JP5448803B2 - ゴム組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、良好な加工性と高反発弾性が高次バランスした、軽量化されたゴム組成物に関する。
ゴム組成物は工業用途に広く用いられているが、ゴム組成物を使用した成形品の使用条件は一段と厳しくなっており、高性能のゴム材料の開発が急務である。
例えば、自動車等の空気入りタイヤに使用されているゴム組成物においては、反発弾性等を高めるために、カーボンブラック配合品が汎用されている。しかし、カーボンブラックを多量に配合したゴム組成物をタイヤに使用すると、発熱による耐久性の低下や、ゴム組成物の粘度上昇による加工性の低下を招く等の問題がある。また、カーボンブラックの一部又は全部をシリカ系充填剤に置き換える試みも行われているが、シリカ系充填剤は有機系ゴムに親和性がなく均一分散が難しいため、分散不良による機械的強度の低下を招き易く、軽量化も達成できないという問題がある。
このように、ゴム硬化前粘度が低く加工性に優れ、反発弾性、軽量化に優れたゴム組成物を得ることは困難であった。
一方、ゴム組成物の反発弾性等の各種物性を改善するために、ゴム組成物にセルロースを配合した組成物も知られている。
例えば、特許文献1には、ウェット性能と転がり抵抗のバランスの改善を目的として、SBRを含むジエン系ゴム、平均粒径1〜500μmの結晶性粉末状セルロース、及び硫黄及びシラノール基を有する硫黄含有シランカップリング剤を含むゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤが開示されている。
特許文献2には、加工性を維持しつつ、高弾性率、低発熱性の改善を目的として、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等から選ばれた少なくとも1種のゴム成分100重量部、及び粒径70〜200μmの結晶性セルロース粉末9〜40重量部を含む空気入りタイヤ用ゴム組成物が開示されている。
特許文献3には、破断特性とエネルギーロスの改善を目的として、合成ゴム等のゴム成分と、化学変性ミクロフィブリルセルロースとを含有する加硫ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤが開示されている。
また、特許文献4には、静電気の蓄積防止を目的として、タイヤ全質量の75質量%以上のタイヤ組成物が石油外素材から構成された空気入りタイヤが開示されており、高結晶性の天然精製セルロース繊維のタイヤコードが好適に使用しうると記載されている。
一方、特許文献5には、強度と軽量化の改善を目的として、天然ゴムを主成分とするゴム組成物に静置培養で得られた微生物セルロースを配合したゴム配合組成物が開示されている。
特開2004−204158号公報 特開2006−282790号公報 特開2009−84564号公報 特開2008−296634号公報 特開平5−301994号公報
しかしながら、特許文献1〜5のゴム組成物では、近年要求されている高い反発弾性と良好な加工性が高次バランスしたゴム組成物は得られていない。
本発明は、加工性と高反発弾性が高いレベルでバランスし、かつ軽量化されたゴム組成物を提供することを課題とする。
特許文献1〜5に示すように、ゴム組成物にセルロースを配合する場合は、高弾性を得る観点から、結晶性の高いセルロースの使用が検討されていた。しかしながら、本発明者らは、あえて結晶化度の低いセルロースをゴム組成物に配合することにより、驚くべきことに、反発弾性に優れ、低粘度、低比重であるゴム組成物を得ることができることを見出した。
すなわち、本発明は、ジエン系ゴムと結晶化度が50%未満であるセルロースとを含有するゴム組成物を提供する。
本発明によれば、加工性と高反発弾性が高いレベルでバランスし、かつ軽量化されたゴム組成物を提供することができる。
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムと結晶化度が50%未満であるセルロースとを含有することを特徴とする。
[ジエン系ゴム]
本発明において使用するジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)及びブタジエン−アクリロニトリル共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。
これらの中では、ゴム組成物の良好な加工性と高反発弾性を両立する観点から、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)から選ばれる1種以上が好ましく、天然ゴム(NR)及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)から選ばれる1種以上がより好ましい。
ジエン系ゴムは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[セルロース]
本発明で用いられるセルロースは、結晶化度が50%未満のセルロースである。
本明細書において、セルロースの結晶化度は、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したセルロースI型結晶化度であり、下記計算式(1)により定義される。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
セルロースI型結晶化度は、セルロース全体のうち結晶領域量の占める割合を意味する。従って、セルロースI型結晶化度が50%未満であるセルロースとは、結晶領域量が50%未満であるセルロース、即ち、非晶質部分が50%を超えて存在するセルロースであることを意味する。本明細書において「非晶質セルロース」とは、このように非晶質部分が50%を超えて存在するセルロースをいい、「結晶性セルロース」とは、結晶領域量が50%以上存在するセルロースをいう。
なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度は、セルロースの物理的性質、及び化学的性質とも関係し、その値が大きいほど硬度、密度等は増すが、伸びや柔軟性、化学反応性は低下する。
