部80は、外方の侵入者等が操作できないように家屋やビル等の構造物の室内側(例えばガイドレール11付近)に延設されている。使用者等が連結部80の他端80b側を引っ張れば、拘束具100により、連結部80を引張状態に維持できるようにされている。図5に示すように、付勢バネ76はコイル形状をなしており、ピン状をなす係合部74の外周に巻装されている。図6に示すように、回転盤72の半径L3は、中間ギヤ71の半径L2よりも大きく設定されている。回転盤72は中間ギヤ71を介してブレーキ筒体60に連動可能であるため、連動回転体として機能できる。図5に示すように、作動レバー75の基端部75cは枢支部75eにより揺動可能に枢支されている。作動レバー75の基端部75cと先端部75dとの間に、ピン状の係合部74が位置している。このため、ピン状の係合部74を溝73から抜くとき、作動レバー75はてこの作用を奏することができ、抜き荷重の低減を期待できる。
通常の使用形態では、付勢バネ76の付勢力により係合部74が矢印X2方向(係合方向)に移動して溝73に係合しているため、回転盤72が回転止めされ、ひいては中間ギヤ71が回転止めされ、ブレーキ筒体60が回転止めされている。この結果、ブレーキ筒体60と一体的なインターナルギヤ52が回転止めされている。このように遊星ギヤ機構5のインターナルギヤ52が回転止めされていると、前述したように遊星ギヤ機構5を介しての動力伝達が行われる。
これに対して付勢バネ76に抗して作動レバー75が矢印X1方向(係合離脱方向)に使用者等により操作されると、係合部74が溝73から外れるため、回転盤72の回転止めが解除され、ひいては中間ギヤ71の回転止めが解除され、ブレーキ筒体60の回転止めが解除され、この結果、ブレーキ筒体60と一体的なインターナルギヤ52の回転止めが解除される。したがって、回転盤72、中間ギヤ71、ブレーキ筒体60、インターナルギヤ52がフリーとなり、回転可能とされる。このように遊星ギヤ機構5のうち回転止めされていたインターナルギヤ52の回転止めが解除されると、インターナルギヤ52がフリーとなるため、遊星ギヤ機構5を介して電導モータ23への動力伝達は遮断される。
次に、本実施例に係る電動シャッター駆動装置2の作用について説明を加える。通常の使用形態、つまり電動モータ23によりシャッター12を開閉させる形態について説明する。通常の使用形態によれば、操作スイッチにより電動モータ23が回転駆動し、モータ軸23aが回転し、減速ギヤ機構4を構成する第1平ギヤ、第2平ギヤ42、第3平ギヤ43が回転し、遊星ギヤ機構5の太陽ギヤ51が回転する。太陽ギヤ51の回転がプラネタリギヤ53に伝達される。更に、回転止めされたインターナルギヤ52を介してキャリア54が回転する。このように電動モータ23によりキャリア54が矢印A1方向又はA2方向に回転すると、前述したように、スプリング62のコイルスプリング部63の外径を縮径させる方向にスプリング62が動作する。これによりスプリング62のコイルスプリング部63がブレーキ筒体60の内周面60iから離れる方向に動作するため、スプリング62のコイルスプリング部63とブレーキ筒体60との摩擦摺動が小さくなり、結果として、ブレーキ機構6がブレーキ解除形態となる。このため電動モータ23により出力軸24が円滑に回転し、シャッター巻取体(従動輪14)が円滑に回転し、シャッター12の巻取、あるいは、巻き外しが良好に行われる。即ち、シャッター12の開放又は閉鎖が行われる。シャッター12を開放させるときには、キャリア54は矢印A1方向に回転し、シャッター12を閉鎖させるときには、キャリア54は矢印A2方向に回転するように設定されているが、これに限らず、逆の関係としても良い。
通常の使用形態(係合部74が溝73に係合している状態)において、電動モータ23の自動駆動ではなく、侵入者等が外方からシャッター12を手作業で強制的に開放させるときについて説明を加える。この場合、侵入者等による外方からのシャッター12の強制開放に伴い、回転体24xおよび出力軸24に回転入力が与えられる。この回転入力は遊星ギヤ機構5を介して出力軸24から電動モータ23に向かおうとする。出力軸24が駆動源として回転しようとすると、前述したように、コイルスプリング部63が拡径する方向にスプリング62が動作し、スプリング62とブレーキ筒体60の内周面60iとの摩擦力が大きくなり、ブレーキ機構6がブレーキ作用形態となる。このためシャッター12を開放させる荷重が過大となる。故に、侵入者等がシャッター12を強制的に開放させることが困難となり、保安性が高まる。
次に、ブレーキ機構6が解除されるブレーキ解除形態における動作について説明を加える。このようにブレーキ機構6のブレーキを解除又は軽減する場合は、一般的には、停電時、災害時等、故障時の非常時において、シャッター12を手動により迅速に開放させる場合である。先ず、使用者は連結部80を引っ張って作動レバー75を矢印X1方向に作動させる。すると、係合部74が付勢バネ76に抗して溝73から離脱し、中間ギヤ71及び回転盤72の回転止めが解除される。従って前述したように遊星ギヤ機構5を構成するインターナルギヤ52の回転止めが解除され、ブレーキ筒体60はフリーとなる。故に、ブレーキ筒体60と一体的なインターナルギヤ52もフリーとなり、このインターナルギヤ52がブレーキ機構6のブレーキを解除又は軽減しながら回転することになるため、シャッター12を手動により軽い荷重で開放させることができる。
換言すると、非常時には、シャッター12の強制開放により出力軸24が駆動源として回転し、スプリング62、ブレーキ筒体60及びキャリア54が回転する。このとき、非常時には係合部74が溝73から離脱しているため、ブレーキ筒体60すなわちインターナルギヤ52の回転止めが解除されており、インターナルギヤ52がフリーとなる。このため、遊星ギヤ機構5の太陽ギヤ51には回転が伝達されない。この場合、(1)キャリア54及びプラネタリギヤ53が回転、(2)太陽ギヤ51が固定となる。このため、ギヤ比分、インターナルギヤ52がキャリア54よりも高速で回転することになる。すなわち、ブレーキ機構6において、インターナルギヤ52と一体的なブレーキ筒体60は、キャリア54、出力軸24よりも高速で回転する。このためブレーキ筒体60が相対的にスプリング62を縮径方向に動作させ、ブレーキ筒体60がブレーキ機構6のブレーキを解除又は軽減しながら回転することになる。このようにブレーキが解除されるため、停電時、故障時、災害時といった非常時等において、シャッター12を手動により軽い荷重で開放させることができる利点が得られる。
