JP2004351912A - 切断方法及び切断装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来切断困難なネオジ鉄などを切断すること、切断効率を向上させること、切断ブレードの寿命を長くすること及び加工精度を向上させる切断方法及び切断装置を提供する。
【解決手段】回転する切断ブレード1を有している切断装置において、回転軸にねじり振動用圧電素子を嵌め、回転軸方向に締め付けて、そして前記圧電素子に交流電圧を印加するものである。さらに超音波振動子と切断ブレードを一体化して切断ブレードにねじり振動モードと他の振動モードを与える。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス、セラミック、シリコーン、超硬金属などを切断する切断方法及び切断装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ガラス、シリコンウエハー、シリコンナイトライド、超硬金属などの脆性材料に溝入れ又は切断等の加工を施すには、従来例えば図7に示すような薄いリング状の切断ブレード1を回転スピンドル2の先端に取り付けた第1のフランジ18と、回転スピンドル6のねじ部に嵌めた第2のフランジ19とで切断ブレード1を挟み付け、締め付け用ナット11をねじ部に螺着することにより固定し、この切断ブレード1を回転モータ14により回転させてその外周切削部で加工するようになっている。なお、図7(a)は平面図であり、図7(b)は側面図である
また、超音波切削加工は、切削抵抗が低減するため、切削ツールの摩擦熱が少なく加工面の熱歪が少なくなり、切削ツールの寿命が長くなると共に、加工精度の向上につながってくる。なお超音波切削加工について「超音波便覧」(丸善株式会社、平成11年発行)679〜684ページに詳しく記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、切断ブレードに超音波振動を加え、超音波切削加工の特長を持たせる試みが多くなされてきた。しかしながら、過去試された方法は図8に示す平面図のように回転スピンドル2の一部に縦振動を発生する超音波振動子を取り付ける方法であった。すなわち、回転スピンドル2に厚さ方向に分極した圧電素子16a、16bを設け、超音波振動子とする。そして圧電素子4a、4bに超音波発振器12よりスリップリング13を介して電極板8より高周波交流電圧を印加する。回転スピンドル2はグラウンドに接続している。その結果、回転スピンドル2に縦振動の超音波振動が励起され、これが切断ブレード1に径の広がり振動に変換されて伝達するというものであった。しかし、回転スピンドル6の超音波振動の振動数と切断ブレード1の所望の振動モードを励起する振動数が一般に一致しないので所望の振動モードを得ることができない。また、回転スピンドル2の超音波振動の振動数が切断ブレード1の所望の振動モードに近くてもその付近の振動数を持つ他のモードからそのモードを選択的に励起できない。この理由は、切断ブレード1に印加する超音波振動による力の作用点及び力のベクトルを調整できないからである。
本発明の目的は上述の問題点を解消し、従来切断困難なネオジ鉄などを切断すること、切断効率を向上させること、切断ブレードの寿命を長くすること及び加工精度を向上させる切断方法お呼び切断装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、回転する切断ブレードを有している切断装置において、回転軸にねじり振動用圧電素子を嵌め、回転軸方向に締め付けて、そして前記圧電素子に交流電圧を印加することを特徴とする切断方法及び切断装置とするものである。
また、切断ブレードの両側にねじり振動用圧電素子を嵌め、回転軸方向に締め付けて、そして前記圧電素子に交流電圧を印加することを特徴とする切断方法及び切断装置とするものである。
さらに、切断ブレードに圧電素子を接合し、回転軸にねじり振動用圧電素子を嵌め、回転軸方向に締め付けて、そして前記切断ブレードの圧電素子とねじり振動用圧電素子に交流電圧を印加することを特徴とする切断方法及び切断装置とするものである。
また、切断ブレードにねじり振動モードと他の振動モードを与えることを特徴とする切断方法及び切断装置とするものである。
さらに、回転する切断ブレードを有している切断装置において、超音波振動子と切断ブレードを一体化した装置を回転スピンドルに取り付けることを特徴とする切断方法及び切断装置とするものである。