本発明で用いられるセルロースの結晶化度は、ゴム組成物の加工性と高反発弾性を両立する観点から、30%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、X線回折分析においてI型結晶が検出されない、実質的に0%であることが更に好ましい。なお、計算式(1)で定義されたセルロースI型結晶化度では、計算上マイナスの値になる場合があるが、マイナス値になる場合はセルロースI型結晶化度は0%とする。
また、結晶化度が異なるセルロースを2種以上組み合わせて用いてもよいが、その場合のセルロースの結晶化度とは、用いられるセルロースの加重平均により求められる結晶化度を意味し、その値が前記範囲内であることが好ましい。
結晶化度が50%未満であるセルロースとしては、例えば、セルロース含有原料に後述する機械的処理等を施すことにより得られるセルロースが好ましい。
(セルロース含有原料)
セルロース含有原料に特に制限はなく、幹、枝、葉、茎、根、種子、果実等の植物の各部位、例えば、稲わら、トウモロコシ茎等の植物茎・葉類、籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類、間伐材、剪定枝、各種木材チップ、ウッドパルプ、コットンリンターパルプ等のパルプ類、新聞紙、段ボール、雑誌、上質紙等の紙類等を使用することができる。着色の少ないゴム組成物を得る観点からは、パルプが好ましい。
市販の結晶性セルロースもセルロース含有原料として使用でき、市販品としては、日本製紙ケミカル株式会社製の商品名:KCフロック、旭化成ケミカルズ株式会社製の商品名:セオラス等が挙げられる。
これらのセルロース含有原料の形態は特に限定はなく、チップ状、シート状等各種形態のものが使用できる。なお、市販パルプのセルロースI型結晶化度は、通常80%以上であり、市販の結晶性セルロースのセルロースI型結晶化度は、通常80%以上である。
前記セルロース含有原料は、該原料から水を除いた場合の残余の成分中のセルロース含有量が好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。例えば、市販のパルプは、水を除いた場合の残余の成分中のセルロース含有量が通常75〜99質量%であり、他の成分としてはリグニン等を含有する。ここで、前記セルロース含有量とはセルロース量及びヘミセルロース量の合計量を意味する。
セルロース含有原料としてパルプ類を使用する場合、ゴム組成物の機械的強度を向上させる観点から、セルロース含有原料中のリグニン量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
(リグニンの低減方法)
リグニンの低減方法としては、アルカリ蒸解法や硫酸分解法等が挙げられ、アルカリ蒸解法としては、ソーダ法又はクラフト法が挙げられる。
ソーダ法は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ薬剤を使用してリグニンを除去する方法であり、クラフト法は、前記のアルカリ薬剤と硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のイオウ元素を含む薬剤とを共用してリグニンを除去する方法である。
アルカリ蒸解に供するセルロース含有原料は、アルカリ蒸解を進行しやすくするために、予め粉砕するか、又はチップ状に切削・破砕して用いてもよい。アルカリ蒸解時のセルロース含有原料の蒸解混合物中の濃度は5〜50質量%が好ましく、反応温度は100〜200℃が好ましく、140〜200℃がより好ましく、加熱時間は60〜500分が好ましい。前記条件は、チップの形状及び寸法並びに含有するリグニンの性質及びその量に応じて変更することができる。
セルロース含有原料中の水分含量は、機械的処理をして結晶化度を容易に低下させる観点から、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
ここで、機械的処理とは、セルロース含有原料を粉砕処理することであり、かかる処理により、セルロースの結晶化度を低下させ、効率的に非晶化させることができる。
(嵩密度と平均粒径が調整されたセルロース含有原料の調製)
結晶化度を効率的に低下させる観点から、嵩密度と平均粒径が調整されたセルロース含有原料を粉砕処理に供することが好ましい。
セルロース含有原料の嵩密度と平均粒径の調整方法は、特に限定されないが、セルロースの結晶構造を破壊して粉末化させる観点から、圧縮せん断力を作用させて粉砕(1次粉砕)する方法が好ましい。1次粉砕後は、得られたセルロース含有原料又は水分含量が調整されたセルロース含有原料を非晶化するために、更に粉砕(2次粉砕)することが好ましい。
(粗粉砕)
1次粉砕の前には、セルロース含有原料をチップ状又は直方体状に粗粉砕しておくことが好ましい。チップ状にしたセルロース含有原料の大きさは、1次粉砕を効率よく容易に行う観点から、好ましくは1〜50mm角、より好ましくは1〜30mm角である。
粗粉砕方法としては、シュレッダー、ロータリーカッター、又はスリッターカッター等の裁断機を使用する方法が挙げられる。
ロータリーカッターを使用する場合、得られるチップ状セルロース含有原料の大きさは、スクリーン(篩)の目開きを変えることにより、制御することができる。スクリーンの目開きは、1次粉砕に供するセルロース含有原料を綿状化させることなく、適度な嵩高さにする観点から、1〜50mmが好ましく、1〜30mmがより好ましい。
また、シート状のセルロース含有原料を用いる場合、シュレッダー又はスリッターカッターを使用することが好ましく、生産性の観点から、スリッターカッターを使用することがより好ましい。スリッターカッターとしては、ホーライ社製のシートペレタイザを好ましく使用でき、この装置を使用すると、シート状のセルロース含有原料を約1〜20mm角に粗粉砕することができる。
(1次粉砕)
