JP4848370B2 - 編地の編成方法および編み製品 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、よこ編みの編地を、厚みを持たせて編成する編地の編成方法および編み製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、よこ編みでは、ニットの編目で編成する平編みが基本的な編地として編成されている。平編みは、天竺編みとも呼ばれる。平形の横編機などでは、対向する針床を備えており、対向する針床の編針を使用して、ゴム編みまたはリブ編みと呼ばれる編地を編成可能である。ゴム編みを応用すると、インターロックまたはミラノリブなどの組織で、平編みよりも厚みのある編地編成することができる。ゴム編みの基本は、コース方向の編目毎に対向する針床の編針を交互に使用して編成され、ウエール方向の溝と筋とが交互に形成される。インターロックは、基本的な2枚のゴム編みを、相対的にコース方向にずらして、一方の溝のラインを他方の筋のラインでお互いに埋め合う構造とするので、表面が滑らかとなる。インターロックは、スムース、またはダブルリブなどとも呼ばれている。ミラノリブは、基本的なゴム編みのコースに続いて、対向する針床の双方でそれぞれ平編みのコースを編成する2コース編成の編地である。
平編みの組織でも、たとえば、ニットとタックとを組合わせた鹿の子編みで、厚みのある編地を編成することができる。本件出願人は、平編みとトランスファーニットとを組合わせる厚手の伸縮性の少ないしっかりした編地を開示している(たとえば、特公平7−37699号公報参照)。
人体に着用する編み製品は、たとえば上半身、下半身、手足などの着用部位に対応する形状の筒状の編地として編成すれば、縫製を基本的に不要とすることができる。筒状の編地は、平形の横編機でも、対向する針床でそれぞれ平編みを行えば編成可能である。しかしながら、編地の少なくとも一部に厚みを持たせようとして、ゴム編みの組織を編成使用とすると、制約を受ける。通常の平形の横編機では、前後に対向する2枚の針床を有しているので、ゴム編み組織を含む筒状の編地を編成するためには、たとえば筒状編地の前側と後側とに、各針床の編針の奇数番目と偶数番目とをそれぞれ割り当てる針抜き編成を行うことになる。針抜き編成では、実際のゲージ数よりも粗い風合いの編地となる。
横編機には、針床の数を増加し、たとえば前後に2枚ずつ、合計4枚とする4枚ベッド機も実現されており、このような横編機であれば、ゴム編み組織を含む筒状の編地も容易に編成することができる。ただし、4枚ベッド機は、機械的な構造が複雑であり、機械が限定されてしまう。
鹿の子編みでは、厚みの面でゴム編み組織によるものに劣る。ただし、ゴム編み組織によると、針抜き編成を行う場合でも、4枚ベッド機を使用する場合でも、編成の途中で目移しを必要とするので、編成工程は複雑となり、手間がかかる。特公平7−37699号公報の編地も、目移しを必要とするので、同様である。
発明の開示
[0003]
本発明の目的は、編成の途中での目移しが不要で、厚みがあり、伸びの少ない編地をも容易に編成することができる編地の編成方法および編み製品を提供することである。
本発明は、よこ編みの編地を、厚みを持たせて編成する方法であって、
予め定める第1の順序でニット、タックおよびミスの3種の編目の各1つずつが順に並ぶ編目の並びを、コース方向に繰り返しながら、
予め定める第2の順序でニット、タックおよびミスの3種の編目の1つずつが順に並ぶ編目の並びを、ウエール方向に繰り返すようにして1つの編目を、ニットループ、タックループ、およびミスの渡り糸の組合わせで形成された編地を編成することを特徴とする編地の編成方法である。
また本発明で、前記第2の順序は、ニット、タックおよびミスの順で並ぶことを特徴とする。
また本発明で、前記第2の順序は、ニット、ミスおよびタックの順で並ぶことを特徴とする。
また本発明は、よこ編みの編地の一部を、前記3種の編目の繰り返しで編成することを特徴とする。
さらに本発明は、前述のいずれか1つに記載の編地の編成方法によって編成されていることを特徴とする編み製品である。
【図面の簡単な説明】
[0004]
本発明の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
図1は、本発明の実施の一形態としての編地の編成方法を実行する場合の編針の選針状態を示す図である。
図2は、図1のような編針の選針状態で編成される編地1の組織を模式的に示す図である。
図3は、本発明の実施の他の形態としての編地の編成方法を実行する場合の編針の選針状態を示す図である。
図4は、図2のような編針の選針状態で編成される編地11の組織を模式的に示す図である。
