JP4847093B2 - 切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、砥石ブレードを備えた切削工具、更に詳しくは砥石ブレードに超音波振動を付与しつつ半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の被加工物を切削する切削装置に用いる切削工具に関する。
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。また、サファイヤ基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード、CCD等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
上述したウエーハのストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと称されている切削装置によって行われている。この切削装置は、ウエーハ等の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる切削送り手段とを具備している。切削手段は、回転スピンドルと該スピンドルに装着された砥石ブレードを備えた切削工具および回転スピンドルを回転駆動する駆動機構を備えたスピンドルユニットを含んでいる。このような切削装置においては、切削工具を20000〜40000rpmの回転速度で回転しつつ、切削工具とチャックテーブルに保持された被加工物を相対的に切削送りする。
しかるに、デバイスが形成されるウエーハは、シリコン、サファイヤ、シリコンナイトライド、ガラス、リチウムタンタレート等の脆性硬質材料が用いられており、砥石ブレードによって切削すると切断面に欠けが生じてデバイスの品質を低下させるという問題がある。また、サファイヤ等のモース硬度の高いウエーハは、砥石ブレードによる切削が不可能ではないにしても非常に困難である。
上述した問題を解消するために、砥石ブレードを備えた切削工具が装着された回転スピンドルに超音波振動子を配設し、この超音波振動子に交流電圧を印加することにより、砥石ブレードに超音波振動を付与しつつ切削するようにした切削方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
特許第3469516号公報
上述した切削方法に用いる切削工具は、回転スピンドルに取付けられる振動伝達部材と、該振動伝達部材に装着された円環状の砥石ブレードからなっており、振動伝達部材が回転スピンドルの端面に固定部材によって挟持固定される。回転スピンドルに伝達された超音波振動を振動伝達部材に確実に伝達するためには、振動伝達部材が回転スピンドルおよび固定部材と密着して固定されることが重要である。しかるに、振動伝達部材と回転スピンドルおよび固定部材とを確実に密着させることは困難である。そこで、振動伝達部材と回転スピンドルおよび固定部材との間に合成樹脂で形成された厚さが5μm程度のスペーサーを介在させたところ、回転スピンドルに伝達された超音波振動が振動伝達部材に確実に伝達することが判った。しかしながら、振動伝達部材と回転スピンドルおよび固定部材との間に厚さが5μm程度の薄いスペーサーを介在させる作業は難しいとともに、スペーサーの介在を忘れるという問題がある。
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、振動伝達部材と回転スピンドルおよび固定部材との間にスペーサーを介在させる作業が容易で、且つスペーサーの介在忘れを防止することができる切削工具を提供することにある。
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、超音波振動手段が配設された回転スピンドルの端面に固定部材によって挟持固定される切削工具であって、
該回転スピンドルの端面と対面する第1の端面と該固定部材と対面する第2の端面を備えた振動伝達部材と、該振動伝達部材に装着された円環状の砥石ブレードとからなり、
該振動伝達部材の該第1の端面および該第2の端面には、合成樹脂からなるスペーサーが装着され、該スペーサーの硬度は、ショアD60以上に設定されており、該超音波振動手段から該回転スピンドルに伝達された超音波振動が該震動伝達部材へ伝達される、
ことを特徴とする切削工具が提供される。
上記振動伝達部材の第1の端面および第2の端面に装着されるスペーサーは、経時的に固化する液状樹脂を塗布して形成する。経時的に固化する液状樹脂は、スピンコートによって振動伝達部材の第1の端面および第2の端面に塗布されることが望ましい。
該震動伝達部材は中央大径部と、該中央大径部の一端面から同軸状に突出して形成された第1の小径部と、中央大径部の他端面から同軸状に突出して形成された第2の小径部とからなり、該砥石ブレードは振動伝達部材の中央大径部における第1の小径部側の端面に取り付けられる、ことが望ましい。