更に本実施例によれば、停電時、故障時、災害時といった非常時等において、シャッター12を手動により開放させるとき、シャッター12の手動による開閉によって出力軸24に回転入力が与えられ、出力軸24が駆動源として回転したとしても、遊星ギヤ機構5の太陽ギヤ51に動力が伝達されず、太陽ギヤ51が回転されず、結果として遊星ギヤ機構5を用いた動力伝達が遮断される。このため電動モータ23は回転しない。よって、停電時、故障時、災害時等の非常時においてシャッター12を手動により開放させるとき、電動モータ23のコキングトルクが発生しない。故に、電動モータ23のコキングトルクによる逆転トルクのアップはなくなる。換言すると、本実施例によれば、ブレーキ解除機構7は、ブレーキ機構6によるブレーキを解除又は軽減すると共に、動力伝達機構3による動力伝達を遮断することができる。故に、更に出力軸24を更に軽い荷重で回転させることができ、シャッター12を更に小さな荷重で開放させることができる。上記した本実施例によれば、停電時、故障時、災害時といった非常時等において、シャッター12を手動により軽い荷重で迅速に開放させることができる利点が得られる。
ところで、ブレーキ筒体60の回転止めを解除するとき、大きなトルクが出力軸24にかかることがある。即ち、図1に示すようなスリット12aを開閉するタイプのシャッター12の場合には、スリット12aを閉じた状態(全閉状態で付勢部材17の上向トルクは最大となる)の下、このトルクのみが出力軸24に作用する。この場合、出力軸24からトルクがブレーキ筒体60にも伝達される。ここで、図6において、ブレーキ筒体60にトルクTがかかっていると仮定する。ブレーキ筒体60の半径をL1とし、中間ギヤ71の半径をL2とし、回転盤72の半径をL3とする。ここでL2<L3の関係に設定されている。ブレーキ筒体60の外歯60uに作用する接線力をF1とすると、F1=T/L1が基本的には成立する。故に、後述するように係合部74を抜き荷重を低減させるべく接線力F1を小さくするためには、ブレーキ筒体60の半径L1を大きくすることが好ましい。
ここで、中間ギヤ71はブレーキ筒体60の外歯60uに噛み合っているため、中間ギヤ71の外歯71uに作用する接線力もF1となる。ここで、比較例として、ブレーキ筒体60の外周部に溝を形成し、この溝に係合している係合部を抜く場合を考える。この比較例によれば、ブレーキ筒体60と係合部との間の摩擦係数をμとし、係合部の抜き荷重をM1とすると、M1=μ・F1の関係が基本的に成立する。そして、図6に示すように、回転盤72の外周部の溝73の接線力をF2とすると、F2=F1・(L2/L3)が基本的には成立する。故に、回転盤72の溝73に係合している係合部74を溝73から抜こうとすると、回転盤72と係合部74との間の摩擦係数をμとし、抜き荷重をM2とすると、M2=μ・F2=μ・F1・(L2/L3)の関係が基本的に成立する。
図6から明らかなように、回転盤72の半径L3は、中間ギヤ71の半径L2よりも大きいため(L2<L3)、L2/L3の値の分、係合部60の抜き荷重が低減される[M1=μF1]>[M2=μF1(L2/L3)]。
上記したようにブレーキ筒体60に形成した溝から係合部を抜く比較例に比較して、回転盤72の溝73から係合部74を抜く本実施例によれば、抜き荷重を小さくできる。このため、ブレーキ解除機構7の操作が軽い荷重で行うことができ、停電時、故障時、災害時といった非常時等における迅速操作に好適する。
ここで上記した式によれば、L2/L3の値が小さいほど、上記した抜き荷重は低減される。従って、上記した抜き荷重を低減させるためには、回転盤72の半径L3を大きくし、中間ギヤ71の半径L2を小さくすれば良い。このため図6に示すように、回転盤72の半径L3は、中間ギヤ71の半径L2よりも大きく設定されており、回転盤72の外周部72pは基体20の内壁面20iに接近するまで大きくされている。
なお本実施例によれば、てこ作用を有する作動レバー75により係合部74を抜くことにしており、作動レバー75により抜き荷重をある程度低減できる。しかしながら作動レバー75の長さは抜き荷重の低減に有効であるが、構造上、作動レバー75の長さ及びストロークの増大には限界がある。この点について本実施例によれば、図6に示すように、外歯60uをもつブレーキ筒体60に対して、中間ギヤ71を介して回転盤72を配置しているため、作動レバー75の長さの制約を受けつつも、L2/L3の値に基づいて上記した抜き荷重を低減させることができる。なお、上記したL2/L3の値の如何によっては、てこ作用を有する作動レバー75を廃止しても良い。
以下、本発明の実施例2について図8〜図13を参照して説明する。共通する部位には共通の符号を付する。本実施例は構造物の出入り用の開口を開閉する電動シャッター開閉装置に適用したものである。この電動シャッター開閉装置は家屋、ビル、工場、車両(乗用車、トレーラー、トラック、列車を含む)、船体等の構造物に設けられており、人又は車両などが出入りする開口を開閉するものである。電動シャッター開閉装置は、開閉体としてのシャッターと、回転可能なシャッター巻取体とを備えており、巻き取り軸13と同軸的に配置されている。本実施例では図1に示す実施例の場合とは異なり、エンドレス状をなす伝達部材16は設けられていない。
図8(複雑化回避のためハッチングを一部省略)は、上記した電動シャッター開閉装置に搭載されている電動シャッター駆動装置2Bの内部を示す。電動シャッター駆動装置2Bは、図8に示すように、基体20と、基体20の機械室21に設けられた電動モータ23と、基体20に回転可能に設けられた出力部として機能するリング状の出力軸24と、基体20の機械室21に設けられた減速用の動力伝達機構3と、基体20の機械室21に設けられたブレーキ機構6とを備えている。
図8に示すように、電動モータ23はモータ軸23aを有する。動力伝達機構3は、モータ軸23aにより回転される減速用の第1遊星ギヤ機構5Aと、第1遊星ギヤ機構5Aに繋がる減速用の第2遊星ギヤ機構5Bと、第2遊星ギヤ機構5Bに繋がる減速用の第3遊星ギヤ機構5Cと、第3遊星ギヤ機構5Cに繋がる減速用の第4遊星ギヤ機構5Dとを直列に備えている。電動モータ23→第1遊星ギヤ機構5A→第2遊星ギヤ機構5B→第3遊星ギヤ機構5C→ブレーキ機構6→第4遊星ギヤ機構5D→出力軸24の順に直列的に配置されており、通常使用形態における動力伝達経路はこの順である。