図5は、図1および図3の実施形態で編成される編地1,11を、他の編成方法で編成される編地と比較して示す図表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下図面を参考にして本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の一形態としての編地の編成方法を実行する場合の編針の選針状態の例を示す。図の横方向をコース方向とし、縦方向をウエール方向として示す。ウエール方向については、図の下方から上方に向かって順次コースを編成する。また、「○」印はニットに選針する編針を示し、「V」印はタックに選針する編針を示し、「−」印はミスに選針する編針を示す。1番目のコースでは、図の右方には「○」「V」「−」の順序で、3種類の選針を繰り返す。1番目のコースで「○」の編針は、2番目のコースでは「V」となり、3番目のコースでは「−」となるので、編成される3種の編目の繰り返し順序が、コース方向とウエール方向とで同一となる。ただし、コース方向およびウエール方向では、同一の選針が隣接しては行われず、必ず異なる選針が行われる。なお、本発明は、横編機において編地を編成するために好適に用いられる。横編機は、前後1対の針床と、複数の編針と、キャリッジとを含む。前後1対の針床は、その先端を突合わせて、たとえば逆V字状に配置される。各針床にはその長手方向に複数の編針が並設される。キャリッジは、各針床上にその長手方向に往復動するように設けられる。
図2は、図1のような編針の選針状態で編成される編地1の組織を模式的に示す。編地1の1つの編目は、ニット2のループ、タック3のループ、およびミス4の渡り糸の組合わせで形成される。編地1の1コースの編目列は、3本の編糸5,6,7を使用する合計3回のコース編成で形成される。
各編糸5,6,7にも、ニット2のループ、タック3のループおよびミス4の渡り糸が繰り返して形成される。ただし、タック3のループとミス4の渡り糸とは、それぞれ2つの形状が存在する。すなわち、タック3では、形成されるウエール方向の位置が異なるタック3aとタック3bとが存在する。ミス4では、渡り糸の形状が異なるミス4aとミス4bとが存在する。編糸5では、ニット2のループ、タック3aのループ、ミス4aの渡り糸が繰り返して形成される。編糸6,7では、ニット2のループ、タック3bのループ、ミス4bの渡り糸が、それぞれ繰り返して形成される。ここで、タック3aのニードルループは、同一のコースで隣接するニット2のシンカループ側に形成されるのに対し、タック3bのニードルループは、同一のコースで隣接するニット2のニードルループ側に形成される。また、ミス4aの渡り糸は、タック3aのシンカループに続いて同一のコースで隣接するニット2のシンカループに連なるのに対し、ミス4bの渡り糸は、タック3bのシンカループとニット2のシンカループとの間に渡るように、斜めに形成される。
図3は、本発明の実施の他の形態としての編地の編成方法を実行する場合の編針の選針状態の例を、図1と同様に示す。ただし、1番目のコースでは、図の右方に「○」「V」「−」の順で並ぶのに対し、1番目のコースで「○」の編針は、2番目のコースでは「−」となり、3番目のコースでは「V」となるので、編成される3種の編目の繰り返し順序が、コース方向とウエール方向とで異なる点が図1と相違する。
図4は、図2のような編針の選針状態で編成される編地11の組織を模式的に示す。編地11の1つの編目は、ニット2のループ、タック3のループおよびミス4の渡り糸の組合わせで形成される。このうち、たとえば編糸5,7によって形成されるループおよび渡り糸の組合せは、図2と同様である。ただし、図2の編糸6に相当する編糸16は、編糸5と同様なループおよび渡り糸の組合せを形成する。したがって、3本の編糸5,7,16によって形成される編地11には、1コース当たり、タック3aおよびミス4aが2つ、タック3bおよびミス4bが1つの割合で形成される。
図5は、図1および図3の実施形態で編成される編地1,11を、他の編成方法で編成される編地と比較して示す。なお、比較例は、ニットとミスとを組合わせる編地を示す。この編地は、ニット1つに対してミス2つの割合で選針し、本実施形態の編地1,11と同様に、3つの編成コースで1コース分の編地を編成するので、目移しなく、厚みのある編地を編成することができる。ただし、ミスのループが多いので、ループの安定性は悪くなる。天竺は、全部の編目をニットで編成する基本的な組織を示し、生地の厚さの基準とする。比較する編地は、同ゲージの横編機で同一の編糸を使用して編成している。
図1および図3の実施形態では、ニット2、タック3およびミス4の3種の編目を、コース方向に予め定める第1の順序で繰り返して編成しながら、ウエール方向にも、ニット2、タック3およびミス4の該3種の編目を、予め定める第2の順序で繰り返すように編成する。編成される編地1,11の1コース分の各編目には、それぞれニット2およびタック3のループとミス4の渡り糸とが形成され、厚みのあるしっかりした編地1,11を形成することができる。生地の厚みは、天竺編みの1.5倍以上であり、ゴム編みと同様の厚みを得ることができる。コース方向である横方向の伸びは、約1.5倍であり、天竺編みの約3倍に比較して半分程度となる。ウエール方向である縦方向の伸びは約1.7〜1.8倍であり、天竺編みと同等である。編地1,11を編成する各コースでは、ニット2、タック3およびミス4の3種の編目を繰り返して編成すればよいので、編成の途中での目移しが不要となり、厚みがあり、横方向の伸びの少ない編地1,11を容易に編成することができる。
