JP4847648B2 - アクリル酸亜鉛組成物およびその製造方法ならびに当該組成物を用いてなるゴルフボール - Google Patents
アクリル酸亜鉛組成物およびその製造方法ならびに当該組成物を用いてなるゴルフボール Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、改良されたアクリル酸亜鉛組成物およびその製造方法に関するものである。特に、本発明は、アクリル酸亜鉛をゴム組成物や合成樹脂に配合・混練りする際に生じる諸問題を改善するためのアクリル酸亜鉛組成物に関するものである。
【0002】
また、本発明の改良されたアクリル酸亜鉛組成物を構成要素として含むゴルフボールに関するものである。
【0003】
【従来の技術】
アクリル酸亜鉛は、架橋剤として有用な化合物であり、例えば、ゴム組成物に配合して加硫性を改善したり、合成樹脂の改質剤として用いられている。
【0004】
従来、アクリル酸亜鉛を得る方法としては、有機溶媒中で、アクリル酸と亜鉛化合物を反応させ、反応液から有機溶媒を留去させた後乾燥する方法(特公昭58−14416号公報)、または該反応液から有機溶媒を濾過後乾燥する方法がよく知られている。しかしながら、これらの方法では、反応生成物が反応器の内壁や攪拌翼に著しく固着したり、または塊状に凝集するため、作業性の悪化、収率の低下、およびこうした作業の繰り返しによる当該装置の破損等の問題が生じていた。また、溶媒を減圧により除去する場合、生成したアクリル酸亜鉛中に含まれる溶媒が飛散するが、この時同時に該アクリル酸亜鉛の一部も飛散してしまうため、収率が低下したり、または余分の分離回収装置等の設置が必要になるなど経済的な損失も大きいという欠点があった。
【0005】
上記課題を解決する方法として、アクリル酸亜鉛をゴム組成物に混練りして使用する場合においては、ステアリン酸等の高級脂肪酸やその亜鉛塩を添加してアクリル酸亜鉛粒子の表面をコーティングする方法が多く提案されている(特開昭52−154436号公報、特開昭53−83834号公報、特開昭60−94434号公報、特開平2−218639号公報)。
【0006】
しかしながら、これらの方法では、アクリル酸と亜鉛化合物の反応工程に加えて、得られたアクリル酸亜鉛にステアリン酸等の高級脂肪酸やその亜鉛塩を添加してアクリル酸亜鉛粒子の表面をコーティングする工程が必要であり、こうした工程に応じた装置がそれぞれ必要となるものであった。さらに、こうして生成したアクリル酸亜鉛を実際にゴム組成物に混練りするに際しては、43μm(325メッシュ)以下の微粉末が要求される。これに対して、上記方法により生成されたアクリル酸亜鉛はより大きな粒径を有しているため、微粉末に粉砕される必要があるが、微粉末に粉砕するには、多大な労力を要するばかりでなく、粉砕作業中および粉砕作業後のアクリル酸亜鉛は、非常に飛散・発塵し易く、作業環境が悪化して衛生上の問題が発生するという欠点があった。さらにまた、微粉末状のアクリル酸亜鉛は、ゴム組成物と混練りする際に混練り機の内壁や撹拌翼に固着したりまたは塊状に凝集するため作業性が悪化したりする上、該微粉末の分散が不均一となり易いため、でき上がった製品が不均質となって品質の低下をきたす等の欠点を有していた。
【0007】
このような問題を考慮して、本質的に微細で、容易に微粉末に粉砕でき、ゴム組成物と混練りしても固着や凝集の発生が極めて少ない状態で均一に分散・混練りできるアクリル酸亜鉛の製造方法が特開平9−202747号公報で提案された。この方法は、アニオン界面活性剤の存在下に、有機溶媒中に酸化亜鉛を分散させながら、該有機溶媒中でアクリル酸および炭素数12〜30の高級脂肪酸を該酸化亜鉛と反応させることにより、改良されたアクリル酸亜鉛を製造するものである。しかしながら、上記公報の実施例1〜4及び比較例1で製造されるアクリル酸亜鉛は、いずれも500μm以上の粒子が全粒子の20質量%を超えて存在しており、そのままではゴム中で凝集塊を生じずにスムーズに混練りできず、また、良好に分散しないという欠点があった。
【0008】
したがって、ゴム組成物中にスムーズに混練りできかつ良好な分散性を有するアクリル酸亜鉛は、現在までに得られていなかった。
【0009】
また、特開平11−9720号公報で提案されているように、ゴルフボールのゴム組成物の構成要素として用いられる場合も、良好な練り作業性、分散性を有するには未だ不充分であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、本質的に微細であり、ゴム組成物と混練りしても固着や凝集の発生が極めて少ない状態で均一に分散・混練りできるアクリル酸亜鉛を含むアクリル酸亜鉛組成物を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、飛散しにくく、粉体として取り扱い易いアクリル酸亜鉛を含むアクリル酸亜鉛組成物を提供することにある。
【0012】
さらに、本発明のさらなる目的は、上記したようなアクリル酸亜鉛組成物を簡単な操作で効率的に製造できる方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明のアクリル酸亜鉛組成物を共架橋剤として配合することにより、作業性に優れ、ゴム組成物中に均一に分散・混合できると共に、混練機への付着が無く、共架橋剤の働きを有効に活用でき、したがってボール硬度のばらつきが少なく、反発性および耐久性が良好なゴルフボールを提供することをも目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、アクリル酸亜鉛組成物に関して鋭意検討した結果、(i)乾式法による粒子径が300μm以上のアクリル酸亜鉛粒子の占める割合が全粒子の20質量%以下である;(ii)乾式法による粒子径の中央値が10〜300μmである;および(iii)湿式法による粒子径の中央値(B)に対する乾式法による粒子径の中央値(A)の比が2を超える(A/B>2)という、特定の条件を満たしたアクリル酸亜鉛及びアニオン界面活性剤を含有してなるアクリル酸亜鉛組成物を用いると、ゴム組成物と混練りされても固着や凝集の発生が極めて少なくかつゴム組成物中に均一に分散・混練りできることを知得した。
【0015】
本発明者らはまた、酸化亜鉛を、アニオン界面活性剤の存在下で、有機溶媒中に分散させながら、アクリル酸と反応させることにより得られたアクリル酸亜鉛粒子を、特にスィングハンマークラッシャー法を用いて粉砕し、粉砕されたアクリル酸亜鉛粒子を目開きが0.2mm以上のスクリーンを通して分級することによって、上記特定の条件を満たしたアクリル酸亜鉛が容易にかつ効率良く得られることをも見出した。
【0016】
