JP4845309B2 - レーザアニール方法及び半導体装置の作製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はレーザ光を用いた半導体膜のアニール(以下、レーザアニールという)の方法およびこれを実現するためのレーザ照射装置に関する。また、前記レーザアニールを工程に含んで作製された半導体装置の作製方法に関する。なお、ここでいう半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、液晶表示装置や発光装置等の電気光学装置及び該電気光学装置を部品として含む電子装置も含まれるものとする。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガラス等の絶縁基板上に形成された半導体膜に対し、レーザアニールを施して、結晶化させたり、結晶性を向上させる技術が広く研究されている。上記半導体膜には珪素がよく用いられる。本明細書中では、半導体膜をレーザ光で結晶化し、結晶質半導体膜を得る手段をレーザ結晶化という。
【0003】
ガラス基板は、従来よく使用されてきた合成石英ガラス基板と比較し、安価で加工性に富んでおり、大面積基板を容易に作製できる利点を持っている。これが上記研究の行われる理由である。また、結晶化に好んでレーザが使用されるのは、ガラス基板の融点が低いからである。レーザは基板の温度を余り上昇させずに、半導体膜に高いエネルギーを与えることが出来る。また、電熱炉を用いた加熱手段に比べて格段にスループットが高い。
【0004】
結晶質半導体は多くの結晶粒から出来ているため、多結晶半導体膜とも呼ばれる。レーザアニールを施して形成された結晶質半導体膜は、高い移動度を有するため、この結晶質半導体膜を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、例えば、1枚のガラス基板上に、画素駆動用と駆動回路用のTFTを作製する、モノリシック型の液晶電気光学装置等に盛んに利用されている。
【0005】
また、出力の大きい、エキシマレーザ等のパルスレーザ光を、照射面において、数cm角の四角いスポットや、長さ10cm以上の線状となるように光学系にて加工し、レーザ光を走査させて(あるいはレーザ光の照射位置を被照射面に対し相対的に移動させて)、レーザアニールを行なう方法が生産性が高く工業的に優れているため、好んで使用されている。
【0006】
特に、線状ビームを用いると、前後左右の走査が必要なスポット状のレーザ光を用いた場合とは異なり、線状ビームの長尺方向に直角な方向だけの走査で被照射面全体にレーザ照射を行なうことが出来るため、生産性が高い。長尺方向に直角な方向に走査するのは、それが最も効率の良い走査方向であるからである。この高い生産性により、現在レーザアニール法にはパルス発振エキシマレーザ光を適当な光学系で加工した線状ビームを使用することが、TFTを用いる液晶表示装置に代表される半導体装置の製造技術の主流になりつつある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
レーザ光にも様々な種類があるが、一般的にはパルス発振型のエキシマレーザを光源とするレーザ光(以下、エキシマレーザ光という)を用いたレーザ結晶化が用いられている。エキシマレーザは出力が大きく、高周波数での繰り返し照射が可能であるという利点を有し、さらにエキシマレーザ光は珪素膜に対しての吸収係数が高いという利点を有する。
【0008】
エキシマレーザ光を形成するには励起ガスとして、KrF(波長248nm)やXeCl(波長308nm)が用いられる。ところが、Kr(クリプトン)やXe(キセノン)といったガスは非常に高価であり、ガス交換の頻度が高くなると製造コストの増加を招くという問題がある。
【0009】
また、レーザ発振を行なうレーザチューブや発振過程で生成した不要な化合物を除去するためのガス精製器などの付属機器の交換が2〜3年に一度必要となる。これらの付属機器は高価なものが多く、やはり製造コストの増加を招くという問題がある。
【0010】
以上のように、エキシマレーザ光を用いたレーザ照射装置は確かに高い性能を持っているが、メンテナンスに非常に手間がかかり、生産用レーザ照射装置としてはランニングコスト(ここでは稼働に伴い発生する費用を意味する)が高いという欠点も併せ持っている。
【0011】
そこで、エキシマレーザに比較してランニングコストの低いレーザ照射装置およびそれを用いたレーザアニール方法を実現するために、固体レーザ(結晶ロッドを共振キャビティとしたレーザ光を出力するレーザ)や金属レーザを用いる方法がある。
【0012】
そこで、代表的な固体レーザの1つであるYAGレーザを用いて、半導体膜に照射した。前記YAGレーザは非線形光学素子によって第2高調波に変調したレーザ光(波長532nm)を光学系により照射面における形状が線状である線状ビームに加工した。また、前記半導体膜は、コーニング社製1737基板上に、プラズマCVD法により膜厚55nmの非晶質珪素膜を形成したものである。しかしながら、前記非晶質珪素膜にレーザアニールを行なって得られた結晶質珪素膜には、図2に示すような同心円状の模様が形成された。この模様は、面内における結晶質珪素膜の物性を不均一なものであることを示している。そのため、同心円状の模様が形成された結晶質半導体を用いてTFTを作製しても、その電気的特性に悪影響を及ぼすことになる。なお、本明細書中では、図2で示すような模様を同心円模様と呼称する。
【0013】
本発明は、同心円模様のような被照射体に対するアニールを不均一なものとする干渉縞が形成されない、もしくは低減するためのレーザアニール方法および、前記レーザアニール方法を工程に含む半導体装置の作製方法を提供することを課題とする。さらに、従来と比較して、ランニングコストの低いレーザ照射装置を用いたレーザアニール方法において、同心円模様が形成されない、もしくは低減するためのレーザアニール方法および、前記レーザアニール方法を工程に含む半導体装置の作製方法を提供することも課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
ここではまず、図2で示すような同心円模様が形成された原因について考察する。非晶質珪素膜に照射したレーザ光は、照射面での形状が線状である線状ビームあった。そのため、レーザ光を照射した後に得られる結晶質珪素膜に何らかの模様が形成されたとしても、半導体膜、基板および基板ステージが完全に平坦であれば、前記線状ビームに平行もしくは垂直な模様となるはずである。しかしながら、図2により観察される模様は同心円状であることから、線状ビームに起因しないと考えられてよい。つまり、同心円模様の発生原因は、半導体膜、基板および基板ステージのいずれか、またはこれらのうちの複数のものの歪みにあると断定できる。
【0015】
図2で観察されるような同心円模様と同様のものとして、ニュートンリングが挙げられる。ニュートンリングは、複数の反射面からの反射光が互いに干渉してできる縞模様である。このことから、前記同心円模様も複数の反射面からの反射光の干渉が原因であると推測できる。そこで、前記複数の反射面がどの面であるかを検証する実験を行なった。
【0016】
まず、波長に対する非晶質珪素膜(膜厚55nm)の反射率および透過率を図3(A)および図3(B)に示す。前記非晶質珪素膜は1737基板上にプラズマCVD法により形成されたものである。図3より、YAGレーザの第2高調波(波長532nm)に対する反射率は26%であり、透過率は38%であることがわかる。つまり、非晶質珪素膜に対する反射率および透過率が高いため、非晶質珪素膜の表面からの反射光と、非晶質珪素膜を透過したレーザ光がある面で反射した反射光とが干渉すると考えられる。
【0017】
非晶質珪素膜を透過したYAGレーザの第2高調波が反射できる面(反射面)は、次の3つが考えられる。
(A)基板ステージ
(B)基板の裏面
(C)非晶質珪素膜と基板の界面
これらの反射面の中で、どの反射面が同心円模様の原因となっているかを特定するため、それぞれの反射光の影響を除去する第1の実験および第2の実験を行い、その結果から理論式を導いた。第1の実験および第2の実験において、半導体膜は5インチ角、厚さ0.7mmの1737基板上に形成した膜厚55nmの非晶質珪素膜を用いた。なお、本明細書中では、基板の表面とは膜が成膜されている面と定義し、基板の裏面とは膜が形成されている面と反対側の面と定義する。
【0018】
まず、第1の実験として、基板ステージ41からの反射光の影響を除去する実験を行い、これについて図4を用いて説明する。図4のように、基板ステージ41と半導体膜11を成膜した基板10の間に斜めにシリコンウエハ43を入れ、基板ステージ41からの反射光が、半導体膜表面からの反射光45と干渉しないようにして、レーザアニールを行なった。44は入射光、46はシリコンウエハ43の表面からの反射光である。また、基板ステージ41と基板10が接しないことで起こる現象と、基板ステージ41と基板10の間に斜めにシリコンウエハ43を設置することで起こる現象とを分離するため、シリコンウエハ43のない状態で同様の実験を行なった。なお、基板は支柱42にて支えた。
【0019】
前記第1の実験の結果の一例を図5に示す。図5(A)は基板を基板ステージから4cm離した状態でシリコンウエハを斜めに設置したときと、シリコンウエハを設置しないときにレーザアニールを行なったときに得られた結晶質珪素膜を示しており、図5(B)はその模式図である。図5から、同心円模様はシリコンウエハの有無に関わらず現れることがわかる。このことから、同心円模様は基板ステージからの反射光とは無関係であるとわかる。