1次粉砕では、圧縮せん断力を作用させてセルロース含有原料を機械的に粉砕する。粉砕機としては、公知の衝撃式粉砕機、例えば、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル等や押出機を用いて粉砕する方法が挙げられる。これらの中では、セルロース含有原料が綿状化して嵩高くなりにくく、所望の嵩密度及び平均粒径を有するセルロース含有原料が得られ、取扱い性が向上することから、押出機を用いる方法が好ましい。
押出機としては、単軸、二軸のどちらの形式でもよいが、搬送能力を高める等の観点から、二軸押出機が好ましい。
二軸押出機としては、シリンダーの内部に2本のスクリューが回転自在に挿入された公知の押出機が使用できる。2本のスクリューの回転方向は、同一でも逆方向でもよいが、搬送能力を高める観点から、同一方向の回転が好ましい。また、スクリューの噛み合い条件としては、完全噛み合い、部分噛み合い、非噛み合いの各形式の押出機のいずれでもよいが、処理能力を向上させる観点から、完全噛み合い型、部分噛み合い型が好ましい。
押出機としては、強い圧縮せん断力を加える観点から、スクリューのいずれかの部分に、いわゆるニーディングディスク部を備えることが好ましい。
ニーディングディスク部とは、複数のニーディングディスクで構成され、これらを連続して、一定の位相で、例えば90°ずつに、ずらしながら組み合わせたものであり、スクリューの回転にともなって、狭い隙間にセルロース含有原料を強制的に通過させることで極めて強いせん断力を付与することができる。スクリューの構成としては、ニーディングディスク部と複数のスクリューセグメントとが交互に配置されることが好ましい。二軸押出機の場合、2本のスクリューが、同一の構成を有することが好ましい。
1次粉砕処理方法としては、セルロース含有原料、好ましくは前記チップ状セルロース含有原料を押出機に投入し、連続的に処理する方法が好ましい。せん断速度は、高嵩密度化の観点から、10sec-1以上が好ましく、20〜30000sec-1がより好ましく、50〜3000sec-1が更に好ましいく、処理温度は5〜200℃が好ましい。
また、押出機によるパス回数としては、セルロース含有原料を高嵩密度化する観点、及び生産性の観点から、1〜10パスが好ましい。パスを繰返すことにより、粗大粒子が粉砕され、粒径のばらつきが少ない粉末状セルロース含有原料を得ることができる。
なお、1次粉砕によってセルロース含有量は変動せず、1次粉砕後の原料から水を除いた場合の残余の成分中のセルロース含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。
1次粉砕後のセルロース含有原料の嵩密度は、セルロース含有原料の取扱い性と生産性の観点から、100〜500kg/m3が好ましく、120〜400kg/m3がより好ましく、150〜350kg/m3が更に好ましい。
また、1次粉砕後のセルロース含有原料の平均粒径は、2次粉砕に用いる粉砕機においてセルロース含有原料を効率的に分散させる観点から、0.01〜1.0mmが好ましく、0.01〜0.7mmがより好ましく、0.05〜0.5mmが更に好ましい。
なお、セルロース含有原料の嵩密度、及び1次粉砕後のセルロース含有原料の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
1次粉砕後のセルロース含有原料の水分含量は、4.5〜10質量%が好ましい。
(水分含量が調整されたセルロース含有原料の調製)
セルロース含有原料の水分含量の調整方法としては、乾燥処理を含む方法であればよく、その処理方法としては特に限定されない。例えば、熱風受熱乾燥法、伝導受熱乾燥法、除湿空気乾燥法、冷風乾燥法、マイクロ波乾燥法、赤外線乾燥法、天日乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法等の公知の方法を適宜採用すればよい。
乾燥機としては、例えば、「粉体工学概論」(社団法人日本粉体工業技術会編集、粉体工学情報センター、1995年発行)176頁に記載の乾燥機等が挙げられる。
乾燥処理における温度は、10〜250℃が好ましく、50〜150℃がより好ましく、60〜120℃が更に好ましい。処理時間は、0.01〜2hrが好ましく、0.02〜1hrがより好ましい。必要に応じて減圧下で乾燥処理を行ってもよく、圧力としては、1〜120kPaが好ましく、50〜105kPaがより好ましい。
乾燥処理の前には、セルロース含有原料をチップ状又は直方体状に粗粉砕しておくことが好ましい。粗粉砕したセルロース含有原料の大きさは、チップ状とする場合は、乾燥処理及び2次粉砕を効率よく容易に行う観点から、好ましくは1〜50mm角、より好ましくは1〜30mm角であり、直方体状とする場合は、好ましくは1〜20mm角である。なお、粗粉砕方法としては、前記の粗粉砕処理と同様の方法が挙げられる。
なお、市販のパルプ類、バイオマス資源として利用される紙類、木材類、植物茎・葉類、植物穀類等の一般に利用可能なセルロース含有原料は、5質量%以上、通常5〜30質量%程度の水分を含有している。
したがって、本発明における乾燥処理したセルロース含有原料中の水分含量は、2次粉砕の生産性及び乾燥効率の観点から、0.2〜4.3質量%が好ましく、0.3〜4.0質量%がより好ましく、0.4〜3.5質量%がより好ましく、0.6〜3.0質量%が更に好ましい。
また、水分含量が調整されたセルロース含有原料の嵩密度は、前記1次粉砕後のセルロース原料の嵩密度と同様の値を有することが好ましい。
更に水分含量が調整されたセルロース含有原料の平均粒径は、1.0〜50.0mmが好ましく、2.0〜50.0mmがより好ましい。なお、前記水分含量が調整されたセルロース含有原料の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
次に、前記の1次粉砕又は乾燥処理により得られたセルロース含有原料を非晶化するために2次粉砕に供する。
(2次粉砕)
2次粉砕に用いる粉砕機(以下「粉砕機A」ともいう)としては、媒体式粉砕機が好ましい。媒体式粉砕機には容器駆動式粉砕機と媒体攪拌式粉砕機とがある。
容器駆動式粉砕機としては転動ミル、振動ミル、遊星ミル、遠心流動ミル等が挙げられる。これらの中では、粉砕効率が高く、生産性の観点から、振動ミルが好ましい。