また、本発明のアクリル酸亜鉛組成物を共架橋剤として配合することにより、混練機への付着が減少し、混練時の作業性に優れると共に、ボール硬度のばらつきが少なく、反発性および耐久性が良好なゴルフボールが得られることをも見出した。
【0017】
上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、上記目的は、下記(1)〜(7)により達成される。
【0019】
(1) 乾式法による粒子径が300μm以上であるアクリル酸亜鉛粒子の占める比率が全粒子の20質量%以下であり、乾式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値が10〜300μmであり、かつ湿式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値(B)に対する乾式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値(A)の比が2を超えるアクリル酸亜鉛及びアニオン界面活性剤を含有してなるアクリル酸亜鉛組成物。
【0020】
(2) 上記乾式法による粒子径が300μm以上であるアクリル酸亜鉛粒子の占める比率は全粒子の15質量%以下である、前記(1)に記載のアクリル酸亜鉛組成物。
【0021】
(3) 上記乾式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値は20〜200μmである、前記(1)または(2)に記載のアクリル酸亜鉛組成物。
【0022】
(4) 上記湿式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値(B)に対する乾式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値(A)の比は2を超えかつ20以下である、前記(1)から(3)のいずれか一に記載のアクリル酸亜鉛組成物。
【0023】
(5) 酸化亜鉛を、アニオン界面活性剤の存在下で、有機溶媒中に分散させながら、アクリル酸と反応させることにより、アクリル酸亜鉛粒子を得、上記アクリル酸亜鉛粒子を粉砕し、粉砕されたアクリル酸亜鉛粒子を目開きが0.2mm以上のスクリーンを通して分級することからなる前記(1)から(4)のいずれか一に記載のアクリル酸亜鉛組成物の製造方法。
【0024】
(6) 上記粉砕はスィングハンマークラッシャーを用いて行なわれる、前記(5)に記載の方法。
【0025】
(7) 該スクリーンの目開きが0.2〜10mmである、前記(5)または(6)に記載の方法。
【0026】
(8) シス形構造を40%以上含む1,4−ポリブタジエンゴムを主材とする基材ゴム100質量部に対して、共架橋剤として前記(1)〜(4)のいずれか一に記載のアクリル酸亜鉛組成物を10〜60質量部配合し、不活性充填剤を5〜80質量部、架橋剤を5質量部以下配合したゴム組成物の加熱成形物を構成要素として具備してなることを特徴とするゴルフボール。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0028】
本発明の第一の態様によると、乾式法による粒子径が300μm以上であるアクリル酸亜鉛粒子の占める比率が全粒子の20質量%以下であり、乾式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値が10〜300μmであり、かつ湿式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値(B)に対する乾式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値(A)の比が2を超えるアクリル酸亜鉛及びアニオン界面活性剤からなるアクリル酸亜鉛組成物が提供される。
【0029】
本発明のアクリル酸亜鉛組成物は、上記したように特定の条件を満たしたアクリル酸亜鉛及びアニオン界面活性剤を必須の成分として含むものである。本発明のアクリル酸亜鉛組成物の一方の原料として使用されるアニオン界面活性剤は、公知のアニオン界面活性剤が使用され、特に制限されるものではない。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、第二級アルコールスルホコハク酸ハーフエステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ジアミルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムまたはモノエチルモノドデシルスルホコハク酸ナトリウムのようなコハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、テトラデシルサルフェートまたはオレイルサルフェートのようなアルキルサルフェート、アミドスルホネート、リシノール酸エステルの硫酸エステルナトリウム、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩、モノソジウムα−ホスホノ脂肪酸エステル、及びソジウムジアルキルホスフェートなどが挙げられる。これらのアニオン界面活性剤は、単独で含まれてもあるいは2種以上の混合物の形態で存在していてもよい。これらのうち、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが製造中および製造後のアクリル酸亜鉛において固着または塊状物の形成および発塵性を抑制させることができるため、特に好適に使用される。
【0030】
また、本発明において、アニオン界面活性剤の含有量は、アクリル酸亜鉛組成物をゴム組成物と混練りした際の固着や凝集の発生ならびにゴム組成物での均一な分散・混練特性に影響を与えない量であれば特に制限されないが、アクリル酸亜鉛組成物に対して、通常、0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜2質量%である。
【0031】
