JP4851452B2 - ナノフィラーを含む歯科用組成物、および関連方法 - Google Patents

ナノフィラーを含む歯科用組成物、および関連方法 Download PDF

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Description

本発明は、ナノサイズの粒子が充填された硬化性歯科用および歯科矯正用の組成物に関する。より詳細には、本発明は、ナノフィラーを含有するアイオノマーおよび樹脂改質アイオノマー組成物に関する。組成物は、様々な用途で、例えば接着剤、セメント、修復材、コーティング、およびシーラントとして使用することができる。
カリエス、齲蝕象牙質、または齲蝕エナメル質を含めて、齲蝕歯科構造の修復は、歯科用接着剤、次いで歯科材料(例えば、修復材材料)を当該歯科構造に逐次塗布することにより実施することが多い。同様な組成物を、歯科矯正装置を歯科構造に結合する際に使用する(一般に、歯科矯正用接着剤を利用する)。象牙質またはエナメル質への接着剤の結合を促進するために、様々な前処理プロセスが用いられることが多い。通常は、このような前処理ステップには、例えば歯牙構造と上にある接着剤との結合を改善するために、無機酸または有機酸でエッチングを行い、続いて下塗りすることが含まれる。
現在は、様々な歯科用および歯科矯正用の接着剤、セメント、ならびに修復材が利用可能である。最も広く使用されるタイプの歯科材料には、フルオロアルミノケイ酸ガラスフィラー(グラスアイオノマーまたは「GI」組成物としても知られている)を含む組成物がある。これらの組成物には、齲蝕病変の充填および修復;例えば歯冠、インレー、ブリッジ、または歯科矯正バンドの合着;窩洞のライニング;支台築造;ならびに小窩および裂溝の封鎖など、広範囲の用途がある。
現在、グラスアイオノマーには2つの主要クラスがある。通常のグラスアイオノマーとして知られている第1のクラスは一般に、主材料として、α,β−不飽和カルボン酸のホモポリマーまたはコポリマー、フルオロアルミノケイ酸(「FAS」)ガラス、水、および場合によっては酒石酸などのキレート化剤を含有している。これらの通常のグラスアイオノマーは、通常は粉末/液体配合物として供給され、使用する直前に混合する。混合物は、ポリカルボン酸の酸性の繰返し単位と塩基性ガラスから浸出されたカチオンとの酸−塩基イオン反応のため、暗所で自硬化を経る。
グラスアイオノマーの第2の主要クラスは、ハイブリッドグラスアイオノマーまたは樹脂改質グラスアイオノマー(「RMGI」)として知られている。通常のグラスアイオノマーと同様に、RMGIは、FASガラスを使用する。RMGIは、α,β−不飽和カルボン酸のホモポリマーまたはコポリマー、FASガラス、および水も含有している。しかし、RMGIの有機部分が異なる。1つのタイプのRMGIでは、酸性の繰返し単位の一部を懸垂型の硬化性基で置換またはエンドキャップするように、ポリ酸を改質し、光開始剤を添加して、第2のキュア機構を提供する。アクリラート基またはメタクリラート基を、通常は懸垂型の硬化性基として使用する。別のタイプのRMGIでは、組成物は、ポリカルボン酸、アクリラートまたはメタクリラートの官能性モノマーまたはポリマー、および光開始剤を含む。酸性の繰返し単位の一部を懸垂型の硬化性基で置換またはエンドキャップするように、ポリ酸を場合によっては改質することができる。光開始剤系の代わりにまたはそれに加えて、レドックスまたは他の化学キュア系を使用することができる。RMGI組成物は、通常は粉末/液体またはペースト/ペースト系として配合され、混合し塗布する場合には水を含有する。これらは、ポリカルボン酸の酸性の繰返し単位とガラスから浸出されたカチオンとのイオン反応のため、暗所で部分または完全硬化する可能性があり、市販のRMGI製品も、通常はセメントを歯科用キュアリングランプからの光に曝露したときにキュアする。
グラスアイオノマー組成物によって提供される重要な利益が多数ある。例えば、グラスアイオノマーからのフッ化物の放出が、金属酸化物セメント、コンポマーセメント、またはフッ化物添加コンポジットなど他のクラスの歯科用組成物より高い傾向があり、したがってグラスアイオノマーは、改善された抗齲蝕保護を提供すると考えられている。グラスアイオノマー材料の別の利点は、歯牙構造に対するこのようなセメントの非常に良好な臨床的接着であり、したがって保持性の高い修復が提供される。通常のグラスアイオノマーは、外部キュアリング開始モードを必要としないので、一般に積層化を必要とすることなく、深部修復におけるフィラー料としてバルクで配置することができる。
通常のグラスアイオノマーの欠点の1つは、これらの組成物は、手で混合する場合、技法に対する感応性が幾分高いことである。これらは、通常は粉末成分および液体成分から調製され、したがって塗布する前に計量および混合の操作を必要とする。このような操作の正確さは、部分的には操作者の技術および能力に依存する。手で混合する場合、粉末成分および液体成分を通常は、スパチュラを用いて紙上で混合する。混合操作を短時間内で実施しなければならず、材料が所望の特性を完全に発現するためには、熟練を要する技法が必要である(すなわち、セメントの性能は、混合比、ならびに混合の方式および徹底に依存する可能性がある)。あるいは、これらの不都合および技法感応性のいくつかは、適切な比率の粉末成分と液体成分を含む粉末液体カプセル分配装置の利用により改善されている。カプセルは、適切な比率の粉末成分と液体成分を提供しており、2つの成分を組み合わせ、続いて歯科用粉砕機で機械的に混合するカプセル活性化ステップをやはり必要とする。
通常のグラスアイオノマーは、その相対的に低い曲げ強さから明らかなように、かなり脆弱である恐れもある。したがって、通常のグラスアイオノマーで行われる修復は、耐荷重の徴候においてより破壊しやすい傾向がある。さらに、グラスアイオノマーは、特に硬化の初期段階で水と接触する場合、視覚不透明性が高いこと(すなわち、曇り)を特徴とする場合が多く、相対的に不十分な美観をもたらす。
キュアさせたRMGIは、通常は増大された強さ特性(例えば、曲げ強さ)を有し、通常のグラスアイオノマーより機械的破壊が起こりにくく、通常は、充分な歯牙接着のためにプライマーまたはコンディショナーを必要とする。
米国特許第4,652,274号明細書 米国特許第4,642,126号明細書 国際公開第00/38619号パンフレット 国際公開第01/92271号パンフレット 国際公開第01/07444号パンフレット 国際公開第00/42092号パンフレット 米国特許第5,076,844号明細書 米国特許第4,356,296号明細書 欧州特許第0 373 384号明細書 欧州特許第0 201 031号明細書 欧州特許第0 201 778号明細書 米国特許第4,872,936号明細書 米国特許第5,130,347号明細書 米国特許出願第10/729,497号明細書 米国特許第4,259,075号明細書 米国特許第4,499,251号明細書 米国特許第4,537,940号明細書 米国特許第4,539,382号明細書 米国特許第5,530,038号明細書 米国特許第6,458,868号明細書 欧州特許出願公開第712,622号明細書 欧州特許出願公開第1,051,961号明細書 米国特許第5,545,676号明細書 米国特許出願公開第2003/0166737号明細書 米国特許第4,298,738号明細書 米国特許第4,324,744号明細書 米国特許第4,385,109号明細書 米国特許第4,710,523号明細書 米国特許第4,737,593号明細書 米国特許第6,251,963号明細書 欧州特許出願公開第0 173 567 A2号明細書 米国特許第4,772,530号明細書 米国特許第4,954,414号明細書 米国特許第4,874,450号明細書 米国特許第5,055,372号明細書 米国特許第5,057,393号明細書 米国特許出願公開第2003/0166740号明細書 米国特許出願公開第2003/0195273号明細書 米国特許第5,501,727号明細書 米国特許第5,154,762号明細書 米国特許第4,209,434号明細書 欧州特許第323 120 B1号明細書 米国特許出願(代理人整理番号58618US002)明細書 米国特許第6,387,981号明細書 米国特許第6,572,693号明細書 国際公開第01/30305号パンフレット 国際公開第01/30306号パンフレット 国際公開第01/30307号パンフレット 国際公開第03/063804号パンフレット 米国特許出願(代理人整理番号59609US002)明細書 米国特許出願(代理人整理番号59611US002)明細書 米国特許第4,695,251号明細書 米国特許第4,503,169号明細書
本発明は、以前のアイオノマー組成物より改善された特性を有する組成物をもたらす、ナノフィラーを含有する安定なアイオノマー組成物を提供する。一実施形態では、本発明は、ポリ酸;酸反応性フィラー;少なくとも10重量パーセントのナノフィラーまたはナノフィラーの組合せ(それぞれ平均粒径が200ナノメートル以下である);および水を含む硬化性歯科用組成物を特徴とする。別の実施形態では、組成物はさらに、重合性成分を含む。一般に、重合性成分は、場合によっては酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物である。
組成物のポリ酸成分は、通常は複数の酸性繰返し基を有するポリマーを含む。ポリマーは、重合性基を実質的に含まなくてもよく、あるいは複数の重合性基を含んでもよい。
酸反応性フィラーは、一般に金属酸化物、ガラス、金属塩、およびその組合せから選択される。通常は、酸反応性フィラーはFASガラスを含む。本発明の利点の1つは、硬化性組成物を以前のGIおよびRMGI組成物より酸反応性でないフィラーで調製することができることである。したがって、一実施形態では、本発明の組成物は、50重量パーセント未満の酸反応性フィラー、通常はFASガラスを含む。
本発明の別の実施形態では、酸反応性フィラーは、通常はナノ構造である、例えばナノ粒子の形で提供されたオキシフッ化物材料を含む。一般に、酸反応性オキシフッ化物材料は溶融せず、少なくとも1つの3価金属(例えば、アルミニウム、ランタンなど)、酸素、フッ素、および少なくとも1つのアルカリ土類金属(例えば、ストロンチウム、カルシウム、バリウムなど)を含む。オキシフッ化物材料は、金属酸化物粒子(例えば、シリカ)など粒子またはナノ粒子のコーティングの形とすることができる。