【0020】
続いて、第2の実験として、基板の裏面からの反射光の影響を除去する実験を行なった。前記第2の実験について、図6を用いて説明する。基板10を入射光64に対し傾けることで、基板裏面からの反射光66と、半導体膜の表面からの反射光65とが干渉しないようにして、レーザアニールを行なった。なお、基板ステージ41上に支柱42を立て、その上に基板10を立てかけることで、基板10を傾けた。そして、支柱42の高さを変化させることで、入射光の角度を変化させた。
【0021】
第2の実験の結果を図7に示す。図7(A)は5mm、10mm、15mmの支柱を設けて、レーザアニールを行なって得られた結晶質珪素膜を示しており、図7(B)はその模式図である。図7より、基板の片側を5mmの支柱の高さにすると、同心円模様が観察され、10mmの市中に載せると、同心円模様が消失したことがわかる。つまり、レーザ光の入射光に角度を設け、ある角度以上になると同心円模様がなくなることがわかった。
【0022】
また、半導体膜の表面からの反射光と、半導体膜と基板の界面からの反射光との干渉について図8を用いて考察する。非晶質珪素膜を屈折率nの平行平板と仮定する。角度θ1で入射したレーザ光84は、前記平行平板中で屈折して角度θ2で進行する。ここで、YAGレーザの第2高調波(波長532nm)に対する非晶質珪素膜の屈折率を4、基板の屈折率を1.5とする。屈折率の大小関係から、非晶質珪素膜表面では位相はずれないが、非晶質珪素膜と基板の界面では位相が相対的にπずれる。これを考慮して、反射光A85と反射光B86との極小条件を求めると、
2nd×cosθ2=mλ (mは整数) (1)
となる。ここでλは入射光の波長、nは非晶質珪素膜の波長λにおける屈折率、dは非晶質珪素膜の膜厚である。(1)式に以下に示す具体的な数値を代入する。
n=4
d=55[nm]
λ=532[nm]
これらを代入すると、
となる。(2)式より、mは0しか取れないので、反射光A85と反射光B86との干渉を極小にするθ2の値が1つしかないことがわかる。干渉縞は、mが複数の値を取り得る場合に発生することから、光の明暗が繰り返される縞模様が、非晶質珪素膜と基板界面の反射光から形成される可能性はないことがわかる。
【0023】
以上の実験結果および理論式から、同心円模様の原因は、非晶質珪素膜表面からの反射光と、基板の裏面からの反射光の干渉により形成されたものと断定できる。同心円模様が形成されたのは、基板が一方向だけでなく、ニ方向とも反っているためと考えられる。もし、基板がシリンドリカルレンズのように一方向のみが歪んでいれば、同心円模様とはならず、平行な縞模様が形成されることになる。図10は温度640℃で5時間の加熱処理後の1737ガラス基板の歪みを測定した結果を示している。図10(A)は横軸にx方向を、図10(B)は横軸にy方向を取り、縦軸は歪みを示している。横軸のx方向およびy方向は、図9に示すように、基板におけるオリフラ(オリエンテーション・フラット)と呼ばれる切り込みが右上に来るように置いた状態で、便宜的に定めた。図10より、両方向とも反っているのが明らかである。この歪みはレーザアニールにおいて影響を及ぼすこともあるが、TFTなどの半導体装置を作製するための他の工程においては、現状では問題にならない程度のものである。
【0024】
本発明は、第2の実験で基板を傾けてレーザアニールを行なったときに、同心円模様が現れなくなったことから、基板に対してレーザ光に角度を設けて照射することを特徴とする。本発明を適用することで、レーザ光の干渉による結晶質半導体膜の物性のばらつきを除去または低減することが出来る。このような結晶質半導体膜を用いて、TFTを作製すれば、その電気的特性は良好なものが得られる。
【0025】
本発明において用いるレーザ光は光学系により線状に加工して照射することが望ましい。なお、レーザ光を線状に加工するとは、照射面における形状が線状になるようにレーザ光を加工しておくことを意味する。即ち、レーザ光の断面形状を線状に加工することを意味する。また、ここでいう「線状」は、厳密な意味で「線」を意味しているのではなく、アスペクト比の大きい長方形(もしくは長楕円形)を意味する。例えば、アスペクト比が10以上(好ましくは100〜10000)のもの指す。
【0026】
固体レーザは一般的に知られているものを用いることができ、YAGレーザ(通常はNd:YAGレーザを指す)、Nd:YLFレーザ、Nd:YVO4レーザ、Nd:YAlO3レーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライドレーザ、Ti:サファイアレーザ、ガラスレーザなどを用いることができる。特に、コヒーレント性やパルスエネルギーで優位なYVO4レーザやYAGレーザが好ましい。また、金属レーザとして、ヘリウムカドミウムレーザ、銅蒸気レーザ、金蒸気レーザが挙げられる。
【0027】
但し、基板の裏面からの反射光が半導体膜の表面の反射光と干渉することから、半導体膜を透過する波長でなくてはならない。図3(B)に膜厚55nmの非晶質珪素膜の波長に対する透過率を示した。図3(B)から、膜厚55nmの非晶質珪素膜を透過するには350nm以上(好ましくは400nm以上)の波長でなくてはならない。しかし、本発明において半導体膜の材料に限定はなく、珪素だけでなく、例えば珪素ゲルマニウム(SiGe)合金などの非晶質構造を有する化合物半導体膜を適用しても良い。半導体膜を透過する波長は、半導体膜の種類、膜厚等によって異なるので、実施者が適宜決定すれば良い。
【0028】
例えば、YAGレーザを用いるのであれば、YAGレーザの基本波(第1高調波)は1064nmと波長が長いので、第2高調波(波長532nm)を用いるのが好ましい。第1高調波は非線形素子を含む波長変調器によって、第2高調波、第3高調波または第4高調波に変調することができる。各高調波の形成は公知の技術に従えば良い。また、本明細書中において、「固体レーザを光源とするレーザ光」には第1高調波だけでなく、途中で波長を変調した高調波を含むものとする。
【0029】
また、YAGレーザで良く用いられるQスイッチ法(Q変調スイッチ方式)を用いても良い。これはレーザ共振器のQ値を十分低くしておいた状態から、急激にQ値を高めてやることにより非常にエネルギー値が高く急峻なパルスレーザを出力する方法である。これは公知の技術である。
【0030】
本発明で用いる固体レーザは、基本的には固体結晶、共振ミラー及び固体結晶を励起するための光源があればレーザ光を出力できるため、エキシマレーザのようにメンテナンスの手間がかからない。即ち、ランニングコストがエキシマレーザに比べて非常に低いため、半導体装置の製造コストを大幅に低減することが可能となる。また、メンテナンスの回数が減れば生産ラインの稼働率も高まるため製造工程のスループット全体が向上し、このことも半導体装置の製造コストの低減に大きく寄与する。さらに、固体レーザの専有面積はエキシマレーザに比べて小さいので、製造ラインの設計に有利である。
【0031】
また、被照射体として珪素膜を用いる場合、350nm以上の波長を有するレーザ光であれば、本発明を適用することは非常に有効であることは上述の通りである。固体レーザや金属レーザと比較すると、現状のガスレーザはコストの掛かるレーザではあるが、本発明を実現するために、KrFエキシマレーザ、Arレーザ、Krレーザ、CO2レーザ等を用いることももちろん可能である。
【0032】
このように、本発明を適用すれば、基板の表面および裏面での反射光同士が干渉することを防ぐため、同心円模様のような被照射体に対するアニールを不均一なものとする干渉縞が形成されない、もしくは低減するためのレーザアニール方法を実現することが可能となる。このようなレーザアニール方法を用いて被照射体のアニールを行なえば、均一なアニールを行なうことが可能となる。特に半導体膜のアニールに適用すれば、均一なアニールが行われるため、一様な物性を有する半導体膜を得ることができる。そして、このような半導体膜を用いてTFTを作製すれば、その電気的特性のばらつきは低減され、TFTを用いて作製される半導体装置の動作特性および信頼性をも向上し得る。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態では、レーザ光の入射角度について図1を用いて説明する。
【0034】
レーザ光は、半導体膜(被照射体)にビーム幅w1で入射する。このときの入射角をθとする。一般的に半導体膜は25〜80nmの厚さで成膜されているが、ガラス基板の厚さD(0.7mm)に比べて非常に薄いことから、半導体膜による光路のずれは無視できる。そのため、半導体膜を透過したレーザ光はほぼ真っ直ぐに基板の裏面まで進行し、基板の裏面において反射する。基板の裏面によって反射したレーザ光(反射光)は、再び半導体膜に達し、基板の外に射出される。このとき、入射光と反射光とが、半導体膜上で全く交差することがなければ、半導体膜内での光の干渉は起こらない。つまり、同心円模様が形成されることはない。
【0035】
同心円模様の生じない条件を図1から式に直すと、
D×tanθ≧w/2 (3)
∴θ≧arctan(w/(2×D)) (3)’
但し、w=(w1+w2)/2
となる。しかし、第2の実験の結果から、前記入射光と前記反射光とが完全に離れていなくても、同心円模様は低減できた。そこで、同心円模様を低減させることの出来る条件は、D=0.7[mm]、tanθ=5/126、w1=w2=w=0.4[mm]として計算すると、