また、超音波振動子と切断ブレードを一体化した装置において、超音波振動子がねじり振動子であることを特徴とする切断方法及び切断装置ものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
第1の実施の形態を図1、図2を用いて説明する。
図1は第1の実施の形態を示す切断装置の一部断面図を持つ平面図である。ここで切断ブレード1は円形基板と電着砥粒層とから構成されている。円形基板は例えば厚さが0.5mm程度で外径が55mm程度の鋼板の金属板からなり、中心部にはそして直径20mm程度の回転スピンドル2に装着するための取り付け穴が形成されている。
【0006】
また、円形基板に電着砥粒層を形成するには、通常の電気メッキ法を用いることができる。すなわち、メッキ槽に収容された硫酸ニッケル液にダイヤモンド砥粒を混入せしめ、この硫酸ニッケル液にダイヤモンド砥粒が混入したメッキ液中で円形基板にニッケルメッキすることにより、ダイヤモンド砥粒をニッケルメッキで固定した複合メッキ層からなる電着砥粒層を形成することができる。
【0007】
そして、切断ブレード等は以下のように組み込む。まず、回転スピンドル2のフランジ部3方向に回転スピンドル2にアルミ製の円筒リング4aを嵌め込む。ついで、同じくポリエチレン製の絶縁リング5a、左方向分極のねじり振動用の圧電素子6a、電極板8a、右方向分極のねじり振動用の圧電素子7a、ホーン9a、切断ブレード1、ホーン9b、ポリエチレン製の絶縁リング5b、右方向分極のねじり振動用の圧電素子7b、電極板8b、左方向分極のねじり振動用の圧電素子6b、アルミ製の円筒リング4b、ステンレス製の円筒リング10の順序で回転スピンドル2に嵌め込み、最後に回転スピンドル2のフランジ部3方向に向かって、締め付け用ナット11を使用してこれらを締め付け固定する。以上の回転スピンドル2に組み込んだ切断ブレード1と他の部品は、超音波ねじり振動子として作用する。
【0008】
次に、切断ブレード1に超音波ねじり振動を励起する方法について説明する。回転モータ14で回転スピンドル2を回転させるとともに、回転スピンドル2に組み込んだ超音波ねじり振動子部の固有振動数付近の交流電圧を超音波発振器12よりスリップリング13を介して電極板8a、8bと回転スピンドル2に印加すると、ほぼ電極板8a、8bの位置を節としてねじり振動用の圧電素子6a,7a、6b、7bによりねじり振動が励起される。なお、ここで回転スピンンドル2側をグラウンドに接続している。このねじり振動はホーン9a、9bにより振動が増幅され切断ブレード1にねじり振動が伝達される。
一方、アルミ製の円筒リング4a、4bにもねじり振動用の圧電素子により超音波ねじり振動が励起されるが回転スピンドル2のフランジ部3とステンレス製の円筒リング10の直径をアルミ製の円筒リング4a、4bの直径と比較して大きくすることで振動をその外側に伝達することを小さくする。同じ目的で回転スピンドル2のフランジ部3とステンレス製の円筒リング10の直径をアルミ製の円筒リング4a、4bの直径と比較して小さくすることでも振動をその外側に伝達することを小さくすることができる。このように超音波振動を必要としない他の部分に漏れることを小さくする構成にすることにより効率よく切断ブレード1にねじり振動を励起できる。
【0009】
またねじり振動用の圧電素子の構成を図2に示すがリング状の圧電素子を四分割して図の矢印方向に分極が施されるようにシリコンオイル中で直流の高電圧を印加して分極する。そしてこれらをエポキシ樹脂15を用いて接合し図2に示す構造にする。ここで図2(a)のように右方向に矢印が向いているもの右方向分極ねじり振動用の圧電素子7という。図2(b)のように左方向に矢印が向いているもの左方向分極ねじり振動用の圧電素子6という。なお、圧電素子のねじり振動の詳しい解説は、(「超音波エレクトロニクス振動論」1998年発行、発行所朝倉書店)113〜122ページに記載されている。
【0010】
このようにして切断ブレードに超音波ねじり振動を励起すると、切断ブレードの回転と共に超音波ねじり振動による円周方向に大きな加速度が加わることになるので、切断力が大幅に向上するため、いままで切断が困難であったネオジ鉄などの難切削材料も効率よい切断が可能となる。