図8に示すように、第1遊星ギヤ機構5Aは、リング形状をなす太陽ギヤ51Aと、太陽ギヤ51Aの外周側に配置されたリング形状をなすインターナルギヤ52Aと、太陽ギヤ51Aとインターナルギヤ52Aとの間に介在する複数個のプラネタリギヤ53Aと、プラネタリギヤ53Aに係合するキャリア54Aとを備えている。太陽ギヤ51Aは外歯51uをもつ。インターナルギヤ52Aは内歯52iをもつ。プラネタリギヤ53Aは外歯53uをもつ。
図8及び図9に示すように、第2遊星ギヤ機構5Bは、リング形状をなす太陽ギヤ51Bと、太陽ギヤ51Bの外周側に配置されたリング形状をなすインターナルギヤ52Bと、太陽ギヤ51Bとインターナルギヤ52Bとの間に介在する複数個のプラネタリギヤ53Bと、プラネタリギヤ53Bに係合するキャリア54Bとを備えている。図9は歯部を模式化して示す。太陽ギヤ51Bは外歯51uをもつ。インターナルギヤ52Bは内歯52iをもつ。プラネタリギヤ53Bは外歯53uをもつ。インターナルギヤ52A、52Bは一体物とされている。
図8及び図10に示すように、第3遊星ギヤ機構5Cは、リング形状をなす太陽ギヤ51Cと、太陽ギヤ51Cの外周側に配置されたリング形状をなすインターナルギヤ52Cと、太陽ギヤ51Cとインターナルギヤ52Cとの間に介在する複数個のプラネタリギヤ53Cと、プラネタリギヤ53Cに係合するキャリア54Cとを備えている。太陽ギヤ51Cは外歯51uをもつ。インターナルギヤ52Cは内歯52iをもつ。プラネタリギヤ53Cは外歯53uをもつ。図8に示すように、第3遊星ギヤ機構5Cのインターナルギヤ52Cの中央部520は、第2遊星ギヤ機構5Bのキャリア54Bに係合しており、当該キャリア54Bにより回転される。
図8及び図13は歯部を模式化して示す。図13に示すように、電動シャッター駆動装置2Bにおいて、最終段に配置されている第4遊星ギヤ機構5Dは、リング形状をなす太陽ギヤ51Dと、太陽ギヤ51Dの外周側に配置されたインターナルギヤを兼ねるリング形状をなす出力軸24と、太陽ギヤ51Dと出力軸24との間に介在する複数個のプラネタリギヤ53Dと、プラネタリギヤ53Dにシャフト55を介して係合するキャリア54D(図8参照)とを備えている。キャリア54Dは回転止めされ、基体20に固定されている。出力軸24、太陽ギヤ51D、プラネタリギヤ53Dは、回転可能とされている。キャリア54Dはプラネタリギヤ53Dにシャフト55を介して係合する。太陽ギヤ51Dは外歯51uをもつ。プラネタリギヤ53Dは外歯53uをもつ。
図8に示すように、第3遊星ギヤ機構5Cのキャリア54Cは、中間軸58に接続されており、中間軸58を介して第4遊星ギヤ機構5Dの太陽ギヤ51Dと同軸的に設けられており、太陽ギヤ51Dを連動させて回転させる。
図13に示すように、出力軸24は、第4遊星ギヤ機構5Dのインターナルギヤを兼ねるものであり、係合機能部としての複数個の凹状部25を外周部に有する。この凹状部25と相手部材26の凸部27とが係合されている。ここで、電動モータ23により出力軸24が軸芯Pの回りで回転すると、相手部材26が回転し、ひいてはシャッター巻取体が回転し、シャッター12の巻取又は巻き外しが行われ、シャッター12の開放又は閉鎖が行われる。
図8に示すように、ブレーキ機構6は、ブレーキ筒体を兼ねるリング状をなす太陽ギヤ51Cと、太陽ギヤ51Cに連結された連動回転体として機能できる回転盤67と、太陽ギヤ51Cの内側に配置され太陽ギヤ51Cの内周面510に摩擦摺動可能なブレーキ部材として機能するスプリング62とを備えている。回転盤67は太陽ギヤ51Cよりも径大とされており、太陽ギヤ51Cと一体的且つ同軸的に連設されている。本実施例によれば、第3遊星ギヤ機構5Cの太陽ギヤ51C(動力伝達機構の部品)は、ブレーキ機構6のブレーキ筒体(ブレーキ機構の部品)も兼ねるものであり、部品点数の削減を図り得る。図11に示すように、回転盤67の外周部には、U字形状をなす溝73(被係合部)が形成されている。回転盤67の中心から溝73までの半径L5は、太陽ギヤ51Cの半径L6よりも大きくされている。この場合、後述するように係合部74を溝73から離脱させる抜き荷重(離脱荷重)をできるだけ低減させることができる。
図10に示すように、スプリング62は、外径が収縮可能なコイルスプリング部63と、コイルスプリング部63に一体的な突起64a、64bとを有する。突起64a、64bはキャリア54及び出力軸24に隙間を介して対面する。突起64a、64bと中間軸58との間には隙間65が形成されている。突起64a、64bとキャリア54Cとの間には隙間66が形成されている。
図10から理解できるように、出力軸24により駆動される中間軸58(カプラ出力軸に相当)が軸芯Pの回りで矢印A1方向に回転すると、中間軸58の部位58aが突起64aを押圧しコイルスプリング部63がこれの拡径方向に動作するため、コイルスプリング部63が太陽ギヤ51C(ブレーキ筒体を兼ねる)の内周面510に摩擦摺動して生じる摩擦力が増加し、ブレーキ機構6はブレーキ作用形態となる。また、出力軸24により駆動される中間軸58の部位58aが軸芯Pの回りで矢印A2方向に回転すると、突起64bを押圧し、コイルスプリング部63がこれの拡径方向に動作するため、コイルスプリング部63が太陽ギヤ51C(ブレーキ筒体を兼ねる)の内周面510に摩擦摺動する摩擦力が増加し、ブレーキ作用形態となる。
また図10から理解できるように、電動モータ23により駆動されたキャリア54C(カプラ入力軸に相当)の部位540が軸芯Pの回りで矢印A1方向に回転すると、キャリア54Cの部位540が突起64bを押圧しコイルスプリング部63がこれの縮径方向に動作するため、コイルスプリング部63が太陽ギヤ51Cの内周面510への摩擦力が低下し、ブレーキ機構6はブレーキ解除形態となる。また電動モータ23により駆動されたキャリア54Cが軸芯Pの回りで矢印A2方向に回転すると、キャリア54Cの部位541が突起64aを押圧しコイルスプリング部63がこれの縮径方向に動作するため、コイルスプリング部63が太陽ギヤ51Cの内周面510への摩擦力が低下し、ブレーキ機構6はブレーキ解除形態となる。
次に、ブレーキ解除機構7について、図8、図10、図11、図12を参照して説明を加える。本実施例によれば、図8に示すように、ブレーキ解除機構7は、回転盤67の外周部に形成されたU字形状をなす溝73に係脱可能に係合する係合部74と、係合部74を溝73から離脱させる操作力を発揮する操作部として機能できる作動ロッド78(中間索状部材)と、係合部74を付勢して係合部74を溝73に係合させる付勢力を発揮する付勢要素である付勢バネ76とを備えている。図11に示すように、係合部74は、回転盤67の溝73に係合する第1係合部74aと、第1係合部74aに連設されていると共に回転盤67の外周面に周方向に延設された延設部74cとを備えている。