媒体攪拌式粉砕機としてはタワーミル等の塔型粉砕機;アトライター、アクアマイザー、サンドグラインダー等の攪拌槽型粉砕機;ビスコミル、パールミル等の流通槽型粉砕機;流通管型粉砕機;コボールミル等のアニュラー型粉砕機;連続式のダイナミック型粉砕機等が挙げられる。これらの中では、粉砕効率が高く、生産性の観点から、攪拌槽型粉砕機が好ましい。
媒体攪拌式粉砕機を用いる場合の攪拌翼の先端の周速は、好ましくは0.5〜20m/s、より好ましくは1〜15m/sである。なお、粉砕機の種類は「化学工学の進歩 第30集 微粒子制御」(社団法人化学工学会東海支部編、1996年10月10日発行、槇書店)を参照することができる。
粉砕機の媒体の材質としては、特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラス等が挙げられる。媒体の形状としては、特に制限はなく、ボール、ロッド、チューブ等が挙げられる。なお、ロッドとは棒状の媒体であり、ロッドの断面が四角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等のものを用いることができる。
粉砕機Aが振動ミルであって、媒体がロッドの場合には、ロッドの外径としては、好ましくは0.5〜200mm、より好ましくは1.0〜100mm、更に好ましくは5〜50mmである。ロッドの大きさが前記の範囲内であれば、所望の粉砕力が得られ、効率的にセルロースを非晶化させることができる。
ロッドの充填率は、容器駆動式粉砕機の機種により好適な充填率が異なるが、好ましくは10〜70%、より好ましくは15〜60%の範囲である。充填率がこの範囲内であれば、セルロース含有原料とロッドとの接触頻度が向上して、粉砕効率を向上させることができる。
ここで充填率とは、容器駆動式粉砕機の攪拌部の容積に対するロッドの見かけの体積をいう。また、セルロース含有原料とロッドとの接触頻度を高め粉砕効率を向上させる観点から、ロッドは複数本使用することが好ましい。
また、粉砕機Aが攪拌槽型粉砕機であって、媒体がボールの場合には、ボールの外径としては、好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは0.5〜50mmの範囲である。ボールの大きさが前記の範囲内であれば、所望の粉砕力が得られ、効率的にセルロースを非晶化させることができる。
ボールの充填率は、攪拌槽型粉砕機の機種により好適な充填率が異なるが、好ましくは10〜97%、より好ましくは15〜95%の範囲である。充填率がこの範囲内であれば、セルロース含有原料とボールとの接触頻度が向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、粉砕効率を向上させることができる。ここで充填率とは、攪拌槽型粉砕機の攪拌部の容積に対するボールの見かけの体積をいう。
処理時間は、粉砕機の種類、媒体の種類、大きさ及び充填率等により一概に決定できないが、結晶化度を低下させる観点から、好ましくは0.01〜50hr、より好ましくは0.05〜20hr、より好ましくは0.1〜10hr、更に好ましくは0.1〜5hrである。処理温度は、特に制限はないが、熱による劣化を防ぐ観点から、好ましくは5〜250℃、より好ましくは10〜200℃である。
このようにして得られたセルロースは、結晶化度が50%未満に非晶化されているが、得られるゴム組成物の機械的強度と高反発弾性を両立する観点から、セルロースの平均粒径は、好ましくは0.01〜150μmであり、より好ましくは0.01〜100μmであり、より好ましくは0.01〜50μmであり、より好ましくは0.01〜30μmであり、更に好ましくは0.1〜20μmである。
従って、2次粉砕により得られたセルロースは、適宜、分級工程、篩工程等を行って、粒径を調整してもよい。また、セルロースの平均粒径が前記範囲となるよう小粒径化処理して得られたものであることが好ましい。
なお、セルロースの平均粒径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
セルロースの小粒径化処理の方法としては、結晶化度が50%未満になるよう調整されたセルロースに、粉砕助剤を添加して粉砕処理(以下「3次粉砕」ともいう)する方法が好ましい。3次粉砕に供するセルロースとしては、結晶化度が50%未満になるよう調整されたものであれば特に限定はないが、前記機械的処理により結晶化度が50%未満になるよう調整されたセルロースであることが好ましい。
以上のことから、本発明のゴム組成物に含有される結晶化度が50%未満であるセルロースは、前記機械的処理により得られたセルロース、即ち、粉砕機Aで処理して得られたセルロースに、更に粉砕助剤を添加して粉砕処理することにより得られた微細セルロース粒子であることが好ましい。
(3次粉砕)
3次粉砕に用いる粉砕機(以下「粉砕機B」ともいう)としては、媒体式粉砕機が好ましく、2次粉砕に好適な粉砕機Aと同様のものが例示される。なお、粉砕機Aと粉砕機Bは同一のものを用いても、異なるものを用いてもよい。
粉砕機の媒体の材質、形状は、前記と同様である。セルロースの微粒化効率の観点から、粉砕機Bとしては、ロッドを充填した振動ミルが好ましい。ロッドの大きさ、ロッドの充填率は前記と同様である。
(粉砕助剤)
3次粉砕においては、セルロースの粉砕効率等の観点から、粉砕助剤を用いることができる。粉砕助剤に特に制限はないが、高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪族アミド、高級脂肪酸金属塩、フェニルホスホン酸金属塩、脂肪酸エステル類及びポリエーテルから選ばれる1種以上が好ましい。
高級アルコールの好適例としては、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の炭素数12〜22のアルコールが挙げられる。
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の炭素数12〜22の脂肪酸が挙げられ、ミリスチン酸、ステアリン酸が好ましい。