本発明のアクリル酸亜鉛組成物の他方の原料であるアクリル酸亜鉛は、(i)乾式法による粒子径が300μm以上のアクリル酸亜鉛粒子の占める割合が全粒子の20質量%以下である;(ii)乾式法による粒子径の中央値が10〜300μmである;および(iii)湿式法による粒子径の中央値(B)に対する乾式法による粒子径の中央値(A)の比が2を超える(A/B>2)という、特定の条件を満たすものであるが、これらの条件のうち、(i)の条件、すなわち、乾式法による粒子径が300μm以上であるアクリル酸亜鉛粒子の占める比率は、全粒子の20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。本発明において、乾式法による粒子径が300μm以上であるアクリル酸亜鉛粒子の占める比率の下限は、このようなアクリル酸亜鉛粒子は少ないほど好ましいので、特に規定されないが、製造し易さ、作業環境や衛生上の問題などを考慮すると、好ましくは0.1質量%、より好ましくは1.0質量%である。この際、乾式法による粒子径が300μm以上であるアクリル酸亜鉛粒子の占める比率が20質量%を超えると、アクリル酸亜鉛が塊状に凝集して、作業性が悪く、また、ゴム組成物中での分散が不均一となり、ゆえに得られる製品も不均質となって品質の低下が認められるため、好ましくない。
【0032】
なお、本明細書において、「乾式法による粒子径」は、アクリル酸亜鉛サンプル約2gを、レーザ回析/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920;LY−208/乾式測定ユニット仕様)を用いて、分散媒を使用せずに、25℃の温度、50%RHの湿度で、3kgf/cm2の圧縮空気供給圧で測定された粒子径であり、この測定方法によって、アクリル酸亜鉛の粒子径が測定できる。
【0033】
また、本発明によるアクリル酸亜鉛を特定する条件のうちの(ii)の条件である、乾式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値は、10〜300μm、好ましくは20〜200μm、より好ましくは30〜150μmである。この際、乾式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値が10μm未満であると、帯電性が高くなるため、凝集塊を生じやすくなり、ゴム組成物と均一に混練りできず良好な分散性が得られず、また、飛散しやすくなるため作業環境の悪化を引き起こし、好ましくない。これに対して、乾式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値が300μmを超えると、大きすぎてゴム組成物中に均一に分散せず、やはり好ましくない。
【0034】
なお、本明細書において、「乾式法による粒子径の中央値(A)」は、上記「乾式法による粒子径」の項で記載したのと同様にして測定されたメジアン径として表わされる。
【0035】
さらに、本発明によるアクリル酸亜鉛を特定する条件のうちの(iii)の条件である、湿式法による粒子径の中央値(B)に対する乾式法による粒子径の中央値(A)の比(本明細書中では、単に「A/B」とも称する)は、2を超える(A/B>2)、好ましくは2を超えかつ20以下である、より好ましくは5〜20である。この際、A/Bが2以下であると、帯電性が高くなるため、凝集塊を生じやすくなり、ゴム組成物と均一に混練りできず良好な分散性が得られず、また、飛散しやすくなるため作業環境の悪化を引き起こし、好ましくない。なお、A/Bが20を超えると、アクリル酸亜鉛が塊状に凝集して、作業性が悪く、また、ゴム組成物中での分散が不均一となり、ゆえに得られる製品も不均質となって品質の低下が認められ、やはり好ましくない。
【0036】
なお、本明細書において、「湿式法による粒子径」は、具体的には、分散媒としてアイソパーHを使用し、アクリル酸亜鉛サンプル濃度が約50mg/l アイソパーHとなるように設定された、レーザ回析/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920;湿式測定仕様)を用いて、25℃の温度、50%RHの湿度で、測定された粒子径であり、この測定方法によって、アクリル酸亜鉛の微粒子の粒子径が測定できる。また、「湿式法による粒子径の中央値(B)」は、このようにして測定されたメジアン径として表わされる。
【0037】
また、本発明において、このような(i)〜(iii)の条件を満たすアクリル酸亜鉛の含有量は、アクリル酸亜鉛組成物をゴム組成物と混練りした際の固着や凝集の発生ならびにゴム組成物での均一な分散・混練特性に影響を与えない量であれば特に制限されないが、アクリル酸亜鉛組成物に対して、通常、50質量%以上、好ましくは60〜98質量%、より好ましくは70〜95質量%である。この際、アクリル酸亜鉛の含有量が50質量%未満であると、アクリル酸亜鉛の特性を減耗させ、ゴム組成物の適正な硬度が得られず、好ましくない。
【0038】
さらに、本発明において、アクリル酸亜鉛とアニオン界面活性剤との存在比は、アクリル酸亜鉛とアニオン界面活性剤の種類ならびに適用されようとする用途などによって異なり、特に制限されるものではないが、アニオン界面活性剤の量が、アクリル酸亜鉛100質量部に対して、0.01〜5質量部、好ましくは0.01〜2質量部となるような量である。この際、アニオン界面活性剤の量が5質量部を超えると、分散性は良くなるものの、得られたゴム組成物の硬度、反発が低くなる場合がある。逆に、アニオン界面活性剤の量が0.01質量部未満では、作業性やゴム組成物における分散性が改良されない場合がある。
【0039】
本発明において、アクリル酸亜鉛組成物は、上記したような特定の条件(i)〜(iii)を満たすアクリル酸亜鉛及びアニオン界面活性剤を必須の成分として含むが、これら以外の他の成分を含んでもよい。この際添加できる他の成分としては、特に制限されるものではなく、適用されようとする用途やその製造方法によって異なるものである。しかしながら、例えば、ステアリン酸等の高級脂肪酸及びその亜鉛塩ならびに酸化亜鉛等が挙げられる。この際、他の成分の含量は、他の成分の種類、適用されようとする用途やアクリル酸亜鉛組成物の製造方法によって異なり、本発明の概念を逸脱しない限り適宜設定されるものである。具体的には、他の成分の含量は、アクリル酸亜鉛組成物に対して、通常、2〜40質量%、好ましくは5〜30質量%である。
【0040】
本発明の第一の態様のアクリル酸亜鉛組成物の製造は、特に制限されることなく、公知の方法またはこれらの組み合わせが使用できる。しかしながら、酸化亜鉛を、アニオン界面活性剤の存在下で、有機溶媒中に分散させながら、アクリル酸と反応させることにより得られたアクリル酸亜鉛粒子を粉砕し、このようにして粉砕されたアクリル酸亜鉛粒子を目開きが0.2mm以上のスクリーンを通して分級することによって、本発明のアクリル酸亜鉛組成物が容易にかつ効率良く得られることが判明した。
【0041】
したがって、本発明の第二の態様によると、酸化亜鉛を、アニオン界面活性剤の存在下で、有機溶媒中に分散させながら、アクリル酸と反応させることにより、アクリル酸亜鉛粒子を得、上記アクリル酸亜鉛粒子を粉砕し、粉砕されたアクリル酸亜鉛粒子を目開きが0.2mm以上のスクリーンを通して分級することからなる、本発明のアクリル酸亜鉛組成物の製造方法が提供される。