図12に示すように、作動ロッド78の一端部78wはU字形状に曲成され、係合部74に結合されている。作動ロッド78の他端78cは、室内の使用者が操作できるものの、シャッター12の外方に存在する侵入者等が操作できないように、家屋やビルなどの構造物内(例えばガイドレール11付近)に延設されている。使用者等が作動ロッド78の他端78c側を引っ張れば、拘束具100により、作動ロッド78を引張状態に維持できるようにされている。
作動ロッド78が矢印X1方向に操作されていないときには、付勢バネ76の矢印X2方向(係合方向)に向かう付勢力により、係合部74が溝73に係合している。このため回転盤67の回転止めが実行される。回転盤67と太陽ギヤ51Cとは一体的に連設されているため、ブレーキ筒体を兼用する太陽ギヤ51Cの回転止めが実行される。このように第3遊星ギヤ機構5Cの太陽ギヤ51Cの回転止めが実行されていると、第3遊星ギヤ機構5Cは動力伝達機構として機能でき、第3遊星ギヤ機構5Cを介しての動力伝達が所定の減速比で行われ、電動モータ23の駆動力は出力軸24に伝達される。
これに対して使用者等により付勢バネ76に抗して作動ロッド78が矢印X1方向に引張操作されると、係合部74が空間79に向かうように回転盤67の溝73から外れる。このため回転盤67の回転止めが解除され、ひいては第3遊星ギヤ機構5Cの太陽ギヤ51Cの回転止めが解除される。このように第3遊星ギヤ機構5Cの太陽ギヤ51Cの回転止めが解除され、太陽ギヤ51Cがフリーとなると、第3遊星ギヤ機構5Cを介しての動力伝達は遮断される。
次に、電動シャッター駆動装置2Bの作用について説明を加える。通常の使用形態において、電動モータ23によりシャッター12を開放させる形態について説明する。通常の使用形態によれば、前述したように、付勢バネ76により係合部74が溝73に係合しているため、回転盤67の回転止め、つまり、第3遊星ギヤ機構5Cの太陽ギヤ51Cの回転止めが実行されている。従って第3遊星ギヤ機構5Cは動力伝達できる。この状態において操作スイッチにより電動モータ23が一方向に回転駆動すると、モータ軸23aが回転し、減速用の第1遊星ギヤ機構5Aが回転し、減速用の第2遊星ギヤ機構5Bが回転し、減速用の第3遊星ギヤ機構5Cが回転し、減速用の第4遊星ギヤ機構5Eが回転し、出力軸24が矢印A1方向に回転し、相手部材26が矢印A1方向に回転する。これにより電動モータ23によりシャッター12が開放する。
次に、通常の使用形態において、電動モータ23によりシャッター12を閉鎖させる形態について説明する。この場合、操作スイッチにより電動モータ23が逆方向に回転駆動すると、モータ軸23aが逆方向に回転し、減速用の第1遊星ギヤ機構5A、減速用の第2遊星ギヤ機構5B、減速用の第3遊星ギヤ機構5Cを介して、第4遊星ギヤ機構5Eが前述と逆方向に回転し、出力軸24が矢印A2方向に回転し、相手部材26が矢印A2方向に回転する。これにより電動モータ23によりシャッター12が閉鎖される。
上記した通常の使用形態によれば、電動モータ23により第3遊星ギヤ機構5Cのキャリア54C(カプラ入力軸に相当)が回転すると、前述したように、スプリング62のコイルスプリング部63の外径を縮径させる方向にスプリング62が動作する。これによりスプリング62のコイルスプリング部63が太陽ギヤ51C(ブレーキ筒体)の内周面510への押圧力が小さくなる方向に動作するため、スプリング62のコイルスプリング部63と太陽ギヤ51Cとの摩擦摺動が小さくなり、結果として、ブレーキ機構6がブレーキ解除形態となる。第3遊星ギヤ機構5Cのキャリア54Cが矢印A1方向に回転するときにも、矢印A2方向に回転するときにも、スプリング62のコイルスプリング部63と太陽ギヤ51C(ブレーキ筒体)との摩擦摺動が小さくなり、ブレーキ機構6がブレーキ解除形態となる。このため出力軸24として機能する第4遊星ギヤ機構5Dの出力軸24が円滑に回転し、シャッター巻取体が円滑に回転し、シャッター12の巻取、あるいは、巻き外しが良好に行われる。
次に、電動モータ23の駆動ではなく、侵入者等が外方からシャッター12を手作業で強制的に開放させるときについて説明を加える。この場合、係合部74が溝73に係合している。侵入者等によるシャッター12の強制開放操作に伴い、出力軸24に回転入力が与えられる。出力軸24に与えられた回転入力は、電動モータ23に向かおうとする。ここで、電動モータ23が非駆動状態において出力軸24が駆動源として回転しようとすると、前述したように、スプリング62のコイルスプリング部63が拡径する方向に動作し、遊星ギヤ機構5Cの太陽ギヤ51Cの内周面510とスプリング62との摩擦力が大きくなり、ブレーキ機構6がブレーキ作用形態となる。このため侵入者等がシャッター12を強制的に開放させようとすると、過大な荷重が必要となり、侵入者等によるシャッター12の強制開放は困難となり、保安性が確保される。
次に、ブレーキ機構6が解除されるブレーキ解除形態における動作について説明を加える。ブレーキ機構6の解除が要請される場合は、一般的には、停電時や故障時、災害時、故障時等のようにシャッター12を手動で開放させたい非常時である。先ず、使用者等が作動ロッド78を矢印X1方向に引張って作動させると、係合部74が付勢バネ76に抗して溝73から離脱し、回転盤67の回転止めが解除され、回転盤67はフリーとなる。従って回転盤67に連結されている遊星ギヤ機構5Cを構成する太陽ギヤ51C(ブレーキ筒体)の回転止めが解除され、太陽ギヤ51Cはフリーとなる。よってブレーキが解除され且つ第3遊星ギヤ機構5Cによる動力伝達は、遮断される。この場合、シャッター12の手動による開放に伴い、出力軸24が回転し、スプリング62、太陽ギヤ51C、キャリア54Cが回転する。
上記したように回転止めされていた太陽ギヤ51Cが回転するようになるため、第3遊星ギヤ機構5Cを介しての動力伝達は遮断される。よって、出力軸24からの回転入力により中間軸58、キャリア54C、プラネタリギヤ53Cが回転したとしても、第3遊星ギヤ機構5のインターナルギヤ52Cには回転が伝達されず、インターナルギヤ52Cは非回転となる。