高級脂肪族アミドの好適例としては、メチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のアルキレンビスヒドロキシ脂肪酸アミド等が挙げられ、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドがより好ましい。
高級脂肪酸金属塩の好適例としては、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の炭素数12〜22の脂肪酸金属塩が挙げられる。
フェニルホスホン酸金属塩の好適例としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、バリウム、銅、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケル等の塩が挙げられ、亜鉛塩がより好ましい。
脂肪酸エステル類の好適例としては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
1COOR2 (2)
(式中、R1は、炭素数4〜30のアルキル基、アルケニル基、又はヒドロキシアルキル基を示し、R2は、炭素数2〜20のアルキル基、アルケニル基、エーテル基、アルキルエーテル基及び水酸基を含むアルキル基、グリセライドから一つのアシルオキシ基を除いた残基、又はアルキレンオキシ基を示す。)
一般式(2)の化合物の具体例としては、ペンタエリスリトールモノステアレート、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル化合物が挙げられる。
ポリエーテルの好適例としては、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
3−O−(C24O)s(C36O)t−H (3)
(式中、R3は、水素原子又は炭素数1〜22、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基を示し、s及びtは平均付加モル数を示し、それぞれ独立に0〜100の数である(ただし、s=t=0であることはない))。
このポリエーテルの質量平均分子量は、100〜20000が好ましく、400〜20000がより好ましい。
前記の粉砕助剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
粉砕助剤の添加量は、セルロースの平均粒径を効率的に低減する観点から、3次粉砕に供されるセルロース100重量部に対して、好ましくは0.1〜100重量部であり、より好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部であり、更に好ましくは2〜20重量部である。
3次粉砕の処理時間は、粉砕機の種類や、粉砕機に充填する媒体の種類、大きさ、及び充填率等により適宜調整しうるが、効率的にセルロースの平均粒径を低減させる観点から、好ましくは0.01〜50hr、より好ましくは0.05〜20hr、より好ましくは0.1〜10hr、更に好ましくは0.1〜5hrである。粉砕処理温度は、特に制限はないが、熱劣化を防ぐ観点から、好ましくは5〜250℃、より好ましくは10〜200℃、更に好ましくは15〜150℃である。
かくして、3次粉砕により、セルロース粒子同士の強い凝集が抑制された微粒化セルロースが得られる。この微粒化セルロースの平均粒径は、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.1〜20μmである。
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムと結晶化度が50%未満であるセルロースとを含有する。その含有割合に特に制限はないが、加工性、反発弾性、軽量性の観点から、ジエン系ゴム100質量部に対し、結晶化度が50%未満であるセルロースを5〜80質量部含有することが好ましく、6〜70質量部含有することがより好ましく、7〜60質量部含有することがより好ましく、8〜55質量部含有することが更に好ましい。該セルロースの含有量が少な過ぎると反発弾性の向上効果が小さく、逆に多過ぎるとモジュラスが低下するおそれがあるため好ましくない。
結晶化度が50%未満であるセルロースの平均粒径は、配合時の取り込み性と加工性及び高反発弾性のバランスの観点から、前記のとおり、好ましくは0.01〜150μmであり、より好ましくは0.01〜100μmであり、より好ましくは0.01〜50μmであり、より好ましくは0.01〜30μmであり、更に好ましくは0.1〜20μmである。
[ゴム組成物の調製]
本発明のゴム組成物には、前記セルロースに加えて、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常、ゴム工業界で用いられるカーボンブラックやシリカ等の補強用充填材、各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、各種オイル、可塑剤等のタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を従来の一般的な量で含有させることができる。
(補強用充填材)
使用できるカーボンブラックに特に制限はないが、得られるゴム組成物の機械的強度と高反発弾性を両立する観点から、窒素吸着比表面積(N2SA;JIS K6217に準拠して測定)が20〜90m2/gのものが好ましく、25〜90m2/gのものがより好ましい。このようなカーボンブラックとしては、例えば、HAF、FEF、GPF、SRF、N339、IISAF−HS(N285)等が挙げられる。カーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。
使用できるシリカも特に制限はなく、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、なかでも破壊特性の改良効果に優れる湿式シリカが好ましい。シルカの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。
(シランカップリング剤)