酸反応性フィラーに加えて、本発明の組成物は、酸反応性でもよくまたは酸反応性でなくてもよい少なくとも1つのナノフィラーも含む。通常は、ナノフィラーは、シリカ;ジルコニア;チタン、アルミニウム、セリウム、スズ、イットリウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、亜鉛、イッテルビウム、ビスマス、鉄、およびアンチモンの酸化物;およびその組合せから選択されたナノ粒子を含む。ナノフィラーの表面の一部分をシラン処理し、またはその他の方法で化学的に処理して、1つまたは複数の所望の物理的諸特性を提供する場合が多い。
本発明の組成物は、例えば他のフィラー、発熱性フィラー、フッ化物供給源、ホワイトニング剤、抗カリエス剤(例えば、キシリトール)、再石灰化剤(例えば、リン酸カルシウム化合物)、酵素、ブレスフレッシュナー、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫応答調節剤、医薬品、指示剤、染料、顔料、湿潤剤、酒石酸、キレート化剤、界面活性剤、緩衝剤、粘度調整剤、チキソトロープ剤、ポリオール、抗菌剤、抗炎症剤、抗真菌剤、安定剤、口腔乾燥症の治療剤、減感剤、およびその組合せなど1つまたは複数の任意選択的な添加剤も含むことができる。
本発明の組成物は、さらに光開始剤系および/またはレドックスキュア系を含むことができる。
さらに、組成物は、様々な成分が2つ以上の個別の剤に分割された多剤系の形で提供することができる。通常は、組成物は、ペースト−ペースト組成物、ペースト−液体組成物、ペースト−粉末組成物、または粉末−液体組成物などの二剤系である。
上述のように、本発明の特徴の1つは、通常のグラスアイオノマーより酸反応性でないフィラーを使用して、硬化性アイオノマー組成物を提供することである。これにより、二剤型ペースト−ペースト組成物の調製が容易になり、このような系は、例えば粉末−液体系に比べて混合および分配することが容易なので、一般に望ましい。
本発明による組成物は、歯科用修復材、歯科用接着剤、歯科用セメント、キャビティーライナー、歯科矯正用接着剤、歯科用シーラント、および歯科用コーティングを含めて、様々な歯科および歯科矯正の用途において有用である。組成物は、硬化して、例えば歯科用ミルブランク、歯冠、歯科用充填物、義歯、および歯科矯正用装置を形成することによって、歯科用物品を調製するために使用することができる。
本発明のアイオノマー組成物は、一般に良好な美観、低い視覚不透明性(本明細書に記載する視覚不透明性(マクベス値)試験方法によって決定して、硬化時に、一般に約0.50以下)、放射線不透過性、耐久性、優れた艶出性、艶出保持性(本明細書に記載する艶出保持試験方法によって決定して、一般に少なくとも10パーセント)、良好な磨耗特性;機械的強度、例えば曲げ強さ、間接引張強さ、および圧縮強さを含めて良好な物理的諸特性;ならびに歯牙構造への良好な接着強度を示す。さらに、組成物は、プライマー、エッチング液、またはプレコンディショナーを必要とせずに象牙質およびエナメル質の両方への接着を提供することもできる。さらに、本発明は、ペースト−ペースト組成物の配合により可能となる容易な混合および好都合な分配のオプションをもたらす。
本発明の他の特徴および利点は、下記のその詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
定義
「硬化性」は、例えば加熱、化学的架橋、放射線重合または架橋などにより組成物をキュアさせ、または凝固させることができることを意味する。
「フィラー」は、口腔環境で使用するのに適した粒子状材料を意味する。歯科用フィラーは、一般に平均粒径が100マイクロメートル以下である。
「ナノフィラー」は、平均一次粒径が200ナノメートル以下であるフィラーを意味する。ナノフィラー成分は、単一のナノフィラー、またはナノフィラーの組合せとすることができる。通常は、ナノフィラーは、非発熱性ナノ粒子またはナノクラスターを含む。
「ペースト」は、液体中に分散された軟質な粘性の固体塊を意味する。
「酸反応性フィラー」は、酸性成分の存在下で化学的に反応するフィラーを意味する。
「オキシフッ化物」は、酸素およびフッ素の原子が同じ原子(例えば、アルミニウムオキシフッ化物中のアルミニウム)に結合させた材料を意味する。一般に、少なくとも50%のフッ素原子が、オキシフッ化物材料中の酸素原子を有する原子に結合している。
「ナノ構造の」は、平均で200ナノメートル以下(例えば、ナノサイズの粒子)である少なくとも1つの寸法を有する形の材料を意味する。したがって、ナノ構造の材料は、例えば本明細書に下記で定義するようにナノ粒子;ナノ粒子の凝集体;粒子をコートする材料(ただし、コーティングは、平均厚さが200ナノメートル以下である);粒子の凝集体をコートする材料(ただし、コーティングは、平均厚さが200ナノメートル以下である);平均孔径が200ナノメートル以下である多孔質構造に浸潤している材料;およびその組合せを含めて、材料を指す。多孔質構造には、例えば多孔質粒子、多孔質粒子凝集体、多孔質コーティング、およびその組合せが含まれる。
本明細書では、「ナノ粒子」は、「ナノサイズの粒子」と同義で使用し、平均サイズが200ナノメートル以下の粒子を指す。球状の粒子について本明細書では、「サイズ」は、粒子の直径を指す。非球状の粒子について本明細書では、「サイズ」は、粒子の最長の寸法を指す。
「ナノクラスター」は、寄せ集める、すなわち凝集させる比較的弱い分子間力によって引き寄せられるナノ粒子の会合を意味する。通常は、ナノクラスターは、平均サイズが10マイクロメートル以下である。
用語「酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物」は、エチレン性不飽和性、ならびに酸および/または酸前駆体官能基を有するモノマー、オリゴマー、およびポリマーを含むことが意図されている。酸前駆体官能基には、例えば酸無水物、酸ハロゲン化物、およびピロリン酸エステルが含まれる。
「歯科用組成物および歯科用物品」は、歯科矯正用組成物(例えば、歯科矯正用接着剤)、および歯科矯正用装置(例えば、支台装置、ナイトガード、ブラケット、頬面管、バンド、クリート、ボタン、舌側支台装置、バイトオープナー、ポジショナーなどの歯科矯正装置)を含むことが意図されている。
本発明は、ナノフィラー成分(すなわち、1つまたは複数のナノフィラー)を含有する、歯科用(歯科矯正用を含めて)組成物、詳細にはアイオノマー組成物、例えばグラスアイオノマー組成物に関する。これらの硬化性組成物はさらに、ポリ酸、酸反応性フィラー、任意選択的な重合性成分、および水を含む。1つまたは複数のナノフィラーを組成物に組み込むことにより、既知のグラスアイオノマー組成物に比べて、向上された美観(例えば、低い視覚不透明性)および艶出保持を含めて、改善された特性がもたらされる。
重合性成分
前述のように、本発明の硬化性歯科用組成物は、場合によっては重合性成分を含む。重合性成分は、場合によっては、酸官能基の有無にかかわらないエチレン性不飽和化合物とすることができる。
本発明の重合性成分は、硬化性樹脂の一部分とすることができる。これらの樹脂は、例えばアクリラート官能性材料、メタクリラート官能性材料、エポキシ官能性材料、ビニル官能性材料、およびその混合物を含めて、一般に硬化して、ポリマー網目構造を形成することができる熱硬化性材料である。通常は、硬化性樹脂は、1つまたは複数のマトリックス形成オリゴマー、モノマー、ポリマー、またはそのブレンドから作製される。
本願に開示する歯科用組成物が歯科用コンポジットであるいくつかの実施形態では、使用するのに適した重合性材料には、口腔環境での使用に適したものにするのに十分な強さ、加水分解安定性、および非毒性を有する硬化性有機材料が含まれる。このような材料の例としては、アクリラート、メタクリラート、ウレタン、カルバモイルイソシアヌラート、エポキシ、および混合物、ならびにその誘導体が挙げられる。
好ましい硬化性材料の1クラスには、ラジカルとして活性な官能基をもつ重合性成分を有する材料が含まれる。このような材料の例としては、1つまたは複数のエチレン性不飽和基を有するモノマー、1つまたは複数のエチレン性不飽和基を有するオリゴマー、1つまたは複数のエチレン性不飽和基を有するポリマー、およびその組合せが挙げられる。
ラジカルとして活性な官能基を有する硬化性樹脂のクラスでは、本発明に使用するための適切な重合性成分は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含み、付加重合を受けることができる。このようなラジカルとしてのエチレン性不飽和化合物には、例えばメチル(メタ)アクリラート、エチルアクリラート、イソプロピルメタクリラート、n−ヘキシルアクリラート、ステアリルアクリラート、アリルアクリラート、グリセロールトリアクリラート、エチレングリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリラート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリラート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、ソルビトールヘキサアクリラート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリラート、ビス[1−(2−アクリルオキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリラート、およびトリスヒドロキシエチル−イソシアヌラートトリメタクリラートなどのモノ−、ジ−、またはポリ−(メタ)アクリラート(すなわち、アクリラートおよびメタクリラート);(メタ)アクリルアミド、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、およびジアセトン(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド(すなわち、アクリルアミドおよびメタクリルアミド);ウレタン(メタ)アクリラート;ポリエチレングリコールのビス−(メタ)アクリラート(好ましくは、分子量200〜500);(特許文献1)(ボエッチャー(Boettcher)ら)のものなどのアクリル化モノマーの共重合性混合物;(特許文献2)(ザドル(Zador)ら)のものなどのアクリル化オリゴマー;ならびにスチレン、ジアリルフタラート、ジビニルスクシナート、ジビニルアジパート、およびジビニルフタラートなどのビニル化合物が含まれる。他の適切なラジカル重合性化合物には、例えば(特許文献3)(グッゲンベルゲル(Guggenberger)ら)、(特許文献4)(バインマン(Weinmann)ら)、(特許文献5)(グッゲンベルゲル(Guggenberger)ら)、(特許文献6)(グッゲンベルゲル(Guggenberger)ら)に開示されているようなシロキサン官能性(メタ)アクリラート、ならびに例えば(特許文献7)(フォック(Fock)ら)、(特許文献8)(グリフィス(Griffith)ら)、(特許文献9)(バーゲンクネヒト(Wagenknecht)ら)、(特許文献10)(ライナース(Reiners)ら)、および(特許文献11)(ライナース(Reiners)ら)に開示されているようなフルオロポリマー官能性(メタ)アクリラートが含まれる。必要に応じて、2つ以上のラジカル重合性化合物の混合物を使用することができる。