0.7×5/126=0.4/x (xは整数)
∴x≒14.4
となる。よって、実験から得られた同心円模様の生じない条件式は、
D×tanθ≧w/14 (4)
∴θ≧arctan(w/(14×D)) (4)’
となる。
【0036】
この条件を満たす角度θでレーザ光を入射させて半導体膜のアニールを行なうと、半導体膜にこれまで形成されていた同心円模様のような被照射体に対するアニールを不均一なものとする干渉縞を低減することができ、均一なアニールを行なうことが出来るため、良好な物性を有する半導体膜を形成することができる。例えば、半導体膜の結晶化に本実施形態で示すレーザアニール方法を適用すれば、良好な物性を有する結晶質半導体膜を形成することができる。この結晶質半導体膜を用いてTFTを作製すれば、その電気的特性は良好なものとなる。さらに、このようなTFTを用いて半導体装置を作製すれば、その動作特性および信頼性をも向上し得る。なお、本明細書中において、角度θは基板に対して垂直方向からのずれを指す。
【0037】
【実施例】
[実施例1]
本発明の実施例について図11および図13(A)を用いて説明する。
【0038】
まず、基板として、コーニング社の#7059ガラスや#1737ガラスなどに代表されるバリウムホウケイ酸ガラス、またはアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラスからなる透光性を有するものを用いる。なお、基板300としては、石英基板やシリコン基板を用いても良い。また、本実施例の処理温度に耐えうる耐熱性が有するプラスチック基板を用いてもよい。本実施例では、126mm角、厚さ0.7mmのコーニング社製1737ガラス基板を用意した。
【0039】
次いで、基板300上に酸化珪素膜、窒化珪素膜または酸化窒化珪素膜などの絶縁膜から成る下地膜301を形成する。本実施例では下地膜301として2層構造を用いるが、前記絶縁膜の単層膜または2層以上積層させた構造を用いても良い。下地膜301の一層目としては、プラズマCVD法を用い、SiH4、NH3、及びN2Oを反応ガスとして成膜される酸化窒化珪素膜301aを10〜200nm(好ましくは50〜100nm)形成する。本実施例では、膜厚50nmの酸化窒化珪素膜301a(組成比Si=32%、O=27%、N=24%、H=17%)を形成した。次いで、下地膜301のニ層目としては、プラズマCVD法を用い、SiH4、及びN2Oを反応ガスとして成膜される酸化窒化珪素膜301bを50〜200nm(好ましくは100〜150nm)の厚さに積層形成する。本実施例では、膜厚100nmの酸化窒化珪素膜401b(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)を形成した。
【0040】
次いで、基板上に半導体膜302を形成する。半導体膜302は、非晶質構造を有する半導体膜を公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等)により、20〜200nm、好ましくは25〜80nm(代表的には30〜60nm)の厚さで形成する。半導体膜の材料に限定はないが、好ましくは珪素または珪素ゲルマニウム(SiGe)合金などで形成すると良い。本実施例では、プラズマCVD法を用い、55nmの非晶質珪素膜を成膜した。
【0041】
なお、本実施例では、基板上に酸化珪素膜や酸化窒化珪素膜等の下地絶縁膜を形成してから半導体膜を形成している。基板上に下地絶縁膜を形成してから半導体膜を形成している場合は、レーザ光の反射する面が増えることになる。しかしながら、基板と下地絶縁膜の屈折率はほとんど同じであることから、下地絶縁膜と基板との界面での屈折率の変化は無視できる。
【0042】
続いて、半導体膜の結晶化を行なう。半導体膜の結晶化にはレーザアニール法による結晶化を適用する。半導体膜の結晶化には、レーザアニール法による結晶化の他に、熱結晶化法、またはニッケルなどの触媒を用いた熱結晶化法等があり、これらの結晶化法のいずれかとレーザアニール法による結晶化とを組み合わせて行なっても良い。レーザ結晶化には、本発明を適用して実施する。
【0043】
レーザアニール法による結晶化は、まず非晶質半導体膜が含有する水素を放出させておくことが望ましく、400〜500℃で窒素雰囲気に1時間程度曝して、含有する水素量を5atom%以下にしておくと良い。これにより、膜の耐レーザ性が著しく向上する。
【0044】
ここで、光学系について図11を用いて説明する。レーザ発振器201として、大出力の連続発振またはパルス発振の固体レーザ(YAGレーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAlO3レーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライドレーザ、Ti:サファイアレーザ、ガラスレーザ等)を用いるのが望ましい。もちろん、大出力であって、半導体膜および基板に対して透過する波長を有するのであれば連続発振またはパルス発振のガスレーザ(KrFエキシマレーザ、Arレーザ、Krレーザ、CO2レーザ等)や金属レーザ(ヘリウムカドミウムレーザ、銅蒸気レーザ、金蒸気レーザ等)などを用いても良い。そして、前記レーザ発振器201から発振されたレーザ光を、光学系を用いて、照射面の形状が線状である線状ビームに加工する。前記光学系には、例えば、レーザ光を長く拡大するための長焦点距離のシリンドリカルレンズ205と、レーザ光を細く集光するための長焦点距離のシリンドリカルレンズ206とを用いる。長焦点距離のシリンドリカルレンズを用いると、収差を抑え、照射面またはその近傍においてエネルギー分布の均一なレーザ光を得ることが出来る。また、長焦点距離のシリンドリカルレンズは、半導体膜への入射光のビーム幅と、基板の裏面からの反射光のビーム幅とを著しく変化させないためにも有効である。発明者の実験によると、焦点距離が500mm以上のシリンドリカルレンズを使うと、収差の影響を劇的に低減することが出来た。
【0045】
シリンドリカルレンズ206の手前には、反射ミラー207を設け、レーザ光の進行方向を変更できるようにした。反射ミラー207により、照射面に入射するレーザ光の角度を調整し、目的とする角度θにすることが出来る。反射ミラー207の角度により、シリンドリカルレンズ206の角度も変更すると、照射面においてより対称性のあるレーザ光を形成することができる。
【0046】
また、線状ビームを半導体膜に照射する際、線状ビームの重ね合わせ率(オーバーラップ率)を50〜98%として照射しても良いし、重ね合わせずに照射しても良い。半導体膜の状態やレーザ光の遅延時間等によって最適条件は異なるため、実施者が適宜決定するのが好ましい。
【0047】
本実施例では、レーザ発振器としてYAGレーザを用い、非線形光学素子202により第2高調波に変調し、光学系を用いて長さ130mm、幅0.4mmの線状ビームに加工して半導体膜に照射した。このとき、基板に対して垂直方向から5度ずらして照射した。長焦点距離のシリンドリカルレンズ206を用いていることから、w1=w2=w=0.4[mm]としてよい。本実施例での照射条件を(4)式に当てはめると、左辺は、
0.7×tan5=0.0612
であり、右辺は、
0.4/8=0.0500
であるから、(4)式を満たしており、レーザアニールによって得られる結晶質半導体膜には同心円模様が観察されず、均一なアニールを行なうことができる。このような結晶質半導体膜を用いてTFTを作製すると、その電気的特性は良好なものが得られる。
【0048】
[実施例2]
本実施例では実施例1とは異なる実施例について図12を用いて説明する。
【0049】
基板および半導体膜は実施例1にしたがって作製する。本実施例においても、コーニング社製1737ガラス基板を用い、前記ガラス基板上にCVD法により非晶質珪素膜(膜厚55nm)を形成した。
【0050】
ここで、光学系について図12を用いて説明する。図12で示す光学系は、図11で示した光学系と対応する部分には同じ符号を用いている。本実施例では、反射ミラー207はレーザ光に対し45度に固定しているが、基板ステージ203を水平方向から角度θ傾けている。
【0051】
本実施例では、レーザ発振器としてYAGレーザを用い、非線形光学素子202により第2高調波に変調し、光学系を用いて長さ130mm、幅0.4mmの線状ビームに加工して半導体膜に照射した。このとき、基板に対して垂直方向から10度ずらして照射した。長焦点距離のシリンドリカルレンズ206を用いていることから、w1=w2=w=0.4[mm]としてよい。本実施例での照射条件を(4)式に当てはめると、左辺は、
0.7×tan10=0.1234
であり、右辺は、
0.4/8=0.0500
であるから、(4)式を満たしており、レーザアニールによって得られる結晶質半導体膜には同心円模様が観察されず、均一なアニールを行なうことができる。このような結晶質半導体膜を用いてTFTを作製すると、その電気的特性は良好なものが得られる。
【0052】
[実施例3]
本実施例ではアクティブマトリクス基板の作製方法について図13〜図21を用いて説明する。
【0053】
まず、本実施例ではコーニング社の#7059ガラスや#1737ガラスなどに代表されるバリウムホウケイ酸ガラス、またはアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラスからなる基板300を用いる。なお、基板300としては、石英基板やシリコン基板、金属基板またはステンレス基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い。また、本実施例の処理温度に耐えうる耐熱性が有するプラスチック基板を用いてもよい。