この場合、(1)プラネタリギヤ53Cが回転、(2)インターナルギヤ52Cが固定である。このため、ギヤ比分、太陽ギヤ51Cがキャリア54Cよりも高速で回ることになる。すなわち、ブレーキ筒体を兼ねる太陽ギヤ51Cがキャリア54C、スプリング62、出力軸24よりも高速で回る。この結果、相対的にスプリング62を縮径方向に動作させ、ブレーキ機構6のブレーキを解除又は軽減しながら太陽ギヤ51Cが回転することになる。このように停電時、故障時、災害時等の非常時において、ブレーキ機構6のブレーキを解除又は軽減しながら、シャッター12を手動により軽い荷重で開放させることができる利点が得られる。
更に、上記したように停電時、故障時、災害時等の非常時において、ブレーキ機構6のブレーキを解除又は軽減してシャッター12を手動により軽い荷重で開放させるとき、出力軸24からの回転入力により中間軸58、キャリア54C、プラネタリギヤ53Cが回転したとしても、第3遊星ギヤ機構5Cのインターナルギヤ52Cは非回転であるため、第3遊星ギヤ機構5Cを介しての動力伝達は遮断され、電動モータ23への動力伝達経路が遮断され、電動モータ23は空転しない。よって電動モータ23のコキングトルクによる逆転トルクのアップはなくなる。即ち、シャッター12を更に小さい荷重で迅速に開放させることができ、停電時や故障時、災害時等といった非常時等のように、シャッター12を手動で早期に開放させたいときに適する。このように実施例によれば、停電時、故障時、災害時等といった非常時等において、シャッター12を手動により軽い荷重で迅速に開放させることができる。
ところで、ブレーキ筒体を兼ねる太陽ギヤ51Cの回転止めを解除するとき、出力軸24に大きなトルクがかかっている場合がある。すなわち、図1に示すようなスリット12aを開閉するタイプのシャッター12の場合には、スリット12aを閉じた状態(全閉状態で付勢部材17の上向きトルクは最大となる)の下、このトルクのみが出力軸24に作用する。この場合、大きなトルクTが出力軸24から太陽ギヤ51C及び回転盤67に作用する。この場合、溝73の壁面と係合部74との摩擦力が大きくなるため、回転盤67の溝73から係合部74が抜けにくくなるおそれがある。
この点について本実施例によれば、出力軸24と回転盤67(太陽ギヤ51C)との間には、減速用の第4遊星ギヤ機構5Dが設けられている。電動モータ23→遊星ギヤ機構5A、5B、5C→第4遊星ギヤ機構5D→出力軸24の順に動力が伝達されるときには、第4遊星ギヤ機構5Dは減速作用を奏する。しかしながら逆方向、つまり、出力軸24→第4遊星ギヤ機構5D→回転盤67(太陽ギヤ51C)に動力が伝達されるときには、第4遊星ギヤ機構5Dは逆作用つまり増速作用を奏する。即ち、出力軸24の回転数をN5[rpm]とし、回転盤67(太陽ギヤ51C)の回転数をN6[rpm]とすると、N6>N5である。従って出力軸24→第4遊星ギヤ機構5D→回転盤67に動力が伝達されるときには、出力軸24のトルクは、太陽ギヤ51C及び回転盤67に小さなトルクとして伝達されることになる。このため大きなトルクが出力軸24に作用するときであっても、第4遊星ギヤ機構5Dによる増速比に相当するぶん、太陽ギヤ51C及び回転盤67に作用するトルクは小さくなる。このため回転盤67の溝73に作用する接線力F6(図11参照)を小さくすることができる。
この結果、回転盤67の溝73から係合部74を抜こうとするとき、溝73から係合部74を抜くときにおける抜き荷重(離脱荷重)を小さくすることができる。従って、ブレーキ解除機構7を操作する操作部である作動ロッド78を軽い荷重で引っ張って係合部74を溝73から抜くことができ、停電時、故障時、災害時等の非常時における迅速操作に好適する。更に図11に示すように、回転盤67の半径L5は太陽ギヤ51Cの半径L6よりも大きく設定されているため、上記した接線力F4を一層小さくでき、上記した抜き荷重の低減に一層有利である。本実施例によれば、太陽ギヤ51D、キャリア54Dを同軸的に備えてコンパクト化されている第4遊星ギヤ機構5Dを利用するため、ブレーキ解除機構7の小型化に有利である。本実施例においても、必要であれば、実施例1と同様に、てこの作用を用いた作動レバーを用いることもできる。
以下、本発明の実施例3について図14を参照して説明する。共通する部位には共通の符号を付する。本実施例は図8に示す実施例2と基本的には同様の構成であり、実施例2と基本的には同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。本実施例に係る電動シャッター駆動装置2Cでは、ブレーキ機構6を構成するブレーキ筒体60は、キャリア54Cと一体化されている。作動ロッド78が操作されていないときには、付勢バネ76の付勢力により、係合部74が溝73に係合している。このため第3遊星ギヤ機構5Cのキャリア54Cの回転止めが実行され、キャリア54Cと一体的なブレーキ筒体60の回転止めが実行される。このように第3遊星ギヤ機構5Cのキャリア54Cの回転止めが実行されていると、第3遊星ギヤ機構5Cは動力伝達機構として機能でき、第3遊星ギヤ機構5Cを介しての動力伝達が所定の減速比で行われ、電動モータ23の駆動力は出力軸24に伝達される。これに対して使用者等により付勢バネ76に抗して作動ロッド78が引張操作されると、係合部74が溝73から外れる。このため第3遊星ギヤ機構5Cを構成するキャリア54Cの回転止めが解除される。このようにキャリア54Cがフリーとなると、第3遊星ギヤ機構5Cを介しての動力伝達は遮断される。
以下、本発明の実施例4について図15〜図17を参照して説明する。本実施例に係る電動シャッター駆動装置2Dは実施例1と同様に外付けタイプである。図15(複雑化回避のため、ハッチングを一部省略)に示すように、連動回転体61およびブレーキ筒体60は一体的に形成されている。基体20は、取付具20mにより固定され内周面をもつ電動モータ23にあてがわれる第1基体20Aと、取付具20nにより固定され内周面をもつ第2基体20Bとをもつ。電動モータ23から出力軸24に向かう動力伝達経路において、図15に示すように、電動モータ23により作動される第1遊星ギヤ機構150と、第1遊星ギヤ機構150により作動される第2遊星ギヤ機構160と、ブレーキ機構6と、第2遊星ギヤ機構160の回転を減速して出力部に伝達させる減速ギヤ機構180と、出力軸24とが順に配置されている。
図15に示すように、第1遊星ギヤ機構150は、電動モータ23のモータ軸23aで回転される第1太陽ギヤ151と、第1太陽ギヤ151に噛み合う第1プラネタリギヤ152と、第1プラネタリギヤ152に噛み合う第1インターナルギヤ153と、第1プラネタリギヤ152に繋がる第1キャリア154とを備えている。第2遊星ギヤ機構160は、第1キャリア154と一体的な第2太陽ギヤ161と、第2太陽ギヤ161に噛み合う第2プラネタリギヤ162と、第2プラネタリギヤ162に噛み合う第2インターナルギヤ163と、第2プラネタリギヤ162に繋がる第2キャリア164とを備えている。第2キャリア164はカプラ入力軸に相当するものであり、カプラ出力軸に相当する軸165の部位165cに継手係合可能とされている。