本発明による切削工具は、振動伝達部材の該第1の端面および該第2の端面には合成樹脂からなるスペーサーが装着されているので、回転スピンドルへの取り付け作業が容易となるとともに、スペーサーの介在忘れを防止することができる。
また、該スペーサーの硬度は、ショアD60以上に設定されており、該超音波振動手段から該回転スピンドルに伝達された超音波振動が該震動伝達部材へ伝達されるので、加工に寄与する砥石ブレードの振幅を得ることができる。
以下、本発明に従って構成された切削工具の好適な実施形態について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
図1には、本発明に従って構成された切削工具が装着された切削装置の斜視図が示されている。図示の実施形態における切削装置は、略直方体状の装置ハウジング2を具備している。この装置ハウジング2内には、被加工物を保持するチャックテーブル3が切削送り方向である矢印Xで示す方向に移動可能に配設されている。チャックテーブル3は、吸着チャック支持台31と、該吸着チャック支持台31上に配設された吸着チャック32を具備しており、該吸着チャック32の上面である保持面上に被加工物を図示しない吸引手段を作動することによって吸引保持するようになっている。また、チャックテーブル3は、図示しない回転機構によって回転可能に構成されている。なお、チャックテーブル31には、被加工物として後述するウエーハを保護テープを介して支持する支持フレームを固定するためのクランプ33が配設されている。このように構成されたチャックテーブル3は、図示しない切削送り手段によって、矢印Xで示す切削送り方向に移動せしめられるようになっている。
図1に示す切削装置は、切削手段としてのスピンドルユニット4を具備している。スピンドルユニット4は、図示しない移動基台に装着され図示しない割り出し送り手段によって上記矢印Xで示す切削送り方向と直交する矢印Yで示す割り出し方向に移動せしめられるとともに、図示しない切り込み送り手段によって切り込み方向である矢印Zで示す方向に移動せしめられるようになっている。このスピンドルユニット4について、図2を参照して説明する。
図2に示すスピンドルユニット4は、スピンドルハウジング41と、該スピンドルハウジング41内に回転自在に配設された回転スピンドル42と、該回転スピンドル42の先端に装着される切削工具43を具備している。スピンドルハウジング41は略円筒状に形成され、軸方向に貫通する軸穴411を備えている。上記スピンドルハウジング41に形成された軸穴411に挿通して配設される回転スピンドル42は、その前端部にネジ穴421が設けられた工具装着部422を備え、その中央部には径方向に突出して形成されたスラスト軸受フランジ423が設けられている。このようにしてスピンドルハウジング41に形成された軸穴411に挿通して配設される回転スピンドル42は、軸穴411の内壁との間に供給される高圧エアーによって回転自在に支持される。
回転スピンドル42の先端部に設けられた工具装着部422に装着された切削工具43は、振動伝達部材44と、該振動伝達部材44に装着された円環状の砥石ブレード45とからなっている。振動伝達部材44は図示の実施形態においてはアルミニウムによって形成され、中央大径部441と、該中央大径部441の一端面から同軸状に突出して形成された第1の小径部442と、中央大径部441の他端面から同軸状に突出して形成された第2の小径部443とからなっている。なお、第1の小径部442と第2の小径部443は、同一寸法に形成されている。このように形成された振動伝達部材44には、軸中心を貫通する貫通孔444が形成されている。振動伝達部材44に装着された砥石ブレード45は、図示の実施形態においては振動伝達部材44の中央大径部441における第1の小径部442側の端面に取り付けられ、砥粒をニッケル等の金属メッキで結合した電鋳ブレードによって構成されている。
図示の実施形態における切削工具43は、振動伝達部材44を構成する第1の小径部442の図2において右端面即ち回転スピンドル42と対面する第1の端面442aおよび第2の小径部443の図2において左端面即ち後述する固定部材と対面する第2の端面443aにそれぞれ合成樹脂からなるスペーサー46、46が装着されている。このように構成された切削工具43は、貫通孔444を挿通して配設された固定部材としての締め付けボルト46を回転スピンドル42の工具装着部422に設けられたネジ穴421に螺合することにより、回転スピンドル42に装着される。このとき、振動伝達部材44を構成する第1の小径部442の第1の端面442aおよび第2の小径部443の第2の端面443aにそれぞれ合成樹脂からなるスペーサー46、46が装着されているので、振動伝達部材44の回転スピンドル42への取付け作業が容易であるとともに、スペーサー46、46の介在忘れを確実に防止することができる。