【0054】
次いで、基板300上に酸化珪素膜、窒化珪素膜または酸化窒化珪素膜などの絶縁膜から成る下地膜301を形成する。本実施例では下地膜301として2層構造を用いるが、前記絶縁膜の単層膜または2層以上積層させた構造を用いても良い。下地膜301の一層目としては、プラズマCVD法を用い、SiH4、NH3、及びN2Oを反応ガスとして成膜される酸化窒化珪素膜301aを10〜200nm(好ましくは50〜100nm)形成する。本実施例では、膜厚50nmの酸化窒化珪素膜301a(組成比Si=32%、O=27%、N=24%、H=17%)を形成した。次いで、下地膜301のニ層目としては、プラズマCVD法を用い、SiH4、及びN2Oを反応ガスとして成膜される酸化窒化珪素膜301bを50〜200nm(好ましくは100〜150nm)の厚さに積層形成する。本実施例では、膜厚100nmの酸化窒化珪素膜401b(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)を形成した。
【0055】
次いで、下地膜上に半導体膜302を形成する。半導体膜302は、非晶質構造を有する半導体膜を公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等)により、25〜200nm、好ましくは25〜80nm(代表的には30〜60nm)の厚さで形成する。半導体膜の材料に限定はないが、好ましくは珪素または珪素ゲルマニウム(SiGe)合金などで形成すると良い。本実施例では、プラズマCVD法を用い、55nmの非晶質珪素膜を成膜した。
【0056】
続いて、半導体膜の結晶化を行なう。半導体膜の結晶化にはレーザ結晶化法を適用する。半導体膜の結晶化には、レーザ結晶化法の他に、熱結晶化法、またはニッケルなどの触媒を用いた熱結晶化法等があり、これらの結晶化法のいずれかとレーザ結晶化法と組み合わせて行なっても良い。レーザ結晶化には、本発明を適用して実施する。例えば、パルス発振型の固体レーザ(YAGレーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAlO3レーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライドレーザ、Ti:サファイアレーザ、ガラスレーザ等)、ガスレーザまたは金属レーザを光源とするレーザ光を光学系を用いて線状ビームに加工し、図11または図12で示すような方法で半導体膜に照射する。本実施例では、基板を温度500℃の窒素雰囲気中に1時間曝した後、図11で示したレーザアニール方法により半導体膜の結晶化を行い、大粒径の結晶粒を有する結晶質珪素膜を形成した。このとき、レーザ発振器にはYAGレーザを用い、非線形光学素子により第2高調波に変調したレーザ光を、光学系により線状ビームに加工して半導体膜に照射した。線状ビームを半導体膜に照射する際、線状ビームの重ね合わせ率(オーバーラップ率)を50〜98%として照射しても良いが、半導体膜の状態やレーザ光の波長等によって最適条件は異なるため、実施者が適宜決定すれば良い。また、連続発振型のレーザを用いる場合には、エネルギー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、0.5〜2000cm/s程度の速度でレーザ光に対して相対的にステージを動かして照射するのが望ましい。
【0057】
このようにして得られた結晶質半導体膜を所望の形状にパターニングして、半導体層402〜406を形成する。本実施例では、結晶質珪素膜をフォトリソグラフィ法を用いたパターニング処理によって、半導体層402〜406を形成した。
【0058】
半導体層402〜406を形成した後、TFTのしきい値を制御するために微量な不純物元素(ボロンまたはリン)のドーピングを行なってもよい。
【0059】
次いで、半導体層402〜406を覆うゲート絶縁膜407を形成する。ゲート絶縁膜407はプラズマCVD法またはスパッタ法を用い、厚さを40〜150nmとして珪素を含む絶縁膜で形成する。本実施例では、プラズマCVD法により110nmの厚さで酸化窒化珪素膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)で形成した。もちろん、ゲート絶縁膜は酸化窒化珪素膜に限定されるものでなく、他の珪素を含む絶縁膜を単層または積層構造として用いても良い。
【0060】
また、酸化珪素膜を用いる場合には、プラズマCVD法でTEOS(Tetraethyl Orthosilicate)とO2とを混合し、反応圧力40Pa、基板温度300〜400℃とし、高周波(13.56MHz)電力密度0.5〜0.8W/cm2で放電させて形成することができる。このようにして作製される酸化珪素膜は、その後400〜500℃の熱アニールによりゲート絶縁膜として良好な特性を得ることができる。
【0061】
次いで、図13(B)に示すように、ゲート絶縁膜407上に膜厚20〜100nmの第1の導電膜408と、膜厚100〜400nmの第2の導電膜409とを積層形成する。本実施例では、膜厚30nmのTaN膜からなる第1の導電膜408と、膜厚370nmのW膜からなる第2の導電膜409を積層形成した。TaN膜はスパッタ法で形成し、Taのターゲットを用い、窒素を含む雰囲気内でスパッタした。また、W膜は、Wのターゲットを用いたスパッタ法で形成した。その他に6フッ化タングステン(WF6)を用いる熱CVD法で形成することもできる。いずれにしてもゲート電極として使用するためには低抵抗化を図る必要があり、W膜の抵抗率は20μΩcm以下にすることが望ましい。W膜は結晶粒を大きくすることで低抵抗率化を図ることができるが、W膜中に酸素などの不純物元素が多い場合には結晶化が阻害され高抵抗化する。従って、本実施例では、高純度のW(純度99.9999%)のターゲットを用いたスパッタ法で、さらに成膜時に気相中からの不純物の混入がないように十分配慮してW膜を形成することにより、抵抗率9〜20μΩcmを実現することができた。
【0062】
なお、本実施例では、第1の導電膜408をTaN、第2の導電膜409をWとしたが、特に限定されず、いずれもTa、W、Ti、Mo、Al、Cu、Cr、Ndから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成してもよい。また、リン等の不純物元素をドーピングした結晶質珪素膜に代表される半導体膜を用いてもよい。また、AgPdCu合金を用いてもよい。また、第1の導電膜をタンタル(Ta)膜で形成し、第2の導電膜をW膜とする組み合わせ、第1の導電膜を窒化チタン(TiN)膜で形成し、第2の導電膜をW膜とする組み合わせ、第1の導電膜を窒化タンタル(TaN)膜で形成し、第2の導電膜をAl膜とする組み合わせ、第1の導電膜を窒化タンタル(TaN)膜で形成し、第2の導電膜をCu膜とする組み合わせとしてもよい。
【0063】
次に、フォトリソグラフィ法を用いてレジストからなるマスク410〜415を形成し、電極及び配線を形成するための第1のエッチング処理を行なう。第1のエッチング処理では第1及び第2のエッチング条件で行なう。本実施例では第1のエッチング条件として、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を25:25:10(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成してエッチングを行った。ここでは、松下電器産業(株)製のICPを用いたドライエッチング装置(Model E645−□ICP)を用いた。基板側(試料ステージ)にも150WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。この第1のエッチング条件によりW膜をエッチングして第1の導電層の端部をテーパー形状とする。
【0064】
この後、レジストからなるマスク410〜415を除去せずに第2のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCF4とCl2とを用い、それぞれのガス流量比を30:30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約30秒程度のエッチングを行った。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。CF4とCl2を混合した第2のエッチング条件ではW膜及びTaN膜とも同程度にエッチングされる。なお、ゲート絶縁膜上に残渣を残すことなくエッチングするためには、10〜20%程度の割合でエッチング時間を増加させると良い。
【0065】
上記第1のエッチング処理では、レジストからなるマスクの形状を適したものとすることにより、基板側に印加するバイアス電圧の効果により第1の導電層及び第2の導電層の端部がテーパー形状となる。このテーパー部の角度は15〜45°となる。こうして、第1のエッチング処理により第1の導電層と第2の導電層から成る第1の形状の導電層417〜422(第1の導電層417a〜422aと第2の導電層417b〜422b)を形成する。416はゲート絶縁膜であり、第1の形状の導電層417〜422で覆われない領域は20〜50nm程度エッチングされ薄くなった領域が形成される。