また、ねじり振動は、従来例のように回転スピンドルの縦振動を変換して切断ブレードに径の広がり振動を励起するような、振動モードの変換が無いので効率が高いこと、そして所望していない他のモードを励起することがほとんど無い。
また、「超音波便覧」に記載されているように切断作業において超音波振動の効果が十分に発揮できるため、切断抵抗が低減するため、切断ブレードの摩擦熱が少なく加工面の熱歪が少なくなり、切断ブレードの寿命が長くなると共に、加工精度が向上する。
以上のように切断ブレードに超音波ねじり振動を励起する構造にすることで過去試された方法の超音波振動による切断ブレードを振動させた構成の欠点を解消できる。
【0011】
また、切断ブレード1の両側にねじり振動用の圧電素子を配置したが、切断ブレード1の片側のねじり振動用の圧電素子だけでも切断ブレード1にねじり振動モードを励起することができることはもちろんである。
【0012】
さらに、切断ブレードは、第1の実施の形態で示したものに限らず、たとえば、電着層を持たない食品加工などに用いられる回転ノコ、レジン系の切断ブレードなど切断するために回転するブレードならよい。
【0013】
図3は第2の実施の形態を示す切断装置の一部断面図を持つ平面図である。切断ブレード以外は図1の切断装置と同じである。切断ブレードは切断ブレード1を構成する円板基板に圧電素子16a、16bをエポキシ樹脂15で接合している。ここで切断ブレードの構成を図4(a)、図4(b)を用いて説明する。図4(a)は、切断ブレード1と圧電素子16a、16bを接合した平面図であり、図4(b)は図4(a)の切断線AAで切断した断面側面図である。
この圧電素子16a、16bは、図4(b)中に示す矢印方向の厚さ方向に分極されており、径の広がり振動モードを励起するように設計されている。そして径の広がり振動モードの固有振動数を印加する。この振動モードは当然次数があり、高次の振動モードにすると固有振動数は高くなる。
【0014】
また同時に、第1の実施の形態で述べたようにねじり振動用の圧電素子に超音波ねじり振動子の固有振動数付近の周波数を持つ交流電圧を印加する。この振動モードにも当然次数があり、高次の振動モードにすると固有振動数は高くなる。
また、前記切断ブレードの径の広がり振動モードの固有振動数と超音波ねじり振動子の固有振動数をほぼ一致させると、切断ブレードに径の広がり振動モードとねじり振動モードの両者を効率よく励起させることができる。
このように切断ブレードに径の広がり振動モードとねじり振動モードの複合振動モードを励起すると切断ブレードの外周面に楕円軌跡の超音波振動を励起することができる。
【0015】
これにより、切断ブレードの外周面には、単一振動モードに比較してさらに超音波振動による加速度を大きくすることができる。この結果として、切断加工速度をさらに大きくすることが可能であり、また難切断材料を効率よく切断することが可能になる。さらに、超音波振動の効果が十分に発揮できるため、切断抵抗が低減するため、切断ブレードの摩擦熱が少なく加工面の熱歪が少なくなり、切断ブレードの寿命が長くなると共に、加工精度が向上する。
【0016】
切断ブレードを構成する円板基板に圧電素子を接合する方法については本発明者が平成15年3月13日に出願した「特願2003−112148」に詳しく記載されている。
【0017】
図5は第3の実施の形態を示す超音波振動子と切断ブレードを一体化した装置の断面平面図である。
ステンレス製のスリーブ17に切断ブレード1、絶縁リング5、左方向分極のねじり振動用の圧電素子6、電極板8、右方向分極のねじり振動用の圧電素子7、アルミ製の円筒リング4の順序で挿入され、そしてステンレス製の締め付け用ナット11により締め付けられ、一体化される。ここで、切断ブレード1と左方向分極のねじり振動用の圧電素子6の接触面及び右方向分極のねじり振動用の圧電素子7とアルミ製の円筒リング4の接触面にグリースなどの接触媒質を塗るとなお超音波振動子の性能が安定することはよく知られていることである。
このように超音波振動子と切断ブレードを一体化することで、現場で回転スピンドルに個々の部品を組み込む方法に比較して、熟練したメーカー組み立て、インピーダンスアナライザなどの測定器を用いその性能を確認し、出荷できるので超音波振動子の性能を一定レベル以上に維持できる。また、一体化した超音波振動子と切断ブレードを短時間に回転スピンドルに組み込みこむことができるので、切断装置の稼動効率が高くなる。
【0018】