本発明のゴム組成物においては、補強性充填材としてシリカを用いる場合、その補強性等を更に向上させる目的で、シランカップリッグ剤を配合することができる。使用できるシランカップリング剤に特に制限はないが、ビス−〔3−(エトキシシリル)−プロピル〕−テトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等のポリスルフィド型シランカップリング剤等が好適である。シランカップリング剤の配合量は、シランカップリング剤の種類等により異なるが、シリカに対して、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%の範囲で選定される。
(加硫剤、加硫促進剤)
本発明のゴム組成物は、硫黄架橋性であり、加硫剤として硫黄が好適に用いられる。その使用量としては、反発弾性及び機械的強度の確保の観点から、ジエン系ゴム100質量部に対し、硫黄分(硫黄及び硫黄供与剤の硫黄分の合計量)を好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、配合することが好ましい。
使用できる加硫促進剤は、特に限定されはないが、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−ベンゾチアゾール ジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾール スルフェンアミド等のスルフェンアミド系、ジフェニルグアニジン等のグアニジン系の加硫促進剤等が挙げられる。
その使用量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、好ましくは0.1〜5.0質量部、より好ましくは0.2〜3.0質量部である。
(その他の添加剤)
軟化剤として用いるプロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等を挙げられるが、引張強度、耐摩耗性を重視する用途には芳香族系が、ヒステリシスロス、低温特性を重視する用途にはナフテン系又はパラフィン系が用いられる。その使用量は、引張強度、低発熱性の観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部、より好ましくは80質量部以下であり、更に好ましくは50質量部以下である。
使用できる老化防止剤としては、例えばN−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物等が挙げられる。その使用量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1〜6.0質量部、より好ましくは0.3〜5.0質量部である。
また、本発明のゴム組成物は、公知の方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋して使用することができる。例えば、ロール等の開放式混練機、バンバリーミキサー等の密閉式混練機等の混練機を用いて混練し、成形加工後に加硫を行ない、各種ゴム製品用途に適用することができる。例えば、タイヤ用途を始め、防振ゴム、防舷材,ベルト、ホースその他の工業品等の用途に用いることができるが、特に、低燃費用タイヤ、大型タイヤ、高性能タイヤのトレッド用ゴムとして好適に使用される。
本発明のゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤは、反発弾性に優れ、転がり抵抗が低く低燃費性に優れる。なお、空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスが挙げられる。本発明のゴム組成物をトレッドに用いる場合は、例えばトレッド用部材に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤを得ることができる。
以下、実施例、比較例において、各物性の測定、評価は、以下の方法により行った。
〔セルロースの平均粒径〕
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定条件は、粒径測定前に超音波で1分間処理し、測定時の分散媒体として水を用い、体積中位粒径(D50)を、温度25℃にて測定した。
(1)セルロース含有原料の嵩密度
嵩密度は、ホソカワミクロン株式会社製、商品名「パウダーテスター」を用いて測定する。測定は、ふるいを振動させて、サンプルをシュートを通じ落下させ、規定の容器(容量100mL)に受け、該容器中のサンプルの質量を測定することにより算出した。ただし綿状化したサンプルについては、ふるいを通さずにシュートを通じ落下させ、規定の容器(容量100mL)に受け、該容器中のサンプルの質量を測定することにより算出した。
(2)セルロース含有原料の水分含量
水分含量は、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、商品名「FD−610」)を使用し、150℃にて測定を行う。
(3)セルロースI型結晶化度
セルロースI型結晶化度は、サンプルのX線回折強度を、株式会社リガク製、商品名「Rigaku RINT 2500VC X−RAY diffractometer」を用いて以下の条件で測定し、前記計算式に基づいて算出した。なお、測定用サンプルは、面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮して作製した。
X線源:Cu/Kα−radiation
管電圧:40kv 管電流:120mA
測定範囲:回折角2θ=5〜45° スキャンスピード:10°/min
(4)セルロース含有量
セルロース含有量は、社団法人日本分析化学会編、分析化学便覧(改訂四版、平成3年11月30日、丸善株式会社発行)の1081頁〜1082頁に記載のホロセルロース定量法に準拠して測定した。
(5)セルロースに含まれるリグニン量
Klason−Lignin法により、酸不溶性リグニン量と酸可溶性リグニン量を求め、この合計量をセルロースに含まれるリグニン量とした。