重合性成分は、単一の分子にヒドロキシル基およびラジカルとして活性な官能基を含むこともできる。このような材料の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリラートや2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリラート;グリセロールモノ−またはジ−(メタ)アクリラート;トリメチロールプロパンモノ−またはジ−(メタ)アクリラート;ペンタエリトリトールモノ−、ジ−、およびトリ−(メタ)アクリラート;ソルビトールモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、またはペンタ−(メタ)アクリラート;ならびに2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(ビスGMA)が挙げられる。適切なエチレン性不飽和化合物は、米国ミズーリ州セントルイスのシグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)などの広範囲の商業的供給源からも入手可能である。必要に応じて、エチレン性不飽和化合物の混合物を使用することができる。
酸官能基を有する重合性成分
重合性成分は、存在する場合、酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物を場合によっては含む。好ましくは、酸官能基には、炭素、硫黄、リン、またはホウ素のオキシ酸(すなわち、酸素含有酸)が含まれる。
このような化合物には、例えばグリセロールホスファートモノメタクリラート、グリセロールホスファートジメタクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラートホスファート、クエン酸ジ−またはトリ−メタクリラート、ポリ(メタ)アクリル化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリカルボキシル−ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリクロロリン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリスルホン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリホウ酸などのα,β−不飽和酸性化合物が含まれ、硬化性樹脂系中の成分として使用することができる。
これらの化合物のあるものは、例えばイソシアナトアルキル(メタ)アクリラートとカルボン酸との反応生成物として得られる。酸官能性成分とエチレン性不飽和成分を共に有するこのタイプの追加の化合物は、(特許文献12)(エンゲルブレヒト(Engelbrecht))および(特許文献13)(ミットラ(Mitra))に記載されている。エチレン性不飽和部分と酸部分を共に含む広範囲のこのような化合物を使用することができる。必要に応じて、このような化合物の混合物を使用することができる。
例えば、酸官能基を有する追加のエチレン性不飽和化合物には、例えば(特許文献14)に開示されている重合性ビスホスホン酸;AA:ITA:IEM(例えば、(特許文献13)(ミットラ(Mitra))の実施例11に記載のように、AA:ITAコポリマーと、コポリマーの酸基の一部分を懸垂型メタクリラート基に変換するのに十分な2−イソシアナトエチルメタクリラートとを反応させることによって作製された、懸垂型メタクリラートを有するアクリル酸:イタコン酸のコポリマー);ならびに(特許文献15)(山内(Yamauchi)ら)、(特許文献16)(小村(Omura)ら)、(特許文献17)(小村(Omura)ら)、(特許文献18)(小村(Omura)ら)、(特許文献19)(山本(Yamamoto)ら)、(特許文献20)(岡田(Okada)ら)、(特許文献21)(株式会社トクヤマ(Tokuyama Corp.))、および(特許文献22)(株式会社クラレ(Kuraray Co.,Ltd.))に記載されているものが含まれる。
酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物が存在する場合、本発明の組成物は、フィラーを含まない組成物の全重量に対して典型的には少なくとも1重量%、より典型的には少なくとも3重量%、最も典型的には少なくとも5重量%の酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物を含む。本発明の組成物は、フィラーを含まない組成物の全重量に対して、典型的には50重量%以下、より典型的には40重量%以下、最も典型的には30重量%以下の酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物を含む。
組成物の部分または完全硬化は、酸反応性フィラー/ポリ酸反応(すなわち、酸/塩基反応)により生じることができる。いくつかの実施形態では、組成物は、化学線の照射時に組成物の重合(または硬化)を開始する光開始剤系も含む。このような光重合性組成物は、ラジカル重合性とすることができる。
ラジカル開始反応系
ラジカル重合(例えば、硬化)では、開始反応系は、放射線、熱、またはレドックス/自己キュア化学反応により重合を開始する系から選択することができる。ラジカルとして活性な官能基の重合を開始することができる開始剤のクラスには、光増感剤または促進剤と場合によっては組み合わせてラジカルを発生させる光開始剤が含まれる。このような開始剤は、通常は200〜800nmの波長を有する光エネルギーに曝露させて付加重合するためのラジカルを発生することができる。
ラジカル光重合性組成物を重合させるための適切な光開始剤(すなわち、1つまたは複数の化合物を含む光開始剤系)には、二元および三元系が含まれる。典型的な三元光開始剤は、(特許文献23)(パラゾット(Palazzotto)ら)に記載のように、ヨードニウム塩、光増感剤、および電子供与体化合物を含む。好ましいヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム塩、例えばジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボラート、およびトリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートである。好ましい光増感剤は、約400nm〜520nm(好ましくは、450nm〜500nm)の範囲内の光を吸収するモノケトンおよびジケトンである。より好ましい化合物は、400nm〜520nm(さらにより好ましくは、450〜500nm)の範囲内の光を吸収するαジケトンである。好ましい化合物は、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン、および他の1−アリール−2−アルキル−1,2−エタンジオン、および環状αジケトンである。カンファーキノンが最も好ましい。好ましい電子供与体化合物には、置換アミン、例えばジメチルアミノ安息香酸エチルが含まれる。カチオン重合性樹脂の光重合に有用な他の適切な三元光開始剤系は、例えば(特許文献24)(デデ(Dede)ら)に記載されている。
ラジカル光重合性組成物の重合に適切な他の光開始剤には、通常は380nm〜1200nmの機能波長範囲を有するホスフィンオキシドのクラスが含まれる。380nm〜450nmの機能波長範囲を有する好ましいホスフィンオキシドラジカル開始剤は、(特許文献25)(レヒトケン(Lechtken)ら)、(特許文献26)(レヒトケン(Lechtken)ら)、(特許文献27)(レヒトケン(Lechtken)ら)、(特許文献28)(レヒトケン(Lechtken)ら)、および(特許文献29)(エルリッヒ(Ellrich)ら)、(特許文献30)(ケーラー(Kohler)ら);および(特許文献31)(イン(Ying))に記載のものなどのアシルおよびビスアシルホスフィンオキシドである。
380nmより長く450nmまでの波長範囲でラジカル開始反応できる市販のホスフィンオキシド光開始剤には、例えば米国ニューヨーク州タリータウンのチバスペシャルティケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NY)から商標名イルガキュア(IRGACURE) 819で入手可能なビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド;チバスペシャルティケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から商標名CGI 403で入手可能なビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド;チバスペシャルティケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から商標名イルガキュア(IRGACURE)1700で入手可能なビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの25:75(重量)混合物;チバスペシャルティケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から商標名DAROCUR 4265で入手可能なビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの1:1(重量)混合物;および米国ノースカロライナ州シャーロットのビーエーエスエフ・コープ(BASF Corp.,米国ノースカロライナシャーロット(Charlotte,NC))から商標名ルシリン(LUCIRIN)LR8893Xで入手可能な2,4,6−トリメチルベンジルフェニルホスフィン酸エチルが含まれる。