ここで、振動伝達部材44を構成する第1の小径部442の第1の端面442aおよび第2の小径部443の第2の端面443aにスペーサー46、46を装着する方法の一実施形態について、図3乃至図8を参照して説明する。この実施形態においては、図3に示すスピンコーター10を用いて実施する。図3に示すスピンコーター10は、スピンナーテーブル101と、該スピンナーテーブル101の下面に突出して設けられた回転軸102と、該回転軸102を回転駆動する電動モータ103と、スピンナーテーブル101の中心上方に配置された液状樹脂を供給するノズル104とからなっている。スピンナーテーブル101の上面には、中心部に上記振動伝達部材44を構成する第1の小径部442および第2の小径部443が嵌合する円形凹部101aが形成されているとともに、該円形凹部101aを囲んで複数の吸引孔101bが形成されている。なお、複数の吸引孔101bは、図示しない吸引手段に連通されている。
図3に示すスピンコーター10を用いて切削工具43の振動伝達部材44を構成する第1の小径部442の第1の端面442aにスペーサー46を形成するには、第2の小径部443をスピンナーテーブル101の円形凹部101aに嵌合する。従って、振動伝達部材44は、図4に示すように第1の小径部442を上側にしてスピンナーテーブル101上に載置される。この状態においては、振動伝達部材44の中央大径部441がスピンナーテーブル101の複数の吸引孔101bが形成されている領域に載置される。次に、振動伝達部材44に装着されている円環状の砥石ブレード45を保護するための第1のマスク部材105を砥石ブレード45上に載置する。即ち、第1のマスク部材105は、図4に示すように円環状の砥石ブレード45の外径より僅かに大きい外径を有し、中心部には振動伝達部材44を構成する第1の小径部442および第2の小径部443に嵌合する嵌合穴105aを備えている。この第1のマスク部材105の嵌合穴105aをスピンナーテーブル101上に載置された振動伝達部材44の第1の小径部442に嵌合する。この結果、振動伝達部材44に装着されている円環状の砥石ブレード45は、第1のマスク部材105によって覆われる。次に、振動伝達部材44の中心に形成された貫通孔444の第1の小径部442側端部を塞ぐ第2のマスク部材106を貫通孔444に嵌合する。即ち、第2のマスク部材106は、軸部106aと該軸部106aの上端に設けられ貫通孔444の内径より僅かに大きい外径を有するフランジ部106bとからなっており、軸部106aを貫通孔444に嵌合することにより、フランジ部106bによって貫通孔444の上端を塞ぐ。このようにして、スピンナーテーブル101上に振動伝達部材44に載置し、第1のマスク部材105および第2のマスク部材106を上記のようにセットしたならば、図示しない吸引手段を作動してスピンナーテーブル101に設けられた複数の吸引孔101bに負圧を作用せしめる。この結果、振動伝達部材44の中央大径部441が吸引保持される。
次に、図5に示すように、スピンナーテーブル101の上方に配置されたノズル104から経時的に固化する液状樹脂460を第2のマスク部材106のフランジ部106b上に滴下する。そして、電動モータ103を作動してスピンナーテーブル101を1000〜3000rpmの回転速度で回転する。この結果、第2のマスク部材106のフランジ部106bに滴下された液状樹脂460は、遠心力の作用で第1の小径部442の第1の端面442aに流動する。スピンナーテーブル101を20〜30秒間回転することにより、第1の小径部442の第1の端面442aには厚さが1〜5μmの均一な樹脂層が形成される。この樹脂層が経時的に固化すると、図6に示すように第1の小径部442の第1の端面442aに厚さが1〜5μmのスペーサー46が装着される。
また、図3に示すスピンコーター10を用いて振動伝達部材44を構成する第2の小径部443の第2の端面443aにスペーサー46を形成するには、第1の小径部442をスピンナーテーブル101の円形凹部101aに嵌合する。従って、振動伝達部材44は、図7に示すように第2の小径部443を上側にしてスピンナーテーブル101上に載置される。そして、第1のマスク部材105および第2のマスク部材106を上述したと同様にセットし、図示しない吸引手段を作動して砥石ブレード45側を吸引保持する。次に、図8に示すように、スピンナーテーブル101の上方に配置されたノズル104から経時的に固化する液状樹脂460を第2のマスク部材106のフランジ部106b上に滴下する。そして、電動モータ103を作動してスピンナーテーブル101を1000〜3000rpmの回転速度で回転する。この結果、第2のマスク部材のフランジ部105bに滴下された液状樹脂460は、遠心力の作用で第2の小径部443の第2の端面443aに流動する。スピンナーテーブル101を20〜30秒間回転することにより、第2の小径部443の第2の端面443aには厚さが1〜5μmの均一な樹脂層が形成される。この樹脂層が経時的に固化すると、図9に示すように第2の小径部443の第2の端面443aに厚さが1〜5μmのスペーサー46が装着される。