【0066】
そして、レジストからなるマスクを除去せずに第1のドーピング処理を行い、半導体層にn型を付与する不純物元素を添加する。(図14(A))ドーピング処理はイオンドープ法、若しくはイオン注入法で行なえば良い。イオンドープ法の条件はドーズ量を1×1013〜5×1015/cm2とし、加速電圧を60〜100keVとして行なう。本実施例ではドーズ量を1.5×1015/cm2とし、加速電圧を80keVとして行った。n型を付与する不純物元素として15族に属する元素、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いるが、ここではリン(P)を用いた。この場合、導電層417〜421がn型を付与する不純物元素に対するマスクとなり、自己整合的に第1の高濃度不純物領域306〜310が形成される。第1の高濃度不純物領域306〜310には1×1020〜1×1021/cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素を添加する。
【0067】
次いで、レジストからなるマスクを除去せずに第2のエッチング処理を行なう。ここでは、エッチングガスにCF4とCl2とO2とを用い、W膜を選択的にエッチングする。この時、第2のエッチング処理により第2の導電層428b〜433bを形成する。一方、第1の導電層417a〜422aは、ほとんどエッチングされず、第2の形状の導電層428〜433を形成する。
【0068】
次いで、レジストからなるマスクを除去せずに、図14(B)に示すように、第2のドーピング処理を行なう。この場合、第1のドーピング処理よりもドーズ量を下げて、70〜120keVの高い加速電圧で、n型を付与する不純物元素を導入する。本実施例ではドーズ量を1.5×1014/cm2とし、加速電圧を90keVとして行なった。第2のドーピング処理は第2の形状の導電層428〜433をマスクとして用い、第2の導電層428b〜433bの下方における半導体層にも不純物元素が導入され、新たに第2の高濃度不純物領域423a〜427aおよび低濃度不純物領域423b〜427bが形成される。
【0069】
次いで、レジストからなるマスクを除去した後、新たにレジストからなるマスク434aおよび434bを形成して、図14(C)に示すように、第3のエッチング処理を行なう。エッチング用ガスにSF6およびCl2とを用い、ガス流量比を50:10(sccm)とし、1.3Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成し、約30秒のエッチング処理を行なう。基板側(資料ステージ)には10WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的には負の自己バイアス電圧を印加する。こうして、前記第3のエッチング処理により、pチャネル型TFTおよび画素部のTFT(画素TFT)のTaN膜をエッチングして、第3の形状の導電層435〜438を形成する。
【0070】
次いで、レジストからなるマスクを除去した後、第2の形状の導電層428、430および第2の形状の導電層435〜438をマスクとして用い、ゲート絶縁膜416を選択的に除去して絶縁層439〜444を形成する。(図15(A))
【0071】
次いで、新たにレジストからなるマスク445a〜445cを形成して第3のドーピング処理を行なう。この第3のドーピング処理により、pチャネル型TFTの活性層となる半導体層に前記一導電型とは逆の導電型を付与する不純物元素が添加された不純物領域446、447を形成する。第2の導電層435a、438aを不純物元素に対するマスクとして用い、p型を付与する不純物元素を添加して自己整合的に不純物領域を形成する。本実施例では、不純物領域446、447はジボラン(B2H6)を用いたイオンドープ法で形成する。(図15(B))この第3のドーピング処理の際には、nチャネル型TFTを形成する半導体層はレジストからなるマスク445a〜445cで覆われている。第1のドーピング処理及び第2のドーピング処理によって、不純物領域446、447にはそれぞれ異なる濃度でリンが添加されているが、そのいずれの領域においてもp型を付与する不純物元素の濃度を2×1020〜2×1021/cm3となるようにドーピング処理することにより、pチャネル型TFTのソース領域およびドレイン領域として機能するために何ら問題は生じない。本実施例では、pチャネル型TFTの活性層となる半導体層の一部が露呈しているため、不純物元素(ボロン)を添加しやすい利点を有している。
【0072】
以上までの工程で、それぞれの半導体層に不純物領域が形成される。
【0073】
次いで、レジストからなるマスク445a〜445cを除去して第1の層間絶縁膜461を形成する。この第1の層間絶縁膜461としては、プラズマCVD法またはスパッタ法を用い、厚さを100〜200nmとして珪素を含む絶縁膜で形成する。本実施例では、プラズマCVD法により膜厚150nmの酸化窒化珪素膜を形成した。もちろん、第1の層間絶縁膜461は酸化窒化珪素膜に限定されるものでなく、他の珪素を含む絶縁膜を単層または積層構造として用いても良い。
【0074】
次いで、図15(C)に示すように、加熱処理を行なって、半導体層の結晶性の回復、それぞれの半導体層に添加された不純物元素の活性化を行なう。この加熱処理はファーネスアニール炉を用いる熱アニール法で行なう。熱アニール法としては、酸素濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下の窒素雰囲気中で400〜700℃、代表的には500〜550℃で行なえばよく、本実施例では550℃、4時間の熱処理で活性化処理を行った。なお、熱アニール法の他に、レーザアニール法、またはラピッドサーマルアニール法(RTA法)を適用することができる。
【0075】
なお、結晶化の際にニッケルなどを触媒として熱結晶化法も適用した場合は、上記活性化処理と同時に、金属元素が高濃度のリンを含む不純物領域423a、425a、426a、446a、447aを結晶化する。そのため、前記不純物領域に前記金属元素がゲッタリングされ、主にチャネル形成領域となる半導体層中の金属元素濃度が低減される。このようにして作製したチャネル形成領域を有するTFTはオフ電流値が下がり、結晶性が良いことから高い電界効果移動度が得られ、良好な特性を達成することができる。
【0076】
また、第1の層間絶縁膜を形成する前に加熱処理を行なっても良い。ただし、用いた配線材料が熱に弱い場合には、本実施例のように配線等を保護するため層間絶縁膜(珪素を主成分とする絶縁膜、例えば窒化珪素膜)を形成した後で活性化処理を行なうことが好ましい。
【0077】
さらに、3〜100%の水素を含む雰囲気中で、300〜550℃で1〜12時間の熱処理を行い、半導体層を水素化する工程を行なう。本実施例では水素を約3%の含む窒素雰囲気中で410℃、1時間の熱処理を行なった。この工程は層間絶縁膜に含まれる水素により半導体層のダングリングボンドを終端する工程である。水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)を行なっても良い。
【0078】
また、活性化処理としてレーザアニール法を用いる場合には、上記水素化を行った後、連続発振型またはパルス発振型の固体レーザ(YAGレーザ等)、ガスレーザ、金属レーザ等のレーザビームを照射することが望ましい。そして、本発明を用いて斜めから照射すれば、同心円模様のような干渉縞の形成が除去または低減されるため、均一なアニールを行なうことができる。
【0079】
次いで、第1の層間絶縁膜461上に無機絶縁膜材料または有機絶縁物材料から成る第2の層間絶縁膜462を形成する。本実施例では、膜厚1.6μmのアクリル樹脂膜を形成したが、粘度が10〜1000cp、好ましくは40〜200cpのものを用い、表面に凸凹が形成されるものを用いた。
【0080】
本実施例では、鏡面反射を防ぐため、表面に凸凹が形成される第2の層間絶縁膜を形成することによって画素電極の表面に凸凹を形成した。また、画素電極の表面に凹凸を持たせて光散乱性を図るため、画素電極の下方の領域に凸部を形成してもよい。その場合、凸部の形成は、TFTの形成と同じフォトマスクで行なうことができるため、工程数の増加なく形成することができる。なお、この凸部は配線及びTFT部以外の画素部領域の基板上に適宜設ければよい。こうして、凸部を覆う絶縁膜の表面に形成された凸凹に沿って画素電極の表面に凸凹が形成される。
【0081】
また、第2の層間絶縁膜462として表面が平坦化する膜を用いてもよい。その場合は、画素電極を形成した後、公知のサンドブラスト法やエッチング法等の工程を追加して表面を凹凸化させて、鏡面反射を防ぎ、反射光を散乱させることによって白色度を増加させることが好ましい。
【0082】
そして、駆動回路506において、各不純物領域とそれぞれ電気的に接続する配線463〜467を形成する。なお、これらの配線は、膜厚50nmのTi膜と、膜厚500nmの合金膜(AlとTiとの合金膜)との積層膜をパターニングして形成する。
【0083】
また、画素部507においては、画素電極470、ゲート配線469、接続電極468を形成する。(図16)この接続電極468によりソース配線(443bと449の積層)は、画素TFTと電気的な接続が形成される。また、ゲート配線469は、画素TFTのゲート電極と電気的な接続が形成される。また、画素電極470は、画素TFTのドレイン領域442と電気的な接続が形成され、さらに保持容量を形成する一方の電極として機能する半導体層458と電気的な接続が形成される。また、画素電極470としては、AlまたはAgを主成分とする膜、またはそれらの積層膜等の反射性の優れた材料を用いることが望ましい。