ホスフィンオキシド開始剤は、光重合性組成物中に、通常は組成物の全重量に対して0.1重量%〜5重量%などの触媒有効量で存在する。
第三級アミン還元剤は、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用することができる。本発明で有用な例示的第三級アミンには、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチルおよびN,N−ジメチルアミノエチルメタクリラートが含まれる。アミン還元剤は存在する場合、光重合性組成物中に、組成物の全重量に対して0.1重量%〜5重量%の量で存在する。他の開始剤の有用な量は、当業者に周知である。
本発明の歯科材料で代替に使用することができる別のラジカル開始剤系には、ホウ酸アニオンと相補カチオン性染料を含めて、イオン性染料−対イオン錯体開始剤のクラスが含まれる。ホウ酸塩光開始剤は、例えば(特許文献32)(ゴットシャーク(Gottschalk)ら)、(特許文献33)(アデアー(Adair)ら)、(特許文献34)(ゴットシャーク(Gottschalk))、(特許文献35)(シャンクリン(Shanklin)ら)、および(特許文献36)(シャンクリン(Shanklin)ら)に記載されている。
本発明の硬化性樹脂としては、重合性成分(例えば、エチレン性不飽和重合性成分)と、酸化剤および還元剤を含むレドックス剤とを含むレドックスキュア系があり得る。本発明で有用である適切な重合性成分およびレドックス剤は、(特許文献37)(ミトラ(Mitra)ら)および(特許文献38)(ミトラ(Mitra)ら)に記載されている。
還元剤および酸化剤は、互いに反応し、またはその他の方法で協働して、樹脂系(例えば、エチレン性不飽和成分)の重合を開始することができるラジカルを生産するはずである。このタイプのキュアは、暗反応であり、すなわち光の存在に依存せず、光のない場合に進行することができる。還元剤および酸化剤は、典型的な歯科条件でその貯蔵および使用が可能になるように十分に長期安定性があり、望ましくない着色を生じないことが好ましい。これらは、重合性モノマーの他の成分に容易に溶解する(かつ、その成分からの分離を阻止する)ことが可能になるように十分に樹脂系と混和性(好ましくは、水溶性)であるべきである。
有用な還元剤には、例えば(特許文献39)(ワン(Wang)ら)に記載のようなアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、および金属錯体型アスコルビン酸化合物;4−tert−ブチルジメチルアニリンなどのアミン、特に第三級アミン;p−トルエンスルフィン酸塩、およびベンゼンスルフィン酸塩などの芳香族スルフィン酸塩;1−エチル−2−チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1−ジブチルチオ尿素、および1,3−ジブチルチオ尿素などのチオ尿素;ならびにその混合物が含まれる。他の第2の還元剤には、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に依存する)、亜ジチオン酸アニオン塩または亜硫酸アニオン塩、およびその組合せが含まれ得る。好ましくは、還元剤はアミンである。
適切な酸化剤も、当業者によく知られており、例えば過硫酸、ならびにナトリウム、カリウム、アンモニウム、セシウム、およびアルキルアンモニウム塩などのその塩が挙げられる。追加の酸化剤には、例えば過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、およびアミルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド、および塩化コバルト(III)や塩化第二鉄などの遷移金属の塩、硫酸セリウム(IV)、過ホウ酸およびその塩、過マンガン酸およびその塩、過リン酸およびその塩、ならびにその組合せが含まれる。
1つより多い酸化剤または1つより多い還元剤を使用することが望ましい場合がある。少量の遷移金属化合物を添加して、レドックスキュアの速度を加速するためにすることもできる。いくつかの実施形態では、例えば(特許文献38)(ミトラ(Mitra)ら)に記載のように、硬化性組成物の安定性を向上させる第2のイオン性塩を含むことが好ましいかもしれない。
還元剤および酸化剤は、適切なラジカル反応速度を可能にするのに十分な量で存在する。これは、フィラーを除いて硬化性組成物のすべての材料を組み合わせ、硬化した塊が得られるか否かを観察することによって評価することができる。
好ましくは、還元剤は、硬化性組成物の成分の全重量(水を含む)に対して少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.10重量%の量で存在する。好ましくは、還元剤は、重合性モノマーの成分の全重量(水を含む)に対して10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で存在する。
好ましくは、酸化剤は、重合性モノマーの成分の全重量(水を含む)に対して少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.10重量%の量で存在する。好ましくは、酸化剤は、硬化性組成物の成分の全重量(水を含む)に対して10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で存在する。
還元剤または酸化剤は、例えば(特許文献40)(ミトラ(Mitra)ら)に記載するように、マイクロカプセル化することができる。これにより、一般に重合性モノマーの長期安定性が向上され、必要なら還元剤と酸化剤を一緒に包装することが可能になる。例えば、カプセル化材の適切な選択により、酸化剤および還元剤を酸官能性成分および任意選択的なフィラーと組み合わせ、貯蔵安定な状態に維持することができる。同様に、非水溶性カプセル化材の適切な選択により、還元剤および酸化剤を、FASガラスおよび水と組み合わせ、貯蔵安定な状態に維持することができる。
別の代替形態では、熱を使用して、ラジカルとして活性な基の硬化または重合を開始することができる。本発明の歯科材料に適した熱源の例としては、誘導式、対流式、および放射式が挙げられる。熱源は、通常条件下または高圧で少なくとも40℃かつ150℃以下の温度を発生することができなければならない。この手順は、口腔環境の外部で生じる材料の重合を開始するのに好ましい。
硬化性樹脂中においてラジカルとして活性な官能基の重合を開始することができる開始剤のさらに別の代替クラスは、ラジカル生成熱開始剤を含むものである。例としては、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイルおよび過酸化ラウリル)およびアゾ化合物(例えば、2,2−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN))が挙げられる。
光開始剤化合物は、本願に開示する歯科用組成物において、樹脂系のキュアもしくは硬化を開始させ、またはその速度を向上させるのに有効な量で提供されることが好ましい。有用な光重合性組成物は、上記に記載するような成分を安全光条件下で混合するだけで調製される。この混合物を調製する場合、必要に応じて、適切な不活性溶媒を使用することができる。感知できるほどには本発明の組成物の成分と反応しない溶媒はどれも使用することができる。適切な溶媒の例としては、例えばアセトン、ジクロロメタン、およびアセトニトリルが挙げられる。
ポリ酸
本発明の組成物には、少なくとも1つのポリ酸が含まれ、非硬化性もしくは非重合性のポリ酸、または硬化性もしくは重合性のポリ酸(例えば、樹脂改質ポリ酸)とすることができる。通常は、ポリ酸は、複数の酸性の繰返し単位および複数の重合性基を有するポリマーである。代替実施例では、ポリ酸は、重合性基を実質的に含まない場合がある。ポリ酸は、完全に水溶性である必要はないが、他の水性成分と組み合わせた場合に実質的な沈降を起こさないように少なくとも十分に水混和性であるべきである。適切なポリ酸は、(特許文献41)(ウィルソン(Wilson)ら)、第2欄62行から第3欄6行に記載されている。ポリ酸は、良好な貯蔵、取扱い、および混合特性を提供するのに十分な分子量を有するべきである。典型的な重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用してポリスチレン標準物質に比べて評価して、5,000〜100,000である。
一実施形態では、ポリ酸は、硬化性または重合性の樹脂である。すなわち、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を含む。適切なエチレン性不飽和ポリ酸は、(特許文献12)(エンゲルブレヒト(Engelbrecht))の例えば第3欄および第4欄、ならびに(特許文献42)(ミトラ(Mitra))の例えば3頁55行から5頁8行に記載されている。通常は、酸性基およびエチレン性不飽和基の数を、歯科用組成物において特性の適切な平衡がもたらされるように調整する。10%〜70%の酸性基をエチレン性不飽和基で置換させたポリ酸が好ましい。
他の実施形態では、ポリ酸は、例えば酸反応性フィラーおよび水の存在下で硬化性であるが、エチレン性不飽和基を含まない。すなわち、不飽和酸のオリゴマーまたはポリマーである。通常は、不飽和酸は、炭素、硫黄、リン、またはホウ素のオキシ酸(すなわち、酸素含有酸)である。より典型的には、炭素のオキシ酸である。このようなポリ酸には、例えば不飽和のモノ−、ジ−、またはトリカルボン酸のホモポリマーおよびコポリマーなどのポリアルケン酸が含まれる。ポリアルケン酸は、不飽和脂肪族カルボン酸、例えばアクリル酸、2−クロロアクリル酸、3−クロロアクリル酸、2−ブロモアクリル酸、3−ブロモアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、グルタコン酸、アコニット酸、シトラコン酸、メサコン酸、フマル酸、およびチグリン酸の単独重合および共重合により調製することができる。不飽和脂肪族カルボン酸で共重合することができる適切なモノマーには、例えばアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルクロリド、アリルクロリド、酢酸ビニル、および2−ヒドロキシエチルメタクリラートなどの不飽和脂肪族化合物が含まれる。必要に応じて、ターポリマーおよびより高級なポリマーを使用することができる。アクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーが特に好ましい。ポリアルケン酸は、非重合モノマーを実質的に含むべきでない。