図1の実施形態では、図2に示すように、ニット2、タック3およびミス4の繰り返し順序が各ウエール方向の編目列に形成される。図5で、生地厚さ1.8として示すように、編地1の厚さを容易に増大させることができる。図3の実施形態では、図4に示すように、ニット2、ミス4およびタック3の繰り返し順序が各ウエール方向の編目列に形成される。この編地11は、図5に示すように、天竺編みに比較して縦(ウエール方向)に短くなる程度を、図1の実施形態に比較して少なくすることができる。生地厚さは、1.5となり、図1の実施形態の1.8に比較して少し小さくなる。
図2と図4とを比較すると、形成される各編目では、ニット2のループとタック3a,3bのループとが2重にノックオーバされていることが判る。これによって、天竺編みに比較し、厚みと横幅とが大きくなる。図2では、斜めに走るミス4bの渡り糸が図4に比較して多い。これによって、上下方向に引き合うため、図2では図4よりも縦に短く、厚みも大きくなる。
図1および図3の実施形態による編地1,11は、ニットウエアなどのパーツとして形成し、縫製してニットウエアなどの編み製品を形成することができるけれども、前後に針床を有する横編機で、筒状編地として周回編成し、無縫製でニットウエアなどの編み製品とすることもできる。特に、目移しを行わないでも同ゲージのゴム組織と同等の厚みがあり、ニットでありながらコース方向の伸びが抑制された、安定性のある編地を得ることができるので、ファインゲージの手袋などの編み製品に、好適に適用することができる。後からコーティングを施す用途にも好適に適用することができる。さらに、安全性を重視する耐切削用の手袋などでは、アラミド繊維などの強度の高い糸を編み込む場合がある。このような高強度の糸を使用してゴム編み組織を編成することは困難であるけれども、実施形態では、そのような高強度の編糸を使用して、厚みがあり伸びが小さい編地を編成することができる。
また、よこ編みの編地の一部に、ニット2、タック3およびミス4を繰り返して編成する編地1,11を形成し、部分的な厚みを持たせて、補強などを行うことができる。セータ、スーツ、またはスカートなどのニットウエアで、衿、前立て、ウエスト部、ベルト部など、伸びが不要な箇所を厚くすることができる。
以上で説明している編地1,11は、ある程度の厚みと収縮性とを有するので、着用する人体の部位などを保護するサポート性も良好に得られる。したがって、靴下や、手袋、肘、膝等のサポータにも適用可能である。この編地1,11は、多少厚みのある質感と、適度な伸縮性を有するのが特徴である。また、編地1,11が安定しており、しわになりにくい。
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本発明の範囲は特許請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。
産業上の利用可能性
[0006]
本発明によれば、厚みを持ったよこ編みの編地について、ニット、タックおよびミスの3種の編目を各1つずつ用いられる編目の並びをコース方向とウエール方向とにそれぞれ繰り返すように編成して、厚みのあるしっかりした編地を形成することができる。編地を編成する各コースでは、ニット、タックおよびミスの3種の編目を繰り返して編成すればよいので、編成の途中での目移しが不要となり、厚みがあり、伸びの少ない編地を容易に編成することができる。
また本発明によれば、編地の厚さを容易に増大させることができる。
また本発明によれば、編地のウエール方向への短縮の程度を小さくすることができる。
また本発明によれば、よこ編みの編地の一部に、ニット、タックおよびミスの3種の編目を各1つずつ用いられる編目の並びを繰り返して部分的な厚みを持たせて、補強などを行うことができる。
さらに本発明によれば、よこ編みによって編成する編み製品の全部または一部に厚みを持たせることができる。たとえば、手袋や靴下などを、全体的に厚くしたり、セータなどのニットウエアで、衿、前立て、ウエスト部など、伸びが不要な箇所を厚くすることができる。
Claims (5)
- よこ編みの編地を、厚みを持たせて編成する方法であって、
予め定める第1の順序でニット、タックおよびミスの3種の編目の各1つずつが順に並ぶ編目の並びを、コース方向に繰り返しながら、
予め定める第2の順序でニット、タックおよびミスの3種の編目の各1つずつが順に並ぶ編目の並びを、ウエール方向に繰り返すようにして1つの編目を、ニットループ、タックループ、およびミスの渡り糸の組合わせで形成された編地を編成することを特徴とする編地の編成方法。 - 前記第2の順序は、ニット、タックおよびミスの順で並ぶことを特徴とする請求項1記載の編地の編成方法。
- 前記第2の順序は、ニット、ミスおよびタックの順で並ぶことを特徴とする請求項1記載の編地の編成方法。
- よこ編みの編地の一部を、前記3種の編目の繰り返しで編成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の編地の編成方法。
- 請求項1〜4のいずれか1つに記載の編地の編成方法によって編成されていることを特徴とする編み製品。
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