【0084】
以上の様にして、nチャネル型TFT501とpチャネル型TFT502からなるCMOS回路、及びnチャネル型TFT503を有する駆動回路506と、画素TFT504、保持容量505とを有する画素部507を同一基板上に形成することができる。こうして、アクティブマトリクス基板が完成する。
【0085】
駆動回路506のnチャネル型TFT501はチャネル形成領域423c、ゲート電極の一部を構成する第1の導電層428aと重なる低濃度不純物領域423b(GOLD領域)、とソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域423aを有している。このnチャネル型TFT501と電極466で接続してCMOS回路を形成するpチャネル型TFT502にはチャネル形成領域446d、ゲート電極の外側に形成される不純物領域446b、446c、ソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域446aを有している。また、nチャネル型TFT503にはチャネル形成領域425c、ゲート電極の一部を構成する第1の導電層430aと重なる低濃度不純物領域425b(GOLD領域)、とソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域425aを有している。
【0086】
画素部の画素TFT504にはチャネル形成領域426c、ゲート電極の外側に形成される低濃度不純物領域426b(LDD領域)とソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域426aを有している。また、保持容量505の一方の電極として機能する半導体層447a、447bには、それぞれp型を付与する不純物元素が添加されている。保持容量505は、絶縁膜444を誘電体として、電極(438aと438bの積層)と、半導体層447a〜447cとで形成している。
【0087】
また、本実施例の画素構造は、ブラックマトリクスを用いることなく、画素電極間の隙間が遮光されるように、画素電極の端部をソース配線と重なるように配置形成する。
【0088】
また、本実施例で作製するアクティブマトリクス基板の画素部の上面図を図17に示す。なお、図13〜図16に対応する部分には同じ符号を用いている。図16中の鎖線A−A’は図17中の鎖線A―A’で切断した断面図に対応している。また、図16中の鎖線B−B’は図17中の鎖線B―B’で切断した断面図に対応している。
【0089】
以上のようにして作製されるアクティブマトリクス基板は一様にアニールされた半導体膜を用いて作製されたTFTを有しており、動作特性や信頼性を十分なものとなり得る。
【0090】
なお、本実施例は実施例1または2と自由に組み合わせることが可能である。
【0091】
[実施例4]
本実施例では、実施例3で作製したアクティブマトリクス基板から、反射型液晶表示装置を作製する工程を以下に説明する。説明には図18を用いる。
【0092】
まず、実施例3に従い、図17の状態のアクティブマトリクス基板を得た後、図17のアクティブマトリクス基板上、少なくとも画素電極470上に配向膜567を形成しラビング処理を行なう。なお、本実施例では配向膜567を形成する前に、アクリル樹脂膜等の有機樹脂膜をパターニングすることによって基板間隔を保持するための柱状のスペーサ572を所望の位置に形成した。また、柱状のスペーサに代えて、球状のスペーサを基板全面に散布してもよい。
【0093】
次いで、対向基板569を用意する。次いで、対向基板569上に着色層570、571、平坦化膜573を形成する。赤色の着色層570と青色の着色層572とを重ねて、遮光部を形成する。また、赤色の着色層と緑色の着色層とを一部重ねて、遮光部を形成してもよい。
【0094】
本実施例では、実施例3に示す基板を用いている。従って、実施例3の画素部の上面図を示す図17では、少なくともゲート配線469と画素電極470の間隙と、ゲート配線469と接続電極468の間隙と、接続電極468と画素電極470の間隙を遮光する必要がある。本実施例では、それらの遮光すべき位置に着色層の積層からなる遮光部が重なるように各着色層を配置して、対向基板を貼り合わせた。
【0095】
このように、ブラックマスク等の遮光層を形成することなく、各画素間の隙間を着色層の積層からなる遮光部で遮光することによって工程数の低減を可能とした。
【0096】
次いで、平坦化膜573上に透明導電膜からなる対向電極576を少なくとも画素部に形成し、対向基板の全面に配向膜574を形成し、ラビング処理を施した。
【0097】
そして、画素部と駆動回路が形成されたアクティブマトリクス基板と対向基板とをシール材568で貼り合わせる。シール材568にはフィラーが混入されていて、このフィラーと柱状スペーサによって均一な間隔を持って2枚の基板が貼り合わせられる。その後、両基板の間に液晶材料575を注入し、封止剤(図示せず)によって完全に封止する。液晶材料575には公知の液晶材料を用いれば良い。このようにして図18に示す反射型液晶表示装置が完成する。そして、必要があれば、アクティブマトリクス基板または対向基板を所望の形状に分断する。さらに、対向基板のみに偏光板(図示しない)を貼りつけた。そして、公知の技術を用いてFPCを貼りつけた。
【0098】
以上のようにして作製される液晶表示装置は一様にアニールされた半導体膜を用いて作製されたTFTを有しており、前記液晶表示装置の動作特性や信頼性を十分なものとなり得る。そして、このような液晶表示装置は各種電子機器の表示部として用いることができる。
【0099】
なお、本実施例は実施例1乃至3と自由に組み合わせることが可能である。
【0100】
[実施例5]
本実施例では、実施例3で示したアクティブマトリクス基板を作製するときのTFTの作製方法を用いて、発光装置を作製した例について説明する。本明細書において、発光装置とは、基板上に形成された発光素子を該基板とカバー材の間に封入した表示用パネルおよび該表示用パネルにICを実装した表示用モジュールを総称したものである。なお、発光素子は、電場を加えることで発生するルミネッセンス(Electro Luminescence)が得られる有機化合物を含む層(発光層)と陽極層と、陰極層とを有する。また、有機化合物におけるルミネッセンスには、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(リン光)があり、これらのうちどちらか、あるいは両方の発光を含む。
【0101】
なお、本明細書中では、発光素子において陽極と陰極の間に形成された全ての層を有機発光層と定義する。有機発光層には具体的に、発光層、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層等が含まれる。基本的に発光素子は、陽極層、発光層、陰極層が順に積層された構造を有しており、この構造に加えて、陽極層、正孔注入層、発光層、陰極層や、陽極層、正孔注入層、発光層、電子輸送層、陰極層等の順に積層した構造を有していることもある。
【0102】
図19は本実施例の発光装置の断面図である。図19において、基板700上に設けられたスイッチングTFT603は図19のnチャネル型TFT503を用いて形成される。したがって、構造の説明はnチャネル型TFT503の説明を参照すれば良い。
【0103】
なお、本実施例ではチャネル形成領域が二つ形成されるダブルゲート構造としているが、チャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造もしくは三つ形成されるトリプルゲート構造であっても良い。
【0104】
基板700上に設けられた駆動回路は図19のCMOS回路を用いて形成される。従って、構造の説明はnチャネル型TFT501とpチャネル型TFT502の説明を参照すれば良い。なお、本実施例ではシングルゲート構造としているが、ダブルゲート構造もしくはトリプルゲート構造であっても良い。
【0105】
また、配線701、703はCMOS回路のソース配線、702はドレイン配線として機能する。また、配線704はソース配線708とスイッチングTFTのソース領域とを電気的に接続する配線として機能し、配線705はドレイン配線709とスイッチングTFTのドレイン領域とを電気的に接続する配線として機能する。
【0106】
なお、電流制御TFT604は図19のpチャネル型TFT502を用いて形成される。従って、構造の説明はpチャネル型TFT502の説明を参照すれば良い。なお、本実施例ではシングルゲート構造としているが、ダブルゲート構造もしくはトリプルゲート構造であっても良い。
【0107】
また、配線706は電流制御TFTのソース配線(電流供給線に相当する)であり、707は電流制御TFTの画素電極710上に重ねることで画素電極710と電気的に接続する電極である。
【0108】