図2に戻って説明を続けると、図示の実施形態におけるスピンドルユニット4は、回転スピンドル42を回転駆動するための電動モータ5を備えている。図示の電動モータ5は、永久磁石式モータによって構成されている。永久磁石式の電動モータ5は、回転スピンドル42の中間部に形成されたモータ装着部424に装着された永久磁石からなるロータ51と、該ロータ51の外周側においてスピンドルハウジング41に配設されたステータコイル52とからなっている。このように構成された電動モータ5は、ステータコイル52に後述する電力供給手段によって交流電力を印加することによりロータ51が回転し、該ロータ51を装着した回転スピンドル42を回転せしめる。
図示の実施形態におけるスピンドルユニット4は、回転スピンドル42に配設され砥石ブレード45に超音波振動を付与する超音波振動子6を備えている。超音波振動子6は、回転スピンドル42の軸方向に分極された円環状の圧電体61と、該圧電体61の両側分極面に装着された円環状の2枚の電極板62、63とからなっている。圧電体61は、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、リチウムタンタレート等の圧電セラミックスによって形成されている。このように構成された超音波振動子6は、回転スピンドル42に装着され、電極板62、63に後述する電力供給手段によって所定周波数の交流電力が印加されると、超音波振動を発生せしめる。なお、超音波振動子6は、軸方向に複数個配設してもよい。
図示の実施形態におけるスピンドルユニット4は、上記超音波振動子6に交流電力を印加するとともに上記電動モータ5に交流電力を印加する電力供給手段7を具備している。
電力供給手段7は、スピンドルユニット4の後端部に配設されたロータリートランス8を具備している。ロータリートランス8は、回転スピンドル42の後端に配設された受電手段81と、該受電手段81と対向して配設されスピンドルハウジング41の後端部に配設された給電手段82とを具備している。受電手段81は、回転スピンドル42に装着されたロータ側コア811と、該ロータ側コア811に巻回された受電コイル812とからなっている。このように構成された受電手段81の受電コイル812の一端は上記超音波振動子6の電極板61に接続され、他端は電極板62に接続される。上記給電手段82は、受電手段81の外周側に配設されたステータ側コア821と、該ステータ側コア821に配設された給電コイル822とからなっている。このように構成された給電手段82の給電コイル822は、電気配線73、74を介して交流電力が供給される。
図示の実施形態における電力供給手段7は、上記ロータリートランス8の給電コイル822に供給する交流電力の交流電源91と、電力調整手段としての電圧調整手段92と、上記給電手段82に供給する交流電力の周波数を調整する周波数調整手段93と、電圧調整手段92および周波数調整手段93を制御する制御手段94と、該制御手段に切削ブレード45に付与する超音波振動の振幅等を入力する入力手段95を具備している。なお、図2に示す電力供給手段7は、制御回路96および電気配線521、522を介して上記電動モータ5のステータコイル52に交流電力を供給する。
図示の実施形態におけるスピンドルユニット4は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
切削作業を行う際には、電力供給手段7から電動モータ5のステータコイル52に交流電力が供給される。この結果、電動モータ5が回転して回転スピンドル42が回転し、該回転スピンドル42の先端に取付けられた切削工具43の振動伝達部材44に装着された砥石ブレード45が回転せしめられる。
一方、電力供給手段7は、制御手段94によって電圧調整手段92および周波数変換手段93を制御し、交流電力の電圧を所定の電圧に制御するとともに、交流電力の周波数を所定周波数(例えば、20kHz)に変換して、ロータリートランス8を構成する給電手段82の給電コイル822に供給する。このように所定周波数の交流電力が給電コイル822に印加されると、回転する受電手段81の受電コイル812を介して超音波振動子6の電極板62と電極板63間に所定周波数の交流電力が印加される。この結果、超音波振動子6は径方向に繰り返し変位して超音波振動する。この超音波振動は、回転スピンドル42を介して切削工具43の振動伝達部材44に伝達され、振動伝達部材44が径方向に超音波振動する。従って、振動伝達部材44に装着された砥石ブレード45は、径方向に超音波振動する。なお、砥石ブレード45に付与される超音波振動の振幅は、超音波振動子6に印加される交流電力の電力量に比例するが、本発明者らの実験によると印加電圧が50から60Vにおいて振幅が安定することが判った。また、砥石ブレード45に付与される超音波振動の振幅は、上記スペーサー46の硬度、即ちスペーサー46を形成する液状樹脂460の硬化した状態での硬度によって異なることが判った。