具体的には、粒度1.0mmに粉砕した試料約7.5gを、エタノールとベンゼンの混合溶媒〔エタノール/ベンゼン=1/2(質量比)〕を用いて、ソックスレー抽出により有機溶媒可溶分を抽出した後の試料約0.3gを、氷上にて、72%H2SO4(4.5mL)と合わせ、30℃でインキュベーション(1125r/m)する。次いで、蒸留水でH2SO4の濃度を約3%まで薄め、オートクレーブで30分間加熱した後、吸引濾過する。残渣を秤量して酸不溶性リグニン量をとする。また、濾液0.3mLに3%H2SO4(2.7mL)を加え10倍希釈し、分光光度計(株式会社日立製作所製、U−2010)を用いて205nm〜210nm付近の最大吸光度を測定し、吸光度から酸可溶性リグニン量を次式により求める。
酸可溶性リグニン量(%)=100×希釈率×濾液量(L)×(試料溶液の吸光度−3%H2SO4の吸光度)÷{リグニンの吸光係数(=110L/g・cm)×用いた試料の質量(g)×吸光度測定用セル長(cm)}
(6)ムーニー粘度
JIS K−5630に従って測定した(ML1+4100℃)。結果は比較例1の値を100として指数表示した。この値が小さいほど加工性に優れることを示す。
(7)比重
JIS K−6268に従って密度を測定し、比重を求めた。
(8)反発弾性
リュプケ反発弾性試験機(株式会社上島製作所社製、Model:VR−6510)を用いて、JIS K−6255.4に従って測定した。
得られた反発弾性値は、ムーニー粘度と同様に比較例1の値を100として指数表示した。反発弾性指数の値が大きいほど反発弾性が大きく良好である。
製造例1(非晶質セルロースAの製造)
(1)シュレッダー処理(粗粉砕)
セルロース含有原料として、シート状木材パルプ(Borregard社製「Blue Bear Ultra Ether」、800mm×600mm×1.5mm、結晶化度81%、セルロース含有量96質量%(セルロース含有原料から水を除いた残余の成分中の含有量、以下同じ)、水分含量7.0質量%)をシュレッダー(明光商会社、「MSX2000−IVP440F」)にかけ、約10mm×5mm×1.5mmのチップ状パルプ(嵩密度200kg/m3、水分含量7%)にした。
(2)押出機処理(1次粉砕)
得られたチップ状パルプを二軸押出機(株式会社スエヒロEPM製、「EA−20」)に2kg/hrで投入し、せん断速度660sec-1、スクリュー回転数300r/minで外部から冷却水を流しながら、1パス処理した。なお、前記二軸押出機は、完全噛み合い型同方向回転二軸押出機であり、2列に配置されたスクリューは、スクリュー径40mmのスクリュー部と、互い違い(90°)に12ブロックを組み合わせたニーディングディスク部とを有し、2本のスクリューは、同じ構成を有するものである。また、二軸押出機の温度は、処理にともなう発熱により、30〜70℃であった。押出機処理後(1次粉砕後)に得られたパルプは、平均粒径120μm、嵩密度219kg/m3であった。
(3)粉砕機処理(2次粉砕)
押出機処理後に得られたパルプを、粉砕機Aとしてバッチ式攪拌槽型粉砕機(アイメックス株式会社製、商品名「サンドグラインダー」:容器容積800mL、5mmΦジルコニアビーズを720g充填、充填率25%、攪拌翼径70mm)に50g投入した。容器ジャケットに冷却水を通しながら、攪拌回転数2000r/minで、180分粉砕処理を行った。操作の際の温度は、30〜70℃の範囲であった。
処理終了後、攪拌槽型粉砕機内の壁面や底部にパルプの固着物等は見られなかった。2次粉砕処理後に得られたパルプを前記攪拌槽型粉砕機から取り出し、75μm目開きの篩をかけ、篩下品として、45g(投入量の90質量%)の非晶質セルロースA(セルロースI型結晶化度0%、平均粒径30μm、リグニン量0%)を得た。
製造例2(非晶質セルロースBの製造;3次粉砕)
製造例1で得られた非晶性セルロースA(セルロースI型結晶化度0%、平均粒径 μm)に対し、ステアリン酸(花王株式会社製、ルナックS-98)を10質量%を混合し、その混合物の全量を振動ミル(中央化工機株式会社製、「MB−1」、容器全容量3.5L)に投入し、ロッド(断面形状:円形、直径:30mm、長さ:218mm、材質:ステンレス)11本を振動ミルに充填して、振幅8mm、回転数1200cpmの条件で0.5時間粉砕を行った。得られた微細セルロースBの平均粒径は30μmであった。
製造例3(非晶質セルロースCの製造;3次粉砕)
製造例2において、ステアリン酸を非晶性セルロースAに対し、30質量%を混合した以外は製造例2と同様の操作を行い、微細セルロースC(平均粒径30μm)を得た。
製造例4(非晶質セルロースDの製造;3次粉砕)
製造例2において、ステアリン酸の代わりにオレイン酸(花王式会社製、ルナックO−A)を用いた以外は製造例2と同様の操作を行い、微細セルロースD(平均粒径30μm)を得た。
製造例5(非晶質セルロースEの製造;3次粉砕)
製造例2において、ステアリン酸(花王株式会社製、ルナックS-98)10質量%の代わりに、ステアリルアルコール(花王株式会社製、カルコール8098)10質量%を混合した以外は製造例2と同様の操作を行い、微細セルロースE(平均粒径30μm)を得た。
製造例6(非晶質セルロースFの製造;3次粉砕)
製造例5において、ステアリルアルコールを非晶性セルロースAに対し、30質量%を混合した以外は製造例5と同様の操作を行い、微細セルロースF(平均粒径30μm)を得た。
参考例1、実施例〜5(SBRゴム組成物)
製造例1で得られた非晶性セルロースAを用いてSBRゴム組成物を製造した。
表1に示す配合組成において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を2リットルの密閉型ミキサーで3〜5分間混練し、温度が165℃に達したときに放出してSBRゴムのマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、SBRゴム組成物を得た。
得られたSBRゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で20分間加硫処理して加硫ゴムシートを調製し、その物性を評価した。結果を表1に示す。