【0042】
本発明の方法は、酸化亜鉛を、アニオン界面活性剤の存在下で、有機溶媒中に分散させながら、アクリル酸と反応させることによって、組成物の原料である、アクリル酸亜鉛粒子を得る工程を含む。上記工程は、酸化亜鉛とアクリル酸との反応をアニオン界面活性剤の存在下で行なうことを必須とするので、当該反応によって得られた反応物には、次工程で粉砕されるアクリル酸亜鉛粒子に加えてアニオン界面活性剤をも含んでいる。以下、本発明によるアクリル酸亜鉛粒子の製造に関する好ましい一実施態様を説明するが、本発明は下記実施態様に限定されるものではない。
【0043】
即ち、本発明の方法によれば、アクリル酸亜鉛粒子は、酸化亜鉛を、アニオン界面活性剤の存在下で有機溶媒中に分散させながら、アクリル酸、及び好ましくは炭素数12〜30の高級脂肪酸と反応させることによって、得られる。より好ましくは、十分な攪拌能力を有する攪拌機及び加熱冷却器を備えた反応器中に、所定量の有機溶媒とアニオン界面活性剤を仕込んで、攪拌しながら酸化亜鉛を仕込んで、懸濁液を調製する。次に、この懸濁液に、10〜70℃、好ましくは30〜50℃の温度を維持しながら、高級脂肪酸を添加・反応して、高級脂肪酸亜鉛を生成させる。この際、高級脂肪酸の添加および反応時間はその反応温度に応じて0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間の範囲で適宜選択される。次いで、この反応液に、必要ならば冷却して10〜70℃、好ましくは15〜50℃を維持しながら、アクリル酸を添加・反応してアクリル酸亜鉛を生成させるが、この場合のアクリル酸の添加および反応時間もまた、その反応温度に応じて0.5〜10時間、好ましくは2〜7時間の範囲で適宜選択される。
【0044】
本発明において、酸化亜鉛は、固体または溶液のいずれの形態で使用されてもよいが、通常の粉末固体で好ましく使用される。また、酸化亜鉛は、高純度のものが好ましいが、水酸化亜鉛を不純物として含んでいてもよい。酸化亜鉛の使用量は、化学量論的にはアクリル酸と高級脂肪酸との合計量と等しい量であるが、アクリル酸亜鉛の含量が60〜98質量%、好ましくは70〜95質量%となるようにアクリル酸と高級脂肪酸の使用量を調製すればよい。また、例えば、アクリル酸亜鉛組成物がソリッドゴルフボールのコアに用いる場合のように、酸化亜鉛が質量調節剤として使用される等、該使用量の過剰が支障を起こさない限り、過剰な状態で用いられてもなんら支障はない。なお、アクリル酸が過剰に使用される場合には、アクリル酸亜鉛の分離・回収の際に、有機溶媒および反応生成水と共に過剰なアクリル酸を留去、乾燥してもよい。
【0045】
本発明において使用されるアクリル酸は、いずれの形態で使用されてもよく、また、若干量の水を含んでいてもよいが、好ましくは水で希釈されていないアクリル酸である。また、ハイドロキノンやハイドロキノンモノメチルエーテル等の、重合防止剤を、アクリル酸中に含ませてもよい。アクリル酸の使用量は、酸化亜鉛と十分反応する量であれば特に制限されないが、酸化亜鉛100質量部に対して、通常、50〜250質量部、好ましくは50〜200質量部である。
【0046】
本発明において好ましく使用される炭素数12〜30の高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸及びリノール酸などが挙げられる。これらの高級脂肪酸は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。これらの高級脂肪酸のうち、パルミチン酸およびステアリン酸が好ましく使用される。また、高級脂肪酸は、そのまま使用されて、または反応に用いるのと同じ有機溶媒若しくはアクリル酸に予め溶解した後使用されてもよく、また、必要により加熱溶解して用いてもよい。さらに、高級脂肪酸の使用量は、酸化亜鉛と十分反応する量であれば特に制限されないが、その最適添加量は、アクリル酸亜鉛の使用目的の範囲内で決められるが、酸化亜鉛100質量部に対して、通常、4〜150質量部、好ましくは10〜100質量部である。この際、高級脂肪酸の使用量が4質量部未満では、製造中および製造後のアクリル酸亜鉛は、固着および分散し難くなり好ましくない。逆に、高級脂肪酸の使用量が150質量部を超える場合には、アクリル酸亜鉛の特性を減耗させ、やはり好ましくない。
【0047】
本発明において使用されるアニオン界面活性剤は、公知のアニオン界面活性剤が使用され、特に制限されるものではなく、具体的には、上記本発明の第一の態様において記載したのと同様のアニオン界面活性剤が使用できる。
【0048】
また、本発明の方法において、アニオン界面活性剤の使用量は、酸化亜鉛とアクリル酸及び炭素数12〜30の高級脂肪酸との反応を効率良くできるものであれば特に制限されないが、酸化亜鉛100質量部に対して、通常、0.03〜15質量部、好ましくは0.03〜6質量部の範囲である。なお、このような量のアニオン界面活性剤を使用して得られたアクリル酸亜鉛組成物中のアニオン界面活性剤の存在量(含有量)は、アクリル酸亜鉛組成物に対して、それぞれ、0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜2質量%となる。さらに、アニオン界面活性剤は、通常、反応に用いる有機溶媒に予め添加、混合して使用される。
【0049】
本発明において使用される有機溶媒は、アニオン界面活性剤を溶解するものであればよく、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素化合物が挙げられる。これらのうち、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の、水に不溶であるものが好ましく、トルエン及びn−ヘキサン等の、水と共沸混合物を作るものがより好ましい。
【0050】
このようにして得られたアクリル酸亜鉛及びアニオン界面活性剤は、公知の方法、例えば、反応器内の反応生成水と有機溶媒とを濾過により分離して10〜70℃の温度で乾燥することによって、分離・回収される。また、反応器がかき取り翼を有する攪拌機付きのニーダーブレンダー等である場合には、反応液をそのまま攪拌しながら、10〜70℃、好ましくは15〜50℃の温度で、必要により減圧して過剰なアクリル酸、有機溶媒および反応生成水を留去乾燥することによって、アクリル酸亜鉛及びアニオン界面活性剤を分離・回収する方法が、設備上の簡略化である点から好ましく使用される。なお、この場合の留去乾燥時間はその温度に応じて1〜20時間の範囲で適宜選択される。
【0051】