なお、710は、透明導電膜からなる画素電極(発光素子の陽極)である。透明導電膜としては、酸化インジウムと酸化スズとの化合物、酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物、酸化亜鉛、酸化スズまたは酸化インジウムを用いることができる。また、前記透明導電膜にガリウムを添加したものを用いても良い。画素電極710は、上記配線を形成する前に平坦な層間絶縁膜711上に形成する。本実施例においては、樹脂からなる平坦化膜711を用いてTFTによる段差を平坦化することは非常に重要である。後に形成される発光層は非常に薄いため、段差が存在することによって発光不良を起こす場合がある。従って、発光層をできるだけ平坦面に形成しうるように画素電極を形成する前に平坦化しておくことが望ましい。
【0109】
配線701〜707を形成後、図19に示すようにバンク712を形成する。バンク712は100〜400nmの珪素を含む絶縁膜もしくは有機樹脂膜をパターニングして形成すれば良い。
【0110】
なお、バンク712は絶縁膜であるため、成膜時における素子の静電破壊には注意が必要である。本実施例ではバンク712の材料となる絶縁膜中にカーボン粒子や金属粒子を添加して抵抗率を下げ、静電気の発生を抑制する。この際、抵抗率は1×106〜1×1012Ωm(好ましくは1×108〜1×1010Ωm)となるようにカーボン粒子や金属粒子の添加量を調節すれば良い。
【0111】
画素電極710の上には発光層713が形成される。なお、図19では一画素しか図示していないが、本実施例ではR(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応した発光層を作り分けている。また、本実施例では蒸着法により低分子系有機発光材料を形成している。具体的には、正孔注入層として20nm厚の銅フタロシアニン(CuPc)膜を設け、その上に発光層として70nm厚のトリス−8−キノリノラトアルミニウム錯体(Alq3)膜を設けた積層構造としている。Alq3にキナクリドン、ペリレンもしくはDCM1といった蛍光色素を添加することで発光色を制御することができる。
【0112】
但し、以上の例は発光層として用いることのできる有機発光材料の一例であって、これに限定する必要はまったくない。発光層、電荷輸送層または電荷注入層を自由に組み合わせて発光層(発光及びそのためのキャリアの移動を行なわせるための層)を形成すれば良い。例えば、本実施例では低分子系有機発光材料を発光層として用いる例を示したが、中分子系有機発光材料や高分子系有機発光材料を用いても良い。なお、本明細書中において、昇華性を有さず、かつ、分子数が20以下または連鎖する分子の長さが10μm以下の有機発光材料を中分子系有機発光材料とする。また、高分子系有機発光材料を用いる例として、正孔注入層として20nmのポリチオフェン(PEDOT)膜をスピン塗布法により設け、その上に発光層として100nm程度のパラフェニレンビニレン(PPV)膜を設けた積層構造としても良い。なお、PPVのπ共役系高分子を用いると、赤色から青色まで発光波長を選択できる。また、電荷輸送層や電荷注入層として炭化珪素等の無機材料を用いることも可能である。これらの有機発光材料や無機材料は公知の材料を用いることができる。
【0113】
次に、発光層713の上には導電膜からなる陰極714が設けられる。本実施例の場合、導電膜としてアルミニウムとリチウムとの合金膜を用いる。勿論、公知のMgAg膜(マグネシウムと銀との合金膜)を用いても良い。陰極材料としては、周期表の1族もしくは2族に属する元素からなる導電膜もしくはそれらの元素を添加した導電膜を用いれば良い。
【0114】
この陰極714まで形成された時点で発光素子715が完成する。なお、ここでいう発光素子715は、画素電極(陽極)710、発光層713及び陰極714で形成されたダイオードを指す。
【0115】
発光素子715を完全に覆うようにしてパッシベーション膜716を設けることは有効である。パッシベーション膜716としては、炭素膜、窒化珪素膜もしくは窒化酸化珪素膜を含む絶縁膜からなり、該絶縁膜を単層もしくは組み合わせた積層で用いる。
【0116】
この際、カバレッジの良い膜をパッシベーション膜として用いることが好ましく、炭素膜、特にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を用いることは有効である。DLC膜は室温から100℃以下の温度範囲で成膜可能であるため、耐熱性の低い発光層713の上方にも容易に成膜することができる。また、DLC膜は酸素に対するブロッキング効果が高く、発光層713の酸化を抑制することが可能である。そのため、この後に続く封止工程を行なう間に発光層713が酸化するといった問題を防止できる。
【0117】
さらに、パッシベーション膜716上に封止材717を設け、カバー材718を貼り合わせる。封止材717としては紫外線硬化樹脂を用いれば良く、内部に吸湿効果を有する物質もしくは酸化防止効果を有する物質を設けることは有効である。また、本実施例においてカバー材718はガラス基板や石英基板やプラスチック基板(プラスチックフィルムも含む)の両面に炭素膜(好ましくはダイヤモンドライクカーボン膜)を形成したものを用いる。
【0118】
こうして図19に示すような構造の発光装置が完成する。なお、バンク712を形成した後、パッシベーション膜716を形成するまでの工程をマルチチャンバー方式(またはインライン方式)の成膜装置を用いて、大気解放せずに連続的に処理することは有効である。また、さらに発展させてカバー材718を貼り合わせる工程までを大気解放せずに連続的に処理することも可能である。
【0119】
こうして、プラスチック基板を母体とする絶縁体501上にnチャネル型TFT601、602、スイッチングTFT(nチャネル型TFT)603および電流制御TFT(nチャネル型TFT)604が形成される。ここまでの製造工程で必要としたマスク数は、一般的なアクティブマトリクス型発光装置よりも少ない。
【0120】
即ち、TFTの製造工程が大幅に簡略化されており、歩留まりの向上および製造コストの低減が実現できる。
【0121】
さらに、図19を用いて説明したように、ゲート電極に絶縁膜を介して重なる不純物領域を設けることによりホットキャリア効果に起因する劣化に強いnチャネル型TFTを形成することができる。そのため、信頼性の高い発光装置を実現できる。
【0122】
また、本実施例では画素部と駆動回路の構成のみ示しているが、本実施例の製造工程に従えば、その他にも信号分割回路、D/Aコンバータ、オペアンプ、γ補正回路などの論理回路を同一の絶縁体上に形成可能であり、さらにはメモリやマイクロプロセッサをも形成しうる。
【0123】
さらに、発光素子を保護するための封止(または封入)工程まで行った後の本実施例の発光装置について図20を用いて説明する。なお、必要に応じて図19で用いた符号を引用する。
【0124】
図20(A)は、発光素子の封止までを行った状態を示す上面図、図20(B)は図20(A)をC−C’で切断した断面図である。点線で示された801はソース側駆動回路、806は画素部、807はゲート側駆動回路である。また、901はカバー材、902は第1シール材、903は第2シール材であり、第1シール材902で囲まれた内側には封止材907が設けられる。
【0125】
なお、904はソース側駆動回路801及びゲート側駆動回路807に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)905からビデオ信号やクロック信号を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0126】
次に、断面構造について図20(B)を用いて説明する。基板700の上方には画素部806、ゲート側駆動回路807が形成されており、画素部806は電流制御TFT604とそのドレインに電気的に接続された画素電極710を含む複数の画素により形成される。また、ゲート側駆動回路807はnチャネル型TFT601とpチャネル型TFT602とを組み合わせたCMOS回路(図14参照)を用いて形成される。
【0127】
画素電極710は発光素子の陽極として機能する。また、画素電極710の両端にはバンク712が形成され、画素電極710上には発光層713および発光素子の陰極714が形成される。
【0128】
陰極714は全画素に共通の配線としても機能し、接続配線904を経由してFPC905に電気的に接続されている。さらに、画素部806及びゲート側駆動回路807に含まれる素子は全て陰極714およびパッシベーション膜716で覆われている。
【0129】
また、第1シール材902によりカバー材901が貼り合わされている。なお、カバー材901と発光素子との間隔を確保するために樹脂膜からなるスペーサを設けても良い。そして、第1シール材902の内側には封止材907が充填されている。なお、第1シール材902、封止材907としてはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、第1シール材902はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。さらに、封止材907の内部に吸湿効果をもつ物質や酸化防止効果をもつ物質を含有させても良い。
【0130】
発光素子を覆うようにして設けられた封止材907はカバー材901を接着するための接着剤としても機能する。また、本実施例ではカバー材901を構成するプラスチック基板901aの材料としてFRP(Fiberglass-Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリルを用いることができる。
【0131】
また、封止材907を用いてカバー材901を接着した後、封止材907の側面(露呈面)を覆うように第2シール材903を設ける。第2シール材903は第1シール材902と同じ材料を用いることができる。