実施例6〜8(SBRゴム組成物)
製造例2〜4で得られた非晶性セルロースB〜Dを用いて、実施例〜5と同様にして、表1に示す配合組成のSBRゴム組成物を製造した。
比較例1〜4(SBRゴム組成物)
非晶性セルロースを用いないで、実施例〜5と同様にして、表1に示す配合組成のSBRゴム組成物を製造した。
Figure 0005448803
参考例2、実施例10〜11(天然ゴム組成物)
製造例1で得られた非晶性セルロースAを用いて天然ゴム組成物を製造した。
表2に示す配合組成において、実施例〜5と同様にして、加硫促進剤と硫黄を除く成分を2リットルの密閉型ミキサーで3〜5分間混練し、天然ゴムのマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、天然ゴム組成物を得た。
得られた天然ゴム組成物を参考例1と同様に加硫処理して加硫ゴムシートを調製し、その物性を評価した。結果を表2に示す。
なお、ムーニー粘度及び反発弾性は、比較例5の値を100として指数表示した。
実施例12〜13(天然ゴム組成物)
製造例5〜6で得られた非晶性セルロースE〜Fを用いて、実施例10〜11と同様にして、表2に示す配合組成の天然ゴム組成物を製造した。
比較例5〜6(天然ゴム組成物)
非晶性セルロースを用いないで、実施例10〜11と同様にして、表2に示す配合組成の天然ゴム組成物を製造した。
Figure 0005448803
なお、表1及び表2に示す各成分の詳細は、以下のとおりである。
*1:スチレン・ブタジエンゴム、日本ゼオン株式会社製、乳化重合SBR、商品名:Nipol 1502、ムーニー粘度:52
*2:高磨砕ファーネスブラック(HAF)、三菱化学株式会社製、商品名:ダイアブラックH
*3: A:製造例1で得られた非晶質セルロースA(セルロースI型結晶化度0%、平均粒径30m)
B:製造例2で得られた非晶質セルロースB(セルロースI型結晶化度0%、平均粒径30μm)
C:製造例3で得られた非晶質セルロースC(セルロースI型結晶化度0%、平均粒径30μm)
D:製造例4で得られた非晶質セルロースD(セルロースI型結晶化度0%、平均粒径30μm)
E:製造例5で得られた非晶質セルロースE(セルロースI型結晶化度0%、平均粒径30μm)
F:製造例6で得られた非晶質セルロースF(セルロースI型結晶化度0%、平均粒径30μm)
結晶性セルロース:旭化成株式会社製、商品名TG−101(セルロースI型結晶化度81%、平均粒径30μm)
*4:東ソー・シリカ株式会社製、沈殿法シリカ(ホワイトカーボン)、商品名:ニップシールAQ
*5:デグッサ社製、ポリスルフィド型シランカップリング剤、商品名:Si69、ビス−〔3−(エトキシシリル)−プロピル〕−テトラスルフィド
*6:正同化学工業株式会社製、酸化亜鉛3種
*7:花王株式会社製、商品名:ルナックS-50V
*8:フレキシス社製、商品名:SANTOFLEX 6PPD
*9:川口化学工業株式会社製、チアゾール系加硫促進剤、商品名:アクセルDM、2−ベンゾチアゾール ジスルフィド
*10:川口化学工業株式会社製、スルフェンアミド系加硫促進剤、商品名:アクセルNS、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾール スルフェンアミド
*11:鶴見化学工業株式会社製、金華印油入微粉硫黄
*12:天然ゴム(NR)、シートゴム RSS 3号
*13:出光興産株式会社製、芳香族系プロセスオイル、商品名:ダイアナプロセスオイルAH−58
表1及び表2にから、実施例のゴム組成物は、比較例のゴム組成物に比べて、ムーニー粘度が小さく加工性に優れ、反発弾性にも優れており、軽量であることが分かる。
同じセルロース含有量である、実施例2と比較例4、実施例5と比較例3、及び実施例10と比較例6とを比べると、結晶化度が50%未満のセルロースを使用しているゴム組成物が、いずれも、ムーニー粘度が小さく加工性に優れ、反発弾性にも優れていることが分かる。
本発明によれば、良好な加工性と高反発弾性が高次バランスした、軽量化されたゴム組成物を提供することができる。このゴム組成物は、空気入りタイヤ用ゴム組成物として、特にタイヤトレッド用、ベーストレッド用、カーカスコート用、サイドウォール用、ベルトコート用、ビートフィラー用、インナーライナー用等として有用である。

Claims (5)

  1. ジエン系ゴム100質量部に対し、結晶化度が0%未満であるセルロースを20〜80質量部含有するゴム組成物であって、結晶化度が10%未満であるセルロースが、結晶化度が50%以上のセルロースを含有する、嵩密度が100〜500kg/m 3 、平均粒径が0.01〜1.0mmのセルロース含有原料であって、かつ該原料から水を除いた場合の残余の成分中のセルロース含有量が20重量%以上であるセルロース含有原料を、粉砕機で処理して得られたものである、ゴム組成物。
  2. セルロースの平均粒径が0.01〜150μmである、請求項に記載のゴム組成物。
  3. 結晶化度が0%未満であるセルロースが、粉砕機で処理して得られたセルロース100重量部に対して、更に0.1〜100重量部の粉砕助剤を添加して粉砕機で粉砕処理して得られたものである、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
  4. 請求項1〜3に記載のゴム組成物の製造方法であって、結晶化度が50%以上のセルロースを含有する、嵩密度が100〜500kg/m 3 、平均粒径が0.01〜1.0mmのセルロース含有原料であって、かつ該原料から水を除いた場合の残余の成分中のセルロース含有量が20重量%以上であるセルロース含有原料を、粉砕機で処理する工程と、粉砕機で処理したセルロースとジエン系ゴムとを混練する工程を有する、ゴム組成物の製造方法。
  5. 粉砕機で処理する工程が、セルロースの結晶化度が50%未満になるまで粉砕機で処理し、次いで、0.1〜100重量部の粉砕助剤を添加して粉砕機で粉砕する工程である、請求項4に記載の製造方法。
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