本発明の方法において、上記したようにして得られたアクリル酸亜鉛粒子は、次に粉砕工程に供される。この際、アクリル酸亜鉛粒子の粉砕方法は、本発明の特定の粒子径及び粒子分布を有するアクリル酸亜鉛が得られる方法であれば特に制限されることなく、圧縮、衝撃、摩擦、せん断など、いずれを利用してもよく、公知の粉砕方法が使用される。具体的には、ジョークラッシャー、ジャイレトリクラッシャー及びハンマークラッシャー(スィングハンマークラッシャー)等を用いた粗砕法;ロールクラッシャー、ローラーミル(リングローラーミル、ボールベアリングミル、ボウルミル)、エッジランナー、スタンプミル、衝撃式粉砕機[ハンマーミル(高速ハンマーミル)、ケージミル、ピンミル、ディスインテグレーター、ディスメンブレーター]、切断・せん断ミル(カッター・ミル、フェーザー・ミル)、ロッドミル(振動ロッドミル)及び自生粉砕機(エロフォールミル、カスケードミル、ハドセルミル)等を用いた中砕法;タボ形粉砕機(ターボミル、ミクロシクロマート、ハリケーンミル)、ボールミル[ポットミル、チューブミル(コンパウンドミル、コンパートメントミル)、コニカルボールミル(トリコンミル)、超臨界ミル、ラジアルミル、塔式粉砕機(タワーミル)、振動ボールミル(円形振動ミル、らせん旋動振動ミル(ディスクミル))、遊星形粉砕機(ハイスィングボールミル、遠心ボールミル)、サイドグラインダー]、衝撃式粉砕機[スクリーンミル(アトマイザー、バンタムミル、ウルトラファインミル、パルペライザー)、遠心分級ミル(スーパーミクロンミル、ファインミクロンミル、クリプトロン、オングミル)]、ジェット粉砕機、コロイドミル及び乳鉢等の(微)粉砕機などが挙げられる。これらのうち、ハンマークラッシャー、特にスィングハンマークラッシャー、ハンマーミル、特に高速ハンマーミル、バンタムミル、特にウルトラファインミル、パルペライザーが好ましく使用され、より好ましくは、スィングハンマークラッシャー、バンタムミル、及びパルペライザーが、特にスィングハンマークラッシャーがアクリル酸亜鉛粒子の粉砕に使用される。
【0052】
本発明の第二の態様による粉砕において、粉砕条件は、本発明の特定の粒子径及び粒子分布を有するアクリル酸亜鉛が得られる方法であれば特に制限されることなく、使用される粉砕機の種類、原料であるアクリル酸亜鉛粒子の粒径及びハンマー本数などによって適宜選択される。例えば、スィングハンマークラッシャーの場合には、1,000〜3,000rpm、より好ましくは1,500〜2,800rpmの回転数で、20〜60本のハンマー本数(T型ハンマー、プレートハンマー及びナイフハンマーを含む)で、アクリル酸亜鉛粒子を粉砕することが好ましい。この際の粉砕時間は、原料の処理量及び粉砕機の処理能力に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、好ましくは0.01〜24時間、より好ましくは0.01〜8時間である。また、例えば、バンタムミルの場合には、8,000〜14,000rpm、より好ましくは12,000〜14,000rpmの回転数で、4〜8本のハンマー本数(T型ハンマー等を含む)で、アクリル酸亜鉛粒子を粉砕することが好ましい。この際の粉砕時間もまた、原料の処理量及び粉砕機の処理能力に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、好ましくは0.01〜24時間、より好ましくは0.01〜8時間である。さらに、パルペライザーの場合には、スクリュウフィーダー方式で、アクリル酸亜鉛粒子を連続的に供給した後、ハンマー部分で、6〜96本のハンマー本数(アブミ型及びナイフ型を含む)で、3,450〜9,600rpm、より好ましくは4,600〜6,900rpmの回転数で、アクリル酸亜鉛粒子を粉砕することが好ましい。この際の粉砕時間もまた、原料の処理量及び粉砕機の処理能力に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、好ましくは0.01〜24時間、より好ましくは0.01〜8時間である。
【0053】
本発明の第二の態様の方法は、このようにして粉砕されたアクリル酸亜鉛粒子を、さらに目開きが0.2mm以上のスクリーンに通して分級する工程を含むことを必須とする。上記分級工程において、スクリーンの目開きは、0.2〜10mm、より好ましくは0.2〜2.0mmである。この際、スクリーンの目開きが0.2mm未満であると、粒子が細かくなりすぎて帯電性が高くなるため、凝集塊を生じやすくなり、ゴム組成物と均一に混練りできず良好な分散性が得られず、また、飛散しやすくなるため作業環境の悪化を引き起こし、好ましくない。なお、スクリーンの目開きが上記好ましい範囲を逸脱すると、上記したような特定の条件を満たす本発明のアクリル酸亜鉛が効率良く得られない。
【0054】
本発明の方法によって製造されるアクリル酸亜鉛粒子は、微細粒子の凝集体として存在しうる。したがって、このようにして製造されるアクリル酸亜鉛粒子を、本発明の第二の態様の方法に従って粉砕すると、(i)乾式法による粒子径が300μm以上のアクリル酸亜鉛粒子の占める割合が全粒子の20質量%以下である;(ii)乾式法による粒子径の中央値が10〜300μmである;および(iii)湿式法による粒子径の中央値(B)に対する乾式法による粒子径の中央値(A)の比が2を超える(A/B>2)という3条件全てを満たす本発明のアクリル酸亜鉛が容易に得られる。
【0055】
本発明のアクリル酸亜鉛組成物は、ワンピースゴルフボール、ツーピースゴルフボールのソリッドコア、多層コアを有するスリーピース以上のマルチピースソリッドゴルフボールの中心コアおよび/または中間コア、及び糸巻きゴルフボールのソリッドセンターなどの各種構成要素を形成するゴム組成物の共架橋剤として好適なものである。
【0056】
基材ゴムとしては、従来からソリッドゴルフボールに用いられる天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することが出来るが、中でもシス形構造を少なくとも40%以上有する1,4−ポリブタジエンゴムが好ましい。この範囲を逸脱すると反発性が低下するからである。また、本発明において、1,4−ポリブタジエンゴムにおけるシス形構造の占める割合は、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更により好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。この場合、所望により該ポリブタジエンに天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等を適宜配合してもよい。
【0057】