【0132】
以上のような構造で発光素子を封止材907に封入することにより、発光素子を外部から完全に遮断することができ、外部から水分や酸素等の発光層の酸化による劣化を促す物質が侵入することを防ぐことができる。従って、信頼性の高い発光装置が得られる。
【0133】
以上のようにして作製される発光装置は一様にアニールされた半導体膜を用いて作製されたTFTを有しており、前記発光装置の動作特性や信頼性を十分なものとなり得る。そして、このような発光装置は各種電子機器の表示部として用いることができる。
【0134】
なお、本実施例は実施例1乃至3と自由に組み合わせることが可能である。
【0135】
[実施例6]
本発明を適用して、様々な半導体装置(アクティブマトリクス型液晶表示装置、アクティブマトリクス型発光装置、アクティブマトリクス型EC表示装置)を作製することができる。即ち、それら電気光学装置を表示部に組み込んだ電子機器全てに本発明を実施できる。
【0136】
その様な電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、プロジェクター、ヘッドマウントディスプレイ(ゴーグル型ディスプレイ)、カーナビゲーション、カーステレオ、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話または電子書籍等)などが挙げられる。それらの一例を図21、図22及び図23に示す。
【0137】
図21(A)はパーソナルコンピュータであり、本体2001、画像入力部2002、表示部2003、キーボード2004等を含む。本発明を表示部2003に適用することができる。
【0138】
図21(B)はビデオカメラであり、本体2101、表示部2102、音声入力部2103、操作スイッチ2104、バッテリー2105、受像部2106等を含む。本発明を表示部2102に適用することができる。
【0139】
図21(C)はモバイルコンピュータ(モービルコンピュータ)であり、本体2201、カメラ部2202、受像部2203、操作スイッチ2204、表示部2205等を含む。本発明は表示部2205に適用できる。
【0140】
図21(D)はゴーグル型ディスプレイであり、本体2301、表示部2302、アーム部2303等を含む。本発明は表示部2302に適用することができる。
【0141】
図21(E)はプログラムを記録した記録媒体(以下、記録媒体と呼ぶ)を用いるプレイヤーであり、本体2401、表示部2402、スピーカ部2403、記録媒体2404、操作スイッチ2405等を含む。なお、このプレイヤーは記録媒体としてDVD(Digtial Versatile Disc)、CD等を用い、音楽鑑賞や映画鑑賞やゲームやインターネットを行なうことができる。本発明は表示部2402に適用することができる。
【0142】
図21(F)はデジタルカメラであり、本体2501、表示部2502、接眼部2503、操作スイッチ2504、受像部(図示しない)等を含む。本発明を表示部2502に適用することができる。
【0143】
図22(A)はフロント型プロジェクターであり、投射装置2601、スクリーン2602等を含む。本発明は投射装置2601の一部を構成する液晶表示装置2808やその他の駆動回路に適用することができる。
【0144】
図22(B)はリア型プロジェクターであり、本体2701、投射装置2702、ミラー2703、スクリーン2704等を含む。本発明は投射装置2702の一部を構成する液晶表示装置2808やその他の駆動回路に適用することができる。
【0145】
なお、図22(C)は、図22(A)及び図22(B)中における投射装置2601、2702の構造の一例を示した図である。投射装置2601、2702は、光源光学系2801、ミラー2802、2804〜2806、ダイクロイックミラー2803、プリズム2807、液晶表示装置2808、位相差板2809、投射光学系2810で構成される。投射光学系2810は、投射レンズを含む光学系で構成される。本実施例は三板式の例を示したが、特に限定されず、例えば単板式であってもよい。また、図22(C)中において矢印で示した光路に実施者が適宜、光学レンズや、偏光機能を有するフィルムや、位相差を調節するためのフィルム、IRフィルム等の光学系を設けてもよい。
【0146】
また、図22(D)は、図22(C)中における光源光学系2801の構造の一例を示した図である。本実施例では、光源光学系2801は、リフレクター2811、光源2812、レンズアレイ2813、2814、偏光変換素子2815、集光レンズ2816で構成される。なお、図22(D)に示した光源光学系は一例であって特に限定されない。例えば、光源光学系に実施者が適宜、光学レンズや、偏光機能を有するフィルムや、位相差を調節するフィルム、IRフィルム等の光学系を設けてもよい。
【0147】
ただし、図22に示したプロジェクターにおいては、透過型の電気光学装置を用いた場合を示しており、反射型の電気光学装置及び発光装置での適用例は図示していない。
【0148】
図23(A)は携帯電話であり、本体2901、音声出力部2902、音声入力部2903、表示部2904、操作スイッチ2905、アンテナ2906等を含む。本発明を表示部2904に適用することができる。
【0149】
図23(B)は携帯書籍(電子書籍)であり、本体3001、表示部3002、3003、記憶媒体3004、操作スイッチ3005、アンテナ3006等を含む。本発明は表示部3002、3003に適用することができる。
【0150】
図23(C)はディスプレイであり、本体3101、支持台3102、表示部3103等を含む。本発明は表示部3103に適用することができる。本発明のディスプレイは特に大画面化した場合において有利であり、対角10インチ以上(特に30インチ以上)のディスプレイには有利である。
【0151】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。また、本実施例の電子機器は実施例1〜4または5のどのような組み合わせからなる構成を用いても実現することができる。
【0152】
【発明の効果】
本発明によれば、被照射体(例えば、半導体膜)に対してレーザ光を斜めに照射することで、被照射体(半導体膜)に形成される同心円模様のような被照射体に対するアニールを不均一なものとする干渉縞を除去、または低減することができ、レーザアニール後の被照射体(半導体膜)の物性を均一なものにすることが出来る。このようは半導体膜を用いて半導体装置を作製すれば、半導体装置の性能を大幅に向上させうる。
【0153】
また、レーザアニールの際にレーザ光を線状に加工してスループットを向上させることも可能である。さらに、メンテナンスの容易な固体レーザや金属レーザを用いることで従来のエキシマレーザを用いたレーザアニールよりもスループットの向上やコストの低減が達成できる。延いてはTFTやTFTで形成された液晶表示装置等の半導体装置の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 レーザ照射装置の構成の例を示す図。
【図2】 同心円模様の一例を示す図。
【図3】 (A)非晶質珪素膜(膜厚55nm)における波長に対する反射率を示す図。
(B)非晶質珪素膜(膜厚55nm)における波長に対する透過率を示す図。
【図4】 基板ステージの影響を除去してレーザアニールを行なったことを示す図。
【図5】 基板ステージの影響を除去してレーザアニールを行なった結果の一例を示す図。
【図6】 基板の裏面の影響を除去してレーザアニールを行なったことを示す図。
【図7】 基板の裏面の影響を除去してレーザアニールを行なった結果の一例を示す図。
【図8】 半導体膜の表面の反射光と、基板と半導体膜の界面における反射光との干渉について考察するための図。
【図9】 基板のxおよびy方向について説明する図。
【図10】(A)基板のx方向に対する歪みの例を示す図。
(B)基板のy方向に対する歪みの例を示す図。
【図11】 本発明のレーザアニール方法の一例を示す図。
【図12】 本発明のレーザアニール方法の一例を示す図。
【図13】 画素TFT、駆動回路のTFTの作製工程を示す断面図。
【図14】 画素TFT、駆動回路のTFTの作製工程を示す断面図。
【図15】 画素TFT、駆動回路のTFTの作製工程を示す断面図。
【図16】 画素TFT、駆動回路のTFTの作製工程を示す断面図。
【図17】 画素TFTの構成を示す上面図。
【図18】 アクティブマトリクス型液晶表示装置の作製工程を示す断面図。
【図19】 発光装置の駆動回路及び画素部の断面構造図。
【図20】(A)発光装置の上面図。
(B)発光装置の駆動回路及び画素部の断面構造図。
【図21】 半導体装置の例を示す図。
【図22】 半導体装置の例を示す図。
【図23】 半導体装置の例を示す図。
Claims (7)
- 請求項1又は2において、
前記レーザ光の波長は350nm以上とすることを特徴とするレーザアニール方法。 - 請求項4又は5において、
前記レーザ光の波長は350nm以上とすることを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 請求項4乃至6のいずれか一項において、
前記半導体膜は珪素を含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。
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