ポリ酸の量は、酸反応性フィラーと反応し、かつ望ましい硬貨特性を有するアイオノマー組成物を提供するのに十分な程度とすべきである。ポリ酸は、フィラーを含まない組成物の全重量に対して通常は少なくとも1重量%、より典型的には少なくとも3重量%、最も典型的には少なくとも5重量%である。ポリ酸は、フィラーを含まない組成物の全重量に対して通常は90重量%以下、より典型的には60重量%以下、最も典型的には30重量%以下である。
酸反応性フィラー
適切な酸反応性フィラーには、金属酸化物、ガラス、および金属塩が含まれる。典型的な金属酸化物には、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、および酸化亜鉛が含まれる。典型的なガラスには、ホウ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、およびフルオロアルミノケイ酸(「FAS」)ガラスが含まれる。FASガラスが特に好ましい。FASガラスは、通常は十分な溶離可能カチオンを含み、したがってガラスを硬化性組成物の成分と混合すると硬化した歯科用組成物が形成する。ガラスは、通常は十分な溶離可能フッ化物イオンも含み、したがって硬化した組成物が齲蝕特性を有する。ガラスは、FASガラス製造技術分野の当業者によく知られている技法を使用して、フッ化物、アルミナ、および他のガラス形成材料を含む溶融物から作製することができる。FASガラスは、通常は十分に微細化された粒子の形であり、したがって他のセメント成分と都合よく混合することができ、得られた混合物を口中で使用するとうまく機能する。
一般には、FASガラスの平均粒径(通常は、直径)は、例えば沈降分析装置を使用して測定して、約12マイクロメートル以下、通常は10マイクロメートル以下、より典型的には5マイクロメートル以下である。適切なFASガラスは、当業者によく知られており、広範囲の商業的供給源から入手可能であり、多くは、商標名ビトレマー(VITREMER)、ビトリボンド(VITREBOND)、リライエックスルーティングセメント(RELY X LUTING CEMENT)、リライエックスルーティングプラスセメント(RELY X LUTING PLUS CEMENT)、フォタックフィルクイック(PHOTAC−FIL QUICK)、ケタックモラー(KETAC−MOLAR)、およびケタックフィルプラス(KETAC−FIL PLUS)(スリーエムエスペ・デンタルプロダクツ、米国ミネソタ州セントポール(3M ESPE Dental Products,St.Paul,MN))、フジ(FUJI)II LCおよびフジ(FUJI)IX(ジーシーデンタルインダストリアルコープ、日本 東京(G−C Dental Industrial Corp.,Tokyo,Japan))、ならびにケムフィルスペリオル(CHEMFIL Superior)(デンツプライインターショナル、米国ペンシルベニア州ヨーク(Dentsply International,York,PA))の市販のものなど、現在入手可能なグラスアイオノマーセメントに見られる。必要に応じて、フィラーの混合物を使用することができる。
FASガラスを、場合によっては表面処理にかけることができる。適切な表面処理には、酸洗浄(例えば、リン酸での処理)、ホスファートでの処理、酒石酸などのキレート化剤での処理、およびシランまたは酸性もしくは塩基性シラノール溶液での処理が含まれるが、これらに限定されない。望ましくは、処理用溶液または処理ガラスのpHを中性または中性付近に調整する。これによって、硬化性組成物の貯蔵安定性を向上することができるからである。
別の実施形態では、酸反応性フィラーは、非溶融オキシフッ化物材料を含む。オキシフッ化物材料は、3価金属、酸素、フッ素、およびアルカリ土類金属を含むことができる。好ましくは、3価金属はアルミニウム、ランタン、またはその組合せである。より好ましくは、3価金属はアルミニウムである。好ましくは、アルカリ土類金属は、ストロンチウム、カルシウム、バリウム、またはその組合せである。本発明のいくつかの実施形態では、オキシフッ化物材料は、ケイ素および/または重金属(例えば、ジルコニウム、ランタン、ニオブ、イットリウム、またはタンタル)、あるいはさらに具体的にはその酸化物、フッ化物、および/またはオキシフッ化物をさらに含むことができる。
本発明のいくつかの実施形態では、オキシフッ化物材料の少なくとも一部分はナノ構造である。このようなナノ構造の材料には、例えばナノ粒子、粒子のコーティング、粒子の凝集体のコーティング、多孔質構造中の浸潤、およびその組合せの形のオキシフッ化物材料が含まれる。好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%のオキシフッ化物材料がナノ構造である。
適切なオキシフッ化物材料および歯科用組成物におけるその使用の説明は、2004年5月17日出願の「酸反応性歯科用フィラー、組成物、および方法(Acid−Reactive Dental Fillers,Compositions,and Methods)」という名称の(特許文献43)に記載されている。
酸反応性フィラーの量は、硬化前の望ましい混合および取扱い特性ならびに硬化後の良好な物理的および光学的諸特性を有するアイオノマー組成物をもたらすのに十分な程度とすべきである。一般に、反応性フィラーは、組成物の全重量の約85%未満である。酸反応性フィラーは、組成物の全重量に対して通常は少なくとも10重量%、より典型的には少なくとも20重量%である。酸反応性フィラーは、組成物の全重量に対して通常は75重量%以下、より典型的には50重量%以下である。
ナノフィラー
本発明の組成物は、酸反応性でもよくまたは酸反応性でなくてもよい1つまたは複数のナノフィラーを含有する。このようなナノフィラーは、通常は200ナノメートル以下、より典型的には100ナノメートル以下の平均粒径を有する。このようなナノフィラーは、通常は少なくとも2ナノメートル、より典型的には少なくとも5ナノメートルの平均粒径を有する。通常は、ナノフィラーは、シリカ;ジルコニア;チタン、アルミニウム、セリウム、スズ、イットリウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、亜鉛、イッテルビウム、ビスマス、鉄、およびアンチモンの酸化物;ならびにその組合せから選択されたナノ粒子を含む。より典型的には、ナノフィラーは、シリカ;ジルコニア;チタンの酸化物;およびその組合せから選択されたナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、ナノフィラーは、ナノクラスター、通常は少なくとも80重量パーセントのナノクラスターの形である。より典型的には、ナノクラスターには、シリカクラスター、シリカ−ジルコニアクラスター、およびその組合せが含まれる。他の実施形態では、ナノフィラーは、ナノ粒子とナノクラスターの組合せの形である。ナノフィラーの表面の一部分をシラン処理し、またはその他の方法で化学的に処理して、1つまたは複数の所望の物理的諸特性を提供する場合が多い。
適切なナノフィラーは、(特許文献44)(チャン(Zhang)ら)および(特許文献45)(ウ(Wu)ら)、ならびに(特許文献46)(チャン(Zhang)ら)、(特許文献47)(ウィンディッシュ(Windisch)ら)、(特許文献48)(チャン(Zhang)ら)、および(特許文献49)(ウ(Wu)ら)に開示されている。これらの参考文献に記載のフィラー成分には、ナノサイズのシリカ粒子、ナノサイズの金属酸化物粒子、およびその組合せが含まれる。ナノフィラーは、共に2004年5月17日に出願された「ナノジルコニアフィラーを含有する歯科用組成物(Dental Compositions Containing Nanozirconia Fillers)」という名称の(特許文献50)、および「歯科用組成物の屈折率を調整するためのナノ粒子の使用(Use of Nanoparticles to Adjust Refractive Index of Dental Compositions)」という名称の(特許文献51)にも記載されている。
通常は、本発明のナノフィラーは非発熱性フィラーであるが、発熱性フィラーを任意選択的な添加剤として歯科用組成物に添加することができる。
少なくとも部分的にナノ構造である、上記に記載する酸反応性非溶融オキシフッ化物材料を、本発明においてナノフィラーとして使用することができる。
ナノフィラーの量は、硬化前の望ましい混合および取扱い特性ならびに硬化後の良好な物理的および光学的諸特性を有するアイオノマー組成物をもたらすのに十分な程度とすべきである。ナノフィラーは、組成物の全重量に対して通常は少なくとも0.1重量%、より典型的には少なくとも10重量%、最も典型的には少なくとも20重量%である。ナノフィラーは、組成物の全重量に対して通常は80重量%以下、より典型的には70重量%以下、最も典型的には60重量%以下である。
他のフィラー
酸反応性フィラーおよびナノフィラー成分に加えて、本発明の組成物は、場合によっては1つまたは複数の他のフィラーも含むことができる。このようなフィラーは、歯科用および/または歯科矯正用の組成物での使用に適した広範囲の材料の1つまたは複数から選択することができる。
他のフィラーは、無機材料とすることができる。組成物の樹脂成分に不溶である架橋有機材料とすることもでき、かつ無機フィラーで場合によっては充填されている。フィラーは、いずれにしても非毒性であり、かつ口中での使用に適しているべきである。フィラーは、放射線不透過性または放射線透過性とすることができる。フィラーは、通常は水に実質的に不溶である。