この基材ゴム100質量部に対して、共架橋剤として、上記本発明のアクリル酸亜鉛組成物を通常10質量部以上、好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、上限として60質量部以下、好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下配合する。上記配合量が少な過ぎるとゴルフボールとして必要な硬さが得られず、反発性も低下し、多過ぎると硬くなり過ぎてしまい、耐え難い打感となる。
【0058】
また、必要に応じて、有機硫黄化合物や老化防止剤を配合することもできる。有機硫黄化合物は、上記基材ゴム100質量部に対して、通常、0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、上限として、上記基材ゴム100質量部に対して、5質量部以下、好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下の範囲の量で、配合することができる。また、老化防止剤は、上記基材ゴム100質量部に対して、通常、0質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、最も好ましくは0.2質量部以上、上限として、上記基材ゴム100質量部に対して、3質量部以下、好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、最も好ましくは0.5質量部以下の範囲の量で、配合することができる。
【0059】
また不活性充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカ、及び炭酸カルシウム等が例示されるが、好ましくは酸化亜鉛、硫酸バリウムが用いられる。その配合量は、基材ゴム100質量部に対して、通常5質量部以上、好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、上限として80質量部以下、好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下配合する。
【0060】
更に、架橋剤としてはジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,3−トリメチルシクロヘキサンのような有機過酸化物が例示され、1種又は2種以上の異なる有機過酸化物を混合してもよい。その配合量は基材ゴム100質量部に対して、通常5質量部以下、好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、下限として0.1質量部以上、好ましくは0.4質量部以上、更に好ましくは0.7質量部以上配合する。
【0061】
上記各成分を配合して得られるゴム組成物は、ニーダー、ロール等を用いて混練りし、金型で加圧又は射出成形し、成形体を架橋剤および共架橋剤が作用するのに十分な温度、時間、例えば140〜170℃で10〜40分程度加熱硬化することにより得ることができる。
【0062】
次に、本発明のゴルフボールをツーピースソリッドゴルフボール、マルチピースソリッドゴルフボールとする場合は、通常ゴルフボールのカバー材として用いられているものを使用することができ、熱可塑性又は熱硬化性のポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらは単独又は2種以上の材料を混合して用いてもよい。
【0063】
コアにカバーを被覆する方法は、特に制限されるものでは無いが、例えば、カバー材組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてコアを包み、130℃〜170℃で1〜5分間、加圧成形するか、または上記カバー材組成物を直接コア上に射出成形する方法が挙げられる。なお、カバーの厚さ、硬度などは本発明の目的を達成し得る範囲で適宜設定することができる。
【0064】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0065】
なお、下記実施例において、アクリル酸亜鉛の帯電電荷量およびゴム混練り特性は、以下のようにして測定・評価した。
【0066】
<アクリル酸亜鉛の帯電電荷量>
図1に示される帯電電荷量測定装置において、サンプルを、傾斜樋(SUS製、34φ×1000mm、45°傾斜樋法)の上端から投入し、傾斜樋の下端から静電電荷量計(春日電機製、KQ−431B型)のファラデーケージ(57φ×59mm)内に落下させ、静電電荷量計の指示を読んだ。それと同時に、落下量を電子天秤を用いて測定し、これから、単位質量当たりの帯電電荷量(C/g=静電電荷量計/落下量)を求めた。この際、測定は、10回繰り返して行ない、そのうち安定して得られた5回の単位質量当たりの帯電電荷量を平均して、測定値とした。
【0067】
<アクリル酸亜鉛のゴム混練り特性>
サンプル30質量部を、ポリブタジエンゴム100質量部とバンバリーミキサーで加熱・混練りし、ゴム中のサンプルの分散性を肉眼で評価(○:良好、△:若干劣る)し、混練り時間を測定した。
【0068】
実施例1
内容量5リットルのジャケット付きニーダーに、トルエン2386g及びアニオン界面活性剤(花王株式会社製、ペレックスOT−P、有効成分70質量%)4.5gを仕込んだ。次に、この混合液に、酸化亜鉛570gを添加して撹拌・懸濁し、ニーダーの内部温度を40℃に保ちながら、高級脂肪酸としてトルエン490gに溶解させたステアリン酸140gを1時間かけて添加して、このようにして得られた懸濁液をさらに2時間反応させた。
【0069】
次いで、ニーダーの内部温度を15℃にまで冷却した後、アクリル酸999gを徐々に35℃に達するよう3時間かけて添加し、40℃で4時間反応させた。この反応懸濁液を、徐々に減圧下約2666Pa(20Torr)に達するよう50℃まで昇温させながら、反応生成水及びトルエンの留去・乾燥を5時間かけて行なうことによって、アニオン界面活性剤0.2質量%(アクリル酸亜鉛粒子を基準として;以下、同様)及びステアリン酸亜鉛10質量%を含むアクリル酸亜鉛粒子1550gを得た。
【0070】
さらに、このようにして得られたアクリル酸亜鉛粒子を粗砕機(ホソカワミクロン株式会社製、ハンマミルH−12型)で、回転数1700rpmで、2分間、粉砕し、粉砕されたアクリル酸亜鉛粒子を目開きが1mmのスクリーンで分級することによって、粒子径が1mm以下の凝集物を含むアクリル酸亜鉛組成物を得た。
【0071】