ここで、上記スペーサー46の硬度と砥石ブレード45に付与される超音波振動の振幅との関係について、図10を参照して説明する。
図10は、上記振動伝達部材44を構成する第1の小径部442の第1の端面442aおよび第2の小径部443の第2の端面443aに硬度が異なるスペーサー46(厚さが5μm)を装着した複数の切削工具43を用意し、それぞれ図2に示すスピンドルユニット4の回転スピンドル42に装着して、超音波振動子6に周波数が20kHzで電圧が55Vの交流電圧を印加し、砥石ブレード45の径方向に振幅を測定した実験結果である。
図10から判るように、硬度がショアD28.5のスペーサー46を装着した切削工具43の砥石ブレード45の振幅は、1.5μm程度である。硬度がショアD60のスペーサー46を装着した切削工具43の砥石ブレード45の振幅は、4.5μm程度となる。また、スペーサー46の硬度がショアD70以上になると、砥石ブレード45の振幅は5μm以上となる。超音波振動加工において加工に寄与する砥石ブレードの振幅は4μm以上であることが好ましく、従って、スペーサー46を形成する材料としては硬化した状態での硬度がショアD60以上の液状樹脂を用いることが望ましい。硬化した状態での硬度がショアD60以上の液状樹脂としては、ハイツマン・アドバンスト・マテリアルズ社の「araldite2011」(ショアD硬度60)、住友スリーエム社の「DP460」(ショアD硬度75〜80)、コニシボンド社の「EセットR」(ショアD硬度80)、アレムコ・プロダクツ社の「2300」(ショアD硬度85)等が挙げられる。
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態における切削装置は、上記チャックテーブル3上に保持された被加工物の表面を撮像し、上記砥石ブレード45によって切削すべき領域を検出するためのアライメント手段12を具備している。このアライメント手段12は、顕微鏡やCCDカメラ等の光学手段からなる撮像手段を具備している。また、切削装置は、アライメント手段12によって撮像された画像等を表示する表示手段13を具備している。
上記装置ハウジング2におけるカセット載置領域14aには、被加工物を収容するカセットを載置するカセット載置テーブル14が配設されている。このカセット載置テーブル14は、図示しない昇降手段によって上下方向に移動可能に構成されている。カセット載置テーブル14上には、被加工物Wを収容するカセット15が載置される。カセット15に収容される被加工物Wは、ウエーハの表面に格子状のストリートが形成されており、この格子状のストリートによって区画された複数の矩形領域にコンデンサーやLEDや回路等のデバイスが形成されている。このように形成された被加工物Wは、環状の支持フレームFに装着された保護テープTの表面に裏面が貼着された状態でカセット15に収容される。
また、図示の実施形態における切削装置は、カセット載置テーブル14上に載置されたカセット15に収容されている被加工物W(環状のフレームFに保護テープTを介して支持されている状態)を仮置きテーブル16に搬出する搬出手段17と、仮置きテーブル16に搬出された被加工物Wを上記チャックテーブル3上に搬送する搬送手段18と、チャックテーブル3上で切削加工された被加工物Wを洗浄する洗浄手段19と、チャックテーブル3上で切削加工された被加工物Wを洗浄手段19へ搬送する洗浄搬送手段20を具備している。
以上のように構成された切削装置の作動について、主に図1を参照して簡単に説明する。
カセット載置テーブル14上に載置されたカセット15の所定位置に収容されている被加工物100は、図示しない昇降手段によってカセット載置テーブル14が上下動することにより搬出位置に位置付けられる。次に、搬出手段17が進退作動して搬出位置に位置付けられた被加工物Wを仮置きテーブル16上に搬出する。仮置きテーブル16に搬出された被加工物Wは、搬送手段18の旋回動作によって上記チャックテーブル3上に搬送される。チャックテーブル3上に被加工物Wが載置されたならば、図示しない吸引手段が作動して被加工物Wをチャックテーブル3上に吸引保持する。また、被加工物Wを保護テープTを介して支持する支持フレームFは、上記クランプ33によって固定される。このようにして被加工物Wを保持したチャックテーブル3は、アライメント手段12の直下まで移動せしめられる。チャックテーブル3がアライメント手段12の直下に位置付けられると、アライメント手段12によって被加工物Wに形成されているストリートが検出され、スピンドルユニット4を割り出し方向である矢印Y方向に移動調節してストリートと切削工具43の砥石ブレード45との精密位置合わせ作業が行われる。