適切な無機フィラーの例は、天然または合成の材料であり、石英;窒化物(例えば、窒化ケイ素);例えばZr、Sr、Ce、Sb、Sn、Ba、Zn、およびAlに由来するガラス;長石;ホウケイ酸ガラス;カオリン;タルク;チタニア;(特許文献52)(ランドクレブ(Randklev))に記載のものなどの低モース硬さフィラー;およびシリカ粒子(例えば、ドイツ ハーナウのデグザ(Degussa AG,Hanau,Germany)から「OX 50」、「130」、「150」、および「200」シリカを含めて商標名エアロシル(AEROSIL)で、ならびに米国イリノイ州タスコラのキャボット・コープ(Cabot Corp.,Tuscola,IL)から商標名キャボシル(CAB−O−SIL)M5シリカで入手可能なものなどのサブミクロンの発熱性シリカ)が含まれるが、これらに限定されない。適切な有機フィラー粒子の例としては、フィラーを含むまたはフィラーを含まない微粉砕ポリカーボナート、ポリエポキシドなどが挙げられる。
酸反応性でない適切なフィラー粒子は、石英、サブミクロンシリカ、および(特許文献53)(ランドクレブ(Randklev))に記載のタイプの非ガラス質微粒子である。これらの酸反応性でないフィラーの混合物も、有機および無機の材料から作製された組合せフィラーと同様に考えられる。
フィラー粒子の表面は、フィラーと樹脂の結合を強めるためにカップリング剤で処理することもできる。適切なカップリング剤の使用には、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが含まれる。有用なシランカップリング剤の例は、米国コネティカット州ノーガタックのクロンプトン・コーポレーション(Crompton Corporation,Naugatuck,CT)からシルクエスト(SILQUEST)A−174およびシルクエスト(SILQUEST)A−1230として入手可能なものである。
他のフィラーを含む本発明のいくつかの実施形態(例えば、歯科用修復材組成物)では、組成物は、組成物の全重量に対して少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、最も好ましくは少なくとも5重量%の他のフィラーを含むことができる。このような実施形態では、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、最も好ましくは15重量%以下の他のフィラーを含む。

本発明の組成物は水を含有する。水は、蒸留水、脱イオン水、または淡水の水道水とすることができる。通常は、脱イオン水を使用する。
水の量は、適切な取扱いおよび混合特性をもたらし、かつ具体的にはフィラー−酸反応においてイオンの輸送を可能にするのに十分な程度とすべきである。好ましくは、水は、組成物を形成するために使用する材料の全重量の少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも5重量%である。好ましくは、水は、組成物を形成するために使用する材料の全重量の90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
任意選択的な添加剤
場合によっては、硬化性組成物は、他の溶媒、共溶媒(例えば、アルコール)、または希釈剤を含有することができる。必要に応じて、本発明の硬化性組成物は、指示剤、染料、顔料、阻害剤、促進剤、粘度調整剤、湿潤剤、酒石酸、キレート化剤、界面活性剤、緩衝剤、安定剤、および当業者に自明である他の同様な材料などの添加剤を含有することができる。さらに、医薬品または他の治療物質を、歯科用組成物に場合によっては添加することができる。例としては、歯科用組成物でしばしば使用されるタイプのフッ化物供給源、ホワイトニング剤、抗カリエス剤(例えば、キシリトール)、再石灰化剤(例えば、リン酸カルシウム化合物)、酵素、ブレスフレッシュナー、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫応答調節剤、チキソトロープ剤、ポリオール、抗炎症剤、抗菌剤、抗真菌剤、口内乾燥症の治療剤、減感剤などが挙げられるが、これらに限定されない。上記の添加剤のいずれの組合せでも使用することができる。いずれか1つのこのような添加剤の選択および量は、過度の実験なしに所望の結果が実現されるように当業者によって選択される。
組成物の調製および使用
本発明の硬化性歯科用組成物は、通常の混合技法を使用して様々な成分をすべて組み合わせることによって調製することができる。上述のように、酸反応性フィラーとポリ酸のイオン反応により、組成物を部分または完全硬化させることができる。場合によっては、組成物は、重合性成分および光開始剤を含有し、光開始反応により硬化することができ、あるいは組成物が例えば酸化剤および還元剤を含めてラジカル開始剤系を含むレドックスキュア系などの化学重合により部分または完全硬化することができる。あるいは、硬化性組成物は、様々な開始剤系を含有することができ、したがって組成物を、光重合性組成物と化学重合性組成物、ならびにイオン性硬化性組成物となり得る。
本発明の硬化性組成物は、1剤系および多剤系、例えば二剤型の粉末/液体、ペースト/液体、ペースト/粉末、およびペースト/ペースト系を含めて様々な形で供給することができる。それぞれが粉末、液体、ゲル、またはペーストの形である多剤の組合せ(すなわち、2つ以上の剤の組合せ)を使用する他の形も可能である。組成物の様々な成分は、どんな方式が望まれていても別々の剤に分けることができる。しかし、ポリ酸、酸反応性フィラー、および水はいずれか2つを他の成分のいずれかの組合せと共に同じ剤にまとめることができるが、これらは、一般にすべて同じ剤に存在しているとは限らない。さらに、レドックス多剤系では、1つの剤は、通常は酸化剤を含有し、別の剤は、通常は還元剤を含有する。しかし、還元剤および酸化剤は、例えばマイクロカプセル化の使用により成分を分離させておく場合、系の同じ剤で組み合わせることができる。
一実施形態では、本発明の組成物を二剤型のペースト−ペースト系として提供する。第1剤であるペーストAは、通常は水、還元剤、光キュア触媒、FASガラス、酸反応性でないナノフィラー、および放射線遮断性ナノフィラーを含有する。反応性ナノフィラー、ナノクラスターフィラー、および相溶性のある反応性希釈剤などの任意選択的な材料、ならびに樹脂を、ペーストAに添加することができる。第2剤であるペーストBは、通常は少数の懸垂型メタクリラート基を有するように改変されたポリカルボン酸を含む(例えば、(特許文献12)および(特許文献13)を参照のこと)。ペーストBは、酸性モノマー成分、非反応性ナノフィラー、および/またはナノクラスターフィラー、酸化剤、および光キュア触媒も含有することができる。ペーストAおよびペーストBのための任意選択的な材料には、多官能性メタクリラート樹脂添加剤、安定剤、および着色剤が含まれる。ペーストAおよびペーストB中の材料のこの組合せにより、一般に象牙質およびエナメル質へのプライマーレス接着、x線診断用の放射線不透過性、および改善された美観を有する安定なRMGI組成物が提供される。このような組成物は、好都合なワンステップの簡単な混合直接修復方法による歯牙修復のバルク充填のために特に有用である。
いくつかの実施形態では、本発明の二剤型歯科用組成物は、剤Aが第1のバレルに存在し、かつ剤Bが第2のバレルに存在する第1のバレルおよび第2のバレルを有するデュアルバレルシリンジで提供することができる。他の実施形態では、本発明の二剤型歯科用組成物は、単位投与用のカプセル剤で提供することができる。いくつかの実施形態では、多剤型の歯科用系の各剤は、スタティックミキサーを使用して一緒に混合することができる。
硬化性組成物の成分をキットに含めることができる。この組成物の内容物は、成分が必要とされるまでその貯蔵を可能にするように包装されている。
硬化性組成物の成分は、歯科用組成物として使用する場合、通常の技法を使用して混合し臨床的に適用することができる。キュアリングランプは、一般に光重合性組成物の開始に必要である。組成物は、象牙質および/またはエナメル質に非常によく接着するコンポジットまたは修復材の形とすることができる。場合によっては、硬化性組成物が使用された歯牙組織上にプライマー層を使用することができる。例えば、FASガラスまたは他のふフッ化物放出性材料を含有する組成物は、非常に良好な長期フッ化物放出性を提供することもできる。本発明のいくつかの実施形態は、光または他の外部硬化エネルギーの適用なしにバルクでキュアすることができ、前処理を必要とせず、改善された曲げ強さを含めて改善された物理的諸特性を有し、抗齲蝕硬化用の高いフッ化物放出性を有するグラスアイオノマーのセメントまたは接着剤を提供することができる。
本発明の硬化性歯科用組成物は、広範囲の歯科材料の形で使用するのに特によく適合されている。これらは、通常はフィラーを含む(好ましくは、約25重量%のフィラーから約60重量%までのフィラーを含有する)組成物である歯科補綴用セメントで使用することができる。これらは、修復材で使用することもでき、通常はフィラーを含む(好ましくは、約10重量%超のフィラーから約85重量%までのフィラーを含有する)組成物であるコンポジットを含み、フィラー料などの歯牙に隣接して被着させた後重合される。これらは、歯牙に隣接して被着させる前に最終使用(例えば、歯冠、ブリッジ、被覆、インレー、オンレーなどとして)向けに造形かつ硬化される歯科補綴物で使用することもできる。このような予備成形された物品は、歯科医または他の使用者によってカスタムフィットさせた形状に研磨するまたはその他の方法で形成することができる。硬化性歯科用組成物は広範囲の材料のいずれかとすることができるが、好ましくは、組成物は、表面前処理材料(例えば、エッチング液、プライマー、結合剤)ではない。むしろ、好ましくは、硬化性歯科用組成物は、修復材(例えば、コンポジット、フィラー料、または歯科用補綴物)、セメント、シーラント、コーティング、または歯科矯正用接着剤である。
下記の実施例は、本発明の特徴および利点をさらに説明するが、決してそれを限定するためのものではない。これらの実施例で記載する特定の材料およびその量、ならびに他の条件および詳細は、不当に本発明を限定するものと解釈すべきでない。別段の示唆のない限り、部および百分率はすべて、重量により、水はすべて、脱イオン水であり、分子量はすべて、重量平均分子量である。
試験方法
粒径決定試験方法