図15に示すように、ブレーキ機構6は、ブレーキ筒体60と、ブレーキ筒体60の内周面に摩擦摺動するブレーキ部材として機能するスプリング62とをもつ。第2キャリア164(カプラ入力軸に相当する)が一方向に回転すると、前述したように、スプリング62を縮径方向に動作させるため、スプリング62とブレーキ筒体60の内周面との摩擦抵抗が低減または消失し、ブレーキがかからない。第2キャリア164の回転力は、カプラ出力軸に相当する軸165(部位165c)を介して出力軸24に伝達される。軸165には外歯165iが形成されている。減速ギヤ機構180は、軸165の外歯165iに噛み合うと共に出力軸24の回転を減速させる外歯181iをもつ平ギヤ181を有する。平ギヤ181側には回転体24x(出力部)が取り付けられている。
本実施例によれば、図15に示すように、第1インターナルギヤ153および第2インターナルギヤ163は、これの軸長方向に直列に配置されていると共に一体的に成形されている。即ち、図15に示すように、第1インターナルギヤ153および第2インターナルギヤ163は、一体的に成形された内歯付き筒状部材158で形成されている。
内歯付き筒状部材158は第1基体20Aの中空室に嵌合され、第1基体20Aの内周面に沿って回転摺動可能とされている。この場合、内歯付き筒状部材158のうち軸長方向の一端部には、これの周方向に間隔を隔てて複数の凸部としての爪159が形成されている。ブレーキ筒体60の外周部には径外方向にフランジ状の連動回転体61が延設されている。連動回転体61には周方向に間隔を隔てて凹部としての複数の孔61xが形成されている。孔61xと爪159とが嵌合されることにより、内歯付き筒状部材158、連動回転体61およびブレーキ筒体60は一体的に連結されている。この結果、内歯付き筒状部材158(第1インターナルギヤ153および第2インターナルギヤ163)およびブレーキ筒体60を同時に回転止めしたり、あるいは、回転止めを同時に解除してフリーにできる利点が得られる。なお、ブレーキ筒体60は第2基体20Bの中空室に嵌合され、第1基体20Bの内周面に沿って回転摺動可能とされている。
図16はブレーキ解除機構7を示す。ブレーキ解除機構7は、連動回転体61の被係合部としての溝73に係脱可能に係合するピン状の係合部74をもつ。付勢バネ76により係合部74が溝73に係合する方向(矢印X2方向)に付勢される。係合部74が溝73に係合しているとき、連動回転体61およびブレーキ筒体60は回り止めされており、ブレーキ機構6はブレーキ作用形態とされる。この場合、内歯付き筒状部材(第1インターナルギヤ153および第2インターナルギヤ163)は、ブレーキ筒体60に一体的に連結されているため、両者は一体とされている。
図16に示すように、作動レバー75が設けられている。作動レバー75の長さ方向の中間である枢支部75eにより、作動レバー75は揺動可能に枢支されている。作動レバー75の端部75kを離脱方向(矢印X3方向)に操作すれば、作動レバー75が揺動し、係合部74が離脱方向(矢印X1方向)に引っ張られて溝73から離脱する。係合部74が離脱すると、連動回転体61(ブレーキ筒体60に一体成形されている)は、回り止め解除されてフリーとなり、ブレーキ機構6はブレーキ解除形態とされる。この場合、内歯付き筒状部材158(第1インターナルギヤ153および第2インターナルギヤ163)は、ブレーキ筒体60に一体的に連結されているため、連動回転体61と共にフリーとなり、回転可能となる。
ここで図16に示すように、枢支部75eと作動レバー75の一端部との距離をLaとし、枢支部75eと作動レバー75の操作側の端部75kとの距離をLcとすると、LcはLaよりも大きい。このため係合部74を離脱させる操作力を『てこの作用』により低減できる。
ところで、回転入力がシャッタ側から回転体24x(出力部)に与えられたとき、回転体24xの回転に連動して連動回転体61が回転する。この場合、連動回転体61は回転体24xよりも増速されて回転する。即ち、電動モータ23から回転体24xに向かう動力伝達経路において、回転体24xの手前に減速手段としての減速ギヤ機構180が設けられている。減速ギヤ機構180は、電動モータ23から回転体24x(出力部)へ向けて動力伝達するとき、減速作用を奏する。故に、回転体24x(出力部)から電動モータ23へ向けて動力伝達するとき、減速ギヤ機構180は、連動回転体61を増速させる機能を奏する。連動回転体61を増速させることは、連動回転体61のトルクを小さくすることに相当する。故に、回転入力がシャッタ側から回転体24x(出力部)に与えらるとき、係合部74と溝73の壁面との摩擦力を低減でき、係合部74を溝73から離脱させる力を小さくできる利点が得られる。
本実施例に係る電動シャッター駆動装置2Dは外付けタイプである。本実施例によれば、後述する実施例5に係るチューブラタイプの電動シャッター駆動装置2Eに対して、減速ギヤ機構180として平ギヤ181を採用している。故に、チューブラタイプの電動シャッター駆動装置2Eに対して部品の共通化を図り得る。
また、軸165(カプラ出力軸)と第2キャリア164(カプラ入力軸)との間にガタが存在すると、そのガタがシャッターの息継ぎ動作(シャッターの速度変動による非一定動作)に影響を与えるおそれがある。この点本実施例では、図15に示すように、軸165と第2キャリア164との間にオーリング168が介在している。このため、軸165と第2キャリア164との間に摺動抵抗が確保され、カプラのガタの影響を低減でき、シャッターの息継ぎ動作を改善できる。
本実施例によれば、基体20は、内歯付き筒状部材158の複数の爪159に嵌合する複数の係止孔20xを有する。この場合、内歯付き筒状部材158の軸長方向の一端部158aおよび他端部158cを逆の配置にし、内歯付き筒状部材158の爪159を基体20の係止孔20xに嵌合することができる。この場合、内歯付き筒状部材158の回転止めを図り得る。この場合、ブレーキ部材としてのスプリング62を廃止することができる。このようにスプリング62を廃止すれば、ブレーキレスタイプとなり、ある程度の逆転トルク(出力部から電動モータ23へ向かうトルク)が必要な駆動装置にも、本実施例に係る構造を適用できる。即ち、動力が出力軸24から電動モータ23へ向かうとき、ブレーキレスであるため、動力が遮断されないので、電動モータ23が空転して電動モータ23が回転し、電動モータ23のコキングトルクが発生し、逆転トルクを大きくできる。