このようにして粉砕・分級されたアクリル酸亜鉛組成物におけるアクリル酸亜鉛について、乾式法及び湿式法による粒子径の中央値を測定した。その結果、乾式法による粒子径の中央値及び湿式法による粒子径の中央値は、それぞれ、94.8μm及び5.5μmであり、したがって、本実施例で得られたアクリル酸亜鉛はA/Bが17.2の微細粒子の凝集体であることが分かった。また、全粒子に対して乾式法による粒子径が300μm以上のアクリル酸亜鉛粒子が占める比率は6.3質量%であった。
【0072】
次いで、このようにして得られたアクリル酸亜鉛組成物について、帯電電荷量を測定した結果、単位質量当たりの電荷量は1.7×10-9C/gであり、この結果から、本実施例のアクリル酸亜鉛組成物は凝集体を含んでいることにより帯電性が低いことが確認された。
【0073】
さらに、このようにして得られたアクリル酸亜鉛組成物について、ゴム混練り特性を調べたところ、本実施例のアクリル酸亜鉛組成物は凝集体を含んでいるにもかかわらずゴム中で凝集塊もなくスムーズに混練りでき、分散性も良好で、混練り時間も20分で終了した。
【0074】
実施例2
実施例1において、アニオン界面活性剤及びアクリル酸の使用量をそれぞれ4.6g及び982gとし、トルエン725gに溶解したステアリン酸207gを高級脂肪酸として使用した以外は、実施例1と同様にして、アニオン界面活性剤0.2質量%及びステアリン酸亜鉛14.3質量%を含むアクリル酸亜鉛粒子1600gを得た。
【0075】
次に、このようにして得られたアクリル酸亜鉛粒子を、実施例1と同様に粉砕して、1mm以下の凝集物を含むアクリル酸亜鉛組成物を得た。
【0076】
このようにして粉砕・分級されたアクリル酸亜鉛組成物におけるアクリル酸亜鉛について、乾式法及び湿式法による粒子径の中央値を測定した結果、乾式法による粒子径の中央値及び湿式法による粒子径の中央値は、それぞれ、89.6μm及び4.7μmであり、したがって、本実施例で得られたアクリル酸亜鉛はA/Bが19.1の微細粒子の凝集体であることが分かった。また、全粒子に対して乾式法による粒子径が300μm以上のアクリル酸亜鉛粒子が占める比率は4.1質量%であった。
【0077】
次いで、このようにして得られたアクリル酸亜鉛組成物について、帯電電荷量を測定した結果、単位質量当たりの電荷量は2.0×10-9C/gであり、この結果から、本実施例のアクリル酸亜鉛組成物は帯電性が低いことが確認された。
【0078】
さらに、このようにして得られたアクリル酸亜鉛組成物について、ゴム混練り特性を調べたところ、本実施例のアクリル酸亜鉛組成物はゴム中で凝集塊もなくスムーズに混練りでき、分散性も良好で、混練り時間も20分で終了した。
【0079】
実施例3
実施例1と同様にして、アニオン界面活性剤0.2質量%及びステアリン酸亜鉛10質量%を含むアクリル酸亜鉛粒子1553gを得た。
【0080】
次に、このようにして得られたアクリル酸亜鉛粒子を、実施例1と同様にして粉砕した後、粉砕されたアクリル酸亜鉛粒子を、目開きが1mmのスクリーンの代わりに目開きが3mmのスクリーンを使用した以外は実施例1と同様に分級することによって、3mm以下の凝集物を含むアクリル酸亜鉛組成物を得た。
【0081】
このようにして粉砕・分級されたアクリル酸亜鉛組成物におけるアクリル酸亜鉛について、乾式法及び湿式法による粒子径の中央値を測定した結果、乾式法による粒子径の中央値及び湿式法による粒子径の中央値は、それぞれ、119.0μm及び6.0μmであり、したがって、本実施例で得られたアクリル酸亜鉛はA/Bが19.8の微細粒子の凝集体であることが分かった。また、全粒子に対して乾式法による粒子径が300μm以上のアクリル酸亜鉛粒子が占める比率は7.1質量%であった。
【0082】
次いで、このようにして得られたアクリル酸亜鉛組成物について、帯電電荷量を測定した結果、単位質量当たりの電荷量は1.5×10-9C/gであり、この結果から、本実施例のアクリル酸亜鉛組成物は帯電性が低いことが確認された。
【0083】
さらに、このようにして得られたアクリル酸亜鉛組成物について、ゴム混練り特性を調べたところ、本実施例のアクリル酸亜鉛組成物はゴム中で凝集塊もなくスムーズに混練りでき、分散性も良好で、混練り時間も21分で終了した。
【0084】
実施例4
実施例1と同様にして、アニオン界面活性剤0.2質量%及びステアリン酸亜鉛10質量%を含むアクリル酸亜鉛粒子1551gを得た。
【0085】
次に、このようにして得られたアクリル酸亜鉛粒子を、実施例1と同様にして粉砕した後、粉砕されたアクリル酸亜鉛粒子を、目開きが1mmのスクリーンの代わりに目開きが0.4mmのスクリーンを使用した以外は実施例1と同様に分級することによって、0.4mm以下の凝集物を含むアクリル酸亜鉛組成物を得た。
【0086】
このようにして粉砕・分級されたアクリル酸亜鉛組成物におけるアクリル酸亜鉛について、乾式法及び湿式法による粒子径の中央値を測定した結果、乾式法による粒子径の中央値及び湿式法による粒子径の中央値は、それぞれ、42.1μm及び4.6μmであり、したがって、本実施例で得られたアクリル酸亜鉛はA/Bが9.2の微細粒子の凝集体であることが分かった。また、全粒子に対して乾式法による粒子径が300μm以上のアクリル酸亜鉛粒子が占める比率は1.0質量%であった。
【0087】
次いで、このようにして得られたアクリル酸亜鉛組成物について、帯電電荷量を測定した結果、単位質量当たりの電荷量は2.3×10-9C/gであり、この結果から、本実施例のアクリル酸亜鉛組成物は帯電性が低いことが確認された。
【0088】
さらに、このようにして得られたアクリル酸亜鉛組成物について、ゴム混練り特性を調べたところ、本実施例のアクリル酸亜鉛組成物はゴム中で凝集塊もなくスムーズに混練りでき、分散性も良好で、混練り時間も21分で終了した。
【0089】
比較例1
実施例1と同様にして、アニオン界面活性剤0.2質量%及びステアリン酸亜鉛10質量%を含むアクリル酸亜鉛粒子1552gを得た。
【0090】
次に、このようにして得られたアクリル酸亜鉛粒子を、実施例1においてスクリーンを使用しなかった以外は、実施例1と同様に粉砕することによって、アクリル酸亜鉛組成物を得た。
【0091】
このようにして粉砕されたアクリル酸亜鉛組成物におけるアクリル酸亜鉛について、乾式法及び湿式法による粒子径の中央値を測定した結果、乾式法による粒子径の中央値及び湿式法による粒子径の中央値は、それぞれ、301.7μm及び9.8μmであり、したがって、本比較例で得られたアクリル酸亜鉛はA/Bが30.8の微細粒子の凝集体であることが分かった。また、全粒子に対して乾式法による粒子径が300μm以上のアクリル酸亜鉛粒子が占める比率は19.8質量%であった。
【0092】
次いで、このようにして得られたアクリル酸亜鉛組成物について、帯電電荷量を測定した結果、単位質量当たりの電荷量は1.4×10-9C/gであり、この結果から、本比較例のアクリル酸亜鉛組成物は実施例1〜4と同等であり、帯電性が低いことが確認された。