その後、砥石ブレード45を矢印Zで示す方向に所定量切り込み送りし所定の方向に回転させつつ、被加工物Wを吸引保持したチャックテーブル3を切削送り方向である矢印Xで示す方向(砥石ブレード45の回転軸と直交する方向)に所定の切削送り速度で移動することにより、チャックテーブル3上に保持された半導体ウエーハWは砥石ブレード45により所定のストリートに沿って切断される。この切削工程においては、電力供給手段7によって超音波振動子6に例えば周波数が20kHzで電圧が55Vの交流電力が印加される。この結果、上述したように超音波振動子6は径方向に繰り返し変位して超音波振動する。この超音波振動は、回転スピンドル42を介して切削工具43の振動伝達部材44に伝達され、振動伝達部材44が径方向に超音波振動する。従って、振動伝達部材44に装着された砥石ブレード45は、径方向に超音波振動する。従って、砥石ブレード45による切削抵抗が減少するため、被加工物Wがサファイヤ等の難削材であっても容易に切削することができる。
以上、本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変形は可能である。例えば、上述した実施形態においては振動伝達部材44を構成する第1の小径部442の第1の端面442aおよび第2の小径部443の第2の端面443aにスペーサー46、46を装着する方法として、スピンコーター10を用いて液状樹脂をスピンコーティングする例を示したが、液状樹脂を刷毛等で塗布してもよく、予め成型されたスペーサーをボンド剤で接着してもよい。
本発明に従って構成された切削工具が装着された切削装置の斜視図。 図1に示す切削装置に装備されるスピンドルユニットの断面図。 本発明による切削工具を構成する振動伝達部材の端面に合成樹脂からなるスペーサーを装着するためのスピンコーターの斜視図。 本発明による切削工具を構成する振動伝達部材の第1の端面に合成樹脂からなるスペーサーを装着するために図3に示すスピンコーターに振動伝達部材をセットする状態を示す説明図。 図3に示すスピンコーターを用いて本発明による切削工具を構成する振動伝達部材の第1の端面に合成樹脂からなるスペーサーを形成する状態を示す説明図。 振動伝達部材の第1の端面に合成樹脂からなるスペーサーが形成された切削工具の斜視図。 本発明による切削工具を構成する振動伝達部材の第2の端面に合成樹脂からなるスペーサーを装着するために図3に示すスピンコーターに振動伝達部材をセットする状態を示す説明図。 図3に示すスピンコーターを用いて本発明による切削工具を構成する振動伝達部材の第2の端面に合成樹脂からなるスペーサーを形成する状態を示す説明図。 振動伝達部材の2の端面に合成樹脂からなるスペーサーが形成された切削工具の斜視図。 振動伝達部材に装着される合成樹脂からなるスペーサーの硬度と砥石ブレードに付与される超音波振動の振幅との関係を示すグラフ。
符号の説明
2:装置ハウジング
3:チャックテーブ機構
30:チャックテーブル
4:スピンドルユニット
41:スピンドルハウジング
42:回転スピンドル
43:切削工具
44:振動伝達部材
45:砥石ブレード
5:電動モータ
6:超音波振動子
7:電力供給手段
8:ロータリートランス
81:受電手段
82:給電手段
91:交流電源
92:電圧調整手段
93:周波数調整手段
94:制御手段
95:入力手段
10:スピンコーター
12:アライメント手段
13:表示手段
15:カセット
16:仮置きテーブル
17:搬出手段
18:搬送手段
19:洗浄手段

Claims (4)

  1. 超音波振動手段が配設された回転スピンドルの端面に固定部材によって挟持固定される切削工具であって、
    該回転スピンドルの端面と対面する第1の端面と該固定部材と対面する第2の端面を備えた振動伝達部材と、該振動伝達部材に装着された円環状の砥石ブレードとからなり、
    該振動伝達部材の該第1の端面および該第2の端面には、合成樹脂からなるスペーサーが装着され
    該スペーサーの硬度は、ショアD60以上に設定されており、
    該超音波振動手段から該回転スピンドルに伝達された超音波振動が該震動伝達部材へ伝達される、
    ことを特徴とする切削工具。
  2. 該振動伝達部材の該第1の端面および該第2の端面に装着される該スペーサーは、経時的に固化する液状樹脂を塗布して形成する、請求項1記載の切削工具。
  3. 該経時的に固化する液状樹脂は、スピンコートによって該振動伝達部材の該第1の端面および該第2の端面に塗布される、請求項2記載の切削工具。
  4. 該震動伝達部材は中央大径部と、該中央大径部の一端面から同軸状に突出して形成された第1の小径部と、中央大径部の他端面から同軸状に突出して形成された第2の小径部とからなり、
    該砥石ブレードは振動伝達部材の中央大径部における第1の小径部側の端面に取り付けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の切削工具。
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