粒径分析器による平均粒径:コールター(Coulter)LS 230粒径分析器(コールターコーポレーション、米国フロリダ州ハイアリーア(Coulter Corporation,Hialeah,FL))を使用して、粒径(クラスターサイズを含めて)分布(体積パーセントに基づいて)を決定した。分析器は、偏光強度示差走査(PIDS)ソフトウェアを装備した。300mgのフィラー試料を、フィラーをすべて湿潤させるのに十分なMICRO−90界面活性剤(コールパーマー、米国ニューヨーク州バーノンヒルズ(Cole−Parmer,Vernon Hills,NY))の入っているガラス製バイアルに添加した。カルゴン溶液(0.20gのフッ化ナトリウム、4.00gのピロリン酸ナトリウム、40.00 gのヘキサメタリン酸ナトリウム、8.00gのMICRO−90界面活性剤、および3948mlの脱イオン水を完全に混合することによって作製)の30mlを添加し、得られた混合物を15分間振盪し、プローブソニケーター(ヒートシステムズ−ウルトラソニックス、モデルW−225ソニケーター、米国ニューヨーク州ファーミンデール(Heat Systems−Ultrasonics,Farmingdale,NY))で出力制御ノブ設定を9にして6分間音波処理した。コールター(Coulter)LS 230粒子特性評価ソフトウェア、バージョン3.01を使用して、粒子分析を実施した。試験条件は、ランレングス(Run Length)90秒、ウェイトレングス(Wait Length)0秒であり、PIDSの読みが45%〜55%になるまで試験試料を試料オリフィス中に滴下した。1試料に付き3組のデータを平均して、平均粒径を得た。
TEM(透過型電子顕微鏡)による平均粒径:厚さ約80nmの試料を、炭素で安定化されたホルムバール基材の200メッシュの銅グリッド(ストラクチャー・プローブ・インクの1つのディビジョンであるSPIサプライズ、米国ペンシルベニア州ウェストチェスター(SPI Supplies,a division of Structure Probe,Inc.,West Chester,PA))上に配置した。JEOL 200CX装置(JEOL,Ltd.、日本 昭島(Akishima,Japan)およびJEOL USA,Inc.販売)を200Kvで使用して、透過電子顕微鏡写真(TEM)を撮った。約50〜100個の粒子の集団の大きさを測定し、平均粒径を決定した。
象牙質への接着試験方法
象牙質接着(DA):象牙質の前処理を使用せず、20秒の光キュア露光時間を使用した点以外は(特許文献40)(ミトラ(Mitra)ら)に記載の手順に従って、象牙質接着を測定した。さらに、試料を湿度チャンバ中、37℃および相対湿度90%で20分間状態調節し、次いで脱イオン水中、37℃で24時間貯蔵した。
エナメル質への接着試験方法
エナメル質接着(EA):象牙質接着について上記に記載するのと同じキュア時間および状態調節シーケンスを用いた点以外は(特許文献40)(ミトラ(Mitra)ら)に記載の手順に従って、エナメル質接着を測定した。
圧縮強さ(CS)試験方法
まず、ペースト−ペースト混合試験試料を内径4mmのガラス管に注入することによって、圧縮強さを評価した。ガラス管の両端をシリコーン栓で塞いだ。充填した管を、0.275メガパスカル(MPa)圧力に5分間かけ、XL 1500キュアリングランプ(3M社(3M Company))で60秒間照射し、クルツアーユニックス(KULZER UniXS)(クルツアーインク、ドイツ(Kulzer,Inc.,Germany))ライトボックスに90秒間配置した。このようなキュアした試料5個を8mmの長さに切断し、37℃の水に1日配置した。ISO規格7489に従って、1ミリメートル/分(mm/分)のクロスヘッド速度で操作したインストロン(INSTRON)万能試験機(インストロンコープ、米国マサチューセッツ州カントン(Instron Corp.,Canton,MA))を使用して、圧縮強さを決定した。結果は、5回の反復実験の平均として報告した。
間接引張強さ(DTS)試験方法
試料を2mmの長さに切断したということを使用した点以外は上記のCS手順を使用して、間接引張強さを測定した。結果は、7回の反復実験の平均として報告した。
フッ化物放出性(FR)試験方法
ペースト−ペースト混合試験試料を調製し、直径20mm×高さ1mmの円柱状型に配置し、2枚のプラスチックシートで蓋をして、C字形クランプを使用して中圧で締め付けることによって、フッ化物放出性をin vitro評価した。試料をXL 1500キュアリングランプ(3M社(3M Company))で各側面から60秒間光キュアし、次いで湿度チャンバ中に、37℃および相対湿度90%で1時間貯蔵した。試料をチャンバから取り出し、各試料を、37℃のオーブン中、25mlの脱イオン水を含む試験体バイアルに別々に様々な時間にわたって浸した。それぞれ測定間隔をおいて、試験体バイアルをオーブンから取り出し、試験体バイアルから10mlの水を量り取り、10mlのTISAB II全イオン強度調整緩衝液(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))と組み合わせた。得られた溶液を撹拌し、フッ化物イオン選択性電極を使用して測定して、適用測定時間の試験試料1グラム当たり浸出したフッ化物の累積量(マイクログラム)を、3個の試料の平均を使用して決定した。試験体バイアルに新しい脱イオン水を補充し、次の測定時間までオーブンに戻した。
視覚不透明性(マクベス値)試験方法
円盤形状の(厚さ1mm×直径15mm)ペースト試料を、VISILUX(ビジラックス)2キュアリングランプ(3M Co.、米国ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN))からの照明に、6mmの距離をおいて円盤の各側面で60秒間露光することによってキュアした。硬化した試料について、マクベス(MacBeth)(マクベス、米国ニューヨーク州ニューバーグ(MacBeth,Newburgh,NY))から入手可能な、可視光フィルターを装備したマクベス(MacBeth)透過濃度計モデルTD−903を使用して、円盤の厚さを通り抜ける光の透過率を測定することによって、直接光透過率を測定した。マクベス値が低いほど、視覚不透明性が低く透光性が高い材料であることを示唆している。報告された値は、3個の測定値の平均である。
放射線不透過性試験方法
円盤形状の(厚さ1mm×直径15mm)ペースト試験試料を、VISILUX(ビジラックス)2(3M社(3M Company))キュアリングランプからの照明に、6mmの距離をおいて円盤の各側面で60秒間露光することによってキュアした。次いで、キュアした試料について、放射線不透過性を以下の通り評価した。
放射線不透過性評価では、使用手順は、ISO試験手順4049(1988)に従った。具体的には、キュアしたコンポジット試料を、ジェンデックス(Gendex)GX−770歯科用X線(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI))装置を使用して、7ミリアンペアおよび70kVのピーク電圧で、約400ミリメートルの距離をおいて放射線に0.73秒間曝露した。曝露中、アルミニウム段階楔を、X線フィルム上のキュアした円盤の隣に配置した。エアテクニークスのペリープロ(Air Techniques Peri−Pro)自動フィルム処理機(米国ニューヨーク州ヒックスビル(Hicksville,NY))を使用して、X線ネガを現像した。マクベス(Macbeth)濃度計を使用して、アルミニウム段階楔の光学密度との比較により試料円盤の光学密度を決定した。光学密度(すなわち、放射線不透過性)の報告した値は、3個の測定値の平均である。
艶出保持試験方法
硬化した試料の艶出保持を下記の方法により測定した。長方形の形状のペースト−ペースト混合試料(長さ20mm×幅9mm×厚さ3mm)をVISILUX(ビジラックス)2装置(3M社(3M Company))で60秒間キュアした。直ちに、光キュアした試料を、湿度チャンバ中に、37℃および90%の相対湿度で1時間配置した。次いで、試料を、オーブン中、脱イオン水に37℃で24時間配置した。試料を、両面接着テープ(スコッチブランドテープ、コアシリーズ2−1300、米国ミネソタ州セントポール(Scotch Brand Tape,Core series 2−1300,St.Paul,MN))でホルダーに搭載し、表1に示すように逐次的に実施される下記の一連のステップに従って艶出しを行った。オートメット2研磨ヘッド(AUTOMET 2 Polishing Head)を有するビューラーのエコメット4研磨機(Buehler ECOMET 4 Polisher)を、時計回りで使用した。
Figure 0004851452
マイクロ−トリ−グロス装置(ビックガードナー、米国メリーランド州コロンビア(BYK Gardner,Columbia,MD))を使用して、艶出し後および歯磨き後の試料表面からの鏡面的反射光の光電測定値を収集した。鏡面光沢度に関するASTM D 523−89(1994年再承認)規格試験方法に記載の手順は、60°幾何形状で行われる測定では、下記の修正形態を伴って行われた。初期の試料について、艶出し後の初期光沢度(GI)を測定した(60°幾何形状での艶出し後の初期光沢値は、通常は80〜86であった)。2000サイクルの歯磨き後の最終光沢度(GF)を測定した。長方形の試料上の無作為に選択された領域について、初期および最終の光沢度を測定した。クレストレギュラーフレイバー(CREST Regular Flavor)(プロクター&ギャンブル、米国オハイオ州シンシナティ(Proctor & Gamble,Cincinnati,OH))練り歯磨きを使用して、オーラル(ORAL)B 40ミディアムストレート歯ブラシ(オーラルBラボラトリーズ、米国カリフォルニア州ベルモント(Oral B Laboratories,Belmont,CA))で、合計2000サイクル、各試料にブラシをかけた。一名のオペレーターは、試料のすべてに歯磨きの力程度の力を使用してブラシをかけた。各試料を同じ歯ブラシでブラシをかけた。1回の歯磨きサイクルは、フォワードストロークおよびバックストロークであった。パーセント艶出保持を、(GF)×100/(GI)として報告し、3回の反復実験を平均したものであった。
3体磨耗試験方法