【0093】
さらに、このようにして得られたアクリル酸亜鉛組成物について、ゴム混練り特性を調べたところ、本比較例のアクリル酸亜鉛組成物はゴム中での分散性が若干劣り、混練りに29分間費やした。
【0094】
比較例2
実施例1と同様にして、アニオン界面活性剤0.2質量%及びステアリン酸亜鉛10質量%を含むアクリル酸亜鉛粒子1550gを得た。
【0095】
さらに、このようにして得られたアクリル酸亜鉛粒子を微粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製、バンタムミルAP−B型)で、回転数14000rpmで、15分間、粉砕し、粉砕されたアクリル酸亜鉛粒子を目開きが0.1mmのスクリーンで分級することによって、粒子径が0.1mm以下のアクリル酸亜鉛組成物を得た。
【0096】
このようにして粉砕・分級されたアクリル酸亜鉛組成物におけるアクリル酸亜鉛の中央値について、乾式法及び湿式法による粒子径の中央値を測定した結果、乾式法による粒子径の中央値及び湿式法による粒子径の中央値は、それぞれ、8.1μm及び6.1μmであり、したがって、本比較例で得られたアクリル酸亜鉛はA/Bが1.3であることが分かった。また、全粒子に対して乾式法による粒子径が300μm以上のアクリル酸亜鉛粒子が占める比率は0.0質量%であった。
【0097】
次いで、このようにして得られたアクリル酸亜鉛組成物の微粉砕品について、帯電電荷量を測定した結果、単位質量当たりの電荷量は1.6×10-8C/gであり、この結果から、本比較例のアクリル酸亜鉛組成物の帯電性は実施例1〜4と比較すると1桁高いことが確認された。
【0098】
さらに、このようにして得られたアクリル酸亜鉛組成物の微粉砕品について、ゴム混練り特性を調べたところ、本比較例のアクリル酸亜鉛組成物は実施例1〜4と比較するとゴム中での分散性が若干劣り、混練りに28分間費やした。
【0099】
実施例1〜4及び比較例1、2の結果を下記表1〜3に要約する。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
実施例5
実施例1〜4、ならびに比較例1及び2のアクリル酸亜鉛組成物をそれぞれ用いて、表4に示される配合組成のゴム組成物を混練りし、コア用金型中155℃、20分間加熱加圧成形して、直径約38.9mm、質量約36.0gのソリッドコアを得た。
【0104】
混練りの際の分散、混練り機への付着、加硫硬化後のコア硬度、反発性を測定した。結果を表4に併記する。なお、下記表4において、コア硬度は、ソリッドコアの980N荷重負荷時の変形量(mm)として表わし、反発性は、公認機関USGAと同タイプの初速度計にて測定し、比較例1を基準にした時の差(m/s)として表わす。
【0105】
次に、このようにして得られた各ソリッドコアに、アイオノマー樹脂(ハイミラン1601/ハイミラン1557=50/50)からなるカバー用組成物を射出成形し、直径約42.7mm、質量45.3gのツーピースソリッドゴルフボールを得た。この結果、実施例1〜4のアクリル酸亜鉛組成物を用いて得られたゴルフボールは、いずれも反発性良好で、ばらつきの少ない適正なボール硬度を有するものであった。
【0106】
【表4】
【0107】
【発明の効果】
本発明のアクリル酸亜鉛組成物は、(i)乾式法による粒子径が300μm以上のアクリル酸亜鉛粒子の占める割合が全粒子の20質量%以下である;(ii)乾式法による粒子径の中央値が10〜300μmである;および(iii)湿式法による粒子径の中央値(B)に対する乾式法による粒子径の中央値(A)の比が2を超える(A/B>2)アクリル酸亜鉛及びアニオン界面活性剤からなることを特徴とする。このような特定の条件を満たすアクリル酸亜鉛は、凝集体の形態であっても飛散しにくく粉体として取り扱い易いという利点を有する上、低い帯電性を有するので、ゴム組成物と混練りしてもゴム組成物中で凝集塊を生じることなく固着や凝集の発生が極めて少ない状態で均一にかつスムーズに分散・混練りできる。
【0108】
また、本発明のアクリル酸亜鉛組成物の製造方法は、酸化亜鉛を、アニオン界面活性剤の存在下で、有機溶媒中に分散させながら、アクリル酸と反応させることにより、アクリル酸亜鉛粒子を得、該アクリル酸亜鉛粒子を、特にスィングハンマークラッシャーを用いて粉砕し、粉砕されたアクリル酸亜鉛粒子を目開きが0.2mm以上のスクリーンを通して分級することからなることを特徴とする。この方法によって、本発明のアクリル酸亜鉛組成物が簡単な操作で容易にかつ効率良く得られる。
【0109】
また、本発明のアクリル酸亜鉛組成物を共架橋剤として配合することにより、作業性に優れ、ゴム組成物中に均一に分散混合できると共に、混練機への付着が無く、共架橋剤の働きを有効に活用でき、したがってボール硬度のばらつきが少なく、反発性が良好なゴルフボールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明のアクリル酸亜鉛の帯電電荷量を測定するための帯電電荷量測定装置の該略図である。
Claims (4)
- 乾式法による粒子径が300μm以上であるアクリル酸亜鉛粒子の占める比率が全アクリル酸亜鉛粒子の0.1〜10質量%であり、乾式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値が30〜150μmであり、かつ湿式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値(B)に対する乾式法によるアクリル酸亜鉛粒子径の中央値(A)の比が5〜20であるアクリル酸亜鉛及びアニオン界面活性剤を含有してなるアクリル酸亜鉛組成物。
- 酸化亜鉛を、アニオン界面活性剤の存在下で、有機溶媒中に分散させながら、アクリル酸と反応させることにより、アクリル酸亜鉛粒子を得、該アクリル酸亜鉛粒子を粉砕し、粉砕されたアクリル酸亜鉛粒子を目開きが0.2mm以上のスクリーンを通して分級することからなる請求項1に記載のアクリル酸亜鉛組成物の製造方法。
- 該粉砕はスィングハンマークラッシャーを用いて行なわれる、請求項2に記載の製造方法。
- シス形構造を40%以上含む1,4−ポリブタジエンゴムを主材とする基材ゴム100質量部に対して、共架橋剤として請求項1に記載のアクリル酸亜鉛組成物を10〜60質量部配合し、不活性充填剤を5〜80質量部、架橋剤を5質量部以下配合したゴム組成物の加熱成形物を構成要素として具備してなることを特徴とするゴルフボール。
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