図17は、長い筒形の収容室501をもつ被覆カバー500を示す。電動モータ23等を搭載する電動シャッター駆動装置2Dが制御基板510およびトランス520と共に、被覆カバー500の収容室501に収容されてユニット化されている。この場合、部品保護性が向上する。
以下、本発明の実施例5について図18〜図21を参照して説明する。本実施例に係る電動シャッター駆動装置2Eは、実施例4に係る外付けタイプの電動シャッター駆動装置2Dとは異なり、チューブラタイプである。チューブラタイプは、シャッター12を巻き取る固定型の巻き取り軸13の内部に、電動シャッター駆動装置2Eが挿入されているタイプである。図18に示すように、基体20は、内周面をもつ電動モータ23にあてがわれる第1基体20Aと、内周面をもつ第1基体20Aと別体の第2基体20Bとをもつ。第2基体20Bは取り付け具により第1基体20Aに取り付けられている。
図18に示すように、電動モータ23から出力軸24(出力部)に向かう動力伝達経路において、電動モータ23により作動される第1遊星ギヤ機構150と、第1遊星ギヤ機構150により作動される第2遊星ギヤ機構160と、ブレーキ機構6と、第2遊星ギヤ機構160の回転を減速して出力軸24(出力部)に伝達させる第3遊星ギヤ機構170と、出力軸24とが順に配置されている。
図18に示すように、第1遊星ギヤ機構150は、電動モータ23のモータ軸23aで回転される第1太陽ギヤ151と、第1太陽ギヤ151に噛み合う第1プラネタリギヤ152と、第1プラネタリギヤ152に噛み合う第1インターナルギヤ153と、第1プラネタリギヤ152に繋がる第1キャリア154とを備えている。第2遊星ギヤ機構160は、第1キャリア154と一体的な第2太陽ギヤ161と、第2太陽ギヤ161に噛み合う第2プラネタリギヤ162と、第2プラネタリギヤ162に噛み合う第2インターナルギヤ163と、第2プラネタリギヤ162に繋がる第2キャリア164とを備えている。第2キャリア164はカプラ入力軸を兼ねてあり、カプラ出力軸(軸165)にカプラ係合可能とされている。
ブレーキ機構6は、ブレーキ筒体60と、ブレーキ筒体60の内周面に摩擦摺動するブレーキ部材として機能するスプリング62とをもつ。カプラ入力軸を兼ねる第2キャリア164が一方向に回転すると、軸165(カプラ出力軸に相当)が同方向に回転する。このとき前述したようにスプリング62を縮径方向に動作させるため、スプリング62とブレーキ筒体60の内周面との摩擦抵抗が低減または消失し、ブレーキがかからない。図18に示すように、第3遊星ギヤ機構170は、軸165(カプラ出力軸に相当)と一体的な第3太陽ギヤ171と、第3太陽ギヤ171に噛み合う第3プラネタリギヤ172と、第3プラネタリギヤ172に噛み合う第3インターナルギヤ173とを備えている。第3インターナルギヤ173は大径の出力軸24(出力部)をもつ。
実施例4と同様に、図18に示すように、第1インターナルギヤ153および第2インターナルギヤ163は、軸長方向に直列に配置されていると共に一体的に成形されている。即ち、図18に示すように、第1インターナルギヤ153および第2インターナルギヤ163は、一体的に成形された内歯付き筒状部材158で形成されている。内歯付き筒状部材158は、第1基体20Aの中空室に嵌合され、第1基体20Aの内周面に回転摺動可能とされている。この場合、内歯付き筒状部材158のうち軸長方向の一端部には、これの周方向に間隔を隔てて複数の凸部としての爪159が形成されている。ブレーキ筒体60の外周部には径外方向にフランジ状の連動回転体61が一体的に延設されている。連動回転体61には周方向に間隔を隔てて凹部としての複数の孔61xが形成されている。孔61xと爪159とが嵌合されることにより、内歯付き筒状部材158、ブレーキ筒体60および連動回転体61が一体的に連結されている。
この場合、内歯付き筒状部材158(第1インターナルギヤ153および第2インターナルギヤ163)およびブレーキ筒体60を同時に回転止めしたり、あるいは、回転止めを同時に解除してフリーにできる利点が得られる。ここで、ブレーキ筒体60は第2基体20Bの中空室に嵌合され、第1基体20Bの内周面に回転摺動可能とされている。
図8に示すように、ブレーキ解除機構7は、連動回転体61の被係合部としての溝73に係脱可能に係合するピン状の係合部74をもつ。付勢バネ76により係合部74が溝73に係合する方向に付勢される。係合部74に作動ロッド78の端部78eが繋がれている。係合部74が溝73に係合しているとき、連動回転体61およびブレーキ筒体60は回り止めされているため、ブレーキ機構6はブレーキ作用形態とされる。この場合、内歯付き筒状部材158(第1インターナルギヤ153および第2インターナルギヤ163)は、ブレーキ筒体60に一体的に連結されているため、連動回転体61およびブレーキ筒体60と共に回り止めされて固定されている。
図19および図20に示すように、ブレーキ解除機構7のブレーキ解除を行う操作部300が設けられている。操作部300は、基部20から離間した位置に設けられており、ハート型のカム溝301をもつベース302と、ベース302に揺動中心である枢支ピン303の回りを揺動可能に枢支された第1作動レバー304と、第1作動レバー304に第2枢支ピン305により枢支された第2作動レバー307と、第2作動レバー307に設けられた先端側の従動子306と、操作索状部材308とを備えている。中間位置304mは、第1作動レバー304の長さ方向の中間位置を意味しており、第1作動レバー304の揺動中心である枢支ピン303から離れた位置である。可撓性をもつ作動ロッド78(中間索状部材)の端部78cは、第1作動レバー304の長さ方向の中間位置304mに繋がる。
図20はブレーキ作動形態(係合部74が溝73に係合している状態)を示す。この状態において、使用者が操作索状部材308を矢印Fc方向に引っ張ると、第1作動レバー304が第1枢支ピン303の回りで矢印S1方向に回動する。従って、作動ロッド78の端部78cが矢印Fd方向に引っ張られ、係合部74が離脱方向(矢印X1方向)に引っ張られて溝73から離脱する。このように係合部74が離脱するとき、連動回転体61およびブレーキ筒体60は回り止め解除されてフリーとなるため、ブレーキ機構6はブレーキ解除形態とされる。この場合、内歯付き筒状部材158(第1インターナルギヤ153および第2インターナルギヤ163)は、ブレーキ筒体60に一体的に連結されているため、回り止め解除されてフリーとなる。