超音波振動子と切断ブレードを一体化した装置においては、上記の第3の実施の形態では、超音波振動子はねじり振動モードを励起するものであったが、他のモード、例えば縦振動モード、曲げ振動モードであっても、現場で回転スピンドルに個々の部品を組み込む方法に比較して、熟練したメーカー組み立て、インピーダンスアナライザなどの測定器を用いその性能を確認し、出荷できるので超音波振動子の性能を一定レベル以上に維持できる利点がある。また、一体化した超音波振動子と切断ブレードを短時間に回転スピンドルに組み込みこむことができるので、切断装置の稼動効率が高くすることができる。
【0019】
図6は、図5に示した超音波振動子と切断ブレード1を一体化した製品を回転スピンドルに組み込んだ様子を示す切断装置の一部断面図を持つ平面図である。
超音波振動子と切断ブレードを一体化した製品を回転スピンドルに挿入し、締め付け用ナット11により締め付けて取り付ける。
このように超音波振動子と切断ブレード1を一体化することで従来の切断ブレードを取り付けるのとほぼ同じ手順で回転スピンドルに取り付けられるので現場作業において便利である。
また、切断ブレードに超音波ねじり振動を励起する方法については、第1の実施の形態と同じである。
【0020】
図5の第3の実施の形態を示す超音波振動子と切断ブレードを一体化した装置では、切断ブレードの左側にだけ、ねじり振動用の圧電素子を配置したが、切断ブレードを対称線として右側にも同じ構成にすることができる。また、そのことで、さらに大きい超音波ねじり振動を切断ブレードに与えることが可能である。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、切断作業において超音波振動の効果が十分に発揮できるため、切断抵抗が低減するため、切断ブレードの摩擦熱が少なく加工面の熱歪が少なくなり、切断ブレードの寿命が長くなると共に、加工精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の切断装置を説明する図である。
【図2】第1の実施の形態のねじり振動用の圧電素子を示す図である。
【図3】第2の実施の形態の切断装置を説明する図である。
【図4】第2の実施の形態の圧電素子を接合した切断ブレード示す図である。
【図5】第3の実施の形態を示す断面平面図である。
【図6】第3の実施の形態を示す一体化した超音波振動子と切断ブレードを組み込んだ切断装置を説明する図である。
【図7】従来の切断ブレード及び回転スピンドル等を説明する図である。
【図8】従来の切断ブレードに超音波振動を作用させる図である。
【符号の説明】
1 切断ブレード
2 回転スピンドル
3 回転スピンドルのフランジ部
4 アルミ製の円筒リング
5 絶縁リング
6 左方向分極のねじり振動用の圧電素子
7 右方向分極のねじり振動用の圧電素子
8 電極板
9 ホーン
10 ステンレス製の円筒リング
11 締め付け用ナット
12 超音波発振器
13 スリップリング
14 回転モータ
15 エポキシ樹脂
16 厚さ方向に分極された圧電素子
17 ステンレス製のスリーブ
18 第1のフランジ
19 第2のフランジ

Claims (6)

  1. 回転する切断ブレードを有している切断装置において、回転スピンドルにねじり振動用圧電素子を嵌め、回転軸方向に締め付けて、そして前記圧電素子に交流電圧を印加することを特徴とする切断方法及び切断装置。
  2. 回転する切断ブレードを有している切断装置において、切断ブレードの両側にねじり振動用圧電素子を嵌め、回転スピンドル軸方向に締め付けて、そして前記圧電素子に交流電圧を印加することを特徴とする切断方法及び切断装置。
  3. 切断ブレードに圧電素子を接合していることを特徴とする請求項1および請求項2に記載の切断方法及び切断装置。
  4. 切断ブレードにねじり振動モードと他の振動モードを与えることを特徴とする請求項3に記載の切断方法及び切断装置。
  5. 回転する切断ブレードを有している切断装置において、超音波振動子と切断ブレードを一体化した装置を回転スピンドルに取り付けることを特徴とする切断方法及び切断装置。
  6. 超音波振動子と切断ブレードを一体化した装置において、超音波振動子がねじり振動子であることを特徴とする請求項5に記載の切断方法及び切断装置。
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