ダビッドソン磨耗試験機(Davidson Wear Tester)モデル2 (ACTA、オランダ アムステルダム(Amsterdam))装置を使用したin−vitro3体磨耗試験により、キュアしたペースト−ペースト試験試料の磨耗速度を決定した。ダビッドソン磨耗試験機(ダビッドソン磨耗試験機(Davidson Wear Tester))を、磨耗痕がホイール面に垂直になるように較正した。未キュアのペースト−ペースト混合試料(第1体を構成する)を、ダビッドソン磨耗試験機(Davidson Wear Tester)の直径47.75mmの磨耗ホイール上の10mm×4mmのスロットにロードした。試料を、VISILUX(ビジラックス)2キュアリングランプ(3M社(3M Company))を使用して60秒間キュアした。キュアした試料を搭載して、磨耗ホイールの直径を測定すると、50.80〜53.34mmであった。カーター・ダイアモンド・ツールカーター・ダイアモンド・ツール(Carter Diamond Tool)装置(S−2192 SYN、カーター・ダイアモンド・ツール・コープ、米国オハイオ州ウィロビー(Carter Diamond Tool Corp.,Willoughby,Ohio))を900rpm回転で使用して、磨耗ホイール上のキュアした試料を滑らかに機械加工した。機械加工中、ホイール上に多量の水を注ぎ、ダストを制御し、熱を散逸させた。機械加工中、磨耗ホイールをできる限り湿潤に維持した。
第1体の磨耗ホイールの最終直径は、48.26mm±0.254〜0.381mmであった。試験中、第1体を、拮抗咬頭として働く別のホイール(第2体を構成する)と接触させた。接触中、2つのホイールを、150グラムの粉砕しフィルターにかけた粒餌(ワイルドバードミックス(Wild Bird Mix)、グライフ・ブラザーズ・コーポレーション、米国ミネソタ州ローズマウント(Greif Bros. Corporation,Rosemount,MN))、25グラムのポリ(メチルメタクリラート)(クイックマウント・パウダー・イングリージエント(QuickMOUNT Powder Ingredient)、フルトン・メタラジカル・プロダクツ・コープ、米国ペンシルベニア州バレンシア(Fulton Metallurgical Products Corp.,Valencia,PA))、および275mlの水を有するスラリー(第3体を構成する)に浸した。2つのホイールを互いに反対方向に166,000サイクル回転させた。これらのサイクル中、パーソメーターPRKプロフィルメーター(Perthometer PRK profilometer)(ファインプリューフ・コープ、米国ノースカロライナ州シャーロット(Feinpruef Corp.,Charlotte,NC))により、キュアし機械加工したコンポジットの10mmの面に沿って、寸法損失を39,000サイクル毎に測定した。ウェア・バージョン(Wear Version)3ソフトウェア(ACTA、オランダ アムステルダム(Amsterdam))でデータを収集した。線形回帰を使用してデータを表し、直線の勾配を計算することによって、試料の磨耗速度を決定した。各試料の磨耗速度を単位長さ/サイクル数(例えば、mm/サイクル)の変化として報告し、次いで標準材料の磨耗速度に規格化した。標準材料は、Z250コンポジット(3M社(3M Company))であるように選択された。したがって、報告した磨耗抵抗(3回の反復実験の平均)は、無次元値である。
Figure 0004851452
Figure 0004851452
Figure 0004851452
出発材料調製
調製例1A:
シラン処理したナノジルコニア
ジルコニアゾル(800.0g;184gのジルコニア)およびMEEAA(72.08g)を1リットルの丸底フラスコに加えた。水および酸をロータリーエバポレーションで除去して、さらに強制空気オーブン中(90℃)で乾燥した粉末(291.36g)が、乾燥した粉末(282.49g)をもたらすことができた。脱イオン(DI)水(501.0g)を添加し、粉末を再分散した。得られた分散液を2リットルのビーカーに加え、続いて撹拌しながら、1−メトキシ−2−プロパノール(783g;シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))、シルクエスト(SILQUEST)A−174(83.7g)、およびシルクエスト(SILQUEST)A−1230(56.3g)を添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌し、次いで2個のクオートジャーに分け入れ、シールした。ジャーを90℃に4.0時間加熱し、内容物をロータリーエバポレーションで濃縮して、液体濃縮物(621g)を得た。
脱イオン水(2400g)および濃アンモニア/水(80.0g;29%のNH3)を4リットルのビーカーに加え、続いて、約5分間かけて液体濃縮物を添加して、白色沈殿物を得た。沈殿物を真空濾過で回収し、脱イオン水で洗浄した。得られた湿ったケーキを1−メトキシ−2−プロパノール(661g)に分散して、15.33重量%のジルコニアを含有する分散液を得た。シラン処理したジルコニアフィラーを調製例1A(フィラーI)と称した。
上記の分散液(1183g)を、樹脂A[HEMA(24.06g)およびPEGDMA−400(39.59g)]と組み合わせ、水およびアルコールをロータリーエバポレーションで除去して、80重量%のシラン処理したナノジルコニアフィラーを含有する透光性ペーストを得た。
調製例1B
シラン処理したナノジルコニア
ジルコニア粉末(50g)を、ネジ蓋付きのクオートジャーに加えた。脱イオン(DI)水(67.2g)および1−メトキシ−2−プロパノール(99.5g)を添加し、粉末を分散した。得られた分散液に、撹拌しながら、シルクエスト(SILQUEST)A−174(10.23g)およびシルクエスト(SILQUEST)A−1230(6.87g)を添加した。得られた混合物を室温で10分間撹拌し、次いでクオートジャーをシールした。ジャーを90℃に4.0時間加熱した。
脱イオン水(652g)および濃アンモニア/水(21.9g;29%のNH3)を、2リットルビーカーに加え、続いて約5分間かけて液体分散液を添加して、白色沈殿物を得た。沈殿物を真空濾過で回収し、脱イオン水で洗浄した。得られた湿ったケーキをトレーに配置し、90℃に4.0時間加熱した。得られた乾燥濾過ケーキを粉砕して、乾燥ナノジルコニア粉末を得、フィラーKと称した。この粉末を、本明細書に記載する様々な組成物の液体材料成分中に直接分散することができた。
調製例2
ペーストA組成物
表2Aおよび2Bに列挙する材料(重量部で示す)を組み合わせることによって、9個の第1のペースト組成物(文字Aを用いてA1〜A9と称される)を調製した。フィラーI(ナノジルコニア)を、組成物に樹脂A(HEMAおよびPEGDMA−400;調製例1Aを参照のこと)中80%のナノジルコニアからなるペーストとして添加し、乾燥重量ベースで表に報告する。樹脂A成分は、表中のHEMAおよびPEGDMA−400成分の一部分として含まれている。
Figure 0004851452
Figure 0004851452
調製例3:
ペーストB組成物
表3Aおよび3Bに列挙する材料(重量部で示す)を組み合わせることによって、9個の第2のペースト組成物(文字Bを用いてB1〜B9と称される)を調製した。
Figure 0004851452
Figure 0004851452
実施例1〜9および比較例1〜2
ペーストA−ペーストB組成物
第1のペーストを等体積の第2のペーストと25秒間スパチュラで混練することによって、硬化性組成物(実施例1〜9および比較例1〜2)を調製した。利用するペーストの相対重量部および組成物中の成分の重量部を表4Aおよび4Bに示す。
硬化性組成物について、本明細書に記載する試験方法に従って、圧縮強さ(DS)、間接引張強さ(DTS)、象牙質接着(DA)、エナメル質接着(EA)、視覚不透明性、放射線不透過性、フッ化物放出性、艶出保持性、および3体磨耗性を評価した。結果を表5Aおよび5Bに報告する。
Figure 0004851452
Figure 0004851452
Figure 0004851452
Figure 0004851452
表5Bの結果から、組成物中のナノフィラーのレベルが増大するにつれて、圧縮強さおよび艶出保持が改善することが示唆される。ナノフィラーのレベルが高いと、硬化したペースト−ペースト組成物の透光性(視覚不透明性)も改善する(例えば、実施例8および9)。
比較例3
ビトゥレマー(VITREMER)グラスアイオノマー修復材
市販の粉末−液体ビトゥレマー(VITREMER)樹脂改質グラスアイオノマー修復材製品(3M社(3M Company))を、製造者の指示書に従って計量分配し、手で混合し、得られた材料について、本明細書に記載する試験方法に従って圧縮強さ(DS)、間接引張強さ(DTS)、象牙質接着(DA)、エナメル質接着(EA)、視覚不透明性、放射線不透過性、フッ化物放出性、艶出保持性、および3体磨耗性を評価した。結果を表6に報告する。
Figure 0004851452

Claims (6)

  1. 硬化性歯科用組成物であって、
    (a)ポリ酸;
    (b)酸反応性フィラー;
    (c)少なくとも10重量パーセントの、平均粒径200ナノメートル以下のナノフィラーまたはその組合せ;および
    (d)水を含む組成物。
  2. さらに重合性成分を含む、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記酸反応性フィラーが、フルオロアルミノケイ酸(FAS)ガラスを含む、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 多剤型硬化性歯科用組成物であって、
    (a)ポリ酸を含む第1剤;
    (b)酸反応性フィラーを含む第2剤;
    (c)少なくとも1つのナノフィラーが前記第1剤、前記第2剤、または両方の剤に存在する、少なくとも10重量パーセントの、平均粒径200ナノメートル以下のナノフィラーまたはその組合せ;および
    (d)前記第1剤、前記第2剤、または両方の剤に存在する水を含む組成物。
  5. 歯科用物品を調製する方法であって、
    (a)請求項1に記載の歯科用組成物を提供するステップと、
    (b)前記歯科用組成物を硬化して、前記歯科用物品を形成するステップとを含む方法。
  6. 前記歯科用物品が、歯科用ミルブランク、歯冠、歯科用充填物、義歯、および歯科矯正用装置からなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
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