図19において、第1枢支ピン303と第1作動レバー304の枢支側と反対側の端部304cとの距離をLeとし、第1枢支ピン303と中間位置304mとの距離をLfとすると、LeはLfよりも大きい。このため、『てこの作用』が得られ、使用者が操作索状部材308を矢印Fc方向に引っ張って係合部74を離脱させる操作力を低減できる。
ここで、第1作動レバー304が第1枢支ピン303の回りで矢印S1方向に回動するとき、従動子306がカム溝301の溝301fに沿って矢印S2方向に移動し、図19に示すように、カム溝301のラッチ部301aでラッチされて仮保持される(ブレーキ解除形態)。使用者が操作索状部材308を更に矢印Fc方向に引っ張ると、従動子306が更にカム溝301の溝301sに沿って矢印S4方向に移動する。従って、従動子306、第1作動レバー304および第1作動レバー304が元の位置に復帰する。
図18に示す電動シャッター駆動装置2Eはチューブラタイプである。これに対して、前記した実施例4に係る電動シャッター駆動装置2Dは外付けタイプである。本実施例に係るチューブラタイプに係る電動シャッター駆動装置2Eと、図15および図16に示す外付けタイプの電動シャッター駆動装置2Dとの双方において、一部の部品を除いて、大部分の部品(第1遊星ギヤ150、第2遊星ギヤ160、ブレーキ機構6のブレーキ筒60およびスプリング62等)の共通化が図られており、コスト低廉に貢献できる。なお、電動シャッター駆動装置2Dは平ギヤ181を使用している。しかしながら本実施例の電動シャッター駆動装置2Eは、平ギヤ181に代えて、第3遊星ギヤ機構170を採用している。その理由としては、図1に示すように外付けタイプでは、従動輪14aおよび駆動輪15により減速機構が得られることを考慮して、あまり減速比が大きくない平ギヤ181が採用されている。これに対して、チューブラタイプでは、従動輪14aおよび駆動輪15により減速機構が設けられていないため、減速比を高めるべく第3遊星ギヤ機構170が採用されている。
図21は長い筒形の収容室501をもつ被覆カバー500を示す。図21に示すように電動シャッター駆動装置2Eが、制御基板510およびトランス520等と共に被覆カバー500の収容室501に収容されてユニット化されており、部品保護性が向上する。
(他の実施例)
上記した実施例1によれば、ブレーキ機構66は、ブレーキ部材として機能するスプリング62をブレーキ筒体60の内周面60iに摩擦摺動させるが、これに限らず、スプリング62をブレーキ筒体60の外周面に摩擦摺動させることにしても良い。上記した実施例1によれば、回転盤72の溝73に係合している係合部74を引っ張ることにより溝73から抜いて離脱させる方式とされているが、これに限らず、係合部74を押圧させることにより溝73から抜いて離脱させる方式としても良い。上記した実施例1によれば、回転盤72が設けられているが、これに代えて、歯部をもつギヤを回転盤としても良い。
上記した実施例2によれば、出力軸24と回転盤67(太陽ギヤ51C)との間には、減速用の第4遊星ギヤ機構5Dが設けられているが、遊星ギヤ機構に限らず、平ギヤ等の減速ギヤ機構等の減速機構としても良い。上記した実施例1、2によれば、遊星ギヤ機構5、5A、5B、5Cを用いているが、他の減速ギヤ機構を採用することもできる。
上記した実施例1、2は、停電時、故障時、災害時といった非常時においてシャッターを開閉させるのに適するが、これに限らず、侵入者ではない適正な使用者が電動モータ2323を用いることなく、シャッターを手動で開閉させたい場合にも適するものである。その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
本発明は家屋、ビル、工場、車両、船体等の構造物に装備される電動シャッター開閉装置に利用することができる。
実施例1に係り、電動シャッター駆動装置を有する電動シャッター開閉装置を模式的に示す斜視図である。
実施例1に係り、電動シャッター駆動装置の内部構造を示す断面図である。
実施例1に係り、図2のIII-III線に沿った矢視図である。
実施例1に係り、図2のIV-IV線に沿った矢視図である。
実施例1に係り、電動シャッター駆動装置の内部構造を示す断面図である。
実施例1に係り、図5のVI-VI線に沿った矢視図である。
実施例1に係り、図2のVII-VII線に沿った矢視図である。
実施例2に係り、電動シャッター駆動装置の内部構造を示す断面図である。
実施例2に係り、図8のIX-IX線に沿った矢視図である。
実施例2に係り、図8のX-X線に沿った矢視図である。
実施例2に係り、図8のXI-XI線に沿った矢視図である。
実施例2に係り、作動ロッドの先端部に係合部が結合されている状態を示す矢視図である。
実施例2に係り、図8のXIII-XIII線に沿った矢視図である。
実施例3に係り、電動シャッター駆動装置の内部構造を示す断面図である。
実施例4に係り、電動シャッター駆動装置の内部構造を示す断面図である。
実施例4に係り、電動シャッター駆動装置の外観を示す側面図である。
実施例4に係り、電動シャッター駆動装置を被覆カバーの収容室に収容している状態を示す内部構造図である。
実施例5に係り、電動シャッター駆動装置の内部構造を示す断面図である。
実施例5に係り、電動シャッター駆動装置のブレーキ解除機構のブレーキ解除を行う操作部(ブレーキ解除位置)を示す側面図である。
実施例5に係り、電動シャッター駆動装置のブレーキ解除機構のブレーキ解除を行う操作部(ブレーキ位置)を示す側面図である。
実施例5に係り、電動シャッター駆動装置を被覆カバーの収容室に収容している状態を示す内部構造図である。
14は従動軸(シャッター巻取体)、2は電動シャッター駆動装置、20は基体20、23は電動モータ23、24は出力軸(出力部)、3は動力伝達機構、4は減速ギヤ機構、5は遊星ギヤ機構、51は太陽ギヤ、52はインターナルギヤ(動力伝達機構の部品)、53はプラネタリギヤ、54はキャリア、6はブレーキ機構6、60はブレーキ筒体60(ブレーキ機構6の部品)、62はスプリング、64a、64bは突起、67は回転盤(連動回転体)、7はブレーキ解除機構7、71は中間ギヤ、72は回転盤(連動回転体)、73は溝(被係合部)、74は係合部、75は作動レバー、76は付勢バネ、78は作動ロッド(操作部)150は第1遊星ギヤ機構、160第2遊星ギヤ機構、170は第3遊星ギヤ機構、158は内歯付き筒状部材を示す。